ヒロト「豪炎寺君…。雷牙君のあの変化は“超限界突破”とも“3”とも違うのかい…?」
“鬼”との敗北により地に伏していた豪炎寺に手を貸し立ち上がらせたヒロトは、彼に“怪物”の身に起こった変化について尋ねる。
豪炎寺「詳しい事は俺にも分からん…。だが、1つだけ分かる事がある…。あれこそが…雷牙が導き出した“答え”だ…!」
友の激励により、限界を超えた者にのみ目にする事ができる“
雷牙「…いや違ェな。“コレ”はまだ地平線を
実際に発動したからこそ分かる。この変化は目標たる“
だが、不思議と悔しさは感じない。…いや厳密には違う、感情を抱く事は不必要とさえ思ってしまうのだ。
鬼乃子「フーン?中々イカす名前じゃん!け〜ど〜!名前が地味に長いのが欠点かな〜?」
雷牙「ハッ…!それは俺も同感だ!んなら“
覚醒した“怪物”に何かを感じ取ったのだろう。先程まで兄に失望していた“鬼”は、顔に無邪気な笑みを浮かべ戦闘態勢へ移っている。“怪物”もリベンジマッチを繰り広げるべく、金と銀のオーラを煌めかせ静かに一歩を踏み出す。
シュン!
軽い風切り音が小さく鳴り響くと同時に、“鬼”の視界から“怪物”の姿が消失する。
鬼乃子「消えた…!?・・・そこッ!!」
思考を一切介さない山勘により“怪物”の大まかな出現地点を予測した“鬼”は、右脚に力を込めると既にボールを捉えていた“怪物”の右脚とボール越しに衝突する。
鬼乃子「
辛うじて奪取を塞いだ“鬼”だが、額から流れる冷や汗からは予想を遥かに超える“怪物”のスピードに驚きを隠し切れていない事が伺える。
雷牙「……」
“鬼”とは対照的に“怪物”は不意打ちが失敗しても感情を面に出していない。強いて言うなら穏やかな微笑を浮かべている程度だ。
鬼乃子「…随分と余裕そうな顔してんじゃん。言っとくけどその程度のスピードなら私だって余裕で対処できるよ?」
雷牙「さァてねェ、別に俺ちゃん自身は余裕ぶってるつもりはねェんだよ。ただ…余計な感情は必要ないってだけだ」
鬼乃子「余計な感情…?」
雷牙「ああ…!今の俺の心は……晴れ渡る青空みてーに穏やかだ…!」
刹那、“怪物”より発せられた凄まじいプレッシャーが“鬼”の全神経に直撃する。それと同時に“怪物”の姿も再度消失し、“鬼”もまた警戒態勢へと移り山勘で襲撃地点を予測する。
鬼乃子「そこッ!!」
雷牙「ハッ…!大当たりィ…!!」
不意打ちが失敗すれば“怪物”は再度姿を消し、“鬼”も再び警戒態勢に移り山勘で何とか対処する…。以降数分間は完全に同じ展開の繰り返しだった。
まるでバトル漫画のワンシーンを思わせるどちら一進一退の激しい攻防だが、攻撃を仕掛けるごとに切れ味と速度を増す“怪物”に“鬼”は完全に圧倒されていた。
雷牙「どうしたッ!?オメーさんのゼンリョクはそれっぽっちかよ!?」
精神的な優位を確固たるものとした“怪物”は、先程の意趣返しと言わんばかりに“鬼”の文言に似た台詞で煽り返す。
鬼乃子「なワケ…!一つ良いこと教えといてあげる…!私は人をおちょくるのは大好きだけど…誰かにおちょくられるのは大っ嫌いなの!!!」
最大に地雷を踏み潰された“鬼”は、遂に本気を出すとその身より金がかかった新緑色のオーラが溢れ出す。
雷牙「ハッ!!いいねェ!!そうこなくちゃ面白くねェ!!!
ようやく引き出せた“鬼”の
雷牙「しゃおらァ!!!」
鬼乃子「しょおらァ!!!」
今試合二度目となる“怪物”と“鬼”の右脚がボール越しに激突し、そのパワーを以て真円状のボールを歪な楕円形に大きく歪ませた。
鬼乃子「どわぁ!?」
雷牙「……」
結論から言おう。“怪物”は“鬼”への雪辱を晴らす事は叶わなかった。かといって更なる屈辱を重ねる事もなかった。
勝負の結果は、文句なしの“引き分け”。全部を使っても手も足も出なかった初戦と比べれば、大きな一歩だ。
鬼乃子「引き分けるだなんて最っ悪…!けど…!ボールは私の方が近いよッ!!」
1mに満たない程度の誤差ではあるものの、選手とボールの距離は“鬼”の方が僅かに近い。
彼女の脚力を以てすれば、一歩を踏み出しフィールドに数十cmの穴を作るだけで“怪物”よりも先にボールを確保出来る…
雷牙「…そいつァはどうかな?」
筈だった。
雷牙「今だッ!!鬼道ッ!!!」
鬼道「人使いが荒い奴めッ!一つ貸しだぞッ!!」
“怪物”の号令を待っていた鬼道は、“怪物”と“鬼”が向き合う地獄に単身で乗り込み“鬼”より一瞬だけ早くボールを奪う事に成功した。
鬼乃子「嘘…!」
雷牙「分かってねェなァ。コレは1対1の格闘技じゃねェ、11対11のサッカーなんだぜ?俺ちゃんのイケメン
サッカーに対する認識の違い…言い換えるならば、どこまで行っても“サッカー
鬼道「風丸ッ!!」
鬼道から風丸に、風丸から熱也に、熱也から豪炎寺に、オルフェウスのディフェンスを物ともせずにイナズマジャパンのパスが次々と通って行く。
フィディオ「スゴい…!ライガという風が吹いた事で…まるで風車が回るようにイナズマジャパンのプレーが活き始めた…!」
“怪物”が起点となり、見事なパス回しと連携を披露するイナズマジャパンを前に、フィディオは思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
豪炎寺「決めろッ!!雷牙ッ!!」
豪炎寺のヒールリフトによってボールが天高く上げられる。それに追従するのはその背に黄金の翼を出現させた1匹の“怪物”…。
その瞳に“地平線”を宿した“怪物”は、これまでの最高到達地点を超え更なる高みへと到達する。
雷牙「勝負だッ!!ライトォォォ!!!」
ライト「来なよっ!!雷牙ァァァ!!!」
天空に黄金の“
雷牙「“ゴォォォォドッ!!レグルスッ…!
“
ライト「“ゴッドハンド…!レグルスG2ッ”!!!」
“怪物”VS“鬼”に引き続き、黄金の“
ライト「グ…!お、重い…!」
進化を果たした翡翠色の
翡翠の
そして……
ライト「クッ…!ウワァァァ!!!」
勝者あり。真の“
ピーッ!!!
マクスター『ゴール!ゴール!ゴール!ゴーールッ!!!遂にライト・イナタマの無失点記録が破られてしまったぞーーッ!!!コレは運命の悪戯によるモノかーッ!?彼の記録を破ったのは、弟ライガ・イナタマだーーッ!!!』
雷牙「いよっしゃァァァァ!!!」
“怪物”の覚醒による“鬼”の討伐、そして最強のライバルである兄を下し同点に追いついた事はイナズマジャパンに追い風を齎すには十分すぎた。仲間達は、“怪物”を讃える為に彼をもみくちゃにし喜びを分かち合う。
フィディオ「立てるかいライト?」
ライト「痛ってて…!けど…全っ然平気だよ…!えへへ…!」
未だに身体に走る電流のような痛みに耐えながら、なんとか立ち上がるライトだがその表情はどこか嬉しそうだ。
フィディオ「? どうしたんだいライト?無失点記録を破られたってのに、やけに嬉しそうじゃないか」
ライト「そりゃそうだよ!今のシュートは心にビリビリ来たからねっ!!最強・無敵・強靭!やっぱり雷牙はこうでなくちゃ!」
フィディオ「そ、そうか…。君が満足しているのならそれでいいけど…」
弟に対してそれなりのMっ気を見せる友に対してフィディオは若干引いているが、同時にチームの心がバラバラとなっている現状では頼もしさも覚える。
…だが、彼はまだ気づいていなかった。
鬼乃子「私が…負けた…?」
“怪物”に事実上の敗北を喫した“鬼”の瞳からは、光が消え去っていた事に…。
ピーッ!!!
雷牙「しゃあッ!!!勝負はまだまだこっk…ん?」
オルフェウスのキックオフから試合が再開し、“怪物”はその身に宿した金銀のオーラを激しく煌めかせ“鬼”をマークするが、ある感覚に襲われる。
シュン…
雷牙「アッレェ!?勝手に技が解けたァ!?」
なんと白銀のオーラが消失し、“兆”が強制的に解除されてしまったのだ。
豪炎寺「どうした雷牙!?何故、突然技を解く!?」
雷牙「俺だって分かんねーよ!!あ〜…なんか急に力が抜けて来た…」
突然発生した強制的な技の解除に雷牙は混乱するも、使用者本人でさえもその原因は分からない。唯一その答えを知るのは、観客席に紛れる80年後からの来訪者だけだ。
ワンダバード「どうしたのでしょう雷牙様…。突然、“ゾーン”が解除されるなんて…」
雷冥「フム…。どうやらまだ不完全だったようですね。“
本家本元であるが故にその習得難易度の高さをよく知っている雷冥は、未完成とはいえ力の一端を掴んで見せた祖先に関心するも、同時にまだ彼は未熟であるとも断言する。
前半戦は残り半分、両チームの得点は1-1の同点…。どちらに勝利の女神が微笑むのかはまだまだ分からない。
フィディオ「ラファエレ、イナズマジャパンのディフェンスは堅固だ。ココは2人での連携を意識しよう。…ラファエレ?」
ラファエレ「ハァッ!!!」
突如、ラファエレはフィディオの指示を無視して単独で攻め上がり始める。その表情には焦燥感が満ち溢れており、今の彼には冷静な判断ができていない事が伺える。
鬼道(1人で突っ込んで来るだと…?ラファエレはそんなプレーをするような選手ではなかった筈だが…)
無謀としか言えないラファエレの強引なプレーに、影山の策を警戒する鬼道だが、そこに戦術やチームの意志を感じない。
鬼道(…まさか!バラバラという事か?チームもフィディオも影山も…!…ならば!)
これまでのプレーからオルフェウスの不仲を確信した鬼道は、この好奇を見逃さず怒涛の指示を出す。
鬼道「豪炎寺!熱也!ラファエレにプレスをかけろッ!!稲魂!風丸!俺に続けッ!!」
「「「「おおっ!!!」」」」
ラファエレ「突破してやるッ!!!」
熱也「俺ら相手に1人で勝とうする事が無謀なんだよッ!!!」
鬼神の如き強さを持つ者ならまだしも、ラファエレはイタリア最強のストライカーの座をフィディオに譲る程度の実力しか備えていない。
その程度の実力で単独突破はあまりに無謀であり、熱也と豪炎寺の見事な連携により、瞬く間にボールを奪われてしまった。
マクスター『イナズマジャパン!一瞬でボールを奪い返しましたーッ!!今日はキドウのゲームメイクが冴えているようです!!』
フィディオ「しまった…!皆ッ!イナズマジャパンの攻撃に備えてディフェンスラインを下げるんだッ!!キノコ!君はゴウエンジのマークを頼むッ!!」
大きく体力を消耗している“怪物”なら自分がなんとか抑えれるが、“ゾーン”に入った豪炎寺は相手は手に余ると判断したフィディオは、鬼乃子に指示を送る。
…だが、その指示が“鬼”の耳に届く事はなかった。
鬼乃子「違う違う違う違う。ありえないありえないありえないありえない。私は負けちゃダメなんだ。私はお兄ちゃんに勝たなくちゃいけないんだ。それが私が『生き返る』為の唯一の手段なのに。どうしてどうしてどうしてどう」
試合中にも関わらず“鬼”は軽く俯き普段のやかましさが嘘のように、小さな声で独り言をブツブツ呟き続けている。まるで何かに取り憑かれているかのように弱々しく立ち尽くす様は、“死人”としか形容しようのない。
影山「案の定…か」
“鬼”の突然の豹変を目の当たりにした影山は、焦る事なく寧ろ、想定内の自体と言わんばかりに顎に手を当て、忌み嫌う“奴”の予言が正しかった事を仕方なく認める。
影山の脳裏に浮かぶのは、試合前日に掛かって来た腐れ縁の同僚にして“鬼”の実父からの一本の電話…。
……………
…………
………
……
…
影山「…何?」
“雷帝”『で〜す〜か〜ら!明日の試合は鬼乃子は稲魂クンに
流石の影山でも、“鬼”の実父から告げられた言葉を素直に受け止める事ができなかった。
『うるさい奴』、『“雷帝”の娘』などの忌み名で呼び続ける関係性ではあるが、影山は鬼乃子のその実力だけは認めていた。
影山が強く求める司令塔としての能力は落ちこぼれもいいところだが、それを補うフィールドプレイヤーとしては最高峰の肉体と常人を超えたフィジカルを自由自在に操る正真正銘の“怪物”…それが明星鬼乃子だ。
にも関わらず、生産者本人が彼女よりも遥かに実力が劣る存在に敗北すると断言している…。それを前に困惑せずにいられる人間はこの世に居ないだろう。
“雷帝”『ああ、一つ勘違いしないでいただきたい。鬼乃子は間違いなく最高傑作ですよ。間違いなくこの世で最も“怪物”に近い存在でしょうねェ。で・す・が…』
影山「…それでも稲魂雷牙には敵わない…と?」
“雷帝”『ンthat's right!!いや〜!理解が早くて助かりますよ〜!いよ!流石は影山サン!凡人とは一線を画す理解力!!』
ワザとらしくおべっかを使い影山の機嫌を取るフリをする“雷帝”だが、当の影山は生産者からの説明を受けた事で更に謎が深まっていた。
影山「…やはり解せん。収集したデータを見ても、稲魂雷牙の能力は世界トップランカーの範疇を超えていない。…まさか、奴はまだ力を隠しているというのか?」
“雷帝”『それは私にも分かりませんよォ。ただ…彼の中に眠る潜在能力は鬼乃子を優に超える…それだけは確かです』
ここでようやく“雷帝”が何を言いたいか理解する。稲魂雷牙…いや、その胸に“イナズマ魂”を宿す者達はどんな強敵が現れてもその度に己の殻を破り打ち勝って来た。それと同じ事が今回も起こる…ただそれだけだ。
影山「それで?スポンサーのお気に入りである貴様の機嫌を損ねない為には、私は何をすればいいのかね?…もう概ねの答えは察しているが」
“雷帝”『なーに簡単な事です。監督席でふんぞり返ってる貴方は、何が起ころうとも鬼乃子をベンチに下げずに、フィールドに置き続けていればいいんですよ。何せ…
“敗北”こそが人間を強くさせる最良の
…
……
………
…………
……………
アンジェロ「アレ!?何してるんだよジャンルカ!フィディオにディフェンスラインを下げろと言われただろ!」
ジャンルカ「守ってばっかで勝てるかよ!ココは強引にでもボールを奪い返すべきだッ!!」
アンジェロ「でも…!フィディオが…!」
ジャンルカ「ミスターKを信じるヤツの指示なんかに従えるかッ!」
またしても影山が原因でチームの亀裂が更に深くなる。結局、アンジェロの説得も虚しく、ジャンルカは同じ反対派であるジョルジョとベントを引き連れ前線に上がってしまった。
雷牙「ケッ!なんだァ?そのお粗末なディフェンスはよォ!!!オメーらみてーなのがイタリア代表だなんて笑わせるぜッ!!」
如何に手負いとはいえ、そんな負の感情による連携が雷牙に通用する筈もなく、不完全な連携によって生じた僅かな隙を突かれ鬼道へパスが回る。
鬼道「そこだッ!!頼むぞッ!豪炎寺ッ!」
皮肉な事にあれだけ反発していたフィディオの指示が最適解だった事がここに来て証明される。
鬼道が出したパスの先に居たのは、既に“ゾーン”に突入している豪炎寺。だが、彼の前には誰1人マークについている選手は居ない。つまりはノーマークだ。もしも、ジャンルカが指示を無視せずにディフェンスラインを下げていれば、このようなピンチに陥る事はなかっただろう。
ライト(“ファイア・オブ・レクイエム”を止めれる技は“ビースト・ザ・ファミリア”だけ…!けど、あの必殺技は体力の消耗が激しい…!多分、使えるのだってあと2回…!まだ“ロンギヌス”やヒロトも控えている以上、できれば“ファミリア”を温存したい…!)
化身と魔神の併用である“ビースト・ザ・ファミリア”は強力な分、体力の消耗も非常に大きい。
いつ雷牙が再び“兆”を発動するか分からず、風の噂で聞いたヒロトの合体化身も控えている以上、なんとしてでもライトは“ファミリア”なしで“レクイエム”を止めなければならない。
ライト(だったら…!ボクにできることはただ1つ…!)
かつてリトルギガントの監督が円堂に言ったように、どんなに強力なシュートもゴールラインを割らなければ得点にはならない。
かといってライトに円堂のような柔軟な発想力はない。ならば…シュートが放たれる前にボールを奪うという発想に至るのは自然な事だろう。
マクスター『ライトがゴールが飛び出したーーッ!!!もしやゴウエンジにボールが渡る前に奪い返すつもりかーーッ!?だがボールとの距離は僅かにゴウエンジの方が近いぞーーッ!!果たしてライトは間に合うのかーーッ!!!』
フィディオ「いや!!俺も居るッ!!!」
ライト「フィディオ!?」
FWでありながらもゴール前まで下がっていたフィディオが、一瞬早く豪炎寺とボールの間に割り込み、遂にイナズマジャパンからボールを奪い返し、失点の危機を凌いだ。
ライト「ありがとうフィディオ!おかげでなんとか体力を温存できたよ!!」
フィディオ「礼はいらないよ。だって俺達はチームなんだ。チームメイトのピンチを助けるのは当然だろ?」
ライト「う、うん…!」
フィディオのファインプレーで何とか危機を脱したものの、元を正せばこのピンチを招いたのは、フィディオの指示を無視した反対派の選手達だ。
それは本人達も自覚しているのだろう。けれどもプライドが邪魔をして反対派の選手達は無言で自分達を見るフィディオに対して罰が悪そうな態度しかとれない。
フィディオ「聞いてくれ皆!!確かに俺達のサッカーを続ければ悔いのない試合ができるだろうッ!!でも…!それじゃ今のイナズマジャパンには勝てないッ!!!」
ラファエレ「分かってる…!そんな事は分かってるんだよ…!だからといってミスターKに従う道理もないだろう!!ヤツに従うくらいなら…キノコにプライドを売った方が遥かにマシだ…!」
フィディオ「いい加減に目を覚ませラファエレ!今のキノコをよく見てみろ!!」
フィディオは鬼乃子が居る位置に向かって指を指し、皆の視線もフィディオの指先へと移る。彼らの目に映ったのは…
鬼乃子「違う違う違う違う違う違う違」
壊れたラジオのように小さな声で譫言を呟く“鬼”の成れの果てだった。
ラファエレ「そんな…!」
フィディオ「どうして彼女がアソコまで落ち込んでいるかは俺には分からないッ!けど…!確かなのは、キノコをココまで追い込んだのは俺達の不甲斐なさだ!!キノコが居れば試合に勝てる…そんな甘い気持ちが彼女の心を壊してしまったんだ!!」
フィディオのその言葉には自責の念も込められていた。自分にキャプテンの座を譲ったヒデナカタが最も危惧していた、絶対強者を抱え堕落するチームメイトを止める事ができずに、終いには“鬼”の心を壊してしまった事に。
無論、本人がどう思っているかは分からない。それでもフィディオの中では、彼女もまたオルフェウスのチームメイトだった。
ジャンルカ「だからって…!どうすりゃいいんだよ…!」
フィディオ「手段ならある!ミスターK…あの人のサッカーなら…!“カテナチオ・カウンター”を完成させる事ができれば…!必ず勝てるッ!!」
ラファエレ「どうしてだ…!どうしてオマエはそこまでミスターKを信頼できるんだ!!アイツにされた事を忘れたってのかよ!?」
フィディオ「忘れちゃいないさッ!!俺だってあの人の罪を許しちゃ訳じゃない!けど…!あの人が考えているサッカーはもしかしたら俺達のサッカーを次の“次元”に導いてくれるかもしれない…!そんな気がするんだ!」
フィディオとて、自分の言葉は皆と変わらない感情論でしかない事は分かっている。
それでも、影山の事を調べるにつれ彼が目標とするサッカーは、亡き父親が展開していたサッカーだと気づいたフィディオは、同じく落ちぶれた父親を持つ者として、影山東吾のサッカーこそが今の自分達に足りない穴を埋めてくれる存在であると確信していた。
フィディオ「ミスターKが生み出した必殺タクティクス…。アレを完成させるには、俺達にも更に高度なプレーが要求される…。だが!全てが噛み合った時、“カテナチオ・カウンター”…そして“究極のサッカー”が姿を現す筈なんだッ!!俺は…それが見てみたいッ!!」
ライト「フィディオ…」
フィディオ「頼む皆ッ!コレは俺の我儘だって事は分かっている!だから…5分だけでいい!俺に…5分だけ時間をくれ…!頼むッ!!」
フィディオはプライドを捨て、観客達の面前であるにも関わらずチームメイトに深々と頭を下げる。
その姿勢からは、何がなんでも必殺タクティクスを完成させたいという強い“想い”が伝わって来る。
ライト「ボクからお願いっ!!ボクは誰よりも雷牙を…イナズマジャパンの強さを知ってる!!みんなの気持ちがバラバラじゃ、絶対にイナズマジャパンに勝つことなんてできないっ!!だから…!フィディオの言葉を信じて…!」
フィディオに続き、ライトも頭を下げる。フィディオの我儘が祖国と今も何処かで自分達の試合を見ているであろうキャプテンに向けられているとすれば、ライトの我儘は日本のライバル達…そしてそこで立ち尽くしている事実上の義理の妹に向けられているだろう。
チームの中核を担う2人の選手によるお辞儀…。彼らの誠意は目に見えない稲妻となって、チームメイト全員に降り注ぐ。
ラファエレ「…どっちみち向こうのスローインだ。フィディオ、皆にディフェンスの指示を頼むぜ」
フィディオ「ラファエレ…!」
ラファエレ「フィディオとライトに頭を下げられちゃ、誰も断れないからな!いいな皆ッ!5分だけはフィディオの指示通りに従うぞ!!特にジャンルカ!次、フィディオの指示を無視したら承知しねェーからな!!」
ジャンルカ「チッ…。分かったよ…」
フィディオ「ありがとう…!みんな!!」
フィディオの必死の説得によりようやく塞がったチームの亀裂。信頼による調和を旨とするオルフェウスのサッカーに影山が理想とする究極のサッカーが合流した事で、本当の意味での新生オルフェウスが誕生した。
そして…
鬼乃子「私は…何の為に生まれてきたのかな…?」
今にも消えそうな声で己の存在意義すらも見失った“鬼”の前にライトが現れる。
その顔には、“怪物”を作るという狂気に取り憑かれた父親の被害者たる“鬼”への“哀れみ”の感情が篭っていた。
ライト「…ボクの言葉がキミに届いているか分からない。…けど、耳じゃなくて心で聞いてほしい…。ボクはキミの過去を知らないし、知ろうとも思わない…。けど…!本当に雷牙に勝ちたいのなら前を向くんだ…!だって…“ゴール”は…いつも前にしかないから…!」
鬼乃子「……」
ライト「ボクが言いたいのはそれだけ。…ボクは信じてるよ、キミは敗北を乗り越えられる強い子なんだって…」
伝えたい事を言い終えたライトは、次のプレーに向けてゴールへ戻る。譫言と無言を貫き通した“鬼”にライトの想いが届いたかは分からない。
だが…。光亡き“鬼”の瞳には再び光が灯り始めていた…。
勝ったら勝ったで機嫌悪くするわ、負けたら負けたで変な方向にヘラるわって…なんつーめんどくさい妹なんだ…。
〜オリ技紹介〜
【超次元強化】
♦︎獅風迅雷・
≪概要≫
豪炎寺の激励によって雷牙が新たに到達した新たな境地であり、“究極極限界突破”の前段階。
前段階である為、完成系には劣るものの、“超限界突破”以上に洗練された力の使い方により、パワー・テクニック・スピードが格段に向上し、鬼乃子とも互角以上に戦える力を発揮する。
だが、消耗の激しさはこれまでの“獅風迅雷”とは比較にならず、“ゾーン”を極めた雷牙を以てしても偶発的かつ短時間しか突入出来ない欠点が存在する。
名前と解説からお察しの通り、元ネタは身勝○の極意・兆。
イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。
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稲魂雷牙
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稲魂雷斗
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明星鬼乃子
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“雷帝”