フー…いよいよだ。集中。俺は…強い。
マクスター『見てくださいこの大歓声をッ!!溢れんばかりの観客をッ!!コンドルスタジアムの外には、空気だけでも味わおうするサッカーファンが押しかけていますッ!!』
勝つのはどちらか1チーム。この勝負に引き分けねェ。どちらかが勝って、どちらかが負ける。
マクスター『それのその筈ッ!!何せ、今日の試合で“
ノンノンノ〜ン?何を焦っているんだい稲魂雷牙ク〜ン?たかがアチラさんには“白い流星”と俺ちゃんの最強にして最高の
マードック『それに加えてライガ・イナタマとライト・イナタマは兄弟ですからね。古今東西、ありとあらゆるジャンルでも兄弟対決というのは興味を惹かれるモノです』
勝つだなんて朝飯前っすよ〜!…朝飯?うっわヤッベ…!そういや朝練に夢中でガッツギアしか飲んでねェ〜…。どうせならしっかり食っとけばよかった…。あ〜ダメダメ!集中!
染岡「おい稲魂!そろそろ起きろ!試合開始5分前だぜ!」
雷牙「オーケー!今日も今日とてぶっちぎってやるッ!!」
決めようじゃねェかライトッ!!どっちが真の“
♢♢♢
「来たぞっ!!“イナタマ”だっ!!遂に“イナタマ”が姿を現したぞっ!!!」
『イーナタマ!!イーナタマ!!イーナタマ!!』
イタリアが誇る世界遺産『ピザの斜塔』を模したコンドルスタジアム。その中心部に設置された新緑の
大介「ロココ、一瞬たりともこの試合から目を逸らすんじゃないぞ。もしかしたら…今日、最強の“
ロココ「分かってるよ師匠。けど…僕はキノコの方に興味があるかな」
会場内に居る代表チームはリトルギガントだけじゃない。別の観客席には既に全試合を終え、惜しくも予選敗退が確定してしまったナイツオブクイーンの姿もある。
ワンダバード「あの…いくら本部からお暇を貰ったとはいえ、この時代に残ってよかったんでしょうかマスター…?」
雷冥「良いのですよ。それに…この試合は稲魂雷牙の
ワンダキャット「フワ〜…。うるっさ…。全っ然寝られないじゃん…」
そして80年後の未来から来訪した、1人の
マクスター『さぁ!改めておさらいしましょう!現在、両チームの持ち点はどちらも9点!つまりッ!!身も蓋もない事を言ってしまえば、どちらが勝とうが負けようが、日本とイタリアが決勝リーグに進出する事は決まっているのですッ!!!』
詰まる所、これから行われるイナズマジャパンとオルフェウスの試合は消化試合でしかない。
にも関わらず、これまで行われたどのブロックの試合よりも盛り上がっている会場の様子を見るだけで、どれだけ世界各地から集まったサッカーファン達が彼らの試合を心待ちにしていたかがよく分かる。
染岡「頑張ってこいよ稲魂ッ!今日の主役はお前だからな!ベンチの俺らの分まで、ぶちかまして来いよッ!!!」
雷牙「応ッ!!この日の為に完璧に仕上げてきたんだ!今の俺は…誰にも負ける気がしねェ!!!」
マクスター『おおっと!!今日の主役の1人、ライガ・イナタマが観客席に向けてファンサービスを行っているぞーーッ!!!』
マードック『今大会トップクラスのフィジカル放たれるパワフルなプレーは、他国のサポーター達を魅了してきましたからね。恐らくプレースタイルだけなら、間違いなく最も“怪物”に近い選手でしょう』
自分こそが“怪物”ただ1人と言わんばかりに、右手の人差しを天に突き出す雷牙のファンサービスに、サポーター達は更に湧き上がる。
フィディオ「ハハ…相変わらず派手な事が好きだなアイツは…。彼に対抗する為にライトも何かしたらどうだい?」
ライト「いや〜…ボクはあんまり派手なこと好きじゃないし…。それに…ココまで注目されるの初めてだから、お腹が痛くなってきちゃった…」
マクスター『だが“怪物”はイタリアにも居るぞーーッ!!ライガの兄!ライト・イナタマがーーッ!!!』
マードック『彼女…失礼、間違えました。彼はマモル・エンドウですらも成し遂げられなかった無失点記録を更新中ですからね!果たして日本のストライカー達は、彼を打ち破れるでしょうか?』
そもそも公式戦に出場するのはFFIが初めてであるライトは、数千人以上の観客達から向けられる期待の視線に胃を痛め、気の効いたファンサービスすらも出来ないが、その反応こそが観客達にとって最高のファンサービスだった。
鬼乃子「私の一挙手一投足に注目する観客たち!毎秒ごとに跳ね上がっていくSNSのフォロワー!それにより満たされる承認欲求!気分はメガトン最&高!!」
影山「フン。世間の評価など紙屑にも劣る不純物だ。私にその権限があれば今すぐにでもこの場に居る愚民共を消し去ってやりたいくらいにな」
マクスター『そしてそしてーッ!!!来たぞ来たぞッ!!世界が大注目中の最強ルーキー!!キノコ・アケボシだーーッ!!!』
マードック『僅か3試合しか出場していないにも関わらず、その圧倒的な強さを以て、今ではヒデナカタに続く“世界最強”の名を欲しいままにしています!断言しましょう!彼女が現れてから世界の強さのランクが一つ下がったのです!!』
満たされた承認欲求によりテンションが上がった鬼乃子は、日本の“怪物”同様、観客達に大きく手を振りファンサービスを行う。ただ手を振る…たったそれだけの動作で、現在のSNSのトレンドは彼女の名前で埋め尽くされていた。
実況の解説が終わり、試合時間となった日本とイタリア…それぞれの国の名を背負う戦士達はフィールドの中央に並行に並び、遂に“怪物”の椅子を狙う3人の
マクスター『“
雷牙「全力でぶつかって来いよライトッ!!もしも手を抜こうもんなら、兄弟の縁を切るかんな!!」
ライト「うん!例え雷牙の頼みでも“怪物”の称号だけは譲れないよっ!!」
世界の大舞台で再会した兄弟達は、これから行われる試合に胸を踊らせながら力強い瞳で目線を合わせる。
そこに…
鬼乃子「ちょっとちょっと〜!私を蚊帳の外に置き去りにするなんてひどくな〜い?まったく…コレだからおにi…「ワーっ!!!」むぎゅ!?」
試合前にあれだけ釘を刺しておいたに関わらず、禁忌のワードを言い掛ける鬼乃子の口をライトのキーパーグローブが塞ぐ。
雷牙「あん?今、何んか言い掛けたか?『おに』って聞こえたような…?」
ライト「え、え〜と…そう!『鬼のように強いよ私は!』って言おうとしたんだよ!多分、恐らく、きっと!!」
雷牙「いや…別に口を塞ぐ程のワードじゃねェだろ…」
鬼乃子「むごむご!!むごご〜!!」
雷牙は、何の変哲もない挑発を必死に隠し通そうとする兄を不審に思いながらも、兄が変な事は今に始まった事ではないと結論付け、指定されたポジションに着く。
今回のイナズマジャパンのポジションは以下の通り。
FW:豪炎寺、熱也、ヒロト
MF:風丸、雷牙、鬼道
DF:綱海、壁山、飛鷹、吹雪
GK:円堂
攻守共にバランスが取れた4-3-3のフォーメーションにて、オルフェウスの猛攻を凌ぎつつ、隙があれば豪炎寺やヒロトといった強力なストライカーによるカウンターでライトを破る作戦のようだ。
それに対してオルフェウスのスタメンは…
FW:フィディオ、ラファエレ
MF:アンジェロ、鬼乃子、ダンテ
DF:ベント、オットリーノ、ジョルジョ、アントン、マルコ
GK:ライト
最初に目につくのはそのDFの多さ。本来、DFの数が多くなればなる程チームの攻撃力は著しく下がるものだが、圧倒的なパワーを持つ鬼乃子を採用する事でその弱点がカバーされ、最強の矛と最硬の盾を兼ね備えた万能のフォーメーションへ変貌していた。
雷牙「よっ!ほっ!はっ!」
試合開始直前のルーティーンとして、今日も今日とて雷牙は父から受け継いだ“稲魂ステップ”で、試合へのモチベーションを更に高める。
鬼乃子「おっ!やるねェお兄ち…ゲフン!ゲフン! 稲魂雷牙!それじゃ私も!」
血を分けた兄の“稲魂ステップ”に触発された妹も、何一つ科学的根拠のないステップを刻み身体とフィールドを慣らし始める。
鬼乃子「よっ!ほっ!はっ!」
豪炎寺「……」
ヒロト「? どうしたんだい豪炎寺君?眉間に皺が寄ってるよ?」
豪炎寺「…いや、鬼乃子の
“稲魂ステップ”はただ小刻みなジャンプを適度にステップを刻みながら行うだけの単調な動作だ。
そこにアレンジの余地がない以上、仲間のステップと動きが似るのは至極当然の事だ。
…だが、豪炎寺は目の前の少女のステップに偶然とは思えない相棒との関連性を見出していた。それこそまるで血が繋がった兄妹のような…。
ピーッ!!!
ヒロト「豪炎寺君!キックオフを!」
豪炎寺「ーー!!! あ、ああ!!」
一瞬、ホイッスルが鳴らされた事に気づかない程に深い思考に囚われかけた豪炎寺だが、ヒロトの声により何とか我に帰る。
億が一、少女が相棒と何らかの血縁関係にあったとしても、今は目の前の試合に集中するだけ…そう結論付けた豪炎寺は全ての思考をサッカーに向けて試合に挑む。
ヒロト「熱也君!」
オルフェウスに対して、イナズマジャパンが選んだ選択は“速攻”。未だに底の見えない強さを持つ鬼乃子がその重い腰を上げる前に何としてでも、得点しなければならない日本の侍達は、攻撃は最大の防御と言わんばかりに攻め上がる。
フィディオ「やはりそう来るかッ!!皆ッ!“カテナチオ「左から失礼〜♪」なっ…!」
イナズマジャパンの選択を読んでいたフィディオは、ミスターKが考案した必殺タクティクスの指示を送るが、キャプテンとしてのレベルが足りない事が災いし、命令を聞かない“鬼”が単独で突っ走る。
熱也「ケッ!世界最強だかなんだか知らねぇけどよぉ!!そこをどきやがれ後輩!!!」
鬼乃子「アッレ〜?おっかしいな〜?ピッチの上に居るはずのないワンちゃんの鳴き声が聞こえるぞ〜?けど、私の目の前にいるのは図体ばかり大きいだけの駄犬だけだしなァ〜」
熱也「んだとコラァ!!!」
意図的か偶然か、欠点である沸点の低さを的確に突かれた熱也は、ただでさえ荒いプレーが更に荒くなる。それこそが致命的な
熱也「ぐあぁぁぁぁ!!!」
鬼乃子「アレ…?怒ってもその程度の力しか出せないの?あ〜あ、FWの中で三本指に入る実力者って聞いてたのにガッカリ」
熱也の強みはパワーではなくスピード。だが挑発によって冷静さを失いパワー一辺倒になってしまった熱也が、完全上位互換たる“鬼”に勝てる道理などある筈もなく、返り討ちとなってしまった。
マクスター『アツヤ・フブキ!キノコを突破出来ずにボールを奪われてしまったぞーーッ!!!コレで攻撃権はキノコに移ったァ!!もしやまたしてもキノコの単独ショーの始まりかーーッ!?』
イナズマジャパンの最警戒対象たる“鬼”の足元にボールが回った事で、侍達に強い緊張が走る。
鬼道「狼狽えるな皆ッ!!既に明星鬼乃子の対策は練っているだろうッ!豪炎寺!ヒロト!頼んだぞッ!!」
鬼道の号令が起点となり、“鬼”の前にそれぞれの右脚に“灼熱”と“流星”の刃を宿した侍が立ち塞がる。
豪炎寺&ヒロト「「ハァッ!!!」」
2人の侍は、“鬼”から奪われた
鬼乃子「わ〜お!新しい必殺技と思ったら、その正体はシンプルなスライディングー!コレには流石の鬼乃子ちゃんも驚き桃の木〜!な〜ら〜!」
刃が“鬼”の身体を捉える瞬間、“鬼”は最初からその場に存在しなかったかのように、
鬼乃子「それが私の
想像を遥かに下回る彼らの策に対し、強く失望した“鬼”は避難先の空中で、冷ややかな目で侍達を見下す。
豪炎寺「やはり空かッ!!なら…風丸ッ!!」
風丸「ああッ!!」
だが、それこそが立案者たる鬼道の狙いだった。
如何に圧倒的なフィジカルの持ち主でも人間である以上、空の上で行える動作は1人1アクション。そこにイナズマジャパン1のスピードを持つ風丸を“鬼”にぶつけ、不意打ちを行う。
本気を出した“鬼”に勝てないのならば、最初から本気を出させなければいい。それこそが試行錯誤の末にイナズマジャパンが至った結論だった。
マクスター『コレは上手いッ!フィールドでは無類の強さを持つ“
風丸「流石のお前も空中では上手く戦えないだろう!!そのボールもらったぁぁぁ!!!」
作戦の進捗率はおよそ83%。イナズマジャパンが誇る二大ストライカーを贅沢に囮に使って始めて持ち込んだ“鬼”との空中…。
不意を突かれたも同然の“鬼”と、この瞬間の為に練習に練習を重ねた風丸とではどちらが有利なのかは言うまでもないだろう。
あとは蒼き“疾風”を宿した右脚が
風丸「なっ…!?」
筈だった。
“疾風”の刃が無防備となった“鬼”を刈り取るその瞬間…。風丸の右脚に数gの“
常識的に考えて、何の理由もなしに脚に“重さ”が加算される事などあり得ない。では彼が感じている“重さ”の正体とは何なのか…?
その正体は文字通り、彼の目と鼻のすぐ先にある。
鬼乃子「おっと!最初に言っとくけど私の体重は秘密だよ〜♪純粋無垢な美少女の体重を触れるのはタブーだからネ!」
“重さ”の正体…それは明星鬼乃子そのものだった。彼女の150cmにも満たない小柄な体躯は、落下のタイミングを僅かにズラすのみならず、風丸の体長の半分近くを占める右脚に自身の両脚を乗せる事を可能としたのだ。
鬼乃子「極力手加減するけどさ〜、怪我しちゃっても怒らないでよね!」
風丸一郎太の右脚という新たな足場を手に入れた“鬼”は、無駄な反則を避けるべく必要最低限の力だけを両脚に込め、軽く足場を踏み締める。
未だに右脚に残る筋肉の強張りは、本来足りない筈の密度と重力の代わりとなり、足場としての機能を復活させ風丸の右脚を一切傷つける事なく天へ跳躍する。
マクスター『飛んだーーッ!!!突然の奇襲にも関わらず、逆に襲撃者を利用し活路を切り開く大胆にも程があるプレー!!我々とは発想の次元が違いすぎるーーッ!!!』
日の本屈指の知将の策略すらも、それを上回る柔軟な発想によりいとも容易く無力化される。
天高く飛翔した“鬼”は、侍達の頭上を悠々と飛び越え、後衛の後ろにその終着点を選び降り立った。
マクスター『なんとーーッ!!!まさかのイナズマジャパンのディフェンスを文字通り飛び越えたーーッ!!!キノコの目の前に居るのはエンドウただ1人ーーッ!!コレは絶好のシュートチャンスだーーッ!!!』
円堂「来いっ!!!俺だってあの時から遥かにパワーアップしてるんだっ!!!今度こそ喰らい付いてやるっ!!!」
過去二度の“鬼”との勝負において、円堂は全て完敗を喫している。ただ負けただけじゃない、一度目は自身の“最強”を真正面から粉砕され
だが、“鬼”の様子はどこかおかしい。以前の勝負の際には大なり小なりあった目の輝きは失われており、寧ろ円堂の事など興味がないように実に冷ややかな目で彼を見下している。
鬼乃子「ホーイ」
すると“鬼”は絶好のシュートチャンスを放棄し、自身の後方で待機していたラファエレにボールを送る。
ラファエレ「なっ…!?」
“鬼”のパスに驚いているのは侍だけじゃない。味方である筈の剣士ですら今大会初めて送られるパスに困惑しているのだ。
それでも常識から外れた“鬼”のプレーにより別種の絶好のシュートチャンスが訪れているのも事実。
理解よりも先に身体が動いたラファエレは、フィールドに二頭の蒼き馬を出現させ、その背に装着された
ラファエレ「“暴走チャリオット”!!」
“暴走”の名の通り、荒れ狂う二頭に馬によるいななきがスタジアムに鳴り響き、その怒りはボールによるシュートという形で発散される。
円堂「負けるかっ!!“怒りの鉄鎚V4”!!!」
ラファエレのシュートに完璧に反応した円堂は、その背に魔神を降臨させ、黄金の鉄鎚が炸裂する。
蒼馬の“怒り”は、魔神の“怒り”により掻き消され、ゴールの前に巨大なクレーターを出現させ円堂の勝利を確定させる。
マクスター『止めたーーッ!!!キーパー、エンドウ!イタリア屈指のストライカーのラファエレの必殺シュートを止めて見せたぞーーッ!!!』
イタリア最強クラスのFWのシュートを容易く止めて見せた円堂だが、その顔に“喜び”はない。寧ろその逆、“怒り”と“困惑”が入り混じった複雑な表情で“鬼”を睨み付ける。
円堂「なんで俺との勝負から逃げた…!」
円堂は怒っていた。その怒りが自分との勝負から逃げた“鬼”による怒りか、勝負する価値すらないと判断された自分自身への怒りかは分からない。それでも今、円堂は怒っている…それだけは否定しようのない事実だ。
鬼乃子「悪いけどさ〜、今日はアンタには興味ないんだよね〜。今の私の心境を表すなら『前々から欲しかった
そう淡々と答える“鬼”の視線の先に居るのは円堂ではない。円堂に背を向けてまで視線を逸らせない存在が“そこ”に居るのだ。
そう…。歪な形で血を分けた生き別れた“
鬼道「まさかあの策を初見で破られるとはな…。不意を突ければ有利にゲームを進められると思ってが…。どうやら俺の計算は甘かったようだな…」
雷牙「だから言っただろ〜?あーゆータイプには下手な小細工はやる気スイッチをプッシュするだけだって。んじゃ!試合前の約束の通り、稲魂雷牙さん行かせてもらいや〜す!!」
第一の策が失敗に終わったとはいえ、試合はまだまだ始まったばかり。目には目を、歯には歯を、イタリアの“鬼”には日本の“怪物”を。試合前の土壇場で決めた鬼狩りへの第二の策が炸裂しようとしていた…。
一方、イナズマジャパンとは対照的にオルフェウスに流れる空気は最悪の一言だった。
フィディオ「皆!一体どうしたんだ!?何故、“カテナチオ・カウンター”を使わない!?」
“カテナチオ・カウンター”に消極的なチームメイトに対してフィディオの怒声が自陣に鳴り響く。
先程は結果的に鬼乃子の横槍が入った形にはなったものの、最初から彼女以外のフィールドプレイヤーが“カテナチオ・カウンター”に参加する気がなかったのは誰の目から見ても明らかだ。
それでもチームメイトはフィディオの問いに答えず、バツが悪そうに俯くだけだ。その空気に耐えられなかったのだろう、フィディオと同じFWであるラファエレがチームの総意を伝える。
ラファエレ「…悪いがフィディオ、俺らに“カテナチオ・カウンター”は必要ない。俺達のサッカーをしてれば十分試合に勝てるんだ。その証拠に、日本相手にシュートまで持ち込めただろ?」
フィディオ「違う…!今のは偶然が重なった結果に過ぎない…!イナズマジャパンに二度も同じ偶然は通用しないぞ…!」
ラファエレ「…なら、キノコにボールを回せばいい。アイツなら簡単にイナズマジャパンのディフェンスを突破出来るだろ…」
フィディオ「なっ…!?ラファエレ、君は本気でそう思っているのか…!?少し前までの君ならそんな事は言わずに自分で点を取りに行ってた筈だろ…!?」
ラファエレ「…ミスターKの命令を聞くくらいなら…。キノコにプライドを捧げた方が100倍マシだ…」
そう言い終わるとラファエレはこれ以上惨めな思いはしたくないと言わんばかりに、軽く俯きながらフィディオから離れていく。彼だけじゃない、他のチームメイト達も勝利の為に“誇り”を“鬼”に売り渡してしまった事実を隠すようにフィディオから視線を合わせずに去って行く。
その瞬間、これまで強い結束で結ばれていた筈のチームの絆が音を立てて崩壊していく様をフィディオは感じ取ってしまった。
フィディオ(キャプテンは…チームが自分頼りになる事を避ける為に、夢だった大舞台での活躍を蹴ってでも、俺にキャプテンを任せてくれた…。それなのに…!キャプテンが危惧してた事を引き起こしてしまうなんて…!俺は…キャプテン失格だ…!)
ライト「フィディオ…」
フィディオは、キャプテンとしての使命を果たせなかった自身への怒りのあまり拳を強く握る。ゴールを守る守護神であるライトは、親友の挫折をただ見ている事しか出来なかった。
“鬼”が齎すのは“勝利”のみにあらず。その代償に最も大切な“
ピーッ!!!
雷牙「守ッ!!俺にボールを回せッ!!!」
円堂「分かったっ!!任せたぞっ!雷牙ーーっ!!!」
円堂のゴールキックは見事、親友へと繋がる。ボールを持った“怪物”は静か一呼吸を置くと、再度気合いを入れ直し力強い目でドリブルを開始する。
その視線の先に居るのは当然、血は繋がっておらずとも、魂で繋がった兄。待ちに待ち望んだ、真の“怪物”を決める決戦が幕を開けるのだ。
…だが、兄弟水入らずの時間に入り込む者…いや1匹の“鬼”が居た。
鬼乃子「ヤッホー!稲魂雷牙〜!
雷牙「ハッ!!来たなッ!オーガールッ!!」
“鬼”を前にした“怪物”は強敵の出現を、不敵な笑みと共に出迎える。
鬼乃子「実を言うとね〜、アンタと戦える日ず〜〜っと楽しみにしてたんだ〜♪」
雷牙「へェ?そりゃ光栄だねェ!んなら遠慮しねェぞッ!!ハァァァァァ!!!」
“鬼”のフィジカルに対抗するべく、“怪物”は限界まで気を高め身体に多大な負荷を掛けると、徐々に黄金の気の柱と紺碧の稲妻が溢れ、流れる。
雷牙「ちょっち時間が掛かっちまってすまなかったなァ…。さァ!!始めようぜッ…!!!」
鬼乃子「おお〜!!Excellent!!少しは楽しめそうじゃん♪」
己の限界を超えた“怪物”は、サッカーとは一切関係のない拳法のような独特な
雷牙「しゃおらァ!!!」
僅か一歩踏み出しただけでトップスピードへ到達した“怪物”は、手始めに純粋な技量のみで“鬼”の突破を試みる。
鬼乃子「Oh〜!まずは必殺技抜き?いいよ♪私はお寿司もサビ抜き派だからね!思う存分付き合ったげる!!」
だが、限界を超えてもなお“鬼”は、一切の思考を介さない“本能”のみで徹底的に“怪物”の動きについて行く。
雷牙「なるへそォ!!!だったらお次はコイツだァ!!!」
飽き性の“怪物”はこれ以上の技量比べに業を煮やし、その身に膨大な稲妻を纏わせると四足歩行の“雷獣”へ姿を変える。
鬼乃子「わ〜お♪それって“雷獣義牙”だよネッ!生でビリビリライオンちゃんを見られるなんて、鬼乃子ちゃん感激〜!」
目の前の凶悪な人相の“雷獣”を前にしても、“鬼”は一切の恐怖を抱く事なく、寧ろまるで推しのアイドルを前にしたかのような無邪気な笑顔を浮かべている。
“雷獣”はその口にボールを咥えると、物理法則を無視した速度を発揮し、一瞬にして光速を超える。
この技の破り方を熟知している“鬼”は、“雷獣”が生み出した黄金の軌跡を元に次の出現地点を山勘で割り出すも、それこそが“怪物”が仕掛けた
雷牙「掛かったなァ!!モノホンはコッチだよォ!!!」
“雷獣義牙”の発動中、本体である“怪物”が途中下車する事で“鬼”が向かった予測地点には“雷獣”の残穢のみが残る。
これこそが“怪物”が数秒に思いつき、特に考えもなく発動させた
だが……
鬼乃子「裏の裏のそのまた裏だよ♪」
雷牙「なっ…!?」
その
鬼乃子「まだまだ時間はたっぷりあるし〜!もっともーっと!私との勝負を楽しもうよ!
♢♢♢
染岡「やっぱスゲェな…鬼乃子って奴…。“獅風迅雷”を解禁した稲魂でもそう簡単に抜けねぇのか…」
ベンチにて雷牙と鬼乃子の激戦を観戦する仲間達は、切り札を使用した雷牙ですらも苦戦を強いられている鬼乃子の実力に舌を巻いている。
木暮「これだから観察眼が鈍い人たちはダメだね〜。もっと物事のホンシツを見た方がいいんじゃない?ウッシッシ!」
染岡「んだとぉ!?」
皆が鬼乃子の実力に顔を青くする中、何故か木暮だけは余裕を崩さない。
木暮「だって雷牙さんは“ゾーン”を完璧に習得したんだよ〜?あんなスゴい技術を使えば、鬼乃子なんてけちょんけちょんのソテーにしちゃうって!」
染岡「おお!木暮にしては珍しくまともな意見じゃねぇーか!!けど、確かにそうだな!これまでの試合で“ゾーン”に突入した稲魂はどんな相手にも勝って来たんだ!今回だって!」
雷牙の切り札たる“ゾーン”に最後の希望を見出す一同。…だが、
響木「残念だったな…」
流石は年の功と言うべきか。あまりにも残酷な事実に気づいた響木は、ありもしない“希望”に縋る教え子達に現実を教えるように、首を横に振る。
響木「稲魂が今使っている
オリオンの唯一褒められるポイントは、代表チームの必殺技のバリエーションが国際色豊かなところなんだよね(一部例外大アリ)。
だって、冷静に考えて無印はイカれたじゃん。イタリア屈指の実力を持つであろうFWの必殺技が、無印からあった大した強くもない(異議は認める)山属性の選手が放つ風属性にしか見えない林属性の氷技なんてさぁ。
イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。
-
稲魂雷牙
-
稲魂雷斗
-
明星鬼乃子
-
“雷帝”