雷牙「アイツが鬼乃子…?守をぶっ倒したっつーから、どんなゴリラかと思ったら…普通のガキじゃねェーか!?」
フィディオ「い、言うほど普通か…?割と個性的な気がするけど…」
ライト「あの子…雷牙に似ているような…?」
韓国戦前に起こった円堂の自信喪失の原因が、彼女による事は本人の口から聞いていたが、実物を前にしてもにわかには信じられない。
目の前に居る、イナズマジャパン最年少である虎丸と同等の幼さを残す顔立ちと、150cmにも満たない小柄な体躯の少女が、円堂を倒した者と同一人物とは思えないのだ。
鬼乃子「ハイハイ、ガキで悪うございましたね〜。だ〜け〜ど〜!私ちゃんが、その鬼乃子ちゃんなのです!ね〜?円堂パイセーン?」
円堂「ああ…!間違いない…!こいつがその鬼乃子だ…!」
雷牙「マジかよ…!」
目の前の少女の言う事を半信半疑で怪しむ中、唯一の目撃者が肯定してもなお、雷牙は想像とは大きく異なる“鬼”の姿に驚きを隠せない。
すると…
鬼道「…た!」
鬼乃子「ん〜?ちょっと何言ってる分かんないな〜?疑問文は人に伝わるように書かないと成立しないって、帝国で習わなかったの〜?」
鬼道「何故、デモーニオを攻撃したッ!!!?あいつは影山の呪縛から逃れ…本当のサッカーを取り戻していたんだッ!!攻撃をする必要はなかっただろうッ!!!」
鬼道は先程のデモーニオに対する蛮行に対し、レンズの奥にある目尻に涙を浮かべ問い詰めるも、少女の顔には“反省”や“罪悪感”といった
寧ろ、自分のどこに非があるのか心当たりがないと言わんばかりの表情と仕草で、彼を挑発するようにあっけらかんと答える。
鬼乃子「だって〜、そこのグラサンのおっさんに試合に出たいのなら、ゴーグルくんを排除しろって言われたんだも〜ん。まぁ、普段からの“小粒”呼びの腹いせが9割だけど」
鬼道「貴様ァ…!」
影山同様に、人の心がない返答を行った少女に対し、寸での所で納めまっていた筈の怒りが再発し、鬼気迫る表情で少女の胸ぐらを掴みかける。
だが、鬼道の暴走は実行直前のギリギリの所で後方から現れた謎の手によって引き止められる。
鬼道「不動…!」
不動「まぁ、落ち着けよ鬼道クン?感情的になるのはらしくねぇーぜ?レディには優しくしろって、お父さんから習わなかったのかぁ?」
鬼乃子「キャ〜!カッコいい〜!か弱い美少女のピンチを救うなんて、流石は“孤高の叛逆児”〜!ダッサいモヒカンヘアーなのが超残念だけど〜!」
不動「…前言撤回だ鬼道。こいつをブン殴っていいぞ、嫌なら俺がこいつを殺す」
鬼道「…もういい、今ので頭が冷えた…。デモーニオの仇は暴力ではなく、サッカーで討つ…!」
不動「ヘッ!確かになぁ!如何にも真打ち登場って感じだが、残念!もう残り時間は1分ちょいしかねぇ!ここからの逆転はどう頑張って不可能なんだよッ!!」
不動の言う通り、残り1分弱しかない残り時間でオルフェウス相手に、3点を奪って逆転するなど、時間的にも物理的にもどう考えても不可能だ。
だが……
鬼乃子「まっ、確かにね〜。流石の私でもこっからの逆転は無理だよ、
不動「あん…?」
鬼乃子は何やら含みのある発言を終えると、見覚えのありすぎる不敵な笑みを浮かべ、オルフェウスを挑発するように人差し指を突きつける。
不動「…何の真似だ?」
鬼乃子「コレは予告だよ〜!よ・こ・く!残り時間1分以内に、私1人でアンタたちから
『なっ…!』
少女は目の前の日本とイタリアから集められた精鋭達を相手に、1人で点を奪うという意味が分かっているのだろうか?
参考までに、デモーニオですらもゴールに辿り着くまでに掛かる時間は2〜3分…それも連携を駆使してやっとなのだ。
にも関わらず、少女は僅か1分、なおかつたった1人でオルフェウスからゴールを奪ってみせると断言する。
雷牙「ハッ!面白れェじゃねェかッ!!やれるモンならやってみやがれッ!!」
鬼乃子「Good!そうこなくっちゃ!それじゃ…第二ラウンド始めよっか!」
こうして、紛い物の“鬼”が没し、新たに降臨した真なる“鬼”を加えたチームK…。
長き渡って繰り広げられた真のイタリア代表の座を賭けた運命の一戦、そのラストワンプレーが幕を開ける……
ピーッ!!!
キックオフ早々、FWのバックパスから鬼乃子にボールが回る。
フィディオ「サクマ…」
佐久間「ああ…分かってる…!まずは俺があいつの実力を確かめるッ!」
円堂を破った事がある以外、ロクな情報のない鬼乃子から少しでも情報を得るべく、FW陣の中では実力が劣る佐久間が偵察の役割を受け入れ、単身で鬼乃子へ突撃する。
佐久間「先手必勝だッ!そのボール、貰ったァ!!!」
他の選手よりも実力が劣るといっても、佐久間は日本では知らぬ者の居ない超名門校・帝国学園のNo.2に位置し、日本代表に選ばれる程の実力を有している。
佐久間は一切の油断も手加減もなく、鬼乃子に向かって鋭いスライディングを繰り出す。
だが……
佐久間「消え…!」
鬼乃子「洞察力は認めるけど、肝心の実力はまだまだだね〜。いっそのこと、裏方業務に転職したら?ソッチの方が向いてると思うよ?」
何度でも言おう。佐久間には一切の油断も慢心もなかった。
あのデモーニオを一撃で屠った目の前の“鬼”に対し、最大限の警戒を払い、最速のスライディングを仕掛けた。
だが、結果は空振り。ほんの1秒前まで確かに佐久間の視界に入っていた筈の“鬼”は、不定形な霧の如くその姿を消失させ、佐久間のスライディングを無効化したのだ。
佐久間「今のは…技か…!?」
鬼乃子「いんや?ただ走っただけだよ?大体3割程度の力でね〜」
あの佐久間を必殺技すら使わず、純粋なスピードのみで突破してみせたという事実に、オルフェウスの選手達に緊張が走る。
フィディオ「次は俺だっ!これ以上、先には行かせないっ!!」
佐久間と同様に、最大限の警戒を払いトップスピードと共に“鬼”に立ち向かう。
フィディオ(先程のサクマとの攻防を見るに、彼女のスピードは俺とほぼ互角…!なら、テクニックで攻める…!)
鬼乃子「あ〜…先に言っとくけどさ…テクニックで押してもムダだよ?」
フィディオ「なっ…!その技は…!」
他人の心を透けて見えているかのように、正確にフィディオの思考を読み当てた鬼乃子は、ボールに強烈なスピンを掛けると、まるでその場に屈折率が限りなく0に近い人間が居るかの如く、人間味のある軌道でボールが暴れ回る。
“鬼”により
フィディオ「コレは…“一人ワンツー”…?いや、違う…!もはや次元の違う“何か”だ…!」
鬼乃子「あー、そういや“
意図せずに、フィディオが尊敬するキャプテンの得意技を使ってしまった事により彼の動揺を誘ってしまった鬼乃子は、彼の実力を100%引き出せなかった事を悔やみ、眉間に皺を寄せる。
雷牙「ハッ!何四天王に勝ったくれェで、いい気になってんだよッ!ココからが、真のラスボスのオデマシだぜッ!!!」
眉間に皺を寄せたのも束の間、2人しか居ない四天王を倒された事で、重い腰を上げた“
鬼乃子「え〜!?もうラスボス戦〜!?私、好きなモノは最後に取っておくタイプなんだけど…。まぁいっか!お兄…ゲフン!ゲフン!稲魂雷牙!少しは私を楽しませてよねッ!」
遂に対峙した“怪物”と“鬼”は、常人を遥かに超えたフィジカルを全力で払い、互角の攻防を繰り広げる。
円堂「なんて奴だ…!“獅風迅雷”を使った雷牙と互角に立ち回ってる…!」
雷牙のフィジカルの高さは日本屈指。それに加え、とある孤島にて習得した裏技を使用する事で、ただでさえ怪物的なフィジカルを更に向上させている。
そんな“怪物”相手に、身長が150cmにも満たない小柄な少女が、小細工や技術を一切に使用せずに真正面から渡り合う光景は異常としか言いようがない。
鬼乃子「どったの!?アンタの全力はその程度!?」
雷牙「ハッ!だったら遠慮なくッ!!!“獅風迅雷・限界突破ォォォ”!!!」
“鬼”の挑発に乗った“怪物”は、遂に本気を出す決意をし黄金の柱に紺碧の稲妻を追加させ、100%の更に先の領域へ到達する。
鬼乃子「Great!想像以上に想像以上ッ!なら私も…!」
“怪物”の全力に触発された“鬼”は、その身から大量の翡翠色のオーラを放出し、その右脚を大きく振りかぶる。天に掲げられたその脚には薄らも無機質な鋼で構成された金棒の幻影が映ってしまう。
同時に“鬼”の動きにシンクロするように、“怪物”も黄金の右脚を大きく振りかぶり、勢いよく振り下ろす。
雷牙「しゃおらァ!!!」
鬼乃子「ショウラッ!!!」
ボール越しに炸裂した“怪物”と“鬼”による蹴り…両者のパワーは全くの互角。二方向から加えられた強烈なパワーは、空気が詰まった真球を楕円形に歪ませる。
雷牙「……ハッ!」
鬼乃子「……にひっ!」
理由は不明だが、不敵な笑みを浮かべ一歩たりとも動かなくなった“怪物”と“鬼”……。
その行動が示すのは、強者故の余裕か?はたまた思わぬ好敵手が現れた事への喜びか?
雷牙「グッ…!」
すると、見る見るうちに“怪物”の不敵な笑みが苦悶の表情へと変わっていく。
雷牙「痛゛っ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛〜゛ッ゛!!!」
右脚に走った激痛の余り、“怪物”は不思議系熱血クール(議論の余地大あり)キャラを忘れ、脚を抱えながら盛大にフィールドを転げ回る。
ライト「あの雷牙が…痛がってる…!?」
不動「…あいつにも痛覚ってモンがあったんだな」
これまで常人ならば即病院送りの攻撃を受けても、即座に立ち上がり激戦を制してきた雷牙にとって、痛みの余りに悶絶するという経験は初めての事だった。
雷牙「んだよコイツの筋肉と骨の硬さ…!?尋常じゃねェぞ…!?まるで鉄骨に蹴りを入れたみてェだ…!!」
鬼乃子「ブホッ!プププ…w よりにもよって、グラサンのおじさんが監督してるチームで鉄骨って…w マジウケるんですけど…w っと!隙有りだよ!」
雷牙「しまった…!グッ…!畜…生……!痛みのせいで立ち上がれねェ…!」
フィディオ「ライガは休んでいろっ!後は俺達がなんとかするっ!」
ダメージの余り立ち上がれない雷牙を休ませ、鬼乃子の後ろを追う佐久間とフィディオだが、彼らのトップスピードを以てしても一向に鬼乃子のスピードに追いつく気配がない。
王将『前線を突破した鬼乃子!凄まじいスピードで駆け上がり、中盤へ突入したァァァ!!!だが…!彼女の前に立ちはたがるのは稲魂雷斗だァ!!兄は弟の仇を討てるのかァァァ!?』
ライト「鬼道くん!不動くん!なんとかしてボクが彼女を食い止めるから!その間に彼女の弱点を見つけて!」
鬼乃子「う〜ん…それはちょっとめんどくさいカモ…。ならココは…!“百鬼夜行”発動〜!」
鬼乃子を中心に結界が展開されると、晴れ渡っていた青空が色を失い亡き者となり、黄金の太陽が紅に染まったと同時に、何処からともなく現れた異形の妖達がライト達の身体にまとわりつき彼らの動きを封じる。
ライト「何コレ…!?全っ然動けない…!」
不動「なんつーパワーだよ…!?1人ならまだしも、複数に技を掛けてんだぞ…!?」
鬼道「無理に力に逆らおうとするな…!下手すれば骨が折れるぞ…!」
鬼乃子「アハハ!鬼さんこっちら〜!手の鳴る方へ〜!」
かつて“怪物”は英国の騎士団に向けてこう言った。
『最終的に勝負を制するのは力である』と……
その言葉を体現するように、百体の妖を率いる“鬼”による圧倒的な物量によるパワーは、2人の天才司令塔の長所を発揮させずに中盤を壊滅させた。
王将『もう1人の“怪物”と、2人の天才ゲームメイカーすらも敵わずゥゥゥ!!!残り時間は30秒!これはもしかするともしかするのかァァァ!?』
アンジェロ「クソ…!こうなったらヤケだ!“エンジェルレイ”!」
オットリーノ「“バーバリ…何!?」
前衛、中盤の精鋭達ですらも“鬼”を止められなかった事実にヤケクソを発動したDF達は、次々と必殺技を繰り出すも、またしても“鬼”の姿が消失する。
彼女が最後に目撃された地点には、芝で生い茂っていた地面が30cm程抉られた事で土が露出し、そこからは白い煙が僅かに立ち昇っている。
鬼乃子「注意力が散漫すぎ。別にサッカーは地上でプレーしなきゃいけないってルールはないでしょ?」
強靭な脚力を用いて数m上空まで飛翔した“鬼”は、文字通りオルフェウスを見下した状態で、DF達の弱点を指摘する余裕を見せつける。
誰1人天敵の居ない空中へと移動した“鬼”だが、苦痛も悩みも天敵も存在しない停滞した“天国”には興味はないと言わんばかりに、自分の首を狙う天敵が跋扈する“戦場”へ再び降り立つ。
円堂「来いッ!!!この間のリベンジマッチだッ!!!」
鬼乃子「Excellent!!その熱さ…めっっっちゃ私の好みだよっ!!!」
兄に続くもう1人のお気に入りである、日本の守護神を前にした“鬼”はテンションを上げ、必殺のシュートの体制に入る。
円堂(あの時は手も足も出なかったけど…。成長した今の俺なら“キングレオーネ”に間に合う筈だ…!いつでも来い…!絶対に反応してやる…!)
思いもよらない
しかし……
鬼乃子「見よ!一晩かけて習得した、私の指笛をッ!」
円堂の思考は無惨に裏切られてしまう事となる。
“鬼”は右手で輪っかを作り口に軽く咥えると、勢いよく息を吹き込み指笛を鳴らす。
すると、ボールに純白のオーラがチャージされ何倍もの巨大な球体となり宙に浮く。
その姿はまるで何らかの生命を宿した“卵”だ。
鬼道「なんだと…!?あの体制は…!」
佐久間「皇帝ペンギン…!?」
帝国学園出身の選手達にとって、あまりに見慣れた必殺技の
相手の驚愕すらも気にせずに、“鬼”はその名を呼ぶ。
鬼乃子「“皇帝ペンギン”…!」
霞んだ
鬼乃子「X!」
一度蹴れば“悪夢”の化身たる漆黒の
鬼乃子「Y!」
二度蹴れば“冷徹”の化身たる青褐の
鬼乃子「Z!」
三度蹴れば“怒り”の化身たる真紅の
鬼乃子「ぜ〜んぶ足して〜!!“
純白の殻を突き破り生誕した悪鬼の如く凶悪な形相と、巨体を備えた三色の
円堂「えっ…?」
幸運な事に、円堂は人鳥に食い殺されずにすんだ。
だが、その代償はあまりに大きく、あの日の焼き直しと言わんばかりに円堂の反射速度を超えたシュートは彼に必殺技を繰り出す隙を与えずにゴールネットに突き刺さる……を超えゴールネットを突き破り、後方にある煉瓦模様の壁を粉砕した。
鬼乃子「はい!予言完了〜!」
ピッ!ピッ!ピーッ!!!
“鬼”の得点と同時に、審判のホイッスルが三度鳴らされ試合終了が告げられる。
王将『試合終了ォォォ!!!スコア上ではオルフェウスの勝利…!ですが何でしょうか…?このモヤモヤした感情は…?強いて形容するのなら…“試合に勝って勝負に負けた”とでも申しましょうか…!?あまりにも歯切れの悪い幕切れです…!』
スコアボードに表示されたオルフェウスとチームKのスコアは、4-3…。誰がどう見てもオルフェウスの勝利だ。
これにより影山の野望を阻止し、代表の座も奪い返した。
だが……肝心のデモーニオを救う事は叶わずに、彼を傷つけた元凶たる鬼乃子には手も足も出ずに蹂躙されるだけだった…。
果たしてこれは本当に勝利と言えるのか?
円堂「…それでも、今は俺たちの勝利を喜ぼうぜ?きっと…それがデモーニオにとっても報われることだ…」
フィディオ「…エンドウ……。…いや、君が嫌でなければ俺もライガみたいにマモルって呼んでいいかな?」
円堂「ああ!全然OKだ!」
フィディオ「ありがとう…マモル。君たちに受けた恩は絶対に忘れない」
“鬼”の予言を覆せなかったが勝利は勝利だ。その胸に悔しさを抱きながらも、今は代表の座を奪い返した事を喜び合う。それが、“鬼”の凶弾に倒れたデモーニオの救いになる事を願いつつ……。
鬼乃子「やーやー!おn…稲魂雷牙クン!お疲れサマンサ〜!どうどう?スーパー鬼乃子ちゃんのプレーは!めちゃんこ強かったでしょ〜?」
すると、敵である鬼乃子が雷牙の前に現れ馴れ馴れしく試合の感想を求める。
その姿は、到底ほんの数分前に出会ったばかりの赤の他人とは思えず、まるで兄を慕う妹のように、限りなく距離感の近い穏やかな物だった。
少女を前に、雷牙の脳内は様々な思考が巡るが知能指数100(四捨五入)を誇る脳内データベースが導き出した言葉は1つだけだった。
雷牙「…オメーは何モンだ?」
奇しくも円堂と同一の質問が、雷牙の口から発せられる。疑問の声を受けた鬼乃子はやや驚いたように目を見開くが、すぐに口角を上に上げ答える。
鬼乃子「アレ?もしかして円堂パイセンから聞いてないの?…まぁいいや、OK!それじゃ、もう一度だけ説明するね!私の名前は明星鬼乃子!超天才で〜!超最強で〜!超美少女なだけの〜!ごく普通のサッカープレイヤー!以後お見知り置きを!シーユー♪」
ライト「明……星……?」
“明星”という自身の過去の名であり、愛する弟を侮辱した怨敵と同じ姓を持つ少女を前にしたライトは、これまで少女に感じてきた違和感が点と点で結ばれ、最悪の予感が脳裏を過ぎってしまう。
ライト「キミは…まさか……!」
雷牙「どうしたライト…?そんなに狼狽えて…?」
鬼乃子「おっと!ムダ話はそこまでだよ〜!さァさァ!皆サン!大スクリーンにごちゅうも〜く!」
余程ライトの質問は、彼女にとって都合が悪いものなのだろう。鬼乃子は、強引に彼との会話を打ち切りグラウンドに備え付けられた巨大なスクリーンを見るように促す。
そこに佇んでいた影山は、小さな舌打ちを鳴らしながら手元に持つリモコンを操作すると、スクリーンの中からある映像が映し出された。
マクスター『さぁ!大観衆が見守る中!イナズマジャパン対ジ・エンパイアの試合が始まろうとしてしますッ!!』
スクリーンに映し出されたのは、 明日のアルゼンチン戦が開催される筈のウミヘビスタジアムにて、アップを行うイナズマジャパン、そしてアルゼンチン代表ジ・エンパイアの選手達の姿だった。
円堂「なっ…!みんな…!?それにジ・エンパイアのメンバーも居る…!?」
鬼道「馬鹿な…!アルゼンチン戦は明日の筈だぞ…!?」
佐久間「ーー!!! それだけじゃないぞ!見ろ!ベンチに監督達が居ないッ!」
本来明日開催される筈の試合が今日開催され、イナズマジャパンのベンチに本来居るべき監督の姿が見当たらない、あまりに異常すぎる光景に皆は唖然とする。
雷牙「どうなってやがる…!?」
影山「ククク…。知らなかったのかね?何でも、諸事情あり日本とアルゼンチンとの試合は今日に前倒しになったそうだ。なるほど…どうりで呑気にイタリアの問題に首を突っ込んでいたと思ったら、試合の事を知らなかった訳か。これは失礼」
雷牙「野郎…!最初からコレが狙いだったってワケか…!!」
皆は悪意に満ちた笑みと共にワザとらしく解説を行う影山を見て、雷牙と佐久間はまだしも、日本の核たる司令塔と守護神にイタリアの問題に首突っ込ませた事自体が、彼の卑怯卑劣極まりない計略の1つであったと確信する。
影山「さて…目的は果たした。帰るぞ鬼乃子」
鬼乃子「はーい!それじゃあね〜みんな〜!シーユー♪」
ボンッ!!
雷牙「チッ!待ちやが…ドワァ!?」
せめてもの抵抗として雷牙は影山の逃走を阻止しようとするも、鬼乃子が球体状の物体を投げつけると同時に大量の煙が発生し、皆の視界を塞ぐ。
数秒後に煙が晴れた先には、既に影山と鬼乃子の姿はなかった。
フィディオ「クソ…!逃げられたか…!」
鬼乃子の妨害によりまんまと影山を取り逃してしまったイナズマジャパンとオルフェウス…。
その胸には、影山してやられた事へのやり場のない怒りと、日本を潰す為にここまでの事をする執念への困惑だけを抱いていた。
雷牙「クソッタレがッ!!!だったら、海を泳いででもヤマネコスタジアムに行けばいいだけだろうがッ!!!ちょっち水着買って来るッ!!」
その憤りのない怒りに耐えきれなかった雷牙は、突然要領の得ない事を言い始め、グラウンドを飛び出しイタリア地区の街中に消える。
ライト「ココから泳いで行くなんて無茶だって〜!待ってよ雷牙〜!」
流石の雷牙もイタリア地区から、何十kmも離れたウミネコ島まで泳いで行くのは無理だ。例え、泳いで行ったとしても途中で迷子になって捜索隊のお世話になるのがオチだろう。
暴走してしまった彼を止めるべく、ストッパー…になるかはかなり怪しいが、皆を代表してライトが追いかける。
円堂「…とりあえず雷牙はライトに任せよう。俺たちは港へ行くんだ!まだ時間はある!今から船に乗れば後半戦には間に合う筈だ!」
恐らく暫くは戻って来ないであろう雷牙はこの際放っておき、円堂達は最後の望みを賭け、イタリア代表のバスに乗って港へ向かう。
果たしてライトは雷牙の暴走を止められるのか…!?円堂達は試合に間に合うのか…!?本調子ではイナズマジャパンはジ・エンパイアとまともに戦えるのか…!?
彼らを待ち受ける“未来”が不確定の中、ただ時間だけが過ぎていく……
♢♢♢
「あの…本当に宜しかったのですか…?彼女は“雷帝”様のご令嬢では…?」
影山「フン、あんな奴など知らん。そもそも、私は勝手に娘を押し付けられただけだ。最初から首を縦に振った覚えはない」
運転手の困惑気味の疑問を、後部座席に座る影山は鼻で笑い一喝する。
彼の隣には鬼乃子の姿は見えず、助手席にも座っていない。
その理由は実にシンプル、まだやらなければならない仕事が残っている影山の事情などガン無視して、イタリア地区を観光したいとゴネた為、キレた影山に車から降ろされイタリア地区に放置されたのだ。
「いや〜…それでも放置っていうのは流石に…」
ブーッ!ブーッ!
すると、車内に聞き慣れた通知音が響き渡る。その音源となっているのは影山は胸ポケット。
彼はポケットからスマホを取り出すと、その画面に表示された名を見てややウンザリとした表情をし通話に出る。
影山「これはこれは
鬼道にすら見せた事のない謙った声色と敬語で、電話の主である“ガルシルド”なる人物に礼儀正しく挨拶を行う影山。
だが、その表情と声色は合致しておらず、彼の主人に対する忠誠心がよく現れている。
???『影山…!貴様…!しくじりおったな…!』
しかし、雇用主の第一声は影山の想像を超える物だった。
電話の奥に居る雇用主の声色には明確に“怒り”の感情が漏れ出ており、返答一つでは今すぐでも車を爆発させかねない…そのような殺意が込められている。
影山「…は?言っている意味が分かりませんな。私は貴方様のご命令通り円堂守達を足止めを完遂させたのですよ?称賛される覚えこそあれど、叱責される覚えはないのですがね?」
低い忠誠心とはいえ、40年以上の付き合いがある影山は雇用主の気性の荒さは理解している。
それでも彼は不遜な言葉選びで、真正面から雇用主に反論する。何故、自分に怒りを向けている理由が分からない影山にとって、下手な芝居は逆に命取りになる事が分かっているのだ。
???『ならばコレはどう説明する!?』
その予想は的中し雇用主の怒りに油を注いだものの、即座の処刑は免れ、秘匿性の高いメールに一枚の写真が送られる。
影山「何だと…!?」
だが、送られてきた写真を見た影山は、非常に珍しく大量の冷や汗を流し強く動揺する。
何故ならその写真に映っていたのは…
家族の面影を思い出す為に、人工的に染められた金色の髪……
その人物の気性の荒さを表すように獅子の如く釣り上がった目……
本人は知る由もないが、英国人である祖母に由来する蒼色に輝く瞳……
その少年を構成する要素は誰の目から見ても、明らかに……
影山「あり得ない…!何故、奴が会場に居るのだ…!?奴はまだイタリア地区に居る筈…!!」
例え天変地異が起こったとしても、絶対に会場に姿を見せる事はありえない人物の出現に、影山は急いで車内に設置されたテレビの電源を入れ、その真偽を確かめる。
試合は丁度、審判のホイッスルが鳴らされ開始されたばかり。幸運な事にそこに実況を務めるマクスターの補足が入る。
マクスター『さぁ!たった今、日本対アルゼンチンの試合がスタートしましたッ!ですがイナズマジャパンは、チーム側のアクシデントにより、一部の選手と監督が不在の模様です!その為、本日のキャプテンを務めるのはマモル・エンドウではなく……
ライガ・イナタマですッ!!!』
これまた余談ですけど、本作の“リトルギガント”には雷牙に相当する選手は居ません。鬼乃子がその枠になってます。
円堂のライバル枠がロココなのに対し、雷牙のライバル枠が鬼乃子って言えば分かりやすいかな?
鬼乃子の蹂躙=本作のリトルギガントの実力と捉えてもらってOKです。
〜オリ技紹介〜
♦︎百鬼夜行
属性:火
分類:ドリブル
使用者:鬼乃子
進化系統:V2→V3→V4→?
≪概要≫
自称超天才最強美少女サッカー選手・鬼乃子が使用するドリブル技。
領域t…ゲフン!ゲフン! 超次元的な力により、紅の太陽が浮かぶ夜空を形成すると異形の妖達が相手に絡みつき、彼らを動きを封じている間に鬼乃子が突破する。
クッソどうでもいいけど、絡みつくって表現なんかエロいね。
♦︎皇帝ペンギンXYZ
属性:無
分類:シュート
使用者:鬼乃子
進化系統:改→真→爆→?
≪概要≫
自称超天才ry……鬼乃子が使用する必殺シュート。
流れるような連撃を三度繰り出し、シュートを放つと同時にアレス版の真紅、青褐、漆黒の巨大な3匹のペンギン達が出現し、ゴールへ襲い掛かる。その威力は“X”はおろか“3号”すらも優に超える。
シュートモーションは、最初の気を貯めるモーションが指笛になった以外はアニメ版の“ラストリゾート”と一緒(強いて言うなら、発射後に“Σ”の要素が入ってるくらい)。