イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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ぷいきゅあがんばえ〜(本来前話に書く筈だった内容を今回に回してるんでちょっと駆け足気味かも)


矛盾 調和 そして…

雷牙「痛っつつ…。悪ィな…せっかくのリードを無駄にしちまった…。」

 

風丸「そう気にするな、“ゴッドブレイク”の威力を大きく削げなかったDF(俺達)にも非がある。」

 

 アフロディが放った新必殺技“ゴッドブレイク”。その威力は凄まじくイナズマジャパンの精鋭DF達がブロックに入ってもなお威力は落ちる事なく、雷牙の“マジン・ザ・ハンド”すらもいとも容易く粉砕しゴールを奪ってみせた。

 それを示すかのように、雷牙の身体には目立った外傷こそは無いものの、まるで砲弾の爆風を至近距離で受けたかのような衝撃が残っている。

 

壁山「そもそもあんな凄いシュートを止めれるキーパーなんて、日本じゃ円堂さん(キャプテン)くらいしか居ないっス…。それなのに一体どうして監督は意地でもキャプテンを試合に出さないんスか…?」

 

 少なくとも雷牙には今の円堂に足りていない“モノ”を分かっている。だが本人の頭で考え、答えを導き出させなければ、韓国に勝ててもFFI本戦中にて必ず同じ問題に直面するだろう。

 ならば、多少荒療治でも言葉ではなくプレーでヒントを示すしかないのだ。それこそが雷牙に与えられた本当の使命でもある。

 

雷牙「…まあ、監督の言葉足らずなんて今に始まった事じゃねェだろ。ホレホレ!さっさとポジションに戻った。試合が再開すっぞ!」

 

壁山「は、はいっス!」

 

 壁山を元のポジションに戻らせた雷牙は深く深呼吸をし、高まった心臓の鼓動を落ち着かせる。

 

雷牙(コレは俺にとっても試練だ…。この試練を乗り越えた時…俺は更に成長出来る…そんな気がすんぜ…。…だからよォ、早く答えを見つけて戻って来いよォ…!守!)

 

ピッー!!

 

 イナズマジャパンキックオフから試合が再開し、開始早々チャンスウは“パーフェクトゾーンプレス”を発動しようとする。

 だがアフロディはそれを良しとせず、“待て”のハンドサインを送る。

 

チャンスウ「…まあいいでしょう。貴方がそうしたいのならば私は止めません。思う存分戦いなさい。」

 

アフロディ「感謝するよキャプテン。絶対に失望はさせない。」

 

 キャプテンから許可を得たアフロディは微笑を浮かべながら、静かに歩く。

 その姿はお世辞にも世界への切符を懸けたこの試合とは似つかわしくない、穏やかな足取りだった。

 

豪炎寺「何が狙いだ?今のハンドサインは明らかに“待て”の合図だろう?俺達が“パーフェクトゾーンプレス”の攻略法を見つけ出せていない今、なぜ止める?」

 

アフロディ「そう怖い顔をしないでおくれよ。僕はただ君達と全力で戦いたいだけなんだ。文字通り体力の底の底が尽きるまでね。ただ…円堂君が試合に出ない以上、僕達は化身を使う必要は無い…。けど…それは少し物寂しいだろ?だから…ここは1つ、出し惜しみ無しで戦おうじゃないか。」

 

 刹那、アフロディから凄まじい気迫が発せられ、黄金のオーラという形で可視化される。

 アフロディの身体から発せられた気迫は徐々に人型の形を成し始め、フィールドに機械仕掛けの“絶対神”が顕現する。

 

アフロディ「“絶対神 デウス・エクス・マキナ”!!」

 

 まるでローマ建築を彷彿とさせる、巨神兵としての荘厳さ、絶対神としての威厳を両立したその姿は見る者全てを魅了する。

 星の数ほど存在する神々…。その頂点に立つ存在が美の女神を媒介とし、フィールドに顕現したのだ。

 

 “絶対神”は身体の至る所に備え付けられた砲台を全て、かつて自身を下した“超英雄”の片割れに向け見下す。

 だが、目の前の男はその程度の脅しで怯む程、柔な修羅場は潜っていない。

 

豪炎寺「ハァァァァァッ!!!」

 

 先程のアフロディと同様に凄まじい気迫を発した豪炎寺は、その気迫を爆熱の炎へ変換し、新たな形へと変形させる。

 炎が消え去った先には、“絶対神”の砲台を溶解させ挑発染みた笑みを浮かべた“炎魔”が顕現していた。

 

豪炎寺「“炎魔 ガザード”!!!」

 

 豪炎寺のサッカーへの想いその物である“炎魔 ガザード”。その炎に触れた者は神すら灰と化す。

 

南雲「ヘッ!面白くなってきたじゃねェか!!豪炎寺は俺の獲物だったが予定変更だ!俺はヒロトを狩る!」

 

涼野「ならば私は風丸一郎太をいただくとしよう。生憎、もう1人の復讐対象はチームメイトなんでね。」

 

 アフロディに触発され、南雲と涼野もその身に宿りし“炎獣”と“氷帝”を顕現させる。

 

南雲「“氷壊炎獣 プロミネンス”!!!」

 

涼野「“氷結の炎帝 ダイアモンドダスト”。」

 

 かつて雷門を苦しめた2体の化身が、今度は韓国の矛として日本に刃を向ける。

 

ヒロト「流石に力を温存しておく暇は無いみたいだね!ハァァァァァ!!!」

 

風丸「なら俺達はその想いに全力で立ち向かうだけだ!!」

 

 覚悟を決めた日本の戦士達は、片や同郷の友と全力でぶつかり合う為に、片や因縁深いライバルと決着を付ける為に、純白と蒼黒の気迫が立ち昇らせ、その身に宿す戦士を形作る。

 

ヒロト「“創世神 ジェネシス”!」

風丸「“魔帝 ダークエンペラー”!!」

 

 “創世神”と“魔帝”が顕現した事で、この戦場に降臨した戦士の総数は6体となる。

 “絶対神”、“炎魔”、“創世神”、“炎獣”、“氷帝”、“魔帝”…。それぞれ姿形が異なる戦士達の集結したその光景は、もはやサッカーという枠組みを超え神話の中の聖戦だ。

 

王将『なんという壮絶な光景でしょう…!!つい数ヶ月前に発見されたばかりの新技術“化身”…!現時点では日本でしか目撃証言の無いその強大なパワーが一気に集まったその光景は…まさに“化身大戦”だァァァァァ!!!』

 

 壮絶な光景と実況によりスタジアム内の熱気は更にヒートアップ、まだ前半戦の途中であるにも関わらず、熱量だけならFF決勝戦にも勝っている状態だ。

 

アフロディ「いくぞ豪炎寺君!!」

 

豪炎寺「来い!アフロディ!!」

 

 遂に勃発した神話の聖戦。その内容は文字通り、次元が違った。

 第四の世界では“超次元”と評されるこの世界においても、常識という概念はちゃんとある。

 だがその常識を照らし合わせてみても、化身が織りなす攻防は常識の範囲外にあった。

 

 “絶対神”の集中砲火を“炎魔”の炎が一粒の灰も残す事なく焼き尽くし。

 

 破壊神の力を宿した双剣を携えし“創世神”に対し、“炎獣”は紅蓮の牙を剥きにしその身ごと喰らい尽くさんと襲い掛かる。

 

 “魔帝”と“氷帝”…それぞれ漆黒の風と凍てつく氷闇を操る“帝”は一歩も引かぬ魔力勝負を繰り広げる。

 

 両者の力は全くの互角。このような膠着状態に陥ってしまえば、それぞれのチームが持つ“+α”が勝敗を大きく分ける。

 しかし残念な事に今この瞬間において、その“+α”を有していたのは火龍の眷属達であった。

 

「「「「“パーフェクトゾーンプレス”!」」」」

 

鬼道「くっ…!」

 

 流石は“完璧(パーフェクト)”の名を冠した必殺タクティクス。あの鬼道の観察眼を持ってしても一向に攻略法を見出せない。

 

 これにより、遂にイナズマジャパンの防御網が崩壊し、一気にゴールまでの道が開かれる。

 現在ボールを保持しているのは南雲。恐らく雷牙は南雲の化身シュートを止める事は不可能だろう。だが雷牙の辞書に“逃亡”の二文字は無い。

 勝てないと分かっていても、勝負の前に諦めるのは彼のポリシーに反するのだ。

 

雷牙「ハァァァァァッ!!!来い!“レグルスゥゥゥゥ”!!!」

 

 “炎獣”に立ち向かう為に顕現した“覇王”は屈強な右腕に携えた大斧を目の前の獣へ向け、獲物を定める。

 

 しかし…次の瞬間、南雲の背に鎮座していた“炎獣”は紅の粒子と化し消え去った。

 

王将『な、なんとォーーッ!?せっかくのシュートチャンスにも関わらず南雲が化身を解除したぞォーーッ!?!?』

 

雷牙「おいおい!あんだけ化身でドンパチやっといて俺ちゃんだけは仲間外れかよ!?それともなんだ?もしかしなくても……俺を舐めてんのか?」

 

南雲「いーや、舐めてはねェよ。テメェは源田よりもずっと弱ェが、その爆発力だけは嫌という程理解してっからなァ…。だから…テメェは()()で破る。」

 

 刹那、南雲の後方から凍えるように冷たい威圧感が雷牙を襲う。このような威圧感を出せる選手はこの場において1人しか居ない。

 これにより嫌でもこの先の展開を察してしまった雷牙の額に一粒の汗が流れる。

 

南雲「気ィ抜くなよォ涼野ォ!!俺に合わせられなきゃ一気にオジャンだかんなァ!!!」

 

涼野「誰に物を言っている!!貴様の方こそ飲み込まれるなよ!凍てつく闇の冷たさになぁ!!」

 

 イナズマジャパンのマークから抜け出し合流した“紅蓮の闘士”と“冷却の賢人”は、南雲は右脚に紅炎を、涼野は左脚に氷闇を、それぞれがその身に宿す元素(エレメント)を吹き出させ1秒のズレすら無いツインシュートをボールに叩き込む。

 

南雲&涼野「「“ファイアブリザード”!!!」」

 

 コインにおける表と裏。

 

 天体における太陽と月。

 

 概念における天国と地獄。

 

 その評価に違わない、決して相寄る事の出来なかった両者の炎と氷は奇妙なバランスで混ざり合い、誰も見た事の無い新たな元素(エレメント)へと昇華され、雷牙へ襲い掛かる。

 

 イナズマジャパン(彼ら)にとって炎と氷のコラボレーションは特段珍しい事態ではない。

 寧ろ、この領域は彼らの方がプロフェッショナルとさえ言える。…だからこそ、その恐ろしさを誰よりも理解しているのだ。炎と氷…相反するエレメントが手を組んだ時の恐ろしさを…。

 

雷牙「コイツは…ちょっとヤベェかもな…!」

 

 “パラドックスブレイク”は“矛盾”と評し…

 

 “クロスファイア”は““調和”と評した…

 

 ならば“ファイアブリザード(今回)”は何と評するのが相応しいだろうか…?

 

雷牙「“レグルスゥゥゥゥ”!!!全力全開フルパワーだァァァァァッ!!!」

 

 圧倒的なパワーを誇る必殺シュートを前にし、本能で危機感を感じた雷牙は体力配分を気にせず化身パワーを最大まで高める。 

 不得意なポジションとはいえ“覇王”のパワーは圧倒的だ。その大斧から繰り出される一撃はマジンの右腕すらも容易く粉砕する。

 

 …だが、炎と氷の融合物は覇王の力を持ってしても手に余る代物だった。

 

雷牙「グッ…!!!グガァァァァ!!!」

 

ピッー!!

 

 この世に存在する、ありとあらゆる有機物を溶かす紅蓮の炎と、全ての無機物を凍り付かせる冷却の闇の化学反応(コラボレーション)

 あまりに混沌とした性質を持つ化合物は覇王の大斧すらも逆に粉砕したのだ。

 

王将『ゴォーール!!!稲魂の化身すらも南雲と涼野のコンビネーションの前には敵わないィィィ!!!これで得点は2-1だァ!!!遂にファイアードラゴンのリードを許してしまったァァァァァ!!!

 

 遂に逆転を許してしまったイナズマジャパンだが、ただ逆転されるだけならまだいい。

 そもそも今のイナズマジャパンのゴールを守るのはキーパーを不慣れとする雷牙なのだ、寧ろここまで失点を抑えてくれただけでも褒め称えるべきだろう。

 問題なのは吹き飛ばされた雷牙が未だに立ち上がってこない事なのだ。

 

豪炎寺「雷牙!大丈夫か雷牙!?」

 

雷牙「マイ…ペンライ…!まだまだ…元気100倍昇り調子よ…!」

 

 なんとか立ち上がり問題ないと言い切る雷牙だが、誰がどう見ても強がりなのは明らかだ。

 幸いな事に大きな外傷こそは無いものの、息は大きく乱れ身体も僅かに震えている。

 現時点での化身の使用回数は2回。日本屈指の体力を持つ雷牙からすればこの程度では息すら乱さない。にも関わらずこの消耗具合…恐らく雷牙は普段の倍以上の集中を強いられているのだろう。

 この調子では後半戦どころか前半戦を終える事すら怪しくなる。

 

雷牙「ハァ…ハァ…おいオメーら…。俺は絶対ェ…立向居とは交代する気はねー…からな…。俺が交代すんのはただ1人……守だけだ…!」

 

 世界への挑戦が懸かったこの試合においても、自身の我儘(エゴ)を貫き通そうとしている雷牙。

 だがその我儘は決して自分の為ではない。信頼する友の為の我儘なのだ。

 

鬼道「…分かった。そこまで覚悟が決まっているのなら俺達は何も言わん。体力が尽きるまで思う存分戦え!」

 

雷牙「サンキュー…!鬼道…!」

 

 皆の了承を得た雷牙はキーパーを続行し、試合に挑む。前半戦も残り時間はあと僅か、残り時間で最低でも1点はもぎ取らなければ後半戦は更に厳しい戦いとなるだろう。

 

 それでも試合はファイアードラゴンの優勢で進む。ハッキリ言って両チームの総合力にはそこまでの差は無い。

 イナズマジャパンのチームレベルを30とするのなら、ファイアードラゴンは31と言った所か。

 しかし、その『1』の差…つまり“パーフェクトゾーンプレス”の存在がイナズマジャパンを大いに苦しめていた。

 

「「「「“パーフェクトゾーンプレス”!」」」」

 

 完璧なる盾と混沌の矛を持つファイアードラゴンには隙が無い。イナズマジャパンが勝利を掴む為には矛と盾の攻略が必要不可欠なのだ。

 

雷牙(考えろ稲魂雷牙ァ…!今の俺じゃ化身技は元より、アフロディの“ゴッドブレイク”も、南雲と涼野の“ファイブリ”すら止められねェ…!んならここで新必殺技を編み出すしか道はねェ…!)

 

 だが今の雷牙には呑気に1から新必殺技を編み出す時間は与えられていない。となると既存の必殺技から発展させるしか方法はない。

 現時点で雷牙が習得しているキーパー技は“シュートブレイク”と“マジン・ザ・ハンド”の2つ。

 だが“シュートブレイク”はシンプルであるが故にこれ以上の発展は望めない。ならば選択肢は“マジン・ザ・ハンド”1択となる。

 

雷牙(なら“怒りの鉄鎚”か…?…いや、アレは“正義の鉄拳”の進化系…。多分、元の技を習得してねェと中途半端な完成度になる…!だーーッッッ!!!分かんねェ!そもそも俺、あんまり考えるのは得意じゃねェーんだよッ!!)

 

 IQ100を平均値ではなく最大値と勘違いし続け、円堂同様に赤点常習犯である稲魂雷牙は論理ではなく感覚でしか物事を覚えられない。

 故に雷牙の脳は深く考えるという状況を想定しておらず、複雑な思考を巡らせようものならすぐにオーバーヒートしてしまう。

 

雷牙(思い出せ…!今まで見てきた全てのキーパーを…!そこに必ずヒントがある…!)

 

涼野「何をボーっとしている!!今は勝負の最中だぞ!!」

 

雷牙「ーー!! ヤベェ!」

 

吹雪「させない!“スノーエンジェル”!」

 

 隙を突かれあわや失点の危機に瀕するが、ギリギリの所で吹雪のディフェンスが間に合いなんとか危機を脱する。

 

雷牙「サンキュー吹雪!助かったぞ!!」

 

吹雪「礼には及ばないよ!だって僕はお兄ちゃんだからね!」

 

熱也「うっわ…出たよ…兄貴のお兄ちゃんアピール…。こういう時は無視に限るぜ…。」

 

吹雪「ん〜?何か言ったかい熱也〜?」

 

 本人なりの配慮か、はたまた天然故の無自覚か、一瞬の油断が勝敗を分けるこの極限の状況の中でも自身のペースと笑顔を崩さない兄とそれにうんざりする弟。

 微笑ましい兄弟2人の掛け合いは、尊敬する父の故郷にて世界と戦っているであろう兄の顔を思い出させる。

 

雷牙(クッソ…なーんでこんな時にアイツの顔を思い出しちまうかなぁ…。)

 

 兄はとにかく泣き虫だった。

 

 特撮由来の正義感からよくトラブルに足を突っ込み。

 

 小石1つ落ちていない舗装された道でも転ぶ。

 

 その度に泣き喚く歳が同じ兄を慰めるのに苦労したものだ。

 

 ある同郷のチームメイトによれば現在も1人では夜のトイレに行けないらしい。

 

 父同様、日常生活では何1つ良い所の無い兄であったがサッカーをしている時だけは違った。

 

 兄はとにかく強かった。

 

 フィールドでは互角の自分ですらも、兄からゴールを奪えた事は両手で数えられる程度しかない。

 自分に不得意なキーパーを簡単にこなす兄に対して軽い嫉妬を感じた時もあった。

 

雷牙(そう考えると守もライトも凄かったんだな…。いつもこんな極限状況の中でバンバンシュートを止めてよォ…。)

 

壁山「ごめんなさいっス稲魂さん!後は頼むっス!!」

 

雷牙「ーー!! しゃあ!ズババーンと任せとけェ!!!」

 

 またしても防御網が破られ、紅蓮の闘士と冷却の賢人がその脚に炎と氷を纏わせる。

 

南雲「追加点だ!これで更に引き離す!!」

 

南雲&涼野「「“ファイアブリザード”!!!」」

 

 数分前に覇王の大斧を完膚なきまでに叩きのめした未知なる元素が再び、雷牙に目掛けて襲い掛かる。

 しかし、雷牙は化身を使おうとはしなかった。静かに身体を捻り心臓に気を集中させる…これは間違いなく“マジン・ザ・ハンド”の姿勢だった。

 

南雲「おい稲魂テメェ!んなしょぼい技を使うんじゃねェ!!!俺は全力のテメェを叩き潰してェんだ!!!」

 

 雷牙の選択に対し、手を抜かれたと解釈した南雲は顔に青筋を立てながら、激しい怒りをぶつける。

 だが、彼の怒りの炎は雷牙には伝わらない。今の雷牙に耳に届くのは自身を形作った過去からの思い出(メッセージ)だけだ。

 

ライト『キーパーの心得?うーん…考えたことないなー…。…強いて言うなら、ピンチの時になった時は「ボクには雷牙がいる」って思うくらいかなー?理由はわかんないけど、そう思うと力が湧いてくるんだー。ビリビリ〜ってねー。』

 

雷牙「ケッ、『俺が居るから』…か。アイツらしい答えだぜまったく…。けど…今なら分かる…!俺には仲間が居る…!そんで…海の向こうで待ってるライトが居る…!」

 

涼野「何をブツブツ言っている!!気でも触れたか!!!」

 

雷牙「ハッ!!んなわけねぇーだろ!!オメーらに負ける気がしねェって言ったんだよッ!!!“獅風迅雷・限界突破”!!!」

 

 何かを悟った雷牙は不敵な笑みを浮かべると、一気に気を放出する事でその身に金色のオーラと蒼の稲妻を纏い己の限界の壁を超える。

 

涼野「ここで“獅風迅雷”だと…!?無駄だ!多少強化した所で“マジン・ザ・ハンド”では我々のシュートを止められない!!」

 

雷牙「1体で止められねェならよォ…!2()()()()()ならどうだァァァァァッ!!!」

 

 “怪物”の覚悟に呼応するかの如く、天より白金の稲妻が轟き……

 

 

 

 

 地より漆黒の旋風が吹き荒れる。

 

雷牙「“風神雷神ッ”!!!」

 

 “怪物”の背に顕現した二対のマジンはそれぞれの屈強な腕を振り翳すと、奇妙なバランスで融和していた未知なる元素を再び炎と氷に分離させる。

 分離した炎と氷は二手に分かれマジン達に襲い掛かるも、マジン達は怯む事なく力強く利き腕を突き出し、漆黒の風神が紅炎(ファイア)を受け止め 白金の雷神が氷闇(ブリザード)を受け止める。

 

雷牙「しゃおらァァァァァ!!!」

 

 数秒の拮抗の末に炎と氷は握り潰され、本体たるボールは“怪物”の両手に収まる。

 

王将『止めたァァァァァ!!!稲魂が新たな必殺技を編み出し“ファイアブリザード”を止めてみせたぞォォォ!!!これぞ“サッカーモンスター”!この男に我々の常識は通用しなーーいッ!!!』

 

アフロディ「この土壇場で限界の殻を破ったか…。フッ、それでこそ稲魂君だ。」

 

 遂に掴んだ絶好のカウンターの機会。ここを逃せば前半戦は終わり、苦しい後半戦を迎える事となる。

 文字通り運命の分かれ道。全ての運命は鬼道の戦略眼に掛かっている。

 

雷牙「後は任せたぜェ…!!オメーらァァァ!!」

 

 風丸へボールが渡りイナズマジャパンの攻撃が始まる。当然、ファイアードラゴンはボールを奪うべくその脚に炎を纏わせ風丸に襲い掛かるも、風神の結界が周囲を包み込む。

 

風丸「“風神の舞”!!!」

 

ウンヨン「どばぁ!?」

 

 ディフェンスを突破した風丸は即座にボールを前方へ回し鬼道へ繋ぐ。だが既に火龍の眷属は鬼の周囲を取り囲んでいた。

 

チャンスウ「無駄です!貴方にはこのタクティクスを破る事は出来ません!」

 

鬼道「どうかな?やってみなくちゃ分からないだろ!」

 

 勇ましく啖呵を切る鬼道だが、実際には未だにこのタクティクスの攻略を見つけ出せていない。

 それでも鬼道は龍が牙を剥く直前まで思考を続ける。彼の辞書にも“諦める”という言葉は存在しないのだ。

 

久遠「今までの特訓を思い出せ!!そこに蟻地獄を破る答えがある!!」

 

 唐突に投下された久遠からの謎の激励。一見すると何の変哲もないただの根性論だが、久遠は根性論とは対極に位置する人間である。

 そんな彼がここに来てありきたりな根性論を押し付ける筈がない。必ずそこには意味があるのだ。

 

鬼道「蟻地獄…俯瞰…空…。ーー!!そうか…!分かったぞ!このタクティクスの弱点が!!」

 

 久遠の激励により、これまで各地に点在していた謎が1つの線で繋がり、遂にタクティクスの突破口を見つけ出した鬼道。

 だが今の彼にはとにかく時間が無い。既に龍の牙は鬼道の脚を捉え今にも襲い掛かろうとしている。

 ここでボールを奪われてしまえば雷牙の決死の努力は全て水の泡と化す。

 

 かくなる上は…

 

鬼道「皆!俺を信じて飛べぇ!!!」

 

 鬼道は必要最低限の言葉だけを外部へ抽出した。チーム内に困惑すらも招きかねないシンプルにも程がある指示。

 しかしイナズマジャパンは飛んだ。各々が到達出来る最高地点まで力の限り。

 彼らには多くの言葉はいらない。チームの司令塔たる鬼道が『飛べ』と命令するのなら、彼らはその言葉に従うだけだ。

 

鬼道「ヒロト!」

 

ヒロト「熱也君!」

 

熱也「兄貴ィ!」

 

 地上にある道が封じられているのならば、空中に新たな道を作ればいい。

 その読みは的中し、空に作られた道は次々と蟻地獄を回避しパスを繋ぐ。

 

鬼道「これが俺達の新たな必殺タクティクス!“ルート・オブ・スカイ”だ!!」

 

 前代未聞の三次元上で繰り広げられるパス回し。その様は差し詰め、生者を引き込む蟻“地獄”に対しての“天国”へ繋がる救済の蜘蛛の糸と言ったところか。

 

チャンスウ「まさかこのような方法で“パーフェクトゾーンプレス”を破るとは…!」

 

 性質上、発動の際に多数の人員を割かなければならない必殺タクティクスの弱点がここで響く。

 最低限の人員しか残されていないファイアードラゴンにイナズマジャパンの攻撃を止められる筈もなく、遂にゴール前に日本最強のストライカーが到着する。

 

豪炎寺「皆が繋いでくれたこのボール…!絶対に無駄にしない!いくぞ!虎丸!!」

 

虎丸「はい!豪炎寺さん!ズババーンと決めちゃいましょうか!!」

 

 チーム内最年少の若き天才児はその身に猛虎の魂を宿し、皆の想いが込められたボールを天高く上げる。

 

虎丸「タイガー…!!」

 

 猛虎の雄叫びは天に顕現せし灼熱の魔神へ届き、友の思いを引き継いだ最強のストライカーの右脚と魔神の拳がボールに叩き込まれる。

 

豪炎寺「ストォォォォム!!!」

 

 猛虎の雄叫びと魔神の一撃は絆の力で共鳴し合い掛け合わさる事で新たな必殺技へと姿を変え、韓国の守護神へ襲い掛かる。

 

ジョンス「“大爆発…何!?グォォォォ!!!?」

 

ピッー!!

 

 ジョンスの実力を10点満点中9とするのならば、今の豪炎寺と虎丸の合計点数は甘く見積もっても20点満点中200。

 チーム全員の想いを背負ったシュートを1人で受け止められる筈もなく、ジョンスの身体を巻き込みゴールネットを叩き込まれた。

 

ピッピー!!

 

王将『ゴール!ゴール!ゴォォォル!!!豪炎寺と虎丸が追加点をもぎ取ると同時に前半戦が終了ォォォォ!!!これで両者の得点は2-2の同点!これはますます展開が分からなくなったぞォォォォ!!!』

 

……………

…………

………

……

 

 突然だが画面の前の皆様に少し先の未来をお見せしよう。

 

 ハーフタイムを終えた国の名を背負う戦士達は残り30分で全ての力を出し切る為に戦場へ並び立つ。

 

 そこに彼は居た。

 

 指定のライン以外の髪を全て刈り上げた独特なヘアースタイル。

 

 自分以外の全ての人間を見下すように冷たい瞳は見る者全てに恐怖を与える。

 

 薄ら笑いを浮かべながら、悪意の籠った皮肉しか抽出出来ない口を開く。

 

不動「せいぜい俺の足を引っ張らないでくれよ?き・ど・う・クン?」

 

鬼道「黙れ。俺は貴様の指図など受ける気は無い…!」

 

 人の形をした悪意は怨敵の抵抗すらも鼻で笑い飛ばす。

 

 遂に切られた52分の1のカード。

 

 伏せられた状態で提出されたこのカード…はたしてその正体は

 

 チームを勝利に導く切札(ジョーカー)か…?

 

 それとも混沌を齎す鬼札(ババ)か…?




ぷいきゅあがんばえ〜(なんで化身じゃ“ファイブリ”止めれなかったのに“風神雷神”で止めれんの?ってツッコミ来そうなので解説しとくと、フィールドプレイヤー用の化身でのノーマルキャッチとキーパー技だったら後者の方が威力が高いように設定してます(化身技で撃ち返さなかったのは単純に体力温存の為)。
参考までに今の雷牙のキーパー技構成を強い順に載せておくと
風神雷神>化身>マジン・ザ・ハンド>シュートブレイク>ノーマルキャッチ
って感じですかね。“風神雷神”は威力・燃費効率の両方で化身を上回ってます。)

〜オリ技紹介〜
♦︎風神雷神(雷牙ver)
属性:無
分類:キーパー
進化系統:改→真→爆→絶
≪概要≫
追い詰められた雷牙がライトの“雷・トーガ”を参考に土壇場で生み出した新必殺技。モーションはマジンさんのデザインが無印準拠となった以外はアレスの方と変わらない。
実は威力自体は甘く見積もっても“正義の鉄拳”以上“ムゲン・ザ・ハンド”未満程度しかないが、“ファイアブリザード”のようなオーバーライド技を強制的に解除するという隠し効果があり、既存の技を掛け合わせたタイプの連携技相手には強力なメタとなる(なおオマージュ元の“雷・トーガ”も同様)。
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