円堂「お〜い…?雷牙〜…?生きてるか〜…?」
雷牙「……」(ボーッ…)
壁山「うっわ…。久しぶりに見たっス…。稲魂さんのその生気が抜けたような顔…」
古株の荒々しい運転で車内が揺れる中、雷牙の顔は目と口の形状が『●』へと変わり、親友の呼び掛けに応じない程にボーッとしていた。
あまりに生気を感じないその様はまるでマネキンだ。
熱也「気っ持ち悪ぃ顔してんじゃねぇぞ稲魂ァ!!いつもみてーにやる気出しやがれってんだッ!!!」
吹雪「アーツヤ!駄目じゃないか、稲魂君の首を締めちゃ。せめてバックドロップに留めるべきだよ」
染岡「いや…。そんな事したら流石の稲魂でも死ぬだろ…。…いや、稲魂がの程度で死ぬタマか…?」
ただでさえ、円堂・綱海・土方が寝坊したせいで、試合に間に合うかギリギリの状況に加え、朝は割とピンピンしていた雷牙が会場に近づく度に生気を失っているせいで、車内はやや混乱気味だ。
土方「フワ〜…くっそ眠ぃ…。それに加えてまだ耳がキーンとしてやがるぜ…」
綱海「土方もかぁ…?俺も耳鳴りが酷くてたまんねぇぜ…。クッソ〜!稲魂の野郎〜!いくら、俺らが起きないからって0距離メガホンかまさなくても良かったじゃねぇかよ〜!!」
マネージャーの代わりに彼らを起こした雷牙により、耳元からMAXボリュームによるメガホンボイスを喰らった寝坊組は、眠い目と終わらない耳鳴りに苦しんでいるが、ぶっちゃけ彼らの自業自得である。
不動「てか、何でクソライオンの生気が抜けてんだよ?朝は暑苦しい程に元気だったじゃねぇか?」
円堂「多分…ライトのことが心配なんだよ。血は繋がってなくても、世界でたった1人の大切な兄なんだ。あいつなら絶対に負けないって分かってても、心配なもんは心配なんじゃないか?俺のかーちゃんもそうだし」
鬼道「十中八九そうだろうな。こいつは、稲魂雷斗に関わるとすぐに周りが見えなくなる悪癖を持っているからな。全く…情け無い奴だ」
風丸「お前がそれを言うか…?」
意図的か天然かは分からないが、妹・春奈の事となるとすぐに熱くなる鬼道に風丸はツッコミを入れる。
そんなこんなで、多少運転が荒くなりつつもイナズマキャラバンは着実にコンドルスタジアムに近付いて行く。
…だが、
この試合にて、世間を大きく騒がせる“ジャイアント・キリング”が勃発する事になると……。
♢♢♢
ライト「あ、危なかった…!」
試合開始から僅か10秒。先程まであれだけの熱気を帯びていた会場内は、嘘のように静まり返り、ライト…厳密には彼の両手に収まったボールに視線を集中させていた。
マクスター『な…!なんという事でしょう…!?開始から僅か10秒…!オルフェウスの強固なディフェンスが、ゴーシュ・フレア1人の手によって破りかけられた…!!この展開を一体誰が予想したでしょうか…!?』
ゴーシュが行った行動は、キックオフ早々シュートを放つ…ただそれだけ。
何か凄い必殺技を繰り出した訳でもない、得点を決めた訳でもない、彼はただボールを蹴っただけだ。
にも関わらず、会場に足を運んだ観客達は戦慄し、言葉を失っている。
フィディオ「…なるほど、どうやら俺達はまんまと一杯食わされたってワケか…」
だが、フィディオは額から一粒の冷や汗が流れながらも、冷静に現状を分析する。
ゴーシュはこれまで試合に一度たりとも、あんな凄まじいシュートを放った事はない。つまりは手を抜いていたという事だ。そして、それは他のメンバーも同じ事と見ていいだろう。
ゴーシュ「ヘェ?俺のシュートを見てもビビらねェとは流石だな。細い身体に反して、メンタルの方はそれなりにタフってワケかい?」
フィディオ「悪いが、君よりも凄いストライカーを2人も知ってるんでね。俺は他の人よりも少し耐性があっただけさ」
確かにゴーシュのシュートは予想を遥かに超える物だった。だが、そんな彼ですらも暴力が人の形となって顕れたとさえ思ってしまう“鬼”と比べればまだ可愛い物なのだから。
フィディオ「狼狽えるな皆ッ!!ライトはゴーシュのシュートを止めたッ!なら、俺達も注意深く観察すれば決して捉えられない相手じゃない筈だッ!!」
『応ッ!!』
ライト「よーーしっ!!ココから反撃だよっ!みんなーーっ!!!」
一時は怯みながらも、キャプテンの一言によって我に帰ったオルフェウスは、先程のお返しと言わんばかりに猛烈に攻める。
影山が理想としていた統率の取れた連携に、オルフェウス特有の自由意志による柔軟なプレーが加わった事で、攻撃の幅を大きく増した新生オルフェウスの“
“完璧”の二文字の前には、未だに平凡なプレーを続けるリトルギガントでは止める事が出来ずに次々と抜かれてゆく。
大介「なるほどの…。影山…そして、東吾さんの“
最終的に和解こそ叶わなかったが、
大介「…じゃが、“
だとしてもそれはそれ、これはこれだ。如何に彼らのサッカーに教え子の面影を見出そうとも、彼とて譲れない“モノ”がある。
そう……異国の地で出会った少年達と共に“世界一”の座に付くという偉大なる夢が。
マクスター『凄い!凄い!!凄ーーいッ!!!オルフェウスの巧みな連携の前に、リトルギガントは為す術も無ーーい!!遂にエースストライカーのフィディオがゴールに到達したぞーーッ!!!』
チーム屈指の巨漢選手ウォルターを突破したフィディオは、周囲に黄金の魔法陣を出現させ、ボールに金色のオーラを纏わせる。
フィディオ「先制点だッ!!“爆オーディンソード”!!!」
イナズマジャパンとの戦いを経て、更に磨き上げられた賢神の剣は、より鋭くより輝きを増し、その刃先で小さな巨人を討たんとゴールに向かって放たれた。
マクスター『出たーーッ!!!フィディオの
小さな巨人の大将に向かって放たれた金色の閃光。だが、それを前にしてもロココの表情は変わらない。
それどころか“怪物”を思わせる不敵な笑みすら浮かべ、師によって極限まで鍛え上げられた右手を閃光に向かって突き出した。
ロココ「ハァァァ!!!」
守護神の右手がボールに触れた瞬間、閃光はより一層輝きを増し金色の光がロココを包み込む。
光が晴れるのに要した時間は、僅か数秒…。光が晴れた先にあった光景は……。
ロココ「うんっ!思った通りの良いシュートだ。けど…そう簡単に点やらないよ」
右手にボールを収めたロココの姿だった。
マクスター『な、なんとーーッ!!?フィディオの“オーディンソード”が必殺技も使わずに止められたーーッ!?』
フィディオ「何だと…!?」
必殺技も使わずに渾身のシュートを止められた…。この事実には流石のフィディオも驚きを隠せず、空いた口が塞がらない。
ロココ「素晴らしいシュートを見せてくれたお礼だよっ!今度は僕たちの番だっ!!」
ロココがボールを高く蹴り上げる。彼の持つ脚力は並のFWすらも凌駕しており、センターラインを超えオルフェウスコートに侵入する。
そこに待ち構えるのは、リトルギガントのFWとMF達。攻撃に人員を割いた事でディフェンスが薄くなっていたオルフェウスは、小さな巨人達の侵攻を止める事が出来ない。
フィディオ(しまった…!ヤケにディフェンスがアッサリしていたのは、
リトルギガントの狙いに気付くフィディオだが、気付いた時には遅かった。
ジャンルカ「行かせないッ!!“バーバリアンの盾ッ”!!!」
ゴーシュ「ハッ!!そいつがどうしたァ!!」
最後の防御網すらも、灼熱の巨人には砂場に積み上げられた小さな山と同じ。
一瞬にして突破されてしまい、ゴーシュとライトの一対一となる。
ライト「止める…!」
ゴーシュ「嬉しいぜェ!!“怪物”の息子と戦える事によォ!!師匠ですらも、一目置いていた“怪物”の力…俺に見せてくれよォ!!!」
“怪物”本人でなくとも、“怪物”の遺伝子と才能を受け継ぐ者を前に、興奮のボルテージが最大まで上がったゴーシュは、先程の“遊び”よりも数段速いシュートを放つ。
ライト「やっぱり速い…!けど…雷牙はもっと速くて強かったよっ!!!」
辛うじてゴーシュのシュートに反応したライトは、左手に気を集中させ翡翠色の“神の手”を創り出す。
すると、彼の周囲に同色の嵐が巻き起こし見る見るうちに“神の手”は、鋭い牙と雄々しくも美しい翼を有した“
ライト「“ゴッドハンドレグルスGXッ”!!!」
幼き日に見た“憧れ”を自身のオリジナルへと昇華させたライト渾身の必殺技が、巨人の弾丸を受け止める。
ライト「グヌヌ…!!必殺技ですらない…ただのシュートだってのに…!なんて威力なんだ…!」
その弾丸には、炎もない、稲妻もない、ペンギンも居ない、ただのシュートだった。にも関わらず、獅子王の牙を伝って感じるパワーは世界トップランカー達のシュートを遥かに超えている。
ライト(踏ん張れ…稲魂雷斗…!!雷牙と約束しただろ…!?絶対に決勝に勝ち進んで…本当の“怪物”を決めるって…!)
何度も挫けそうになる豆腐よりも柔らかい精神を、兄として責任により補強したライトは、力強い一歩を踏み出す。
すると、徐々に弾丸の回転が緩まり始め、数秒の拮抗に末にライトの左手にボールが収まった。
マクスター『止めたーーッ!!!イタリアの守護神、ライト・イナタマが会場の度肝を抜いたゴーシュをまたしても止めてみせたぞーーッ!!!』
“怪物”の息子の大活躍により、静寂に包まれていた会場は再度熱気を上げ始める。
だが、今のライトには観客達の声は聞こえていない。
ライト「ハァ…ハァ…!!」
確かにライトはゴーシュのシュートを止めた。しかし、世界の平均水準を大きく上回る彼のシュートは、ライトの体力を大きく削ったのだ。
まるで、化身を乱用したかのような強い倦怠感がライトを襲う。
フィディオ「大丈夫か!?ライト!!」
ライト「大丈夫…!!ココから反撃だよ…!!」
チームメイトにいらぬ心配を掛けない為に、慣れない嘘を付きライトはボールを高く蹴り飛ばす。
フィディオ(あと1〜2発も喰らえば間違いなくライトは体力切れで潰れてしまうだろう…。恐らく、ブラージじゃ彼らのシュートに反応する事も出来ない…。なら、多少の消耗は覚悟の上で速攻を仕掛けるッ!!)
まだ試合の序盤も序盤にも関わらず、ライトの体力が底を尽き掛けている以上、オルフェウスは何としても先制点を奪わなければならない。
マクスター『オルフェウス!果敢に攻めるーーッ!!だが、リトルギガントは先程と変わらないディフェンスを続けているぞーッ!そこまで自信があると言うのかーーッ!!?』
しかし、リトルギガントのプレーは変わらない。自陣には最低限のディフェンスだけを残し、大半の人員を前線に配置する…謂わばキーパーがシュートを止める事前提のフォーメーションを形成している。
フィディオ(そこまで彼らは信頼しているというのか…。自分達のキーパーならば、必ずゴールを護ってくれると…)
キーパーが止める事を前提とするプレー…。それは“一流”の世界では誉められたサッカーではない。
キーパーに心の底からの信頼を置いていると言えば聞こえは良いが、その実態は単なる“背水の陣”に他ならない、謂わば“二流”のサッカーなのだ。
それを理解していたからこそ、久遠は地区予選の段階でイナズマジャパンの意識改革をせざるを得なかった。“一流”が跋扈する世界の舞台では、日本の“二流”では太刀打ち出来ないのだから。
にも関わらず、目の前の小さな巨人達は選手・監督含めた全ての人間が、嬉々として“二流”のサッカーを続けている。
フィディオ(…いや、もう“一流”だとか“二流”だとか…そんな意味の無い区分分けはするんじゃない!フィディオ・アルデナ…!!今ココにあるのは“
フィディオは自分自身を恥じる。
思えばそうだ、今は亡き影山親子から“
他者が決めた“一流”と“二流”の線引きなど、実践に置いては何一つ意味を為さない事だってある。まさにこの瞬間のように。
フィディオ(ならば…俺が成すべき事はただ一つ…!俺にキャプテンマークを託してくれたキャプテンの為に…。決勝で会おうと約束したマモルとライガの為に…!そして…俺自身の為に!!全身全霊を以て、リトルギガントを倒すッ!!)
ラファエレ「フィディオォ!!!」
フィディオが覚悟を決めたと同時に、ラファエレが彼にパスを回す。まるで剃刀のように鋭く切れのあるキラーパスは、意図的か偶然か無事にフィディオの元まで辿り着き、“軍神”を顕現させる最後の合図となる。
フィディオ「応えてくれッ!!俺の魂ッ!!“軍神 オーディンッ”!!!」
フィディオが持つサッカーに賭ける“想い”その物たる、北欧の最高神を模した深緑の“軍神”がフィールドに顕現した。
ロココ「スゴイね!テレビで見るのと、実際に見るのとじゃ迫力が全然違うよっ!!Bブロックにも化身使いは居たけど、君から発せられる圧力は彼らの比じゃない!!」
だが、ロココは“軍神”から放たれる圧巻の気迫を前にしても無邪気に笑っていた。
同時に、額から一粒の汗が流れる。すなわち、彼とて不安を感じていない訳ではない事の証左だ。
大介「さぁ〜て、我が愛弟子ロココよ。ここがお前さんの真価が試される場じゃぞ?この試練を乗り越えなければ、例え試合に勝つ事が出来ても、“世界一”の称号から離れる…。お前さんはどう乗り越える?」
“軍神”が課す試練に挑む愛弟子を、師は実の息子…いや孫を見るかのように穏やかな目つきで静かに見守る。
フィディオ「ココで…!絶対に決めるッ!!!」
フィディオが限界まで気を高めると、彼の周囲に黄金の魔法陣が描き出され、ボールに金色のオーラがチャージされる。
同時に“軍神”の持つ長槍も同色のオーラを帯び、その刃先を目の前の巨人に向けた。
フィディオ「“終極の…!!グングニルゥゥゥ”!!!」
金色の真球となったボールに、100%を超え120%もの出力を発揮したフィディオ渾身のシュートが叩き込まれる。
本体の動きに呼応し、“軍神”もまた左手に携えた神槍を最大の力を以て、守護神へ向けて投げ飛ばし、金色の真球は黄金の槍と化して、ゴールへ向かう。
ラファエレ「決まったッ!!化身は化身でしか破れねェ!!“オーディンソード”を素手で止めたロココでも、化身必殺技なら…!」
キャプテンが放った最強の一撃に、仲間達は勝利を確信し、中には内心に留められず不要な言葉を出力してしまう者も居た。
……しかし、彼らは忘れている。
ロココ・ウルパは、素手で軍神の剣を止めてしまうような“化け物”なのだ。
ならば……
必殺技もまた、人知を超えているのが道理ではないか?
ロココ「
神槍が迫り来る中…巨人は静かにその名を呼ぶ。
その名は、尊敬すべき師から授けられた自身の
そしてその名は…“
ロココ「Xッ!!!」
周囲一帯を照らす黄金の閃光を、真紅の閃光が斜め十字に切り裂く。
ライト「ゴッド…ハンド…!?」
真紅の閃光から顕れるのは、神々しき紅に染まった“
紅の稲妻をその右手に宿した“巨人”は、力強く一歩を踏み出し今も旅路の途中である神槍に向かって飛び掛かる。
ロココ「デェリャァァァ!!!」
紅の右手は、一瞬にして神槍を構成していた黄金の気を弾き飛ばし、ただの真球状の物体となったボールを完璧に右手の中で静止させる。
アンジェロ「今のって…エンドウが使っていた“ゴッドハンド”だよね…?」
ラファエレ「見た目こそ似ているが…!威力は別物だ…!!」
ロココ「悪いけど、そう簡単には点をやらないよ。僕が居る限り………な〜んてねっ!!」
鋭い眼差しとカッコつけたような低い声で決め台詞を言い終えたロココは、すぐさまいつも声色に戻ると照れ臭そうに表情を崩してニカッと笑う。
フィディオ「コレが…ロココ・ウルパの真の力か…!」
“強い”。 その言葉でしか形容しようの無い光景を幾度となくこの会場に足を運んだ全ての人間に見せつけた小さな巨人達…。
圧倒的な強さを誇る彼らだが、そこに“悪意”や“侮蔑”と言った負の感情は存在しない。
彼らにあるのは、純粋にサッカーを“楽しみたい”というサッカーを愛する者にしか抱けない感情。
……しかし、稲魂雷斗の目には彼ら…特にロココの“強さ”に、ある少女の面影を見出していた。
ライト「鬼乃子…ちゃん…?」
何故、自分が彼らに“鬼”の面影を見出したかは本人ですらも分からない。“巨人”と“鬼”は、デモーニオとロニージョのような目に見えない共通点すら無い。
それでも、彼は見てしまったのだ。彼らの
フィディオ「ライトッ!!ゴーシュがゴール前まで来ているぞッ!!」
ライト「ーー!!! 分かったっ!任せてっ!!!」
キャプテンの指示により我に帰ったライトは、意味の無い思案を強制的に打ち切り目の前の巨人に集中し直す。
ゴーシュ「…喜べ“怪物”の息子サンよォ。二度も俺のシュートを止めたアンタの強さに敬意を表して…。早速、“切り札”を切らせてもらうぜ…!」
ライト「“切り札”…?」
ゴーシュ「ハァァァッ!!!」
彼が誇る最強の“切り札”を切ると決めたゴーシュは、ボールに膨大なオーラを集中させる。
大量のオーラを纏ったボールは、太陽を思わせる元の何倍もの大きさの気の塊となり、上空にてライトを見下ろす。
ゴーシュ「フンッ!!」
小太陽と化したエネルギーの塊を、ゴーシュの両脚によって地へ落とされ、目にも止まらない速さで瞬時に左右から回転が加えられていく。
ゴーシュ「喰らいやがれェ!!!“ラストリゾートッ”!!!」
『ラストリゾート』…直訳に直せば“最後の切り札”…。
初っ端から切られたゴーシュ最強の“切り札”は、包まれた風圧の層により幾度となくバウンドを繰り返し、青々と生い茂った地面を抉る。
抉られた地面に一部は風圧によって吸収され、一つ一つは小さくとも数百以上に積み重ねられた破片は、巨大な
マクスター『な、なんだこのシュートはーーッ!!?ココまで凄まじく、美しい必殺技は見た事がないーーッ!!!』
“強さ”と“美しさ”を兼ね備えた龍は、荒れ狂うようにグラウンドを荒らしながら遂にライトの元まで辿り着く。
ライト「させないっ!!!“ゴッドハンド・レグルスGX”!!!」
暴れ龍を裁くべく“怪物”の左手を媒介に現れたのは、雄大な翼を持つ翡翠色の獅子王。
獅子王を見た龍は、変幻自在の口を限界まで開きその鋭利な牙を露出させる。同時に、獅子王もまた限界以上に口を開け龍に勝るとも劣らない牙を見せつけ飛び掛かる。
ライト「グ…!?ウオォォォォォォッ!!!」
獅子王が龍に喰らい付いた瞬間、ライトはシュートが持つ威力を瞬時に把握する。
その威力は、恐らく数週間前に来訪した未来人とほぼ同等…。衰弱した今の自分では絶対に勝つ事が出来ない
ライト「けど…!!諦めるモンかァ…!!!ボクは…オルフェウスのGKなんだから…!」
『弟が同じ立場ならばどうするか?』
とっくの昔に自身が耐え切れる許容値を超えてもなお、答えの無い問いを反芻する事で、限界を超えた力を発揮するライト。
だが……
ライト「グッ…!ウワァァァァァァ!!!?」
“巨人”との差を埋めるには、一度の限界突破では足りなさ過ぎた。
ピーッ!!!
ボールがゴールラインを割り、ネットを激しく揺らした事でリトルギガントの得点が認められる。
マクスター『ゴーールッ!!!この展開を誰が予想したでしょうか!?まさかまさかの先制点を決めたのは、リトルギガントだーーッ!!!』
この10分の間に巨人達が織りなすサッカーに魅了された観客達は、先程の謝罪と言わんばかりに惜しみない大歓声を送る。
ライト「クソ…!コレが…リトルギガントの…大介さんが作り上げたチームの力…!」
嫌という程、その身で巨人の強さを体感したライトは、先の見えない“
それは……かつて自身が抱いた“鬼”への“恐怖”と全く同じ感覚だった…。
♢♢♢
???「フゥ…!流石に疲れたな…。そろそろ走り込みは中断して、次のアップに移るとするか」
巨人による先制点に湧き上がるコンドルスタジアムの外。そこに1人の少年が居た。
その少年は、正体を隠すかのようにパーカーを深々と被っている。辛うじて見える肌色は日に焼けた褐色であり、彫りの深くない顔立ちからは少年はアジア系の人種である事だけは分かる。
「…オイあんちゃん、俺の見間違いじゃなきゃ、アンタ…走り始めたのは
次のアップへ移行しようとする少年に、付近のベンチで日光浴に耽っていた老人が話しかける。
彼が言う“アッチのランニングコース”とは、運営が島を開拓する際にコンドル島に設置した何の変哲もないランニングコースの事。
何の変哲もない以上、少年がそこで走り込みを行うのはおかしな事ではない。
問題なのは、少年が再び現れた場所が
???「ええ、貴方の言う通り。俺はそこのランニングコースから始めて、たった今反対側からココに戻って来ました。それが何か?」
「いや…『それが何か?』って…!そこから走り始めて、反対側から戻って来るって、
老人の言う通り、この島のランニングコースから走り始めて反対側から戻って来るには、島一周でもしなければ不可能な立地となっている。
しかし、目の前の少年は老人の見る限り、精々数キロジョギングした程度の消耗具合だ。とてもじゃないが、数十キロにも及ぶ島一周を走り切った直後には見えない。
???「“無理”…ですか。では、もし俺がそこら数十分で島を一周して来たと言ったら…貴方はどう答えますか?」
「ハンッ!おいぼれだからって馬鹿にすんじゃねぇよ。答えは『腹の底から笑ってやる』だ!!大体、この島は入り組んでるわ、高低差が激しいわでジョギング愛好家達からも、嫌われてるらしいからな!」
少年の問いを自身への挑発だと受け取った頭の硬い老人は、少年からの返答を待つ事なく元居たベンチへ戻り、日光浴を再開する。
???「愛好家達からも嫌われている…か。俺としては
改めて自身の感覚が常人とズレている事を自覚した少年は、気を紛らわすようにポリポリと頬を掻きながら、
???「ココまで俺の身体が“備え”を求めているのは久しぶりだよ。リトルギガント…君達は俺に何を学ばせてくれるのかな?」
少年は、まもなく訪れるであろう小さき巨人達との対峙を心待ちにしながら、ボールに命を吹き込み
常人の常識から斜め上に外れた謎の少年…。果たして彼の正体は…?
リトルギガントのチームエンブレムは、イナイレシリーズで一番好き(唐突)。
単純なカッコ良さなら“ヤングイナズマ”がトップクラスだけど、あの独特なカラーリングがめっさ好きなんですよね〜。