イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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ここだけの話、初期プロじゃロニージョだけじゃなくてザ・キングダム全員がRHプログラムの被験者になってもらう予定だったんですけど、流石に可哀想がすぎたので没にしました。


栄光を掴むのはどちらだ!? VSザ・キングダム!!! 中編2

雷牙「よっ!ほっ!はっ!」

 

 満を辞して戦場へ解き放たれた“怪物”は、ルーティーンであり恒例となった“稲魂ステップ”を行い青々と生い茂る芝生の地面と身体を軽く慣らす。

 

雷牙「…うっし!気合い十分ッ!!やる気MAXッ!!俺の体調100%ッ!!さァ!!始めようぜッ!!!」

 

 約30分間まともな出番がなかった雷牙は、溜まりに溜まったフラストレーションを発散するべく、ガルシルドの呪縛から脱したザ・キングダムとの試合に心を躍らせる。

 

 後半戦からのメンバーは以下の通り。

 

FW:染岡、豪炎寺、ヒロト

MF:風丸、鬼道、雷牙

DF:飛鷹、土方、壁山、吹雪

GK:円堂

 

 1点のリードを許しているイナズマジャパンにおいて、今最も必要なのはフィジカルに優れるザ・キングダムに当たり負けしないパワー。

 それを満たすのは日本屈指のパワーを宿した雷牙と染岡の2人だけだ。彼らがどう対処するかで日本の決勝進出が大きく左右されるだろう。

 

ピーッ!!!

 

 新たに投入された審判のホイッスルが鳴り響き、ザ・キングダムのキックオフから後半戦が開始する。

 

 RHプログラム起動のスイッチでもあった特殊な笛が没収された事で、ロニージョは“自分”を見失う事なくボールを受け取りドリブルを始める。

 

鬼道「先手必勝だッ!!」

 

 攻め上がるロニージョの前に立ち塞がるのは、前半にて幾度となく彼に辛酸を舐めさせられた鬼道だ。

 

鬼道(さぁロニージョ!本当のお前のサッカーを見せてみろッ!!)

 

 鬼道はこれから魅せられるであろう、ロニージョ本来のサッカーに期待せずにはいられない。

 前半戦でRHプログラムによって超強化されたフィジカルの凄まじさを身を以て体験した。ガルシルドの呪縛から逃れた今なら、もっと素晴らしいプレーを見せてくれる筈だから。

 

ロニージョ「クッ…!」

 

 だが、ロニージョの顔色は何故か優れない。もう自分達を苦しめる存在は居ないというのに、思い詰めた表情をしている。

 

鬼道「ロニージョ…?」

 

ロニージョ「……ガト!!」

 

 結局、ロニージョは鬼道を抜き去ろうとせずにガトにパスを回し、勝負から逃げる。

 

鬼道「…そんなに俺との勝負が嫌か?」

 

ロニージョ「…悪いな、俺達は絶対に勝たなくちゃいけないんだ…」

 

 別に勝負を避けパスを回す事自体はおかしな事ではない。鬼道だって不利と見れば戦略的撤退を行う事だってある。

 勝てないと分かっていながらも、私情に駆られて我を貫き通すのはチームに迷惑を掛ける行為なのだから。

 

 だが、今のロニージョは違う。

 彼はフィジカル面だけ見れば鬼道よりも圧倒的に強い。流石に手も足も出ないレベルという訳ではないが、ノータイムで“逃げ”を選ぶ程ではないだろう。

 だからこそ、鬼道は引っかかったのだ。ガルシルドが失脚してもなおロニージョの心を縛り付けるその“何か”に。

 

ガト「レオナルド!!!」

 

レオナルド「モンストロッ!」

 

モンストロ「フォルミガ!!」

 

 ザ・キングダムのパス回しはあまりに速く、イナズマジャパンのカットが間に合わない。

 しかし、幾らパスを続けてもボールは前線に上がる事はなく、ひたすらボールをキープする事に特化した面白味のないパスを繰り返す。

 

雷牙「オイオイオイオイオイ!!!何クソみてェなヒヨり方してんだよ!?こんなんじゃ、前半の方がよっぽどマシだったぜ!?」

 

 雷牙の不満も尤もだ。前半戦のザ・キングダムは、ロニージョが洗脳されていながらもチーム全体に攻める気概が見られた。

 だが、今の彼らはどうだ?ひたすら守りに徹し、まともなサッカーをしようとしない。言葉を選ばずに言うならば、彼らは皆“卑怯者”の顔をしている。

 

円堂「ロニージョ…。そればお前たちのサッカーなのかよ…!」

 

 後半戦前に交わした約束を裏切るように、本気とは程遠いサッカーを続けるザ・キングダムに対し、円堂は失望を隠せない。

 

 だが、円堂が幾ら失望しようとも状況は変わらない。両チームは終わりの見えないイタチごっこを続け、時間だけが過ぎていく。

 

土方「ガッカリだぜ!!!お前らのサッカーにはよッ!!!」

 

 あまりにつまらないザ・キングダムのサッカーに剛を煮やしたのだろう。土方は眉間に皺を寄せ、彼らのサッカーを『ガッカリだ』と大声で非難する。

 

ロニージョ「クッ…!」

 

土方「ガルシルドから解放されて、本気のお前らが見れると期待してたのよッ!!」

 

 土方はイナズマジャパン、そして観客達の心境を代弁するように自身の失望を包み隠さずザ・キングダムに伝える。

 彼らも自分達の行いが卑怯であるとは百も承知なのだろう。それでも、もう止まる事は出来ない。

 世間から非難を浴びようとも、自分達は絶対に勝たなければならないのだから。

 

ロニージョ「俺達は…!絶対に勝たなくちゃいけないんだァァァァ!!!」

 

 土方の言葉も虚しく、ロニージョは前方に居るガトにパスを送ろうとする。

 

 しかし……

 

ヒロト「今だッ!!」

鬼道「今度こそ逃がさんッ!!」

 

 左右から鬼道とヒロトがプレスを掛け、ロニージョのパスコースを完全に潰す。

 

ロニージョ「クソ…!これじゃパスが出せない…!なら…!!」

 

 パスを封じられたロニージョは、2人から背を向け体勢を立て直す為に、下がろうとする。

 だが、彼の前には既に防御の体勢を整えた土方が立ち塞がっていた。

 

ロニージョ「なっ…!?いつの間に…!?」

 

土方「そのボールを寄越しやがれぇぇぇ!!!“ブレードアタック”!!!」

 

 土方の新技“ブレードアタック”が炸裂し、稲妻の刃が地面を伝ってロニージョを切り裂く。

 稲妻の刃に耐え切れなかったロニージョは、大きく吹き飛ばされてしまい、離れてしまったボールは土方の足元に収まる。

 

土方「見ていやがれロニージョォ!!!これがイナズマジャパンのプレーだぁぁぁ!!!」

 

 ボールを奪った土方は自身がDFである事も忘れ、その屈強な巨体に似合うパワフルなドリブルで攻め上がる。

 

ラガルート「行かせないッ!!“ローリング…」

 

 十八番の必殺技でボールを奪い返そうとするラガルートだが、その直前にある事に気付く。

 

ラガルート(ヒジカタの足元にボールがない…!?)

 

 そう。今の土方はボールを持っていないのだ。かといって、前方にパスを出した痕跡もない。

 この一瞬で起きた不可解な状況により、ラガルートは足を止めてしまう。

 

吹雪「ナイスパスだよ!土方君!!」

 

 土方は使用した魔法(マジック)の正体…。それは魔法でも何でもなく、ただ後ろに居た吹雪にバックパスを送っただけだった。

 重要なのは、ラガルートすらも騙される程に華麗なバックパスをテクニックの『テ』の字もなさそうな土方が使ったという事。

 

雷牙「アイツ…あんなテクいプレー出来たんだな…」

 

 仲間ですらも意外そうに驚く華麗なバックパスは、彼の隙を作るには十分だった。

 

吹雪「土方君!!」

 

土方「ありがとよッ!!!」

 

 見事な連携によりラガルートを突破した土方は、遂にゴール前に辿り着く。

 

土方「吹雪ッ!!ぶっつけ本番だが“アレ”やるぞッ!!!熱也の兄であるお前になら出来る筈だッ!!」

 

吹雪「OK!!一発かましちゃおうかッ!!」

 

 吹雪を先行させた土方は、その身に“野獣”を宿しボールに渾身のシュートを叩き込む。

 放たれたシュートは稲妻を纏い黄金の弾丸となって、前方を走る吹雪に追い付くと、吹雪もまた極寒の冷気を右脚に宿し渾身のシュートを叩き込んだ。

 

土方&吹雪「「“サンダービースト改”!!!」」

 

 土方の剛力と吹雪の速度が合わさり、最高のパワーとスピードを内包した連携シュートは、紺碧の稲妻を纏いし蒼き弾丸となりゴールへ向かう。

 

ファルカオ「“カポエラーーは、速い!?グァァァァァ!!?」

 

 その速度は百戦錬磨のキーパーですらも対応し切れず、必殺技を繰り出す暇すらも与えずにゴールネットに突き刺さった。

 

ピーッ!!!

 

マクスター『ゴーールッ!!!ヒジカタとフブキの“サンダービースト”により後半開始早々、同点に追い付きましたーーッ!!!』

 

 遂に念願の同点に追い付いたイナズマジャパンは、点を決めた土方と吹雪に駆け寄り喜びを分かち合う。

 

 しかし、ザ・キングダムにはイナズマジャパンとは対照的に、暗く重い空気が流れる。

 これまで自分達が守備に徹してこられたのは、前半で獲得したリードがあったからだ。だが、それも土方によって同点にまで追い付かれた…。

 前半にてロニージョの化身技でも“イジゲン・ザ・ハンド”を破れないと証明されている以上、もうPK戦に持ち込まなければザ・キングダムの勝利はない…。

 

円堂「…どうしたんだよロニージョ」

 

 チームに重い空気が流れる中、頭痛の種でもある円堂その人が顔に不満の感情を浮かべながら仲間達と共にロニージョに近づく。

 

円堂「前半よりプレーにキレがなくなってるじゃないか…!?」

 

雷牙「こう言うのも何だが…。洗脳されている時のオマエさんの方が何百倍も強そうだったぜ?」

 

ロニージョ「……」

 

 彼とて分かっている。自分達の行いが恩を仇で返すも同然である事は。

 

円堂「ガルシルドは刑事さんが必ず逮捕するって約束してくれだじゃないか?もう、お前たちを脅かしたら命令したりする奴は居ないんだぞ?」

 

ロニージョ「…違うんだ」

 

雷牙「違う…?一体全体何が違うってんだよ?」

 

ロニージョ「…確かにガルシルドは俺達の目の前で連行されたさ…。だけど、根本的な問題は何一つ解決していないんだ…!」

 

鬼道「ーー!!! そうか…!」

 

ヒロト「ザ・キングダムの家族はガルシルドのグループ企業から仕事を貰っている…。つまり、ガルシルドが逮捕されれば…」

 

ロニージョ「会社は潰れ…家族は職を失ってしまう…!!」

 

 ここに来て雷牙達は自分達の考えは甘かった事を痛感する。

 ガルシルドさえ失脚させれば、ザ・キングダムの家族は解放され、彼らも本当のサッカーを出来ると思い込んでいた。

 

 しかし…現実は違った。ガルシルドが本当に取っていた人質は“家族”ではなく“貧困”だった。

 日本という経済的な格差が比較的小さい島国が産まれ育った彼らには初めから想定の外だった形無き人質…。

 

ロニージョ「確かに俺達はサッカーの自由は手に入れたのかもしれない…。だけど、どうしても頭を過るんだ…。『俺達の選択は本当に正しかったのか』って…」

 

円堂「ロニージョ…」

 

雷牙「…だとしても、ガルシルドはオメーを使い潰すつもりだったんだ。家族の安全は保証するって約束してたみてーだが、オマエさんが死んじまった後にその約束を守る保証はどこにも無かっただろ?」

 

ロニージョ「それでも…!少しでも家族が救われる可能性があるのなら…俺はこの命を捨てたって良い…!」

 

 家族の為ならば命すらも捨てられる。そのロニージョの覚悟に雷牙はそれ以上何も言えなくなる。

 だって、自分もライトを人質に取られていたならば、ロニージョと同じ結論に至るだろうから。

 

土方「…それでも納得は出来ねぇな。お前達はそれが本当に家族が望んでいる事だって思ってんのか?」

 

ロニージョ「なんだと…!!!オマエに何が分かる!?恵まれた環境で生活をしてきたオマエに…!俺達の何が分かるっていうんだ!?」

 

土方「……家族の想いだ。俺にも兄妹が居る、一番上の俺がFFIに出場して間、弟達は寂しい思いをしている筈だ。だが、それでも弟達は俺を世界大会に送り出してくれた!!何故だか分かるか?」

 

ロニージョ「グッ…!」

 

 土方に問いにロニージョは口ごもってしまう。

 本当は分かっていた…。家族はこんな事は望んでいない、家族が本当に望んでいるのは……。

 

土方「自分達の事よりも、俺がサッカーで活躍する姿を見たいからだ。俺は、弟達のその想いがあるから頑張れる。ロニージョ…きっとお前達の家族もそうなんじゃないか?」

 

ロニージョ「俺の…家族が……」

 

???「しっかりしろ〜〜!!!兄ちゃ〜〜ん!!!」

 

 刹那、観客席から幼い子供の声が鳴り響く。

 

ロニージョ「アレは…!ラガルートの弟…!?」

 

 声の主は1人で兄の勇姿を見に来ていたラガルートの弟。

 

「兄ちゃん!!おれはカッコいい兄ちゃんのサッカーが見たいんだ!!!だから…!思いっきりサッカーをしてくれよーー!!!」

 

 まだ年端も行かない少年の言葉…。だが、その言葉は不可視の霹靂となり答えの見えない迷宮に囚われていた王国の戦士達を救う一筋の光となる。

 

ロニージョ「…俺達は勘違いしてたようだな…。あの日、家族が笑顔で送り出してくれたのは、サッカーで輝く俺達を見たかったから…か」

 

ラガルート「ああ…!きっとそうだ…!!」

 

 日本の好敵手の手助けによりロニージョが導き出した答えは、チームメイトにも伝播し、暗く沈んでいた彼らの表情は次第に明るくなる。

 

ロニージョ「やろうぜッ!!俺達(ザ・キングダム)の本当のサッカーを!!!」

 

『おおッ!!!』

 

 家族の想いを受け継ぎ、本当のサッカーをすると心に決めた戦士達は、今度こそ本当の自分を取り戻す。

 

土方「へへッ!余計な事しちまったかなぁ?」

 

ヒロト「緑川風に言えば、『寝た子を起こした』…ってとこかな?」

 

鬼道「フッ、ディフェンスが忙しくなりそうだな」

 

雷牙「しゃあ!!!上がってきたァ!!!やっぱ勝負はこうでなくっちゃ面白くねェ!!!」

 

円堂「みんなーーっ!!!俺たちも“イナズマジャパン魂”見せてやろうぜーーっ!!!」

 

『おおーっ!!!』

 

 遂に栄光ある戦士達の心を縛っていた呪縛が解け、世界一の栄光への切符を賭けた真の決戦が始まる…!

 

ピーッ!!!

 

ロニージョ「さァ!!始めようかッ!!!」

 

円堂「えぇ!?きゅ、急に踊り出した…!?」

 

 ボールを受け取ったロニージョは突如、軽快なステップを刻み踊り始める。

 これまで幾度となく変わったチームを見てきたイナズマジャパンだが、流石に試合中に踊り出す選手は初見である為、皆唖然としている。

 

雷牙「なんだァ?もしかして…ヒヨりの次は舐めプかァ?」

 

ロニージョ「どうしたビーストボーイ?俺と戦いたいんじゃなかったのか?」

 

雷牙「……にひっ!!そっちがその気なら特別にノッてやんよッ!!!」

 

 罠だと分かっていながらも、あえて挑発にノった雷牙は、これまでの鬱憤を晴らす勢いでロニージョの元へ駆け出す。

 

ロニージョ「良いスピードだ!だが…些か単調すぎるなッ!!」

 

雷牙「なっ…!?すり抜けたァ!?」

 

 ロニージョのステップは決して油断を誘う為の小細工ではない。このフォームこそがマック・ロニージョ本来のサッカーを最大限にまで活かす儀式だ。

 

 軽快なステップを保ったロニージョは、稲妻の如く荒れ狂う雷牙を卓越したテクニックで無力化した。

 

ロニージョ「さァ!!ココからザ・キングダムの本領だッ!!レオナルド!!!」

 

 本領を発揮したザ・キングダムは、他の選手もロニージョと同様にサンバを思わせる軽快なステップを駆使して攻め上がる。

 一見するとふざけているように見えて、攻守共に隙のない洗練されたステップは、イナズマジャパンのディフェンスを一切寄せ付けない。

 

土方「面白くなってきたじゃねぇかッ!!!喰らいやがれッ!“ブレードアタック”!!!」

 

ガト「そんなちゃちな技に当たる程俺は間抜けじゃないぜッ!!“スーパーエラシコ”!!」

 

 華麗な空中エラシコにより稲妻の刃を避けたガトは、間髪入れずにロニージョへパスを送る。

 

円堂「来ぉい!!ロニージョォ!!!お前の全力…俺にぶつけろっ!!!」

 

ロニージョ「フッ!……ハァァァァァ…!!!」

 

 恩人である円堂との約束を果たす為、ロニージョはあえてこの肉体に刻まれた忌まわしきプログラムを解放する。

 その背より顕れるのは、禍々しくも無機質な“0”と“1”で構成された“電脳戦士”だ。

 

ガト「なっ…!?ロニージョてめぇ…!この期に及んでまだそんな力に頼る気かよ…!?」

 

レオナルド「…いや、ロニージョを信じようガト。もうロニージョに迷い見られない。きっとアイツなら新しいサッカーを築き上げる筈だ」

 

ロニージョ(応えてくれ…!俺の身体よ…!!エンドウはどれだけ俺が堕ちても信じてくれた…!!だから…!俺もアイツに恩返しがしたいんだ…!)

 

 ロニージョは祈る。その対象は“神”でもなく、“天”でもなく、“家族”でもない。その身に宿った自分自身の“可能性”に対してだ。

 

ラガルート「ーー!!! オ、オイ!!アレを見ろ…!!“プラズマシャドウ”が…!別の形に変化していくぞ…!!」

 

 それは奇跡でも偶然でも何でもない。“可能性(それ)”は確かに応えたのだ。恩人である円堂と全力でぶつかり合うというロニージョの願いに。

 

ロニージョ「グ…!ウオォォォォォォッ!!!」

 

 実に晴れやかな表情で気を高める続ける本体(ロニージョ)と反比例するように、“電脳戦士”は苦痛の咆哮を上げ苦しみ始める。

 見ているこっちも痛々しく感じてしまうような咆哮…。すると、まるで自爆数秒前の如く“電脳戦士”は身体のありとあらゆる箇所から真紅の光を発し、眩い光を解き放つ。

 

円堂「ぐ…!なんだこの光は…!?め、目が…!!」

 

 あまりの眩しさに目が眩んでしまった円堂は、反射的に腕で目を覆ってしまう。

 本来であれば致命的な隙となるこの行為だが、円堂はロニージョはそんな卑怯な手を使わないと信じている。

 彼が視界を奪われた時間は、約数秒。その間にもシュートが空気を切る音は聞こえない。

 視界が戻った円堂は、好敵手が居る方向に視線を移す。そこに顕現していたのは……

 

ロニージョ「“百族の嵐王 ドゥパン”!!!」

 

 まるでサンバの衣装を思わせる華やかな翼を有した、半人半鳥の“嵐王”であった。

 

円堂「そうか…!それがロニージョの化身なんだな…!!よーーし!!俺だって!!!」

 

 ガルシルドの呪縛すらも受け入れ、マック・ロニージョ自身の化身を発現させた事に感動を覚えた円堂は、目尻に熱い涙を浮かべながらも、好敵手に全力で立ち向かうべく、ゴール前に黄金の雷神を顕現させる。

 

円堂「“魔神 グレイトッ”!!!」

 

ロニージョ「フッ!いつ見ても素晴らしいパワーだッ!!……全力で行くぜッ!!ボーイッ!!!」

 

 シュートフォームに入ったロニージョは、“嵐王”と共に天高く舞い上がると、サンバを思わせる軽快なリズムでボールを蹴る。すると、新緑色のオーラがボールに纏わされ、フィニッシュの準備が完了する。

 

ロニージョ「“サンバ・デ・トルメンタ”!!!」

 

 “嵐王”の咆哮により更に勢い増した新緑の弾丸は、カラフルな紙吹雪をフィールドに撒き散らしながら、円堂に向かってる突き進む。

 

円堂(このシュートには……これだ!!!)

 

 肌で感じる圧力からシュートの傾向を読み取った円堂と“魔神”は、右手に全てを気を集中させ地面を強く叩きつけ、異次元の結界でゴールを包み込む。

 

円堂「“イジゲン・ザ・ハンド”!!!」

 

 先程肌で感じた圧力は、“シャドウレッグ”の物とほぼ同一。ならば、円堂が選ぶのは“イジゲン・ザ・ハンド”一択だ。

 

円堂「ーー!? な、なんだこのシュート…!?さっき感じた圧力はパワー型の物なのに…!明らかに受け止めた時の感触が違う…!?」

 

 結界にシュートが衝突した瞬間、明らかにパワー重視だったシュートは次第にその傾向(タイプ)を変化させ、今ではパワーとテクニックの割合が4:6にまでなっている。

 

円堂「ぐ…!うわぁぁぁぁぁ!!!?」

 

ピーッ!!!

 

 力には強い効力を発揮するが、技術には恐ろしく弱いという最大の弱点を突かれてしまった事で、瞬く間に結界は崩壊しシュートがゴールネットを激しく揺らす。

 

ロニージョ「どうだエンドウ!!!コレがマック・ロニージョ本来のサッカーだッ!!!」

 

円堂「痛てて…。まさか途中で傾向を変化させられる選手が居るなんてな…!少しは成長したと思ったけど、俺もまだまだ甘いってことか…。…けど!!お前のシュート、ビリビリきたぜっ!!!」

 

 剛と柔を切り替えられる技量を持つ人間がこの世に居る事に驚きつつも、世界の広さを再度実感した円堂は、更なる成長の兆しを見た事による喜びから満面の笑みで好敵手に向けてサムズアップを行う。

 

 後半戦も残り時間約15分…。泣いても笑っても、この15分でどちらが最高の大舞台への切符を掴めるかが決まる…。 




本当は今話で終わらせる予定だったんですけど、化身の件りで予想以上に長くなっちゃったんで、一旦ここで切ります。次回、ブラジル戦決着です。

〜オリ技紹介〜
♦︎百族の嵐王 トゥパン
属性:風
分類:シュート
使用者:ロニージョ
≪概要≫
ラガルートの弟からの激励でロニージョ本来のサッカーを取り戻した事で、“プラズマシャドウ”から変化したロニージョ自身の化身。
容姿は“古代神ククルカン”がサンバっぽい意匠が追加された感じ。
名前の由来はブラジルの先住民族神話における最高神であり、雷と嵐を司る精霊“トゥ/トパン”から。

≪化身技≫
♦︎サンバ・デ・トルメンタ
“ドゥパン”の化身シュート技。モーションは尺の都合で登場しなかった“ストライクサンバ”をベースにしながらも、化身技らしくスケールが大きくなった感じ。
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