イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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個人的に雷冥のキャラはめっちゃ好み。彼然り、ベータ然り、作者はスイッチが入ると性格が激変するキャラが好きなんですよね〜。“正義の魔王”なる矛盾したワードも良き良きの良き。
オーガ編じゃ、彼の出番自体が少なくてその魅力をフルに発揮出来なかったから、リベンジ出来て超満足!


Re:俺達のサッカーを守れ!! 稲妻を纏いし魔王軍VS断罪なる憎悪の花弁!! 後編

雷牙「ゲハハハッ!!スゲェ…!スゲェぜ!!全部の感覚がビッンビンだッ!全部が見える!聞こえる!感じ取れる!“ゾーン”に入った今の俺ちゃんに隙はねェ!!!」

 

ライト「うっわァ…完全にハイになってんじゃん…」

 

 チームKとの激戦と、遥か未来から襲来した脅威を前に、久方ぶりに“ゾーン”へ突入した雷牙は、これまでの“ゾーン”とは大きく異なる極限まで研ぎ澄まされた五感を前に興奮を隠しきれていない様子だ。

 

 顔芸を晒しながら調子に乗る雷牙、珍しく弟の奇行にドン引きするライト、そして彼らを尻目に雷冥は物思いに耽っていた。

 

雷冥(フム…。私の記憶によれば、先祖殿が“獅風迅雷”を開発したのは高校時代の筈…。化身を使える事といい、私の想像以上にプロトコル・オメガがこの時空に齎した歪み(インフレ)は大きいようだな…)

 

 本来はあまり好ましくない歴史の歪みだが、もはや正史とは全く異なる歴史を歩みつつあるこの時空においては些細な問題でしかない。

 寧ろ雷冥にとって、最も気がかかりなのは、()()()()()()()()()()()()

 

雷冥(…となると、大叔父(ライト)殿も既に“()()()”に目覚めていてもおかしくはないが…今の所はその気配は見られんな…)

 

 “怪物”の血を受け継いだライトが“例の力”に目覚めていれば、更なる戦力の増加が期待出来るも、その兆候のような物は今の所一切見られない。

 “ゾーン”への反応を見る限り、まだ彼は覚醒していないと見るのが妥当だろう。

 

雷冥(…まぁ、“ゾーン”とは異なり“あの力”への覚醒はかなり特殊だ。何せ、()()()()()()()()()()()()()()()なのだからな)

 

 雷冥の脳裏に浮かぶのは、肉体年齢を一回り超える今までの人生において、何度もアーカイブにて閲覧し、幾度となく憧れた“()()()()()()を振るう義理の大叔父の姿…。

 

雷冥(…まァよい。既に犯罪者(デストラクチャーズ)共の格付けは済んだ。恐らく、本体(フラン)には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、私には関係無い。最悪、私の“()()()”を切れば何とでもなるだろう)

 

 こうして思考を打ち止めた“魔王”は万全の策を施した状態で、次のプレーに備える。果たして彼の持つ“切り札”の正体とは…?

 

ピーッ!!!

 

フラン「…油断しないでアスタ。明らかに今ので稲魂雷牙の空気が変わった。手加減せず全力で潰すわよ…」

 

アスタ「任せろォ!!“時空の共鳴現象”がなんだッ!俺が全力を出せばあんや奴ら、敵じゃねェ!!!」

 

 創造主たる“姉”の命令により、最愛の“弟”を模した種子は“怪物”を排除するべく、その背より膨大なるオーラを放出する。

 

アスタ「来ォい!!!“混沌の王 アスタトロォ”!!!」

 

 “姉”の理想を拒み、未来を切り開かんとする愚かなる“怪物”を叩きのめすべく、黒薔薇の種子はフィールドに“混沌王”を顕現させた。

 

雷牙「だったら俺ちゃんも…!“雷鳴の覇王 レグルス・マキシマムッ”!!!

 

 “怪物”とてただ黙って見ているだけではない。コチラも“覇王”を顕現させ勇敢に“混沌王”へと立ち向かう準備を始める。

 

アスタ「それがどうしたァ!!!旧式の化身如きで、俺に勝てると思うなよォ!!!」

 

 “覇王”の顕現すらも無意味だと断じるアスタだが、残念な事に覚醒した“怪物”の力を以てしても、“混沌王”に勝利出来る未来(ビジョン)が浮かばない。

 

 化身VS化身なる、条件は両者同じでも、その前提条件となる本体の技量差に高すぎる壁が存在するのだ。

 

雷牙「ククク…!ダーハッハッハッ!!!」

 

 だが、突如として“怪物”は口を大きく開けて雷鳴の如し大声で笑い始める。

 ように。さぞ可笑しい喜劇でも見ているかのように。

 

アスタ「テメェ…!何笑ってやがるッ!!!」

 

雷牙「プププ…!いや〜悪ィ悪ィ!オマエさんの未来から来ている割には、低レベルな(オツム)が可笑しくってよォ!!つい笑っちまったぜェ!!」

 

アスタ「んだと…!?」

 

フラン「アスタ!それ以上、奴の口車に乗せられないでッ!」

 

雷牙「だったら見せてやんよ…!俺ちゃんが新たに辿り着いた最高到達地点(ゼンリョク)ってヤツをなァ!!!」

 

 目の前で勝ちを確信する未来人に対し、自身が新たに切り開いた最高到達地点(ゼンリョク)を刮目させるべく、“怪物”は一か八かの大博打を以て()()()()()()()()()()()()()

 

雷牙「ウォォォォォ!!!」

 

 そして…!

 

雷牙「アームドォォォォ!!!」

 

 完全に分解された“覇王”は再び光の粒子へと形状を変え、暖かくも力強い輝きを放ちながら“怪物”の身を包み、“怪物”を更なる高みへと押し上げる黄金の鎧へと姿を変える。

 

ライト「うっそ…!」

 

雷冥「ホゥ…?」

 

グリム『コレはーーッ!!!マスターのひいおじいちゃんの化身アームドだーーッ!!!』

 

 “時空の共鳴現象”により200年の壁を乗り越えた“怪物”は、これまた久方ぶりとなる化身アームドを成功させた。

 しかし、その姿には以前に見られたような不完全な要素は一切なく、“怪物”のその身に完全なる黄金の鎧が鎧装されている。

 

雷牙「しゃあッ!!!大っ成功ッ!!!完全顕現!パーフェクト・雷牙サマの降臨だぜェ!!!」

 

アスタ「チッ…!それがどうしたァァァ!!!」

 

 デュプリを超えたハイデュプリたるアスタは化身を使う事が出来ても、その上位の技術である化身アームドは使う事は出来ない。

 確固たる自我を有していても、何処まで行っても化身の亜種でしかない彼には、化身を身を纏う事など物理的に不可能なのだ。

 

 この“時空の共鳴現象”により齎された新たな“変数”は、アスタの計算を大いに狂わせる事となる。

 

雷牙「どうしたハイデュプリ?さっきみたいに俺ちゃんを煽ってみろよ?」

 

アスタ「テメェ…!!」

 

 化身アームドにより強化された身体能力(フィジカル)と、“ゾーン”により磨き上げられた繊細な動作(フォーム)が、数百年の歳月により積み重ねられた壁をいとも容易く打ち破ったのだ。

 

雷牙「今の俺は…!とことん止まらねェ!!!」

 

 黄金の翼をはためかせ自由の魂を解き放った“怪物”は、フィールドに降り注ぐ風に乗り、更に高く舞い上がる。

 

フラン「クッ…!デュプリ!稲魂雷牙からボールを奪えッ!」

 

雷冥「眷属共よッ!先祖殿を守護せよ!その為ならば命を懸けても構わんッ!寧ろ死ねッ!!」

 

 創造主の命令を受けた黒薔薇の種子達はその身を犠牲にしてでも“怪物”からボールを取り返さんと躍起になり、魔王の眷属達はその命に変えても“怪物”の覇道を切り開かんと全力で守護する。

 

 フィールド上には時には不死鳥の炎が、時には濃霧の檻が、時には天使の羽が、時には幻想なる花々の火花が…。

 生後20分を超過した分霊(デュプリ)達は、その命を燃やすかのように、数々の必殺技を繰り出し、戦場の状況が目まぐるしく変わり続ける。

 

雷牙「いっちょ行くぜッ!!!」

 

 どちらも一歩も譲らない一進一退の攻防の末に、創造主の願いを叶えたのは、蒼炎燃える魔王軍であった。

 魔王軍の力を借り活路を開いた“怪物”は、再び“獅子王の牙”にて運命の大嵐を破るべく、その歩みを加速させる。

 

 だが……

 

フラン「追加点はやらないッ!!」

 

 “怪物”の前に黒薔薇の種子達の親玉たる、“黒薔薇の魔女”が立ちはだかる。

 

 “魔女”はその右脚に、自分から全てを奪った“争い”に対する“憎悪”を込める。

 

 それに対し“怪物”は、不敵な笑みと共にこれまで出会った仲間達との思い出を回想し終えると、その右脚に未来を切り開くと硬く決意した“信念”を込める。

 

雷牙「しゃおらァ!!!」

フラン「ハァァァ!!!」

 

 “憎悪”と“信念”。両者を両者たらしめる、全く正反対の感情が少年少女の右脚を媒介に衝突し合う。

 その威力は凄まじく、“怪物”と“魔女”、そしてボールを起点に突風を伴った衝撃波が発せられ、大半の選手達はその風圧により一歩後ろに後退りしてしまう。

 

雷牙「グッ…!」

 

フラン「くっ…!」

 

 奇跡的に原形こそ保ったものの、二方向から加えられる圧力には耐えきれなかったボールは、両者の脚を離れあらぬ方向へ飛んで行ってしまい、勝負の結果は“引き分け”という形で幕を閉じてしまった。

 

グリム『スゴい!スゴい!スッゴーーいッ!!!流石は我がマスターのご先祖様ッ!200年先の技術をモノとしただけでなく、最凶最悪の魔女・フランとも引けを取らないパワーを手に入れているぞーッ!!!』

 

 “時空の共鳴現象”+化身アームド+“ゾーンの足し算は、“怪物”に絶大なパワーを与えてくれた。

 

 …だが……

 

雷牙「へっへ〜ん!!!流石は雷牙さん!未来人相手に昇りty…ッ!?」

 

 突如、何の前触れもなく、鉛の如し質量を伴った強烈な目眩が“怪物”の脳を殴りつける。その衝撃によりまともに立っていられなくなってしまった“怪物”は、アームドが強制的に解除されおぼつかない足取りで地面に倒れかけてしまう。

 

 まだ本人は知る由もないが、“ゾーン”と化身アームドの併用は非常に体力の消耗が激しい。僅か5分にも満たないプレーでも、使用される集中力は数時間分に匹敵していた。

 

バシッ!!

 

 しかし、彼が倒れる事はなかった。寸んでのところで“魔王”の右手が雷牙の肩を掴み、やや強引に引っ張り上げたのだ。

 

雷牙「雷冥…」

 

雷冥「まだココで倒れて貰っては困るぞ先祖殿。体力が底をついても命懸けで走れ。でなければ、未来を掴む事など到底不可能だからな」

 

雷牙「…ハッ!誰に向かって、寝言をほざいてやがるッ!俺ちゃんは元気ピンピン絶好調よッ!!!」

 

雷冥「フッ、生意気なヤツめ。…だが!その心意気や良しッ!」

 

 影の傀儡達との連戦により大きく体力を消耗してもなお、“怪物”の闘志は一瞬たりとも揺らぐ事なく、その手で未来を掴み取るべくもう1人の“怪物”と未来から来た“魔王”と共に立ち上がる。

 

ピーッ!!!

 

 デストラクチャーズのスローインから試合が再開し、黒薔薇の種子達による攻撃が始まる。

 本体であるフランの指揮能力に難があっても、デュプリ一体一体のパワーはアチラの方が遥かに上だ。雷冥の巧みな指揮により何とか不足しているパワーを補ってはいるが、それでも限界はある。

 

ダゴン「“ダンシングタートル”なんだな〜!!」

 

キュウコ「“分身ディフェンス”!」

 

トウテツ「んあ〜(“真空魔”)!!」

 

フラン「邪魔だァ!!!“混沌の魔女 カオスッ”!!!」

 

 過去の先人達が得意としていた必殺技の数々が“黒薔薇の魔女”に向けて炸裂するも、魔女の憎悪その物である“カオス”の荊棘により全てが粉砕されてしまった。

 

雷冥「ならば私がッ!!」

 

アスタ「おっと!“姉さん”の邪魔はさせねェよッ!!!」

 

 眷属達の苦戦を前に“魔王”本体が重い腰を上げるも、魔女の弟による妨害が入ってしまう。

 

フラン「稲魂雷斗…!今度こそ…!確実にお前を潰すッ!!!」

 

 その隙に後衛を突破したフランは、その目に強い“憎しみ”の光を宿しながらライトと対峙する。

 

ライト「ハァァァ…!“雷星拳牙 レグルスッ”!!!」

 

 黒薔薇の魔女と対峙したもう1人の“怪物”は、弟とはまた異なる輝きを放つ“レグルス”を顕現させ、立ち向かう。

 しかし、既にライトとフランの格付けは終わっている。“あの力”に目覚めておらず、その代替えとなる“ゾーン”に覚醒すらしていないライトではハッキリ言ってフランのシュートを止める事など不可能だ。

 

フラン「“フローラル…!デスペアァァァァ”!!!」

 

 フィールドに憎悪の黒薔薇が咲き誇り、漆黒の魔弾が魔女の脚から放たれる。

 ボールから発せられる圧力はこれまでのシュートとは比べ物にならず、間違いなくまともに喰らえば、良くて二度とサッカー出来なくなる大怪我…最悪二度目にして本当の“死”を迎えてしまうだろう。

 

ライト「…それでも……!ボクは逃げないよッ!雷牙が前に居る限り…!兄弟の絆が繋がっている限り…!ボクは…絶対に…!決して“明日(未来)”を諦めないッ!!!」

 

 どんな壁が立ち塞がり、どんな闇が待っていようとも、その先にある“兄弟の絆(輝き)”を信じている限り未来は続く。

 弟への“愛”こそが(ライト)の戦う意味なのだ。

 

ライト「明日に重なれ!!未来へ繋がれ!!マイフェイバリットヒーロー“レグルス”…!アームドォォォ!!!」

 

 その想いに呼応するように、もう1人の“英雄(レグルス)”はその身を光へ変え、“怪物”の身体を優しい光で包み込む。

 光が晴れた先に居たのは、一部が不完全ながらも“英雄(レグルス)”の意匠を施した黄金の鎧をその身に纏いし“怪物”だった。

 

フラン「何だと…!?」

 

グリム『またしても予想外の展開だーーッ!!!ライト…え〜と…この場合何て呼べばいいんだろ…。ひいおじいちゃんは雷牙選手だし…。…まっいっか!ライト選手の化身アームドだーーッ!!!』

 

 未完成ながらも化身アームドを成功させたライトは、その左手に“獅子王”を宿し、憎悪の黒薔薇を受け止めんと力強く一歩を踏み出す。

 

ライト「“ゴッドハンドォ…!レグルスゥゥゥ”!!!」

 

 翡翠色の“神の左手”は“獅子王”へと姿を変え、怯む事なく荊棘に包まれた黒薔薇へ喰らい付く。

 

ライト「グギギ…!負ける…!もんかァ…!!!」

 

 “時空の共鳴現象”と化身アームドに強化されたライトを以ってしても、憎悪の黒薔薇は彼の手に余る代物だった。

 辛うじて瞬殺こそは免れているが、翡翠色の獅子王の身体には徐々に亀裂が入り始め、今にも寿命を迎えそうだ。

 

フラン「諦めろ稲魂雷斗ッ!!!お前では私には勝つ事は出来ないッ!!!」

 

ライト「だーかーらーさー…!何回も言ってるだろ…!ボクは絶対に諦めないってさァ…!!だってボクは…!」

 

???「俺達はァ!!!」

 

 その刹那、魔女の全神経に凄まじい悪感が走る。ある日を境に強大な超能力に目覚めて以降、強者として生きてきた魔女にとって、命の危険すらも感じる程の悪感を感じ取ったのは初めての経験だった…。

 

 魔女は恐る恐る視線を悪感の主へ移す…。その先に居たのは……

 

雷牙「“ゴッド…!レグルスゥゥゥ”!!!」

 

 兄を助けるべく種子達の妨害を振り切り、再度黄金の鎧を身に纏い金色の“獅子王”を右脚に宿した“怪物”だった。

 

ライト「雷牙…!」

 

雷牙「ケッ!なーにシケた面してんだッ!!まだ終わりじゃねェよなァ!!!ライトォ!!!」

 

ライト「…エヘヘ!んなワケっ!ボクたち兄弟の力は“無限大”だよっ!」

 

 何百回 何千回 何万回 硬く結んだ手と手を離さない兄弟は、その胸に無色の稲妻を宿し自分色へと染め上げる。

 

雷牙「おいライトォ!!!オメーの力はそんなモンかよォ!!?オマエさんが本当に“怪物”の息子ならよォ…!まだまだこんなモンじゃねェよなァ!!!」

 

ライト「グ…!ウワァァァァァッ!!!」

 

 その瞬間、“怪物(ライト)”の中の“何か”が切れた。

 

 時間にした僅か1秒にも満たない一瞬ではあったが、“怪物(ライト)”の身体からは弟の“獅風迅雷”にも似た稲妻を纏った金色のオーラが発せられ、頭髪は天に向かって逆立ち怒髪天を衝く。

 

雷冥「アレは…!」

 

 本人ですらも認識出来ない謎の変化に呼応するように、黄金と翡翠色のの“獅子王”達は、二色の螺旋を描き一体に混ざり合い、新たな“怪物”へと変貌する。

 

雷牙&ライト「「コレが俺(ボク)達の力だァァァ!!!」」

 

 新たに誕生した“怪物”の牙は黒薔薇の荊棘を容易く噛み砕き、兄の左手にボールを収めさせた。

 

 決して絆を諦めない“兄弟の絆”が、憎しみに囚われた孤独な魔女の“強大なる憎悪”に打ち勝ったのだ。

 

グリム『止めたーーッ!!!決して絆を諦めないッ!!兄弟の絆が未来に(まさ)ったーーッ!!!この瞬間に起こった奇跡はきっと嘘じゃなーーい!!!』

 

フラン「兄弟の…絆…!」

 

 兄弟の絆を目の当たりにしてしまった魔女は、思わず目を逸らしてしまう。血の繋がりは存在せずとも、魂で繋がり固い絆で結ばれた兄弟の絆は、魔女にとってはあまりに眩しすぎた。

 

アスタ「“姉さん”…?どうしたんだよ…?そんなに顔色を悪くして…?」

 

フラン「アス……ッ!?」

 

 黒薔薇の種子の中で唯一明確な自我を持つアスタは、“姉”の不調を心配しこれまでの荒々しいプレーからは想像も付かない優しい声色で、“姉”に駆け寄る。

 

 それこそが悪手だったと知らずに…。

 

 弟を模した種子の顔を見てしまった魔女は、その脳裏に未来永劫消える事のない心に深く刻まれたトラウマがフラッシュバックしてしまった。

 

???『ごめん…姉さん…。俺達…もう駄目…みたいだ…。姉…さんと…一緒に…サッカーした…かっ…た…な……』

 

フラン「ハァ…!ハァ…!ハァ…!アスタ…!サン…!」

 

 トラウマが再発してしまった魔女は息を荒くして狼狽し始めると、創造主の不調に呼応するように、種子達の肉体にノイズが走り始める。

 

 デュプリとは化身の亜種、そして化身は人が強い“想い”が形を持って外部に抽出された物…。それ故に創造主の精神が揺らげば、その眷属たるデュプリにも大きな影響が発生するのだ。

 

雷冥「先祖殿ッ!私にボールを寄越せッ!!!私がこの試合を終わらせるッ!!!」

 

ライト「OK!任せたよ…!雷冥くん!!!」

 

 ボールを受け取った“魔王”は、曽祖父譲りの荒々しいドリブルと眷属による連携を駆使して攻め上がる。

 当然“魔王”の侵略を食い止めるべく、黒薔薇の種子達が立ちはだかる。創造主たる魔女の不調によりただでさえ薄かった人間味が完全に消失し、機械的に目の前の脅威を排除する事しか頭にない彼らの様子は、もはや糸で垂らされた“人形(マリオネット)”だ。

 

雷冥「犯罪者共よッ!光栄に思うが良いッ!!!久方ぶりに私を苦戦させてくれた礼だッ!!貴様らに我が本気を見せてやろうッ!!!」

 

 彼なりの礼儀として自我を失った“人形”を全力を以て叩き潰すと宣言した“魔王”は、膨大な蒼炎に燃ゆるオーラを立ち昇らせる…!

 

雷冥「“獅風迅雷ッ”!!!」

 

 曽祖父が生み出し、娘にも継承された“獅風迅雷”。あまりにピーキーすぎるその技術は80年後の子孫にも受け継がれ、祖先の未来を護る“矛”と化す。

 

雷冥「“獅風迅雷・限界突破(オーバーハンドレッド)ッ”!!!」

 

 だがそれでは終わらない。間髪入れずに更に気を高め、違法スレスレの裏技により人間の限界を超える為の第一段階(フェーズ1)に到達する。

 

雷冥「まだまだァ!!!“獅風迅雷・超限界突破(オーバー・オーバー・リミテッド)ッ”!!!」

 

 人間の限界を超えるだけでは満足出来ない“魔王”は、限界を超える事で初めて到達出来る“至高の領域”へ至り、祖先よりも遥かに洗練された動きで、黒薔薇の人形達を翻弄していく。

 

雷牙「スゲェ…!あんな簡単に“ゾーン”に突入出来る事も驚きだが、俺ちゃん以上に“ゾーン”を使いこなしてやがる…!」

 

 自身とは一歩も二歩も上を行っている雷冥の“ゾーン”を目の当たりにした雷牙は身体を震わせる。しかし、その表情には“怒り”や“嫉妬”といった負の感情は籠っておらず、新たな目標が出来た事による“喜び”に満ち溢れていた。

 

アスタ「たった1人でここまで来た事だけは褒めてやるッ!だが俺には敵わねェ!!!」

 

 創造主が不調の中でも、その寵愛により辛うじて自我を保持したアスタは、“混沌王”を顕現させ“魔王”へ襲い掛かる。

 

雷冥「…哀れだな」

 

アスタ「何ッ!?」

 

雷冥「貴様は所詮、過去の記憶を基に生み出されたデュプリでしかない。それ故に大した学習能力を持っておらず、いつまでも成長する事だって出来ない」

 

アスタ「関係無ェよォ!!!全ての“切り札”を出し尽くしてもテメェが俺に勝てねェ現実は変わらねェ!!!」

 

雷冥「…誰が()()()()()()()()()()()()()()?」

 

アスタ「なっ…!?」

 

 刹那、既に“限界”のその先へ到達している“魔王”の身から、これまでとは比較にならない程鋭い気迫が発せられる。

 

雷牙「んだよこのプレッシャー…!鳥肌が止まんねェ…!」

 

雷冥「先祖殿ッ!貴殿の“ゾーン”はまだ通過点でしかないッ!!」

 

 80年前の先祖に見せつけるように“魔王”は、更に気を高めると快晴の如き鮮やか水色だったオーラは、青玉(サファイア)を思わせる濃い藍色へと変化する。

 

雷牙「まだ上があるってのかよ…!」

 

雷冥「私の“獅風迅雷”は、“限界”を超えた先にある地平線(ホライゾン)…!それすらも超えるッ!!!」

 

 “至高の領域”すらも超え、人類が到達出来る臨界点へと到達した“魔王”は、その瞳が金剛石と似た輝きを放ち、濃い藍色のオーラに、白銀のオーラが重ね掛けされる。

 

雷冥「コレが私の最高到達地点(ゼンリョク)だァァァァ!!!」

 

 “至高の領域(ゾーン)”を飛び越え、“地平線(ホライゾン)”へ飛び立つ。

 

雷冥「“獅風迅雷ッ!!!究極極限界突破(ビヨンド・ザ・ホライゾン)”!!!」

 

 限界という“地平線(ホライゾン)”を超え、新たな可能性へ到達した“魔王”。

 その身から放出される凄まじい熱量と反比例するように、気の流れは非常に穏やかなものとなり、豪炎寺すらも超える存在感を放ちながらも、湖畔を包み込む霞の如き儚さも併せ持っている。

 

アスタ「クッ…!」

 

雷冥「…コレは以外だな。デュプリにも焦りを感じるとは思わなかったぞ。…いや、貴様だけが特別なのか?」

 

アスタ「黙れェェェ!!!それがどうしたァァァ!!!多少、見てくれが変わったくらいで俺には敵わねェんだよォォォ!!!」

 

 “魔王”の言葉を必死に否定するアスタだが、その表情からはその指摘が図星である事を隠し切れていない。

 それでも敬愛する“姉”に幕いる為に絶対に引くわけにはいかない。目の前の脅威を排除する為に、“混沌王”はその剛力を以て“魔王”へと襲い掛かる。

 

 だが……

 

 

 

 

 

アスタ「消えっ…!」

 

 “混沌王”の爪は“魔王”の肉体を貫く事はなかった。“魔王”の肉体を突き刺す直前に、その姿が消失したのだ。

 

雷冥「真なる“ゾーン”に思考は必要ない。ありとあらゆる危機を前に、我が身が勝手(オート)に動き出し…」

 

 その身が霞と化したとさえ錯覚させる超技術により、“混沌王”の一撃を回避した“魔王”は、一瞬にして後方へと移動しアスタを突破した。

 

雷冥「我が本能が赴く(まま)に突き進むッ!!!」

 

 最後の砦たるゴールへ到達した“魔王”はその身より闇色のオーラを発すると、その背後より“無限”を超え“魔人”を統べる“魔人王”が完全なる形で降臨する。

 

雷牙「アレって…!立向居が完成させようとしてた…!」

 

雷冥「まさかと思うが、コレを模倣(パク)りとは言うまいな?キチンと尊敬の念を込めた先人への敬愛(オマージュ)だッ!!!」

 

 “魔人王”の咆哮が天に鳴り響くと、ボールに同色のオーラが注入される。同時に“魔王”は右脚を“魔人王”は右腕を構え、シュートフォームへと移る。

 

雷冥「“ヘルズフィストNX(ネクスト)ォォォ”!!!

 

 2人の“魔王”により炸裂した一撃は、黒薔薇の種子達のディフェンスを物ともせず、地面を抉りながらゴールへ向かう。

 

ロータス「“ディスティニークラウドォォォ”!!!」

 

 文字通り最後の砦と化した黒薔薇の種子は、魔王の蹂躙に対し最後の抵抗を試みる。

 

雷冥「愚かにも私の覇道に立ち塞がる邪魔者よッ!!!我が威光の前に平伏せェェェ!!!」

 

 だが心を失った種子の防壁は、誇り高き“魔王”の前には“獅子王の牙”と同様に、無意味と化す。

 

ロータス「グオォォォォ!!!?」

 

 真紅の大嵐は魔王の覇道を阻む事すら叶わずに、完膚なきまで粉砕された。

 

ピーッ!!!

 

グリム『ゴーールッ!!!流石は我がマイマスター!流石は“フィールドの魔王”ーーッ!!!圧倒的なパワーを以て、遂に逆転だーーッ!!!』

 

ピッ!ピッー!

 

 得点のホイッスルと眷属の実況がフィールドに響き渡る中、再度二度ホイッスルが鳴らされる。その笛が示す意味はただ1つ、前半戦終了の合図だ。

 

フラン「兄…弟…繋がり…絆……」

 

 両チームの選手は後半戦に向けて15分の休息に入ろうする中、魔女は煉瓦模様のフィールドに膝を突き、虚な目で譫言を力なく呟くだけの存在と化していた。

 

 僅か30分の間に幾度となく突かれた数々のトラウマは、彼女の精神を疲弊させるには十分過ぎた。

 

雷冥「…最後の警告だ。今すぐ降参しろ、そうすれば死刑だけは勘弁してやる」

 

 魔女の心を掻き乱し、リミッターが掛けられている彼女では自分達には勝てないという優位性を得た雷冥は、最後の慈悲として降伏を促す。

 時空管理局のエージェントたる雷冥は彼女が元の世界で犯した罪を把握している。当然、下手すれば世界すらも滅ぼしかねないその危険性も…。

 それでも、話が通じる限りは命だけは救おうとする“優しさ”は性格が豹変しても変わっていないのだ。

 

 …だが、その甘さとも言える“優しさ”が皮肉な事に最後のスイッチを押す事となってしまう。

 

???『理解出来ないなァ。世界滅亡(それ)を選んだのはキミ自身だろ?キミはもう立派な加害者じゃないか?それなのに被害者ぶるなんておかしくないかな〜♪』

 

 魔女の脳内に“救世主”の囁きが木霊する。

 

フラン「違う…!私は…!あんな事は望んでなかった…!私はただ…!弟達と一緒に過ごしたかっただけ…!」

 

雷冥「フラン…?」

 

 突如、髪を掻き毟り異なる独り言を呟き出すフランに雷冥は困惑してしまう。

 

???『で?そんなか弱い美少女の悲痛な願いが“免罪符(赦し)”になると本気で思ってるワケ?違うんだよなァ、罪は消えない、逃げる事も許されない。その命を散らすまで、永遠にその“罪”がまとわりつくんだよ?』

 

フラン「あ…ああ……!」

 

 もはやフランに瞳に雷冥は映っていなかった。その代わりに映るのは雷牙や雷冥と似た顔立ちを持ち、自分に“最後の選択”を迫った、白銀の“救世主”の姿…。

 

フラン「ごめんなさい…!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 自身が犯した“過去()”への罪悪感から心が押し潰された少女は、目に涙を浮かべながら狂ったように謝罪を行う。

 

 その瞬間、髪が。瞳が。自我が。思想が。心が。

 

 少女を少女たらしめる全ての要素が、ドス黒い“憎悪”に染まってゆく。

 

フラン「うわぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 魔女の“悲しみ”と呼応するように、黒薔薇の種子達は次々と消滅しフィールドに“混沌の魔女”が顕現する。

 “混沌の魔女”はその身を紅と黒の禍々しい光へと変えると、彼女の“悲しみ”を埋めるかのようにまとわりつく。

 

ライト「アレも…化身アームドなの…?」

 

雷牙「いや…!違ェ…!!似てるけど別の“何か”だ…!!」

 

 “混沌の魔女”が姿を変えたのは“鎧”ではなかった。

 

 性別関係なく、化身を雄々しく美しき英雄の鎧へ姿を変える化身アームドに対し、“混沌の魔女”の成れの果ては花を思わせる意匠を持った漆黒の“ドレス”であった。

 

 胸に装着された花型のブローチをピンクがかかった薔薇色に染め、宙に浮、旧人類達を見下す姿はまさしく“黒薔薇の魔女”であった。

 

雷冥「コレはマズいッ!!!」

 

 自身の甘さが最悪の事態を呼び寄せてしまった事を確信した雷冥は、即座に全ての眷属(デュプリ)を解除し、その背に本来の姿である“魔皇”を顕現させる。

 

雷冥「“雷鳴の魔皇 アークトゥルス”!!!」

 

 遂に顕現した“魔皇”は、『○』と『✖︎』を模った紋章を出現させ、“黒薔薇の魔女”の周囲を舞う。

 

雷冥「“アストラルジャッジメントッ”!!!」

 

 世界を滅ぼしかねない“黒薔薇の魔女”の罪を裁くべく、並行世界の過去にて“破壊者”の一撃すらも粉砕してみせた“魔皇”による裁判が開始される。

 

 その判決は……

 

『○』

 

雷冥「何ッ!?」

  

 なんと“魔皇”は魔女に対して“無罪判決”を示し、星々の檻から魔女を釈放させてしまう。

 

フラン「私は…もう……立ち止まる事なんて許されない…!全ての世界から…“争い”をなくす為に…!これ以上“憎しみ”を生み出さない為に…!この世界を滅ぼすッ!!!」

 

ライト「矛盾してる…!憎しみを生み出さない為に世界を滅ぼすなんて、そんなの矛盾してるよ…!」

 

 “争い”を無くす為に自ら“争い”の種を蒔くいう矛盾を抱いた“魔女”は、その身体から膨大なる漆黒のオーラを放出し、この島…否、この惑星全体を漆黒の暗雲で包み込む。

 

 “怪物”の紛い物により混沌に包まれたウミヘビスタジアムでは…

 

マクスター『な、なんだーーッ!?アレだけ晴れていた空が分厚い雲に覆われ始めたぞーーッ!?』

 

雷牙?「あ〜あ、案の定暴走しちゃったか…。時空管理局のエージェントも来ているようだし、そろそろ潮時かな〜?」

 

 一方、日本とイタリアの友達が本物の“怪物”を捜索するイタリア地区では…

 

佐久間「空が…暗くなった…?」

 

鬼道「ーー!!! 皆ッ!あそこを見ろ!人だ!人が宙に浮かんでいるぞッ!」

 

円堂「イタリア特有のイベント…なわけないよな?」

 

フィディオ「流石にそんなおかしな事はしないよ!」

 

不動「チッ!嫌な予感がビンビンしやがるッ!どう考えても、クソライオンが1枚噛んでるに決まってんだろッ!」

 

 この世界に生きる人々は、大なり小なり今起こっている世界滅亡の危機を感じ取っていた。

 

雷牙「クソッタレがァ!!!いくら負けそうになったからって、この仕打ちは無ェーだろーが!!!オメー、もしかしなくてもオセロで負けそうになったら盤ごとひっくり返すタイプだろ!?」

 

ライト「こんな時にジョークを言ってる場合!?何とかしてあの子を落ち着かせないとマジで世界が滅びるんだよ!?」

 

雷牙「っつてもどうやって…!?…ん?雷冥?何してんだよ…?」

 

 ガチの世界滅亡の危機に慌てふためく兄弟を尻目に、雷冥は組織から提供された腕時計型のデバイスを操作し終えると、腕から外し雷牙に手渡す。

 

雷牙「んだよコレ…?」

 

雷冥「しっかり持っていろ先祖殿。今、組織に緊急コードを送った、1分もすれば組織の精鋭部隊が魔女を鎮圧してくれるであろう」

 

 謂わばGPSとしての役割を持つデバイスを祖先に手渡し、淡々と1分後に現れるであろう鎮圧部隊の説明を行う雷冥。

 その言葉の節々には、まるで1分後の未来には()()()()()()()()()()()()()()()推量系で物事を語っていた。

 

雷牙「待てよ…!その言い方…!まるで…!」

 

雷冥「そうだ、()()()()()()。それでヤツを殺せるとは思えんが、少なくとも鎮圧部隊が現れるまでの時間稼ぎくらいにはなるだろう」

 

雷牙「んな…!」

 

 あまりにも簡単に自身の命を時間稼ぎに使おうとする80年後の子孫に雷牙達は言葉を失ってしまう。

 

雷牙「ふざけんじゃねェ!!!どうしてんな簡単に命を捨てれるんだよ!?分かってんのか!?命ってのは一つしかねェーだぞ!?」

 

ライト「ボクたちも何とか時間稼ぎに協力するよ!だから…!そんな簡単に命を捨てるだなんて言わないで!」

 

 兄弟は必死に雷冥を止めようとするが、彼の決意は揺るがない。

 

雷冥「…貴殿達の心配には感謝する。私とてこんな所で命を散らす事は不本意だ。…だがな、コレだけは覚えておけ。命は一つしか無いが使い所はある。私にとって…それが今なのだッ!!」

 

雷牙&ライト「「ッ…!」」

 

 無限に存在する歴史の平和を守るエージェントとしての責任感に満ちた言葉を前に、兄弟は何も言えなくなってしまう。

 鎮圧部隊が到着するまで残り40秒…。このたった40秒の間にこの世界の命運が決まってしまう。

 

フラン「これで…全てを終わらせる…!!!“カオスメテオッ”!!!」

 

雷冥「ワンダバード!ワンダキャット!」

 

ワンダバード「は、はい!」

ワンダキャット「…ん」

 

 主人の号令と共に、機械仕掛けのペット達はそれぞれの兄弟の側に移動し高密度のパリアーを展開する。

 

雷冥「ウオォォォォォッ!!!」

 

 残された“魔王”は、自分の身を犠牲にこの世界、そして罪の無い人々を守るべくその身に蒼と白銀の光を宿し、世界を滅さんとする“混沌の隕石”へ立ち向かう。

 

雷牙「雷冥…!雷冥ーーッ!!!」

 

 事実上、今日会ったばかりとはいえ血の繋がった子孫の死に際に、声を上げない者がいようか?遥か未来の超技術により開発された、ありとあらゆる爆風・爆音から対象の安全を守る、高密度のバリアーを突破し雷牙の悲痛な叫びが木霊した。

 

 誇り高き魔王・稲魂雷冥。80年前の時空にてその命を散らす。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 筈だった。

 

ガシンッ!!!

 

 突如、音も無く出現した鈍色の拘束具が“黒薔薇の魔女”の身体を包み込んだのだ。

 

フラン「グ…!グアァァァァァ!!!」

 

 拘束具は、魔女の身から際限なく溢れ出る邪悪なるオーラを吸収し始めると、破滅の光が徐々に収束し始める。

 

雷冥「何…?」

 

???「そこまでだ“黒薔薇の魔女”よ。この世界を滅ぼせとは“アヤツ”の命令にはなかった筈だろう?」

 

???「ハァ…本当に品が無いね。君は本当に僕達に連なる者なのかい?」

 

 耳に響くのは、少なくとも兄弟には聞き覚えのない二つの声。一方の声は荒く粗暴ながらもやや古風な声、もう一方の声は氷のように冷たく慇懃無礼さを感じさせる声だ。

 

雷冥「…何奴?」

 

 命を救われながらも、救世主の正体は組織の人間ではないと確信した雷冥は、威嚇を兼ね声色を低くし、警戒心に満ちた瞳と共に視線を移す。

 そこに居たのは狼を思わせる赤髪の少年と、蝙蝠…いや吸血鬼を思わせる白髪の少年だった。

 

雷牙「誰だ…?コイツら…?」

 

 稲魂兄弟は謎の来訪者に首を傾げているものの、雷冥は彼らの正体に心当たりがある様子だ。

 

雷冥「…コレはコレは。誰かと思ったら、“ツキガミの一族”の棟梁、ガルシャア・ウルフェインと、“ヴァンプティム”の当主、ヴァンフェニー・ヴァンプではないか?」

 

雷牙「ガルシャアと…?」

ライト「ヴァンファニー…?」

 

 名前が判明してもなお、その正体に心当たりがない兄弟は更に深く首を傾げ、頭に『?』マークを浮かべる。

 

雷冥「貴様らは、松風天馬に敗れた後に歴史の表舞台から姿を消した存在だぞ?何故、貴様らがこの時代に居る?」

 

ガルシャア「フン!何も俺達も好きでこの時代に居るわけじゃねぇ!!」

 

ヴァンフェニー「僕達の目的はそこで気絶している彼女(フラン)だよ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

雷冥「…差し詰め、貴様らの親玉に魔女が暴走したら回収に行けとでも言われたのだろう?…まさかとは思うが、その“()()”は忠誠の証か?」

 

 雷冥の目に映るのは、少年達の首に装着された機械仕掛けの“首輪”。その用途がどのような物かは分からないが、彼らにとってはよろしくないのは確実だろう。

 

ガルシャア「フン!オマエに話す義理は無ェ!」

 

ヴァンフェニー「コレに関してはガルシャアと同意だね。こう見えても僕達は忙しいんだ。今回はコレでお暇させてもらうよ」

 

 これ以上の会話は無用と言わんばかりにヴァンフェニーは、時空の扉を開くとその奥から、不規則な幾何学模様で彩られた無機質な空間が姿を現す。

 

ガルシャア「命拾いしたな!エージェントよ!オマエを喰らうのは次の機会だッ!!!」

 

ヴァンフェニー「それじゃ、シーユー♪」

 

 本来の目的を果たした3人目と4人目の未来からの来訪者達は、旧人類に大きな危害を加える事なく元の時代へと戻る。

 役目を果たした時空の扉は光の粒子となり消滅し、フィールドに残ったのは3人と2匹のペットだけだった。

 

ライト「えっと…コレで一応は解決…なんだよね…?」

 

雷牙「なんつーか…最後の最後で情報が洪水みてーに流れ込んできて、処理出来ねーよ…」

 

 前半戦で試合が終了し、嵐のように訪れ嵐のように去って行った謎の来訪者のせいで、脳の処理がパンクしている兄弟はボケる余裕もなく、呆然としていた。

 

雷冥「カチッ!)…いえ、まだですご先祖様。最後の1つ、大きな仕事が残っております」

 

雷牙&ライト「「え?」」

 

 アホ毛を引っ張り人格を“魔王”から“稲魂雷冥”へ戻した雷冥は、雷牙からデバイスを受け取り操作を行うと、空中にホログラムの画面が表示される。

 

 そこに映されていたのは……

 

マクスター『強い!強い!強ーい!!!ライガ・イナタマ!まさかのジ・エンパイア相手に40点目ーーッ!!!』

 

 この場に居る筈の、“稲魂雷牙”に蹂躙されるジ・エンパイアの姿であった。

 

雷牙「はァ!?何で俺ちゃんがアルゼンチンと試合してるんだよ!?それに40点目って…!?」

 

ライト「ーー!!! この子ってまさか…!」

 

雷冥「ええ。恐らくフラン達と同じ組織の者でしょう」

 

雷牙「ざけんじゃねェーー!!!アルゼンチン…特にテレスは俺の獲物だッ!!!んな訳の分かんねェ、ニセモンに俺らの試合を台無しにされてたまるかよッ!!!オイ、ライトッ!今すぐウミネコスタジアムに向かうぞッ!」

 

ライト「だ〜か〜ら〜!泳いで行くのは無茶だって〜!」

 

 未来からの介入により、楽しみにしていたアルゼンチン戦を台無しにされた雷牙は、再び思考の暴走を始めてしまう。

 

雷冥「…仕方ありませんね。ワンダバード!」

 

ワンダバード「かしこまりました!それ!」

 

 主人の命令により、ワンダバードは宙に向けて目から光線を発射する。すると、先程と同様に何もない空間に小洒落た扉が出現し、自動でドアノブが開かれ、扉の先にウミネコスタジアムが出現する。

 

雷冥「私は、ウミネコスタジアムで待機させた鎮圧部隊と合流します。ご先祖様達は、先に会場に行き偽者の証明をお願いします。そうすれば、後は丸く収まる筈です」

 

雷牙「サンキュー雷冥!やっぱ持つべきなのは、頼れるひ孫だよな〜!」

 

雷冥「礼には及びません、エージェントとしての役割を果たしただけですから。…あっ、そうでした」

 

 ひ孫との別れの挨拶を終えた雷牙達は、扉を潜り“怪物”の紛い物により混沌に包まれたスタジアムへ向かおうとする。

 

 その時…

 

雷冥「ライト様!」

 

ライト「ん?どうしたの雷冥くん?」

 

雷冥「近い未来…。“過去”でまたお会いしましょう」

 

ライト「…え?」

 

雷牙「そ〜そ〜!頑張ってくれよ〜!狛太郎クン!」

 

ライト「え?え?コマタロウ?何それ?どゆこと?」

 

 突然の雷冥の言葉に困惑するライトを雷牙が茶化す。

 数百年未来の脅威から齎された、本来決して交わる事のなかった“過去”と“未来”の交差点…。この出会いは、近い未来“鬼”の名を冠した襲来者から未来を護る盾となる。




ふと思ったけど、SARUとフランってどっちが強いんだろうね?
描写的には時空最強イレブンの力を総動員してやっと倒せたSARUの方が強そうではあるけど、フランは一回イナGOの世界を消滅させてるしなぁ…。
個人的な解釈だと、サッカーの上手さと組織を束ねるリーダーとしての力はSARUで、純粋な超能力の強さはフランの方が強いってイメージ。

〜オリ技紹介〜
♦︎獅風迅雷・究極極限界突破(ビヨンド・ザ・ホライゾン)
≪概要≫
雷牙が編み出した“獅風迅雷・超限界突破”の発展系であり、80年後の子孫である雷冥により完成された究極進化系。
所謂、“明鏡止水”、“無我の境地”の最終到達点なる領域であり、意識を介さずとも肉体を動かし、常に最適な行動を取る事が出来る。
全ての行動に一切の無駄が無くなる事で必殺技の精度も更に高まり、発動中は全ての使用技が“NX(ネクスト)シリーズ”へ進化する。
他作品で例えるのなら、DBの“身○手の極意”みたいなモン…てゆーかそれが元ネタっす。

♦︎ヘルズフィスト
属性:林
分類:シュート
使用者:雷冥
進化系統:究極奥義
≪概要≫
気を高めると雷冥の背後に“魔王・ザ・ハンド”と同型の“魔王”が降臨、2人の“魔王”による蹴りと拳がボールに炸裂し、シュートが放たれる。
モーションはキーパー技からシュート技になった同名の化身技みたいな感じ。

イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。

  • 稲魂雷牙
  • 稲魂雷斗
  • 明星鬼乃子
  • “雷帝”
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