イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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やっぱ稲魂兄弟を書くのはクソ楽しいっス。兄弟の絆でしか得られない栄養があるっス。


深淵より這い上がりし影坊主

雷牙「よっ!ほっ!ほっ!」

 

ライト「やっ!ほっ!はっ!」

 

 数奇な運命が巡りに巡って、本来この島では実現する事のなかった兄弟による“稲魂ステップ”が行われる。

 

 …だが、1人ならば割とカッコよく映える“稲魂ステップ”は、2人以降となると中々にシュールな絵面になる。

 何せ2人の中学生が揃いも揃って、フィールドの上をピョンピョン跳ねているのだ、寧ろ吹き出さないチームメイトを褒めるべきだろう。

 

???「いいな〜!ねェねェグラサンのおじさん!私も“稲魂ステップ”していい〜?ベンチに座ってばっかは性に合わないからさ〜!」

 

影山「駄目だ。貴様は大人しく座っておけ」

 

???「※※※(ものすっごく品のない言葉)〜!!!」

 

 何やらチームKのベンチで一悶着があっているようだが、オルフェウス達には関係の無い事だ。

 試合開始まで残り数秒。各選手達は、各々のルーティーンを行い試合へのモチベーションを高めている。

 

 オルフェウスのスタメンは以下の通り

 

FW:フィディオ、佐久間、雷牙

MF:ライト、アンジェロ、鬼道、不動

DF: ベント、オットリーノ、マルコ

GK:円堂

 

 怪我をしたオルフェウスのメンバーの穴を埋める形で、イナズマジャパンからの助っ人が入っている都合上、珍しく雷牙がFWとして採用されている。

 

フィディオ「皆っ!絶対にこの試合に勝利して、代表の座を取り戻すぞ!!」

 

『おおっ!!!』

 

デモーニオ「敬愛する総帥の為に!絶対の勝利をッ!!!」

 

『ラジャー!!!」

 

 各々の大将がチームメイトを鼓舞し、遂に運命の一戦が幕を開ける…!

 

ピーッ!!!

 

王将『さぁ始まりました!イタリア代表・オルフェウスVS謎のチーム・チームKとの一戦!この試合に至るまでの一切の事情は分かりませんがッ!試合ある所に角馬ありッ!!!この試合は、偶然通りすがった角馬王将が務めさせていただきますッ!!!』

 

???「おお〜!やるねェ〜グラサンのおじさ〜ん!プロの実況を雇うなんて、風流ってモンを分かってんじゃ〜ん!!」

 

影山「…私は知らん。偶然通りかかった実況者が、勝手に実況をしているだけだ」

 

???「え?何ソレ。普通にホラーなんだけど」

 

 いつの間にか現れた挙句、これまたいつの間にか実況を始めていた日本を代表する名実況者こと、角馬王将。

 意図的か偶発的かの違いはあるとはいえ、息子同様突如始まった試合をノリノリで実況し始める辺り、血は争えないという事なのだろう。

 

 …試合に戻ろう。

 

 先行を獲得したチームKのFWはキックオフ早々、バックパスを行いエースたるデモーニオにボールを回す。

 デモーニオは、FW陣を引き連れ駆け上がり軽快なパス回しによって、オルフェウスのFW陣のディフェンスを次々と突破して行く。

 

雷牙「避けた!?」

 

佐久間「強い…!」

 

デモーニオ「フッ、ココまでほんの小手調べ…。俺の獲物はただ1人…!」

 

 中盤へ突入したデモーニオだが、彼のゴーグルに映る選手はゴールを守る円堂ではない。

 サッカーにおける勝利条件の1つたる、ゴールを後回しにしてでも優先すべき存在がそこに映っているのだ。

 

デモーニオ「お前は俺の獲物だッ!キドウッ!!!」

 

鬼道「来いッ!!絶対に止めてみせる!!!」

 

 瓜二つ髪型。瓜二つのゴーグル。瓜二つのマント。

 

 あまりにも共通する要素が多い2人の攻防は、その容姿に違わない鏡写しのようにほぼ互角の勝負を繰り広げる。

 

 だが…

 

デモーニオ「“超イリュージョンボール”!!」

 

鬼道「“イリュージョンボール”だと…!?」

 

 ボールの影すらも精巧に模倣(コピー)した3つの幻影に鬼道を惑わされ、その隙にデモーニオが突破する。

 

不動「チッ!何してやがる!その程度の必殺技に引っかかってんじゃねぇよ!!!」

 

 一見すると不動の発言は全ての責任を鬼道に押し付けているように思えるが、彼の言う事も尤もだ。

 “イリュージョンボール”は鬼道も習得しており、なおかつデモーニオと同レベルまで鍛え上げている。

 だからこそ、この中では誰よりも破り方を熟知している筈なのだ。

 

 だが、自身と瓜二つの容姿、瓜二つの技術を備えた選手が使用する“イリュージョンボール”は、彼の動揺を誘うには十分すぎる物だった。

 

ライト「抜かせないっ!!」

 

デモーニオ「邪魔だ!“怪物”の血めッ!!!」

 

 鬼道を突破した直後、今度はライトが前に立ちはだかると、突如デモーニオは鬼道のライバル心とは大きく異なる、純粋な嫌悪感をライトに向け、ヒールリフトを駆使して華麗に抜き去る。

 

デモーニオ「どうした?“怪物”の血筋とはその程度か?だったら期待外れだなッ!!!」

 

ライト「くっ…!」

 

王将『稲魂雷斗すらも抜かれてしまったァァァ!!!なんという華麗なテクニック!イタリアの精鋭、オルフェウスの選手達がデモーニオ1人に翻弄されているゥゥゥ!!!』

 

フィディオ「パワー、スピード、テクニック…どれを取っても一流だ…!イタリアにこんな選手が居たのか…!?」

 

 見た事も聞いた事もない、無名の強豪デモーニオの実力にフィディオは舌を巻いているが、それ以上に強い衝撃を受けているのはイナズマジャパンの選手達だった。

 

円堂「デモーニオのあのテクニック…本当に鬼道の生き写しみたいだ…!」

 

 デモーニオから繰り出される数々のテクニック…。それを見る度に円堂は帝国時代の鬼道の活躍を思い起こさずにはいられない。

 

 デモーニオだけじゃない。三角形(トライアングル)を意識したプレーを筆頭にチームKというチーム自体が、かつての帝国を思わずにいられない。

 

フィディオ「コレ以上、先に行かせるわけにはいかないっ!マルコ!ベント!ディフェンスラインを下げるんだ!!」

 

 この短時間で圧倒的な実力を見せたデモーニオを脅威に感じたフィディオは、その顔に焦燥感を浮かべながらチームメイトに指示を送るも、デモーニオには通用しない。

 

デモーニオ「何だそのお粗末な指示は?その程度でイタリア代表のキャプテンを名乗るとは、片腹痛いわッ!!!」

 

 フィディオの名誉の為に言っておけば、彼の指示は適切な物だった。だが、無名の強豪の存在と硬い絆で結ばれた仲間の不在による動揺が、彼らの本来の実力を発揮させないのだ。

 

フィディオ(クソっ!考えろフィディオ…!こんな時…キャプテンだったらどうする…!?)

 

 フィディオの脳裏に浮かぶのは、今頃異国の地を旅しているであろうイタリアの戦士達を統べる大将(キャプテン)の顔…。

 彼ならば、この状況の中でも適切な指示を送り必ずや危機を脱せていたに違いない…そう思ってしまうのだ。

 

雷牙『オチツケ!フィディオッ!!!』

 

フィディオ『ッ!?ライガ…!』

 

 自身の力を不足を悩む若き“剣士”に救いの手を差し伸べたのは、かつて苦楽を共にした金色の“怪物”であった。

 

雷牙「心配すんなッ!ウチの天才ゲームメイカーは、相手の戦術を知り尽くしているんだぜッ!そうだろ!鬼道ッ!!!」

 

鬼道「稲魂…!…ああ!俺に任せろッ!!」

 

 “怪物”の鼓舞により漸く動揺を振り切った鬼道は、ここまでの失態を取り戻すべくゲームメイクを開始する。

 

鬼道「アンジェロ、右から来るぞ!ベント、右サイドだ!」

 

デモーニオ「フッ!だったらコチラも!」

 

 フィールドに2人の“鬼”による声が絶え間なく飛び交う。

 鬼道が指示を送ればデモーニオも負けじと指示を送り、両チームとも一進一退の攻防を繰り広げる。

 一方が動けばもう一方はその戦略を潰す…。その様はまるでチェスのミラーマッチだ。

 

デモーニオ「そこだ!」

 

 互角のミラーマッチの末に、鬼道の指示に僅かな隙を見出したデモーニオは、ベルディオに向けてパスを送る。そこに……

 

佐久間「帝国の戦術を知り尽くしているのは鬼道だけじゃない!!お前のパスの行き先は全てお見通しだ!!!」

 

 既にデモーニオの狙いを予測していた佐久間が、ベルディオのマークに入る事でパスコースを完璧に潰す。

 

佐久間「貰ったァ!!!」

 

 佐久間の予想通りベルディオにパス送った事で、デモーニオは所詮影山に鬼道の技術を叩き込まれただけの模造品(コピー)でしかない事を確信する。

 

 

 

 

 

 それこそがデモーニオの策略だと気付かずに…

 

デモーニオ「フッ…クズめ」

 

佐久間「なっ…!?」

 

 だが、ボールは突如軌道を大きく変え、伏兵として潜んでいたロゼオにボールが回ってしまった。

 

佐久間「馬鹿な!?こいつですらも囮だったのか!?」

 

デモーニオ「フハハハ!!!総帥の手を離れたオマエ達に、俺の動きを読める筈がないッ!!!キドウより鋭くッ!キドウより速くッ!キドウより強いッ!それがこの俺、デモーニオ・ストラーダだッ!!!」

 

 鬼道すらも上回る巧みなゲームメイクにより、完全にフリーとなったデモーニオは円堂と対峙し、満を辞してのシュートフォームに入る。

 

デモーニオ「俺達チームKこそ!総帥の理想ッ!究極のチームッ!そして…!コレが究極のシュートだッ!!!」

 

 デモーニオが口笛を吹いた瞬間、五匹の漆黒のペンギン達が地面から射出され、空を舞う。

 その後急旋回したあと、天に向かって振り上げられたデモーニオの右脚全体に噛み付いた。

 

佐久間「あれは…!“皇帝ペンギン1号”…!?」

 

鬼道「い、いや…!シュートフォームこそ同じだが、何かが違う…!」

 

 強い既視感を感じさせるシュートフォームを経由し、禍々しい赤黒い気によって包まれた右脚による強烈なシュートがボールに炸裂する。

 

デモーニオ「“皇帝ペンギンX V3”!!!」

 

 デモーニオの脚を離れた、数字では表せない“X(アンノウン)”の領域へと至った漆黒のペンギン達は、ミサイルの如き軌道を以ってボールに追従し、円堂に襲い掛かる。

 

円堂「“怒りの…な!速い!?」

 

 漆黒の砲弾と化したシュートを止めるべく、右手に気を集中させた円堂だったが、“皇帝ペンギンX”の弾速は円堂の予想を遥かに超えており、シュートが円堂の脇腹に直撃し、その身ごとゴールに押し込んだ。

 

ピーッ!!!

 

王将『ゴォォォル!!!先制点を獲得したのはチームKだァァァ!!不安な倒れ方をした円堂だが、果たして彼は無事なのかァァァ!?』

 

雷牙「ケッ!アイツがこの程度で潰れるタマかよッ!」

 

 雷牙の言葉通り、円堂はすぐに立ち上がり特に目立った外傷もない様子だ。

 それでも流石にノーダメージとはいかなかったようで、やや息を荒くしている。

 

佐久間「“皇帝ペンギンX”…!なんて技だ…!“皇帝ペンギン1号”以上の威力を持ちながら…身体に一切の負担が掛かっていない…!」

 

デモーニオ「フハハハ!!見たか!キドウ!!コレぞ究極のペンギン…“皇帝ペンギンX”!!!“1号”のような欠陥だらけの必殺技とは違う!正真正銘最強の“皇帝ペンギン”だッ!!!」

 

鬼道「クソ…!!!」

 

 まだ前半戦が始まってから10分程度しか経過していないものの、オルフェウスのプレーは悉く通用せず、円堂が先制点を許し、鬼道は冷静さを欠いている…。

 ハッキリ言って、オルフェウスを包む空気は最悪と言っても過言ではない。

 

ライト「円堂君が手も足も出ないなんて…。コレは簡単にはいかなそうな相手だね…」

 

 さしものライトも、未知の強豪チームを前にして、軽い冷や汗を流し動揺を隠せない様子だ。

 

 …だが、この男だけは違った。

 

雷牙「なんだァ?泣き虫弱虫のライトくんは、()()()()のお相手さんに怖気付いちゃったのかな〜?」

 

 “恐れ”や“不安”などは自身とは無縁の長物と言わんばかりに、自身のペースを乱す事なくワザとらしく兄を煽る。

 

 弟の遠回しな激励に対しての兄の返答は……

 

ライト「へっへーん!そんなワケないでしょ?どんな敵が相手でも!ボクたち兄弟(2人)が揃えば絶対に負けないよ!だってボクたちは“怪物”の子どもだからねっ!!!」

 

雷牙「ハッ!!!ライトの癖に臭い台詞を吐きやがるじゃねェかッ!!!…だが、心意気や良し(ベネ)ェ!!!」

 

 偉大なる“怪物”の血と魂を受け継いだ兄弟は、再び並び立ち戦闘体制に入ると一斉に黄金の気を放出する。

 その輝きは、青空を照らす太陽にように荒々しく、夜空を煌めく星々のように優しい光だ。

 

雷牙「さァ!第二ラウンド始めっかッ!!!」

 

ライト「うんっ!フルパワーだよっ!!!」

 

ピーッ!!!

 

 未知なるペンギンにより、本気のスイッチが入った稲魂兄弟による攻撃が始まる。

 

デモーニオ「チッ…!何が“怪物”の息子だ!オマエ達に勝利し証明してやるッ!血縁などは強さに何1つ影響を及ばさないとなッ!!」

 

 血筋という言葉に強い嫌悪感でもあるのか、デモーニオは顔に軽く青筋を立てながら雷牙へ襲い掛かる。

 だが、金色の“怪物”は“鬼”の劣等感すらも鼻で笑い飛ばす。

 

雷牙「なら残念だねェ、既に証明されちゃってんからなッ!!!」

 

 鬼道の能力を完璧に模倣したデモーニオには、当然雷牙のデータも叩き込まれている。

 だが、彼の中にある雷牙のデータとは一体、いつの物なのだろう?

 

 FF時か?チームレグルスとの決戦時か?それともアジア予選時の物か?

 

 いずれにしても、彼の中にあるデータは“今日”よりも“過去”の物である事は確実だろう。

 

 何はともあれデモーニオは、全細胞で実感する事となる。目の前の少年が“怪物”と言われるその所以を…

 

デモーニオ「消え…!?」

 

 獲物に牙を剥いた“怪物”と対峙した時、0.1秒の油断は『死』を意味する。

 

雷牙「どうした?究極の力とやらはその程度か?だったら…期待外れだぜッ!!!」

 

 常に限界を越え続ける“怪物”に取って、過去のデータなど意味を為さない。

 当然、その事を知っている影山はデモーニオに対し、“怪物”のデータは参考程度に留めておけと予め言っていた筈だ。

 にも関わらず、自身の能力に慢心し“怪物”の突破を許してしまったのは、デモーニオの落ち度としか言えない。

 

王将『抜いたァァァ!!!まるで稲妻の如き速さで、デモーニオを突破したぞォォォ!!!』

 

雷牙「ハッ!!驚くのはまだ早ェよ!コッからがショータイムだッ!!!」

 

 デモーニオを突破した雷牙は、ライトとの巧みな連携を駆使して、必殺技を使わずとも、チームKの選手達を翻弄して行く。

 

王将『コレは凄ォォォい!!!一切の会話も!一切のアイコンタクトも用いずに流れるような連携が繋がるゥゥゥ!!!これぞまさに阿吽の呼吸だァァァ!!!」

 

円堂「スッゲェ…!これが雷牙とライトの本来のプレーなんだな…!」

 

デモーニオ「チッ!ココまでやるとは想定外だ…!だったら…!」

 

 稲魂兄弟を連携を破るには、まだデータが足りないと判断したデモーニオは、余計な指示を打ち止めデータ収集の為の分析に徹する。

 

雷牙「ライトォ!!!」

 

 最後のDFを突破した雷牙は、ヒールリフトでボールを上空に上げると、既に上空に待機していたライトによって、夜空に獅子座が描かれる。

 

ライト「“スターダストレオーネV4”!!!」

 

 獅子を形作る星々の軌跡は銀河を駆ける獅子を降臨させ、星屑の獅子による咆哮がフィールド中に響き渡る。

 

インディゴ「ゴールはやらんッ!!ハァァァァァ!!!」

 

 チームKの守護神たるインディゴは、その身に煌めく金剛石で構成された“獣”の魂を宿すと、勢いよく獅子に向かって襲い掛かる。

 

インディゴ「“真ダイヤモンドファング”!!」

 

 煌めきの“獣”による金剛石の牙は、一切の恐れなく獅子に噛み付くも、地球の地中深くに埋まっているだけの金剛石と、自由気ままに銀河の星々を駆ける獅子とでは、そのスケールが違いすぎる。

 

 “獣”の牙は見る見るウチに亀裂が入り、一瞬にして粉砕されてしまう。だが、インディゴはキーパーとしての最後の意地を見せ、なんとかシュートの威力を殺す事には成功した。

 

インディゴ「馬鹿な…!?最強の力を得た俺が、止めきれなかっただと…!?」

 

 自分がシュートを止め損なうとは夢にも思っていなかったインディゴは、目を見開きながら宙を舞っているボールを見つめている。

 

ライト「あ〜…最初に言っとくけどさ…。()()()()だよ?」

 

インディゴ「なッ…!?」

 

 自身の役目を終え、力なくボールの行方を追っていたインディゴは再度目を見開く事となる。

 

 何故なら……

 

 

 

 

 その上空には“神”の領域へと到達せし“獅子王(レグルス)”が降臨していたのだから。

 

雷牙「“ゴォォォッド!レグルスゥゥゥG2ッ”!!!」

 

 “獅子王”その物と化した“怪物”による渾身の一撃は、ボールに夥しい量のオーラを纏わせながら、ゴールへ襲い掛かる。

 完全に不意を突かれたインディゴは、急いで“ダイアモンドファング”の体制に入ろうとするが、どう考えても間に合わない。

 

インディゴ「クソ…!!“フルパワー…グォォォォ!?!?!?」

 

ピーッ!!!

 

 敵前逃亡せずに、“獅子王”に立ち向かった事は褒めるべきだろうが、“王国”ですらないただの“大楯”程度で止められる筈がなく、“獅子王”の一撃は大楯を一瞬で粉砕し、ゴールネットに突き刺さった。

 

王将『ゴォォォルッ!!!兄の動きを完璧に読んでいた、稲魂渾身のシュートによりゴールを奪ったァァァ!!!これにより得点はイーブン!試合は振り出しに戻ったぞォォォ!!!』

 

雷牙「ハッ!雷牙さんに掛かればちょちょi「やったね雷牙!!」ドワァ!?は〜な〜せ〜ラ〜イ〜ト〜!抱きついてんじゃね〜!」

 

ライト「い〜や〜だ〜!」

 

不動「…ケッ、馬鹿共が…。付き合ってらんねー…」

 

 試合中にも関わらず兄弟漫才を繰り広げる2人に対して、チームメイト達は呆れているが、その表情には先ほどまでの陰鬱とした感情はない。

 兄弟の得点により、チーム内を包み込んでいた空気が変わった事の証拠だろう。

 

デモーニオ「チッ!取り返されるとは情け無い…!…だが、既に計画(プラン)は完了した…。もう先ほどのような失態はせん…!」

 

 この僅かワンプレーで、稲魂兄弟の攻略法を確立させたデモーニオは、先ほどのような失態を重ねないと強く誓い、次のプレーに備える。

 ゴーグル越しに映るその瞳には、狂気を浴びた赤黒い光が灯っていた…。

 

ピーッ!!!

 

デモーニオ「ビオレテッ!俺にボールを回せッ!」

 

ビオレテ「おうッ!」

 

 キックオフ早々、またしてもバックパスによりデモーニオにボールが回る。

 だが、目の前の相手は世界に名を轟かせる強豪達だ。既に先程の攻撃で露出した弱点は鬼道のゲームメイクによって改善されている。

 もう同じ攻撃では、オルフェウスを攻略出来ないだろう。

 

デモーニオ「ホゥ?流石に最低限の学習能力はあるようだな?」

 

 それでもデモーニオの表情に“焦り”や“恐れ”といった感情はない。寧ろ、鬼道を褒め讃える余裕すら見せている。

 

 不気味にさえ思えるデモーニオの余裕…。オルフェウスはその正体をすぐに理解する事となる。

 

デモーニオ「光栄に思うがいいキドウッ!今から貴様に見せるのは、この俺の究極の力だッ!!!ハァァァァァ!!!」

 

円堂「あれは…!」

 

 まるで鬼道に見せつけるかのようにデモーニオの背中から夥しい量のオーラが放出されると、オーラは不定形な気から禍々しい赤黒い電子へと変換され、次第に人型の“何か”を形作る。

 

鬼道「馬鹿な…!?化身だと…!?」

 

デモーニオ「ハーハッハッハ!!!そうだ!コレが俺の化身!“電脳化身 プラズマシャドウ”だッ!!!」

 

 完全に顕現したデモーニオの化身、“電脳化身 プラズマシャドウ”…。

 赤と黒の二色の電子で構成された不安定な肉体は、これまでの化身とはまた異なる異質さを感じさせ、まるで“悪魔”を思わせるグロテスクな容姿は見る者全てに“恐怖”を抱かせる…。

 

デモーニオ「フハハハ!!!どうだキドウ!?俺はお前には使えない化身を使えるぞッ!!!コレこそ、俺がオマエを上回っている証拠だッ!!!」

 

鬼道「クソ…!稲魂!雷斗!デモーニオをマークしろッ!!!」

 

雷牙「任せとけッ!!!天まで轟けェ!!!“雷鳴の覇王 レグルス・マキシマムッ”!!!」

 

ライト「OK!来て!ボクのマイフェイバリットヒーロー!“雷星拳牙 レグルス”!!!」

 

 鬼道の司令を合図に、怪物兄弟はフィールドに二対の“レグルス”を顕現させ、目先の脅威たる“電脳化身”に立ち向かう。

 

フィディオ「凄い…!コレが化身か…!」

 

 同じ“レグルス”の名前を冠していながらも、容姿は大きく異なる二体の“レグルス”は、一方はその右手に黄金の大斧を携え、もう一方は生まれ持った強靭な拳を握り締め、“電脳化身”に襲い掛かる。

 

 だが……

 

デモーニオ「フン!馬鹿共めッ!!!」

 

雷牙「なッ…!?」

 

ライト「嘘でしょ…!?」

 

 黄金の大斧と拳が、“電脳化身”に直撃する直前…。“電脳化身”はまるで霧のように四方に分散し“レグルス”達の攻撃を躱したのだ。

 

デモーニオ「隙有りィ!!!」

 

 自分達の経験にはない回避方法に呆気に取られた怪物兄弟達は、一瞬だけ思考を止めてしまった事で、その隙を見逃さなかったデモーニオに突破されてしまった。

 

 四方に分散した“電脳化身”は、再び1つの化身へ戻りオルフェウスの選手達を蹂躙しながら、駆け上がる。

 

フィディオ「コレ以上、先には行かせないっ!!!」

 

デモーニオ「…イタリアの“白い流星”、フィディオ・アルデナ…。俺も昔はオマエに憧れていたよ…。だが、不思議だなッ!今ではオマエはどうしようもない雑魚にしか見えないッ!!!」

 

フィディオ「グァァァァァ!!!」

 

 化身により齎された圧倒的なパワーにより、フィディオすらも突破したデモーニオは、再び円堂と対峙する。

 

円堂「ウォォォォォ!!!“魔神 グレイトッ”!!!」

 

 円堂は即座に“魔神”を顕現させ、デモーニオのシュートに備える。

 デモーニオも間髪入れずにシュートフォームに入ると、主人の動きとシンクロするように“電脳化身”の胸に虚空の穴が開かれた。

 

デモーニオ「“シャドウレッグ”!!!」

 

 デモーニオがシュートを叩き込んだと同時に、虚空の穴の内部から真紅の脚が飛び出し、ただでさえ強力なシュートに更なるパワーを与え、円堂に襲い掛かる。

 

円堂(“イジゲン…いや!この技にはこっちだ!)

 

 “イジゲン・ザ・ハンド”を発動しようとした円堂だったが、直前で何かを感じ取ると体制を変え、力強い一歩と共に黄金の右手を突き出す。

 

円堂「“グレイト・ザ・ハンドッ”!!!」

 

 円堂の予想は正しく、“シャドウレッグ”は技術(テクニック)重視の必殺技だ。

 もしも“イジゲン・ザ・ハンド”を選択していれば、一瞬の拮抗すらも許さずにゴールを奪われていただろう。

 

 …そう、確かに円堂の選択は正しかったのだ。

 …だが、“グレイト・ザ・ハンド”で“シャドウレッグ”を止めれるか…それはまた別の問題なのだ。

 

円堂「ぐっ…!ぐぁぁぁぁ!!!」

 

 円堂の抵抗虚しく、“電脳化身”による影の一撃は魔神の右腕を容易に粉砕し、ゴールネットを激しく揺らす。

 

王将『ゴォォォル!!!デモーニオの化身シュートが、またしても円堂からゴールを奪ったぞォォォ!!!これで得点は1-2!!!またまたチームKのリードだァァァ!!!』

 

 審判のホイッスルが鳴り響き、チームKのスコアボードに『2』の数字が刻まれる。

 

 オルフェウスを超える連携、鬼道を凌駕する司令塔、フィディオですらも敵わない化身によるパワー……。

 これらの事実は、怪物兄弟達が変えたばかりの空気を元に戻すには十分すぎる物だった。

 

 そして……

 

鬼道(俺が雷門で得た物が何1つ通用しない…。俺は…影山の支配から逃れられないのか…?)

 

影山「ククク…!そうだ鬼道…!貴様が居るべき場所は雷門などではない!!戻って来るのだ!私の元に!そうすれば…!貴様はもっと強くなれる…!」

 

 自らの意志により自由意志を取り戻した筈の“鬼”は、闇よりも暗い“影”による呪縛に再び囚われようとしていた…。




アニメでの影山はデモーニオを高く評価してたけど、こっちの影山はあんま評価してないです。寧ろ半端者として嫌悪してるまであります。

〜オリ技紹介〜
【通常必殺技】
♦︎ダイヤモンドファング
属性:山
分類:キーパー
使用者:
進化系統:究極奥義
≪概要≫
チームKのGK、インディゴが使用するキーパー技。
名前の通り、かつて源田が習得させられた“ビーストファング”の進化系であり、“皇帝ペンギンX”と同様に威力を向上させながらも、身体に掛かる負担を完全に克服している。
名前の由来はシンプルに、チームKが選手が宝石由来が多いからじゃあダイアモンドでしょという理論。
オリオンのダイアモン堂は関係ない……多分。

【化身】
♦︎電脳化身 プラズマシャドウ
属性:無
分類:シュート(デモーニオver)
使用者:一部のRHプログラム被験者
≪概要≫
一部のRHプログラムの被験者が使える汎用化身。
化身のメカニズムをほぼ完璧に解析した“雷帝”により、ある程度の技術が確立された事でRHプログラムに組み込まれた。
容姿・技共にパーフェクト・カスケードが使用する“プラズマシャドウ”と同一(そもそもコチラの正式名称も“人工化身 プラズマシャドウ”であり、プライドの高いデモーニオが勝手に改名しただけ)。
何故、“雷帝”が200年未来の技術を習得しているのかは現時点では不明。
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