吹雪と雷牙の得点により更に試合が盛り上がる中、ある2人の少年が選考試合の様子を静かに見守っていた。
???『そんなに気になる選手が日本にいるのかい?
そばかすの少年は流暢なイタリア語で『ヒデ』という少年に疑問を投げかける
真剣に選考試合を観賞する『ヒデ』とは対照的にそばかすの少年は試合には興味がないと言わんばかりに木の影でコンビニで買ったアイスを食べている。
???『何度も言っただろ?
???『ぶっちゃけヒデからすればどんな選手も見劣りすると思うけどねー。まっ、そこまで言うなら俺は何も言わないよ。』
???『さーて…、どうかな…?』
『ヒデ』と呼ばれる少年は不敵な笑みを浮かべ再びグラウンドに目をやる。その瞳に映っているのは金色の“怪物”だった。
♢♢♢
ピッピー!
審判のホイッスルが二度鳴らされ永遠にも感じられた前半戦が終了する。
雷牙が得点して以降、両者は一進一退の攻防を繰り返した。互いに点を取ろうと攻め合い、ボールを奪えば即座に奪い返すの連続…。
特に雷牙と豪炎寺は要注意人物として厚いマークが付けられた結果、あれ以降一度もシュートを撃つ事なく前半戦が終わってしまった。
それでも本人達は特に気にする事なくベンチで談笑している。
豪炎寺「“プラチナギャラクシー”か…。中々良い技じゃないか、相当特訓したようだな。」
雷牙「この間の勝負で守に勝てなかったのがめちゃんこ悔しかったかんな〜。そういうオメーも何か新しい必殺技は開発してねーのか?」
豪炎寺「開発はしているがまだ未完成でな。残念だがこの試合では出せそうにない。」
そんなこんなでハーフタイムも終わり遂に運命の後半戦が始まる。勝敗は関係無いとはいえ如何にこの試合で活躍出来るかで憧れの世界と戦える権利を掴めるかが決まる。
その事実が皆の全神経に緊張を走らせる。
鬼道「後半もあのシュートを撃つのか?」
稲魂「あたぼーよ!守と真剣勝負する以上手を抜くって選択肢は俺にはねーよ!…それに、ココで止められなかったらアイツはそれまでのヤツだったってこった。」
一見すると冷たいようにも思える雷牙の言葉だが、その声には円堂ならばこの土壇場でも限界を超えてくれると確信している絶対の信頼があった。
ピーッ!
後半の展開は前半戦以上に激しいものだった。Aチームは或葉による選手ごとの癖を見抜いた的確な指揮の元、要注意人物たる雷牙と豪炎寺の動きを封じるが、Bチームには鬼道と不動の2人の司令塔が居る。最初こそは2人の仲の悪さと指揮系統の違いによるチーム内の混乱が心配されたがそこは天才ゲームメイカー達、互いに干渉しない範囲で指示を出し合い或葉の戦略を潰している。
ヒロト「“流星ブレードV4”!」
立向居「止める!“ムゲン・ザ・ハンドG5”!!!」
熱也「勝負だ!円堂!“ウルフレジェンドG2”!!!」
円堂「“正義の鉄拳G4”!!!」
一進一退の攻防を繰り広げるがベンチで試合を見守っているマネージャー達はある不安を抱いていた。
木野「大丈夫かしら円堂君…、この調子だと少し不安だわ…。」
音無「どういうことですか?木野さん?円堂さんもこの試合の中で着実にパワーアップしていますし、そもそもGK候補は2人しか居ないので選ばれるのは確実では?」
夏未「…いえ、木野さんの意見は正しいわ。
確かに円堂も戦いの中で着実に成長している。…だが素人目に見ても今の円堂は明らかに立向居に見劣りしているのが現状だ。
如何に“正義の鉄拳”が円堂大介が残した究極奥義の1つだとしてもその頂点に立つのは立向居が使う“ムゲン・ザ・ハンド”なのだ。
それに加えてキーパーとして天性の天才である立向居と特訓の天才である円堂とでは成長スピードにも大きな差が開いている。
このままでは立向居に日本の正GKの座を奪われてしまうだろう。
つまりだ。“正義の鉄拳”を超える新たな必殺技の習得…それが今の円堂が果たさなければならない課題なのだ。
松野「吹雪っ!」
するとBチームの選手からボールを奪ったマックスが追加点を取る為に吹雪にパスを回す。
しかしその瞬間、不動はこの時を待っていたと言わんばかりに悪い微笑を浮かべると後ろに居る風丸と木暮に指示を飛ばす。
不動「風丸!木暮!上がれ!」
進化した“ムゲン・ザ・ハンド”でも吹雪の“トリニティブリザード”を止められないのは誰の目から見ても明白だ。それにも関わらず
この瞬間だけは彼を100%信じる事にした風丸と木暮は指示に従い前線へ上がる。
吹雪「カウンター狙いかい?意外だね、君は立向居君が僕のシュートを止めれると信じているんだ?」
不動「俺があんな青二歳を信じるだァ?おいおい、冗談キツいぜ!俺が信じているのは常に俺自身だよ!」
すると不動はワザと吹雪を抜かせマックスのパスを通してしまう。ここでようやく不動の思惑を理解した吹雪だったが時既に遅し、ボールを受け取った時には審判のホイッスルが鳴り響いてしまった。
吹雪「ハハ…、こりゃ一本取られたね…。オフサイドトラップか…。」
不動「自慢の俊足が仇になったなァ!お陰で楽々とボールを確保出来たぜェ!」
不動の自分以外の全てを見下すような高笑いがグラウンド全域に響き渡る。
見た目こそ地味だが吹雪でさえも気付かない精度のオフサイドトラップを仕掛けられる時点で十分に彼の持つ司令塔としての能力は審査員に晒してたといえるだろう。
それに加えてボールの奪取による攻守の交代ではなく、ルールによる攻守の交代はAチームにとってかなりのピンチだ。
フリーキックによるディフェンスはどうしてもどこかに穴が出来てしまう。つまりBチームに潜む“怪物”にボールが回ってしまう可能性が高いのだ。
ピーッ!!!
Bチームのフリーキックが開始しAチームに緊張が走る。果たしてボールが回るのは雷牙か?それとも豪炎寺か?はたまたこれまで一度もシュートを打っていない虎丸か?
様々な思考が円堂達の脳裏によぎる中天高く飛び上がったのは…
豪炎寺「これで決めるっ!!!」
灼熱のマジンを背後に従えた豪炎寺修也だった。
豪炎寺「いくぞっ!円堂っ!!!」
豪炎寺はその右脚で渾身のシュートとマジンの咆哮を叩き込み、爆炎の炎をボールに纏わせる。
豪炎寺「“爆熱ストームG3”!!!」
数々の研鑽を積み更に進化した現時点の豪炎寺最強の必殺シュートが一切の手加減なく円堂に襲い掛かる。
円堂は友が本気で自分とぶつかってくれた事に感謝の笑みを浮かべながら拳を握る。
円堂「ウォォォォォッ!“正義の鉄拳G5ッ”!!!」
“G5”の領域まで到達した黄金の拳は虹色のオーラを纏わせながら爆炎と衝突する。
更に進化した黄金の拳は一瞬にして灼熱の炎を掻き消し天に向かってボールを弾き飛ばした。
…だがここにきて“正義の鉄拳”がパンチング技である事が裏目に出てしまう。
雷牙「さァさァ!!!一難去った後にまたまた猫又
白金のマジンに投げ飛ばされ宙を舞う“怪物”が意味不明な台詞を発しながら円堂に狙いを定めていた。
既に“怪物”は踵落としの体制でボールを叩き込む直前である。
雷牙「コレを止めてみせやがれッ!!!守ッ!!!」
“怪物”は渾身の踵落としを叩き込み最強の必殺技である“プラチナギャラクシー”を炸裂させる。
なんとか体制を立て直した円堂は“正義の鉄拳”で迎え撃とうとするがその拳では白金の銀河を打ち砕けない事は分かっている。
円堂(マジン…。空…。上からの力…。)
集中するあまり周囲の景色がスローになっている世界で円堂は新たな必殺技のヒントになるものはないか考え込む。
今の円堂には0から必殺技を作り出す暇はない。だからこそ“正義の鉄拳”に+1を加えられる“何か”が必要なのだ。
円堂(!!! そうか…!分かったぞ…!)
何かに気づいた円堂は再び右手で拳を握る。その動作は“正義の鉄拳”と大差がないにも関わらず。
雷牙(チッ…!まだ殻を破れねェのか守…!オメーなら出来る筈だろ…!?)
自身の期待に反し未だに限界の殻を破れない親友の姿を見て“怪物”は失望にも近い感情の冷や汗が額を流れてしまう。
だがその失望は一瞬にして打ち砕かれる事となる。
円堂「ウォォォォォッ!!!」
円堂は飛んだ。もう一度言う。叫ぶながら天高く飛び上がったのだ。
円堂「雷牙ァ!!!よーく見とけ!!!これが俺の…!世界への想いだァァァァァ!!!」
円堂は空中で左脚を天に向かって大きく上げると彼の背後に黄金のマジンが顕現する。
そして重力によって地面に引き寄せられる際に発生する自由落下速度をダイレクトに技の威力へと変換し拳を振り下ろす。
円堂「“怒りの鉄槌”!!!」
振り下ろされたマジンの鉄槌は白金の銀河を高次元から叩き潰しゴール前に大きなクレーターを発生させる。
円堂「どうだ雷牙!」
雷牙「ヘッ…!いい技だ!オメーの世界に対する想い…ビリビリ伝わったぜッ!」
雷牙は限界の殻を破った親友に対し感謝と喜びのサムズアップを送る。
そして…
ピッ!ピッ!ピッーー!!!
角馬『試合終了ーーッ!!!両チーム死力を尽くした選考試合は引き分けで幕を閉じたーーッ!!!』
円堂の覚醒と立向居の急成長により互いに一歩も引けない激闘は1-1の引き分けという形で幕を閉じた。
それでも彼らのプレーは確かに観客達にFFにも劣らない感動を与えたのは紛れもない事実だ。
それを証明するように観客席からは選手達の健闘を讃える惜しみない拍手と歓声が飛び交っている。
響木「見せてもらったぞ。」
円堂「監督…!」
響木「さて…、これで運命の選択をしなければならん。」
そう告げた響木は重い足取りでグラウンドから去って行く。恐らくこれからこれから真の日本代表に誰が相応しいかを吟味するのだろう。
円堂「なぁ雷牙…、俺たち選ばれるかな…?」
雷牙「な〜にガラにもなくシケた面してんだよ。もうココまで来たら運命の流れに身を任せるしかねェんだよ。落ちた時は素直に勝者讃える…それが一流ってもんだろ?」
円堂「それもそうだな!」
こうして長かった選考試合は終わった。…だが響木が姿を消してから再び彼らの前に現れるまでの時間はそれ以上に1分1秒が長く感じられた。
≪数時間後≫
響木「それでは日本代表最終選考通過者を発表する。」
あまりに長かった待ち時間を経て強化選手達はグラウンドの中心で横一列に並び神妙な面持ちと共に発表に備える。
気づけばあれだけ居た観客達もサッカー協会の職員から指示で雷門中から退去させられており、残念ながら日本代表チームの誕生をその目で見る事は叶わなくなる。
響木「…とその前にこれから日本代表チームの監督を紹介する!」
円堂「…え?」
一同『ええ〜〜〜!!!?』
円堂と雷牙…そして一部のメンバーは驚きを隠せない。それもそうだ、てっきり彼らは元イナズマイレブンのキャプテンであり、雷門を日本一に導いた実績を持つ響木が日本代表チームの監督を務めるものだと思い込んでいたのだから。
当の本人は選手達の反応を予想していたようで涼しい顔をしている。すると彼の隣に見知らぬ男性が現れた。
久遠「私が日本代表監督の久遠道也だ。よろしく頼む。」
突如現れた久道と名乗る男は少年サッカーに深い造詣を持つ彼らにも見覚えのない人物だ。
その寡黙そうな雰囲気と見る者に言葉を失わせてしまうような力強い目つきは瞳子以上の怪しい雰囲気を感じさせる。
雷牙「こいつァ意外だなァ。てっきり俺は響木監督が日本代表の監督になるとばかり思ってたが…。」
響木「答えは簡単だ。久遠なら俺以上にお前達の引き出してくれる男だからだ。それ以上でもそれ以下でもない。」
雷牙「さいですか。アンタがそう言うなら俺たちには何も言う事はねーよ。」
雷牙の納得の声により大きい動揺は収まるがそれでも不安を抱えた者は少なくない。
そんな中、久遠は表情を一切変えずに手に持っていた黒のバインダーを開き待ちに待った日本代表選手の発表を始める。
久遠「ではこれより日本代表選手の発表を始める。鬼道有人。」
鬼道「はい!」
久遠「豪炎寺修也。」
豪炎寺「はい!」
久遠「基山ヒロト。吹雪士郎。」
ヒロト/吹雪「「はい!」」
久遠「風丸一郎太。木暮夕弥。綱海条介。」
風丸/木暮/綱海「「「はい(おう)!」」」
久遠「土方雷電。立向居勇気。吹雪熱也。」
雷電/立向居/熱也「「「はい!/ウォッス!/ハッ!当然!」」」
久遠はまるで機械のように淡々と選手を発表していく。既に半分以上の名が呼ばれているが未だに雷牙と円堂の名はそこにはない。
久遠「不動明王。」
不動「へーい。」
久遠「宇都宮虎丸。飛鷹征矢。」
虎丸「はい!」
飛鷹「…! はい!」
久遠「壁山塀五郎。染岡竜吾。佐久間次郎。」
壁山/染岡/佐久間「「「はい(は、はいっス)!!!」」」
久遠「稲魂雷牙。」
雷牙「しゃあ!!!じゃなかった…はい!」
遂に“怪物”の名が呼ばれ日本代表のメンバーは17名となる。もうここまで来れば最後の1人が誰なのかは明白だ。
久遠「そして最後に。キャプテン、円堂守!」
円堂「はい!!!」
最後に呼ばれた円堂は誰よりも強く、大きな声で返事を行う。
久遠「以上。18名。」
遂に真の日本代表チーム…“イナズマジャパン”が結成された。選ばれた者達は歓喜の声をあげるが光がある所に闇があるように、喜びの裏には悲しみがある。
選ばれなかった候補選手達はある者は悔しさのあまり地面を殴り、またある者は悔しさのあまり涙を流し、またある者は己の力不足を実感していた。
響木「選ばれた者は選ばれなかった者達の想いを背負うのだ!分かったな!」
『はい!!!』
久遠「いいか?世界への道は遠く…そして険しいぞ。お前達にその道を進む覚悟はあるか?」
『はい!!!』
日本代表に選ばれた以上、選手達には夢破れた者達、そして日本全国民の想いを背負わなければならない。
その想いを背負うには並大抵の精神力では不可能だ。だがこの場に居る18人にはその想いを背負い世界と戦う器を持っている。
雷牙「見ていろよ親父…お袋…。絶対ェに世界の天辺に辿り着いてやる…!」
こうして各々の想いを胸にイナズマジャパンの世界への挑戦が幕を開けたのだ。
多分質問が来そうなんで先に言っとくとカットしただけで飛鷹の真空魔もどきはちゃんと発生してます。あと夏美のコトアール行きと冬っぺの登場は次回に回します。