イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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日本戦より決勝リーグでの参戦を望まれてる方が多いので、ヒデナカタの参戦はリトルギガント戦まで持ち越す事にします(1番多いのは作者にお任せだけど)。
ちなみに今回の路線変更がなくても、ヒデナカタはリトルギガント戦に出場予定だったんで展開自体に大きな変更はありません。
投票してくださった皆さんありがとうございました!


最強戦士激突!!! 勝つのは俺/私だ!!!

鬼道「皆聞いてくれ。今、俺達が乗り越えなければならない壁は大きく分けて3つだ」

 

 長かった前半戦を終え、ハーフタイムに突入した現在。オルフェウスの点数は3点、イナズマジャパンの点数は1点。

 フィディオと鬼乃子の覚醒によって前半中にて同点に追いつくどころか、更に点差を広げられてしまったイナズマジャパンは早急に対策を練る必要があった。

 

鬼道「1つは“カテナチオ・カウンター”。影山…いや、総帥が考案したタクティクスなだけあって、完成度はこれまでの戦ってきたチームとは比較にならない。正真正銘“最強”だ…」

 

 “カテナチオ・カウンター”はオーストラリアや韓国の必殺タクティクスと傾向こそ似ているものの、“完璧(パーフェクト)”の一端を掴んだフィディオと、世界最高峰の天才監督である影山との化学反応により完成したこのタクティクスは、正真正銘世界最強の必殺タクティクスだ。

 

鬼道「2つ。ゴールを守る稲魂雷斗の存在だ。運良く“カテナチオ・カウンター”を突破出来たとしても、“ゾーン”に入った豪炎寺のシュートすらも止めて見せた奴が最後の障壁となる」

 

 シュートは打てても得点にならなければ意味がない。例えタクティクスを突破出来たとしても、日本の“最強”すらも止めて見せたライトを何とかしなければ意味がないのだ。

 

 …だが、上記の二つは最後の壁に比べれば些細な問題でしかない。彼らが持っているのが最硬の盾だけだったならどれだけ幸せだった事か。何せオルフェウスには最硬の盾すら貫く最凶最悪の矛が居るのだから。

 

鬼道「…そして3つ。化身に覚醒した明星鬼乃子の存在だ。ハッキリ言おう、奴は規格外にも程がある。タクティクスも雷斗もまだ何とかなりそうな範疇だが、奴だけは別だ。奴の実力は俺達の10歩も20歩も上を行っている」

 

 まだ12歳の少女であり、公式戦の記録も一切ないという異色の経歴ながらも、たった一度の試合出場で世界最強候補の筆頭に登り詰めこの試合にてその座を確固たるものとした“鬼”の存在の前には最硬の盾すらも存在が霞んでしまう。

 

雷牙「……(ムッスー)」

 

鬼道「…おい。聞いてるのか稲魂?」

 

 皆が鬼乃子の対策に頭を悩ませる中、何故か雷牙は両頬を餅のように膨らませ不貞腐れている。…まぁ、その理由は言うまでもないだろう。

 

鬼道「ハァ…。鬼乃子との決着が先延ばしとなってイラつく気持ちは分かるが今は作戦会議に集中しろ」

 

雷牙「イラついてません〜。ただデザートの最後の一口を食べ損ねたようななんとも言えない虚無感に襲われてるだけです〜」

 

 前半戦の最後の最後で再び“(ビフォアー)”の領域に入る事に成功した雷牙だが、運悪くそこで前半戦が終了してしまって事で僅か数秒で解除されてしまった事に腹を立てているのだ。

 

豪炎寺「そもそも鬼乃子が化身に覚醒した時点で残り時間は5分しかなかったのだから、ああなる事は予測出来ただろ」

 

雷牙「いやまぁそうだけどさ〜!どう考えてもあのシーンは覚醒した俺ちゃんと、鬼乃子との決戦で前半戦を終えるシーンでしょうよ〜〜!!!」

 

 内心ではブー垂れてる暇はないと分かっていながらも、やはり本能では不貞腐れる感情を止められない雷牙は、豪炎寺の指摘が決定打となり更にめんどくさく捻くれてしまう。

 

鬼道「ハァ…もういい、作戦会議に戻るぞ。今最も重要なのは、確実に鬼乃子の化身シュートを止める方法だ。円堂、何か新しい必殺技はないのか?」

 

円堂「…いや、ない。しかもパワー型の鬼乃子のシュートに“イジゲン・ザ・ハンド”も通用しないとなると…今回ばかりはお手上げかもな…」

 

 自分の新たな境地である“イジゲン・ザ・ハンド”すらも鬼乃子に通用しない事実を前に円堂は、韓国戦直前のようなメンタルブレイクはしていないものの、それなりのダメージを負ってしまった精神的なショックを隠し切れていない。

 

風丸「まさかあんなシュートを撃てる人間がこの世に存在するとはな…。しかも撃てばほぼ確実に点が入るようなシュートが、まだ数発も控えているのか…」

 

 百鬼の王が住まう城門から放たれるシュートは、シュートブロックに入れば相手の気を吸収し更に威力を強めるという反則にも程がある特性を備えている。

 似たような特殊なシュートを持つエドガーのように騎士道精神を持つが故にその特性を十分に活かせないならまだしも、鬼乃子にそのような優しさはない。シュートチャンスが来れば躊躇せずに百鬼の王を顕現させるだろう。

 

不動「…いや、そうとも限らねぇぜ?」

 

 だが、ここまで試合の展開を余す事なく観察してきた不動は風丸の弱音を否定する。皆がその意図を理解出来ずキョトンとする中、彼は不敵な笑みを浮かべある方向に指を指す。

 

不動「あれを見てみな」

 

円堂「あれは…!」

 

 不動が指を指した方向にあるのはオルフェウスのベンチだ。つまり彼はこう言いたいのだろう、『鬼乃子の化身技に重大な欠点を見つけた』と…。

 

 そこに居たのは…

 

 

 

 

 

鬼乃子「プハー!5本目終了!あっ!マネージャーさ〜ん!あと7〜8本くらい同じサイズのスポドリちょーだい!」

 

フィディオ「ま、まだ飲むのか…」

 

 壁山でようやく適正サイズといえる巨大なスクイズボトルに入れられたスポーツドリンクを飲み干す鬼乃子の姿だった。

 しかも、彼女の周囲には既に同サイズのスクイズが中身が空の状態で散らばっている。

 

熱也「…もしかしなくても鬼乃子って奴はアホなのか?あんな量のスポドリを飲んでまともにプレー出来るわけがねぇだろうが…」

 

吹雪「そうかな?稲魂君とかはよくドカ食いした後にも練習してないかい?」

 

壁山「うっぷ…。見ただけで吐き気がしてきたっス…」

 

 この後に後半戦も控えているにも関わらず大量の液体を摂取するという鬼乃子の自殺同然の行為に、敵味方問わずにドン引きしている。

 

不動「つまりだ。どうやらあの小粒の化身技は相当燃費が悪いらしい。じゃなきゃ、あんな狂ったようにスポドリを飲みまくってカロリーを摂取する必要がねぇからなぁ」

 

鬼道「あの消耗具合から察するに、化身技を撃てるのは1試合につき2回…それもハーフタイムを挟まなければならない都合上、前後半に一度ずつという事か…」

 

 強力なシュートと使い手にかかる負担というのは比例するもの。連携技ならまだしも、単独でのシュートは威力が高ければ高いほど燃費は高くなり、そう多くは連発出来なくなる。

 ましてや“真黒・曇怒淪”は化身技だ。使い手にかかる負担は尋常ではないだろう。

 

風丸「…だが100歩譲って鬼道の考察が当たっていたとしても、あいつは通常の必殺技で円堂の化身を破る実力を持っているんだぞ?状況はそこまで好転していないと思うが…」

 

雷牙「それに関しては、俺ちゃんに一つ良い考えがあっぜ!オメーら!お耳を貸せ(プリーズ)!」

 

 化身技に微かな付けいる隙を見つけても大元の問題は解決していない。残り時間も僅かながらも、何一つ良い解決策が見つからない暗闇の中、そこへ雷牙が自信に満ちた表情で手を上げ皆を一箇所に集めると、ただでさえ少ない脳みそで考え抜いた策を伝える。

 

円堂「おお!!確かにそれなら化身以上の力を発揮できるかもなっ!!」

 

鬼道「理論は稲魂にしては珍しく筋が通っている…。化身使いの気の共鳴の倍率は単なる足し算ではない事は“イレブン”で証明済みだからな」

 

雷牙「だしょ〜?流石に化身は無理だろうが、“ソレ”が成功すりゃあ“イーヴィルキマイラ”くれェは止めれるだろうぜ!!」

 

 雷牙が提案した策に、円堂は身に覚えでもあるのか二つ返事で賛同するもそれ以外の面々からの反応と表情からは一か八かの大博打感が否めない。

 それでも実力面で完敗を喫してる以上、イナズマジャパンがオルフェウスに勝つにはその大博打に乗るしか方法はないのだ。

 

雷牙「んでも一つ。“カテナチオ・カウンター”の兆候が見えたら、すぐに俺にボールを回してくんろ。俺があのタクティクスを破ってみせる」

 

鬼道「…一応聞くが勝算はあるのか?」

 

雷牙「勝算?ハッ!んなモン無ーよ!だがなァ…感じるんだよ!“兆”の鼓動ってヤツをなァ…!」

 

 理論も根拠も何もない雷牙の自信だけが頼りの無策という名の策だが、彼の身から僅かに漏れ出る白銀の気と金剛石の輝きを放つ瞳こそがそれの代わりだ。

 

 その覚悟に呼応にするように、ハーフタイムの終了を知らせるブザーが鳴り響き、各国の戦士達は再び戦場に足を踏み入れる。

 

 真の“怪物”を決める運命の決戦…。その決着は近い。

 

♢♢♢

 “鬼”によるゴール殺害事件のショックから観客達が立ち直り、これから行われる後半戦に向けて熱気がヒートアップし始めた頃。

 観客席には2人の少年が居た。1人は左手にアイスを持つ白髪のイタリア人の少年。もう1人は正体を隠すようにフードを深々と被った褐色肌のアジア系の少年だ。

 

???「良かったのかいヒデ?アレだけ日本に注目してたってのに試合に出なくて?」

 

 どうやらフードの少年の名はヒデという名前らしい。奇しくもその名は世界最強の少年サッカー選手(プレイヤー)ヒデ・ナカタと愛称と同じだ。

 

???「本音を言うと今すぐにで飛び出して試合に出たいさ。けど…それ以上に見てみたいんだよ。フィディオが出したサッカーへの答え…そして真の“怪物”が誕生するその瞬間を一観衆としてね」

 

???「俺としては“()()()()”である君の活躍を見たかったんだけどなー」

 

???「アハハ!何度も言ってるだろう?俺はただサッカーが好きな旅人さ、“最強”だなんて柄じゃない。…けど、ルカの願いは叶うさ近いうちにね」

 

 親友の愚痴を宥めながらも、正体を隠し一観客としてこの試合を見守る事に決めた“世界最強”は、フードの奥深くにキラリと光る瞳をフィディオへと移す。

 

???(やはり俺の目に狂いはなかった。フィディオ…君なら必ずオルフェウスを更なる高みへと導いてくれる…。…だから、俺に見せてくれよ君が導いたサッカーへの“答え”を…!)

 

ピーッ!!!

 

 後半からはイナズマジャパンも大きくメンバーを交代され、前半戦とは大きく様変わりしている。後半戦のメンバーは以下の通り。

 

FW:豪炎寺、佐久間、ヒロト

MF:雷牙、鬼道、不動

DF:風丸、飛鷹、壁山、吹雪

GK:円堂

 

 久遠に何らかの狙いでもあるのか影山をよく知る帝国出身の選手が全て投入され、オルフェウスの攻撃に対応する為にチームトップクラスの俊足を持つ風丸と吹雪がDFに下げられている。

 

 こうして観客に紛れた“世界最強”に見守られながら最後の後半戦が幕を開ける。真の“怪物”の称号を手に入れるのは、雷撃か?新星か?それとも…?

 

ラファエレ「行くぞ!フィディオ!!」

 

フィディオ「ああ!!更に点差を突き放す!!」

 

 既に2点のリードを取っていながらも、フィディオは攻撃の手を一切緩めない。

 どんな逆境にも諦めない不屈の魂を持つ侍には、たかが2点のリードなど何の保険にもならないと分かっているから。

 

豪炎寺「ハァァァ…!“バーニングフェーズ3ッ”!!!」

 

 それに対するイナズマジャパンもこの30分で全ての力を出し尽くすべく、一切の手は抜かない。

 早速、豪炎寺の最高到達地点(ゼンリョク)たる“ゾーン”が炸裂し、オルフェウスのFW達にマグマの如き熱気を持つプレッシャーが放たれる。

 

ラファエレ「フィディオ!俺にボールを回せッ!その隙にオマエは…!」

 

フィディオ「分かった!頼んだぞラファエレ!!」

 

 僅かな言葉とアイコンタクトだけで仲間の意図を察したフィディオは、要求通りボールをラファエレに私は自身はやや後方で待機する。

 

ラファエレ「“ゾーン”だかなんだか知らねェが俺は逃げねェ!!勝つのは俺達オルフェウスだッ!!!喰らえッ!“ひとりワンツー”!!」

 

 ボールに強烈なスピンをかける事で、まるで透明人間の足元にボールが渡ったと錯覚させるシンプルな必殺技でラファエレは豪炎寺を突破しようと試みる。

 

 …が、残念な事にラファエレの技量では豪炎寺を突破出来る程の水準には達しておらず、彼の視界を紅の光が覆い尽くした瞬間呆気なくボールを奪われてしまう。

 

フィディオ「今だッ!!“カテナチオ・カウンター”起動ッ!!!」

 

 しかしそれこそがラファエレの狙い。本人にも自分では豪炎寺に敵わない事は分かっていた。だからこそ時間稼ぎを買って出て確実にボールを奪える体制を整えたのだ。

 

豪炎寺「やはりそう来るかッ!!お前のお待ちかねだぞッ!雷牙ッ!!」

 

 それすらも読んでいた豪炎寺は、即座にヒールリフトでボールを空中へ上げるとその身に金色の気を浴びた“怪物”が現れ、ボールを受け取る。

 

雷牙「待ち侘びたぜッ!!!この瞬間(トキ)をよォ!!!」

 

 常人ならばこの一連の動きは、“カテナチオ・カウンター”を回避する為のプレーだと思うだろう。

 だが、今更イナズマジャパン…いや、稲魂雷牙に普通のプレーを求められても困る。彼はいつも通り観客の予想を裏切り“閂”から逃れる…どころか自ら閂に収容されるように死地へ飛び込んだ。

 

フィディオ「なっ…!?」

 

マクスター『コレはどういう事だライガ・イナタマーーッ!!?君はそれが“怪物”を閉じ込める為の檻だと知っている筈だろーーッ!!!!?何故、飛び込む必要があるんだーーッ!?!?!?』

 

 意味不明・自殺行為としか言えない意図の全く見えない“怪物”の行動に敵・実況・観客は皆困惑した表情を浮かべ、呆気に取られている。

 

雷牙「ハッ。どうしたフィディオ?何をそんな戸惑ってんだい?お待ちかねの獲物が掛かったんだぜ?さっさと鍵を閉めなきゃ檻は檻としての役割を果たせねェぞ?」

 

 自ら収監されながらワザとらしくフィディオを挑発する“怪物”だが、フィディオは簡単に動く事が出来ない。

 何せ、何の策もなしにノコノコと檻にかかる選手はこの場には居ない。つまりはそこの何も考えていないような顔をした男にも腹に一物を隠している可能性が高いのだ。

 

フィディオ(ライガはバカのように見えて勝算のない戦いしないタイプのバカだ…。彼に勝算がある考えるとしたら前半でキノコを下したあの技術…。だけどあんな行動技術をそう簡単に習得しているか…?…よし!ならば…!)

 

 この間僅か0.5秒。影山東吾のサッカーを習得したフィディオは、1秒にも満たない短時間で最適解を導き出す事を可能としていた。

 

フィディオ「“カテナチオ・カウンター”…!発動ッ!!」

 

『おおっ!!!』

 

 フィディオが出した答えは、タクティクスの続行。“怪物”が何かを企んでいる事は分かっている。だとしても、このままミスミス“怪物”を逃すよりも攻撃を加えた方がメリットが大きいと踏んだのだ。

 

雷牙(おっし!とりま第一関門突破…!後は俺の“本能”に任せるだけ…!頼むぜ〜俺のマイ本能(ソウル)!この試合に勝てるかはオメーさんにかかってかんな!!)

 

 フィディオが自身の策にかかった事を確信した“怪物”は残る処理を、“思考”ではなく“本能”に任せる為に“()()()()”を行う。

 

フィディオ「バカな…!?」

 

ライト「うっそ…!」

 

鬼乃子「アハハハ!!そうだよ!そうこなくっちゃ!!!」

 

ヒデ「コレは…驚きだな…!」

 

 “怪物”がとった“ある行動”に対する反応は文字通り多種多様だった。ある友はストレートに驚き、ある兄は弟の成長に絶句し、ある妹は解釈通りに破天荒な選択をした兄に称賛を送り、ある世界最強は驚きの汗を一雫流し笑みを浮かべている。

 

 彼らの情緒をぶち壊す“怪物”がとった“ある行動”。その正体は……

 

 

 

 

 

 

 

雷牙「……」

 

マクスター『瞑っているーーッ!!?ライガが目を瞑っているぞーーッ!?!?!?』

 

 “怪物”がとった行動…。それは実にシンプル、『目を瞑る』ただそれだけだった。

 

 1秒の気の緩みが致命的なミスに繋がる白兵戦(サッカー)において、自ら視界を放棄するという行為は命を差し出す事と同義だ。

 にも関わらず、“怪物”は不敵に笑いオルフェウスの攻撃を躱し続けて行く。その光景からは彼が視界を放棄しているようには見えず、流れるような動きで1人、また1人と攻撃を躱して行く。

 

アンジェロ「これって…!さっきの…!」

 

ジャンルカ「しかもさっきより動きの精度が上がってる…!」

 

 オルフェウスが攻撃を続ける度に“怪物”の動きは洗練されて行き、同時に身体の体表を薄く覆う程度であった白銀のオーラの総量も増加していく。ここまで来れば、彼が何を目的に収容されたのか馬鹿でも分かる。

 

フィディオ(信じられない…!まさか…もう掴みかけているというのか…!?トウゴ・カゲヤマでさえも到達出来なかった“神業”の領域に…!?)

 

 “兆”の領域に到達しかけている“怪物”を前にフィディオは迷ってしまう。例え彼が覚醒したとしてもコッチにはそれに匹敵する実力を持つ“鬼”が居る。

 “怪物”には“鬼”をぶつければ失点の危機はまずないが、その分“鬼”の攻撃力は失われる。

 彼に求められる答えは、“安定”か“博打”か。だが、コンマ5秒でその答えを出すにはフィディオ・アルデナはあまりに若すぎた。

 

影山「構わんッ!このまま攻撃を続けろッ!!どのみち稲魂雷牙は必ず例の領域に辿り着く!だが奴とて人間だ!ここで消耗した体力は後になって必ず響くッ!!」

 

 まだ未熟な選手に代わり監督である影山が最適解を出した事で、なんとかこの問題は解決する。

 

雷牙(あの時の感覚を思い出せ…!燃え盛る感情の炎が液体になって体内に循環していくような感覚を…!)

 

 それでも、今この瞬間に“怪物”が新たな領域に羽ばたこうとしている事は変わりない。

 “怪物”の身に宿した金色と白銀のオーラは流水の如き流動性を浴び始め、選手1人を躱わす光景をとってしても無駄が省かれていく。

 

雷牙「ーー!!! 見えたぜ…!コレが俺のォ…!!“地平線(ホライゾン)”だァァァ!!!」

 

 昂る感情すらも“ 地平線(ホライゾン)”へ到達する為の燃料へと変換した“怪物”は、その目に限界を超えた先にある地平線(ホライゾン)を捉える。

 

雷牙「“獅風迅雷・究極兆限界突破(ビフォアー・ホライゾン)…。(ビフォ)って行くぜ…!」

 

 遂に目を開いた“怪物”は、その瞳に金剛石を思わせる輝きを宿しその身に流れる二色のオーラを静かに昂らせる。

 その清流のように穏やかな気の流れとは対照的に、強烈な熱気を発する“怪物”を前に周囲を取り囲むオルフェウスの選手達は逆に圧倒されてしまう。

 

ジャンルカ「クッ…!それがどうした!!意味ありげな変化だが、コッチの方が優勢な事には変わりないぞ!!!フィディオ!俺達に指示をッ!!」

 

フィディオ「…ああッ!!」

 

 圧倒されてもなお、自分達の誇りを貫き通す為に閂を開ける訳にはいかないイタリアの剣士達は、大将の指示に忠実に従い“怪物”へ襲い掛かる。

 

 が…

 

鬼乃子「あー…こりゃ無理だね…」

 

 “鬼”の呆れこそがその結果の答えだ。

 

雷牙「“雷獣義牙…。GB(ゴー・ビヨンド)”…!」

 

 静かにその技の名を呼んだ“怪物”は、音も発さず静かにその身を雷獣へと変える。限界を超えたその先の領域へと到達した雷獣…。その獣の歩みは時間すらも置き去りにする。

 

ジャンルカ「今…何をされた…?」

 

ダンテ「早すぎる…!脳が認識する暇もないくらいに…!」

 

 静止した時間の中では、強固な城門すらも隙を晒す。その時点でそれは城門としての役割を為さない。隙間へと到達した雷獣が行うのは雄大な歩みだけだ。

 

マクスター『閂の鍵が解かれたしまったーーッ!!!オルフェウスが完成させた最強のタクティクス!!ココに崩壊ーーッ!!!』

 

雷牙「サンキュー…!フィディオ…!オメーのおかげで、俺はまたココまで来れた…!」

 

 旧友に最大限の敬意を払った“怪物”は、ゴールにて待つ最高にして最強の兄へ勝負を挑むべく、静止した時の中で力強い一歩を踏み出す。

 

 だが……

 

鬼乃子「アハハハッ!!!せっかく(ビフォ)ったってのに私は無視?こ〜んな今世紀最高の美少女が熱い戦闘要求(ラブコール)を送ってるのに気づかないなんて、ラブレターに鈍い人は嫌われちゃうよォ!!!」

 

雷牙「ハッ…!来たな鬼乃子…!!」

 

 兄しか目に映っていない“怪物”の視界を塞ぐように、黄緑色の“鬼”が前に立ち塞がる。

 “鬼”の顔には狂気の笑みが浮かべられているが、“怪物”は対照的に無表情を貫き通す。

 

鬼乃子「アッレェ?何その顔ォ?まさか今世紀最高の美少女と(バト)るのがそんなに嫌なワケェ?」

 

雷牙「ハッ…!んなワケじゃねェよ…!コレでも俺もビックリしてんだぜ…?まさか俺ちゃんがココまで穏やかになれるって事によォ…!!」

 

 心穏やかながらも闘争心を燃やす矛盾した感情を爆発させた“怪物”は金銀のオーラを更に立ち昇らせ、“鬼”もその背に“百鬼王”を顕現させ身体能力をブーストさせる。

 

雷牙「俺はシンプルな真剣勝負(ガチンコ)が好きだからよォ…。ココはいっそ自分(テメェ)の“最強”のぶつけ合いといこうぜェ!!!」

 

鬼乃子「アハハハハハッ!!!マジで最っ高!!!本っ当に私たちって趣味が合っちゃうよねェ!!!私も大好きだよッ!!理論の混じり気のない純粋な力比べはッ!!!」

 

 ルールもなければ審判も居ない。勝敗を決めるのは己が持つ純粋な力だけ。これまでの人生で培ってきた努力の成果だけが勝敗を分ける真剣勝負(ガチンコ)にて、どちらが勝ち越すかを決めるべく、その右脚に“怪物”を宿す。

 

雷牙「“ゴッドレグルスGB(ゴー・ビヨンド)ォォォ”!!!」

鬼乃子「“イーヴィルキマイラ”!!!」

 

 両者の右脚がボールを捉えた瞬間、フィールドに黄金の翼と毛並みを持つ“怪物(レグルス)”と、世界各地の猛獣達が強引に繋ぎ合わされた灰色の“怪物(キマイラ)”が降臨し、雷鳴の如し咆哮を上げる。

 

雷牙/鬼乃子「「負けてたまるか…!!!勝つのは…!俺/私だァァァァ!!!」」

 

 両者の力は完全に互角。僅かに見える肌からクッキリと浮き出た血管と青筋からは、どちらも一切手を抜いていない事が伺える。

 もはやここまで来れば、勝敗を決めるのは互いの“意地”と生存本能とも言える勝利への“欲求”だけだ。

 

 長い…。あまりにも長すぎる。人が全力を継続出来る時間とは果たして何秒が限界なのだろう?10秒?20秒?詳しい時間は分からないが、どう頑張っても1分には満たないのは確実だろう。

 

 もしも…だ。1分以上本気(ゼンリョク)を出し続けられる人間が存在するのだとしたら、それはもう人間ではないだろう。

 

マクスター『まだ…まだ続くというのかこの戦いはーー…ッ!?既にライガとキノコは1分以上も拮抗状態を維持しております…!チームメイトも救援に入りたくとも、彼らから発せられる衝撃波が妨げとなり入れない様子です…!!』

 

 居た。しかも2人も。

 

 1分以上もゼンリョクを出し続ける2人の“怪物”は、瞬間的に出せるパワーの限界値を超えてもなお、力を緩めない。…いや、緩められない。

 

鬼乃子「もう…そろそろ…!アンタも…ヘロヘロになってきちゃったんじゃない…?私…は…まだ…全ッ然余裕…だけど…!!」

 

雷牙「なワケ…!!こうなっちまった…俺は…!俺の覚悟は…!ダイヤモンドよりも…硬いぜ…!!」

 

 既に限界を迎えているにも関わらず意地と執念が災いして引くに引けなくなってしまった“怪物”と“鬼”。

 彼らの疲労困憊極まりない表情からは、痩せ我慢しているのは明らかだ。

 

 恐らく横槍が入らなければ正真正銘、永遠に決着が付かないであろう引かず離れずの世紀の一戦…。

 

 …だが、その一戦はあまりに意外な形で幕を閉じてしまう事となる。

 

雷牙/鬼乃子「「ぬぐっ!?」」

 

 結論から言おう。彼らの横槍に入ったのは誰でもなかった。強いて言うなら…()()()()と言うべきか。

 限界を超えに超え、身体に負担を際限なく強いた彼らの肉体は、瞬く間に生命の危機へと到達してしまった。

 生命である以上、彼らとて必ず生存本能はある。命の危険を感じ取った“本能”によりタイミングを同じくして、強制的に両者の気が解除されてしまい、世紀の一戦はあまりに静かに幕を閉じる事となってしまった。

 

雷牙「クソッタレ…が…!!」

 

鬼乃子「こんな…終わり方…だなんて…マジ…で…ありえないんだけど…!!」

 

 不完全燃焼極まりない終極を迎えてしまった“怪物”と“鬼”は、表情に“悔しさ”を浮かべながら立ちあがろうとするが、身体は言う事を聞いてくれない。

 

 静かに両者の足元を離れてしまったボールはゆっくりと転がり、次の主人が現れる時を待つ。

 

 …そしてその時はすぐに訪れる事となる。

 

マクスター『獲ったッ!!!早くもボールを確保したのはこの男…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュウヤ・ゴウエンジだーーッ!!!!』

 

豪炎寺「ウオォォォォ!!!」

 

 雷鳴と刃がひしめく衝撃波の嵐の中で誰よりも近くで友の決着を見守っていた豪炎寺が、いち早くボールを奪取した。

 既に彼は紅蓮の炎で身を包み、“至高の領域”へと到達している。

 

豪炎寺「来いッ!!“炎魔皇 ガザード・レクイエムッ”!!!」

 

 同じく“至高の領域”へ到達し、炎魔の頂点に立つ存在である“炎魔皇”がフィールドに顕現した。

 

豪炎寺「決める…!“ファイア・オブ…!レクイエムゥゥゥゥ”!!!」

 

 “炎魔皇”が奏でる楽団亡き鎮魂歌(レクイエム)は、剣士達の蛮族の大楯を悉く焼き尽くし、一切の威力を落とす事なくゴールへ到達する。

 

ライト(さっきよりも火力が強い…!“ファミリア”で止められるかな…?…いいや違うだろ稲魂雷斗…!止めれるかじゃない…絶対に止めるんだ…!!)

 

 ここに来て急成長を見せた鎮魂歌に対して、ライトは僅かに恐怖を抱いてしまうも、すぐに己を奮い立たせ家族を模した魔神達を顕現させる。

 

ライト「“ビースト・ザ・ファミリアァァァ”!!!」

 

 魔神達が繰り出す屈強な腕が、鎮魂歌の周囲を囲み鎮魂の炎をその両手で受け止める。

 

ライト(…え?この感覚って…)

 

 刹那、ライトに両手に不可思議な感触が襲う。これまで幾度となくキーパーとしてストライカー達のシュートを受け止め、時にはフィールドプレイヤーとしてシュートを撃つ側として活躍してきたライトは、誰よりもシュートの特性について理解している。

 

 今回の場合…。五感で感じる全ての感覚は通常の()()()()

 

ライト「コレは…!()()()()()()…!?まさか…!!」

 

 気づいた時にはもう遅い。逆回転をかけられたボールは鎮魂の炎と共にライトの手元を離れ、行き先を空へ変える。

 

 そのタイミングを見計らったかのように、宙にて顕現するのは“創世神”と“破壊神”が一つになりし銀河の平和を守護る“神秘の巨人”。その名を…

 

ヒロト「“銀河超人 エイリアマスターズ”!!」

 

 二柱の神々が一つになりて“人”となった存在にして、基山ヒロトの本来の化身でもある“神秘の巨人”は両腕を十字に組み、其の十字架に膨大なエネルギーをチャージする。

 

ヒロト「“コスモゼペリオン”!!!」

 

 “紅い彗星”による渾身のシュートがボールに叩き込まれると同時に、“神秘の巨人”の十字架から紫の光線が放出され、一筋の光の矢となり天空(そら)より落ちる。

 

ライト「クッ…!び、“ビースト・ザ・ファミリア”!!!」

 

 “スターダストブレイカー”では絶対に止めきれないと悟ったライトは、最後となる“ファミリア”を発動し、幼き頃より憧れた英雄の現し身とも言える“神秘の巨人”の光を受け止める。

 

ライト「ニギギ…!この威力…!“あの時”のヒロトよりも強い…!!」

 

 父の呪いに取り憑かれていた“あの時”のヒロト渾身の一撃すらも、止めて見せた“ビースト・ザ・ファミリア”だが、本来の自分自身を取り戻したヒロトは“あの時”よりも遥かに強かった。

 

 ライトの踏ん張りも虚しく踵とゴールラインの距離は徐々に短くなり、魔神達の身体に亀裂が入り始める。

 

ライト「グ…!グアァァァァ!!!」

 

 同郷の親友同士の“最強”と“最強”のぶつかり合いを制したのは、日本が誇る“紅い彗星”・基山ヒロトだ。

 

ピーッ!!!

 

マクスター『ゴール!ゴール!ゴーール!!!ライガとキノコによる壮絶なぶつかり合いから始まり、ゴウエンジとヒロトの見事な連携が不沈の“ビースト・ザ・ファミリア”を破りゴールを奪ったーーッ!!!コレにて両チームの点差は1点!まだ勝敗は分からないぞーーッ!!!』

 

ヒロト「“あの時”の借りは返したぞ!!ライトッ!!」

 

ライト「痛ったた…!まんまと返されちゃったね…!…でも!次は負けないよ…!!」

 

 まだ後半戦も始まったばかりにも関わらず壮絶な衝突を観客達に見せつけた両チーム。

 遂に点差は1点差へと迫った…。この試合を制し、全試合勝利の栄光を成し遂げるのはどちらだ…?




イタリア戦でようやく改心した影山だけどさぁ…。なんでイナギャラでの再登場時にあんな思想になっちゃったんでしょうね?
個人的には、フィディオによってサッカーが大好きだって気付かされた+(どう考えても因果応報だけど)色々に色々あったせいでサッカーへの感情が、変な方向に拗れちゃったって解釈してますけど合ってますかね?

イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。

  • 稲魂雷牙
  • 稲魂雷斗
  • 明星鬼乃子
  • “雷帝”
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