イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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突然ですけど、本作オリジナルの超次元強化の強化倍率は
“獅風迅雷”=2倍
“超限界突破”/“バーニングフェーズ2”=4倍
“ゾーン”=10倍
“バーニングフェーズ3”=20倍
“兆”=50倍
といった感じに設定されてます。豪炎寺の“ゾーン”の方が強いのは単純に本人の才能と適正の関係です。


鬼の道を行け、有りし人よ。

豪炎寺「立てるか?雷牙?」

 

 見事なブラフによりイナズマジャパンの追加点に貢献した豪炎寺は、“鬼”との激戦で力尽き地面に寝そべる雷牙へ手を差し伸べる。

 

 雷牙の体に目立った外傷こそはないが、既に“ (ビフォアー)”は解除され、目は開いているにも関わらず自力で立とうしないあたり、相当身体がくたびれている事が伺える。

 

雷牙「Oh〜!ミスター豪炎寺〜?キミの質問は、最高級ステーキを目の前に置かれたワンちゃんに待てと言っているようなモノだよ〜?」

 

豪炎寺「そうか。そんなジョークを言える余裕があるなら俺の手はいらないな」

 

雷牙「ごめんなさい。本当は死ぬ程全身が痛いっす。貴方様のお手手をお貸しやがれください」

 

 議論の余地が大いに残る小粋な強がりから一転して、掌を返し助けを求める雷牙の姿は実に情けない。

 

ライト「大丈夫?鬼乃子ちゃん」

 

 一方で、豪炎寺のブラフに引っかかり失点を許してしまったライトもまた、“怪物”との激戦で力尽き地面に寝そべる鬼乃子に手を差し伸べる。

 

鬼乃子「zzz…。…ンガ!?」

 

ライト「ドワァ!?」

 

鬼乃子「うわヤッバ…マジで意識飛んでた…」

 

 “怪物”渾身のゼンリョクが彼女の意識を飛ばしたのか、それとも生命の危機を察知した本能が少しでも体力を回復させる為に睡眠を選択したのか、どちらが正しいかは分からないが、意識を取り戻した鬼乃子はライトの手を借りずに自力で起き上がる。

 

鬼乃子「…アレ?なんでアンタがココに居んの?アンタ、キーパーでしょ?」

 

ライト「いつまで経っても起き上がらなかったから心配になって起こしに来たんだよ…。…それに点を許しちゃったから、罪滅ぼしの意味もあるし…

 

鬼乃子「え?マジ?」

 

 ライトの罪悪感からの小言を地獄耳により聞き逃さなかった鬼乃子は、スコアボードに視線を移すと確かにイナズマジャパンの得点が『1』から『2』に増えている。

 

鬼乃子「フ〜ン?お兄ちゃん以外の選手も中々やるじゃん。け〜ど〜!ご安心しなさーい!!この超天才最強美少女である鬼乃子ちゃんが居れば、1点くらいパパッと取り返してあげるからね〜!!…ライト()()()()()♪」

 

ライト「アハハ…それは頼もs・・・え?お…お兄ちゃん!?」

 

 突然の鬼乃子の“お兄ちゃん”呼びに対して、ライトは衝撃のあまり声が裏返り、ただでさえ高い声が更に高くなってしまう。

 

鬼乃子「ん〜?なんかおかしなこと言った?だってそうじゃん!私は稲魂雷牙(あの人)の実の妹なんだから、義理の兄であるアンタは私にとって義理のお兄ちゃんでもあるでしょ?」

 

ライト「い、いや〜…まだキミからお兄ちゃんと呼ばれるには心の準備ができてないって言うか…。そもそも雷牙は稲魂家の養子だから法律的にはキミとボクの関係は義理の従兄妹に近いって言うか…(ゴニョゴニョ…)」

 

 少女と見間違う容姿を持ち、時には全力でお兄ちゃんを遂行する覚悟を併せ持つ属性過多な稲魂雷斗は誰かに兄としての敬称で呼ばれる事に慣れていない。

 

鬼乃子「アレレ〜?もしかして照れちゃってるのかな〜?ライトお・に・い・ち・ゃ・ん?」

 

ライト「ワ〜〜ッ!!!///」

 

 ジ・ジェネシス戦以来に経験する兄呼びに耐性を持たないライトは、照れのあまり顔を赤らめながら逃げるようにゴールへと戻る。

 

雷牙「…何やってんだアイツ…」

 

 会話内容は聞こえなかったものの、遠くでイタリアの“怪物”と“鬼”の兄妹コントの一部始終を見ていた雷牙はジト目で呆れていた。

 

ピーッ!!!

 

ラファエレ「フィディオ!!」

 

 追加点を奪われてもなお、オルフェウスの戦術は変わらない。超が付く程の自由人かつ我儘少女(エゴイスト)である鬼乃子1人に頼らずに、フィディオを起点に連携を重視して攻め上がる。

 

 その攻めは良く言えば癖のないシンプル、悪く言えば凡庸だ。だが、今のオルフェウスには彼らのサッカーを凡庸では終わらせない“非凡さ”がある。

 

フィディオ「“カテナチオ・カウンター”!起動ッ!!」

 

 監督と選手が一体となる事で真の力を発揮するタクティクス“カテナチオ・カウンター”。その堅固なディフェンスはイナズマジャパンに攻撃の隙を与えずに、オルフェウスのサッカーを凡庸から非凡へと昇華させる。

 

マクスター『またも“カテナチオ・カウンター”だーーッ!!!オルフェウスの鉄壁の防御の前にイナズマジャパンは完全に攻め手失っているぞーーッ!!!』

 

ラファエレ「行くぞッ!マモルッ!!」

 

円堂「来いっ!!フィディオ!!!」

 

 終盤を突破し、好敵手と対峙したフィディオは更に加速しトップスピードに到達すると彼の周囲に魔法陣が出現し、ボールに黄金のオーラが纏わされる。

 

フィディオ「“真オーディンソード”!!!」

 

 フィディオから放たれたシュートは“軍神”の名を冠した黄金の大剣となり円堂へ向かう。

 

円堂「止める!!“ゴッドハンドV改”!!!」

 

 さりとて円堂も負けていない。アメリカの好敵手との試合で開眼した自分だけの“ゴッドハンド”をこの土壇場で進化させ、黄金の右手は更に強靭に、黄金の翼は更に巨大となり、力強く“軍神の大剣”を受け止める。

 

円堂「やっぱりフィディオはスゴいな…。けど…!俺も負けちゃいないぜ…!!」

 

 円堂の想いの呼応するように“神の右手”は輝きを増すと、ボールに付随した大剣を模したオーラは徐々に消失していき、遂には完全に円堂の右手に収まった。

 

マクスター『止めたーーッ!!!フィディオ渾身のシュートに対し、エンドウも自身を急成長させ完璧に止めて見せたーーッ!!!』

 

フィディオ「コレすらも止めてみせるか…。流石はマモルだな!」

 

円堂「へへへ!!フィディオもな!」

 

 円堂の成長により失点を抑えたイナズマジャパンだが、その後の展開は変わらない。

 日本がボールを奪っても“カテナチオ・カウンター”により奪い返され、DFや円堂の活躍により何とか失点を回避するの連続だ。

 

鬼乃子「アハハハッ!!最っ高!!私ってさァ!あんまりにも強いからコレまで一度も体力切れを起こしたことがないんだけどさァ!!息が上がるとこ〜んなに苦しいんだね!!!」

 

雷牙「ハッ!!同感ッ!!ココまで色んなヤツと戦ってきたが、こんなに体力を削られたのはオメーさんで3人目だよッ!!!」

 

 イナズマジャパンにとって幸運だったのは鬼乃子の弱体化だった。“兆”に覚醒した雷牙との激闘の影響により大きく体力を削られた鬼乃子は、今では“ゾーン”を発動した雷牙1人で何とか抑えられる程度までパワーが減少している。

 

 だが、それもいつまで続くかは分からない。現に鬼乃子のパワーは時間経過と共に回復しており、雷牙本人もそろそろ自分1人では抑えられない領域まで来ている事を察している。

 

 恐らくタイムリミットは残り数分。この数分で“カテナチオ・カウンター”を破りライトを突破出来なければ、再び“鬼”による蹂躙が幕を開けるだろう。

 

鬼道(考えろ…!この世界に“絶対”や“完璧”なんてものはない…!必ずどこかに穴がある筈だ…!)

 

 タイムリミットが数分に迫っている中、鬼道は中々攻め切れない現状に焦りが膨らみ続けていた。

 

 鬼道にとってこの試合は最早、単なる消化試合ではない。長きに渡った影山との因縁の一つの決着であり、偉大なる師を超える為の試練でもあるのだ。

 

フィディオ「来たぞッ!“カテナチオ・カウンター”!起動ッ!!!」

 

 影山零治の意志とも言えるタクティクスが鬼道に襲い掛かり、彼の周囲に鍵が掛けられる。

 

鬼道(稲魂のお陰でこのタクティクスの弱点は見抜けた…。だがそこに至るまで道…謂わば“合鍵”はまだ見つけられていない…)

 

 雷牙によって露呈した“カテナチオ・カウンター”の弱点。それはこの技もまたカウンターに弱いという事。

 1人の選手に対し7人もの人員を割かなければならない都合上、どうしてもディフェンスが薄くなってしまう。

 しかし、それはあくまで突破後の話。鬼道の卓越した戦術眼を以てしても、閂の鍵を開ける“合鍵”の存在を見つけ出す事は未だに叶っていない。

 

鬼道(クッ…!ならば…!!)

 

 鍵を閉められた事で、暗闇の迷宮に閉じ込められているような感覚に陥る中、“怪物”が見せた脳筋の極致としか言えない特殊な“合鍵”に唯一の光を見出した鬼道は、ボールを3つに分裂させる。

 

鬼道「“超イリュージョンボール”!!」

 

ダンテ「しまった…!どれが本物なのか分からない…!!」

 

 3つに分裂したボールにより自身に襲い掛かったダンテを惑わす事に成功した鬼道は僅かに空いた隙間に向かって走り出すが、彼の前に純白の閃光が走る。

 

フィディオ「そこだッ!!」

 

鬼道「クッ…!」

 

 “怪物”の合鍵に僅かな希望を見出した鬼道だが、希望も虚しくフィディオによってボールが奪われ攻撃権がオルフェウスに移る。

 

鬼道(クソ…!俺には……“カテナチオ・カウンター”を…総帥の意志を超える事は出来ないのか…?)

 

 悉く思いつく限りの策を潰される現実を前に鬼道は、心の中で完結しているとはいえ、彼らしくもない弱音を吐いてしまう。

 

鬼道(次があるなんて甘い考えは止めろ鬼道有人!!俺は“今”総帥に勝たなきゃ意味がないんだ…!)

 

 フィディオによって影山は過去の呪縛から解き放たれた今、恐らく彼はこの試合が終われば過去の罪を償うべく警察に自首するだろう。

 そうなれば決勝リーグでオルフェウスと再度当たったとしても、その試合の監督席には影山は居ない。つまりは今、この瞬間だけが師と勝負出来る最後のチャンスなのだ。

 

 だが……

 

鬼道(駄目だ…!何も浮かばない…!)

 

 帝国にて影山から教えられた全ての技術、師の手元を離れ雷門にて新たに得たイナズマ魂…自身がこれまでの人生で培った“全て”を以てしてもまだ師には届かない。

 

鬼道(俺は……俺じゃあ総帥を超える事は出来ないのか…?)

 

 諦めたくない。でももうどうする事も出来ない。“奮起”と“挫折”が入り混じる複雑な感情に苛まれた鬼道の視界は、徐々に闇に覆われていった。

 

ーー鬼道よ。それがお前の“サッカー”か?

 

鬼道「ッ!?この声は…!」

 

 その時、あの男の声が脳内に響く。

 

 我に帰った鬼道は周囲を見渡すと、彼は先の見えない闇に覆われた空間に居た。

 彼の前に居るのは、鬼道がよく知る影山零治その人。

 この影山零治は鬼道の弱さが作り出した幻影なのか、それともオルフェウスのベンチに座るミスターKの精神が自身と共鳴した存在であるかは分からない。

 それでも、影山は闇の中で真っ直ぐ鬼道を見つめていた。

 

ーー貴様が追い求める“サッカー”とは私を否定した先にある物ではなかったのか?

 

鬼道「ああそうだ…!だから俺は貴方の元から離れた!!俺はその選択に後悔などない!!」

 

ーーだが結果どうだ?現に貴様が雷門で得た物を使っても、貴様は私に勝てないではないか?

 

鬼道「それは…!」

 

 影山の言葉に対し言い淀んでしまう鬼道だが、何故ハッキリと影山の言葉を否定出来ないのかは自分でも分からない。

 

 鬼道は影山の手元から離れた事で更に成長した。雷門イレブンの一員となった事で帝国では得られない物を得る事が出来た。それは否定しようもない事実だ。

 

 だが、何故そこで得た物を言葉に表せない?確かに自分が得た物はその胸にしっかり刻まれている筈なのに。

 

鬼道「俺は…俺は……!」

 

ーー案の定…か。私が思うに、貴様が言葉に詰まっているのは、貴様が雷門で得た物の“本質”を掴めていないからだ。

 

鬼道「本質…?」

 

ーー初心に帰れ鬼道。貴様のゴーグルは何の為にある?…それが私の師としての最後の教えだ。

 

 師としての最後の教えを言い終わると影山は姿を消し、闇の空間に鬼道は1人取り残される。

 

 再び孤独となってしまった鬼道は、自身のトレードマークであるゴーグルをそっと触る。

 

 左右の視界を塞ぎ正面を見る事に特化したこのゴーグルをつけ始めた当時は、死角への対処にそれは苦労したものだ。

 

佐久間『でも、雷門に居る方がお前は自分を出せてる気がするんだ。お前が存分に実力を発揮出来る場所を見つけられた事を、俺は嬉しく思うよ』

 

 刹那、聞こえてくるのは人生で初めて自身の隣を走る事を許した友の声。

 

円堂『俺、ずっと思ってたんだ!こいつと一緒にプレーできたら楽しいだろうなって!練習試合で初めてお前のシュートを受けた時からずっとさ!』

 

 刹那、聞こえてくるのは人生で初めて自分以外にキャプテンマークを託し、背中を預けたキャプテンの声。

 

 それこそが鬼道が得た物の答えだった。

 

 彼は周囲を見回す。そこに居るのは円堂と佐久間だけではない。

 

 問題児ながらもイナズマ魂を体現する雷牙が

 

 口数は少なくとも心の奥底に熱いハートを秘め幾度となくピンチを救ってくれた豪炎寺が

 

 最初こそ敵だったが、今では互いに能力を認め合い切磋琢磨出来る間柄となった不動が

 

 そして仲間達が居た。

 

鬼道「そうだ…!答えはすぐ側にあった…!俺は1人なんかじゃない…!俺には仲間が居る…!それが俺が得た物の答えだッ!!」

 

 自分1人で何か為そうすれば必ずどこかで限界が来る。だが、仲間が居れば限界はない。

 自分に出来ない事は円堂が、円堂に出来ない事は雷牙が、雷牙に出来ない事は豪炎寺が……常に助け合い、時には衝突しながらも共に成長する。

 それこそが雷門で得た鬼道有人の“サッカー”なのだ。

 

鬼道「ありがとうございます総帥…。俺は…最後の最後まで貴方に頼りっぱなしの不肖の弟子だったのかもしれません…。けど、これが最後です。もう俺は貴方の手を借りません。俺は…仲間達と共に貴方を超えさせてもらいます!!」

 

 その言葉とともに闇が砕け散り、鬼道は果てない闇から飛び出す。

 意識が飛んでいたのは数秒そこらだろう。その数秒はあまりに致命的だ。それを示すように鬼道が意識を取り戻した時には、既にペナルティエリア内に“軍神”が顕現していた。

 

 だが、不思議と鬼道の表情に焦りはない。ゴーグルの奥底にある信頼に満ちた目で彼のキャプテンを一瞥すると、即座にマントをはためかせ前を向く。

 その目が捉えるのはただ1つ…。イタリアのゴールを守護する“怪物”の息子だ。

 

フィディオ「ココで確実に点を取る!!“終極の…!グングニル”!!!」

 

 この試合をより終極へ近づかせる為に、フィディオの右脚から放たれた“軍神”の神槍は、神速と呼べる速度を以てDFがブロックに入る隙も与えずに光の槍となり円堂に迫る。

 

雷牙「オイ守ゥ!!!まさか負けっぱなしで終わりじゃねェよなァ!!?俺はあんだけ底力を見せたんだぜ!?オメーさんの底力…俺達に見せてみろォ!!!」

 

 遥かに前方にて誰よりも満身創痍ながらも1人で“鬼”を抑えつけている“怪物”からの激励が飛ぶ。それに続き仲間達も1人また1人と円堂の名を呼ぶ。

 

円堂「へへ…!ありがとなみんなっ!!ゴールは俺に…!ズババーンと任せろォォォ!!!」

 

 “怪物”の口癖を真似た円堂は膨大なオーラを放出し“魔神”を顕現させる。三度顕現した“魔神”だが、その身体はこれまで“魔神”よりも数倍の巨体を誇り、体表からは虹色のオーラが流れている。

 

円堂「行くぞフィディオッ!!これが俺のぉ…!全力だァァァァ!!!」

 

 仲間達の想いを受け取った虹色の拳を握り締めた円堂は、左脚を天高く上げると間髪入れずに勢いよく地面を踏み込み拳を突き出す。

 本体の動きにシンクロした“魔神”の同じく虹色の輝く鉄拳を一切躊躇せず、神槍の刃先へ激突させる。

 

円堂「“グレイトテスト…!フィストォォォ”!!!」

 

ズゥン!!!

 

 “魔神”の鉄拳が炸裂したと同時に豪雷を思わせる凄まじい爆音が、スタジアム内に鳴り響く。

 先程は一切の抵抗も許されずに貫かれるだけだった“魔神”…。しかし今度は見事に神速に追いつき、完全に神槍を受け止めている。

 仲間達の想いを受け急成長を遂げた“魔神”の拳は、今度は逆に神槍に亀裂を入れ、数秒の拮抗の末に完膚なきまでに神槍のオーラを粉砕した。

 

円堂「でぇりゃぁぁぁぁ!!!」

 

 オーラを粉砕した円堂の拳は、ボールを前方へと殴り飛ばす。その終着点に居るのは、紅のマントをはためかせ丸型のゴーグルを着用した日本最高の天才ゲームメイカーだ。

 

 胸でトラップした瞬間、鬼道の身体に稲妻のような衝撃が走る。それは仲間達の想いその物だ。

 鉛のような重さがダイレクトに伝わり、全身に稲妻のような痛みが走っても、鬼道はその全てを受け入れた。

 

アンジェロ「みんなっ!!フィディオが戻って来るまで時間を稼ぐんだ!!」

 

『おおっ!!』

 

 この期に及んで笑みを浮かべる鬼道に対し何か良くないものを感じ取ったのだろう。

 “カテナチオ・カウンター”で確実にボールを奪う為に、オルフェウスの選手達は死の物狂いで時間を稼ぎキャプテンの帰還を待つ。

 

フィディオ「ありがとう皆ッ!ようやく追いつけた!!」

 

 鬼道の奮戦も虚しく、流星の如きスピードで中盤まで戻って来たフィディオを起点に、鬼道の周囲に堅固な鍵が掛けられる。

 

「「「「「“カテナチオ・カウンター”!!!」」」」」

 

 オルフェウスの最強にして、影山零治最高傑作とも呼べる至高のタクティクスが鬼道に炸裂し、逃げ道を完全になくす。

 だが、鬼道は怯まない。焦る事なくそっと一息深呼吸を行うと、フィディオに向かって走り始めた。

 

フィディオ(なっ…!?自分から俺に向かって来た…!?コレはキドウの罠か…!?…いや!例え俺が抜かれてもまだダンテやオットリーナも居る…!ココは躊躇せずに攻め込むべきだ!)

 

 無謀とも言える鬼道の行動に一瞬の罠を疑ったフィディオだったが、自分1人が抜かれた程度ではこのタクティクスは破れないと結論付け、鬼道へ立ち向かう。

 

鬼道「……そこだッ!!」

 

フィディオ「は、速い!?」

 

 吹っ切れた事で更にプレーにキレが増した鬼道は、フィディオと同等以上のスピードを以て彼を抜く。

 それでも、この展開は既にフィディオも予測済みだ。即座に後方で待機していたダンテが鬼道に迫り、ボールを奪わんとチャージを仕掛ける。

 

 だが、彼らは失念していた。鬼道は1人ではない。彼には仲間が居る、そしてそこには古くから苦楽を共にした友も居る事に。

 

鬼道「行くぞッ!佐久間!不動!!」

 

フィディオ「なっ…!いつの間に…!?」

 

 鬼道の号令を合図に、彼の背後から佐久間と不動が左右に分かれて飛び出す。

 何もタクティクスは1人で破らなければならないというルールは存在しない。1人で無理なら2人、2人で無理なら3人で破ればいい。

 単純であるが故に盲点だったこの作戦こそが、鬼道が辿り着いた師を超える方法だった。

 

 如何にオルフェウスでも屈指の巨漢であるダンテを以てしても、3人による華麗なワンツーパスに対応する事が出来ず、あっさり抜かれてしまう。

 最硬の壁さえ超えてしまえば、前にはディフェンスは居ない。その代わりに残るはもう一つの最硬の壁。

 

ライト「絶対に止めるっ!!“雷星拳牙…アレッ!?」

 

 確実にシュートを止める為に化身を発動しようとしたライトだったが、“ファミリア”の連発により化身を使える体力が底を尽いてしまった事で、化身というアドバンテージが完全に崩壊してしまう。

 

鬼道「これが最大のチャンスだッ!!絶対に決めるぞッ!!!」

 

佐久間「俺達の力…見せてやる!!!」

 

不動「ヘッ!力みすぎてシクんじゃねぇーぞ!佐久間!!」

 

 三人は同時にボールごと跳び上がり、最高地点へ到達すると鬼道が指笛を響かせる。その音色が合図となり現れた紫色のペンギンたちが彼らの周囲を飛び回り始め、闇色の渦を空中に形成する。

 

鬼道&佐久間&不動「「「“皇帝ペンギン3号G3”!!!」」」

 

 3名の踵落としにより放たれた最強の“皇帝ペンギン”は紫の魔弾と化し、ライトに迫る。

 化身という最強のアドバンテージこそ失ったものの、通常の必殺技を使う余裕はまだある。

 体制を整えたライトは、その左手に翡翠色の“獅子王(レグルス)”を宿すと、勢いよく地面へ振り下ろし完全に実体化させる。

 

ライト「“ゴッドハンド・レグルスG3”!!!」

 

 ある意味原点回帰。ライトの左手にシュートが、“獅子王(レグルス)”の牙にペンギン達の嘴が突き刺さる。

 両技の威力は完全に拮抗。3人による連携技を以てしてもなお互角に立ち回るライトの規格外さが分かるが、単独(ひとり)では必ず限界が来る事をライトは誰よりも知っている。

 

 すると、ペンギン達はドリルのように高速回転を始め、獅子王(レグルス)の牙に自分達の嘴を更に深く刺さる。

 次第に獅子王(レグルス)の牙に亀裂が入り始め、ライトも我慢の限界を迎えてしまい、耐え切れなくなっていく。

 

ライト「ニギ…!ウワァァァァァァ!!!」

 

 必死の抵抗を虚しく、獅子王(レグルス)は紫のペンギン達に屈してしまい、紫の魔弾がゴールネットに激しく突き刺さった。

 

ピーッ!!!

 

マクスター『ゴーールッ!!!ヒロトに引き続き、今度はキドウ、サクマ、フドウによる連携シュートがライトの“ゴッドハンド・レグルス”の無失点記録を破ったぞーーッ!!!コレにてイナズマジャパンの得点は3点!遂に同点に並んだーーッ!!!』

 

 前半戦の苦戦が嘘のように怒涛の追い上げを見せるイナズマジャパンの活躍に会場内の熱気は一気にヒートアップする。

 鬼道は1人フィールドの外に居る影山に視線を移し目線で何かを訴える。当然、そこに言葉はない。しかし、歪な形ながらも師弟の絆で結ばれた者だけが理解出来る“何か”がそこにあった。

 

鬼乃子「あ〜…遂に追いつかれちゃったか〜…」

 

 スコアボードに表示された2つの『3』の数字を見た鬼乃子は、やや呆れ気味な声色で1人佇む。

 されども、その表情に“悔しさ”や“失望”といった感情はない。そこにあるのはその逆…“喜び”だけだ。

 

鬼乃子「さーてと!!()()()()()()()()()〜?」

 

 両手を軽く握っては戻すを繰り返し、自身の現状を確認した鬼乃子は機は熟した…そう言わんばかりに、一気に気を放出する。

 

『ッ…!?』

 

 刹那、再び直径100m以上の広さを誇るスタジアム全域を、突き刺さるような威圧感(プレッシャー)が包み込む。

 

雷牙「ケッ…!充電期間(サービスタイム)はアレで終わりってワケかい…!!」

 

 皆があまりのプレッシャーにより言葉を発する事すらも憚られる中、雷牙は冷や汗混じりに得意の軽口を叩き、復活した“鬼”に視線を向ける。

 

鬼乃子「こう見えても〜私って好きなモノは最後にとっておくタイプなんだよね〜☆残り時間もあと少しだし!今度こそ決めようよ!!私とアンタ!どっちが本当の“怪物(サッカーモンスター)”に相応しいかをさァ!!!」

 

雷牙「……」

 

 強烈な威圧感と共に荒々しく黄緑色のオーラを立ち昇らせ宣戦布告をする“鬼”とは対照的に、“怪物”は何の感情も揺さぶられていないように冷静だった。

 

 自身に襲い掛かる殺気すらも感情を律する事で受け流し、心の奥底から沸々と湧き上がる闘争心の炎すらも燃料へと変換した“怪物”は、限界を超えた更にその先に存在する“地平線(ホライゾン)”を前にする。

 

雷牙「いいぜ…!もうココまで来たら出し惜しみは無しだ…!!感情すらも薪にくべて…!絶対ェオマエに勝ってやる…!!!」

 

 互いに最高到達地点(ゼンリョク)に達した“怪物”と“鬼”による、真の“ 怪物(サッカーモンスター)”の座を賭けた最終決戦がここに始まる…。

 

 果たして真の“怪物(サッカーモンスター)”へ至るのは“怪物”か?“鬼”か?それとも……




フィディオのシュートを止めた虹色の“グレイト”ですけど、別にグレイトが進化した訳じゃないです。
実際大幅にパワーアップしてますけど、どちらかと言えば、原作にもある限界まで強化された技の特殊演出って感じです。
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