雷牙「残り時間は10分…。
豪炎寺「フッ、お前らしい台詞だな。だが…今だけはそれに同意だ!」
サポーター達の脳裏に“敗北”の二文字がよぎってしまうような絶体絶命のピンチに陥っても、イナズマジャパンの侍達は笑みを浮かべていた。
彼らにとってここまで追い詰められる事はそう珍しい事ではない。いつだって、絶対絶命のピンチを乗り越える事で成長し、強敵に打ち勝ってきた。
それは今回だって変わらない。目の前に強敵が立ちはだかるのなら、持ち前の気合いと根性で乗り越えるだけだ。
円堂「ここまで来たらもう勝つっきゃない…!燃やそうぜイナズマ魂…!みんなァ!!チームワークで逆転だァァァ!!!」
「「「「うぉおおおおおッ!!!」」」」
円堂の激励を受け、イナズマジャパンは最後の戦いに挑む。
これにより最高潮に高まったスタジアムの内の空気は、サポーター達の声援により激しく揺らされ軽い地響きが発生する。
冬花「凄い…。守くんの一言でチームの空気が変わった…!」
音無「そうです!これぞ円堂さんですよ!皆さーん!頑張ってくださーい!!世界への道はあと一歩ですよー!!」
木野「けど…このままで大丈夫かしら…?」
円堂が迷いを振り切り、チームの士気も際限なく上がっているこの状況下でも、木野は不安の声を口にする。
別に彼女はイナズマジャパンの実力を疑っているわけではない。ただ…彼らを良く知る彼女でも不安を感じずにはいられない危険分子がフィールドに居るのだ。それも
響木「鬼道と不動か…。」
木野「はい…。ハッキリ言って、私は鬼道君と不動君がまともに連携を取れるとは思えません…。現に不動君が入ってから明らかに鬼道君の動きが悪くなってます…。」
円堂とは異なり、鬼道は不動があそこまで力を求め、非情になれる理由を知らない。例え把握していたとしても、憎き影山と手を組んでいたという前例がある以上、彼の蛮行を絶対に許さないだろう。
それにより生じた大きな亀裂は確実に鬼道のプレーに大きな悪影響を及ぼしている。
ただでさえ、指揮系統が2つありチームが混乱しやすい状況の中、主旋律を司る鬼道が本調子を出せなければ瞬く間にチームは崩壊してしまうだろう。
如何にジョーカーとして温存していたとしても、不動を投入するという事はそれだけリスクの大きい事なのだ。
だがそれを分かっていない久遠ではあるまい。
久遠(既に下地は出来ている…。あとは2人の間を繋ぎ止める“ピース”を嵌めるだけ…。円堂、これは最後の試練だ…。お前が“ピース”になれなければ日本は世界に羽ばたけない…!)
試合内外にて全ての下準備を終えた久遠は、最後の仕上げを自らが見出したキャプテンに任せ、ただ静かにその時を待つ。
ピッー!!
鬼道「稲魂!豪炎寺!お前達はアフロディ達の攻撃に備えて中盤で待機していろ!俺達で何とか取り返す!」
不動「おいおい!そんな日和った指示じゃ勝てる試合も勝てねぇだろーが!おいクソライオン!テメェだけは上がれ!下がるタイミングは俺が指示する!」
雷牙「へいへ〜い?雷牙さんの身体はこの世に1つしか無いんだぜ〜?んなバラバラの指示を出されちまったら俺の脳がオーバーヒートしちまうよ〜。」
木野の不安が的中し、案の定鬼道と不動の指示は噛み合わずチームを混乱させる。
1秒すらも惜しいこの状況において、僅かな混乱は致命的な命取りとなる。
チャンスウ「炎の龍よ!牙を剥け!!“パーフェクトゾーンプレス”!」
鬼道「くっ…!」
その隙を見逃さなかったチャンスウは即座に鬼道を囲み“パーフェクトゾーンプレス”の体制に入る。
だが、既にそのタクティクスは鬼道によって破られている筈だ。例え、先ほどと同じ手法で“ルートオブスカイ”を防ごうとしても、ボールにスピンを掛ければ簡単に破れる。
つまる所、もう“パーフェクトゾーンプレス”はまともに機能していないのだ。
しかし鬼道は動かない…。いや、動けなかった。
チャンスウ「おや?おかしいですね?貴方は既にコレを破っている筈だ。にも関わらず何故動かないのですか?まさか…不動明王と
鬼道「ーー!! 違う!俺は…!」
チャンスウ「隙ありィ!」
息を荒くして必死に否定する鬼道だが、その反応こそが答えである。
詳細は知らないまでも、ここまでのプレーで鬼道と不動の間に深い確執がある事を悟ったチャンスウの挑発は見事に功を成し、折れた筈の龍の牙は再びボールに喰らい付く。
不動「チッ!半端な仕事しやがって!DF!韓国のFWにマークを入れろ!!」
一瞬にして失点の危機に陥ったイナズマジャパンだったが、不動の巧みな指示により何とか防御の体制を整え、互角の攻防を繰り広げる。
チャンスウ「ハァ…。“パーフェクトゾーンプレス”を破ってみせた際は尊敬の念を抱きましたが、どうやら私の思い違いだったようですね。一瞬のミスが命取りになる試合においても幼稚な私情を持ち込む貴方は下の下…そう、三流以下の司令塔ですよ。」
余程、鬼道の雑念に失望したのだろう。チャンスウは試合を眷属達に任せ、溜め息混じりに鬼道を愚弄する。
帝国時代から変わらない高いプライドを持つ鬼道にとって、他者からの愚弄は何よりの屈辱だ。
だが今この瞬間においてはチャンスウの言葉を言い返す事が出来なかった。
チャンスウ「もう貴方に興味はありません、今の私の脅威は不動明王1人です。ではさようなら。」
遂には鬼道の目すらも見ずに背を向け、残る脅威に集中するチャンスウ。
鬼道は悔しさのあまり拳を強く握り締め己の不甲斐なさを恥じる事しか出来ない。
鬼道(ここが…俺の限界だと言うのか…!)
佐久間「鬼道…。」
そこからの試合はイナズマジャパンの防戦一方だった。“パーフェクトゾーンプレス”を破ってもなお、司令塔の噛み合いの悪さにより僅かに連携が乱れてしまったイナズマジャパンでは、組織的に動くファイアードラゴンの防御網を破る事が出来ずに時間だけが過ぎていく。
アフロディ「“ゴッドブレイク”!」
円堂「“怒りの鉄鎚V2”!!」
円堂の活躍により何とかこれ以上の失点は回避しているものの、常に“カオス”の降臨を阻止しなければならないプレッシャーは確実にフィールドプレイヤー達の気力を削っていた。
鬼道「円堂ッ!俺にボールを回してくれ!絶対に俺が活路を開いてみせる!!」
円堂「分かった!任せたぞ鬼道!」
円堂からボールを受け取った鬼道に、火龍の眷属達がゾーンプレスを仕掛ける。
必殺技ですらないごく普通の戦術であるが、チャンスウの指揮の元で繰り出されれば十分すぎる程の脅威と化す。
それでも鬼道は紙一重の所で躱わしてみせるが、体力が底を尽き掛けている今の状態ではそう長く持つ筈がない。
鬼道「俺はこんな所で終わらない!!お前に勝って俺がアジア最強のゲームメイカーだと証明してみせる!」
チャンスウ「フハハハ!!その心意気だけは買いますがやはり貴方では私には敵わない!!」
鬼道の心の底から叫びすらも、無意味だと高笑いと共に断じるチャンスウは最後のトドメに自らがプレスを仕掛け、ボールを奪い取ろうとする。
その刹那…
不動「じれってぇんだよ!テメェは!!」
鬼道「なっ!不動!?」
突如、味方である筈の不動が鬼道に襲い掛かり足元のボールを奪おうとする。
突然の不動の蛮行に驚きつつも、ギリギリの所で反撃に転じた鬼道の右脚と不動の右脚がボール越しに衝突し合い、ボールを中心に闇色の波動が発生する。
不動「チッ!」
鬼道「クッ!」
波動の衝撃によりボールはフィールドの外へ逃げ出し試合が中断する。漸く状況を飲み込んだ鬼道は、強い憎しみが籠った眼差しで不動を睨み付ける。
鬼道「貴様…!遂に本性を表したか…!」
不動「何寝言言ってんだぁ?寧ろ感謝して欲しいくらいだぜ!俺はテメェに協力してやったんだからよぉ!!」
鬼道「協力だと…!あんな邪魔をしておいて…!」
不動「悔しかったらやり返してみろよ!まっ、お上品な鬼道クンには無理だろうがなぁ!!」
鬼道「貴様ァ!!!」
自身の蛮行を悪びれる所か逆に煽り返す不動に、遂に怒りが爆発した鬼道は拳を振り上げ不動に殴り掛かる。
だが、その拳が不動の顔面を捉える事は無かった。
その代わりにボロボロのキーパーグローブが鬼道の拳を受け止める。
円堂「ダメだ鬼道。
鬼道「放せ円堂!お前も知っているだろう!こいつは勝利の為なら手段を問わない悪魔なんだ!チームメイトすらも踏み台しようとする奴とは共に戦いたくない!!」
円堂「…確かに不動とは色々あった。でも今はチームメイトだろ?サッカーはチーム全員を信頼し合わないと勝利は掴めないぜ?」
鬼道「円堂…。」
円堂の言葉を受けて漸く我に帰った鬼道は大人しく拳を納め項垂れる。
不動「言うねぇキャプテン。じゃあなんだ?あんたは俺を心の底から信じるってわけk「ああ、信じるさ。」…何?」
自身を助けてくれた恩人すらも小馬鹿にするような笑みで皮肉混じりの質問を行う不動に円堂は即答する。
流石の不動もまさか即答されるとは思っていなかったようで、困惑半分、呆れ半分の感情が入り混じったなんとも言えない表情で唖然としている。
円堂「俺は頭が良くないから、不動が何を考えてあんなプレーをしたのかはまだ分からない。それでも俺は鬼道も不動も同じ勝利を目指して戦っているってことは分かってる!なら理由はそれだけで十分だ!俺は2人を信じる!」
そう答える円堂の表情はまるで太陽ように眩しかった。その瞳には嘘偽りの無い純粋な光だけが灯っている。
彼は本気で信じているのだ。不倶戴天の敵である鬼道と不動が手を組めば、必ず勝利を掴む事が出来ると。
ゴール前からチーム全体を俯瞰し、仲間達に120%の信頼を置く。それが悩みに悩み抜いた末に出したキャプテンとしての
鬼道「ククク…!ハハハッ!!!俺の完敗だ円堂。確かに俺はずっと過去の因縁に囚われ
円堂の答えを聞いた鬼道は何故か笑いが止まらなかった。これがつまらない意地とプライドに拘っていた自身への嘲笑なのか、それとも円堂のサッカーバカっぷりに呆れた故に笑いなのかは分からない。
しかし、腹の底から笑い声を上げる鬼道の顔はとても晴れやかな物だった。
鬼道「もう俺は迷わない!“過去”すらも乗り越え“未来”を掴んでみせる!だから不動…今だけは共に戦え…!」
不動「へぇ?言うようになったじゃねぇか!鬼道クンよぉ!!」
遂に吹っ切れた鬼道は、今この瞬間だけは不動をチームメイトとして認め、共闘する覚悟を決め最後の戦いに挑む。
アフロディ「…キャプテン、悪いが次のプレーで“カオス”を使う。」
明らかに変化したイナズマジャパンの空気。それに対し、アフロディは非常に強い危機感を感じ取っていた。
チャンスウ「何故です?今は我々がリードしている状態です。“カオス”を使うのは万が一リードを埋められてからでも遅くはないでしょう?」
アフロディ「僕はこの中で誰よりも円堂君を理解している。円堂君の激励を受けたイナズマジャパンは先ほどとは別物のチームになっている筈だ。だからペースを乱される前に更にリードを広げておかなければならない。」
かつてこの地で雷門と激戦を繰り広げ、時には共闘をしたアフロディだからこそ円堂守という選手の恐ろしさを理解していた。
彼に率いられたチームは敗北率99%の状況から、1%…時には0.01%の奇跡を掴み取り、数多の格上相手に勝利を収めてきた。
だからこそ、1点差程度リードなど何の意味も無い。ここで更なるリードを広げイナズマジャパンを
チャンスウ「…分かりました。“カオス”の使用を許可しましょう。」
将に将たる器も兼ね備えているチャンスウはアフロディの意見を聞き入れ、最後の戦いに挑む。
ここからが本当の勝負だ。
ピッー!!
ファイアードラゴンからのスローインで試合が再開し、韓国は再び“混沌神”を降臨させるべく、アフロディにボールを集めようとする。
しかし、チャンスウ…いやこの会場に居る全ての人間はイナズマジャパンの戦略に度肝を抜かれる事になる。
チャンスウ「馬鹿な…!?」
王将『こ、これはどういう事だァァァ!?再開同時にイナズマジャパンはゴール前に円堂、稲魂、豪炎寺だけを残して全員上がって行ったぞォォォ!?』
そうイナズマジャパンが選んだ策は全戦力を投入したカウンター。今や日本のゴール前に残っている選手は僅か3名。
その3人に全ての希望を託す…それが鬼道と不動が考え出した最後の秘策だった。
アフロディ「なるほど…ここまで来たら小細工は無しってわけかい?」
円堂「いくぞ雷牙!豪炎寺!ここが正念場だ!!!」
皆の希望を託された守護神達はその身に宿し英雄達を顕現させ、その心を1つにする。
雷牙「天丼ッ!!!」
豪炎寺「カツ丼!」
円堂「親子丼!!!」
“怪物”直伝の心を1つにする魔法の言葉により、“魔神”、“覇王”、“炎魔”は三色の螺旋を描き混ざり合い、光の中から英雄を超えた英雄…“
円堂&雷牙&豪炎寺「「「“稲妻の超英雄 イレブン”!!」」」
圧倒的な輝きを放つ“超英雄”を前にしても混沌の使者達は怯む事なく、その身に宿し神々を顕現させ闘志の炎を最大限に燃やす。
アフロディ「君達に勝って!」
南雲「世界の舞台に羽ばたき!」
涼野「栄光を掴むのは…!」
アフロディ&南雲&涼野「「「僕(俺/私)達だ!!!」」」
“超英雄”に勝つという意思の元、心を1つに重ね合わせた三銃士は、“絶対神”、“炎獣”、“氷帝”のオーラを1つに混ざり合わせ、光の柱の中から混沌に塗れた楽園の主が降臨させる。
アフロディ&南雲&涼野「「「“混沌神 カオス”!!!」」」
フィールドに顕現した“超英雄”と“混沌神”。
人智を超えた超越者達が目線を合わせ対峙するその様は、まさに神話の世界の聖戦。
その美しくも荘厳な光景を前に、この場に居るサポーター達は熱狂する事すらも憚られてしまい、戦場を静寂が包み込む。
混沌の使者達はその脚に“神滅”、“紅炎”、“氷闇”を宿し、空というキャンパスに『*』の軌跡を描き、“混沌神”の三又が突き刺す。
「「「“カオスユートピア”!!!」」」
混沌の楽園その物が襲い掛かる中、“超英雄”はその右手に膨大な量の気を集中させ、力強い動作で右腕を突き出す。
それに呼応するように右手から巨大な“
「「「“ネクサス・ザ・ハンドォォォ”!!!」」」
“
前代未聞の合体化身同士による技と技のぶつかり合い。さしもの“超英雄”も自身と同質の力を持つ“混沌神”の一撃を簡単には受け止められる物でなく、神の手に亀裂が入り始める。
円堂「負けるもんか…!
親友に背を支えられる円堂は力強く一歩を踏み出す。
その脳裏に浮かぶのは先日真の日本代表の座を賭けて死闘を繰り広げたライバル達の顔。
もうその背に背負っているのは仲間達だけの想いではない。
円堂「選ばれなかった人たちの想いも一緒だァァァ!!!」
ライバル達の想いが込められた左手を突き出し、“超英雄”の神の手は更に巨大化し混沌神の一撃を包み込む。
その瞬間、眩い光がスタジアム全域を包み込む全ての者達の目が眩む。
光が晴れた先にあった光景は……
円堂「ハァハァ…!止めたぞ…!」
“混沌神”の一撃は“超英雄”の神の手により粉砕され、円堂の両手にボールが収まる。
アフロディ「見事だよ…円堂君…!」
最後の賭けに見事勝利した円堂は、前線に居る仲間達の元へボールを届け、最後の仕上げを任せる。
キャプテンの想いを受け取ったイナズマジャパンは限界を超えた力を発揮、ファイアードラゴンの防御を次々と突破していく。
鬼道「いくぞ不動!!」
不動「誰に命令してんだ!テメェが俺に合わせるんだよ!」
鬼道と不動がゴール付近に到着し、“鬼”と“悪魔”のコンビネーションが発動しようとする。
だが…
チャンスウ「まだだ!!“パーフェクトゾーンプレス”!!!」
火龍の眷属達は“鬼”と“悪魔”を同時に囲みその行手を阻む。
だがチャンスウは気づいていなかった。過去を乗り越え手を組んだ“鬼”と“悪魔”は龍の牙すらも返り討ちにする事を…
鬼道「お前の蹴りは生ヌルい!!本気で勝ちたいならもっと本気で来るんだな!!!」
不動「舐めやがって!!ならこれを受け止められる覚悟はあるかぁ!!」
先ほどと同様、鬼道と不動は互いの右脚をボール越しに蹴り合い強烈なスピンをボールに掛ける。
すると膨大な量の波動の渦が吹き荒れ、周囲を取り囲んでいた火龍の眷属達を次々と吹き飛ばす。
鬼道/不動「「“キラーフィールズ”!!!」」
チャンスウ「な…!完璧である筈の私の戦術が…!真正面から破られただと…!?」
不動「知らなかったのかぁ?この世に“完璧”なんてモンはハナから存在してねぇんだよ!」
“鬼”と“悪魔”の活躍により、遂に開かれたゴールへの道。
だが流石はアジア1と名高い天才ゲームメイカー。少ない人員を最大限駆使してFW陣へのパスコースを完璧に塞いでいる。
となると鬼道か不動のどちらかがシュートを決めなければ、イナズマジャパンは勝利を掴み取る事が出来ない。
不動「何ボヤボヤしてんだ!シュートを撃つ気がねぇのなら俺に寄越しやがれッ!!」
すると不動がまたしても強引に鬼道からボールを奪い、単身でゴールへ突撃する。
鬼道「お前…まさか…!」
ジョンス「うぉおおお!!もう点は取らせん!!勝つのは我らファイアードラゴンだァァァ!!!」
ここまでイナズマジャパンにいいようにやられているジョンスはこれ以上の失態を重ねまいと、両手に最大級の炎を纏わせ不動の前に立ちはだかる。
それでも不動は怯む事ない。まるで哀れや道化師を見るような目でジョンスを見下すと、右手で指笛を作り勢いよく息を吹き出し、スタジアム中に音色を響かせる。
その音色に呼応するように地面から5つの影が射出され、紅の
風丸「あれは…まさか…!!!」
佐久間「それだけはやめろ不動ォ!!!FWじゃないお前が“
その必殺技の危険性を誰よりも理解している佐久間は必死の形相でフィールドの外から静止するが、既にペンギン達は不動の右脚に噛み付いていた。
不動「関係無ぇよ!!どんな手段を使ってでも絶対に勝つ…!それが不動明王のサッカーだァァァ!!!」
勝利の二文字の為ならばどんな犠牲も厭わない不動明王の冷酷無比なサッカー…。
その真骨頂とも言える“自己犠牲”による一撃が、紅に染まった右脚から放たれる。
不動「“皇帝ペンギン…!1号ォォォ”!!!」
キックの勢いを推進力に変換し、射出された紅のペンギン達は弾道ミサイルを思わせる挙動でゴールに向かうボールに追従する。
不動「グ…!グァアアア!!!カハッ…!」
あの影山すらも“禁断の技”と評し、一時は封印処置すら行ったサッカー史史上最低最悪の必殺技は、瞬く間に不動の身体を蝕み苦しみ悶えさせる。
ジョンス「素晴らしい覚悟だ不動明王…!だが…!俺の覚悟はお前よりも遥かに大きいぞォォォ!!!」
自己犠牲の覚悟すらも軽いと断じるジョンスは、更に両手の炎を燃え上がらせボールに目掛けて張り手を繰り出す。
ジョンス「“大爆発張り手 改ィィィ”!!!」
韓国の守護神の十八番たる張り手が炸裂し、1匹また1匹と紅のペンギンを燃やし尽くしていく。
佐久間「そんな…!不動犠牲になってもジョンスを破れないのか…!」
“禁断の技”を使ってもジョンスを破れない事実に唖然とする佐久間だが、ジョンスはある違和感を覚える。
球体状の物体が物理的な運動を行う際は常に回転を伴う。
だがこのシュートに掛かっている回転は通常時のその逆…つまりは
ジョンス「なっ…!?」
シュートに込められた違和感に気づき始めた瞬間、残っていたペンギン達は突如闇色の幻となり消え去る。その直後、ボールから軽い突風が吹き荒れジョンスの手からボールが離れた。
まるで初めからまともに相手する気がなかったかのように、空へ逃げるボール。
僅か数秒の間に一切に襲い掛かった情報量の暴力に混乱してしまったジョンスは、思考を止めてしまう。
それこそが“悪魔”の真の狙いだと気づかずに。
不動「なーんてなぁ!!誰があんな恐ろしい技を使うかよぉ!!」
自身の騙しの手品に見事引っかかったジョンスに対し、不動は悪意に塗れた笑みを浮かべながら見下すと、徐に天を仰ぐ。
不動「ぶちかませぇ!!鬼道ォ!!」
鬼道「誰に物を言っている!」
直前で不動の意図を察知していた鬼道は既に空中へ飛翔しており、ボールに追い付いていた。
間髪入れずにゴールに狙いを定めてオーバーヘッドキックが放たれ、淡い闇色のオーラを纏わせたシュートが炸裂する。
鬼道が放ったシュートは何の変哲もないノーマルシュート。だが思考を放棄しフリーズしたジョンスにとって、その一撃こそが最も効果的だった。
ジョンス「し、しまった…!」
我に帰った時には時既に遅し。完全に不意を突かれたジョンスは再び必殺技を出す暇さえ与えられず、ただボールがゴールラインを割るまでの一部始終を見ているだけしか出来なかった。
ピーッ!!
王将『ゴォォォォル!!!鬼道と不動によるブラフがいとも容易くジョンスからゴールを奪ったぞォォォ!!!ここまで見事なブラフはこの私ですらも初めて見たァァァ!!!』
不動のブラフにより遂に同点に並んだイナズマジャパン。
スクリーンに表示された残り時間はジャスト5分。如何にアジア最高峰の試合といえど予選である以上この試合に延長戦は無い。
故にこの5分+アディショナルタイムで、どちらの国が世界の舞台に羽ばたけるかが決まる。
両チームのフィールドプレイヤー達は皆満身創痍。この調子では全ての力を振り絞っても化身を出せるかすら怪しい。
そうフィールドプレイヤーは。
円堂「みんな!ゴールは俺が絶対に守る!!だから安心して攻撃に集中してくれ!!!」
後半の中盤まで円堂を温存していた事がここに来て功を為す。まだ体力に余裕があり化身も使用可能である以上、戦況は圧倒的にイナズマジャパンが優勢だ。
ここからファイアードラゴンが勝利を掴む為には、ゴール前に聳え立つ天よりも高い障壁を粉砕しなければならない。
アフロディ「…ここまで来たら
何らかの覚悟を決めたアフロディは、天に向かって強い祈りを捧げながら、最後の戦いへと赴く。
満身創痍となってなお、両者の戦いは壮絶なものだった。
技術と組織的な連携に長けるファイアードラゴンは体力の消耗を最小限に抑えながら攻めと守りを繰り返し。
フィジカルと根性に長けるイナズマジャパンは体力が底を尽いてもなお、限界を超えたパフォーマンスでファイアードラゴンを圧倒する。
永遠にも感じられる攻防の末にシュートをチャンスを掴んだのは…
アフロディ「勝つのは…僕達だ…!!」
一瞬の隙を突き、イナズマジャパンの防御網を突破したアフロディは最後の力を振り絞り全速力でフィールドを駆ける。
そこには美の女神の化身と評された美しさは何処にも存在せず、ただサッカー楽しみ勝利を求める人間の姿があるだけだ。
風丸「行かせないぞ!!」
だがイナズマジャパンも負けちゃいない。今や日本一の俊足を誇る風丸は一瞬にしてアフロディの前に立ちはだかり最後の防御網を形成する。
かつては同じチームに所属し侵略者と撃退した戦士達…。それが今、ライバル同士に関係性を変え、己の全てをぶつけ合う。
アフロディ「風丸君…君はあの日以降“ゾーン”に入れた事はあるかい?」
風丸「試合中に聞く事か?…強いて答えるならまだ道半ばだ!」
アフロディ「フッ、そうかい。」
風丸の返答に満足したアフロディは不敵な笑みを浮かべると、突如右手を軽く上げ軽い指鳴を鳴らし始める。
風丸「“ヘブンズタイム”…!…じゃない…?」
“ヘブンズタイム”を警戒し身構える風丸だが、アフロディの姿は消える事なく穏やかな笑みを浮かべながら自身の前に立っている。
アフロディ「“ヘブンズタイム”は簡単な催眠術と単純な高速移動の合わせ技…。相手に暗示を掛け須臾の時間を伸ばし高速移動で突破する…。」
またしても突然、“ヘブンズタイム”の原理を説明し始めるアフロディに対し風丸は理由の分からない危機感を感じ始める。
アフロディ「なら…
風丸「まさか…!」
危機感の正体を察知した風丸はその領域に到達する前に奪取を試みるも、その刹那アフロディの姿が消失する。
アフロディ「“ヘブンズワールド”」
風丸「ぐぁぁぁぁ!!!」
後方からアフロディの声が聞こえた時には遅かった。直前までアフロディが立っていた場所からは黄金の旋風が吹き荒れ最後の防御網たる風丸を吹き飛ばす。
唐突にアフロディの身に起こった謎の強化。円堂はその正体を知っていた。
円堂「“ゾーン”か…!」
アフロディ「そうさ。自らに暗示を掛ける事で脳を誤認させ強制的に“ゾーン”に突入させたんだ。ぶっつけ本番だったけど成功して本当に良かったよ。」
人間の能力の極致たる領域“ゾーン”。本来ならば命の危機に陥る段階まで追い詰められなければ到達する事の出来ない領域だが、アフロディは“ヘブンズタイム”を応用した催眠術を自身に掛ける事で脳を誤認させ強制的に入る事に成功したのだ。
しかし、“神童”の評される才能の持ち主である彼を持ってしても、失敗すればどのようなリスクがあるか分からない一か八かの大博打…。だが彼はその賭けに勝った。
美の女神の瞳は黄金色の淡い光を発しその背に黄金の翼を出現させ、優雅に飛翔する。
アフロディ「さぁ、決着を付けようか円堂君!!」
円堂「こい!アフロディ!!」
FFから続く両者の因縁に一区切りを付ける為に決戦を超えた決戦…超最終決戦が始まろうとする…!
だが…
南雲&涼野「「俺(私)達を忘れるなよッ!!!」」
“混沌神”の降臨の代償に力を使い果たした筈の南雲と涼野が乱入し、“神殺”、“紅炎”、“氷闇”による三原色が空に『*』の軌跡を描く。
「「「“カオスブレイクGO”!!!」」」
“ゾーン”に突入したアフロディと“火事場の馬鹿力”を発揮した南雲と涼野による“カオスブレイク”は
その威力は雷牙や豪炎寺クラスの化身技と遜色無く、どう足掻いても“怒りの鉄鎚”では止められない。
となると円堂に残された手段はただ1つ。
日本の最後の砦を守りし守護神は一呼吸を置き、その名を叫ぶ。
円堂「“魔神 グレイトッ”!!!」
その胸に“イナズマ魂”を宿す少年に相応しい、雷神を思わせる黄金の魔神は雷鳴の如き咆哮を天に捧げ、“混沌”へ挑む。
円堂「“グレイト・ザ・ハンドォォォ”!!!」
主人の動きに連動した“魔神”は黄金の右手で“混沌”を受け止め、皆の未来が懸った最後のゴールを守る。
徐々に亀裂が入る魔神の右腕。
1つ、また1つと消失していく“混沌”を構成する
両者の意地と誇りの結晶が消失した末に訪れるボールの終着点は…
円堂「へへへ…!今度は…俺の…勝ちだな…!」
円堂の右手。それこそがボールの終着点だった。
満身創痍になりながらもシュートを止めてみせた円堂だが、後方のゴールラインと踵との距離は僅か1cm。文字通り紙一重の差での勝利だったのだ。
アフロディ「ハハハ…やっぱり…円堂君は凄いな…!」
遂に全ての力を使い果たしたアフロディ達はその場で膝を付き、事実上の
残り時間は僅か数十秒、イナズマジャパンに最後にして絶好の攻撃チャンスが訪れる。
円堂は右手のボールを足元へ移動させ、友の元へボールを大きく蹴り出す。
王将『円堂!ゴールキックで大きく蹴り出したーーッ!!!ボールを受け取るのは豪炎寺か!?基山か!?それとも我々の予想も付かない大穴かァーーッ!!?』
実況、サポーター、ベンチの仲間達…この会場に居る全ての人間が息を呑んでボールの行き先を見守る中、ボールを受け取ったのは…
ヒロト「いいパスだ円堂君!」
“永世の紅き彗星”・基山ヒロト。その異名の通り、“彗星”の如きスピードで火龍の眷属達を翻弄し、前線へ上がって行く。
チャンスウ「絶対に彼を止めるのです!突破と失点は同義だと思いなさい!!」
人生初の敗北の危機に陥ったチャンスウは大量の冷や汗を流しながら、眷属達に指示を送るが、ここに来て無敗という輝かしい称号が彼の足を引っ張る事になる。
ヒロト「なら俺は…“空”を攻めようかな!」
冷静さを失ったチャンスウには幾度となく辛酸を舐めさせられた三次元的発想が抜け落ちていた。
ヒロト「“流星ブレード”!」
火龍の眷属の居ない安全圏たる上空に、紅のオーラを纏ったボールが打ち上げられ、瞬間移動の如きスピードでその軌道上に金色のオーラを纏った“怪物”が現れ、獅子の魂をその身に宿す。
雷牙「ドンピシャアァ!!“カイザーレオーネェ”!!」
“怪物”が蹴り返した先に空色のオーラを纏った“彗星”が待ち構え、数秒前の焼き直しの如く撃ち返す。
またしてもその軌道上に“怪物”が待ち構え撃ち返し、そのまた軌道上に待機していた“彗星”が再び撃ち返す。
幾度となく続く“怪物”と“彗星”による軌跡は1つの小宇宙を創り出していく。
ヒロト「最後の仕上げだ!雷牙君!」
雷牙「OK!!ド派手にぶちかますとすっかッ!!!」
かつては侵略者を滅ぼす為に磨き上げられた獅子の牙と新世界を創世する為に鍛え上げられた流星の刃が隕石の如し輝きを発しながら小宇宙に激突する。
雷牙&ヒロト「「“コズミックブラスター”!!!」」
2本の刃が炸裂した小宇宙は重力に導かれるように天より落ちる。
ジョンス「“大爆発…な!炎が…!?」
強烈な引力は炎すらも引き寄せジョンスに技を使う許可を与えない。
最後の抵抗に両親から与えられた屈強な2本の腕で小宇宙を受け止めようと試みるも、力の差はあまりにも隔絶していた。
ジョンス「グァァァァァ!!!」
抵抗も虚しく小宇宙は守護神の腹部に突き刺さり、その身ごとゴールネットに叩き込まれる。
ピッー!! ピッピッピッー!!
審判のホイッスルが鳴り響くと同時に、イナズマジャパンのスコアボードに『5』の数字が刻まれ再び審判が三度ホイッスルを鳴らす。
円堂「勝った…!俺たち…世界に行けるんだ…!ぃやったァァァァァ!!!!」
例の如く、誰よりも先に状況を理解した円堂の大声がスタジアム内に響き渡り、日本の勝利を皆に知らせる。
王将『予選突破だァァァ!!!激闘を制し世界への切符を手にしたのはイナズマジャパンだァァァ!!!』
王将の実況により現実は飲み込んだサポーター達は素晴らしい試合を見せてくれた両チームに惜しみない賞賛と拍手をスタジアム全域に響き渡せる。
雷牙「かぁ〜…もう駄目だ。指一本動かせねぇ…。」
勝者となったイナズマジャパンは自身の勝利を心の底から喜ぶものの、激戦により体力を使い果たした事でフィールドに座り込み、空気を震わせる称賛の声をその身を持って噛み締めていた。
涼野「クッ…!我らの全てを出し尽くしてもまだイナズマジャパンには敵わないというのか…!」
南雲「…俺達の実力が足りなかった…それだけだ。今回の勝ちはあいつらに譲るが次は絶対ェ俺達が勝つ…!」
アフロディ「ああ。だけど今回は素直に彼らを称賛しよう、きっと彼らならば僕達の代わりに世界の頂上に行ってくれる筈だ。」
敗者となったファイアードラゴンは、その胸に悔しさを抱きながらも、それすらも次の目標に変換し日本の勝利を素直に称賛する。
観客『日本ッ!!日本ッ!!日本ッ!!』
遂に世界への切符を掴んだイナズマジャパン。だがこれはまだ大いなる夢を叶える為の小さな一歩でしかない。
イナズマジャパンの選手達は海の向こう側に居るであろう、まだ見ぬ
世界一に至る栄光への道筋はここからが本番だ。
鬼道と不動に焦点を当てた結果、“竜巻落とし”の出番無くなっちゃった。
〜オリ技紹介〜
♦︎イリュージョーカー(シュートver)
属性:林
分類:シュート
使用者:不動明王
進化系統:改→真→爆→極
≪概要≫
正攻法では破れないジョンスの隙を突く為に、不動が使用した応用技。コピー元に数ある必殺技の中から“皇帝ペンギン1号”を選んだ理由は単純に鬼道の嫌がらせ目的であるが、円堂により吹っ切れた本人にはあまり響かなかった模様。
♦︎コズミックブラスター
属性:林
分類:シュート
使用者:基山ヒロト、稲魂雷牙
進化分類:究極奥義
≪概要≫
原作の技だが一応記載。ネオジャパン戦前から雷牙とヒロトが開発していた技であり、韓国戦にてなんとか完成にこぎつけた。
アレスでは吉良ヒロトの“ザ・エクスプロージョン”と基山タツヤの“流星ブレード”のオーバーライド技だが、こちらは雷牙の“カイザーレオーネ”とヒロトの“流星ブレード”とのオーバーライド技。