イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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キャラデザに惹かれて名探偵プリキュアを見たんですけど普通におもろいっスね。脇がエロいし。
想像してたより子供っぽくないっていうか、緩い雰囲気だけど意外と締まった展開の数々に思わず見入っちゃいました。それにエッチだし。
最近、本格的に次回作の構想を練り始めてるんでこういう作品は参考になりますね。特にエロさとか。


決戦の舞台でのリベンジマッチ

ドンドンドンッ!!

 

 なんの因果によるものか円堂のスタメン落ちと雷牙のキーパー就任が奇跡的に重なった日の夜。未だに明かりが付いている監督室に礼儀も敬意もへったくれもない荒いノックが鳴り響く。

 

久遠「…入れ。」

 

雷牙「おっじゃましや〜す!今日づけでイナズマジャパンのキーパーに就任した稲魂雷牙で〜す!!」

 

 おちゃらけた様子で部屋に入る雷牙だが、態度とは裏腹にその目は明らかに笑っていない。

 だが久遠は彼を諌めないばかりか、予想通りだと言わんばかりの表情を浮かべている。

 

久遠「…お前が言いたい事は大体想像が付く。そんなにキーパーとして採用されたのが気に入らないのか?」

 

雷牙「えー!えー!全っっっ然!気に入らないっすね〜!100歩譲って今の守をスタメンから外すのは賛成でも俺をキーパーに採用する辻褄が合わないっす。ウチには立向居がいるでしょ?アイツの方が俺よりず〜〜っと強いっすよ?」

 

 確かに雷牙は雷門のサブキーパーとして試合に出場した経験はある。必殺技に乏しい彼は持ち前の瞬発力と反射速度、そして円堂に匹敵する根性で格上相手にもなんとか食い下がってきた。

 しかし所詮は日本でギリギリ通用するか否かの水準(レベル)。世界の平均が10点満点中9.5点とするなら雷牙のレベルは精々6〜7点がやっとだ、ここまで大きく点差が付くと最早根性ではカバーしきれない領域だ。

 

雷牙「それに…アンタも分かってるでしょ?韓国にはアイツらが居るって。」

 

 韓国代表チーム“ファイヤードラゴン”。希代の天才ゲームメーカー、チェ・チャンスウが率いる亜細亜(アジア)最強と名高い優勝候補筆頭チームだ。

 同じく優勝候補筆頭と呼ばれた“ビッグウェイブス”をも大差で下した今のイナズマジャパンなら余裕にも見えるかもしれないが、現実はそう上手くはいかない。

 

久遠「亜風炉照美、涼野風介、南雲晴矢の事か?」

 

 そう。ファイアードラゴンにはかつて雷門と激戦を繰り広げた強豪選手アフロディ、涼野(ガゼル)南雲(バーン)が在籍しているのだ。

 何故日本人である彼らが韓国の代表チームに在籍しているのかは永遠の謎だがそんな事はどうでもいい。

 重要なのは日本屈指のストライカー達が飾って日本代表に牙を剥いている事実なのだ。

 

雷牙「…分かってんじゃないっすか。」

 

久遠「敵の戦力を把握しておくのは監督として当然の務めだ。…稲魂、お前は彼らをどう見る?」

 

雷牙「強いっすよ3人とも。特にアフロディはマジヤバ、アイツの基礎スペックの高さは異常っす。昔から自分の事を“神”って自称してたけどそれに相応しい実力を身につけてるっすね。…まっ!俺ちゃんの敵じゃないっすけどね!ゲハハハッ!!……だ・か・ら、俺をフィールドプレイヤーに戻して立向居をキーパーにしやがれください。」

 

 鋭い眼差しで久遠を睨みつける雷牙。これが普通の監督ならば恐怖のあまり素直に彼の要求に従うところだろうが、生憎目の前の男は一癖二癖もある日本代表を率いる監督だ。そんな男がこの程度の脅しに屈する筈がなかった。

 

久遠「私の思考は常に日本の勝利に向けられている。お前をキーパーに任命したのも例外じゃない、何度も言うが私の指示に従えないのならそのユニフォームを返却するんだな。」

 

雷牙「それはフッツーに嫌っす。実力不足や怪我で降格ならまだしも理不尽な命令での離脱はごめん被るね。……ハァ〜〜…監督〜…せめて意図くらいは聞かせてくださいよ〜!いくら優れた戦略でも選手の理解と納得が釣り合わないと満足に戦えないですって〜!」

 

 確かに久遠は監督としては非常に有能だ。響木や瞳子を超える指揮能力に加え、選手ごとの能力を的確に見抜く分析力…今の日本に彼ほど代表の監督に相応しい人材は居ないだろう。

 

 …あまりに口数が少なすぎる事を除けば。

 

 そう。久遠は良く言えば背中で言葉を語る男、悪く言えば言葉足らずなのだ。それが影山の陰謀によるトラウマ故かそれとも昔からそうだったのかは分からないが、とにかく言葉が足りない。そのせいでオーストラリア戦前に危うくチームがバラバラになりかけた。

 響木の説明によりなんとか誤解は解け、本人も反省したのか以前よりかは多少マシにはなったがまだ足りない。

 

久遠「…いいだろう。ハッキリ言って今の立向居では彼らのシュートを止める事は出来ない。既に“ムゲン・ザ・ハンド”は世界で通用する必殺技ではないんだ。」

 

雷牙「…まあ薄々思ってた事だけど、そんなハッキリ言うゥ?せめてもう少しマイルドに言いましょうよ?アイツだって相当頑張ってあの技を習得したんすから。」

 

 伝説のキーパー円堂大介が考案し終ぞ実現する事が出来なかった最強のキーパー技“ムゲン・ザ・ハンド”。最強の二文字を冠するだけあり、一度繰り出してしまえば、ありとあらゆる状況に対応出来るその技は今まで幾度となく雷門のピンチを救ってきた。…そう今までは。

 

久遠「あらゆる状況に対応出来ても耐久力が十分でなければゴールは守れない。“ムゲン・ザ・ハンド”はまさにその典型例だ。」

 

 サッカーの世界は日進月歩、常に環境の変化と成長を繰り返してきた。60年前では無敵の必殺技として想定されていた“ムゲン・ザ・ハンド”も火力のインフレを重ねた現代サッカーではもはや対応力だけが取り柄の過去の遺物と化していた。

 

雷牙「でもねェ…少なくとも“シュートブレイク”くらいしかキーパー技を持ってない俺よかは全然マシっすよ?」

 

久遠「勘違いするな、私は立向居の実力を過小評価しているのではない。あいつの才能はピカイチだ、恐らく来年には円堂と肩を並べる日本屈指の名キーパーに成長するだろう。…だからこそ()()()()()()()。」

 

雷牙「????」

 

 立向居の強さを理解していながらも強いからこそ採用しないという理屈の通らない久遠の思考に対し、雷牙のIQ100(四捨五入)の脳みそでは即座にオーバーフローを起こし、頭上に『?』マークが浮かび上がらせるのが精一杯だった。

 

久遠「次の試合に立向居を採用したとしよう。あいつは円堂にも匹敵する実力を持つキーパーだ。選手達は安心して立向居に背中を任せて試合に集中する事が出来るだろう。だが…その信頼にこそ()が生まれるのだ。」

 

雷牙「普通に良い事じゃないっすか。」

 

久遠「駄目だ。今のイナズマジャパンはキーパーに頼りすぎている、特にDFはな。例え自分が抜かれても円堂なら止めてくれる。シュートブロックに失敗しても立向居なら止めてくれる。そんな意識は世界では通用しない、何処かのタイミングで意識改革を行わなければならない。それが韓国戦()だという事だ。」

 

雷牙「あー…つまり意識改善の為に初っ端からチームを“背水の陣”みてーなギリギリまで踏ん張らないといけねェ状況に追い込むって事っすか?…いや〜…やっぱ納得がいかねェっす。それなら俺じゃなくてもいいじゃないっすか。」

 

 久遠の説明を要約すると『立向居は強いが、まだ韓国のシュートを止められる水準に達していない。だけどそれなり以上に強いが故にチームの気が緩んでしまい、ディフェンスがおざなりになってしまう恐れがある。それでは韓国には勝つ事はできても世界には通用しないから韓国戦で直す』といったところか。

 彼の言葉を文字通りに受け取るならキーパーを担当するのは極論サッカー初心者の飛鷹でもいい。

 

久遠「いや稲魂でなければいけない。キーパー経験の無い者にこの役目を任せてしまえばチーム全体に多大なプレッシャーを掛けてしまう、強すぎるプレッシャーがパフォーマンスに与える影響は非常に大きい。キーパーとして弱すぎず強すぎない程度の実力を持つ稲魂だからこそ、チームに適度な緊張感を与えるのだ。そして…」

 

雷牙「そして?」

 

久遠「…いやこれは敢えて話さない。話してしまえば恐らく全てが無駄になるからな。」

 

雷牙「何すかそれ!?」

 

久遠「ならばこれだけは言っておこう。明日の韓国戦、私はお前が怪我でもしない限りどのような状態になろうがベンチに下げる事は絶対にない。文字通り一歩も動けなくなるまで死力を尽くして戦え!!…以上だ。」

 

 力強い語気で話を終えた久遠は再び無口になる。この1ヶ月の付き合いでこの状態になるとテコでも口を開かない事を理解している雷牙は打つ手がなくなってしまい、監督室を退室するしかなくなる。

 自室に戻る途中、多少口数が多くなっても相変わらず意図の分からない久遠の言葉は雷牙の脳内を幾度となく反復するが、いくら考えても答えは出ない。

 

雷牙「……だーーッッッ!!!もう考えるのはやめだ!やめ!雷牙さんは強い!雷牙さんは麗しい!雷牙さんはナイスガイ!俺に出来ねェ事なんてあんまり無い!!…だから見ててくれよ親父!お袋!明日の試合、絶対ェ韓国に勝って世界に行くからよォ!!んでもって目指すは世界一だ!ダーハッハッハ!!!」

 

 逆ギレ気味に思考を放棄した雷牙は深夜にも関わらず大声で高笑いを発する。その雷鳴の如き高笑いは個室の壁すらも突き破り合宿所内に鳴り響く。一通り高笑いを終え満足した雷牙はベットに入り満面の笑みで眠りにつく。

 

……………

…………

………

……

 

雷牙「さあさあ!皆さん!!今日も気張っていきやしょう!!……アレェ?リアクション無し?」

 

 FFスタジアムに向かう途中のキャラバンにて雷牙はチームメイトに向けて鼓舞を行うがどうもリアクションが悪い。彼らの顔をよく見ると目の下に薄い隈が浮かび上がっている。

 

雷牙「へいへ〜い?どうしたのよ皆さ〜ん!今日は決勝戦なんだぜ?もっとテンション上げていけよォ!ダーハッハッハ!!」

 

染岡「それだよ!それ!!稲魂の高笑いがうるさくてみんな寝れてねーんだよ!てかなんであんな夜遅くに大声で高笑いすんだよ!?」

 

虎丸「本当ですよー!俺なんか稲魂さんっぽい何かが夢の中に出てきたんですからねー!うへぇ…思い出しただけで吐き気がしてきた…。」

 

 おっと。どうやらチームメイトのテンションが低い原因はそこの金髪ナルシストにあるようだ。

 そりゃ壁の薄い個室であんな腹の底から高笑いをすれば音が漏れるのも当たり前だろう。シンプルにアホである。

 

雷牙「いやはや照れるな〜!夢にまで登場するなんて人気者はツラいぜ〜!な〜熱也〜?」

 

熱也「うるせぇ殺すぞコラ。」

 

雷牙「わ〜おシンプルな殺害予告。今時珍しいね〜。」

 

 よりによって試合当日に敵を作ってしまった雷牙だったが、幸か不幸か睡眠を妨げられた怒りが勝った事でチーム全体の緊張が吹き飛んでいる様子だ。

 これを雷牙の手柄と見るか、単なる偶然の結果論と見るかは人によるだろうが。

 

キキーッ!!

 

雷牙「ドワァッ!?なんだァ!?まさか古株のおっさんも寝不足なのか!?」

 

 目的地まで残り半分を切ったくらいのタイミングで、突如古株が急ブレーキを踏み車内が大きく揺れる。

 睡眠不足を心配する選手達だったが、彼の運転技術の高さはエイリア騒動で確認済みである。彼程の名ドライバーが急ブレーキを踏む事態となると余程の事態に違いない。

 その予感は的中し、キャラバンの前にゴテゴテに改造された自転車に跨る、人相の悪い少年達が立ち塞がっていた。

 

飛鷹「あいつは…!!」

 

???「久しぶりですねぇ!飛鷹先輩…。随分立派になったじゃないですかァ!“蹴りのトビー”と言われた不良の中の不良だったアンタが日本代表になるなんてねェ!!!」

 

飛鷹「唐須…!!」

 

雷牙「…いや誰よ?コイツ?」

 

飛鷹「奴の名は唐須幸人…。俺の…腐れ縁だ…!」

 

 飛鷹はかいつまんで唐須と自身の関係性を皆に話す。

 曰く自身は数ヶ月前まで“蹴りのトビー”の異名を持つ不良であり唐須は彼の舎弟であった事…。

 ある日の喧嘩中、響木に窮地を救ってもらい、その潜在能力を見込まれサッカーの世界へスカウトされて以降、舎弟の鈴目にグループのリーダーを任せ不良から足を洗った事…。

 

熱也「んだよ、所詮は格下相手にしかイキれねぇド三流のチンピラじゃねーか。」

 

唐須「あぁん?テメェ今何つった?俺がド三流だとぉ?チビ介が調子に乗ってんじゃねぇぞぉ!!!」

 

熱也「あ〜ん?言葉には気をつけろよド三流!!今の俺は気が立ってるんだ!!下手するとブラックホールが吹き荒れるぞ!!」

 

唐須「やってみろよ!!俺に勝つなんざ2万早ェって思い知らせてやらぁ!!!」

 

雷牙「いけ染岡!“にらみつける”だ!その鋭い眼光でヤツらの防御力を下げてタマキンを蹴り潰せっ!」

 

染岡「誰だこわもて○ケモンじゃ!!てか変な茶々を入れてんじゃねぇ!!ここで下手にトラブルを起こすと試合どころじゃなくなるぞ!」

 

 染岡の言う通りこのまま喧嘩沙汰に発展してしまえば間違いなく試合の出場権を剥奪されてしまう。

 既に警察を呼んでいるものの、到着まであと数分は掛かるだろう。この調子ではいつ手が出てもおかしくない。

 

飛鷹「…キャプテン、ここは俺に任せてください。俺がなんとか奴らを引きつけます…その間に会場に向かってください。」

 

円堂「なっ…!何言ってんだよ飛鷹!?そんなことすればお前は…!」

 

飛鷹「…俺は代表から降ります。そうすれば奴らをぶちのめしても皆さんに迷惑は掛からない。…それが最善の策なんです。」

 

円堂「…違うぞ…!お前も一緒に試合に出るんだ!!誰1人欠けちゃいけない!俺たちは全員でイナズマジャパンなんだ!!」

 

飛鷹「キャプテン…!」

 

 円堂の熱い想いに感化され飛鷹の中にあった荒ぶる衝動が次第に収まっていく。

 だが格下に暴力を振るう事でしか生きていけない空虚な心を持つ者達にはその言葉は響く事はなかった。

 

 不良達はこちらから暴力を仕掛けようとはしない。だが導火線に火を着ける事は出来る。

 大切な物を背負っているイナズマジャパンと何も背負っていないが故に失う物も無い不良とではこの状況においてどちらが有利であるかは明白だった。

 

 刻々と迫る試合開始時間…一向に進展しない状況…。もうイナズマジャパンの世界への道は小粒のように小さい障壁に阻まれてしまうのか…?

 

 

 その思考が脳裏をよぎった時だった…。

 

???「うぉりゃぁぁぁぁ!!!」

 

唐須「グハッ!?て…テメェは…!」

 

 突如、謎の人物からのキックドロップが、勝利を確信し油断し切っていた唐須の背に直撃し、無様に地面に這いつくばらせられる。

 そこに居たのは茶髪のリーゼントの小柄な少年を率いられたもう1つの不良グループだった。

 

飛鷹「鈴目…!それにお前らまで…!」

 

鈴目「行ってください飛鷹さん!!ここは俺たちが食い止めます…!だから…!ぐわぁ!?」

 

唐須「この野郎!!泣き虫弱虫の癖に俺に恥を掛かせやがったなぁ!!!飛鷹の前にテメェからあの世に送ってやらぁ!!!」

 

 泣き虫弱虫だと侮っていた格下に恥を掛かせられ一気に怒りが頂点に達した唐須は凄まじい形相で鈴目と呼ばれた少年をタコ殴りにし始める。

 その血走った目には理性と呼ぶべき物は存在しておらず、法に触れてでも奴の息の根を止める…そう感じさせる凄味があった。

 

飛鷹「馬鹿野郎!!お前らを見捨てておけるか!!俺も…!」

 

雷牙「やめろ飛鷹。」

 

飛鷹「離してくれ稲魂!!鈴目じゃ唐須には勝てない!このままじゃあいつは殺される!!」

 

雷牙「…ダメだね。アイツとオマエさんがどんな関係かは知らんが、あのチビ介はそれを覚悟の上でオメーを助けに来たんだ。アイツらに加勢してみろ、それはチビ介達の覚悟を踏み躙ると同義だぜ?」

 

飛鷹「くっ……!」

 

雷牙「もう覚悟決めな、オメーには立ち止まってる暇はねーんだ。そうだろ?」

 

 雷牙に促され飛鷹は蹂躙されている舎弟達に目線を移す。彼らの目には確かに並々ならぬ覚悟の火が灯っていた。

 全ては自分達の命を枯らしてでも尊敬する飛鷹征矢に栄光を掴み取ってもらう為に。

 

飛鷹「……分かった。行きましょうキャプテン。」

 

 舎弟達の覚悟に心を打たれた飛鷹は彼らの覚悟を踏み躙らない為に一瞥もせずにキャラバンに乗り込む。

 見知らぬ助っ人の犠牲により遂に決戦の地への旅路を再開したキャラバンは車体を軽く揺らしながら大急ぎで現場へ直行する。

 度々揺れる車内の中で飛鷹は改めて弱虫だった舎弟達の心を動かした代表の名とユニフォームに込められた責任の重さを実感するのだった。

 

♢♢♢

 不良の襲撃という想定外のトラブルに遭遇したものの、なんとか無事にFFスタジアムに到着したイナズマジャパンは全ての準備を済ませ、試合前最後のミーティングを行う。

 小さなホワイトボードに記載された韓国戦のスタメン一覧にはやはり円堂の文字はなく、本来彼が居るべきポジションには稲魂の二文字が刻まれている。

 

久遠「今回から化身を解禁する。全ての力を出し切るつもりで試合に挑め!!」

 

『はいっ!!』

 

円堂「……。」

 

 準備を終えたスターティングメンバー達がスタジアムに向かう中、円堂は珍しく浮かない顔をしていた。

 監督直々にキャプテン失格だと宣言されてから円堂はずっと今の自分に何が足りていないのか考えていた。

 食事の時も、入浴の時も、ベットの上に寝転がっている時も、生命活動を行う全ての時間を思考に費やしてもその答えは一向に見えてこない。

 

雷牙「な〜にシケた面してんだよ。もっとシャキっとしやがれ!オメーは円堂守だろーが!」

 

円堂「雷牙…。」

 

 顔を上げた先に居たのは何度見ても慣れない3Pカラーのユニフォームを着用した雷牙と右腕に紅のキャプテンマークを付けた鬼道だった。

 

鬼道「こういう時は上を見ろ、ドン底から這い上がるのがお前の得意技だろう?俺はお前がフィールドに戻って来ると信じている。だからそれまでキャプテンマーク(これ)は預かっておくぞ。」

 

 2人が交わした会話は一言二言。一見すると冷徹にも思われる程少ない会話だが、その裏には確かな信頼があった。いや…2人だけじゃない、言葉を交わさずともチームメイトは皆、信じているのだ。自分達が信頼する円堂守ならば必ず答えを見つけ出しフィールドに戻って来ると。

 

円堂「…へへッ!そうだな!頑張れ!イナズマジャパン!頑張れ!雷牙!今日のゴールはお前に任せたぜっ!!」

 

雷牙「応ッ!雷牙さんにズババーンと任せとけ!」

 

 答えを見出せなくとも今の自分にやれる事を精一杯やるだけだと判断した円堂は腹の底から声を出し、仲間達の応援に徹する。

 

 円堂の応援を背景に世界への挑戦の入り口であると同時にアジア最強のチームを決める為の決戦が始まろうとする。

 両チームは並列に整列し互いに顔を合わせる。そこにはかつての激戦を繰り広げたライバル達が真紅の衣を身に纏い力強い視線を送っていた。

 

アフロディ「まさかこんな形でFFのリベンジを果たせるとは思っていなかったよ。円堂君がこの場に居ないのは残念に思うが、力の限り戦おうじゃないか。今度は正々堂々とね。」

 

雷牙「上等ッ!!オメーがどれくれェ強くなったか見せてみやがれッ!!」

 

南雲「豪炎寺修也!テメェは俺の獲物だッ!!どちらが真の炎のストライカーに相応しいかここで決めようじゃねェか!!」

 

豪炎寺「フッ、望む所だ。だが…俺の炎はマグマよりも熱いぞ?」

 

涼野「風丸一郎太…あの日受けた屈辱は一度たりとも忘れた事はない。今日こそは私が勝ち、あの日の屈辱を上書き(アップデート)させてもらう!!」

 

風丸「そう簡単にいくかな?今の俺はあの時よりももっと強いぞ!」

 

 火龍の眷属と日の本を背負う戦士達は互いに獲物を定め、各々のポジションに着く。

 

 今回のイナズマジャパンのスタメンは以下の通り。

 

FW:豪炎寺、熱也、ヒロト

MF: 虎丸、鬼道(キャプテン)、吹雪

DF:風丸、壁山、土方、飛鷹

GK:雷牙

 

 雷牙がキーパーとして採用されている以外は特に言及する事はないオーソドックスな4-3-3で火龍を迎え討とうとする。

 それに対してファイアードラゴンは南雲、アフロディ、涼野の3人を最大限まで活かす攻撃的なフォーメーションを形成する。

 

雷牙「オメーら!!この試合に勝てば世界だ!!限界ギリギリまで踏ん張って、絶対ェに勝つぞッ!!!」

 

『応ッ!!!』

 

ピーッ!

 

チャンスウ「さて…まずはお相手のお手並み拝見といきましょうか…。」

 

 遂に始まった日本対韓国の世界への切符を懸けた決勝戦。先行を獲得したのはファイアードラゴン。

 開始早々、アフロディにボールが渡りイナズマジャパンに緊張が走る。

 

豪炎寺「悪いがこちらのキーパーは色んな意味で問題児なんでな、少し強引にボールを奪わせてもらう!!」

 

アフロディ「悪いけど僕の目的はその問題児と戦う事なんでね。少しズルしてでも突破させてもらうよ。」

 

 アフロディは右手を手に掲げ、静かな指鳴りを奏でる。その瞬間、彼の周囲に存在する全ての有機生命体は活動を停止させ、自由を手にするのは人智を超えた“神”だけとなる。

 

アフロディ「“極ヘブンズタイム”!」

 

 時が動き出すと同時に失われたズレとの辻褄を合わせるかの如く豪炎寺の背後に突風が発生し、為す術もなく吹き飛ばされてしまう。

 

豪炎寺(くっ…!種は分かっていても反応出来なかった…!今の俺にも通用するレベルまで鍛え上げている証拠…。これはそう簡単にはいかないな…!)

 

 豪炎寺はあっさりと突破を許してしまった事に悔しく思うがその顔には不思議と微笑が浮かんでいる。

 数多の激闘と特訓を経て強くなってもなお、更に上を行ってくれるライバルの存在に“感謝”の感情を抱いているのだ。

 

アフロディ「涼野君!」

 

涼野「南雲!」

 

南雲「アフロディ!」

 

 豪炎寺を突破したアフロディは南雲、涼野との見事なまでに調和の取れたコンビネーションを披露し、イナズマジャパンの包囲網を掻い潜って行く。

 

アフロディ「さて…生まれ変わったアフロディを見せてあげよう!」

 

 遂にゴールまでの道が開拓し終えたアフロディはその背に純白の翼を顕現させ優雅に宙へと飛び立つ。

 その美しくも荘厳な光景は見る者全ての脳内に“天使”の二文字をよぎらせる。

 

アフロディ「“極ゴッドノウズ”!!」

 

 純白の右脚から放たれる神の一撃。そのシュートはある時は雷門を蹂躙せし刃となり、またある時は侵略者から地球を守る盾となった。

 まさに神と悪魔の要素を内包した矛盾そのもの…刻々と変化する天使の翼の本質はまさに神のみぞ知る(ゴッドノウズ)だ。

 

壁山「俺たちが少しでも稲魂さんの負担を減らすっス!!だったぁ!!」

 

 だが人間達も負けていない。この試合を制し世界へ羽ばたく覚悟を決めた壁山の気迫は岩山よりも遥かに雄大な山脈を創り出し、天使の翼の行手を阻む。

 

壁山「これが俺の新技!“ザ・マウンテン”っス!!!」

 

土方「俺も居るぜ!!“スーパー四股踏みV4”!!!」

 

 壁山の“ザ・マウンテン”と土方の“スーパー四股踏み”は勇敢に天使の翼を受け止めるが惜しくも破られてしまう。

 だが本来の目的であるシュートの威力を大幅に落とす事には成功し、最後の仕事は守護神に任せる。

 

雷牙「サンキューオメーらァ!!最後の仕上げはこの雷牙さんに…!ズババーンと任せときなァ!!!」

 

 その身を挺して威力を削いでくれた仲間達の期待に応える為に雷牙は身体を大きく捻り右手に心臓を当てる。普段は身体の至る所に点在している気が全て心臓に吸収される。

 

アフロディ「あの技は…!」

 

 心臓に集中した気を一気に外部に放出すると天より白金の稲妻が降り注ぎ、雄々しくも美しき白金の“マジン”が姿を現す。

 

雷牙「“マジン・ザ・ハンドッッッ”!!!」

 

 “マジン”の顕現に成功した雷牙はその右手を勢いよく突き出すと、“マジン”も主人の動きと連動し白金の右腕を力強く突き出し天使の翼を受け止める。

 

雷牙「グギギギ…!!!負けて…たまっかよ…!今は…!俺が日本のキーパーじゃァァァァァい!!!」

 

 持ち前の気合いと根性で本来一歩もニ歩も開いていた筈の実力差を埋めた雷牙の右手はゴールラインに接触する直前の所で天使の翼を受け止める事に成功する。

 

王将『なんとォーーッッッ!!!絶対絶命のピンチの中、稲魂が繰り出したのはまさかの“マジン・ザ・ハンド”だーーッ!!!FF決勝戦での一幕をここで再現するとは一体誰が予想出来たでしょうかァァァァァ!?』

 

雷牙「さーてと…ここはいっちょ…大胆にいくぜッ!!」

 

 本来シュートを止めたキーパーに与えられる選択肢は近場の選手にパスを送る、もしくは前方に居る味方にボールを回すかの2択しかない。

 …だがこの男が選んだ選択はそのどちらにも属さない第3の選択肢だった。

 

雷牙「“オーバーサイクロンッ”!!」

 

 黄金の両脚から放たれた深緑の真球は背後に神の鳴る島に生息する動物達を率いながら大進撃が始まる。

 

涼野「行かせん!“ノーザンインパクトG4”!!」

 

 涼野は深緑の嵐を凍てつく闇で凍らせようと試みるが雷牙のストライカーとしての能力はイナズマジャパン内でも5本指に入る。

 元エイリア学園マスターランクチームを率いていた涼野の脚力を持ってしても撃ち返す事は叶わず互いに相殺され、ボールは天を舞う。

 

 それと同時にFFスタジアムの上空に炎のオーロラが彩られる。

 

豪炎寺「“爆熱スクリュー”!!!」

南雲「“アトミックフレアA”!!!」

 

 この展開を見越していた豪炎寺と南雲の2人はその右脚に爆熱の炎と紅蓮の炎を纏わせながら飛翔。

 試合前の宣告通り、どちらが真の炎使いに相応しいかを決めるべく、今自分達が出せる最高威力のシュートをボールに叩き込む。

 

豪炎寺/南雲「「ウォォォォォ!!!」」

 

 爆発的な雄叫びを上げ全ての力を出し尽くそうとする両者。その結末は…

 

王将『互角だァァァァァ!!!豪炎寺修也と南雲晴矢のパワーは全くの互角です!!両者の決着は惜しくも付かず!ボールは2人の脚を離れ落下してしまったァァァァァ!!!』

 

 互いに一歩も譲らない勝負は行方はボールの物理的挙動による逃走という形で有耶無耶となってしまった。

 卑怯にも逃げ出した五角形と六角形で構成された真球…偶然かはたまた必然か、その落下地点に居たのは…

 

熱也「ヘッ!ドンピシャだぜ!!」

 

 日本が誇る熱き銀狼・吹雪熱也だった。猛吹雪(ブリザード)の如き颯爽を可能とする脚から繰り出される一撃は誇張抜きに熊をも屠る。

 

熱也「いくぜ土方!!」

土方「応ッ!!俺らの力を見せてやろーぜ!!」

 

 それぞれ日の本の北海道(最北端)沖縄(最南端)を故郷とする戦士達……本来交わる筈のなかった運命が交差し合い、交差点から姿を現した稲妻の野獣がその牙を剥く。

 

熱也&土方「「“サンダービースト”!!!」」

 

ジョンス「“大爆発張り手”!!ハイ!ハイ!ハイ!ハイィィィ!!」

 

 韓国の守護神チョ・ジョンスは爆発を伴った張り手で野獣の牙と応戦するも、その程度の張り手では稲妻の牙を砕ける筈もなくゴールネットにシュートが突き刺さる。

 

ピッー!!

 

王将『ゴォーールッッッ!!!まだ試合開始から僅かにも関わらず、息を飲んでしまう程のハイレベルな激戦を制したのは…!我らがイナズマジャパンだァァァァァ!!!』

 

 日本の先制というサポーターですらも予想出来なかった展開にスタジアム内の熱は更にヒートアップし空気が揺れる。

 フィールドに立つある者は先制点を決めた英雄を褒め称え、またある者は様子見を兼ねていたとはいえ先制点を取られた事実に衝撃を受け、そしてある者は久々の強敵の出現に歓喜の笑みを浮かべていた。

 

チャンスウ「アレがイナズマジャパンですか…。フフフ…!久しぶりにスリルのある試合が出来そうだ…!」

 

 前半序盤にて先制点を獲得し、大きなリードを得たイナズマジャパン。だが彼らはまだ気づいていなかった…スタジアムを包む熱気が地脈に眠りし龍を目覚めさせていた事に…。




書いてる途中に知ったんですけど技進化の種類って無印とGOで違うんですね。ノーザンインパクトも無印はV進化でしたけどGOでは究極奥義になってるし。
イナヒロは特に統一する気はないんで分かれた場合は作者の匙加減で決めます。異論は認める。

〜オリ技紹介〜
♦︎マジン・ザ・ハンド(雷牙ver)
属性:山
分類:キーパー
進化系統:改→真→爆→極
≪概要≫
マジンさんの色が白金になった以外は他2人のと大差ないが一応記載。
実はぶっつけ本番の発動であり、“プラチナギャラクシー”での経験と試合前に立向居にコツと感覚を聞いてなんとか成功させた言ってしまえば付け焼き刃。
習得したてなのに加えて素の威力はオリジナルと変わらない為、シュートブロックが入った“ゴッドノウズ”をギリ止められるくらいの強さしかない。それも南雲や涼野のレベルのシュートとなるとブロックが入っても止めれるか怪しくなる。
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