イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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前回は流石に暴走しすぎたと深く反省してます。0評価食らって日頃のストレスが爆発しちゃったってのもあるけど、少し言動が過激すぎましたね…。これからは出来る限り評価を気にしないようにします。
作者のしょうもない発作で、読者の皆様に不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした…。
それと作者の我儘に付き合っていただき、高評価を入れてくださった読者の皆様、本当にありがとうございます!!!


キュウリってさ…浅漬けにして食うのが一番美味いよね♪

 激戦に激戦を重ねた激戦だったユニコーンとの試合を終わり早数日。世間一般的にはそろそろウィンターシーズンなるモノにうつつを抜かす頃だが、俺には関係ねェ。

 

 だって俺の誕生日は8月16日だし、サンタさんは来た事ねェしでウィンターとは縁のない人生を送ってきたかんな。

 

 え?なら俺は何をしてるかって?フッ…!何を隠そう俺ちゃんは今…!

 

雷牙「アババババ…!死゛ぬ゛ッ゛!!!真゛冬゛の゛滝゛行゛は゛普゛通゛に゛死゛ぬ゛る゛ッ゛…!!!」

 

 極寒の気温の中で、滝行の真っ最中でごさいやーす…。

 

……………

…………

………

……

雷牙「ぶぇーくしょん!!!ブルルル…!しくった…!こんな時期に滝行なんぞすんじゃなかった…!オルフェウスとの試合前に風邪なんぞ引いたら流石に笑えねェって…!」

 

 あ〜…地獄の寒さだった…。いやな?ここ数日の特訓の結界、やっぱ“ゾーン”を極める為には普通の特訓じゃ効果が薄い事に気付いたのよ。

 だから今まで俺がやった事のない特訓に手を出そうと思ってな。数分考えた末に思いついたのが、ウィンターシーズンでの滝行ってワケよ。

 んでユニコーン戦後の休みを利用して、街中で色々聞き込みを続けた結果、辿り着いたのがココ『マグニート山』!!

 

 地元民曰くこの島に古くから伝わる伝承によれば、この山のどっかに“天使”と“悪魔”の力を受け継いだ末裔達が住んでる“ヘブンズゲート”と“デモンズゲート”なる場所があるらしいが、別に俺ちゃんには関係ねェから滝の場所だけ聞いて適当に話を切り上げた。だって、“天使”と“悪魔”なんざ本当に居るワケねェかんな。数ヶ月前に来た宇宙人だって結局は人間だったし。

 

雷牙「ハァ〜…言われてみりゃあ、シュウから俺には精神修行は合わねェって断言されてたの忘れてた…。完っ全に時間と体力のムダじゃねェか…」

 

 細かい事は考えずに突っ走る雷牙さんの長所も、今回ばかりは裏目に出来ちまったな。

 もう今日は帰ろ…。んで栄養のあるモンいっぱい食って、あったかい恰好で寝よ…。絶対に風邪だけ引きたくねェかんな…。

 

???「ジー…」

 

雷牙「あん?何か…鋭い視線を感じるような…?」

 

 気のせい…にしてはヤケに存在感のある視線だな…。…もしかしてマジモンの天使か悪魔が俺の魂を狙ってんのか…?あー…ダメだ…。なんか変な寒気がしてきた…。

 

 べ、べ、べ、別に〜?お、お、お、お化けなんて怖くないでごさいやがりますよ〜…?も、もしも俺ちゃんの前に出やがった暁には黄金の右脚が火をh…

 

ガサガサッ!!!

 

雷牙「モギャァァァァ!?!?!?」

 

 あっ!何か自分でも始めて聞く変な裏声出たッ!!

 

???『カッパ…!カッパ…!カッパァ…!!』

 

 あ〜!!!ダメです!!!雷牙さんのムズムズセンサーが最大限の警戒を送っておりますッ!!!かくなる上は…!

 

雷牙「一時退却〜〜!!!」

 

 コレは逃走ではないッ!!次に繋げる為の勇気ある退却なのだッ!!決して謎のお化けが怖いワケでは決してないッ!!!

 …あっ!ヤベッ!!!ボール落とした!!!最近買ったばっかの俺ちゃんのマイボール〜〜…!だけど流石の雷牙さんも命が惜しい〜〜!!!

 

♢♢♢

円堂「だ〜か〜ら〜!!!本当に見たんだって〜!!!本物の河童を〜!!!」

 

 早朝早々、食堂に円堂の雷鳴の如し大主張が響き渡る。その内容は昨夜見たという“河童”についてだ。

 

壁山「キャプテン…。それって本当に河童だったんすか〜?寝ぼけて別の何かと見間違えたんじゃ…?」

 

円堂「本当だって!!マジで河童を見たんだって!こーんな風に口がとんがってて、頭にお皿を乗っけてさ〜!!」

 

 サッカーに対する姿勢並みに熱く本物の河童を見たと主張し続ける円堂だが、残念な事にチームメイトの反応は芳しくない。

 

円堂「雷牙…。お前は信じてくれるよね…?」

 

雷牙「守…。河童なんざ居るワケねェーだろ。宇宙人だって静岡県民だったんだから」

 

ヒロト「ブホォ!?」

 

 河童の話から一転、自身にとって消えちゃいけない過去であり、あまり触れられたくない黒歴史に飛び火したヒロトは、衝撃のあまり口に含んでいた牛乳を吹き出す。

 

“異議ありッ!!!”

 

円堂「なら分かった!俺が河童に会ったっていう決定的な証拠を見せてやるっ!!!」

 

 ここまで必死に主張しても信じてくれないチームメイトに剛を煮やした円堂は、最終手段として証拠品を提示する意思を見せる。

 

“黙りなぁ!!!”

 

雷牙「フッ、苦し紛れにありもしない証拠品を提出しようとするとは笑止千万!決定的な証拠品・・・出せるモンなら出してみやがれッ!!!」

 

 何やら、不可逆的な裁判に登場する弁護士と検事と似た雰囲気を纏い始めたサッカーバカ2名は、どちらの主張が正しいかを決めるべく、最初にして最後の証拠品を提出する。

 

 部屋から証拠品を持ってきた円堂が提出したのは、何の変哲もないサッカーボールだった。

 

風丸「円堂…。いくら、嘘が大事になって引き返せないところまで来たからって、証拠の捏造はよくないぞ…」

 

円堂「捏造じゃないって!昨日会った河童が置いていったんd…」

 

雷牙「あああ〜〜!!!マグニート山でなくした俺のボール!!!」

 

 円堂の主張を遮ったのは、まさかの罪を立証する側の検事役である雷牙。

 

豪炎寺「本当にお前のボールなのか?俺にはそこらへんボールと同じように見えるが…」

 

雷牙「間違いねェ…!紆余曲折あってなくした俺ちゃんのボールだ…!」

 

染岡「けどマグニート山って日本地区から10km以上離れてんだろ…?それがここにあるって事は…」

 

 つい先程まで河童の存在を否定していた雷牙が、逆に証拠品の異常性を肯定した事で、河童の実在に信憑性が増し嫌な寒気が背筋を襲う。

 

円堂「なっ!なっ?やっぱり河童は居たんだよ!!」

 

鬼道「…もう止めようこの話は。河童の存在を認めるわけじゃないが、何か触れちゃいけない深い闇を感じる…」

 

『さんせ〜…』

 

 円堂が見た存在が本物の河童がどうかは置いておいて、少なくともまたしても変な出来事に遭遇した事だけは確実だ。

 影山が背後に居るオルフェウス戦の前に、ロクでもないトラブルに巻き込まれたくない皆は、やや強引に話を打ち切り練習の為にグラウンドへ向かう。

 

円堂「う〜ん…昨日見た河童は夢だったのか…?…いや、雷牙がなくしたボールがある以上、やっぱり現実なのか…?」

 

 皆が練習に向かう中、円堂は未だに夢が現実だったのか区別のつかない河童の存在に引っかかっていた。

 

♢♢♢

ヒロト「…よし。ここら辺でいいだろう」

 

 午前の練習が終わり皆が午後練に向けて休息を取っている中、ヒロトはグラウンド近くの森にて自主練を続けていた。

 

ヒロト(…ライト。俺はこの数ヶ月で前とは比べ物にならない程強くなった…今の俺なら君にだって負ける気はしない。けれど…)

 

 円堂がフィディオに、雷牙が鬼乃子にライバル心を燃やすように、ヒロトも永世学園で苦楽を共にした親友である稲魂雷斗に強いライバル心を燃やしていた。

 

ヒロト(どんなに強力なシュート技を持っていても、ディフェンスを超えられなかったら意味がない…。今の俺に足りないのはオルフェウスのDFを突破出来るテクニックだ…)

 

 己に足りない物を自覚し前方に集中したヒロトは、樹齢数十年を超えるである木々をオルフェウスの屈強なDFに見立てドリブルを始める。

 

ヒロト「ハァァァァ!!!」

 

 数m間隔に根を張る木々の隙間を、“紅の彗星”の異名に違わない巧みなドリブルで1人、また1人と抜き去っていく。

 

ヒロト「クッ…!」

 

 しかし、完全突破まであと1人というところでスピードが落ちてしまい目の前にベントの面影を宿した大木が立ち塞がった。

 

ヒロト「クソ…!まだまだだな…。ここでスピードを落としちゃ、たちまちボールを奪われてカウンターに入られる…!」

 

 最後の最後で爪が甘くなる自身の未熟さを恥じるが、今の彼には恥じる時間すら惜しい。直ぐに立ち直ったヒロトは、足にボールを置き直しドリブルを再開しようとする。

 

 すると…

 

???「影山を甘く見るなよヒロトッ!!ヤツならフィールドの外からスナイパーを配置するくらいはやるだろうぜッ!!!」

 

シュババーン!!!

 

ヒロト「ーー!!! ハァッ!!!」

 

 何処からか鋭いシュートがヒロト目掛けて放たれる。常人ならば為す術もなく直撃してしまう程に素早いシュートだが、ヒロトはイナズマジャパンの中でもトップクラスの実力者。

 即座に反応し、そのキック力を以てシュートの勢いを殺してみせる。

 

ヒロト「今のシュート…!まさか…!」

 

 放たれたシュートに強い既視感を感じたヒロトは、視線を弾丸が放たれた直線上に向ける。

 

 そこに居たのは……

 

雷牙「ブラボー!おーブラボー!流石はヒロト!前作ラスボスは伊達じゃないッ!!!」

 

ヒロト「やっぱり君か…雷牙君…」

 

 謎の襲撃者の正体は、皆と共に宿舎に向かった筈の雷牙であった。雷牙は満面の笑みで奇襲を見事防いだみせたヒロトを拍手で讃えている。

 

ヒロト「どうしたんだい?こんな所に来て?」

 

雷牙「まっ!話すと長くなるし、休憩がてらそこに座って駄弁ろうぜ〜」

 

<怪物説明中…>

 

ヒロト「なるほど…“ゾーン”を極める為に既存の物とは違う特訓法を模索していると…」

 

雷牙「おうよッ!!んで、今日は森で特訓しようと思ったら、オマエさんを見つけたってワケ」

 

ヒロト「だとしても急にシュートを打ってくるのはやめて欲しいな…」

 

 本人はほんの挨拶代わりのつもりだったのであろうが、彼の圧倒的なフィジカルから繰り出されるシュートは必殺技抜きでも十分に危険だ。

 恐らくイナズマジャパン内でも、完璧に捌けるのはヒロト以外では豪炎寺と熱也くらいだろう。

 

雷牙「ハハハ!悪ィ!悪ィ!驚かせちまった詫びにオメーさんの練習、手伝うぜ!」

 

ヒロト「ハァ…まぁいいや。それじゃ、俺の気が済むまで相手をしてもらうおうかな?」

 

 雷牙の謝罪を受け入れたヒロトは、練習を再開し今度は1対1の攻防を繰り広げる。当然、ヒロトは攻撃側雷牙は防御側だ。

 

雷牙「…思えば、オマエさんと正面から向き合ったのはあんまなかったな…。しゃあッ!!思う存分掛かってきやがれッ!!!」

 

ヒロト「最初からそのつもりさッ!!ハァァァ!!!」

 

 たかが練習、されど練習。もうじき戦う最強の好敵手を超える為に“彗星”と“怪物”は一切の手加減なしで激しい攻防を繰り広げる。

 

雷牙(速ェ!!アルゼンチン戦からは比較にならねェくらいスピードが上がってやがる…!ハッ!流石はアッキーに続くイナズマジャパンの切り札(ジョーカー)なだけはあるぜ…!面白くなってきたァ!!!)

 

 仲間の成長に触発された“怪物”は、出し惜しみせずに未完成の“至高の領域”へと突入する。

 

ヒロト(ーー!!! 雷牙君の存在感が薄くなった…!?…なるほど、これが断片的に習得したっていう“ゾーン”か…。動きもこれまでの彼とは明らかに違う…)

 

 霞のように存在感が薄くなりながらも、その芯にはしっかりとした“自我”を宿している…という、ある種矛盾した感覚を前にヒロトは頬を緩ませる。

 

 どちらも一歩も譲らぬ攻防戦は、気付けば1時間に渡って繰り広げられ、勝負は両者の体力切れという形で引き分けとなってしまった。

 

雷牙「チッキショー…!なんとか自力で片足を突っ込む事は出来るようになったが、完成には程遠いな…!」

 

 アメリカ戦での一之瀬との攻防で分かっていた事だが、苦労の末にようやく習得した“至高の領域”も、まだまだ入り口の前に立っているだけでしかないと実感し、雷牙は悔しがる。

 

雷牙「…なァ、ヒロト。オマエさんは今の俺が鬼乃子に勝てると思うか…?」

 

 雷牙は、ヒロトのエイリア学園で培われた力量を正確に把握する能力を買い、珍しく他者から現状の自分の評価を問う。

 

ヒロト「…恐らくだが、彼女はこれまでの試合で()()()()()()()()()()()()。だから流石の俺も現時点では君と彼女の正確な実力差を断言する事は出来ない。けど…」

 

 世界トップクラスの攻撃力を持つナイツオブクイーン、エースが怪我で不在とはいえ未だに世界トップクラスの防御力を持つジ・エンパイア、世界最強の“矛”と“盾”を持つチーム達を大差で下してもなお、鬼乃子は全力でプレーしていないと断言する。

 

ヒロト「彼女の方がまだ何歩も上を行ってる…かな?」

  

 少なくともヒロトの目には、明星鬼乃子という選手は世界から集めた強豪選手でさえも暇つぶしの相手としか見ていない…それ程までに隔絶した力の差と余裕を感じとっていた。

 

雷牙「…にひっ!そっか!やっぱそうだよなッ!!」

 

 それでも雷牙は口角を大きく上げ、満面の笑みで喜ぶ。イナズマ魂が心の芯にまで浸透している彼からすれば、ピンチこそが最大のチャンスであるように、新たな強敵の出現は真の“怪物”に至る為の試練なのだ。

 

雷牙「しゃあ!!!俄然やる気が出てきたァ!!!試合までの残り数日で絶対に“ゾーン”を極めっぞ!!!」

 

ヒロト「ハハハ、雷牙君らしいや。けど、そろそろ宿舎に戻ろう。これ以上練習を続けると午後の練習に響くからね」

 

 キリの良い所で自主練を中断した雷牙とヒロトは、休息を取る為に宿舎へ戻ろうとする。…その時だった。

 

???「助けてくれ〜!誰か〜!」

 

 彼らにとって、非常に聞き覚えのある性格が捻くれた悪戯小僧にしか出せない声が森林中に響き渡る。

 

雷牙「あん…?この声は…」

 

 その声色には、他者をおちょくる事を生き甲斐とする彼には珍しく“焦り”の感情が籠っており、只事ではならぬ気配だ。

 

ヒロト「彼がここまで焦るっているのは少し心配だね…。よし!ここからあまり離れていないようだし、様子を見に行こう!!」

 

 どうせ染岡あたりを怒らせて逃げ回っていた末にここに辿り着いたに違いないが、チーム屈指の問題児とはいえ仲間は仲間だ。

 仲間を見捨ててはおけないヒロトは即座に絶叫の音源へと近づく。

 

 声の主の正体は……

 

木暮「助けて〜!!!ツタが絡まって動けないよ〜〜!!!」

 

雷牙「や〜っぱし木暮か〜…。てか、何をどうしたらんな状態になんだよ…」

 

 案の定、そこに居たのは何故か身体中に蔓が絡まって身動きが取れなくなっている木暮だった。

 

木暮「あっ!雷牙さんにヒロトさん!た、助けてくれよ〜!色々あってこの森に逃げ込んだらこうなっちゃたんだよ〜!」

 

ヒロト「ハァ…どうせ染岡君あたりを怒らせて逃げ回ってたんだろ?…まぁ、流石に可哀想だし助けてあげるけど…」

 

 因果応報とはいえ、助けない義理もないヒロトと雷牙は溜め息混じりに木暮の身体に巻き付いた蔦を引きちぎり、天然の(トラップ)から仲間を解放する。

 

ヒロト「なるほど…練習中に染岡君に言われた一言にカチンときて、悪戯をしたら追いかけ回されたと…」

 

雷牙「まっ、どっちもどっちだな〜。けど、別に染岡は悪意があってそんな事を言ったんじゃないと思うぜ?典型的な体育会系のアイツなりの激励のつもりだったんだろ」

 

木暮「雷牙さんがそこまで言うならそうなんだろうけどさぁ…。あの人相であんな台詞を吐かれた誰だって誤解するだろぉ〜?」

 

ヒロト「…確かに」

 

 こうして木暮の言い分を聞き終えた一同は、木暮を連れて宿舎に帰ろうとするが、本人は染岡の怒りが収まるまで帰りたくないとゴネ始める。

 

雷牙「あっそ、ならタピ岡はんの“げきりん”ターンが切れるまで逃げ回ってな。夕飯までには帰って来いよ〜」

 

 雷牙としては、別に木暮を庇う理由もなければ、この森はそこまで広くもないし宿舎からも近いため遭難の心配はないだろうと判断し、この場から立ち去ろうとする。

 

ヒロト「……」

 

雷牙「? …ヒロト?」

 

 しかし、ヒロトは木暮を置いて行く事は出来なかった。

 

ヒロト「…なら俺も一緒に謝ってあげるよ。それなら君も怖くないだろ?」

 

木暮「…まぁそれだったら…」

 

 普段は絡みの少ない木暮に対して、ヒロトの中で何か引っ掛かる“モノ”があったのだろう。

 彼は木暮を見捨てる事なく優しく諭し、自分も一緒に染岡に謝ると約束し彼を宥めた。

 

ガサガサッ!!!

 

ヒロト「ーー!!! 誰だ!?」

 

 突如、近くで鳴り響く茂みに音に、影山の謀略を警戒したヒロトはエイリア時代を思わせる鋭い目つきで警戒態勢に移る。

 

木暮「も、もしかして熊か猪か〜!?!?!?お、俺たちを食べても美味しくないぞ!!むしろお腹を壊すだけだって〜!!!」

 

雷牙「う〜ん…この流れ…むちゃくちゃ既視感しかないような…」

 

 大小の差はあれど各々が茂みの中に居るであろう正体不明の生物に警戒を送る中、中から飛び出して来たのは……

 

円堂「どこいったぁぁぁ!!!河童ぁぁぁぁ!!!」

 

 日本代表のユニフォームを着用し、頭にオレンジ色のバンダナを巻いた、見覚えがあるにも程がある少年だった。

 

雷牙「あん?守じゃねェか?オメーさんも“げきりん”発動中のマフィ岡さんに追いかけられてんのか?」

 

円堂「あっ!雷牙!それにヒロトたちも!いや〜!さっき昨夜見た河童を見かけてさ〜!写真を撮らせてもらおうと思って追いかけてたら、いつの間にかここまで来てたんだよ!」

 

 未だに河童を忘れられず、サッカーに勝るとも劣らない謎の行動力を見せる我らがキャプテンに対し、ある怪物は頭を抱え、ある彗星は苦笑いをし、ある悪戯小僧はドン引きしている。

 

ヒロト「円堂君…。夢を壊すようで悪いけど…妖怪っていうのは昔の人達が災害や自然現象を目に見える形に書き記した空想上の存在であって、現実には実在しないんだよ…」

 

円堂「でもさっき本当に見たんだって〜!!!」

 

???「カッパー」

 

雷牙「ハァ…OK!OK!そんなに妖怪を撮りたきゃ、この自縛猫鈴サマを撮…おい待て、今喋ったの誰だ?」

 

 “河童”ではなく“化け猫”で友を満足させようとする雷牙だったが、円堂とも木暮とも違う聞き覚えのない第5の声の違和感に気付き言葉を打ち切って視線を声の方向へ逸らす。

 

 その先に居たのは、円堂が食堂で話していた特徴と合致する両手にサッカーボールを持った少年だった。

 

円堂「あーーっ!!!こいつだよこいつ!!!俺が昨日見た河童!!!」

 

雷牙「マジかよ…!?河童って本当に実在したんだ…って河童のコスプレをした人間やないか〜い!!!」

 

 確かに暗所では勘違いしそうだが、明るい場所でよく見るとチープなコスプレ臭が漂う、目の前の少年に対し雷牙のノリツッコミが炸裂する。

 

???「……」

 

ヒロト「お、俺に何か用かな…?」

 

 河童コスの少年は無言でヒロトに近寄ると、懐からサイン色紙とマジックペンを取り出し、ヒロトに差し出す。

 

???「くれ」

 

ヒロト「くれってサインをって事かい?仕方ないな…。君、名前は?」

 

???「亀崎河童」

 

雷牙「わ〜お…名前までまんま河童じゃ〜ん…」

 

 名前を把握したヒロトは、慣れた手つきで色紙にサインを書き亀崎河童ことカッパなる少年に手渡す。

 

カッパ「おお…!…ん!」

 

 ヒロトからのサインが余程嬉しかったのだろう。カッパは感情の読めない仏頂面から一転して満面の笑みを浮かべると、ヒロトに一本のきゅうりを差し出す。

 

ヒロト「あ、ありがとう…」

 

雷牙「フッ、妖ボーイ?サイン一つだけで満足なのかな〜?まだ色紙に余白が残ってるようだし、俺ちゃんのサインも…」

 

カッパ「ホホホ〜イ!!!」

 

 雷牙恒例のナルシズムが発揮される前にカッパは、独特なスキップを繰り返しながら森の奥へ姿を消してしまった。

 

雷牙「……」

 

円堂「アハハ…。まぁ、元気出せよ雷牙…」

 

 またしても日本を出る前に練習していたサインを発揮する機会を失ってしまった雷牙は、がっくりと肩を落とし宿舎への帰宅を再開する。

 

 だが……

 

木暮「おっかしいな〜…もう結構歩いた思うけど、全っ然森から出れる気配がしないぞ…」

 

ヒロト「心なしかさっきから、同じ場所をグルグル回ってるような気もするしね…」

 

 歩けども歩けども、一向に森を抜ける気配が見えないのだ。先程も言ったようにこの森はそこまで広くなく、日本の宿舎からもかなり近い。

 如何に彼らが中学生であるといっても、遭難する事などまずあり得ない。

 

木暮「おいおい…!もう日も暮れてきちゃったぞ…!もう今日の練習終わってんじゃん!やっば…!絶対みんな心配してるだろうし、下手すりゃ代表から外されかねないぞ…!」

 

 彼らからすれば仕方のない事だが、他の皆からすれば自分達は午後の練習をサボり、晩飯時になっても宿舎に帰らずに仲間達を心配させた罪人だ。厳格な久遠ならば、規律の守れない選手は代表に必要ないとさえ言いかねない。

 自分の想像以上に事態が大事になってしまった木暮は、顔を青くしていた。

 

円堂「あっ!!!」

 

ヒロト「どうした円堂君!?もしかして何か分かった…」

 

円堂「見ろよヒロトっ!!剣みたいな棒あった!!!」

 

ヒロト「円堂君…。頼むから今は危機感を持って行動してくれ…。ホラ、雷牙君も何か言ってくれよ…」

 

 森で遭難するという異常事態に遭遇しながらも、イマイチ危機感のない円堂に流石のヒロトも頭を抱え、ストッパーである雷牙に助けを求める。

 

 しかしヒロトは彼の事を大きく誤解している。雷牙が円堂のストッパーとしての役目を果たすのは円堂が暴走している時だけだ。

 平時における真のストッパーは宿舎に居る風丸と豪炎寺であって、雷牙は寧ろ、円堂を超える問題児の中の問題児でしかない。

 

雷牙「フッ…!中々立派なモンを拾ったじゃねェーか!だが…!俺ちゃんの“魔剣 グングニール”に勝てるかな?」

 

 円堂が剣型の枝を拾う前に、既に少なくとも天然では絶対に発生しないであろう独特にも程がある形状の木の棒を拾っていた雷牙は、軍神の槍の名を与え、円堂に向けて構える。

 

雷牙「チェストォォォォ!!!」

円堂「どりゃぁぁぁぁ!!!」

 

 この極限状況においても…いや、極限状況だからこそだろう。現代っ子に足りないバイタリティを刺激された2人のサッカーバカは目を輝かせながら、チャンバラごっこに興じる。

 

木暮「終わった!『三人寄れば文殊の知恵』って言うけど、遭難者の内の2人がバカだったら意味ないよぉ!!!俺の人生終わりだぁぁぁ!!!」

 

 サッカーにおいては1+1=2を超え、100万にも♾️にも迫る解を導き出す、日本最強のコンビも平時においては2どころか1に至るかすら怪しい。もはやここまで来ると普通に馬鹿である。

 

ヒロト(…落ち着け基山ヒロト…。今は生きるか死ぬかの瀬戸際…。俺がしっかりしなくてどうする…!)

 

 その馬鹿コンビと、人生の終わりに絶望する悪戯小僧を抱えながらも、ヒロトはお日さま園、そしてエイリア学園時代に学んだサバイバル技術をフル活用し、何とか日が暮れるまでに寝床の確保と薪用の枝の確保に成功する。

 

雷牙「結局夜になっちまった…。こりゃもしかしなくても、俺ちゃん達遭難してる?」

 

木暮「今更ぁ!?さっきから何べんも言ってるのに、今更状況を把握したのぉ!?」

 

 能天気にも程がある雷牙に対し、普段はボケもしくは場を引っ掻き回すトリックスターを勤める木暮渾身のツッコミが炸裂する。

 

円堂「おーいヒロトー!枝の数はこれくらいでいいかーー?」

 

ヒロト「ああ!十分だ!これくらいあれば朝まで持つだろう」

 

 ヒロトと円堂、雷牙と木暮の二人一組で集めた、燃料用の木の枝を一箇所に纏めたヒロトは、今度は雷牙と円堂か持っている巨大な流木に視線を移す。

 

雷牙「…あの〜ヒロトさ〜ん…?もしかして俺達の持ってる剣を着火用に使うつもりじゃありやせんよね…?」

 

ヒロト「そのまさかだ。出来れば雷牙君が持ってる棒の方がいいかな。先端がそこそこ尖ってるから回しやすそうだし」

 

 3時間前に発見しその男心を擽る形状から、生涯を添い遂げると固く誓った“魔剣”との別れに雷牙はゴネるが、ウィンターシーズン一歩手前の夜を熱源なしで乗り切ろうとするのは自殺行為だ。

 明日を迎える為の成功率を上げる為には、もうしのごの言ってられる余裕はない。

 

ボッ!!

 

木暮「あっ!火が着いた!スッゲーなヒロトさん!」

 

雷牙「ああ…さらば、俺の愛剣グングニールよ…!俺達の命を繋ぐ薪となれ…!」

 

 こうして取り敢えずは、凍死と猛獣に襲われる危険だけは回避した一同は、カッパから貰ったきゅうりを四等分にして分け合って食べる。

 味もなく腹も大した膨れないが、食べる物がないよりは遥かにマシだ。食事を終えた4人は、休息の為に地面に腰を下ろし気分転換に駄弁り始める。

 

木暮「いいよなぁ〜こういうの!俺、一度でいいからキャンプしてみたかったんだよ!」

 

雷牙「あん?人生で一度もこういうのやった事ねェのか?」

 

木暮「漫遊寺は厳しいからね…。それに今までこういうことをする友達も居なかったし…」

 

 小柄な身体ながらも中学生とは思えない哀愁を漂わせる木暮に、3人は彼が親から捨てられた身であった事を思い出す。

 幼い頃に親から見捨てられ、選択の自由を与えられずに厳格な漫遊寺に預けられ厳しい修行を行う毎日…。恐らくエイリア騒動で雷門と出会わなければ、その才能を開花させる事なくより一層捻くれた性格になっていただろう。

 

円堂「ーー!!! そうだ!だったらさ!FFIが終わったらイナズマジャパンのみんなとキャンプしようぜっ!!」

 

雷牙「おっ!いいねェ!!なら、俺ちゃん秘伝のキャンプ飯を振る舞ってやろうかな?」

 

木暮「本当!?だったら俺、ご飯を炊く係がいい!飯盒とか使ってさ!」

 

ヒロト「飯盒で米を炊くには少しコツがあってね…。まっ、話すと長くなりそうだし、その時になったら教えるよ」

 

 先の見えない暗闇に覆われても、日本の侍達はいつか仲間達と共にキャンプをするという“未来”を胸に刻み、明日に備え今日は眠りにつく。

 

円堂「グガ〜…zzz。グピ〜…zzz」

 

雷牙「いいか守…もう一度説明してやっから耳の穴かっぱじって聞けよ…?きゅうりってのは浅漬けにして食うのが一番美味ェが…実は90%以上が水分だから精霊馬にして食うのが一番美味ェってお袋が言ってたぜ…」

 

木暮「寝れるかーーっ!!!キャプテンのいびきはうるさいわ、雷牙さんの寝言は意味不明だし!!なんだよ精霊馬を食うって!?」

 

ヒロト「スー…スー…」

 

木暮「ね、寝てる〜!?!?!?この地獄の中で寝れるなんて、一体どんな神経してんだよヒロトさんは〜!?!?!?」

 

 あれだけ良い事を言っていながらも、寝言もイビキと異常行動で全ての良さが台無しとなった先輩達に囲まれながら、木暮の夜が明けていった…。

 

……………

…………

………

……

???「起きろ」

 

木暮「ん〜…?今さっきやっと寝れたばっかだから、もう少し寝させろって…」

 

ジュバー!!!

 

木暮「どわぁ!?な、なんだよ…!?…って河童〜!?!?!?」

 

 何者かにより焚き火の残り火が消化された音と、木暮の驚愕の声により深い眠りについていた雷牙達も目を覚ます。

 

雷牙「あ〜ん…?どったの木暮〜…?んな朝から叫んd…って昨日の河童もどきじゃねェか…」

 

 雷牙達を起こしたのは、昨日出会ったカッパなる少年だったが、驚くべき事に彼の他にも赤、緑、ピンクのカッパ達が背後にぞろぞろ並んでいる。

 

円堂「…なぁヒロト…俺、まだ寝ぼけてんのかな…?なんかカッパがたくさん居るように見えるんだけど…」

 

ヒロト「偶然だね…俺の目にも河童が4人居るように見えるよ…」

 

 1人ならまだしも、2人同時に同じ光景を見ているならば、もはやそれは必然だ。

 

カッパ「こっち」

 

 雷牙達が初めて会った藍色のカッパは自分達に着いて来るように伝えると、凄まじいスピードで走り始める。

 

雷牙「速ェ!?クソッタレが!皆ッ!ヤツらを追うぞ!」

 

木暮「追ったところで森を出れるとは限らないじゃん!」

 

雷牙「んなモン勘だッ!!けど、ヤツらに着いて行った方が、ブラブラ歩き回るよりかは一億万倍マシだろーぜ!!」

 

 独特な走法で走るカッパ達に最後の望みを賭け、寝起きの身体を何とか動かし、雷牙達はカッパに着いて行く。

 

カッパ「ついた」

 

 目標の地点に到着したカッパ達は、一切の制動距離を稼ぐ事なくピタリと静止し、彼らの下にある“ある場所”に視線を移す。

 数秒遅れて、雷牙達もカッパ達に追いつき彼らが注目している場所に視線を移す。

 

 そこに現れたのは……

 

円堂「サッカーグラウンド…?でも…何でこんなところに…?」

 

 そこにあったのは、木々が生い茂りマイナスイオンが立ち込める森林にはやや相応しくない、切り開かれた場所に作られたサッカーグラウンドだった。




本当はカッパ回は1話に収める予定だったけど、書きたい事詰め込んだら試合前だけで1万字超えちゃった…。

【不定期掲載!イナっと裏話!!】
何故か雷牙は1人で居る時だけお化けが苦手になる(他に人が居れば急に平気になる)。

イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。

  • 稲魂雷牙
  • 稲魂雷斗
  • 明星鬼乃子
  • “雷帝”
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