イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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まだ前半戦すらも終わってないのに4話目に突入か…。こりゃ1試合にかける話数はレグルス戦を超えるかもな…。


終極 そして…

アンジェロ「フィディオ!」

 

フィディオ「ナイスだ!アンジェロ!」

 

 イナズマジャパンのスローインに競り勝ち、ボールを奪い返したフィディオに5分間だけ与えられた、最初にして最後の挑戦が始まる。

 

フィディオ(俺にできるのだろうか…。あの人のプレーを…)

 

 “カテナチオ・カウンター”に求められる技量(スキル)は大きく分けて3つ。

 1つ。起点となる選手がチーム全員の能力を把握する司令塔である事。

 2つ。常に速すぎず遅すぎず、相手の攻撃に臨機応変に対応できる絶妙なスピードを維持できる事。

 3つ。(もく)さずとも周囲の状況を正確に把握できる並外れた空間把握能力を持つ事。

 

 この中でフィディオが持っているのは第三の空間把握能力だけ。それでも彼の能力を以てようやく及第点に到達するか否かのレベルだ。

 

フィディオ(何をビビってるんだフィディオ・アルデナ!!ココまで来たらもう、やるしかないだろッ!思い出せ…!あの日見たトウゴ・カゲヤマのプレーを…!その感動を…!)

 

 落伍者の息子、フィディオ・アルデナ。彼は既に“究極”の答えの一端を握っている。

 

<数日前>

フィディオ「コレが…ミスターKの過去に繋がる資料…!」

 

 日本戦の数日前…言い換えるのならば、ライトが鬼乃子の身の上を知った翌日。フィディオの元に届けられたのは一つの小包だった。

 小さな段ボールの中に入っていたのは、一通の手紙と数冊のサッカー雑誌、そして丁寧に梱包された1つのDVD。送り主はオルフェウスの真のキャプテン・ヒデナカタだ。

 

フィディオ「それにしてもよくこんな古い資料を見つけてこれたな…。伊達には世界を旅してないって事か…」

 

 影山を救い出すと決めてからフィディオは彼に関する情報をできる限り調べたが、出てくる情報はどれも彼が日本で犯した悪事ばかり…。彼の身の上話に繋がりそうな情報は未だに掴めないでいたところ、見計らったかのようにヒデナカタから送られて来たのがこの資料だった。

 

フィディオ「…まずはこのDVDを確認してみるか…」

 

 キャプテンからの手紙を読み終えたフィディオは、手持ちのPCに同梱されたDVDプレイヤーを装着し、早速映像を再生する。

 

実況『さぁ!!遂に始まりました!日本代表対イギリス代表の親善試合!!()()()()率いる日本代表は、サッカー強豪国イギリス相手にも我々に“完璧(パーフェクト)”を見せてくれるのでしょうか!?』

 

フィディオ「ッ…!?カゲヤマ…!?」

 

 生粋のイタリア人であるフィディオに日本語は分からない。それでも、実況から放たれた“カゲヤマ”の四文字は彼がミスターKとどのような関係であるかを示すには十分だった。

 

フィディオ「す、スゴい…!なんだこのサッカーは…!数十年前の日本にココまで高レベルのプレーがあるなんて…!」

 

 気づけばフィディオは画面の中の試合を見入っていた。右腕にキャプテンマークを付けた選手が繰り出す、まさに“完璧(パーフェクト)”としか言いようのない見事なゲームメイクを前に、強豪であるイギリス代表は為す術もなく得点を許していく。

 

実況『試合終了ォォォ!!!日英の親善試合は3対0の日本の圧勝で幕を閉じたァァァ!!流石は“完璧超人(パーフェクト・プレイヤー)”・影山東吾ォォォ!!今回も我々に“ 完璧(パーフェクト)”を見せてくれたァァァ!!!』

 

フィディオ「“ 完璧超人(パーフェクト・プレイヤー)”…!」

 

 “完璧(パーフェクト)”は誇張抜きに完璧だった。繊細なボールコントロール、豪快なシュート、そしてフィールドを支配しているかのような圧巻の空間把握能力…全てのサッカー選手が喉から手が出るほど望む物を“彼”は持っていた。

 

フィディオ「素晴らしい…!コレがミスターKの父…トウゴ・カゲヤマのパーフェクトサッカー…!」

 

 試合を見終わったフィディオは無意識のうちに画面の中の英雄に向けて拍手を送っていた。

 英雄のサッカーは当時の水準の遥か先…それこそ現代でも十分通用する程“未来()”を行っていた。

 …だからこそ解せない。ココまで偉大な父を持ちながら何故、ミスターKは病的なまでにサッカーを憎むその理由を。

 

フィディオ「ーー!!! まさか…!」

 

 ヒデナカタは無意味な行動はしない人間だ。一見すると意味不明に見える行動にも唯一の欠点とも言える放浪癖も必ずや意味がある。

 それを示すかのように、これまで謎だった数冊の雑誌の中にミスターKの復讐者としての“原点(オリジン)”があった。

 

 薄々嫌な予感がしながらも、フィディオは雑誌のページをめくる。そして遂にその名を見つけた。

 

フィディオ「カゲヤマ…トウゴ…。ダイヒョウオチ…」

 

 今度は文字として目にする影山東吾の名が書かれた記事の見出しに書かれていたのは『代表落ち』の四文字。日本語を読めないフィディオは、スマホの翻訳機能を使って、数秒遅れてその意味を理解する。

 

フィディオ「そうか…。そうだったのか…!」

 

 フィディオはようやく理解する。何故、自分が彼に強いシンパシーを感じていたかのその理由を。

 自分と影山はどことなく似ているどころではなかった。寧ろその逆、自分より優れた才能の持ち主が現れたが故に、サッカーを手放さざるを得なかった父を持つ被害者であったのだ。

 

フィディオ「やっと理解した…。彼は…ミスターKは俺だ…!もう1人の俺なんだ…!」

 

 同時に悟る。ミスターKの心の奥底には、まだサッカーを愛する想いがあるのだと。でなければ、父親と同じ技量を要求するタクティクスなど思いつく筈もないだから。

 

フィディオ「コレは…神様が俺にくれた最後のチャンスだ…!俺は父さんを救う事ができなかった…。だからこそ…!ミスターKを救わなければならないんだ…!」

 

 過去は変えられない。どんな手を使って罪を清算したとしてもその“事実”は未来永劫、永遠に残り続ける。

 だが、未来は変える事が出来る。影山の陰謀からこれ以上被害者を出さない為に、過去の“悔い”と決別する為に。フィディオはその胸に硬く誓う。

 

フィディオ「見ていてくださいミスターK…!俺が“カテナチオ・ 貴方を父の呪縛から救い出してみせます…!」

 

……

………

…………

……………

フィディオ(ボールは常にフォーメーションの中心に…!)

 

 イナズマジャパンのディフェンスを突破したフィディオは、数人の選手を円形に配置し、速過ぎず遅過ぎずといった絶妙な速度で駆け上がる。

 

風丸「止めるッ!だぁぁぁ!!!」

 

フィディオ「しまった!!」

 

 だが、ドリブルに集中しすぎたが故に長所である筈の空間把握能力を発揮する事が出来ず、風丸のスライディングの餌食となってしまう。

 

フィディオ(クソ…!ボールに集中しすぎた…!もっとピッチ全体を見渡さないと…!分かってはいたが…予想以上に難しい…!)

 

 実際に挑戦してみた初めて自覚する“カテナチオ・カウンター”の難易度の高さだが、同時に影山が考案したあの練習こそが習得の為の近道であった事も改めて理解する。

 人間である以上、ボールの存在を無視してドリブルをするなど不可能に近い。それが出来る選手は、もはや意識と肉体を切り離せる領域に居ると言っても過言ではないだろう。

 

フィディオ(あの特訓で既に下地はできている筈なんだ…!あと少し…!何かヒントさえあれば…!)

 

 練習の甲斐あってまだなんとなくであるもののイメージと感覚は掴めているが、まだ完成に至るまでの“何か”が足りない。約束の5分も三分の一を切っている以上、フィディオは早急にその“何か”を掴む必要がある。

 

ピーッ!!!

 

ダンテ「フィディオッ!!」

 

フィディオ「ーー!!! あ、ああ!」

 

雷牙「トロいぜ!フィディオ!!試合中に考え事たァ関心しねェなァ!!!」

 

 オルフェウスのスローインだったが、一分一秒の思考を“カテナチオ・カウンター”に費やしていた事が仇となる。

 凄まじいスピードで突っ込んで来た雷牙によって、ボールをカットされてしまい、FW陣に続くボールを渡したらダメな選手にボールが渡ってしまう。

 

フィディオ「(いや…ココはある意味チャンスだ!ライガ程の突破力がある選手ならヒントを掴めるかもしれない!)皆ッ!距離を一定に保ってライガを囲めッ!!」

 

『おおっ!!』

 

 ピンチはチャンスと言わんばかりに、未完成の“カテナチオ・カウンター”を発動したオルフェウスの選手達は、雷牙の周囲を数人の選手が囲むフォーメーションをとる。

 

雷牙「んだァ?それが例の“ピスタチオ・カウンター”ってヤツかァ?オメーさん程の男がやたらと執着すっから、どんなにスゲェタクティクスかと思ったら…ただ俺の周りを囲んだだけじゃねェか!!」

 

フィディオ「来るぞッ!皆ッ!練習通りに動くんだ!!」

 

 檻に閉じ込めた“怪物”はその牙を以て、鉄格子を破壊するべく駆け出すが、イタリアの剣士達も怖気付く事なく多勢に無勢の勢いで一定の間隔をキープしながら“怪物”へ襲い掛かる。

 

 だが…

 

雷牙「ハッ!同情するぜ!切り札の初披露のお相手が俺だなんてよッ!!!」

 

 未完成の“カテナチオ・カウンター”は“怪物”には通用しなかった。まるで身体全体に目でも付いているかのように機敏な動きでオルフェウスの攻撃を避けていき、閂の隙間から脱してしまったのだ。

 

マクスター『避けたーーッ!!!オルフェウスの攻撃もライガ・イナタマには通用しないーーッ!!!まさか彼の正体は“トドメキ”なる妖怪(ジャパニーズモンスター)なのかーーッ!?」

 

雷牙「ハッ!なワケ!!えらく体力は削られちまったがよォ!!!さっきから五感の感覚がビンビンなんだよォ!!!まるで空に居る俺ちゃんがラジコンで自分(テメェ)の身体を動かしてるみてェになァ!!」

 

 まるで先程の“兆”を彷彿とさせる見事なプレー…。確かに“兆”は解除されてしまったものの、一度“ゾーン”を超えた領域を体験した事により雷牙さ更なる精度の高いプレーを可能としていた。

 

ブラージ「クソ!惜しいッ!あと少しでライガからボールを奪えてたってのによォ!!」

 

影山「…まだ足りん。距離感はある程度掴めてきたようだが、空間把握能力が完璧でない以上、真の“カテナチオ・カウンター”を完成させる事は出来ん」

 

 口ではフィディオ達の一歩前進すらも認めない影山だが、不思議な事にその言葉には普段の厳しさはない。

 如何に選手が成長したとしても、自身が求める及第点に達しなければ冷酷かつ淡々と現状を評価するのが影山零治という人間だ。

 その言葉に違和感を感じていたのは他ならぬ影山その人であった。

 

影山(…何故だ。何故私はフィディオ・アルデナのプレーに“奴”…忌まわしき影山東吾の面影を見出す…?何故いつまで経ってもタクティクスを完成させられない奴らを見限れない…?)

 

 フィディオのプレーを見る度に心の奥底から湧き上がる遥か昔に捨て去った筈の感情…。だが、影山は“それ”を認める訳にはいかない。“それ”を認めてしまえば忌まわしき父を肯定し、数十年にも及ぶ自分の人生を否定する事になるからだ。

 影山は理性を以て“それ”を心の更に奥深くに仕舞う事にした。もう二度と湧き上がらないように、あのような悲劇を二度と経験したくないが為に。

 

雷牙「何ボサっとしてやがる鬼乃子ォ!!目を覚まして俺と戦いやがれェ!!!」

 

 “カテナチオ・カウンター”を突破した雷牙は、一目散に鬼乃子の元へ駆け寄る。

 雷牙からしてみれば彼女との勝敗は2戦1勝1敗…つまりは引き分けだ。試合が終わるまで何度も勝負を挑み、審判のホイッスルが鳴った時点で勝ち越す事で初めて勝利と呼べる“怪物”の勝負観ではまだ“鬼”に勝っていない。

 

鬼乃子「……」

 

 だが、“鬼”は未だに俯いたまま勝負の土俵に立とうともしない。

 

雷牙「チッ!ダンマリかよッ!!もういいッ!!俺の不戦勝で2勝1敗!稲魂雷牙様の勝ち越しじゃァ!!!」

 

 これ以上“鬼”と構っていてもロクな勝負を望めないと察した雷牙は、彼女に見切りをつけ前線へ上がる。

 オルフェウスの陣地は必殺タクティクスの失敗によりディフェンスが薄くなっている。まさに決定的なシュートチャンスだ。

 

雷牙「カモンッ!豪炎寺!吹雪!久々に“アレ”やっぞ!!」

 

吹雪「ああ“アレ”だね!!了解!!」

 

豪炎寺「“アレ”…。ああ!“アレ”か!分かった!!」

 

 雷牙からボールを受け取り、“アレ”の正体を察した豪炎寺と吹雪はトップスピードで駆け上がると爆熱の炎と極寒の冷気に包まれ、バッテン模様の交差点を作りボールにツインシュート叩き込む。

 

豪炎寺&吹雪「「“クロスファイア”!!!」」

 

 アメリカ戦に引き続きイタリア戦でも炸裂した百万の解を導き出す“1+1”。だが、そのシュートに追従する一つの金色の影があった。

 

雷牙「オマケにもいっぱぁつッ!!!」

 

 シュートに追いついた“怪物”は洗練された黄金の気も共に右脚に膨大な稲妻を纏わせるとバイシクルシュートの体勢に入り、変則的な“イナビカリブレイカー”を重ね掛け(オーバーライド)する。

 

雷牙&豪炎寺&吹雪「「「“ザ・トリニティReB”!!!」」」

 

 “怪物”よって加えられた“+1”は1+1の足し算を百万の解から♾️の解へと押し上げ、“爆炎”、“氷結”、“稲光”が見事に調和しながらライトが守るゴールへ向かう。

 

ライト「アレはネロを破ったシュート…!

 

 ライトは左手より翡翠色の“神の手”を出現させると、極限まで縮小させ左手に一点集中させた気を何十倍にも増幅させる。

 左手に受け止めれる気の総量を大幅に超えたのだろう。ライトの左手から同色の巨大な翼を思わせる気の柱が飛び出ると、“神の手”は獅子を超えた“獅子王(レグルス)”へと姿を変える。

 

ライト「“ゴッドハンド・レグルスG3”!!!」

 

 更なる高みへ至った弟を前に兄としての意地が働いたライトは、この土壇場で“獅子王(レグルス)”を更に進化させ、三色の“調和”と対峙する。

 

雷牙「この土壇場で進化させやがった…!ハッ!!そうこなくちゃ面白くねェよなァ!!!」

 

ライト「ボクだって…!いつまでも泣き虫弱虫じゃダメなんだっ!!本当の“怪物”になる為に…!ボクは雷牙を超えなくちゃいけないんだァァァ!!!」

 

 弟の庇護下から抜け出し自立する覚悟を決めたライトに呼応するように、“獅子王(レグルス)”の牙は更に鋭く更に強靭となり、三色の“調和”を徐々の押し返し始める。

 

ライト「ウオォォォォ!!!」

 

 遂に“獅子王(レグルス)”の牙は“調和”を噛み砕き、彼の左手にボールを収めた。

 

マクスター『止めたーーッ!!!今大会の初披露の“ザ・トリニティ”!惜しくもライト・イナタマを破れずーーッ!!!』

 

ライト「グヌヌヌ…!な、なんとか止めれたけど…スッゴイ手が痺れた…!」

 

雷牙「ヘッ!それでいいッ!!そうこなくちゃ倒し甲斐ってモンがねェからなァ!!!」

 

 怒涛の成長を見せる兄に対し不敵な笑みを浮かべる雷牙。それが覚醒のスイッチになったのだろう、本人も仲間達も気づけない程に微量ではあるが彼の身体の表面から“兆”の象徴たる白銀のオーラが流れ始める。

 

フィディオ「そうか…!ようやく分かった…!“カテナチオ・カウンター”を完成させる為に必要な“何か”が…!!」

 

 “怪物”の覚醒が齎したのはチームの勢いだけではない。意識と肉体を切り離す神業を見た影の救世主にならんとする少年は、“完璧”に至るのに足りなかった答えをようやく理解する。

 

鬼道「甘いッ!!」

 

アンジェロ「うわぁ!!」

 

 オルフェウスに攻撃権が移ったのも束の間、鬼道のゲームメイクにより即座にボールが奪い返され、オルフェウスはまたしても失点の危機に陥る。

 

フィディオ「皆ッ!もう一度“カテナチオ・カウンター”だッ!!だが、今度は無理に一定の距離を意識しなくていい!各々が思い通りの距離感でキドウを囲むんだッ!!」

 

『なっ…!?』

 

 突如、大将から放たれた指示にチームメイトは困惑してしまう。それもそうだ、さっきまで一定の距離を保てと言っていたにも関わらず、今度はその逆を指示を飛ばしているのだから。

 

フィディオ「俺が言ってる事が無茶苦茶なのは分かってるッ!!だけど約束の時間まであと少しだ!だから頼むッ!俺の最後の我儘を聞いてくれッ!!」

 

 大将の力強い目を見た仲間達は、それ以上困惑も反発もなく言われるがままに自由な距離感を以て鬼道を取り囲む。

 我らがキャプテンはそこまで言うのならば、彼らに拒否する道理はない。何せこの5分だけは何があろうとも絶対にフィディオ・アルデナを信じると決めたのだから。

 

フィディオ(俺には全てを見通す能力なんてない…!けど…!仲間を信じる事ならできる!!全てを見通せなくてもいい!ただ俺は、バラバラのチームを1つに繋ぎ止めれる接着剤になればいいんだ!!それが本当の“カテナチオ・カウンター”に必要な存在だったんだ!!)

 

ラファエレ「なんだよコレ…!急に俺達の動きが乱れなくなった…!」

 

ジャンルカ「まさか…フィディオが俺達の動きをコントロールしてるのか…?」

 

 チームを繋ぐ柱となったフィディオによって、あれだけ不安定だった“閂”は見違えるように強固となりフィールドに完璧なる“堅牢の鍵”が姿を現す。

 

影山「馬鹿な…!貴様が…!フィディオ・アルデナが父のサッカーを再現出来る筈がない…!!」

 

フィディオ「違いますミスターKッ!!コレこそが貴方の父…カゲヤマ・トウゴのプレーそのものですッ!!」

 

 “カテナチオ・カウンター”の本質を掴んだ事により影山東吾のサッカーの本質も掴んだフィディオは、自分も影山も本当の意味で影山東吾のサッカーを理解していた者は誰1人としていなかった事を知る。

 

フィディオ「貴方の父は全てを見通す戦略眼なんて持っていなかった!!ただ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!!!」

 

影山「何だと…!?」

 

 精神と肉体を切り離す…如何に影山東吾のサッカーが数十年先を行っていたとしても、彼がそんな神業を習得していたかと聞かれれば答えはNOだ。

 現にその神業の一端を掴んだ“怪物”はこの場にいる。だが、彼も何億分の一もの確率で起こる未来人との遭遇を三度も経てようやく到達できた境地なのだ。“完璧”と謳われようとも数十年前の人間である影山東吾にそんな事ができる筈もない。

 

影山「クッ…!今すぐそのプレーを止めろッ!!!私は認めん!!忌まわしき父がよりにもよって、私が忌み嫌う仲間を信じるサッカーに手を染めていた事などッ!!!」

 

 数十年目を逸らし続けてきた“現実”に直面してしまった影山は、初めて本当の感情を露わにしフィディオへ激昂する。

 

フィディオ「いいえッ!!止めませんッ!!!貴方が求めていたサッカーは…!カゲヤマ・トウゴが中心に来る事で完成するのですからッ!!!」

 

 激昂の裏に隠された懇願を受けてもフィディオは父の模倣を止めない。それこそが過去の呪縛に囚われた影を救い出す唯一の方法であると確信しているから。

 

鬼道「なんだこのタクティクスは…!一切の隙が見当たらない…!」

 

 気づけば鬼道はオルフェウスの選手達に囲まれ、パスコースすらも完全に封鎖されていた。孤軍奮闘を余儀なくされたその様はまさに四面楚歌。

 完全に包囲されてしまった鬼道に自分という扉に錠前の鍵を閉められる感覚が襲う。

 

鬼道「一瞬で囲まれただと…!?」

 

フィディオ「コレが俺達の必殺タクティクス…!“カテナチオ・カウンター”だァァァ!!!」

 

 完全包囲されたしまった鬼道の視界を純白の流星が包み込む。光が晴れた時には既に鬼道の足元にボールはなく、その代わりにフィディオが流星の如きスピードでフィールドを駆け上がっていた。

 

マクスター『フィディオがボールを奪ったーーッ!!!流れるような連携でボールを奪うその様はまさに“白い流星”!!!フィディオ・アルデナここにありだーーッ!!!』

 

 遂に“カテナチオ・カウンター”を完成させ、イナズマジャパンからボールを奪ったフィディオ。

 その瞬間、彼の周囲が漆黒の影に覆われ新緑の芝生に覆われた地面は消失し、青空の下で観客がひしめく周囲の景色も味気ない闇一色の暗闇だけが支配する暗黒空間へと姿を変えてしまう。

 だが、その表情に“不安”や“驚き”といった感情は見られない。寧ろ、こうなる事は当然だと言わんばかりに目の前に居るミスターK…いや影山零治に視線を向ける。

 

フィディオ「ミスターK…貴方はスゴい監督です。このタクティクスなら、あらゆる攻撃を無効にし攻撃に転じる事ができる…。こんな素晴らしいタクティクスを思いつけるのはやはり貴方はサッカーを…」

 

影山「違うッ!!!」

 

 フィディオは初めて声を荒げ、息を乱す影山を見た。彼だけじゃない、愛弟子である鬼道も、かつてチームメイトである響木も、腐れ縁である“雷帝”ですらも、ここまで情緒を乱された影山零治を見た事はない。

 

フィディオ「どんなに否定しようとも、俺は確信していますッ!!貴方はサッカーを愛しているのだと!!!」

 

影山「黙れ…!」

 

 刹那、闇色一色のこの空間に似つかわしくない大量の鉄骨がフィディオに向かって降り注ぐ。

 運が良かったのか、それとも影山の深層心理が働いたのか、フィディオは怪我一つ負う事なく無傷のままだ。

 

影山「私は憎んでいた!私から全てを奪ったサッカーを!!」

 

フィディオ「サッカーを愛していない人間がコレほどの戦術を練る事なんてできない!!」

 

影山「貴様は何か勘違いしているようだな?私がサッカーを学んだのは“復讐”の為だ。私の人生は!経験は!知識は!全てサッカーを潰す事だけに向けられているッ!!!」

 

 まるで自分の本心を押し殺すかのように声を荒げてフィディオの言葉を否定する影山だが、その反応こそがフィディオの指摘が図星である事の何よりの証明だ。

 

フィディオ「俺は…!貴方が指揮した全ての試合記録を見ましたッ!!そして分かったんですッ!!貴方のサッカーには…常にカゲヤマ・トウゴのサッカーがあった事にッ!!!」

 

影山「ッ…!」

 

フィディオ「自分の目指すサッカーを託せるプレイヤー…。その可能性を見出したからこそ、貴方は鬼道に全てを押し込み、今も強い執着を向けているんじゃないですか…!?デモーニオがいい証拠だッ!!」

 

影山「何が分かる…!貴様に…!私の何が分かるッ!!!」

 

 気づけば影山はフィディオの胸ぐらを掴み声を荒げていた。常に感情を律し、知略を張り巡らせる彼らしくもなく。

 怒りが頂点に達し冷静な判断が出来なくなった彼は、自分がやらかした事の重大さに気づけなかった。その“怒り”こそが自分自身を否定する事に他ならない事に…。

 

フィディオ「やはりそうだ…!」

 

影山「なッ…!」

 

 しっかり掴んでいたフィディオの身体は、突如として光の粒子となって消滅し、影山の背後に再びフィディオが姿を現す。

 

 フィディオと影山の精神が同調した事により出現した、この精神空間は、精神的優位に立った者がその空間の支配権を得られる。

 トラウマを刺激され自分自身すらも否定してしまった事で、絶対的な支配者の座を自ら放棄してしまった影山は意図せずにフィディオに空間の支配権を譲っていた。

 

フィディオ「ミスターK…いやカゲヤマ・レイジ…。貴方は可哀想な人だ…!」

 

影山「私が…可哀想な人だと…!」

 

フィディオ「貴方は父のサッカーを…そしてサッカーそのものを愛していた!だが…父の没落によって全てを奪われた貴方は…いつしかその“愛”が“憎しみ”へと変わっていった!!」

 

影山「違う…!私はサッカーを愛してなどいなーーッ!?お、お前は…!?」

 

 自分自身を否定してもなお、何かに取り憑かれるように仮初の自分を演じようとした瞬間。純正のイタリア人の少年であるフィディオ・アルデナの姿が、自身と面影を持つ中年の日本人男性の姿へと変わる。

 

 見間違える筈もない。彼は…彼こそは…

 

影山「父…さん…?」

 

東吾「…分かっている。お前から全てを奪ったのは他ならぬ私だ…。今更許してもらおうとは思っていない…。だが…これ以上、自分を偽るのはやめてくれ…」

 

 ずっと待ち望んでいた父から謝罪に心が激しく揺れ動く。だが、影山は既に分かっている。目の前の男は自分の知る影山東吾ではないと。

 

影山「止めろッ!!!どこの居るフィディオ!!!分かっているぞ!!目の前の影山東吾は貴様が作った幻だッ!!!」

 

フィディオ『違うッ!!コレは幻なんかじゃないッ!!コレは…貴方がずっと心の奥底で封じ込めてきたサッカーを愛する“魂”だッ!!!』

 

 影山東吾の形をとって現れた、影山のサッカーを愛する“魂”は右手に1つのサッカーボールを出現させ地面に置く。

 

影山「止めろ…!そのボールを蹴るんじゃあないッ!!!」

 

フィディオ『…もう終わりにしましょう。ミスターK…。今こそ…長い夢から覚める時です…!』

 

 “魂”は右脚を大きく振り上げシュートの体勢に入る。影山は父の紛い物を止めるべく走り出すが、これまで日陰で陰謀を展開してした中年男性が全盛期に父に勝てる筈もない。

 影山の最後の抵抗も虚しく、“魂”が放ったシュートは影山を吹き飛ばしその最奥にある黄金の十字架を粉砕した。

 

影山「わた…しは……!」

 

 十字架も、父も、闇も晴れ、フィディオの声すらも聞こえなくなる。

 

 影山の視界に映るのはまたしても深い闇。だが、彼を救済するかのように一筋の光が彼を照らしている。

 

 彼は悟る。ここは運命の分岐点なのだと。ここでの選択によって自分が行くべき未来が決まる場所なのだと。

 

影山「…なんという茶番劇だ」

 

 影山は静かに笑う。しかし、その笑みはこの期に及んで自分を信じるフィディオへの嘲笑ではない。自分自身の愚かさに対する自虐の笑みだ。

 

影山「この世界で最も憎んだ物を…私は長年追い求めていたのか…」

 

 不思議な事に今の影山にはサッカーが憎い物とは思えない。寧ろ、サッカーを思い浮かべただけで捨て去った筈の感情が湧き上がって行く。

 

影山「…もしも、私に“それ”を気づかせる存在が居るとしたら鬼道だと思っていたがな…。…まさか縁もゆかりもないイタリア人の少年だったとは…。ククク…つくづく運命とは分からないものだ」

 

 影山は立ち上がる。その選択が自分にどんな“結末”を与えるのかは分からない。

 

 だとしても。もう自分に嘘をつきたくない。だって自分は…

 

ーー私は…

 

影山「サッカーを…愛しているのだから…!」

 

 長きに渡って見続けた夢がーー

 

 長きに渡って取り憑かれた闇がーー

 

 長きに渡って隠してきた想いがーー

 

 今、晴れた

 

……

………

…………

……………

 

フィディオ「ウオォォォォォォ!!!」

 

 影山との対話は現実時間にして0.1秒にも満たない短いものだった。途中で追い出されてしまったフィディオには、彼がどのような選択を選んだのかは分からない。

 

 だが彼は確信している。彼ならば…影山零治ならば必ず正しい答えを選ぶ事が出来たのだと。

 

 だからこそ、自分もまた応えよう。影山零治が目指した“究極のサッカー”…その先を。

 

フィディオ「行くぞッ!!マモルッ!!!」

 

円堂「来いッ!!フィディオッ!!!」

 

 好敵手と対峙したフィディオの身体から、膨大なオーラが溢れ出る。それは人型の形を形成すると、巨大な一本の槍を携え、深い緑色のローブを思わせる衣装を身に付けた北欧の神々を統べし“軍神”が顕現した。

 

フィディオ「“軍神 オーディンッ”!!」

 

円堂「ビリビリ感じるぜフィディオ…!それがお前の化身(ゼンリョク)なんだって…!なら…!俺も全力で応えるっ!!!」

 

 好敵手の覚醒に呼応した円堂もその身より膨大なオーラを発し、彼のサッカーへの“想い”の結晶たる黄金の魔神を顕現させる。

 

円堂「“魔神 グレイトッ”!!!」

 

 フィールドに顕現した両者の最強たる“軍神”と“魔神”。“魔神”はその右手に莫大な稲妻を宿し“軍神”の槍を受け止めんとする。

 

フィディオ「…さぁ!コレが終極(クライマックス)だッ!!!」

 

 “軍神”と共に駆け出したフィディオは、地面に円形の魔法陣を出現させるとボールに黄金のオーラがチャージされる。それと同時に“軍神”も槍を構えその直線上に幾つもの魔法陣を設置し、攻撃の体勢へ移る。

 

フィディオ「“終極のグングニル”!!!」

 

 フィディオの渾身のシュートと“軍神”の最強の一撃がボールに炸裂し、チャージされたエネルギーを何百倍にも増幅させ、シュートは黄金の巨槍となり“魔神”を伐たんと襲い掛かる。

 

円堂「負けるもんかぁ!!!“グレイテスト…!フィストォォォォ”!!!」

 

 一眼で“軍神”のシュートはテクニック重視であると見破った円堂は、その拳を大きく振り下ろし、偉大なる鉄拳を巨槍にぶつける。

 

フィディオ「マモルッ!コレは俺だけのシュートじゃないッ!!今もどこかで俺達を見守ってくれてるあの人の…ココまで俺を信じて付いて来てくれた皆の…そして!正しい道を選んでくれたミスターKの想いがこもったシュートだッ!!」

 

円堂「ぐぎぎ…!分かるぜ…!このシュートの重さはフィディオだけじゃないって…!けど…俺だってキーパーとして…!絶対に点をやるわけにはいかないんだァァァ!!!」

 

 黄金の巨槍と張り合うように、円堂の拳も更に光り輝き押し返し始める。

 だが、円堂が進化すれば巨槍もまた更に威力を強め押し返し、巨槍の威力が強まれば円堂も己の殻を破り再び押し返し始める…。

 永遠に終わりのないイタチごっこが繰り返されるが、物事には必ず終わりが訪れる。一進一退の攻防戦を制したのは……

 

円堂「ぐわぁぁぁぁ!!!」

 

 フィディオ・アルデナだった。

 

ピーッ!!!

 

マクスター『ゴーールッ!!!息を呑む事すら憚られる一進一退の勝負を制したのは、フィディオだーーッ!!!コレにてオルフェウスは逆転ッ!!逆転ですッ!!!』

 

フィディオ「よしッ!!!」

 

 最強の必殺タクティクス“カテナチオ・カウンター”とフィディオの覚醒により、会場はヒートアップし歓声による空気の振動がスタジアムを大きく揺らす。

 

アンジェロ「やったねフィディオ!コレで逆転だよっ!!」

 

ラファエレ「やっと分かったぜ…!コレが俺達のサッカーなんだな!!」

 

フィディオ「…いや。俺達の監督が目指したサッカーだ!」

 

 ようやく影山が目指した“究極のサッカー”のイメージを掴み取り影山との蟠りをなくしたオルフェウスの選手達は、彼の元へ駆け寄る。

 

フィディオ「見てくれましたか監督!」

 

影山「…フッ、ようやく及第点…といったところだな」

 

 あれだけ見事なプレーを見せてもなお、及第点しか与えない影山の態度に皆は苦笑いを浮かべつつも、彼の言葉そして態度は以前とは異なり悪意を感じられない。

 

フィディオ「アハハ…けど!流れは確実に俺達の方にあります!この勢いを活かすべきです!次の指示を!」

 

影山「…なら初めに言っておく。私の父のプレーはもういい、お前達はお前達のプレーをしろ」

 

『えっ…?』

 

影山「ラファエレ、前に出るタイミングをワンテンポ早めろ。アンジェロ、スライディングを躊躇するな。ダンテ、さらに踏み込んでパスを出せ、そうすれば安定度が増す筈だ」

 

「「「は、はい!!」」」

 

 これまでの彼らならば、影山の指示に素直に聞き入れる事はなかっただろう。しかし、今は違う。今の影山には一切の悪意を感じない。

 この数分間で、彼とフィディオの間に何が起こったのかは分からなくとも、彼のイナズマジャパンに勝ちたいと思う純粋な想いは他の選手にも伝わっていた。

 

 そして…日本に残した愛弟子にも…

 

鬼道「それが本当の貴方なのですね…総帥…」

 

 ようやく過去の呪縛から逃れ、本当の自分を取り戻した師を鬼道は感慨深そうに見つめていた。

 

響木「お前達!影山にかかった“呪い”が解け、奴はただ勝利を求める“本当の戦士”に戻った!これは手強いぞ!全力で迎え撃てッ!!」

 

円堂「はいっ!!みんなーーっ!!!まずは1点だ!1点を取り返すぞーーっ!!!」

 

『おうっ!!!』

 

 本当の意味で生まれ変わった新生オルフェウスを迎え撃つべく、キャプテンの号令と共に更に気合いを入れるイナズマジャパンの侍達。

 

 …だが、()()()1()()だけ…ある違和感に気づいた者が居た。それは…

 

雷牙「待て…!アイツは…()()()はどこだ…?」

 

豪炎寺「何…?あいつならオルフェウスのベンチにいる筈じゃ…」

 

 既に数分前まで1人で黄昏ていた場所に“鬼”の姿はなかった。かといってオルフェウスのベンチにも彼女の姿はない。雷牙に少し遅れて影山も彼女の不在に気づいたようで、その動揺がオルフェウスにも広がっている。

 

雷牙「ーー!!! オイ見ろ!!アソコ!!」

 

 数秒の捜索の末に雷牙が指を差した先に“鬼”は居た。だがそこは…

 

ライト「どうして…鬼乃子ちゃんがゴール前に…?」

 

 何故か俯いたままゴール前に立ち尽くす鬼乃子に皆は唖然とする。

 

 明星鬼乃子にポジションは存在しない。ルールの都合上MFとして登録されてはいるものの、その実態は無尽蔵のスタミナを以ってピッチの上を縦横無尽に駆け回り、ありとあらゆるポジションを兼任する…まさに器用万能を地で行く“わたしがかんがえたさいきょうのサッカープレイヤー”だ。

 

 ただし、彼女もまた兄と同様にGKだけはお世辞にも高い適正を持つとは言えない。加えてストライカーに近い思考回路を持つ彼女にとって、ゴールとは無縁の存在であった。

 

鬼乃子「……」

 

コンコン!

 

 ゴールポストの前に立った鬼乃子は、おもむろに指で軽く白色に塗装された柱を叩き金属を鳴らす。

 その行動が意味する事を誰も理解出来ない。それこそ鬼道も、不動も、フィディオも、影山すらも…。

 

 まるで何かを確かめるかのような、実に業務的な一連の動作…。残念な事に、それに込められた残酷な意味をイナズマジャパン、オルフェウス、観客、実況…そして世界はすぐに知る事となる。

 

鬼乃子「アハハ…アハハハ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

ガンッ!!!

 

 同程度の硬度を持つ物体が互いに衝突したかのような鈍い音が会場内に木霊する。

 

 不思議な事にこの会場に居る全ての人間は誰1人例外なく、唖然とした表情である一点を見つめている。

 

 その視線の先に先程の謎の衝突音の音源がある事は想像に難くない。

 

 あれだけヒートアップした会場を一瞬にして葬式を思わせる静寂に包み込んだ音源の正体…。彼らの視線の先にあったのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 額から紅の液体がとめどなく溢れ出した“鬼”だった。

 

 謎の衝突音の正体…それは彼女がゴールポストに向かって渾身の頭突きを放った際に生じた物だった。

 白一色のゴールポストは大きく凹み、彼女の頭部との接触点には紅の体液が大量に付着している。

 ゴールポストだけじゃない。紅とは無縁の筈の新緑に染まったフィールドの極一部は紅に染まり、鮮やかな蒼と琴を模したチームエンブレムの一部も紅の雫が飛び散っている。

 

 本来、世界の平和と友好を目的として開催された筈のこの場にはあまりに相応しくない地獄絵図を前に人々は言葉を失い、中には吐き気すらも催す者も居る。

 

 この惨劇を作り出した本人は周囲の反応など気にも止めず、紅に染まった右手で静かに黄緑色の髪をかき上げ、狂気に染まった蒼い光を放つ瞳で“怪物”を見る。

 

鬼乃子「ハァ〜!!スッッッキリした!!!なんか数分間の記憶がぶっ飛んでるけどさァ!!!今はんなこと、どうだっていいや♪さァ!!稲魂雷牙ッ!!私との第二ラウンドを始めよーよッ!!!」

 

雷牙「…ケッ。初めてだぜ、俺以上にイカれてるヤツを見んのはよォ。…だが!その心意気や良し(ベネ)ェ!!!さァ!!決着をつけようぜッ!!どちらが真の“怪物”に相応しいかをなァ!!!」

 

鬼乃子「Good!!アンタの“怪物”と私の“怪物”…。果たしてどっちが強いかな?」

 

 敗北を経て限界超えた“地平線”の一端を掴んだ“怪物”と、敗北による刺激(スパイス)を得て新たな境地に辿り着かんとする“鬼”…。

 

 真の“怪物”を決める本当の戦いは…ここから始まる。




良かれと思ってかけた励ましの言葉が変な捉え方されたせいで、事態が余計ややこしくなっちゃう事ってあるよネ♪

【不定期掲載!イナっと裏話!】
怪物三兄妹は、妖怪ウォッチのコマ三兄妹を意識してます(ライトはコマさん、雷牙はコマじろう、鬼乃子はコマみ)。
ちなみに鬼乃子単体のキャラクターモチーフはDBのブロリーです。

【化身】
♦︎軍神 オーディン
属性:風
分類:シュート
使用者:フィディオ
≪概要≫
フィディオが影山との対話を経て覚醒した化身。容姿は典型的なオーディンって感じ。ちょっとメカ要素強めかも。
<化身技>
♦︎終極のグングニル
オーディンの化身技。シュートモーションは“ロストエンジェル”に近く、威力はエドガーと比べると彼よりスピード重視。円堂は失点を許してしまったが、シュートブロックが入っていれば止めれたくらい。
フィディオの必殺技の割に何か不穏な名前ですけど、これは北欧神話のラグナロクと、イタリア戦が長きに渡った影山との因縁の終わりである事に由来してます。

イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。

  • 稲魂雷牙
  • 稲魂雷斗
  • 明星鬼乃子
  • “雷帝”
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