イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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なんかここ最近、異常にお気に入り登録の増減が激しいんだよなぁ…。
減った分、新規で登録してくれる人もたくさんいるからそこまで気にしてないけど、ここまで増減が激しいのは初めてだからなんか怖いなぁ…。


いざ!! 新天地へ!!

 韓国との激戦を制し、アジア1の称号を得ると共に世界への切符を掴んでから1ヶ月後。現在、イナズマジャパンの面々は空港に集まっていた。

 

円堂「スッゲー!あれがイナズマジェットかぁ!俺たちあれに乗ってライオコット島まで行くんだな!!」

 

 FFIの本戦はサッカーアイランドと呼ばれる南国の島、ライオコット島で行われる。

 これからイナズマジャパン達は運営本部により用意された専用ジェット機で本戦会場へ向かうというわけだ。

 

雷牙「デカさ、大きさ、巨大さ…。うーん!気に入った!どれを取って完璧最強!雷牙さんのお眼鏡にお適うスケールだぜ!!」

 

風丸「いやもっとこう…あるだろ!こう…色合いとか設備とかさぁ…。」

 

 皆の視線を釘付けにしているのは日本代表専用ジェット機、その名もイナズマジェット。

 U-15の日本代表専用のジェット機と言ってもその機能性は並大抵のプライベートジェットとは比べ物にならない。

 

 大型車両であるイナズマキャラバンも余裕で格納可能な大きさに加え、内部の設備もファーストクラスと同等という超豪華使用。

 まさに、これから世界へ挑もうとする日の本を背負う選手達に対してのささやかな贈り物だ。

 

熱也「にしても見たかよ?空港に押し寄せた俺たちのファンの数!下手すりゃ1000人くれー居たんじゃねぇか!?こりゃ俺たちもスターの仲間入りかぁ?」

 

吹雪「それだけ日本中に人達が僕達に期待してくれている証拠だね、ネオジャパンの皆や、予選で敗退した人達の想いを無駄にしないように気を引き締めなきゃね。」

 

 空港に訪れているのは日本代表のファンだけじゃない。選手達の家族や縁の深い者達はゲート前の待合室にまで訪れ、これから世界と戦う子供達に精一杯の激励を送っている。

 

 円堂の場合は、祖父の遺影を手に持った母と父が。

 

 豪炎寺の場合は、大切な父と妹、そして家政婦が。

 

 鬼道の場合は、忙しい中時間を作って目送りに来てくれた義父と執事が。

 

 そして雷牙は…

 

ヨネ「まさかこの日がやって来るとはねぇ…。天国に居る雷夏ちゃんもさぞかし喜んでいるだろうねぇ。いいかい雷牙ちゃん!ここまで来たら世界1を目指して天辺まで突っ走るんだよ!!」

 

雷牙「応ッ!!ヨネさんも腰に気をつけろよ!アンタももう歳なんだからさ!」

 

ヨネ「だーれがヨボヨボのお婆ちゃんだい!これでも秋空チャレンジャーズのキャプテン兼監督だよ!」

 

 こうして、各々が思い残す事がないように大切な人達との会話を終え、日の本を背負う戦士達は家族、ファン、かつてライバル達、そして日本トップたる総理大臣に見送られながら大空へ飛び立つ。

 

 その胸に世界の頂点に立つという大いなる夢を抱きながら。

 

……………

…………

………

……

 

綱海「俺゛を゛海゛に゛返゛し゛て゛く゛れ゛〜〜!!!」

 

 離陸から僅か10分後。シワシワになってほぼ死にかけている綱海の情け無い声がジェット内に響く。

 どうやら脅威の人格者と謳われた彼はニンジンの他に高所も弱点だったようだ。

 

円堂「アハハ…。…そういえば雷牙は飛行機大丈夫なのか?確か家族が亡くなった事故も飛行機だったろ?」

 

雷牙「あー…俺は別にそうでもねェなァ、別に俺は事故に遭ってねェし。」

 

円堂「はへー、なんか意外。」

 

鬼道「以外とそういう奴は居るぞ。事実、俺と春奈は飛行機にそこまで忌避感は無いしな。」

 

雷牙「俺ちゃんとしては寧ろ、当事者のライトが飛行機に乗れた方が謎。」

 

 イタリア行きの飛行機が出発する直前でドタキャンした事もあり、今日まで特に疑問に思っていなかったが、よくよく考えると何故飛行機に強いトラウマを持つであろう兄が、飛行機に乗れたかを今更疑問に感じる雷牙。

 ありがたい事にその疑問の答えを知っている者がすぐ後ろに控えていた。

 

ヒロト「イタリアに行くって決めてからずっと練習してたんだよ。2段ベットの高さに慣れる所から始めて、最後は吉良財閥所有のプライベートジェットでフィニッシュさ。」

 

壁山「なんか親近感の湧く話っスね〜。ちょっとスケールがデカいっスけど…。」

 

 そんなこんなでこれから行われる激戦を前に、大空での束の間の休息を楽しみ早数日後…。

 ここ数日間綱海が死に掛けていた事を除けば、変なアクシデントと無く本戦の舞台・ライオコット島へ足を踏み入れる。

 

円堂「ここがライオコット島かぁ…!スッゲェ!見ろよ!色んなところでサッカーをやってる子が居るぞ!」

 

雷牙「いいねェ!遊園地(テーマパーク)来たみたいだぜ〜!テンション上っがる〜!!」

 

 まだエントランスに足を踏み入れただけにも関わらず、世界中から訪れたサッカーファンが溢れかえる光景は、まさにサッカーアイランドの評価に相応しい。

 

 その後、古株が運転するイナズマキャラバンに乗り込んだ一向は市街地を抜け、日本代表用宿舎まで目指す。

 するとその道中、先ほど南国模様溢れるリゾート地だった街並みが、英国に迷い込んだと錯覚させる伝統的な建築様式の建物群に姿を変える。

 その街中には、タキシードやドレスを身に包んだ英国紳士淑女の姿もチラホラ見られる。

 

雷牙「アレ?さっきまで俺らライオコット島に居たよなァ?いつの間にイギリスにワープしたんだ?」

 

目金「知らないのですか?ライオコット島は選手達が本来の力を発揮出来るように本国の街並みを再現しているそうですよ。噂によるとここイギリス地区は本国から取り寄せた数百年物の煉瓦も使っているようです。」

 

染岡「スッゲェな…。この島だけで世界旅行が出来るじゃねぇか!」

 

 久々に出番が出来て嬉しいのか得意げに語る目金の蘊蓄…もとい解説をBGMにイギリス地区を抜けると今度はイタリアの地中海を完璧に再現した街並みが姿を現す。

 

雷牙「地中海の街並み…つー事はココはイタリア地区か…。」

 

 この地の何処かに居るであろう兄の姿を思い浮かべ、何気なく窓の外を見る雷牙。

 すると街中の至る所に自身をモチーフにしたであろう個体ごとの個体差が大きいデフォルメ人形が小さな祭壇の上に置かれている光景を目撃する。

 

雷牙「……。」

 

 凡その犯人の察しが付いた雷牙は直前まで脳裏に浮かんでいた兄の姿をその存在ごと消失させ、先ほどの光景を見なかった事にした。

 

 こうしてイタリア地区を抜けたキャラバンは、遂に日本代表の宿舎に到着し、荷物整理と軽い練習を行い明日へ備える。

 

……………

…………

………

……

 

雷牙「フンフンフーン♪フフフンフーン♪」

 

 練習も終わり、お楽しみの夕食も食べ終えた雷牙は上半身は縦一列に『怪獣注意報』の五文字が刻まれた独特なセンスの白シャツに下半身は代表ジャージといった非常にラフな恰好で宿舎内を探検していた。

 その行動に深い目的は存在しない、ただ初見たる代表宿舎の構造が気になっただけ。己の好奇心が赴くままに行動するのが彼のモットーなのだ。

 

 長い廊下の曲がり角を抜け、エントランスに到着した瞬間、オレンジ色のバンダナを巻いた少年が靴を履いている後ろ姿を発見する。

 

雷牙「アレ守?こんな時間に何処に行くんだよ?」

 

円堂「特訓用に使うタイヤを探しに行こうと思ってさ!ほら…荷物検査の時に没収されちゃっただろ…?」

 

雷牙「嫌な…事件でしたね…。」

 

 円堂にとって祖父直伝の特訓は呼吸と同義。その為、何処で買えるのか検討も付かないタイヤを入れる事くらい使用用途の無いような円形の大型バックを持参し、持ち物検査に挑んだが結果は撃沈。

 泣く泣く、苦楽を共にした無機物の好敵手達を日本に残して来たのだ。

 

円堂「だから現地調達だ!雷牙も一緒に来るか?」

 

雷牙「ん〜…なんか面白そうだし付いて行くわ。ジャージ取ってくっからちょっち待ってな!」

 

 本来なら日が傾き掛けている時間帯に、初めて足を踏み入れる地を散策するという行為を止めるべきなのだろう。

 だが目の前の男は好奇心の塊のような男なのだ。そのような人間を誰が止められようか?

 数分後、ジャージを着て自室から戻って来た雷牙。しかし、その脇には何故かボロボロのサッカーボールが抱えられていた。

 

円堂「よーーし!いざ出っ発ー!!」

 

雷牙「おーーっ!!!」

 

 宿舎から飛び出た2人のサッカーバカ達は、お目当てのタイヤを探す為に日本地区の市街地を練り歩く。

 

雷牙「んで?タイヤがありそうな場所に心当たりでもあんのか?」

 

円堂「いや?島中をしらみ潰しに探すつもりだけど?」

 

雷牙「わ〜お!見事なまでの無計画〜!だけどそこが守君のいい所〜!」

 

 とはいえ当てずっぽうに探してもお目当ての物を見つけ切れるわけがない。

 2人は話し合いの末に、取り敢えず日本地区から距離が近いイタリア地区でタイヤを探す事にする。

 

 一歩一歩歩みを進める事にガラリと変わる、街中の建築様式。

 昼間に染岡がこの島1つで世界旅行は事足りるとの評価はあながち間違いではない事を実感する。

 

 その後、数十分程歩き続け、遂に目的地であるイタリア地区に到着した雷牙と円堂。

 昼間に一度この地を訪れているが、キャラバン内からでは感じ取れなかった地中海特有の雰囲気と活気に2人は目を輝かせる。

 

円堂「おお〜!ここがイタリア地区かぁ!俺イタリアに行ったことはないけどなんかテンション上がるなぁ!」

 

雷牙「ん〜!懐かしいねェ!在住歴3年のイタリアンの血が騒ぐぜッ!!」

 

 日が暮れ掛けてもイタリア人特有の陽気さがそのまま形になったかのような明るい街並みに、雷牙達はテンションを上げながら足を踏み入れる。

 本国から呼び寄せた料理人達が作り上げる数々の料理は 夕食を食べ終えた2人の胃を強く刺激し、所々で足を止めてしまう。

 

 だがここで立ち止まっているわけにはいかない。彼らの目的は円堂のお眼鏡に適うタイヤを見つける事なのだから。

 

雷牙「ピ〜ザにパスタにナポリタン〜♪チーズにドリアにティラミスに〜♪こ〜れがイタリアの美味しいモノさ〜♪まだまだあるよイッタリアン〜♪」

 

 余程イタリアの街並みが懐かしいのだろう。雷牙は満面の笑みで即興で作った歌を歌いながら街中を歩く。

 その右手にはスピンが掛けられたボールを大道芸人の如く指一本で回し続けている。

 

円堂「てか何でサッカーボールを持って来てるんだ?タイヤ探しが終わった後に練習でもする気か?」

 

雷牙「いんや、コレは親父が俺と同じくれェ歳の時から大切に使ってたボールなんだよ。親父は実家から勘当されて以降、実家に帰った事は無かったらしいかんな。だからモノホンじゃねェけど、せめて似た景色だけでも見せてやろうと思ってさ。」

 

円堂「そっか…。その想いが届くといいな!」

 

雷牙「おうッ!!」

 

 こうして度々、何気ない会話を交わしながらお目当てのタイヤの捜索を続けるも、一向に探し物の『さ』の字すら見えてこない。

 いつの間にか太陽もどっぷり暮れ、夜空に星々が煌めいていた。

 

円堂「ダメだ〜!全っ然見つからね〜!」

 

雷牙「まァ(モグ…)仕方ねェ(モグ…)よ(モグ…)。今日(モグ…)見つからなかったら(モグ…)明日(モグ…)探せば(モグ…)いいだろ(モグ…)?」

 

円堂「せめてピザを食い終わってから喋ってくれよ…。」

 

 真剣にタイヤを探す円堂とは対照的に、雷牙は開始30分程度で飽きたようで、途中からイタリアの美味い料理巡りに目的を変え、今はシメに選んだピザを頬張っている。

 

雷牙「ゴックン!! ごっそうさん!いや〜!アメリカンもいいけど、ピッツァはやっぱクリスピーに限るぜ!」

 

円堂「まあ雷牙が満足したならいいけどさぁ…。…ん?」

 

 雷牙がピザを完食したと同時に円堂の視界に一台のトラックが目に映る。

 そのトラックは特段珍しい車種じゃない、強いて言うなら今にも故障しそうなくらい年季が入っている程度の特徴だし、そもそも円堂に車の良し悪しなど分かる訳がない。

 にも関わらず彼の視界を引き寄せた要因は、その荷台に積まれた荷物にあった。

 

円堂「ああ〜〜っ!!!あった!!!」

 

 年季の入ったトラックに使い古された大量のタイヤの山…。普通の人間ならば視界に入る所か近寄る事すらも憚れる物だが、“ボールは友達”ならぬ“タイヤは好敵手”を地で行く円堂に取っては宝の山同然なのだ。

 

円堂「あのトラックを追うぞ雷牙!!!」

 

雷牙「あっ!あっぶねェ!おい守!急に走り出すn…」

 

ドンッ!!!

 

 先の見えない暗闇の中から突如現れた一筋の(タイヤ)…。その光が円堂の判断を鈍らせた。

 またとないチャンスを前に周囲の状況に構わずに走り始める円堂…それがこれから行われるハプニングの序章曲(プレリュード)と化すと知らずに…。

 

 急に走り出した円堂に驚いた雷牙は体制を崩し、人差し指で回し続けていた父の形見のサッカーボールを指から離してしまう。

 彼に取っての不幸はボールの行き先がアスファルトの地面ではなく、スピードに乗る円堂の頭だった事だろう。

 

ガンッ!バンッ!ドンッ!

 

 ダイアモンドと同等の硬度を誇る円堂の頭突きをモロに喰らったボールは凄まじいスピードで射出され周囲の建造物を利用し、幾度ものバウンドを繰り返した末、何の因果が働いたのか件のトラックに荷台の上に収まる。

 

雷牙&円堂「「・・・・あ。あぁっ〜〜!!!」」

 

 日本人の少年2人に周囲の人々は驚き目を見開くが、不幸な事にトラックの運転手に届く事は無かった。

 雷牙のボールを乗せたトラックは無慈悲にも走行を続け、円堂達から遠ざかって行く。

 

円堂「こ゛め゛ん゛〜゛〜゛!!!雷゛牙゛〜゛〜゛!!!」

 

雷牙「分かった!分かったから!許すからそのクシャクシャの泣き顔を止めろ!!俺の中の守のイメージが崩れる!!」

 

 なんとか円堂を泣き止ませた雷牙は、父の形見を取り戻す為にトラックを追いかける。幸いな事にトラックの走行速度はそう速くはない。

 だが人間(こちら)は身体の構造上、どんなに頑張っても数秒程度しかトップスピードが続かない。それに対し(あちら)はオンボロとはいえ燃料が続く限り長時間に人のトップスピード以上の速度で走れる。正攻法で挑もうとすればまず敵わない。

 

雷牙「おい守…!このままじゃジリ貧だ…!二手に別れてトラックに回り込むぞッ!」

 

円堂「二手に?」

 

雷牙「イタリア地区の道は細くて入り組んでる!だからあのトラックもそうスピードを出せねェ筈だ!裏道から回り込めば十分追い付ける!」

 

円堂「なるほど!だいたい分かった!」

 

雷牙「おーし!!そんじゃ、2人に分かれて後は野となれ山となれ作戦開始ーーッ!!」

 

円堂「おおーーっ!!!」

 

 こうしてサッカーモンスターとサッカーバカはそれぞれの道を行き二手に別れる。

 複雑に入り組んだ路地裏の先で再開する事を願って…。

 

 だが……

 

円堂「ヤバい迷った…。」

 

 感動の別れも虚しく、数分も経たない内に自身が行くべき道を見失ってしまう円堂。

 そもそも本国に留学経験のある雷牙はまだしも、円堂は海外に旅行に行った事すらないのだ。謂わば海外未経験者の彼にイタリアの街並みで迷子になるなという方が酷だろう。

 

円堂「どうしよ…一旦引き返した方がいいかなぁ…?でも悩んでいる間にもトラックは移動しているしなぁ…。あー!!どうしたらいいんだよー!!!」

 

 一秒すらも惜しい状況の中での思考は、赤点常習犯の円堂の脳をオーバーヒートさせるには十分すぎる負担だった。

 パニック一歩手前に陥る円堂…。それでも時間は刻一刻と過ぎて行く…。

 

 もう円堂は特訓用のタイヤを手に入れられないのか?

 

 もうステラのボールは諦めるしかないのか?

 

 その時…円堂の前に救いの手が差し伸べられる。

 

???「俺が道案内をしようか?」

 

円堂「え…?」

 

 日本に居る古くからのチームメイトと瓜二つな声が聞こえた方向を振り向くと、端正な顔立ちをした茶髪の少年が立っていた。

 

???「おっと、別に金を取ろうという訳じゃないんだ。君達が二手に別れてトラックを追いかけている所を偶然目撃してさ、()()()はまだしも君はこの街に不慣れだろうと思って後を付けさせてもらったんだ。そしたら案の定迷子になりかけてたから声を掛けたってわけさ。」

 

 爽やかな笑みと共にここまでの経緯を説明する謎の少年。

 その目は嘘を付いているようには見えず、例え彼の話が嘘だったとしても今の円堂には少年の提案を拒否する選択肢は初めから存在しない。

 

円堂「ありがとう!助かるよ!あっ!俺は…「エンドウマモルだろ?」あれ?なんで俺の名前を知ってるんだ?」

 

???「俺の友人が君の事をよく話してたんだ。何せ、世界広しと言えどオレンジ色のバンダナを巻いた選手なんてそうそう居ないからね。」

 

円堂「そうかな…?いやそうかも…。まあいいや!君の名前は何て言うんだい?」

 

???「俺の自己紹介は後でするさ、今はトラックを追うのが先だ。今から走れば追いつくからね。」

 

 そう言って円堂の先頭に移動した少年は、その脚に全力の力を込め一歩を踏み出すと一瞬にしてトップスピードへ達する。

 まるで“流星”の如きスピードを見せる少年だが、驚くべきはそのフットワークの軽さ、複雑に入り組んだ路地裏すらも一切のスピードを落とさずに直角に曲がって見せる巧みなテクニックに円堂は思わず魅了されてしまう。

 

円堂「す、スゲェ…!こんな走りをする奴は初めて見た…!」

 

 どんどん円堂から距離を離して行く茶髪の少年の走りは周囲に軽快な足音を響かせる。その音色はやや離れた場所に居る雷牙にも伝わっていた。

 

雷牙「守…じゃねェよな?アイツがあんな繊細な足音を出せる筈がねェし…。となると…答えは一択か。」

 

 足音の持ち主を悟った雷牙は不敵な笑みを浮かべ更に脚を早め、目の前の障害物を文字通り粉砕しながら前へ進む。

 

 そして…

 

雷牙「しゃおらァ!!!」

 

円堂「よっしゃー!!!」

 

 運の良い事に裏路地の迷宮を同時に突破し、雷牙はトラックの正面に、円堂は数m後ろの坂道へ飛び出す。

 

雷牙「あーっ!!ストーップ!!!」

 

???「おわっ!?前から非行少年が!?」

 

 突然飛び出して来た雷牙に驚いた、トラックの運転手の老人は急ブレーキを踏む事でなんとか轢き逃げを回避する。

 だが、その衝撃により年季の入った荷台の後ろ戸が外れてしまい積まれてあったタイヤの山が坂道を転がり落ちる。

 

???「危ないッ!!!」

 

 中でも大型車両用のタイヤは、まるで円堂に引き寄せられるように、強烈な縦回転を行いながら猛スピードで円堂へ襲い掛かる。

 茶髪の少年は円堂を助けるべく飛び出すが、刹那黄金の稲妻が円堂の右手に宿る。

 

円堂「“ゴッドハンドッ”!!!」

 

 その右手から放たれた神の手は虹色の輝きを放ち、タイヤを受け止める。受け止められたタイヤは次第に回転数を落とし数秒の抵抗の末に、円堂の右手に収まる。

 

???「凄いな…。スピードが乗った大型車両用のタイヤを片手で受け止めても一歩も退かない足腰の強さ…。なるほど…アイツが背中を任せるのも頷けるよ。」

 

円堂「おーい雷牙ー!ボールは無事かーーっ?」

 

 タイヤを止めた円堂は大声で数m先に居る雷牙に向けてボールの安否を尋ねる。

 言葉による返答こそは無かったものの、トラックの裏から出てきた雷牙の手にはボロボロのボールがしっかりと握られていた。

 

雷牙「……。」

 

???「……。」

 

 茶髪の少年と目が合った雷牙は意地の悪い笑みを浮かべると、手に持ったボールを空に上げると自身も同程度の高さまで飛び上がり、少年に目掛けて渾身のシュートをボールに叩き込む。

 

雷牙「フンヌッ!!!」

 

円堂「な、何やってんだよ雷牙!この子は俺の恩人なんだぞ!?」

 

 突然の親友の蛮行から恩人を助ける為に円堂はシュートを受け止めようとするが、茶髪の少年は助けなど無用と言わんばかりに目にも止まぬ速さで円堂の前に移動すると、その左脚で雷牙のシュートを危なげなく受け止め切る。

 

円堂「雷牙のシュートを受け止めたぁ!?」

 

 シュートを受け止めた少年は爽やかな笑みを浮かべながら、目の前の“怪物”に視線を移すと自国の言語で言葉を紡ぐ。

 

???『流石は雷牙だ、ただでさえ高かったパワーに更に磨きが掛かっているね。』

 

雷牙『ソウイウ。オメーサンモ。デェブパワーアップ。シテルミテェダナァ。……フィディオ!』

 

円堂「あー…悪いけど2人共、俺に分かる言葉で喋ってくれないか…?」

 

 自身には理解の付かない英語とは微妙に異なる言語で会話を行う2人に対し、円堂は困惑する。

 

 すると…

 

ゴンッ!!

 

雷牙「痛ッデェ!?何すんだジジイ!?」

 

 突如、老人の鉄拳が鈍い音を立て雷牙の頭部に直撃する。

 

老人「それはこっちの台詞じゃ。ったく…急に飛び出しおって!儂のブレーキが間に合わなかったらお前さんは今頃、病院送りじゃぞ!」

 

円堂「違うんです!おじいさん!俺のせいでこいつの大切なボールがトラックの荷台の乗っちゃって…。それを取り戻す為に…」

 

 自身を犯罪者にさせ掛けた雷牙に対して怒る老人だが、円堂が仲裁に入り事情を説明した事でなんとか老人の怒りが収める事に成功する。

 その後、老人のタイヤの譲ってもらう許可を得る為の交渉が始まり、暇になった雷牙は偶然再会した旧友と久方ぶりの会話を交わす。

 

雷牙「てか何でフィディオが居るんだよ?」

 

フィディオ「偶々、君達を見かけたんだよ。話しかけようとしたら事件に遭遇して今に至るってわけさ。」

 

雷牙「ほーん。なるほど納得ー。」

 

円堂「雷牙ー!おじいさんがタイヤ譲ってくれるって!それにタイヤを設置するの手伝ってくれるらしいけどお前も行くか?」

 

雷牙「ああ行くー!ってなわけで今日はココでお別れだな。色々ありがとうよフィディオ!」

 

フィディオ「俺も良いモノを見せてもらったよ。次会うのは…明日の開会式だな!」

 

 ここで解散する事となった旧友達は互いに拳を合わせ、その場から立ち去る。

 その後、トラックの荷台に乗せられタイヤを吊し上げるのに最適な木がある海辺に移動した雷牙達は、暇でタイヤを吊し上げるタイヤ製のサンドバッグを作り上げる。

 

老人「ホレ!こんなもんかの?」

 

円堂「ありがとうございます!おじいさん!」

 

雷牙「にしてもデッケーなコレ、日本のヤツの倍はあるんじゃねェーの?」

 

 荷台に寝かせている間はそこまで気にならなかったものの、実際に木に吊るすとその大きさがよく分かる。

 鬼乃子に破壊され、スペアも空港で没収された同型のタイヤもかなりの大きさだったが、老人から譲り受けたタイヤはそれの比じゃない。

 それこそモンスタートラックに使われるようなレベルの超大型タイヤだ。

 

円堂「うん!バッチリ!これさえあればもっと強くなれるぞーっ!」

 

雷牙「練習もほどほどになー、この間みてーに狂ったように練習を続けるのは一流とは言えねェかんな〜。」

 

老人「……。」

 

 円堂と雷牙の会話に何か思う所があったのだろうか。

 老人は円堂…そして雷牙に視線を移し、サングラスの奥から何かを懐かしむ温かい目をしている。

 

雷牙「何スカ爺さん?そんなに俺の顔をジロジロ見つめて。」

 

老人「…いや、お前さんが儂の古い友人に似ていたからのぉ。ほんの少し昔を懐かしんだだけじゃ。」

 

雷牙「俺ちゃんと似てるかァ…。そりゃあさぞかし伊達男かつ上品なご友人だったんでしょうねェ。」

 

老人「ハッハッハ!その自意識過剰な所もあいつにそっくりじゃよ!バンダナの坊主といいお前さんといい、久しぶり面白いモノを見せてもらったわい!それじゃあの、夜も遅いから気をつけて帰るんじゃよ。」

 

円堂「はい!ありがとうございました!」

 

 やる事を終えた老人は、再びトラックに乗り込みエンジン音を響かせながらその場から立ち去る。

 

 トラックが見えなくなると円堂はサンドバッグに渾身の1発をぶちかまし、タイヤを大きく揺らす。

 皮膚から筋肉に、筋肉から骨に伝わる電流のように痺れる衝撃はこれから戦うまだ見ぬ好敵手への期待へと変わる。

 

雷牙「…なー守〜ちょっと思ったんだけどよー…。ワザワザ探しに行かなくてもよォ…。古株のおっさんに頼めばスペア用のタイヤを貸してもらえたんじゃねェーか?」

 

円堂「…あっ。」

 

雷牙&円堂「「……。」」

 

円堂「とりあえず今日はもう帰ろうぜ…。」

 

雷牙「そだな…。」

 

 微妙に空気の読めない雷牙の余計な一言により2人の間になんとも言えない空気が流れ、そのまま無言で帰路に付く。

 こうして2人のサッカーバカのライオコット島での初日は終わりを告げた。

 

 何はともあれここからが、伝説の第二章が幕開けだ。

 

……………

…………

………

……

 

???「アレが師匠の言ってたエンドウ・マモルか…。」

 

 老人が運転するトラックの助手席に座る褐色肌の少年は、老人を“師匠”と呼び感慨深そうに“エンドウ・マモル”の名前を呼ぶ。

 

老人「そうじゃ、お前さんはあやつに何を見る?」

 

???「強いよ彼は。だけど…ボクはもっと強い。」

 

老人「ハッハッハッ!!!それは心強いわい!!じゃが…守を超えるのは通過点に過ぎん!お前さんが目指すのは世界一じゃ!分かったなロココ!!」

 

ロココ「ああ…!ボクは絶対に世界一になる!みんなと…そして師匠と一緒に!」

 

 ロココと呼ばれた少年はその瞳に世界の頂点に立つという強い覚悟の光を灯し師に応える。

 その言葉には自身の強さから来る絶対的な自信と世界一の至る為への貪欲さがあった。

 

 世界が“小さな巨人”の名を知る日はすぐそこまで来ている。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 時計の針が12回もの周回を終え日付を跨いだ頃、既に島に住む人々の大半は眠りに付く中で()()()()に“奴”は現れた。

 

 市街地から遠く離れた森林…その開けた地に時空が歪み、新円状の裂け目が発生する。

 その新円の奥から微かに見える景色からは独特な形状のドローン兵器が1つの人型の影に目掛け光線を放つ。

 だが全ての光線は紙一重で躱されてしまい、抵抗虚しく標的を目的地(ゴール)に辿り着かせしまう。

 

???「おっと、ちょっと早く着いちゃったなぁ…。こりゃ後で()()に怒られるぞぉ…。まっ、いっか!そ・れ・よ・り・も!!」

 

 時空の裂け目の中から現れた人型の生命体は現代人の美的センスからやや外れた近未来的なファッションで身を包んでいるが、フードを深々と被り、目元は大きめのゴーグルによって隠されているせいで、詳しい人相は分からない。

 強いて言うなら先ほどの声から性別は男性である事とフードの中から僅かに見える頭髪から髪色が銀髪である事が分かる程度だ。

 

???「ハロ〜()()()!相変わらず腐ってるね〜!」

 

 どこか既視感のある声色で“現代”を旧世界と言い放ち、人々が平和を謳歌するこの世界を腐っているとも断じた少年は、脚を地から離すと物理的な法則を無視し宙に浮き、まるでコミックの中のスーパーヒーローの如くその場から飛び去る。

 

 月明かりに照らされ少年の首に掛けられた『G』に似た紋章が刻まれた桃色の宝石が妖しく光を浴びる。

 

 突如襲来した正体不明の少年…。彼の存在はイナズマジャパン…いや()()()()その物に何を齎すのか…?




最後に登場した謎の新キャラは……まあそういう事です。

【不定期開催!イナっと裏話!】
本作のヨネさんは実は中学時代に雷夏が所属していたチームの元監督。
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