イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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祝!!!イナヒロ1周年!!!ここまで続けてこれたのも読者の皆さんの応援のおかけです!!!世界編も終盤に差し掛かってるので頑張っていきますよ〜!!!


冬の蕾、開花する時

『引き続きニュースです。先日オルフェウスの監督を辞任したミスターKの死亡事故はその不可解さから様々な憶測を呼んでいます』

 

雷牙「…因果応報とはまさにこの事だな…」

 

 影山が死んだ。それも皮肉な事にアイツがコレまで数多くの人間の命を奪ってきたやり方で。

 

 言っとくが俺はアイツに同情したりなんかしねェぞ?ハッキリ言って影山は外道だった。

 サッカーに勝つ……ただそれだけの為に罪もねェ人達の命を平気で奪うようなヤツだったんだ。トラックに轢かれようが、夜道の後ろからナイフでグサッと刺されようが、それは因果応報以外のなにモンでもねェ。

 

 …けど、唯一擁護すんならこの間のイタリア戦…。あの試合だけアイツは違った。

 フィディオが“カテナチオ・カウンター”を完成させて以降の影山は明らかに今までの外道じゃなくて、純粋にサッカーを愛する戦士だった。

 信じられるか?今まで本拠地の奥で引きこもってばかりだった影山が、ベンチからバンバン指示を出してたんだぜ?

 俺からしてみりゃあ、ツチノコが網にかかってるくらいの衝撃だぜ?

 

 …多分、最後の最後でやっと思い出せたんだろうな。自分は本当はサッカーが大好きなんだって。

 それでヤツの罪が消えるワケじゃねェが、死んだ人達の魂もちったァ報われるってモンだろ。

 

 ・・・となるとだ。今、1番しんどい事になってそうなのは…

 

雷牙「やっぱ鬼道だよな〜…」

 

 俺の脳裏に浮かぶのは、イタリア戦が終わった後の鬼道と影山との最後の会話。

 

鬼道『ゴーグル(これ)は今後も付けさせてもらいますよ。これは俺のトレードマークなんでね』

 

 FF予選決勝以来に鬼道の素顔を見たけどよ〜…。鬼道ってマジで音無と似てねェよな。本人に言おうもんなら、文字通り鬼のような形相でボコボコにされそうだから言えねェけど。

 なんでも音無に曰く、鬼道は父親似で音無は母親似なんだとよ。それにしても限度がある気がすっけど。

 

 …おっと話が逸れちまったな。要するに…だ。俺が危惧してんのは、最後の最後でようやく分かり合えて師匠が死んじまった事で、鬼道のメンタルにでけェダメージを負ってないかって話だ。

 アイツは太々しそうに見えて意外と繊細なとこがあるかんな〜。…まっ!そこらへんは守やら佐久間やらが上手い事フォローしてくれんだろ!

 

 え?さっきからやけに他人事のみたいに話してるけど、何で俺が鬼道の動向を把握してないのかだって?

 

 HAHAHA!!!そりゃそうだよ!!だって今俺が居るのは……

 

「コラ!筋トレなんかしちゃ、ダメでしょイナタマ君!先生から安静にしてなさいって言われたんだから!!」

 

雷牙「へいへ〜い…。すいやせ〜ん…」

 

 病院だし。

……………

…………

………

……

医者「1週間程度、検査入院をした方がいいでしょう」

 

雷牙「・・・は?」

 

 イタリア戦が終わった後、力を全て使い果たして一歩も動けなくなった俺は、念の為に響木監督に付き添われて病院で検査を受けに行った。

 んで、お医者さんからの第一声がコレってワケ。

 

医者「アナタがどんなマジックを使って、あんな高度なプレーを可能にしたかはあえて聞きませんが、限界を超えたプレーにより筋肉がかなり衰弱しています。今のアナタは寝ているだけでもそうとうキツい筈では?」

 

雷牙「いや〜…そんな事ないっスよ〜…?もうある程度動けるまd(コツン)ムゴァァァ!?!?!?」

 

響木「強がるな稲魂。今の肉体ではまともにサッカーが出来ない事は、お前自身が1番良く分かってる筈だろう?」

 

 こんの…性悪鬼畜ジジイ…!だからって身体を触る必要はねェだろーが…!軽く触られただけでも筋肉痛がヤベェんだからよォ…!

 

医者「幸い骨や筋には何一つ異常は見られませんし、1週間程度入院して安静にしていれば問題なく復帰出来るでしょう。絶対に安静していればね」

 

 無理だって…。稲魂雷牙って人間はマグロみてーに何かをしていなきゃ生きてられねェ人間なんだから、絶対安静だなんてしたら死んぢまうって…。

 

響木「…そんな今にも死にそうな顔をするんじゃない。別に決勝リーグまでまだ時間はあるんだ。1週間、練習が出来ないのは苦しいかもしれんが、今は我慢しろ」

 

雷牙「へ〜い…」

……

………

…………

……………

 

 …で今に至るってワケ。

 いや…もう入院して3日くらい経つけどさァ…。マ〜ジで初日は大変だった…。だって、重度の筋肉痛のせいで箸すらまともに持てなかったんだぜ?思春期の中学生が看護師さんに飯を食べさせてもらうのがどれだけ苦痛だった事か…!

 

 …けど!それも今日で部分的に終わり!何せ、や〜っとある程度は身体を動かせるようになったんだかんな!!あまりの回復の早さに医者もビックラこいてたし、俺ちゃんの回復能力(ヒーリングファクター)に感謝感謝ッ!!

 

雷牙「…つっても暇なモンは暇だぜ…。ーー!!! そうだ!やっと動けるようになった事だし、病院内の散策でもしよっかな〜!となれば…善は急げだッ!いざ行かんッ!!!」

 

<数十分後>

 

雷牙「な〜んにも面白ェモンなかっな〜…」

 

 数十分であらかた病院内を探索し終えた俺は、大きなため息を吐きながら、中庭のベンチに座り込んでた。

 ココの病院は稲妻総合病院よりもデケェから、何か面白そうなモンの1つや2つでもあると思ってたが、ビックリする程何も無かったな…。…いや、そもそも病院に面白ェモンを期待する方がおかしかった…のか?

 

???「あ〜〜!!!そこに居た!!!探したぜ雷牙!!!」

 

 あ〜ん?この落雷の音みてェにやかましくて、オレンジ色のバンダナがよく似合う元気いっぱいの声は…

 

雷牙「んだよ?そんなに俺に会いたかったのかい?サッカーのマ・モ・ル・君?」

 

円堂「え?そりゃ当たり前だろ?だって雷牙は俺の仲間で親友なんだからさ!!」

 

 Oh〜!皮肉を言った本人の良心が痛む、一切の曇りなき純粋かつピュアな目〜!守は相変わらず守だネ〜!!

 

円堂「ビックリしたぞ!病室に行ったらお前が居なかったんだからな!もう動いて大丈夫なのか?」

 

雷牙「知〜らね。暇で死にそうだったから気分転換に散歩してただけだし。当然、医者の許可は取ってない!」

 

円堂「あはは…。雷牙らしいな…」

 

 安いモンさ。俺が暇から解放されるのなら、看護師さんの雷の1つや2つくらいな。

 

雷牙「…そういや、鬼道は大丈夫か?影山が死んじまった事で1番ダメージを受けてんのはアイツだろ?」

 

円堂「…確かに最初はすごく取り乱してさ…。けど、今は何とか立ち上がってるよ。本人曰く、『総帥が遺したサッカーを受け継ぎ、日本を世界一に導くのが俺の務め。だからいつまでもこんな所で立ち止まって訳にはいられない』ってさ」

 

 そっか…。暫くは影山の件を引きづるかと思ってたが、意外と早く立ち直ったみてーだな。…アイツは着実に成長していってるってこった。

 

雷牙「そりゃあ良い事だ。…けど、強がってるだけかもしんねェから油断すんじゃねェーぞ?…って、オマエさんには釈迦に説法だな」

 

円堂「??? よく分かんないけど…。とりあえずありがとう?」

 

 おっと、サッカーの守君にゃあこの諺はまだ早かったかな?頭の上に大量の?マークを浮かべてら。

 

円堂「…実はさ、今日雷牙のお見舞いに来たのはもう一つ理由があるんだ…」

 

 あン?んだよ急に改まって。…もしかして遂にふゆっぺに告白でもすんのか?いや〜…そういう事は俺じゃなくて風丸か吹雪あたりに話した方がi……

 

円堂「……フユッペが倒れた」

 

雷牙「……マジ?」

 

 俺が知る限りじゃ、あの日以降ふゆっぺの体調に問題はなかった筈だ。例え隠していても監督が見逃す筈がねェ。…つまり、アイツが倒れたって事は…。

 

雷牙「昔の記憶を取り戻しかけたって事か…?」

 

円堂「ああ…。影山の事故死のニュースを見た瞬間さ…。急に様子がおかしくなって、この間みたいに親の名前を呼びながら倒れちゃったんだ…。今はここで入院してる…」

 

 …多分、幼馴染が苦しんでいるのに何も出来ねェ自分自身に対して腹が立ってるんだろうな。守は俺に初めて見せる複雑な表情をしてる。

 

円堂「…俺、フユッペの過去を聞いてからずっと自分に何ができるか考えてたんだ…。けど、どんなに考えても答えは見えてこない…。初めてなんだよ…どんなに努力しても、どんなに考えても…。ぜんぜん答えが見えてこない問題なんて…」

 

 …確かにコレはどんなに努力を積んでも、そう簡単に答えを出せる問題じゃねェ。それは俺自身が1番良く分かってる。

 自分がフユッペの側に居続ける事で、余計に本人を苦しめてるってならなおさらだ。

 

雷牙「…悪ィな守。俺でもこの問題に関してはどうする事も出来ねェ…。コレはふゆっぺ自身の戦いでもあるんだ。俺らが出来るのは本人が最善の選択を選べるように支える…それだけだ」

 

円堂「分かってる…!それは分かってるんだよ…!けど…!ただフユッペが苦しんでいるのを見ているだけなんて、俺はできない…!!」

 

雷牙「守…」

 

 …初めてだな、守がサッカー以外でココまで悩むなんて…。それだけアイツにとって、ふゆっぺへの想いは大きいんだろうな。

 

雷牙「…取り敢えず今日はもうココでお開きだ。この問題にピリオドを打つには俺らにも時間が必要だ」

 

円堂「そうだな…」

 

雷牙「んなシケた面すんなよ!決勝リーグまで残り少ねェんだぜ!?そんな大切な時にキャプテンのオメーがそんな顔しててどうすんだよ?」

 

円堂「…へへっ!そうだな!キャプテンである俺がしっかりしなきゃ、勝てる試合も勝てないからな!!じゃあな雷牙!もしもフユッペに会ったらよろしく言っといてくれ!!」

 

雷牙「おうよッ!!またな守!!」

 

 …うっし、取り敢えず第一関門は突破だな。とりま守のメンタルは回復させた。しばらくは守は大丈夫だろうが…やっぱ、ふゆっぺの問題は早々に解決出来ねェとどっかでつまづきそうだな…。

 

 けど、俺に何が出来るよ?俺にはふゆっぺと大した付き合いはねェし…。こーゆー話題には不慣れだから、守ほど深く寄り添う事も出来ねェ…。

 

雷牙「…けど、何もしねェ理由にはなんねェよな」

 

 守がアレだけ惚れ込んだ女なんだ、アイツが本気で心配して救いたいと思ってる…それだけで俺が動く理由には十分だ。

 

♢♢♢

雷牙「よっ!ほっ!はっ!」

 

医者「信じらない…!アレだけ酷く筋肉が疲弊していたというのに、もう完全に回復している…!」

 

 円堂と別れてから早2日。医者の絶対安静の命を破り、度々病室から抜け出していたにも関わらず、“(ビフォアー)”の副作用により酷く疲弊していた筋肉は完全に回復。完璧なコンディションを取り戻していた。

 

雷牙「う〜ん!やっぱり健康ってすんばらし〜!!どーよドクター?数日前の死にかけ雷牙サンは、今や完全復活!完璧(パーフェクト)雷牙サマにグレードアップしてるだろ〜?」

 

医者「い、言っている意味はよく分からないが…君が完全に回復しているのは確かだ…。いや…だが、アレだけ筋肉を酷使してのに、こんな短期間で回復が可能なのか…?

 

 どうも担当医は、雷牙の常人を超えた回復力に納得がいっていないようで、ブツブツと独り言を呟き目の前の現実を受け入れられていない様子だ。

 

医者「…レントゲンにも異常が見られない以上、現実を受け入れるしかないのだろう…。けど!君は決勝リーグ進出チームの一員だから、念には念を入れてあと1日だけ入院してもらうよ。いいね?」

 

雷牙「オーケー!オーケー!変に心配されて引き止められるくらいなら、1日の検査入院くらい飲み込んでやるっすよ〜!!んじゃ、ありがとうございやした〜!」

 

 担当医から1日待てば退院の言質を取った雷牙は、上機嫌で診察室から飛び出し、住み慣れた病室へ向かう。

 

雷牙「フンフ〜ン♪フフフンフ〜ン♪」

 

 余程、試合前に回復が間に合った事が嬉しいのだろう。まるで宝くじの一等に当選したかのように上機嫌で鼻歌を歌いながら、スキップをする様は世界一のラッキーマンだ。

 

???「随分と上機嫌じゃない。そんなに嬉しい事でもあったのかしら?」

 

雷牙「当っ然!!!何せ次からは決勝リーグだかんな〜!オルフェウスとリベンジするチャンスもあるし喜ばずにはいられ…ん?」

 

 あまりに自然に挟まれた声に雷牙は遅れて違和感を覚える。確かにその声は聞き馴染みのありすぎる高飛車かつ料理がド下手なお嬢様しか出す事の出来ない声だ。

 だが……彼女は現在、絶賛海外留学の途中である筈だ。行き先こそは知らないが、少なくともこんな島国のましてや病院内で彼女の声が聞こえる事などまずあり得ない。

 

雷牙「いやははは…まさかな…。流石に幻聴だろ…。ココ最近、疲労のせいでサッカーが出来なかったから、ストレスが溜まって聞こえる筈のない声が聞こえてんだろ…」

 

???「へー?ならどうして冷や汗をダラダラ流しながら、首をコッチに向けないのかしら?」

 

 幻聴だと思い込みたかった声から、直接否定された事で雷牙の中にあった嫌な予感が確信に変わる。

 別に彼女と会う事自体が嫌なワケではない。だが、自分が病院(ココ)で数日ほど入院しなければならなかった原因があまりにもマズいのだ。

 

 それでも彼は知っている。彼女は決して気が長くない事を、そして今逃げ出そうものならばその財力を使って徹底的に自分を追い詰める事を。

 

???「3秒だけ時間をあげるわ。その間に覚悟を決めらなかったら…分かってるわね?」

 

 後ろの少女の低い声により遂に覚悟を決めざるを得なくなった雷牙は、恐る恐るゆっくりと視線を後ろに向け、見たくなかった現実を直視しなければならない。

 

 そこに居たのは当然……

 

雷牙「アハハハ…。お久しのぶりでございますな…夏未お嬢様…」

 

夏未「そうかしら?私としてはそこまで久しぶりな気はしないけどね。稲魂君」

 

 海外留学中である筈の雷門イレブンのマネージャー、雷門夏未であった。

……………

…………

………

……

 

夏未「いい?アスリートにとって身体は何よりも大切な財産なのよ?そ・れ・な・の・に!なによこの間のあのプレーは!!あんな無茶に無茶を重ねるようなプレーをしてたらあなたのサッカー人生はすぐに終わりを迎えるわよ!!!」

 

雷牙「はい…。マジで反省してます…。いや…マジで…」

 

 現在、雷牙は病室のベット上で正座をさせられ、夏未から説教を受けていた。

 説教内容は当然、先日のオルフェウス戦にて雷牙が魅せた自殺行為としか言えない無茶の数々。

 そうする事でしか鬼乃子に対抗出来なかったと言い訳しても、彼女の怒りは収まらない。“怪物”の異名を持つ雷牙でも彼女の怒りの前には、ただただひれ伏し、嵐が過ぎる事を待つ事しか出来なかった。

 

夏未「…まっ、今日のところはこれくらいで許してあげるわ」

 

雷牙「や…やっと…終わった……ガク…」

 

 数時間に及んだ説教と正座により、足の感覚がなくなった雷牙は魂が抜けたようにベットに横たわり、動けなくなってしまう。

 

雷牙「…って!何でオマエがココに居んだよ!?オメーは今、留学中の筈だろーが!!」

 

夏未「あぁ留学(あれ)?嘘よ」

 

雷牙「嘘ォ!?!?!?」

 

 あっけらかんと海外留学の件を嘘だった暴露された事で、余計雷牙は混乱してしまう。彼からすれば、留学に行かないのなら別にイナズマジャパンのマネージャーとして残っても問題はなかったのだから。

 

夏未「…本当はね、お父様に頼まれて()()調()()に行ってたの」

 

雷牙「ある調査ァ?…もしかして影山絡みか?」

 

 雷牙が知りうる限り、夏未の父である雷門総一郎が娘を海外に行かせても調査を頼む事など、影山関係しかない。

 

夏未「当たらずとも遠からず…ってところね。…あなたはこの手紙に見覚えはあるかしら?」

 

雷牙「コレって…!」

 

 夏未がカバンの中から差し出したのは、ある手紙のコピー。A4サイズのノートの切り端いっぱいに書かれているのは、これまで何度も自分達の危機を救ってきた秘伝書に書かれた文字と同じ文字。…そして、そのコピーと同一の物を既に彼は見ている。

 

雷牙「円堂大介からの手紙…!?」

 

 そのコピーは、韓国戦の直前にて匿名で送られて来た、40年前に死亡した筈の円堂の祖父、大介が書いたと思わしき手紙と同一の物だった。

 

雷牙「まさか…!コレを送って来たのって…!」

 

夏未「ええそうよ。私よ」

 

 夏未の肯定により、今まで真偽が不明だった大介の手紙がより一層信憑性を増す。何故ならこれが示す事は……

 

雷牙「って事は…!マジで生きてるって事か…!?円堂のじいさん…円堂大介が…!?」

 

 手紙が本物であり、送り主が別に居る…それはつまり、何らかの事情で書き手が表舞台に出られないという事…。それこそ本人の死が偽装されているように。

 

夏未「…悪いけど、その答えは今は話せないわ…」

 

雷牙「あん…?意味分かんねェ…。答えられねェなら俺に話す意味がないだろうが…!!」

 

夏未「それは…!」

 

 何故か夏美は口ごもる。そもそも彼女は説教が終わってからどこか様子がおかしい。

 雷牙の言う通り、大介が生存している事を伝えるのならば、雷牙ではなく円堂に伝えるのが筋だ。にも関わらず、彼女は今答えを話せない話題を雷牙に伝えた、それは不自然に他ならない。

 

夏未「…本当にごめんなさい稲魂君。本当は…大介さんの事をあなたに話すつもりはなかったの…。あなたに話したい話題は他にあった…」

 

雷牙「んじゃあ、今言えばいいじゃねェか?別に俺は何が来てもモーマンタイだぜ?」

 

夏未「…けど、この話をするには私の()()()()()()()()…!だから…もう少し時間をちょうだい…!」

 

雷牙「ッ!?夏未ッ!?」

 

 これ以上、彼の前で嘘をつき続ける事に耐えきれなくなった夏未は、目尻に一粒の涙を浮かべながら、病室を飛び出す。

 雷牙も彼女を追いかけようとするが、未だに完治していなかった足の痺れにより悶絶してしまい、何とか部屋を出た時には既に夏未の姿はなかった。

 

雷牙「クソ…!んだよ…!!急に現れたと思ったら、どっかに行きやがって…!もう…情報量が多すぎて理解が追いつかねェっての…!!」

 

 大会の裏に潜む自分達に明確な悪意を持った“何か”、まるで仕組まれたかのように訪れた影山零治の死、再発する冬花のトラウマ、何かを隠す夏未……次々と現れる謎が謎を呼ぶ展開に、雷牙は苛立ちを隠せない。

 

雷牙「…もういいや。あの夏未嬢がアソコまで焦るって事は、よっぽどの事なんだろうぜ…。…気分転換に散歩でもすっか…」

 

 多くの謎が残りつつも、仲間を信じる事にした雷牙は気分転換の為に病室を出て散歩を始める。

 

 すると……

 

冬花「あれ…?稲魂君?」

 

雷牙「ふゆっぺ!?ふゆっぺじゃねェーか!!もう歩いて大丈夫なのかよ!?」

 

 偶然、意識を失っていた筈の冬花と出会う。

 円堂の話によれば、意識を失っていた間の彼女は目にハイライトが入っていなかったらしいが、今の彼女にはしっかりと光が灯っている。つまりは治療が無事成功したに他ならない。

 

冬花「う、うん…!ごめんね心配かけちゃって…。ここ最近、忙しかったから少し疲労が溜まっていたみたい…!」

 

 医者からそう診断されたのか、それとも雷牙を心配させまいと彼女自身でそう結論付け気丈に振る舞っているだけなのか、どちらにせよ冬花は雷牙に笑顔を見せてそう答えた。

 

冬花「そういう稲魂君ももう動いて大丈夫なの?あれだけ酷そうだったのに」

 

雷牙「ご心配なく!元気100倍ビンッビンよ!!!ドクターからのお墨付きを貰ってってからな!!明日にゃあ退院だ!!」

 

冬花「そっか…。よかった…!」

 

 自身もまた病人の身でありながらも、冬花は雷牙の退院を一切妬む事なく素直に喜ぶ。

 その優しさこそが、宇宙一のサッカーバカである円堂の心を惹きつけた要因なのだろう。

 

雷牙「…そういや、なんでふゆっぺはココに居るんだ?オマエさんの病室は確か個室だろ?確か個室って上の以降にしかなかったような…?」

 

冬花「少し気分が良くなったから気分転換に散歩に行ってきたらどうだってお父さんから言われたの。ここ数日、ベットの上に居たからこうやって体を慣らしておかないと、復帰したあとにみんなの迷惑になるから…」

 

雷牙「…そっか。俺も似たようなモンだ。けど、あんまり無茶はすんなよ?不調の身体に無茶させてぶり返したら元も子もねェーかんな!…まっ!俺も人サマの事を言えねーが

 

 冬花に変な責任感を与えないように、やんわりと無茶は禁物と警告するというらしくもない気遣いを見せた雷牙は、風船よりも軽い口が滑って彼女のトラウマを刺激させないように、そそくさとその場から立ち去ろうとする。

 

 しかし……

 

冬花「待って稲魂君!!…もしよかったら少し付き合ってくれないかな…?」

 

雷牙「付き合う…?」

 

冬花「…相談したいことがあるの」

 

……………

…………

………

……

雷牙「それで?相談って何だよ?」

 

 冬花から相談を受けた雷牙は、ここでの立ち話はなんだと言い中庭に移動していた。

 ハッキリ言って、彼女から相談を受けた時点で嫌な予感が止まらない。だからといって彼女の目を見ると拒否する気にもなれない。ここまで来れば後は運命に身を任せるしかない。

 

冬花「…稲魂君ってさ、お父さんとお母さんが事故で死んじゃったあと…どうやって立ち直れたの…?」

 

雷牙「・・・は?」

 

 あまりに突拍子もない冬花の問いに対し、雷牙は面を喰らってしまう。

 

『まさか記憶を取り戻したのか?』

 

 最悪の思考が脳裏を過ぎるが、見たところ今の彼女にはトラウマが再発している様子はない。

 

『じゃあどうして急にこんな質問を…?』

 

 恐らく表面上は何とか取り繕えているだろうが、脳内では?マークで埋め尽くされる雷牙の心情。だが、次の一言でその疑問は否定される事になる。

 

冬花「あ…!急にこんな質問してごめんね…!…けど、本当は気づいてるの。私がよく気絶しちゃうのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…」

 

『そんな馬鹿な』

 その6文字が雷牙の喉奥から込み上げるが、何とか飲み込む事に成功する。

 

冬花「私が小さい頃…お父さんのチームの試合を見に行ってる時に、お母さんが交通事故に遭って死んじゃってね…。幼かった私は何日もご飯が食べれなくなるくらい落ち込んじゃったの…。けど、お父さんのおかげでなんとか立ち直れた…」

 

 彼女が失ったのは母親だけじゃなくて父親もだ。それも彼女の目の前で。だが、彼女には嘘をついているようには見えない。これが意味するのは……

 

雷牙(催眠療法の影響…ってワケか…?いや、だとしてもおかしいぞ…?)

 

 両親の死の記憶が、催眠療法により改鋳されている事に納得するも、同時に違和感も覚える。

 何せ、彼女が催眠療法を受けたのは過去を忘れる事でトラウマをなかった事にする為…。だが、身内に不幸があった…その記憶が存在するだけで彼女のトラウマが刺激されかねない。少しでもそんな記憶が残ってしまえば、療法を受けた意味がないのだ。

 

雷牙(まさか…ふゆっぺの中の記憶が蘇りつつあるってのか…!?…だとすれば全ての説明がつく…!)

 

 雷牙は決して頭は良くない。だが、その代わりに天より授けられた天性とも言える勘は、冬花の身に何が起こっているのかを察するには十分だった。

 

冬花「稲魂君…?」

 

雷牙「あ、ああ…!けどよ…どうして急にそんな事を聞くんだよ…?」

 

冬花「…ずっと前に立ち直れたと思ってたけど、心の奥底では多分、まだ治ってないの。…だけど、いつまでも過去に囚われてたら前には進めないと思うんだ…。だから、教えてくれないかな…?稲魂君がどうやって立ち直ったのか」

 

 雷牙は直感で消した筈の冬花の記憶が歪な形で蘇りつつある事を理解する。例え、再度催眠療法を施したとしても完全に記憶が戻るのは時間の問題だろう。

 となれば、これから彼女に待ち受けるのは辛く苦しいトラウマに苛まれ続ける地獄の日々…。

 そこにあるのは終わりの見えない闇に包まれた迷宮だ。

 

 雷牙はあの地獄の日々を思い出す。心は絶望の沼に沈み、生きる意味すらも見失った。あんな地獄はもう二度と味わいたくない。

 

雷牙(だからといって…。俺が…そんな選択をする資格があんのか…?)

 

 稲魂雷牙は医者ではない、稲魂雷牙はカウンセラーでもない。二度も両親を失った事を除けば、サッカーが大好きなだけの中学生なのだ。

 当然、彼女の心境に深く足を踏み入れる資格などない。

 

『このまま彼女の担当医と父親に任せて、この話題は適当に切り上げよう』

 その思考が彼の脳内を埋め尽くした。

 

冬花『…だけど、いつまでも過去に囚われてたら前には進めないと思うんだ…』

 

 だが、先程彼女から投げかけられた言葉が脳裏を掠める。

 催眠療法を受けても、過去の記憶をなくしたとしても、久遠冬花は久遠冬花だ。

 過去から前に進もうとする意志は間違いなく彼女自身の物だろう。

 

円堂『だったらさ!中学生になったら一緒にサッカーやろうぜ!』

 

雷牙「守…」

 

 あの時出会った初対面のバンダナ少年の一言…。あの一言によって自分の心がどれだけ救われた事か。

 

雷牙(なァ守…。俺はよ…頭悪いから、細かい事を考えんのがトコトン苦手だ…。この選択がどんな結末になるかも分かんねェ…。けどよ、オマエなら…なんとかしてくれるよな…?)

 

 その問いを答えてくれる者はここには居ない。それでも雷牙は信じている。

 彼ならば…円堂守ならば、必ず小野冬花の心を救ってくれるのだと。だからこそ…自分は安心して手を汚せる。

 

雷牙「…違う!」

 

冬花「え…?」

 

雷牙「ふゆっぺ…。オマエがなくしたのはお袋だけじゃねェ…!親父もだ…!」

 

冬花「あはは…。なに言ってるの稲魂君…。現にお父さんは居るじゃ…ーーッ!?」

 

 雷牙の一言は緩んだ記憶の封印を解くには十分だった。その瞬間、解放されたトラウマが次々と雪崩のように蘇る。

 

冬花「あ…あぁ…!」

 

 トラウマが解放された事で、辛うじて灯っていた偽りの(ハイライト)が彼女の瞳が消え去る。

 

冬花「お父さん…!お母さん……!守…くん…!」

 

 悲惨なトラウマを思い出してしまった事で、心は絶望に沈み、生きる気力を奪われてしまった冬花は瞬く間に気を失い、地面に倒れ伏す。

 

雷牙「悪ィ…。守…!監督…!」

 

 大切な仲間にこれ以上、地獄を見て欲しくない…。そんなある種の身勝手とも言える我儘(エゴ)により、少女の中に眠る最後の引き金を引いてしまった雷牙。

 その心の内は、深い罪悪感に苛まれていた。




もう世界編も終盤に差し掛かってるな…。そろそろ次章の構想を練り始めないとな…。
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