イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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伊の街に現れし一輪の花

豪炎寺「お前は誰だ?」

 

 相棒の皮を被った“何か”に対し、豪炎寺は明確に“怒り”の感情を浮かべながら、目の前の男に問い掛ける。

 その目に灯った疑念の炎からは、返答次第では自身の名誉に泥を塗ってでも、灼熱の右脚をそのニヤけ顔に炸裂させる事すら厭わない…そんな覚悟を感じさせる。

 

雷牙?「う〜ん…?言ってる事が分かんないなァ?オレは〜キミの1番の相棒、“稲魂雷牙”ダヨ♪」

 

 それでも目の前の“何か”は、ワザとらしい態度(リアクション)仕草(ジェスチャー)で豪炎寺を挑発するように返答する。

 すると、日本刀の如き鋭さを持つ右脚が“何か”の眼前で空気を切り裂いた。

 

雷牙?「おやァ?」

 

豪炎寺「二度は言わないぞ。質問に答えろ、本物の雷牙はどこだ?」

 

 言葉ではなく行動で自身の覚悟は(ブラフ)ではない事を示した豪炎寺は、目の前に“何か”に最後の慈悲(チャンス)を与え問い掛ける。

 

雷牙?「ハァ〜…かったる…。腐ってる癖に勘だけは一丁前だからさ〜、コレだから旧世界と旧人類は大嫌いなんだよな〜…。もういっその事、暴力(コレ)で全てを終わらせよっかな〜?」

 

 だが“何か”は、豪炎寺の脅しを前にしても一切臆した様子を見せず、寧ろウンザリした様子で小言を呟くだけで質問には答えない。

 

  試合が開始してから僅か1分しか経過していないにも関わらず、ジ・エンパイア戦は悪意を持つ謎の勢力の介入により、形容し難い混沌(カオス)に包まれる。

 果たして、雷牙と瓜二つの姿をした“何か”の正体は…?

 

♢♢♢

円堂「ダメだ…やっぱり出ない…」

 

 今日、数度目となる無機質な電子音が待合室内に鳴り響く。

 雷牙が通知に気づいていない状況を考慮し数回程掛け直し、フィディオを経由してライトにも電話を掛けるも、帰ってきた返答はいずれも例外なく“沈黙”のみ。

 

 ここまで来れば、彼らの身に何が起こっているかは明白だった。

 

鬼道「だがこれでハッキリしたな。十中八九、2人は何らかのトラブルに巻き込まれている。こうなったら仕方がない…多少のリスクは承知の上で稲魂達を探しに行くぞ」

 

不動「チッ!あのクソライオンがッ!あいつはトラブルを起こさずに行動出来ねぇのかよ!!」

 

佐久間「そんなに悪態を付くなら探しに行かなくてもいいぞ。嫌ならここに残っていろ」

 

不動「ヘッ!勘違いしてんじゃねぇよ!ここで待っているだけじゃ、暇で暇でしょうがねぇから、仕方なく探しに行ってやるんだよ!」

 

佐久間「フッ、そういう事にしといてやる。フィディオ、道案内を頼めるか?」

 

フィディオ「あ、ああ…!任せてくれ!」

 

 こうして円堂一向とオルフェウス達は、イタリア地区の何処かで、よろしくないアクシデントに遭遇しているであろう稲魂兄弟の救出の為に港を飛び出す。

 

フィディオ「……」

 

 だが、道案内を任された筈のフィディオは立ち止まっていた。

 

円堂「ん?どうしたんだよフィディオ?早く行こうぜ?」

 

フィディオ「…ライガは本当に良い仲間に恵まれたんだな……」

 

円堂「え?」

 

 フィディオの脳裏に浮かぶのは、セイバーズ時代の雷牙との思い出…。フィディオの知る雷牙はお世辞にも人付き合いが良いとは言えなかった。

 いつまで経っても現地の言葉を覚えなかったのも一因だが、持ち前のアグレッシブな性格と、カタコトのイタリア語から繰り出される口汚い言葉により上級生との喧嘩は日常茶飯事だった。その度にフィディオが喧嘩を仲裁したものだ。

 故に彼が日本に帰った後も、現地で上手くやれているか心配だったのだ。

 

 だが、それも杞憂だったようだ。今の彼には心の底から背中を任せられるキーパーが、自分達のリスクを飲み込んででも助けに向かってくれる仲間が居る。

 

フィディオ「あまりこの状況で言う事じゃないけどさ…。いつか、日本でのライガの活躍を教えてくれないかい?」

 

円堂「いいぜ!だったら、フィディオもイタリアでの雷牙のことを教えてくれよ!」

 

フィディオ「ああ!もちろん!!」

 

 日本の友とイタリアの友は市街地へ向かう。何処かに居るであろう“怪物”達の無事を祈って……

 

♢♢♢

 さて…遂に舞台は、イタリア地区へ移る。

 

 イタリア代表の、イタリア代表の為の、イタリア代表による為だけに建造された建物の数々は、制作期間僅か1ヶ月という短い期間ながらも、地中海の独特の街並みを完璧に再現している。

 

 その地に“少女”は現れた。

 

 その少女は、やや吊り上がった青い目に水色の背中辺りまでのロングヘアを持ち、ピンクと白をベースとしたつなぎの半ズボンに腰の周りに花びらを思わせる意匠が施された服装を着用し、胸には黄色い花のブローチを装着している。

 

 独特な雰囲気から醸し出されるオーラは、まるで砂漠に咲く一輪の花のような儚さすら感じさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の前に広がった残状に目を瞑れば……だが。

 

雷牙「ハァ…!ハァ…!」

 

ライト「つ、強い…!」

 

 少女の目の前で身体の至る所から血を流しボロボロになっているのは、現在ウミネコスタジアムで試合に参加している筈の雷牙と、その兄ライトだった。

 

雷牙「クソッタレが…!何もかも既視感だらけの展開(シチュエーション)だ…!テメェ…プロトコル・オメガの回しモンだろ…!」

 

ライト「プロ…え?何それ…?新しいバンド…?」

 

 深いダメージを負った事により息を荒くする弟とは、目の前を少女をプロトコル・オメガなる謎の組織の回し者だと断じ、隣に居る兄は聞き慣れない単語に、困惑し的外れな感想を送る。

 

???「……」

 

 だが少女は“怪物”の問いに答える事はなかった。その代わりに彼女の口から発せられたのは……

 

???「何故あなたは“戦う”の?」

 

雷牙「チッ…!同じ返事を何度も何度も…!!テメェは喉奥にインコでも飼ってんのかァ!!」

 

 少女は、疑問文には疑問文で返すと0点になる事を知らないのだろうか?

 

 そもそも雷牙達に攻撃を仕掛けてきたのは“少女”の方だ。

 

 数分前…。ライトの説得により何とか頭を冷やした雷牙は、会場まで泳いで行く事を諦め円堂達が居るであろう港へ向かっていた…。

 その道中に現れたのが、目の前の“少女”だった。彼女は、雷牙を見るなり突然襲い掛かり、エイリア学園の超兵士(ハイソルジャー)とは比較にならないパワーとスピードを以て、兄弟を圧倒した。

 

???「“争い”とは人類が生み出した最も重い罪…。その行為の終着点はいつも“破滅”だけ…。…だから、私は()()()()を1からやり直さなければならない…」

 

 少女は壊れたラジオのように、何度も最もらしい言説を垂れ流しているが、その肝心の少女自体がその忌み嫌う“争い”の発端となっているのだ。ハッキリ言って矛盾している。

 

ライト「…スゴいね……。言葉って一行で矛盾することってあるんだ…」

 

雷牙「あーあー…も〜う確信した!やっぱオメー、未来人だろ!一丁前に小難しいキドった単語ばっか使うところとか、アイツらそっくりだッ!」

 

???「…あなたの質問に答えるつもりない。…だけど、私が望む世界の為に…!そして…大切な“()()()”の為に…!あなた達には再起不能になってもらう…!」

 

 目の前の怪物兄弟を排除すると決めた少女は、薔薇の荊棘を思わせる鋭い殺気を放つと、兄弟の全神経に感じた事のない悪感が走る。

 

ライト「す、スゴい殺気だ…!エイリア学園でもココまでの気迫を出せる人間は居なかったよ…!?」

 

雷牙「クソッタレがァ!!!やれるモンならやってみやがれッ!!“雷鳴の覇王 レグルス・マキシマムッ”!!!」

 

 120%の確率で目の前の少女が未来人であると確信した雷牙は、下手な逃走は無駄であると察し、自暴自棄同然で化身を発動し少女に抵抗しようと試みる。

 

 しかし……

 

???「“混沌の魔女 カオス”!!」

 

雷牙「んな…!?“カオス”だと…!?」

 

 少女も化身を発動しその身に宿りし黒薔薇の“魔女”を顕現させ、“覇王”と対峙する。

 “魔女”が冠する名はアジアにて激戦を繰り広げた好敵手の化身と同一だが、“魔女”から発せられる威圧感は、“混沌神”とは比べ物にならない。

 

???「“ミスティックゾーン”!!!」

 

雷牙「グァァァァァ!!!」

 

 刹那、少女の“憎悪”がそのまま形になったかのような巨大な荊棘が出現し、“怪物”と“覇王”の身体を突き刺す。

 元々、チームKとの試合により大きく体力を消耗していた雷牙は、遂に体力の限界を迎えてしまい、“覇王”の姿が消失してしまう。

 

雷牙「カハッ…!チク…ショウが…!!」

 

ライト「雷牙!しっかりして雷牙!!」

 

雷牙「チキショウ…!俺も1年前とは比べモンにならねェ程強くなったってのによ…!まだ200年(未来)には届かねェってのかよ…!!」

 

 これまで二度の未来人(プロトコル・オメガ)と交戦し、いずれも退けてきた雷牙…。

 しかし、目の前の少女の強さは彼らとは比較にならない。あのたった一度の攻防にて雷牙は、現代人では絶対に超える事が出来ない“生物としての壁”を実感していた。

 

雷牙「ライ…ト…!逃げ…ろ……!!!アイツの…狙いは……俺だ…!俺が何とか…時間を稼…ぐ……!」

 

 例えこの場に天馬やフェイが救援に現れたとしても、少女には絶対に勝てない悟ってしまった雷牙は、せめて兄だけは生かす為に彼に逃げるように促す。

 

 だが…

 

ライト「…嫌だ……!ボクは…!絶対に逃げない!!!」

 

 ライトは弟の最後の願いを拒絶し、恐怖により身体を小さく震わせながらも少女の前に立ち塞がる。

 

雷牙「何…してやがる…!早…く……!逃げ…ろ…!!

 

ライト「ボクは…絶対に逃げないよ…!だってボクは…雷牙のお兄ちゃんなんだから…!!」

 

???「ッ…!兄…?弟…?」

 

 あまりに眩しい兄弟の絆…。それが少女の中にある“何か”を刺激したのだろう。

 先程まで、正気の感じられなかった少女の瞳に僅かに光が灯ると同時に突如顔が青ざめ始める。

 

???『お願い…目を開けて…。アスタ…!サン…!』

 

 その脳裏に浮かぶのは、忌まわしき監獄の崩壊に巻き込まれ、亡き者となってしまった()()の顔……

 

???「何が兄だ…!何が弟だ…!もういい!!稲魂雷斗…!!お前から先に消す…!」

 

 ライトの覚悟によりトラウマを刺激された少女は、摩訶不思議な力を以て無からサッカーボールが生成すると、“憎悪の黒薔薇”をその脚に宿す。

 

???「“フローラルデスペアー”!!!」

 

雷牙「避けろォォォ!!!ライトォォォ!!!」

 

 初見の必殺技ながらも、現代兵器すらも上回る威力を肌で感じ取った雷牙は、最後の力を振り絞り兄に逃げるように訴えかける。

 

 それでも兄は逃げるわけにはいかない。 

 

 全ては兄としての使命を全うし、命よりも大切な弟を護る為に…

 

 そして……

 

 幼少期より憧れた最強で最高の英雄(ヒーロー)に恩を返す為に…

 

ライト「ボクは諦めない!雷牙も…パパも…ママも…!!ヒーローは…!最後の最後まで絶対に諦めないんだァァァ!!!」

 

 この身を犠牲にしても弟を護る事を“諦めない”と決意を固めたライトは、その身に獅子座を模った“英雄”を宿し、その拳を突き出す。

 

 だが、“憎悪の黒薔薇”は兄の覚悟すらも嘲笑うかのように、更に威力を強めるとその身から凄まじい衝撃波を発し、“英雄”を消失させる。

 

ライト「そんなっ…!?」

 

???「これで終わりだ…!稲魂雷斗ォォォ!!!」

 

 最後の抵抗すらも無意味と化した兄の身体に無情の荊棘が突き刺さる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事はなかった。

 

???「“エンペラーディアボロス”」

 

 突如、意識の外から響き渡る悪魔の咆哮が、無情の荊棘を噛み砕き“少女”の魔の手から“怪物”達を救ったのだ。

 

???「誰だ!?」

 

 稲魂雷斗の排除を阻止された少女はその瞳に憎悪を込めて、シュートが繰り出された方角に視線を向ける。その先に居たのは……

 

???「横から失礼。ご覧の通り、私はただの風来坊ですよ」

 

 そこに居たのは、漆黒のスーツと小洒落た帽子を深く被った青年だった。

 帽子のつばが障害物となり、その顔の全貌を知る事は叶わないものの、僅かに露出する頭髪はまるで蒼炎を思わせる、深い蒼に燃えていた。

 

???「風来坊…?ーー!!! その胸のエンブレム…!お前は…!まさか…!!」

 

 少女は、風来坊の胸に刻まれたエンブレムを見るなり、強く狼狽える。

 機は熟した…そう言わんばかりに謎の風来坊はソッと帽子を脱ぎ捨て、蒼炎に燃ゆる頭髪を完全露出させる。

 

 遂にその全貌が露わとなった風来坊の顔立ち…

 

 煉獄の炎の如し蒼炎に燃ゆる頭髪……

 

 誇り高き獅子を思わせる鋭く吊り上がった目……

 

 その目の中にある、頭髪とはまた異なる色合いの蒼き瞳……

 

 彼を構成する要素の数々は、あまりにもある人物との共通点が多すぎた…。

 

ライト「あの子…雷牙にそっくりだ…!」

 

 髪色を除けば雷牙と瓜二つと言っても過言ではない青年に対し驚きを隠せないライトだが、風来坊はそんな事を気にせずにゆっくり…そして静かに呟く

 

???「強いて名乗るのなら…そう、“魔王”とでもしておきましょうか」

 

 謎の風来坊は自らを“魔王”と定義付け、礼儀正しく会釈を行う。

 

雷牙「“魔王”…?アグッ…!?んだよ…!?こ…この記憶は…!?」

 

 突如、雷牙の脳内に流れ込む存在しない記憶。 

 

 記憶の中にある周囲の景色はFF決勝戦そのものだが、対戦相手は世宇子ではなく、王牙学園なる名前も聞いた事のない謎の選手達……

 

 鬼神の如き圧倒的な力を持つ襲撃者達相手に、手も足も出ずに蹂躙される自分達…。

 その絶対絶命のピンチの中、救援に現れたのは円堂の面影を持つ少年と自身と瓜二つの容姿を持つ目の前の風来坊だった。

 

 存在しないのに存在している正体不明の記憶の数々に、雷牙は混乱するも、徐々にその名が浮かび上がる。

 

雷牙「オマエは…!雷…冥……!?」

 

雷冥「お久しぶりです、ひいお祖父様。…いや、この時空では初めまして…と言った方が正確ですかね?」

 

 この世界とは異なる並行世界にて“(オーガ)”から未来を護りし英雄・稲魂雷冥…。

 風来坊へと扮した“魔王”は、曽祖父の危機の前に今再び80年前の地へと降り立った。

 

雷冥「コードNo.666(スリーシックス)・稲魂雷冥。只今より、時空犯罪者・()()()の捕獲を開始します」

 

 “魔王”はエージェントとしての決まり文句を終え、指を軽く鳴らすと彼の背後に、同じ蒼炎に燃ゆる頭髪を有する10人の眷属達が出現する。

 世界各地に存在する悪魔をモチーフにした眷属達が後方で跪くその様は、魔王に従う忠臣達だ。

 

ライト「え〜!?!?!?何コレ!?急にたくさん人が出て来たんだけど!?」

 

雷牙「コレってフェイが使ってた…!」

 

フラン「デュプリ…!?何故、過去の人間であるお前がその技術を使える…!?」

 

雷冥「()()()()()()()()()教えて貰ったのですよ。さて…第二ラウンドを開始(はじ)めましょうか?」

 

 突如として勃発した未来人VS未来人による前代未聞の超決戦…。

 果たして勝利を掴むのは、未来を護らんとする魔王とその眷属(ガーディアン)か…?それとも過去を変えんとする再構成者(デストラクチャーズ)か…?




【悲報】チームK戦を終えたばかりの稲魂兄弟、まさかの二戦目突入。

〜人物紹介〜
♦︎フラン
性別:♀
年齢:??
ポジション:??
≪概要≫
イナヒロのオリキャラではなく、イナダンのヴィランであるフランその人。
だが、能力・過去は共通しているものの、ある一点だけが本編の彼女とは大きく異なる所謂、並行同位体なる存在。
ある人物の命令で雷牙達を足止めしているらしいが…?

♦︎稲魂雷冥
性別:♂
年齢:15(肉体年齢)
ポジション:DF(リベロ)
≪概要≫
窮地に陥った雷牙達の前に現れた髪色以外、雷牙と瓜二つの青年。その正体は、80年後の雷牙のひ孫であり、時空管理局のエージェント。
当然、オーガ編に登場した彼と同一人物であり、時系列はオーガ編の後。
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