「急げッ!!早くT-レックスの卵を回収し終えるんだッ!早くしねぇと“ヤツら”が来るぞッ!!!」
「「「い、イエッサー!!!」」」
人相が悪く声も野太い巨漢の男は、目の前で眠っている巨大な爬虫類の王に怖気付き仕事の効率が大幅に下がっている部下達を、これまた爬虫類の王を刺激しない程度の声量で怒鳴りつける。
彼らの目の前にモンスタートラックのエンジンにも匹敵する寝息を立てているのは、古代の王者T-レックス…別名ティラノサウルスとも呼ばれる恐竜の代名詞だ。
だが、少し待ってほしい。T-レックスが生息していたのは現代から数えて7000万年以上昔だ。そもそもこの時代には人類すらも誕生していない。つまり、この時代において人間とT-レックスのツーショットが実現する事はあり得ない。
それに加え人相の悪い男達は、実に近代的な火器を装備し、実に近代的なエアートラックの荷台にT-レックスの卵を詰め込み、実に近代的な言語を駆使して連携を取り合っている。彼らを構成する全ての要素は、これまた実にこの時代には似つかわしくないのだ。
「へっへっへ!豊作!豊作!これだけの量の卵を、
???「それは素晴らしい。労働を介さない豪遊生活は全人類の夢ですからね。私も時たま憧れるモノです」
「無駄口叩いてる場合かッ!とっととズラかるぞッ!!早くしねぇとーー…待て、今喋ったのは誰だ…?」
3人居るどの部下にも該当しない謎の声の存在に、彼らのボスは嫌な予感が止まらない。だが、自分の予感が正しければ今すぐ声の方向を向き、火器を構えなければ、首が飛ぶのは自分の方だ。
ある意味、死刑直前の絞首台に立たされているにも等しい悪感に怯えながらも、ボスは恐る恐る右手に銃火器を構え、視線を移す。
そこに居たのは……
雷冥「おっと失礼。実は私もT-レックスの卵を見るのは初めてなモノでしてね、年甲斐もなくはしゃいでしまいましたよ」
「てめぇぇぇぇ!!!時空管理局のエージェントかぁぁぁ!!!」
突如として現れた青髪の青年…。そのスーツの胸に刻まれたエンブレムを見たボスは激昂し、銃火器に込められた全ての弾を余す事なく放出させる。
雷冥「ワンダバード!」
ワンダバード「お任せあれッ!!」
しかし怒りの乱射も虚しく、打ち出された弾丸は青年のポケットから現れた八咫烏を模したアンドロイドが展開するバリアーによって全て弾かれてしまう。
「んなっ…!?」
雷冥「コードNo.
エージェントとしての決まり文句を終えた青年の身体より、大量のオーラが発せられると密輸犯を取り囲むように10人の眷属達が出現する。
雷冥「貴方達の選択は二つに一つです。大人しく降参しお縄につくか…。それとも愚かにも抵抗を続けこの時代で骨を土に埋めるか…。さて…どっちがいい?」
会話の途中で“魔王”の人格へと切り替わった青年は、氷のように冷たく低い声で目の前の犯罪者にとって最悪の二択を突きつける。
あれだけ緻密に練った計画すらも破産となり、千載一遇の大逆転のチャンスすらも潰えてしまった犯罪者は怒りと屈辱のあまり、顔に青筋を立て身体を震わせる。
数秒の沈黙の末に彼が出した答えは…
「こ、降参します…」
雷冥「それでよい。ワンダキャット、
ワンダキャット「はーい」
目の前にて眠るT-レックスの睡眠を一切妨げる事なく、静かにそして迅速に青年に下された
彼の名前は稲魂雷冥。時空管理局に所属するエージェントであり、“怪物”の血を濃く受け継いだ者…。
この物語は彼がある指令にて遭遇したある騒動の記録の一端である…。
♢♢♢
『時空管理局』それは名前の通り、無数に存在する
組織に所属するエージェント達は様々な時代から集められ、時空を超え過去の時間軸の治安を乱す“時空犯罪者”を日夜取り締まっている。
ワンダバード「お疲れ様でしたマスター!今日も見事な活躍でしたね!」
雷冥「バードもキャットもお疲れ様です。この用事が終わったら、ご褒美に新しいパーツを買ってあげましょう」
時空密輸犯を本部に転送し終え、しばしの暇を得た雷冥は元の時代…つまり曽祖父が活躍した時代から80年後の世界へと帰還する。
その右手には道中にある花屋で購入した数本の花を携えており、今日という日が彼にとって特別な日である事が伺える。
雷冥「…少々遅くなってしまい申し訳ありません。ココ最近、仕事が立て込んでいましてね…。…ですが、貴方なら許してくれますよね?」
目的の地へ到着した雷冥は、そこに居る“モノ”へ向けて親しげに話しかける。
だが、そこに居る“モノ”は彼の言葉に返事を返す事はない。何故なら、そのモノは
雷冥「お久しぶりです。
その墓碑に刻まれた名は“
雷冥「…さて。名残惜しいですが、ココらでお暇させていただきます。カノンや夏未ひいお祖母様にも挨拶をしなければなりませんからね。…それではママ上、また今度」
墓碑の下に眠る母親との対話を終えた雷冥は、軽く会釈をしその場から立ち去る。
♢♢♢
獣牙『“稲魂”の血だとか
一般に“稲魂の一族”は変わり者の母集団として世間からは認識されています。別にそれを否定するつもりは私には毛頭もありません。何せ、当の私もかなり変わってますからね。
…ですが、私のママ上はそれに輪をかけて変わり者でした。
彼女は先人達に勝るとも劣らないサッカーセンスを持ちながらも、祖先達と同じ道を歩む事を良しとはしませんでした。
勿論、警察官はその身と時間を犠牲にし市民の安全を守る誇り高い仕事です。
それでも、当時の私は先人達より受け継いだ“才能”をミスミス無駄にするような選択が理解出来ませんでした。
ママ上の性格上、“稲魂”の看板を背負うプレッシャーに押し潰されて辞めた…とは考え辛いですし、私にサッカーを教えたのがママ上である以上、サッカーそのモノが嫌いになったワケでもないでしょう。
当時の私は同学年よりも知能指数が高い自負がありましたが、その頭脳を以てしても考えれば考える程、合理からは程遠い場所に位置するママ上の選択に混乱するばかりでした。
…いや最初から超が付く程の自由人であるママ上を理解しようとする時点で無駄だったのかもしれませんね。
銀牙大叔母様が良い例ではありますが、自由人という人種は基本的にその行動に“思考”を介しません。彼らを動かすのはただ一つ…“感情”のみです。
銀牙大叔母様が“ワクワク”を何よりも優先していたように、ママ上にも合理を超える決して譲れない“何か”があったのでしょう。
…ですが、私では
獣牙『雷冥!アンタは逃げなさいッ!私は逃げ遅れた人を助けに行くからッ!!』
雷冥『逃げるならママ上もですッ!どうして貴方は、命は1つしかないのに見ず知らずの他人の為に命を賭けられるのですか!?』
獣牙『…確かに人の命は1つしかないわ…。けどね…!人の命には使い所ってのがあるのッ!私にとって…それが今なのッ!』
忘れもしません。日本史上最低最悪の未曾有のテロ事件…。偶然、現場に居たママ上は私を逃した後、警察官として市民を助ける為に、爆薬と銃弾が跋扈する地獄へ舞い戻りました。
それが私との今生の別れになると知らずに……
雷冥『ママ上…!ママ上ーーッ!!!』
彼女が私達の元へ戻って来た時には、既に永遠に目覚めない眠りについていました。
その死因は生存者を庇って背中から銃弾を受けた事による失血死。…裏を返せばママ上は生存者に気を取られなければ生きて私の元へ帰って来たという事です。
その仮説を裏付けるように、国が派遣した鎮圧部隊が現場に駆けつけた時には既にテロリストの3分の2が鎮圧されており、テロの規模に対して死傷者は非常に少なかったそうです。
現場に残された映像と生存者の証言から、世間は我が母・稲魂獣牙をテロ鎮圧の功績者として称賛し、彼女の葬儀には大勢の人々が訪れました。
顔も知らない大勢の他人が彼女に献花する光景を目の当たりにして、改めて、ママ上は死して英雄になったのだと実感しました。
…それでも、やはり私は何故ママ上があのような選択をしたのかを理解する事が出来ません。当時も…そして今も…。
だからこそでしょうか?気づけば私は、ママ上と同じくサッカーの道を外れ、時空管理局のエージェントとして時空の平和を守護するようになりました。
…もしかしたら、無意識のうちにずっと“答え”を探しているのかもしれませんね…。ママ上がその胸に抱き、終ぞ私に正体を教える事なく散っていったその“何か”の答えを…。
♢♢♢
777「新たな任務だ666。“ハンドレッド
私基準で前回の事件を解決してから早数週間…。長期休暇を終え本部に呼び出された私は、所属する部隊の隊長であるコードNo.
雷冥「件の並行世界の分類は?」
777「…パターンBだ」
ワンダキャット「…パターンBってなんだっけ?」
ワンダバード「ハァ〜…!また忘れたのか?パターンBの並行世界は、Aと違って正史とは前提の歴史が異なる並行世界だって何度も教えてるだろ!!」
…私も777も慣れたモノですが、案の定バードとキャットは喧嘩を始めてしまいました。
ハァ…彼らは1日に一度は喧嘩をしなければ停止する機能でも搭載されてあるのでしょうか?…まぁ、十中八九彼らの人格データのオリジナルの影響でしょうし、お互いにやる事はちゃんとやっているので多少は大目に見ますが。
画面の前の皆様の為に具体的に説明しますと、パターンAとB…通称『Aの世界』と『Bの世界』と呼ばれる世界群は、時空管理局が定めた並行世界の分類区分です。
基本的に『Aの世界』は、なんらかの介入により正史から枝分かれしてしまった並行世界の事を指します。“寛容”を基本方針とする時空管理局は、余程の事がない限りこの世界にエージェントが派遣する事はありませんが…問題はもう一つの『Bの世界』なのです。
『Bの世界』とは、Aとは異なり正史と辿った歴史が大きく異なる並行世界…。正史にて死を迎えた者が生存しているのはまだ良い方…。酷い時には善と悪の存在が反転している等、世界によって変化は様々です。
“寛容”を旨とする時空管理局にとって、並行世界が発生する事はさほどの問題ではありません。ですが、驚異的な科学力を持った時空が他の並行世界にまで魔の手を伸ばす事がある為、未知の並行世界…特に『Bの世界』は存在が確認され次第、コードNoを持つエージェントによって調査が行われるのです。
777「666、言うまでもないと思うが一応言っておく。君に与えられた権限はあくまでも該当時空の調査だ。“ハンドレッドNo.S”である為、多少の越権行為には黙認するが、あまりその世界の事情に深く込み入ったりはしないように」
雷冥「…分かっています」
我らエージェントは決して“ヒーロー”ではありません。無論、罪のない並行世界の人民の平和を守護する職種ではありますが、場合によっては非情な決断を下さなければなりません。
『
…それが長く生き残るエージェントの心得です。
……………
…………
………
……
…
ワンダバード「お疲れ様ですッ!諸先輩方ッ!!!」
純度100%のアンドロイドであるバードが尊敬する先輩とは一体どのような存在でしょうか?
彼よりも逞しくゴツゴツしいアンドロイド?私の出身地では生誕100年を超える特撮ヒーロー?それとも彼のプロトタイプ?
残念ですがどれも正しくありません。何せ、彼がその小さな身体ごとお辞儀している先に居るのは物言わぬバイク型のタイムマシンなのですからね。
ワンダキャット「ココに来る度におんなじ台詞言ってんじゃん。お兄だってあたしのこと言えなくない?」
ワンダバード「オマエと僕の違いは、そこに“怠惰”があるか“尊敬”があるかだよ。当然、前者はオマエ 後者は僕」
ワンダキャット「意味分かんない…」
正直、私もキャットの意見に賛成ですね。同じ機械同士何かフィーリングを感じるモノがあるのでしょうけど、自我を持つサポートロイドが自我を持たないタイムマシンを尊敬する意味がないですし。
…そういえば、前にホバーバイクのカタログを読んでいた姿を見た事がありますし、移動用のアンドロイドにでも憧れているのでしょうか?
雷冥「…2人共、無駄話はそこまでです。バードはタイムキャラバンの制御を、キャットは…万が一に備えて私の膝の上に待機しいつでもバリアーを張れる準備をしておいてください」
ワンダバード「はいッ!!!」
ワンダキャット「はーい」
タイムジャンプ用のライダースーツとヘルメットを装着し終えた私は、バイクに跨り周囲に備え付けられたボタンとレバーを操作し、第一準備を完了させます。
目的地への羅針盤としての役割を持つバードは、彼専用の座席に座り込み…というよりも装着され、バードの妹である事自体が役目であるキャットは命令通り、私の膝の上で丸まり昼寝を始めました。
『コードNo.666のタイムジャンプが承認されました。カウントダウンを開始します』
タイムマシンに搭載されたAIの高い機械音声が私のタイムジャンプを認め、『10』から『0』に向かって数え始めます。
『…1。…0』
カウントが『0』になった瞬間、タイムマシンは凄まじい速度で次元の狭間を潜り抜け、私達を無限に広がる並行世界へ通じる通り道へ誘いました。
『タイムジャンプ成功。目的到着まで後3時間です』
身体に掛かるGがロケット以上である事を除けば、タイムスリップは実に快適なモノです。時空の通り道はその性質上とても静かですし、その間の旅路を不可思議な景色を見て楽しむのも良し、前々から気になっていた映画を見た時間を潰すのも良し。半年に一度しかまとまった休暇が取れない私にとってはこの時間がささやかな休息です。
雷冥「さてと…今日は何を見ましょうかね?」
ワンダキャット「マスター。あたし『ハイパーかぐや姫』が見たい」
雷冥「アレはまだサブスクでの配信はありませんよ。もう少しの辛抱です」
今は短くも確実に羽を伸ばせる時間という事もありますが、今日の私は少し気が緩んでしまいます。何せ、『Bの世界』の調査は確かに難易度は高いですが、この間のような時空犯罪者の相手をするよりかはよっぽど楽な仕事ですからね。
エージェントの特権で肉体は歳を重ねないとはいえ、この間の密輸犯は確保までに半年、長い時は1年以上の時間を費やす場合があります。それに比べたら、数週間ほど現地を調査するだけの指令はどんなに楽な事でしょう!
そう甘く考えていた私の首を絞めたいですね。
ドジャーン!!!
吟味の末に再生した映画がクライマックスを迎え、目的地まで残り僅かにまで差し掛かった瞬間、突如爆発音のような大きな音が車内に響いたと思うと車体が大きく揺れました。
ワンダバード「マスター!次元妨害波です!!何者かが僕たちのタイムジャンプを拒もうとしていますッ!!」
…なるほど、想定外の事態ですが得られた情報は多い…。我々を妨害した“何者”は恐らく目的地の先に居る勢力もしくは個人である事…。件の時空は我々のタイムジャンプに介入が可能な程度には科学力が発展している事…。取り敢えずはその情報だけで十分です。
雷冥「落ち着きなさいバード!現在のタイムジャンプの進捗率は!?」
ワンダバード「進捗率…!99%です…!」
問題ありません。9割オーバーならば十分にリカバリーが効く範囲内です。
雷冥「ならばコレよりタイムマシンの操作を自動から手動に切り替えますッ!バードは引き続き目的地までのルートの案内をッ!キャットは復旧プログラムの起動をッ!」
ワンダバード「ラジャー!!」
ワンダキャット「ラジャー」
タイムマシンの操作を自動から手動に切り替えた私は、両手でハンドルを掴みなんとか体制を立て直す。
幸いな事に次元妨害波の影響は致命的なモノではありません。私とバードが全力を尽くせば、目的地に到達する事は可能でしょう。
寧ろ一番の問題は……
ワンダバード「ーー!!! やりましたよマスター!目的の時空…『ワールド:
バードが何かを言いかけた直後、タイムマシンは時空の壁を突き破り目的の世界『ワールド:
しかし、目的地へ到達したタイムマシンはその役目を終えたかのように全ての電源がOFFになると、車輪無き車体は重力に導かれ、地面に落下し始めました。
雷冥「
ワンダキャット「オーケー」
既にこの未来を予測していた私は躊躇せずにタイムマシンを乗り捨てると同時に、キャットが展開したバリアーに包まれます。
ドゴォォォン!!!
私達よりも先に地面と衝突したタイムマシンは大爆発を起こしその役目と一生を終えました。
一方、数秒遅れて地面に衝突した私は、両親から与えられた頑丈な肉体とキャットのバリアのお陰でその肉片を撒き散らす事なく、何とか地面に着陸する事に成功しました。…流石に私でもノーダメージとは言えませんが…。
雷冥「ゲホッ…!カハッ…!ハァ…ハァ…。あ、ありがとうございますキャット…。貴方がバリアを張ってくれなければ、今頃私はあの世行きでしたよ…」
ワンダキャット「当然。だってあたしだし」
ワンダバード「それにしてもココはどこでしょう…?見たところ市街地から離れた森林のようですけど…」
雷冥「元々、タイムジャンプの座標は現地民の目撃を塞ぐ為に辺鄙な場所に設定されやすいですからね。恐らく、我々の想像よりもココは市街地からそう離れていない場所でしょう。キャット、貴方の耳には何か聞こえませんか?」
マイペースな性格とは裏腹に、戦闘タイプとして作られたキャットは、サポート性能こそはバードに劣るものの、バードにはない利点は多くあります。
その中の一つが驚異的な聴力。その気になれば数km先の虫の羽音すらも聞き分けられる優れた聴力はこういう時の周囲のリサーチに重宝しています。
ワンダキャット「……。…あっ、聞こえた。アッチの方に多分街がある」
雷冥「流石ですキャット。早速向かいましょう」
ワンダキャット「…けど」
雷冥「?」
ワンダキャット「少し嫌な声かも…」
珍しく眉間に皺を寄せた表情で我々に忠告を行うキャットですが、どちらにせよ私の指令がこの時空の調査である以上、市街地に赴かなければ仕事になりません。
こうして私達は、万が一の妨害者の襲撃を警戒しながら木々に覆われた森林を抜ける。
その瞬間、私はキャットの言っていた“嫌な声”の正体を嫌でも理解する事となる。
『
森林を抜けた先にあったのは、私の記憶とは似ても似つかない並行世界の地球の姿。
遂に姿を現した市街地は、古代ローマ帝国を思わせる街並みであるものの、建設物の節々から見られるこの世界の技術力は私が生まれた時代から100年以上先の未来に匹敵する。
その地に生きる人々は、“GF”なる謎の存在に心酔し、市街地の中心部に建設された天を貫く巨塔に向けて祈りを捧げている。
ワンダバード「何ですか…コレ…?」
私はこの手のイカれた並行世界はある程度見慣れている為、そこまでショックは受けていませんが、人間の精神年齢に換算すると13歳相当のバードにはショックが大きすぎたようで言葉を失っています。
ワンダキャット「…マスター。アソコを見て」
雷冥「アレは…」
兄とは異なり冷静さを失わなかったキャットは何かに気づき、ある方向を指差すと、巨塔の頂上から黄金に輝く鎧と仮面を身に包んだ何者かが現れる。
???『生きとし生きる者達よッ!!私の教えはただ1つ…!“勝利”こそがこの世界の絶対真理だッ!!!』
『
仮面の男が姿を現した瞬間、ただでさえ狂信的とも言える国民の熱気は更に火力増し、街全体が震える。
国民の狂気は周囲の空気に重さを与え、あまりの息苦しさに、熱狂の途中で吐いてしまう者さえいる。
しかし誰1人として教えに耐えらない軟弱者には目を止めず、また吐いた本人でさえも口中に吐瀉物を含んだまま奇声を上げ続ける。
GF『敗者に存在価値などないッ!貴様らは生き残る為にッ!子孫を残す為にッ!勝ち続けなければならないのだッ!!!私が定めた絶対の“秩序”…!“サッカー”で!!!』
『ワアァァァァァ!!!』
まるで私達の到着を見計らったかのように行われる“GF”による信者を狂人へと変える大演説。
コレが狂気と悪意が入り混じった最狂最悪の
〜専門用語解説〜
♦︎
コードNo.を持つエージェント達の総称。一桁の“ワンコードNo.S”、二桁の“テンコードNo.S”、三桁の“ハンドレッドコードNo.S”の三種類が存在し、数字の桁が大きいほど権限も大きくなる。
なおコードナンバーは任命順ではない為、コードNo.777が居るからと言ってNo.Sが777人居るというわけではない。
♦︎Aの世界/Bの世界
時空管理局が定めた並行世界の分類。Aの世界は未来人の介入により正史から枝分かれした並行世界を指し、余程の事がない限りこの世界にエージェントが派遣される事はない。
Bの世界は正史と辿った歴史が大きく異なる並行世界の事を指す。稀に全時空を支配しようとする過激な思想を持つ世界がある為、エージェントの調査に基づき本部が黙認か鎮圧かを決める。
分かりやすく言えば、Aの世界に該当するのがイナヒロの時空、Bの世界に該当するのがアレオリの時空って感じ…かな?