イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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前話の閲覧数が作者の想定を遥かに超えててマジでビビった…。
評価バーMAX+ランキング掲載のブーストが掛かってるとはいえ、1分間の閲覧数が最高で58回だよ…?今まで最高20回くらいだったのが一気に3倍近く上がってるんだよ…?前話投稿から少し間が空いても閲覧数は前と比べて明らかに増えてるし…。
諸々ブースト恐るべし…!


衝突する“想い”と“誇り”!! 激戦!!ナイツオブクイーン!! 前編

円堂「よし…!トイレOK!グローブOK!スパイクOK!準備はバッチリ!」

 

 時は試合が始まる少し前に遡る。

 

 試合前の全ての準備を終えた円堂は、これから行われるイギリスとの試合に向けて、闘志を高めながらフィールドに向かっていた。

 

 すると…

 

老人「おや、また会ったのう」

 

円堂「あっ!タイヤをくれたおじいさん!お久しぶりです!」

 

 その道中にて、以前イタリア地区で出会いタイヤを譲り受けた老人と偶然の再会を果たす。

 老人の服装こそは以前の恰好と変わらないが、手には売店で購入したであろうジュースとジャンクフードが握られており、老人が今日の試合の観客の1人である事が分かる。

 

老人「そういえば、お前さんの活躍をイナチューブで見たぞ。お前さん、儂が思っていた以上に凄い選手だったんだな。まるで“イナズマ”のように荒々しいパワフルなサッカーするじゃないか」

 

円堂「そ、そうですか〜!えへへ〜///照れちゃうな〜!」

 

老人「…だが、儂に言わせればまだまだじゃな」

 

円堂「え…?」

 

 もしかして老人は多重人格者なのだろうか?

 そう思ってしまう程に、褒めたと思うと急に真逆の事を言い出す老人に対して、円堂は困惑してしまう。

 

老人「『力に対して力で対抗しているうちはまだまだ二流…。力と技術の二者択一が出来て初めて一流の選手になれる』……。儂の古い友人がよく言っていた言葉じゃ」

 

円堂「力と技術の二者択一…」

 

老人「その言葉に従うなら、お前さんはまだまだ二流という事になるな」

 

 目の前の少年を、弱小だったサッカー部を日本一に導き、宇宙人を名乗る超兵士を退け日本の未来を守った英雄だと知ってか知らずか、平然と“二流”と言い放つ老人…。

 しかし、不思議な事にその言葉には“悪意”は見られず、まるで目の前のバンダナの少年を試しているようかのような、含みのある笑みが浮かべられている。

 

円堂「……」

 

 老人の言葉に対し真剣に考え込む円堂と、それを見守る老人。

 老人のサングラス越しに映る目は、まるで孫の成長を静かに見守る祖父のように穏やかなものだった。

 

円堂「二流か…。それもいいかもな…!」

 

老人「ほぅ…?」

 

 本来ならば“二流”である事を否定するべきなのだろう。だが、目の前のバンダナの少年は満面の笑みで自身が“二流”である事を肯定する。

 

 流石の老人もそのような返答が返ってくるとは思っていなかったのだろう。やや呆気に取られたような声がその事実を証明している。

 

老人「不思議な奴だな。どうして二流である事を受け入れる?こう言うのもなんだが…儂は今、お前さんの事を遠回しに侮辱したのだぞ?」

 

円堂「…確かに俺がまだ一流の域に達していないのは少しショックです。けど!まだ俺が二流ってことは俺にはまだまだ成長の余地があるってことじゃないですか!それって!こう…!ああダメだな…上手く言葉に表せないや…。ーー!!!そう!“ワクワク”しませんか!?」

 

 “二流”である事に対し、“ワクワク”を感じると平然と言い放つ円堂。

 その返答を聞いた老人は、帽子のつばを掴みさらに深く被り直すと、徐に俯く。

 僅かに見えるその口元には、驚愕と喜びの感情が同時に浮き出ている。

 

老人「なるほどの…。“()()()()()”はしっかり受け継がれとるわけか…」

 

円堂「え?何かいいました?」

 

老人「…いーや、何も言っとらんよ。それじゃ、そろそろ試合が始まる時間じゃし、儂はもう行こうかの。試合楽しみにしとるぞ」

 

円堂「はい!ありがとうございました!」

 

 円堂は自身に初心を思い出させてくれた老人に対し、直角のお辞儀で感謝を伝え老人を見送る。

 

老人「…あぁそうじゃ、面白い物を見せてくれた礼に1つ助言(ヒント)をくれてやろう。…『どんな強力なシュートもゴールに入らなければ点にはならない』…。まっ、老人の戯言程度に覚えておいてくれ」

 

 最後の助言を伝え終えた老人は、今度こそ観客席へ向かい通路には円堂ただ1人となる。

 

円堂「『どんなシュートもゴールに入らなければ点にはならない』か…。ヘヘッ!面白いことを言うおじいさんだったな!よーーし!試合頑張るぞーーッ!!!」

 

 老人の言葉の真意を理解できなくとも、その胸に深く刻み込んだ円堂は、2日前に出来た因縁との決着を付ける為、フィールドへ向かう。

 

 その瞳には、これから行われる激闘に期待を寄せる光が灯っていた。

 

♢♢♢

 これより始まる日本対イギリスとの試合は、市街地より遠く離れた離島に建設された、ウミヘビスタジアムにて行われる。

 離島故に、チケットを手に入れたとしても簡単には観客席に座る事さえ許されないという、お世辞にも観客(サポーター)に寄り添っているとは言えない使用の数々…。

 

 だが、この日の為に海を超えて訪れた者達には些細な問題だったようだ。

 

ワーッ!!ワーッ!!

 

 まだ試合開始まで時間があるにも関わらず、既にフィールドの周囲は数千人の観客達によって取り囲まれていた。

 

観客『イッギリス!!イッギリス!!イッギリス!!』

 

 観客席から大量に送られる英国コールは、瞬く間に周囲の空気を震わせスタジアムに軽い地鳴らしを発生させている。

 

染岡「にしても会場はイギリスのサポーターばっかだな…。まるで悪役にでもなった気分だぜ…」

 

 イギリスと日本のサポーターを比率に直せば、大体7:3といった所か。

 偶然にも地球上の海と陸の比率とピタリと一致するサポーターの比率…。

 これによりイナズマジャパンは、異国の地での試合という条件は変わらずとも、圧倒的なアウェーな場での試合に挑む事となる。

 

雷牙「ハッ!いいじゃねェか悪役で!いっその事、観客にヒーロー敗北エンドを見せてやろーぜッ!!」

 

 染岡のボヤきに近い独り言により問題児スイッチが入ってしまった雷牙は、意気揚々とベンチから飛び出し無人のフィールドに降り立つと、観客席に向けて声高々に宣言する。

 

雷牙「ゲハハハッ!!!レディースアーンドジェントルメーン!!奈落・終焉・地獄絵座ゥ!!!今世紀最凶最悪の悪役・イナズマジャパン様の登場じゃ〜〜い!!!」

 

 ナイツオブクイーンのサポーター達に向けて、突然の悪者宣言を行う“怪物”。

 誰がどう見てもイギリスへの挑発目的なのは明らかであるが、肝心のサポーター達はイギリス・日本問わず皆、金髪の日本人(ジャパニーズ)に対しドン引きしている。

 

 だが、その中で唯一“怪物”に対して黄色い…いや黄金色の歓声を送る者が居た。

 

ライト「キャ〜!!!カッコいいよ雷牙〜〜!!!コッチ向いて〜〜!!!ファンサして〜〜!!!」

 

フィディオ「お、おいライト…!声が大きいって…!」

 

 敵情視察か、はたまた弟への純粋な応援の為か、もしくはその両方か。

 チームメイトと共に試合会場に足を運んでいたライトは、イタリア代表にも関わらず、公式・非公式が混在する数多の雷牙グッズを身に包み、『L・O・V・E・雷牙』の文字が刻まれた応援幕を大きく振り回し、最愛の弟を応援する。

 

豪炎寺「フッ、良かったな雷牙。今世紀最凶の悪役にも熱心なファンが居たぞ」

 

雷牙「ハン、気持ちだけは素直に受け取っておくとすっか」

 

 こうして、会場を包んでいたアウェーな空気を、やや微不利程度まで清浄した日本は、フィールドの中央で横一列に並び、イギリス代表と対面する。

 

エドガー「嬉しいよ。まさか再び君と再会出来るとは思ってもいなかったからね」

 

円堂「え?そりゃそうだろ?だって今日は試合なんだし」

 

エドガー「……」

 

 挨拶代わりのエドガーの皮肉を、持ち前の天然で返す円堂。

 両チームの大将は両者の健闘を称え、握手を交わし、チームメイト達は各々のポジションに着き終わる。

 

 今回のイナズマジャパンのスタメンは以下の通り。

 

FW: 豪炎寺、熱也、染岡

MF:風丸、鬼道、雷牙、虎丸

DF:土方、壁山、吹雪

GK:円堂

 

 フォーメーションは恒例の3-4-3だが、注目すべきはそのスタメン。

 なんと、日本の攻撃力の一角を担うヒロトをベンチに下げ、代わりに染岡がスタメンとして採用されている。

 一見すると非合理的にも見える久遠の采配…。その意図はシンプルに戦力の温存の為か?それとも染岡に新たな可能性を見出した故か?

 その答えは試合で分かるだろう。

 

円堂「みんなっ!!この大舞台を心から楽しんでサッカーやろうぜっ!!!」

 

イナズマジャパン『おおっ!!!』

 

エドガー「誇り高き騎士達よ!世界の頂点に立ち!必ずや我らが祖国に栄光を!!」

 

ナイツオブクイーン『YES!!』

 

ピーッ!!

 

 両チームの大将の激励により、選手の士気が極限まで高まった折に審判のホイッスルが鳴り響き、少年サッカー世界一を決める舞台…。その先陣を切る試合が幕を開ける。

 

染岡「豪炎寺っ!!」

 

 先行を獲得したのはイナズマジャパン。攻撃こそ最大の防御と言わんはがりに、速攻を仕掛ける日本は、僅か数秒で中盤まで攻め込み、染岡による豪炎寺へのパスが送られる。

 

 だが…

 

エッジ「そこだ!!」

 

染岡「なっ…!」

 

 染岡のパスがDFのエッジによってカットされた事で、一瞬にして攻撃権はナイツオブクイーンに移り、女王を守護る騎士達による怒涛の攻撃が始まる。

 

鬼道「皆っ!!絶対にエドガーにはボールを繋げさせるなっ!!」

 

 チームメイトに鬼道の指示が送られるが、ナイツオブクイーンの騎士団の如く統一された連携は、イナズマジャパンの防御を一切寄せ付けない。

 

円堂「なんて精度の高い連携なんだ…!韓国も十分凄かったけど、イギリスはその上を行っている…!」

 

エドガー「驚くのはまだ早い!見せてあげよう!聖なる騎士の剣をッ!!」

 

 日本の奮戦も虚しくボールを持ってしまったエドガーは、挨拶代わりと言わんばかりに、右脚を天高く上げ、十八番たる必殺シュートの体制に移る。

 

エドガー「“エクスカリバー”!!」

 

 天に掲げられし“聖剣”が振り下ろされ、神聖なる気を宿したシュートがゴールへ向かって射出される。

 

壁山「俺が少しでもキャプテンの負担を減らすっス!!だったぁ!!“ザ・マウンテン”!!!」

 

 日本の守備の要たる壁山の最強技が炸裂し、フィールドに雄大な山脈が出現する。

 広大な山々は、騎馬の如く進撃を続ける“聖剣の刃”を受け止める……が、刃の切れ味は壁山の想像を遥かに超えており、雄大なる山脈は一瞬にして切り拓かれる。

 

壁山「ウワァァァ!!キャプテン…!あとは頼むっス〜…!!」

 

円堂「任せろっ!!!ハァァァ!!!」

 

 仲間の努力を無駄にはせんと、日本の守護神は拳に気を集中させ天高く飛翔し、その背に黄金の魔神を降臨させる。

 

円堂「“怒りのぉ…!鉄鎚V3”!!!」

 

 この土壇場で進化を果たした、魔神はより力強く、よりパワフルになった拳を“聖剣の刃”へ向けて振り下ろす。

 “黄金の鉄鎚”と“聖剣の刃”の衝突…。その様はまさに、先日の一戦の焼き直しだ。

 

 だが…

 

円堂「グ…!な、なんだ…!?前回よりも…重い…!!」

 

 拳越しから伝わってくるシュートの重さは、前回受けた同型の必殺技の以上のものだった。

 仮にあの日の余興にて、このレベルのシュートを放たれていたが、円堂はボールが破裂する前に敗北していただろう。

 

円堂「でも…!負けてたまるかァァァ!!!」

 

 だが、“今”の円堂と“2日前”の円堂は別人だ。

 闘志の炎を燃やす事で、奮起した円堂の拳は黄金に輝き、今度こそ“聖剣の刃”を押し潰す。

 それにより、ゴール前に巨大なクレーターが発生し、その中央部にボールが収まった。

 

円堂「ハァ…!ハァ…!な、なんとか止めたぞ…!」

 

エドガー「なるほど…流石に()()()()は止めてみせるか…」

 

 今回は引き分けではなく、円堂の勝利という形で決着を付けたこの一戦…。

 しかし、敗者となったエドガーの表情に焦燥感はなく、寧ろ自身のシュートを止めて見せた円堂に対し、関心している余裕さえある。

 

円堂「よーーし!!ここから反撃だーッ!!!」

 

 円堂のキックによりボールは前線へ上がり、再びイナズマジャパンの攻撃が始まる。

 

鬼道「いくぞっ!必殺タクティクス“ルート・オブ・スカイ”!!」

 

 鬼道の号令を起点に発動されたタクティクスにより、空にパスコースが形成され、イナズマジャパンのパスが次々と繋がっていく。

 

 だが、ナイツオブクイーンもただ見ているだけではない。

 タクティクスその物は破れなくても、日本のエースストライカーに厚いマークを付ける事で、ボールの終着点の操作に成功していた。

 

 ヒロトはベンチ…豪炎寺、熱也はマークが厚く容易にパスが出せない…。

 そのような状況の中でパスの終着点に居た選手は……

 

染岡「ヘッ!ドンピシャだぜッ!!!」

 

 今試合が代表として初出場となる染岡竜吾だった。

 アジア予選中、ずっとベンチの上で溜めてきた鬱憤を世界の大舞台で晴らすべく、ピンク頭の蒼龍は力強いドリブルで駆け上がる。

 

ランス「無駄だ!日本のエースのパスコースは既に塞いでいる!オマエに勝ち目などない!」

 

染岡「パスコースを塞いだぁ?ハッ!んならよぉ…!俺が単独(ひとり)で決めればいいだけだろッ!!!」

 

 明らかに自身を舐めた物言いのランスに、怒りを抱いた染岡は実力で彼らを見返すべく、天より巨大な蒼龍が降臨させる。

 

染岡「轟けぇ…!!!“ドラゴォン…!スレイヤーァァァ”!!!」

 

 自身も龍でありながらも、龍滅者(ドラゴンスレイヤー)の名を冠する、矛盾を兼ね備えたシュート…。

 その威力は凄まじく、ナイツオブクイーンのDFの要たるランスを容易く吹き飛ばし、ゴールへ向かう。

 

フレディ「“ガラディーン”!」

 

 英国の守護神・フレディはその手に天を貫く黄金の刃を宿し、龍滅者を返り討ちにするべく振り下ろす。

 だが、龍滅者から放たれた蒼炎の炎は一向に弱まる気配はなく、それどころか一瞬にして黄金の刃を燃やし尽くした。

 

フレディ「グァアアアア!!!!」

 

ピーッ!!!

 

マクスター『ゴーールッ!!!この展開を誰が予想したでしょうか!?優勝候補たるナイツオブクイーンから、先制点を獲得したのはまさかのイナズマジャパンだーーッ!!!』

 

 “努力のドラゴンストライカー”・染岡竜吾。

 常にチームメイトたる、豪炎寺修也と稲魂雷牙と比較されながらも、めげずに続けてきた努力は、世界を相手に先制点を奪うという快挙となって報われた。

 

染岡(やりましたよ響木監督…!俺が世界から得点したんです…!)

 

響木「コク…!)」

 

 チームメイトの賞賛を受けながらも、自身を導いてくれた恩師への感謝を忘れていない染岡は、ベンチに座る響木へ向けて力強い目で頷き、響木も無言の頷きで応える。

 

フィリップ「まさかイナズマジャパンに先制されるとはな…!」

 

ランス「すまない…。全てはワタシのミスだ…」

 

 格下と見做していた、イナズマジャパンの先制はナイツオブクイーンの選手達にも小さくない動揺を与えていた。

 

フィリップ「…どうするエドガー?念には念を入れて()()を使うか?」

 

エドガー「…いや、切り札(ジョーカー)を切るには時期尚早だ。…だが、エンドウが()()()()()()()()()()()()()を止めた時は、アレを使う事も考えなければならない」

 

 余程の事がない限り使いたくない様子の“切り札”と、あれだけ円堂を苦しめておきながらもまだ不完全と言い放たれる“聖剣”…。

 騎士達に秘められた“秘密”は、祖国の首都の如く、濃い霧となって彼らを包み込む。

 

ピーッ!!!

 

マクスター『さァ!イナズマジャパンに先制点を許したナイツオブクイーン!まだまだ前半戦は始まったばかりだが、なんとか取り戻したい所ーーッ!!!……おおっと!?こ、これはーーッ!?』

 

 驚きを隠せない。 プロの試合すらも実況してきた彼が驚愕するとは、ナイツオブクイーンは余程凄いプレーやタクティクスでも発動したのだろうか?

 

 …いや、答えは違った。騎士団が発動したのは先ほどと一切変わり映えのないプレー…。だが、観客達はそのプレーに度肝を抜かれている。

 

 何故なら……

 

 

 

 

 

 試合再開から僅か1秒にてフィールドの上に天を貫く“聖剣”が聳え立っていたのだから。

 

マクスター『な、なんとーーッ!?キックオフから試合が再開して僅か1秒!ゴールとの距離はジャスト、コートの半分ッ!!まさかこの距離からシュートを撃つ気なのかーーッ!?』

 

エドガー「そのまさかだッ!!」

 

 馬鹿正直に実況の疑問に答えたエドガーは、天に聳え立つ聖剣を振り下ろし、ボールに叩き込む。

 神聖なる気を纏いしシュートは、これまた先ほどと変わり映えのしない速度とパワーで円堂が守るゴールへ向かう。

 

雷牙「ハッ!舐めんのもいい加減にしろよッ!ハーフラインからのロンシュー程度で、守を破れと思うなよッ!!」

 

エドガー「フッ…それはどうかな?」

 

 世界中には数多くの必殺シュートが存在しているが、どの国にも共通する欠点が存在する。

 その欠点とは実にシンプル。シュートは距離が離れれば離れる程、威力が弱まるのだ。

 シュートの推進力と注がれる気は、常に一定ではない。放たれた瞬間を100とするなら、ゴールに到達する頃の威力は90前後…。ロングシュートならば精々、5〜60程度の威力だろう。

 

 つまる所、如何にエドガーが優れた選手といえどロングシュートで円堂…いや日本からゴールを奪う事など不可能なのだ。

 

染岡「円堂が相手するまでもねぇ!俺の“ドラゴンスレイヤー”で撃ち返してやるぜッ!!」

 

 雷門の切り込み隊長を務める染岡は、自身の必殺シュートで聖剣を撃ち返すべく、シュートフォームに入るが……

 

染岡「なっ…!?」

 

 刹那、シュートは更に速度を増し染岡を擦り抜ける。

 

雷牙「だったら今度は俺ちゃんが相手だッ!!“ゴッド…ッ!?な、何!?」

 

 染岡と同様に自身の最強技で撃ち返そうとした雷牙だが、先ほどと同様、シュートは更に加速を始めた。

 何とかシュートには間に合ったものの、突然の加速により十分に気を溜まっていない“ゴッドレグルス”が“聖剣”に勝てる筈もなく、聖剣の刃は怪物を討つ。

 

雷牙「グッ…!」

 

鬼道「DFッ!明らかにあのシュートは何かがおかしい!!油断するなッ!!!」

 

 イナズマジャパンが誇る2人のストライカーを下したシュートを前に、“エクスカリバー”の特異性を確信した鬼道は、冷や汗を流しながらチームメイトに指示を送る。

 

吹雪「“トリニティブリザード改”!」

 

風丸「“スピニングフェンスッ”!!!」

 

壁山「だったァ!!“ザ・マウンテン”!!!」

 

土方「“スーパー四股踏みV4”!!!」

 

 イナズマジャパンの名だたるDF達が、聖剣の進撃を食い止めようと奮戦するが、真の姿を取り戻した神聖なる刃の前には“切られ役”も同然。

 目の前に立ち塞がる全ての障壁を圧倒的な力を持って切り刻み、またしても日本の守護神と対峙する。

 

円堂「止める!!“怒りの鉄鎚V3”!!!」

 

 今度も聖剣の刃を粉砕せんと魔神の鉄鎚が炸裂し、真球状のボールを大きく歪ませる。

 だが、今度は聖剣の刃は砕け散る所か、更に勢いを強め逆に魔神の屈強な右腕に大きな亀裂を入れる。

 

 そして……

 

円堂「グァァァァァ!!!」

 

ピーッ!!!

 

 魔神の鉄鎚を返り討ちにした聖剣は、円堂を吹き飛ばしゴールネットに突き刺さった。

 審判のホイッスルと共に、ナイツオブクイーンのスコアボードに『1』の数字が刻まれ、会場内に居る全ての人間にイナズマジャパンのリードの消失を知らせる。

 

雷牙「マジかよ…!?守がロンシュー如きに破られた…!?」

 

 さしもの雷牙も、ロングシュートで円堂が破られた事実に驚きを隠せない様子だ。

 

エドガー「種明かしをしよう。我が奥義、“エクスカリバー”は距離が離れれば離れる程その威力を増すのだよ。恐らく、先ほどのシュートは通常時の4〜5倍の威力は出ていただろうね」

 

 突如、雷牙の前に現れて“エクスカリバー”の特性を解説するエドガー。

 あまりにも反則的かつ、これまでのシュートの常識を覆す特性を持つ“エクスカリバー”に対して目を見開く雷牙だが、それ以上に手の内を晒すエドガーを解せないといった様子だ。

 

雷牙「へェ?随分優しいじゃねェか?手の内をペラペラと明かしてくれなんてよ!まさかオメーさんは、解説は敗北フラグだって事を理解してねーのか?」

 

エドガー「フッ、勘違いしないくれたまえ。コレは私の礼儀だ、多くの秘密を抱えたまま勝利を掴むなど、紳士のする事ではないのでね」

 

 本気でそう思っているのか、強者故の余裕か、はたまたその両方か。

 全ての手の内を晒したエドガーは、その長髪を華麗に靡かせ自陣へ戻る。

 圧倒的な実力を日本…そして、世界に見せつけたエドガー。イナズマジャパンの胸中には、まだ依然と存在する世界との壁の厚さと、濃い霧に包まれたかのように先の見えない展開に一抹の不安を刻まれていた。

 

ピーッ!!!

 

エドガー「行け!完全無欠の騎士達よッ!必殺タクティクス!“アブソリュートナイツ”!!」

 

「「「イエス サー!!」」」

 

 リードを帳消しにしながらも、ナイツオブクイーンは攻撃の手を緩めない。

 流れるような連携で、瞬く間にイナズマジャパンからボールを奪い返したナイツオブクイーンは、再びエドガーにボールを回し追加点を得ようとする。

 

 しかし、聖剣を携えた“聖騎士”の前に、金色の“怪物”が現れる。

 

雷牙「おっと?こっから先は立ち入り禁止だぜ?特に傲慢な英国紳士はよォ!!」

 

エドガー「フッ!はたして君は本物の“怪物”か?それとも知性を持たない粗暴な“獣”か?私が直々に確かめてやろう!」

 

 こうして始まった“怪物”と“聖騎士”の1対1の攻防。エドガーは恵まれた長身と卓越した技術を駆使して抜き去ろうとするが、雷牙は持ち前の反射神経とフィジカルを駆使して簡単には突破させない。

 

雷牙「解せねェなァ!距離が離れていればいる程、“エクスカリバー”の威力が上がるってんなら、オメーさんはDFに居れば無敵じゃねェかッ!!!」

 

エドガー「愚問だなッ!そのような勝利は誇り高き騎士には相応しくない!!私はあくまでFWとして勝利を掴むッ!!」

 

 “怪物”と“聖騎士”の実力は全くの互角。既にイナズマジャパンはエドガーのパスコースを塞ぎ、味方の援軍を阻止し、戦況は膠着状態に陥る。

 このような状況になってしまえば、“+1”を持つ者だけが勝利を掴むと相場が決まっている。

 

 今、この状況に於いてその“+1”を持っていたのは…

 

雷牙「しゃら臭ェ!!“獅風迅雷ッ”!!!」

 

 “怪物”の方だった。

 

 “獅風迅雷”を発動した事により、雷牙のフィジカルはエドガーを完全に上回り戦況は、膠着から一転してエドガーの劣勢となる。

 

 …だが、不思議な事にエドガーの表情には“焦り”や“屈辱”といった負の感情はなかった。

 寧ろ、目の前に現れた強者という存在に“歓喜”の笑みを浮かべていた。

 

エドガー「認めよう、ライガ・イナタマ…。君は粗暴な“獣”ではなく、歴とした“怪物”に血筋に連なる者だ…。だからこそ…私も本気を出させてもらうッ!!!」

 

 その瞬間、エドガーの身体から夥しい量のオーラが発せられ、次第に彼の中にある“英雄”の姿を形作る。

 

雷牙「コイツは…!」

 

 まるで刃を思わせる鋭い気迫は徐々に、熱気を浴びた“水蒸気”へと変換されると、フィールドに蒸気機関で構成された三又の魔犬(ケルベロス)とそれに跨る白銀の蒸気騎士(スチームナイト)が顕現する。

 

エドガー「紹介しよう…。コレぞ我が化身…“白銀の霧幻(むげん)騎士 バスカヴィル”!!」

 

雷牙「チッ…!来ォい!“レグ…」

 

エドガー「遅いッ!!!」

 

 目の前の“魔犬騎士”に対抗する為に、雷牙も化身で対抗しようとするが、聖騎士は“覇王”の顕現を許さずに、その巨大を駆使して雷牙を吹き飛ばす。

 

雷牙「グッ…!」

 

エドガー「少々卑怯な手を使ってすまない。だが、残念な事に私の狙いは君ではないのでね」

 

 “怪物”を突破した“聖騎士”は、間髪入れずにシュートフォームに入ると同時に、機械仕掛けの“魔犬”の身体から大量の蒸気が発せられる。

 霧に包まれた“魔犬”はその目を妖しく光らさせると、目にも止まらぬ速さで三度の牙がボールに炸裂し、ボール内部にエネルギーがチャージされる。

 最後の仕上げに、エドガーの蹴りと“蒸気騎士”の大剣による一閃がボールに叩き込まれると、エネルギーが一気に爆発し、周囲の霧を晴らしながらゴールへ向けて射出される。

 

エドガー「“霧幻の剣牙”!!!」

 

 蒸気機関の“魔犬”の牙と“騎士”の剣により炸裂した協奏曲(コラボレーション)

 イナズマジャパンはその協奏曲を止めようと、我が身を犠牲にしても障壁を作るも瞬く間に粉砕される。

 

円堂「みんな…!」

 

 圧倒的な力を見せるシュートを前に円堂の全神経に強烈な緊張が走る。

 それでも日本のゴールを守る者としての役目を全うする為に、彼もまた自身の中にある“英雄”の姿を顕現させシュートに立ち向かう。

 

円堂「ハァァァッ!!!“魔神 グレイトッ”!!!」

 

 世界という大舞台にて、初めて観衆の前に顕現した黄金の“魔神”。

 間髪入れずに円堂は右手で拳を握り左脚を天高く上げ、勢いよく地面を踏み込むシュートに向けて拳を突き出す。

 

円堂「“グレイテストォ…!フィストォォォ”!!!」

 

 本体の動きとシンクロし、“魔神”の屈強な右腕放たれる黄金の拳が“魔犬騎士”の霧幻と衝突する。

 だが、聖騎士の脚から放たれた純粋な力だけによる一撃は、一瞬で“魔神”の右腕に大きな亀裂を入れた。

 

円堂「グ…!」

 

エドガー「ほぉ?流石はエンドウだ、まさかここまで喰らい付くとは思わなかったよ。だが!!私には及ばない!!」

 

 聖騎士の勝利宣言に呼応するように、霧幻はより一層勢いを強め、黄金の拳を完全に粉砕し、円堂の腹部にボールをめり込ませる。

 

円堂「グァァァァァ!!!」

 

ピーッ!!!

 

 日本の守護神をその身ごと、ゴールネットに叩き込むと同時に、審判によるホイッスルが鳴り響き、ナイツオブクイーンのスコアボードに『2』の数字が刻まれる。

 

マクスター『ゴーールッ!!!エドガーの化身技が一瞬にして、エンドウからゴールを奪ったぞーーッ!!!コレにより両者の得点は2-1ーーッ!!!遂にナイツオブクイーンのリードだーーッ!!!』

 

 エドガーの圧倒的な実力と、マクスターの実況によりサポーターの熱気は更に高まる。

 怪物空気清浄機により、なんとか洗浄した会場内の空気はまたしても、英国コールにより包まれ、イナズマジャパンを精神的に追い詰める。

 

 その中で……

 

円堂「ハァ…!ハァ…!これが…!エドガーの本気…!!スゲェよ…!なんて…スゲェんだ…!」

 

 自身の“最強”すらも破られた円堂は、息を乱しながらも口角を上に上げ、喜びを噛み締めていた。




グレイテストフィスト「ワシの相手…こんなんばっか…。」

〜オリ技紹介〜
♦︎白銀の霧幻騎士 バスカヴィル
属性:火
分類:シュート
使用者:エドガー
≪概要≫
エドガーが使用する化身。“霧幻”は「むげん」と読む。
容姿は白銀色の鎧を着込んだスチームパンク味溢れるケルベロスに、同色の鎧を着た人型の蒸気騎士が乗り込んでいる感じ。一言で言えばケルベロスライダー。
名前の由来はイギリスの名探偵・シャーロックホームズシリーズの一作『バスカヴィル家の犬』から。

読者の皆様は当然、エドガーには“聖騎士アーサー”とか“鉄騎兵ギャロップ”の方が似合ってるんじゃね?英語とフランス語の区別も付かないアホ作者はにわかか?という感想を抱くだろうが、
これにはちゃんとした理由があり、“バスカヴィル”の元ネタは『逆転検事2』に登場する、とある盲目の暗殺者の『なんでチェスは西洋の戦争がモチーフなのに当時の戦争で必須だった猟犬の駒が無いん?馬鹿なの?だから趣味の仏像作りの片手間に猟犬(ケルベロス)モチーフの駒を作ってやったわ!(意訳)』という台詞が元ネタ。

【化身技】
♦︎霧幻の剣牙
“バスカヴィル”の化身技。モーションはケルベロスの3つの牙がポールを噛みつきエネルギーをチャージした後、騎士の一閃が炸裂しボール内部にチャージされたエネルギーを一気に爆発させるといった感じ。
素の威力は“マキシマム・オブ・レグルス”と同程度だが、コチラにも“エクスカリバー”と同様に距離が離れれば離れる程威力が上がるチート機能が付いている為、総合火力はコッチの方が上。
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