イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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ふと思ったんですけど、リトルギガントが装着してる重りって言うほどハンデになってるんですかね?
確かに重りがある事で、動きづらくなるだろうし、体力の消耗は激しくなるだろうけど、それさえ克服すれば体重の増加によって簡単には当たり負けしないだろうし…。
……もう考えるのはやめよ…。イナイレ世界に現実世界の常識を持ち込んじゃハゲそうだし…。


決戦への切符を掴み取れ!!! 激戦!!オルフェウスVSリトルギガント!!! 中編

 画面の前のそこの君…。君は…“強さの果て”を見た事があるかい?

 

 え?私は誰かだって? HAHAHA!!!そんな事はどうだっていいだろう?

 私は今喋っていて、君は私の話を聞いている。それだけで十分じゃないのかい?

 

 コホン…。少し話が逸れたね、無駄話はココまでにして本題に戻るとしよう。

 

 人には必ず“限界(リミッター)”なる進化に当たって実に煩わしい要素が存在する。

 

 努力すらもした事がない愚者に向けて分かりやすく例えるのなら、興味のない教科の情報を無理矢理頭に詰め込んでいる自分を想像したまえ、ど〜〜せ集中力は長くて1時間程度しか持たないだろ?

 

 その集中力が続くギリギリの“時間”こそが、生まれた瞬間に強制的に人にかけられる“ 限界(リミッター)”だと捉えてもらって構わない。

 

 何度だって言ってやるが、“ 限界(リミッター)”とは本当に煩わしいモノさ…。それがある限り、人はどんなに努力を重ねても決められた範囲内でしか力を得る事が出来ない。私はそれを“強さの果て”と呼んでいる。

 

 けど…不思議には思わないかい?人の強さに“限界”あるのなら、どうしてこの世に“限界突破”だなんて言葉があるんだろうね?

 それに、コミックの主人公もよく言うだろ?『限界は超える為にある』って。

 

 “火がない所に煙は立たない”…。つまる所、我々の先人達は掴んでいたんだろうねェ。肉体にかけられた“ 限界(リミッター)”を解除する方法を。

 

 かく言う私もコレまで幾度となく、限界(リミッター)の解除に挑戦している。

 影山サンに脅s…ゲフン!ゲフン! 丁重なお願いから作った“神のアクア”から始まり、名前も思い出せない凡人を利用して手に入れた吉良財団の“ジェネシス計画”…。

 

 …だが、そのどれもは真の意味で“ 限界(リミッター)”を解いてくれる代物ではなかった。

 今考えれば、当然っちゃ当然か。どちらの計画も結局の所、薬物に頼ったドーピング…。借り物の力を無理矢理注入させた所で、まともに使い熟せるワケがない。

 

 だ・か・ら・こ・そ!!!私は薬物(ドーピング)による解除に見切り付けて作成したのが、この“RHプログラム”…正式名称、“強化(Reinforce)人間(Human)プログラム”!!

 

 コレを受ければアラ不思議!少々時間が掛かるが、“ 限界(リミッター)”を解除された超人間が誕生するってワケだ〜!…まァ、被験者の9割は特訓に耐え切れずに死んじゃうけど。

 

 “三流”ならば“一流”に! “一流”ならば“超一流”に! そして〜…!

 

 “限られた逸材”に使えば“怪物”に。

 

 まさに夢と博打(ギャンブル)性を兼ね備えた、素ン晴らしいプログラム!!いや〜!こんな事を思い付く私って、やっぱり天才だな〜!

 

 ……だが。

 

 妬ましい事にごく稀に存在するんだよね〜。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 例えば…“彼ら”みたいにね。

 

ロココ『“ゴッドハンド…Xッ”!!!』

 

フィディオ『コレが…ロココの真の力か…!』

 

ゴーシュ『“ラストリゾートッ”!!!』

 

ライト『“ゴッドハンドレグルスGXッ”!!! グギギ…!ウワァァァァァッ!!!?』

 

 絶賛、イタリアの凡人10名を蹂躙中のリトルギガント(彼ら)が良い例だろう。

 この資料によれば、彼らが行ったのは何の変哲もない特訓(トレーニング)だ。強いて変哲がある点を挙げるとすれば…タイヤを使った負荷トレーニングが重点的に行われているくらいだね。

 

 にも関わらず、彼らは()()。今となってはifの話(たられば)になるが、あの場に私の娘が居たならば、シュートを撃っては止めての泥試合を繰り広げる事となっただろう。

 

 信じられるかい?隙あらば私の寝首を掻こうとしている、あの鬼n…おっと間違えた、私の娘がだよ?

 ハァー…妬ましいな〜。私はアレだけの資金と資材を投入して、漸く“鬼乃子”という逸材を産み出せたってのに、王道のやり方(トレーニング)だけでアソコまでの“化け物”を育て上げるなんてね。よくもまァ、影山サンを欺きながらも南米の片田舎からあのような逸材を集めたモノだ…。“彼”の粘り強さには純粋に尊敬しちゃうネ。

 

 …おや?そろそろカメラのバッテリーが切れそうじゃないか?おーい!ラボスくーん!!この間、カメラの充電しといてって頼んどいただろー?

 

<「そりゃ、数時間もダラダラと自論を語り通してたら新品のバッテリーもすぐに上がりますって…」

 

 アッレェ?もうそんなに経ったのかい?駄目だね〜若作りしてるつもりだが、40になるとどうも時間の流れが速くなっちゃうな〜。

 残された時間もあまり無い事だし、パッパと結論を述べるとしようか。

 

 私が思うに…。人が“ 限界(リミッター)”を解除する方法はそれぞれだ。“RHプログラム”すらも多くあるやり方の一つに過ぎない。

 

 だが…人は“ 限界(リミッター)”を外せる。それだけは紛れもない事実だ。人が限界を超えて初めて歩く権利を与えられる“至高の領域”への道…。

 

 その最高到達点に位置する存在こそが……

 

 

 

 

 

 

“怪物”だ。

 

♢♢♢

立向居「ぜぇ…!ぜぇ…!お…重い…!!」

 

熱也「稲魂テメコラァ!!もう会場に着いたんだから、いつまでボケーっとしてないで、いい加減自分の足で歩きやがれッ!!」

 

雷牙「……」(ボーッ…)

 

 予定の時間より大幅に遅れながらも、何とか試合中にコンドルスタジアムに到着したイナズマジャパン。

 だが、相変わらず雷牙はマネキンのように固まったままであり、自分から名乗り出た立向居とジャンケンで負けた熱也によって、何とか観客席に運び込まれていた。

 

風丸「ーー!!! お、おい!!スコアボードを見ろッ!!オルフェウスが…先制点を取られてリードされているぞッ!!」

 

『何だと!?』

 

 スコアボードに表示されていたオルフェウスの得点は『0』に対し、彼らと相対するリトルギガントの得点は『1』。

 イナズマジャパンが会場に到着した時点で、試合開始から15分が経過している。まだ前半から大した時間が経っていないにも関わらず、あのライトが点を許した事実に皆は驚きを隠せない様子だ。

 

音無「フムフム…。どうやらオルフェウスは、リトルギガントのエースストライカー、ゴーシュ・フレアによって先制点を奪われてしまったようですね…」

 

 手持ちのPCによってこれまでの試合展開をいち早く確認した音無は、現在世界中のSNSで話題となっている、ゴーシュの必殺技の映像を皆に見せる。

 

豪炎寺「“ラストリゾート”…!なんて凄まじい必殺技なんだ…!この必殺技を完成させるには、両脚が利き足である事が必須…。高度な技術を持って初めて発動出来るシュートだ…!」

 

染岡「あんな凄ぇ必殺技が使えたってのに、今の今まで温存してたってのかよ…!?何て奴らだ…!」

 

壁山「…よく見ると、リトルギガントの2トップってどことなく豪炎寺さんと染岡さんに似てるっスね。…あっ、あそこに居る3番は俺にそっくりっス!」

 

 『決勝リーグ最弱チーム』『運に恵まれたラッキーチーム』…。

 それが準決勝が始まるまで、小さな巨人達に貼られた世間からの評価(レッテル)だ。

 だが、今となってはどうだ?誰もが決勝進出を確信していたオルフェウスは、巨人達のサッカーに翻弄され、彼らの攻撃を捌くだけで精一杯。

 評価(レッテル)を貼り付けた張本人たる観衆達は、自分達の行いを忘れ巨人達のサッカーに夢中になっている。

 

音無「ーー!!! それだけじゃありません…!!皆さんっ!この動画を見てくださいっ!!!」

 

 そう…観衆(彼ら)を惹きつけたのは、何もエースストライカーの“切り札”だけじゃない。

 寧ろ、魅了の引き金となったのは、巨人を率いる守護神が魅せた“神の右手”だろう。

 

ロココ『“ゴッドハンド…Xッ”!!!』

 

円堂「ゴッド…ハンド……?」

 

 リトルギガントを率いるロココ・ウルパが繰り出した必殺技は、色こそ違うが間違いなくイナズマジャパン…そして円堂がよく知る伝説の必殺技“ゴッドハンド”。

 

 数分前の光景を映し出した映像内の真紅の右手は“軍神”が放った神槍すらも、真正面から粉砕した。

 

円堂「俺が“グレイテストフィスト”でやっと止められた“終極のグングニル”があんなにアッサリと…!?そんなのありかよ…!?」

 

鬼道「化身必殺技は同じ化身でしか止められない…。例外があるとすれば、両者の間に余程の実力差が開いている時だけだ…」

 

 ライトが点を許し、フィディオの化身が完封された…。この2つの事実だけで、リトルギガントがここまで隠していた真の実力を嫌と言う程実感してしまう。

 たった今会場に到着したばかりのイナズマジャパンでさえそうなっているのだ。実際に、巨人と対峙するオルフェウスは一体どれ程のプレッシャーに襲われているのだろう?

 

雷牙「…取り敢えず座れよオメーら。集団で立ち尽くしてたら周囲の観客に迷惑だぜ」

 

ヒロト「あっ、やっと戻った」

 

 どうやら兄が所属するオルフェウスの苦戦は、弟の意識を取り戻す最高の気付け薬になったようで、蒼く輝く瞳を取り戻した雷牙は腕を組んで指定席に座っている。

 

豪炎寺「もう大丈夫なのか?てっきり、お前の事だから試合が終わるまで、あの状態になっていると思ってたが…」

 

雷牙「ハッ!!んなモン演技よ演技!歩くのがダルかったから心神ソーシツのフリしてただけだっての!ゲハハハッ!!!」

 

熱也「お〜!そうかい。だったら、運賃料として俺の拳100発を受け取ってもらわねぇとなぁ!!!」

 

 性格の悪いカミングアウトに憤慨した熱也は、持ち前の短気さを爆発させ雷牙に殴り掛かろうとするが、兄によって阻止される。

 

鬼道「フン、嘘が下手な奴め」

 

 しかし、どんなに強がろうとも輝きが戻った瞳には、未だに兄に対する“不安”の感情を隠し切れていない。

 素直になれない性格(ツンデレ)と、世界でただ1人の兄を大切に想う弟としての間で板挟みになった雷牙は、意識が戻っても複雑な表情は相変わらずだ。

 

鬼道「兄弟を心配するのは結構だが、こういう時はドーンと構えておけ」

 

豪炎寺「フッ、弟の心配は兄を余計に不安にさせるだけだぞ?」

 

 弟としての経験はなくとも、兄としての経験はある親友達は、意地の悪い笑みを浮かべながら、雷牙の両隣に座り観戦を始める。

 

雷牙「…ケッ、別に心配なんかしてないっつーの。…絶対に勝てよ、ライト…

 

 分かりやすく否定しつつも、最後の最後で誰にも聞こえないような小さな声量で、兄を応援した雷牙は試合の観戦に集中する。

 

ピーッ!!!

 

ウィンディ「ゴーシュ!!」

 

 オルフェウス必死のディフェンスにより、ラインを割ったボールはリトルギガントの手によって再びピッチの中に戻される。

 リトルギガントの2番ウィンディ・ファスタが投擲した先に居るのは、エースストライカーのゴーシュだ。

 

ゴーシュ「狙いバッチリッ!!よっしゃあ!!追加点だッ!!!」

 

 ゴーシュが狙うのは1試合に放つ最高回数を既に更新した“ラストリゾート”による追加点。

 だが、彼の周囲をフィディオを司令塔する数人の選手によって封鎖される。

 

フィディオ「必殺タクティクスッ!!“カテナチオ・カウンター”!!!」

 

 蒼き“(カテナチオ)”に鍵がかけられ、ゴーシュの行手は完全に塞がれる。

 

ゴーシュ「なるほど…コレが噂の“カテナチオ・カウンター”か…。外で見るのと中で見るのとじゃ、景色が全然違うな…」

 

 ボールが奪われるピンチにも関わらず、ゴーシュは余裕の表情を崩さない。

 それどころか、不敵な笑みすらも浮かべその身に灼熱のオーラを纏わせ、ゴールに向かって走り始める。

 

フィディオ「やはり正面突破で来るかッ!!なら…!ダンテッ!!」

 

 先陣を切ったのは、チームトップクラスの巨漢選手であるダンテ。 MFに所属しているだけあって、その巨体から想像も付かない俊敏な動きでボールを奪わんと襲い掛かる。

 

ダンテ「そのボールを寄越せッ!!“バーバリアンの盾V2”!!」

 

 見る者に恐怖を抱かせる悍ましい悪魔の顔を模した大楯が、ゴーシュの進路を塞ぐ。

 

ゴーシュ「邪魔だァ!!“ヒートタックルッ”!!!」

 

 しかし、ゴーシュの身体から発せられる爆炎と化した気は瞬く間に鈍色の大楯を溶かし、ダンテを無力化させる。

 

ダンテ「チッ!!その見た目といい、使う技の傾向といい!!イナズマジャパンのゴウエンジにそっくりだ!!…だが、()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 まるでこの展開は予想通りに言わんばかりに、笑みを浮かべたダンテ。刹那、彼の背後より一筋の白い閃光が走る。

 

フィディオ「そこだッ!!」

 

ゴーシュ「何ッ!?ダンテは囮だったのかよ!?」

 

 ダンテの背後から発せられた“白き閃光”ことフィディオのスライディングは、見事にゴーシュのボールを刈り取り一瞬にして攻守の権利がオルフェウスに移り変わる。

 

マクスター『コレは上手いッ!!僅かに生じたゴーシュの隙を見逃さなかったフィディオッ!!ボールを奪う事に成功したぞーーッ!!!』

 

大介「まったく…あの馬鹿タレめ…。普段から口酸っぱく慢心はするなと言っとるのに…」

 

 点を取り返す為に起死回生のカウンターを開始したオルフェウス。

 リトルギガントの脅威を自覚した彼らは決して1人で攻める事はない。

 必ずボールの保有者の周囲には、フォローに回る味方が居り、ディフェンスが近付けばシュートと見間違うキラーパスを繰り出し、カットさせる暇を与えない。

 

ウィンディ「オルフェウスも中々やるな…。どうするロココ?いっその事、ディフェンス技も解禁するか?」

 

ロココ「…いや、その必要はない。オルフェウスの最高火力がフィディオのシュートである以上、僕なら完封出来る。コレまで通り、ディフェンス技は封印して技術でのディフェンスを続けてくれ」

 

ウォルター「とか言いつつ、どーせキャプテンがフィディオのシュートを受けたいだけに決まってるっス!」

 

ロココ「へへッ!!バレちゃった?」

 

 監督の意向1割、自身の我儘(エゴ)9割でDF達の縛りプレーを継続させたロココは、改めて味方を次々と抜き去るフィディオを見つめる。

 

ロココ(オルフェウス…。サッカー強豪国、イタリア全土から集められた精鋭達で構成された優勝候補と名高い名門チーム…。そして…)

 

 次にロココは、数十m先の直線上にて息を乱しながらゴールを護る稲魂雷斗に視線を移す。

 

ロココ(ライト・イナタマ…。イナズマジャパンに所属するライガ・イナタマの兄にして、彼と同じく“怪物(サッカーモンスター)”の血を受け継ぐ者…)

 

 “ 怪物(サッカーモンスター)”…。それはサッカー史史上唯一、名実ともに“最強”だと認められた稲魂ステラにのみ与えられた称号…。

 ロココは兄弟の父とは面識は無い。だが、尊敬する師からその功績は幾度となく聞いてきた。

 

ロココ(師匠は言っていた…。自分が知る限り、ステラ・イナタマを超える選手は後にも先にも存在しないって…!“完璧(パーフェクト・サッカー)”のトウゴ・カゲヤマも、ステラの師匠であるライセイ・シテンノウジも、彼の前からすれば霞む存在だって…)

 

 普段は温厚ながらもサッカーに関わると人一倍厳しい師が、あそこまで他者を褒める所を弟子は見た事がなかった。

 それだけに、彼はその息子に期待せずにはいられないのだ。当然、血統が全てを決める要素ではない事は分かっている。

 それでも、弟との最後の一騎打ちにてほんの一瞬だけ世界に魅せた、彼の中に眠る“本能”が爆発したかのような“あの姿”…。

 あの一瞬は、ロココに彼もまた“怪物”に成る資格を持つ者である確信させた。

 

ロココ(…贅沢を言うなら、キノコとも戦ってみたかったなぁ…。前に売られた喧嘩を買っておけばよかった…)

 

 ロココは、もう1人の有資格者である鬼乃子とは、終ぞ雌雄を決する事が叶わなかった事を残念に思う。

 恐らく、謎の技術を発言させた稲魂雷牙と実力が未知数のヒデナカタを除けば、今大会で自身と互角に戦える選手は明星鬼乃子のみ。

 日本とアメリカとの試合で偶然出会った際は、彼女の方から喧嘩をふっかけられたが、あの時は師によって止められ戦えず仕舞い。

 試合前に、既に彼女は代表から離脱していた事を知った際は内心強く落ち込んだものだ。

 

ロココ(そう言えば…少し前にヒデナカタらしき人物が目撃されたって噂を聞いたけど、アレって本当なのかなぁ?)

 

ウィンディ「そっち行ったぞ!!ロココッ!!」

 

ロココ「オーケー!!後は僕にズババーンと任せてよっ!!!」

 

 思考を打ち切ったロココと対峙するのは、数分前と同じ深緑の“軍神”。彼から発せられる気迫の圧力は、先程よりも数倍は優に超えている。

 

ロココ「まだ前半が終わるまで少しあるってのに、そんなに飛ばして大丈夫なのかい?」

 

フィディオ「残念だけど、君に勝つには多少の無茶をしなくちゃ勝てないんでね…!それに…ライガだって同じ状況なら後先考えない無茶を重ねる筈だッ!!」

 

 例え後半戦で潰れても、必ずロココから一点を捥ぎ取る…。そう硬く決意したフィディオに呼応するように、“軍神”もまた自慢の長槍に限界を超える気を注入させる。

 

フィディオ「“終極のォ…!!グングニルゥゥゥ”!!!」

 

 フィディオの覚悟がそのまま形になったかのような黄金の神槍は、初戦とは比較にならない神々しい光を纏わせロココへと襲い掛かる。

 

ロココ「……」

 

 神槍を前にしたロココは、突如として口角を自然体に戻し、口を真一文字にする。つまりは、彼は無表情になったのだ。

 

ロココ(少し反省だな…。ハッキリ言って、オルフェウスはライトとキノコ以外はあまり意識していなかったけど、フィディオのような覚悟を力に変えられる選手だっている…。ヘヘッ…僕もゴーシュのことを悪くは言えないね)

 

 フィディオの覚悟を前に、師の導きによって強くなり過ぎてしまったあまり、いつしか心の中で芽生えていた“驕り”を自覚したロココは、己の未熟さを恥じる。

 

ロココ(…だからこそ、僕は彼の覚悟に応えなきゃならない。流石にこのタイミングで重り(ハンデ)は脱げないけど、その分全力でいかせてもらう…!!)

 

 覚悟の神槍に触発されたロココは、腕をクロスさせ紅の稲妻を右手に宿す。

 

ロココ「ゴッドハンドX…」

 

 彼が駆け上がると同時に、紅の稲妻は巨大な右手へと変わる。しかし、その右手は以前よりも一回り大きく、帯電した稲妻もより電圧を増している。

 

ロココ「改ッ!!!」

 

 “軍神”の覚悟に応えた紅き神の手は、この土壇場で更なる進化を果たす。

 

マクスター『止めたーーッ!!!より輝きを増した“終極のグングニル”に対し、ロココもまた“ゴッドハンドX”を進化させ完璧に受け止めたぞーーッ!!!』

 

フィディオ「コレでもダメなのか…!」

 

ロココ「悪いね。君はマモルとの再戦を約束しているらしいけど、彼と戦いたい気持ちは僕も負けない」

 

フィディオ「君も…マモルと…?」

 

ロココ「おっと…少しおしゃべりが過ぎたようだね。まっ、僕とマモルの因縁は君よりも深い…とだけ言っておこうかな?」

 

 簡潔に要件を済ませたロココは、その強靭な脚力を以て追加点を前線に居る仲間達に託す

 

 

 

 

 

 

 

 

 事はなかった。

 

ロココ「悪いね師匠っ!!やっぱり我慢出来ないやっ!!!」

 

 確かにロココはボールを前線には蹴り飛ばさなかった。その代わりに彼は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

マクスター『コレは一体どういう事だーーッ!!?ロココがゴールを放棄してドリブルを始めたぞーーッ!?!?!?』

 

 キーパーとはゴールを護る者…。その常識に囚われた者達は、奇行としか形容しようの無いロココの行動に対し、目を見開き言葉を失う。

 

 …しかし、その逆…つまりは常識に囚われていない者達は、彼の行動に強烈な既視感を抱く事になる。

 

雷牙「アイツ…守にクリソツだ…!!」

 

鬼道「“ゴッドハンド”を使える事と言い…プレースタイルまで円堂と同じ事と言い…。一体、奴は何者なんだ…?」

 

 常識に囚われず、時にはゴールを放棄してでも勝利を求める貪欲さ…。彼の姿に、イナズマジャパンの選手達はキャプテンである円堂の姿を思い起こさずにはいられない。

 

円堂「ロココ…ウルパ…」

 

 そして当の円堂は、彼の駆ける姿に()()()()()()()()()()()()の面影を見出していた…。

 

ロココ「ジニーっ!!」

 

ジニー「マキシ…」

 

マキシ「ドラゴッ!」

 

 ロココのパスから始まった巨人流のパス回しは、オルフェウスのキラーパスを遥かに超える速度で、力強く鮮やかに繋がる。

 

マクスター『なんという鮮やかなパス回しだーーッ!!!流星を思わせる、華麗なパスの前にオルフェウスはカットに入れないーーッ!!!』

 

 一度ボールを取られれば、失点は確実…。そのような極限の状況の中でも、巨人達は心の底から楽しんでサッカーをしていた。

 

アンジェロ「ライトッ!!ドラゴにボールが渡ったよッ!!!」

 

 ゴーシュに次ぐ、リトルギガントの攻撃の片翼たるドラゴ・ヒルへパスが繋がった事で、ライトに極限の緊張が走る。

 まだ、彼は一度たりともシュートを撃ってはいないが、リトルギガントがゴーシュの1トップでない以上、最低でも彼と比肩しうる実力を持っているのは確実…。

 

ライト(ゴーシュのシュートすら止められないボクに…ドラゴのシュートを止められるのかな…?)

 

 三度に渡ったゴーシュとの対決…。勝ち点こそライトが上回っているが、先の2回は遊ばれていただけだ。

 自身の“最強”が相手の“切札”に粉砕された時点で、勝ち点が多くともライトは負け越したも同然だった。

 

ライト(って…!なに弱気になってるんだよライト!!しっかりしろっ!ボクはオルフェウスのキーパーなんだ…!ゴールを護る者が弱気になってどうする…!?)

 

 己を奮い立たせ恐怖を振り払いドラゴと向き合ったライトは、戦闘体制に入りシュートに備える。

 

ーーもうそろそろ自分を()()のも疲れてきたでしょ?その“弱気”こそが、本当の稲魂雷斗なんだよ。

 

ライト「ッ!?今の声は…」

 

 刹那、昨夜も聞いた聴き馴染みのある声がライトの脳内に木霊する。

 

ブラージ「よそ見してんじゃねェライトッ!!ドラゴがエリア内に入ってんだぞッ!!!」

 

ライト「ーー!!! や、ヤバ…!!」

 

 ベンチからのブラージの怒声により、我に帰ったライトは急いで体制を立て直し身体中の気を左手に集中させる。

 

 だが……

 

ドラゴ「……ロココッ!!!」

 

ライト「え…?」

 

 この前半戦…。ドラゴの必殺シュートが披露される事は終ぞなかった。

 リトルギガントが見せたシュート技は、2つだけ。1つは当然、ゴーシュの必殺技“ラストリゾート”。

 

 そして残る2つ目は……

 

ロココ「“Xッ!ブラストォォォ”!!!」

 

 空中で一回転したロココは、その両脚に押さえ込んだ膨大なエネルギーを天空に紅色の“X”の軌跡を描き解き放つ。

 その中心部から現れるのは、10番の“切り札”を超える熱量を持った極太のレーザー。

 

 紅き光線は、地面を焼き焦がし呆気に取られるライトに飛び掛かる。

 

ライト「“雷星拳牙ーーダメだ…!間に合わない…!!」

 

 本能で左手に溜めていた“獅子王(レグルス)”では勝てないと悟ったライトは、ほぼ無意識で化身を発動しようとするが、その選択を取るには遅過ぎた。

 

ライト「だったら…!せめて…!!」

 

 自身の判断ミスを後悔しつつも、せめてもの抵抗にライトは素手で紅の魔弾を受け止めんとする。…いや、厳密には素手じゃない亡き母が息子と同じ年に愛用していた形見のグローブも一緒だ。

 

ライト「グヌヌ…!!な、なんて…圧力だ…!!まるで…今にもボクの腕がへし折られそう…!」

 

 紅の魔弾が発する圧力は、まるで超重力の塊である惑星の成れの果て(ブラックホール)を思わせる程に重厚な物であった。

 このまま触れ続ければ、間違いなく腕が尖れる…誇張でもなんでもなく、言葉通りそう感じさせる言葉無き圧力が魔弾(それ)にはあった。

 

ピシッ…

 

 維持と根性でボールを受け止めてからどれくらいの時が経っただろう…?ライトの体感時間からすれば1時間にも匹敵するあまりに永過ぎた時間は、現実世界では1秒にも満たない。

 

 それ程までに体感と現実の時が隔離してしまう程のライトの集中力は、小蝿の羽ばたきのように小さな“ある音”によって()()()()()()()()()()()

 

ライト「グワァァァァァ!!!」

 

ピーッ!!!

 

 ライトの手から離れた紅の魔弾は、彼を大きく吹き飛ばし、ゴールラインを割りネットは激しく揺らす。

 

ピッ!ピーッ!!!

 

 得点を知らせる笛と共に、間髪入れずに審判が二度笛を鳴らす。観客達はスコアボードに集中すると、リトルギガントの得点が『1』から『2』へ増加し、前半戦の制限時間を示す箇所は『00:00』となっていた。

 

マクスター『ココで前半戦が終了ーーッ!!!まさかのライト・イナタマから追加点を奪ったのは、FWではなくGKのロココ・ウルパだーーッ!!!』

 

 またしても常識を超えるサッカーを魅せてくれた巨人達に向かって、観客席から大歓声が送られる。

 

マクスター『一体この展開を誰が予想出来たでしょうかーーッ!!?決勝進出確実かと思われていたオルフェウスが、ロココから一点も奪えず、2点ものリードを許しているぞーーッ!!!』

 

 この手の大会には稀に予想だなしなかったダークホースが居るのが常という物だが、リトルギガントの強さはダークホースの一言で終えるには、あまりに規格外だった。

 

 一歩も二歩どころか、何百歩も上を行かれている実力差…。重苦しくのしかかる絶望感に耐え切れなくなったのか、オルフェウスの選手の中には地面に両手を押し付け項垂れている者も居る。

 

フィディオ「皆ッ!!まだ諦めるんじゃないッ!!まだ点差は2点差なんだ!十分、後半で取り返せる範疇だろ!?」

 

ライト「そうだよっ!!まだ試合の半分が終わったばっかなんだよっ!諦めなければチャンスはーー痛ッ!?」

 

 『諦めなければチャンスはある』ーーそう言いかけた瞬間、ライトの左腕に突き刺さるように鋭い激痛が走り、思わず言葉を中断してしまう。

 

フィディオ「ライト…? どうかしたのか?」

 

ライト「う、ううん…!なんでもない…!ロココのシュートがあんまりにも強力だったから、手が痺れただけだよ…!」

 

 ライトはその痛みの正体を既に察している。だが、自分がここでベンチに下がる訳にはいかない。

 勝ち越されながらも、巨人のシュートに対抗出来るのは自分だけなのだから。

 

コツン…コツン…

 

「…ん?お、オイ!!アソコを見ろよッ!!選手用の入り口から誰かが出て来たぞッ!!!」

 

 重苦しい絶望がオルフェウスを包み込む中…。数千人居る観客の中の誰かが、“何か”に気付き指を指す。

 

 そこに居るのは、深々とフードを被り顔を隠した中肉中背の少年。

 

フィディオ「アレは…!まさか…!?」

 

 世界でただ1人だけが持つパーカー、強者特有の軽快な歩き方、フードの奥からチラリと見える褐色の肌…。

 少年を少年たらしめる全ての要素に強烈な既視感を覚えたフィディオは、鉛のように重い疲労感すら忘れて入り口へ向かう。

 

フィディオ「やっぱり…!貴方は…!!」

 

???「久しぶりだなフィディオ。君の活躍をずっと見ていたよ。よく今日までオルフェウスを支え、より強くしてくれた」

 

 開口一番にフィディオへの礼を告げた少年は、締め切ったパーカーのファスナーを全開にすると、その中から鮮やかな青に染まったユニフォームが露出する。

 

 少年は勢いよくパーカーを脱ぎ捨て、その正体を全世界の人々に現した。そう…彼こそは…!

 

マクスター『な、な、な…!!!なんというサプライズだーーッ!!!?突如、現れた謎の少年ッ!!!その正体はまさかまさかのーーッ!!!?』

 

フィディオ「おかえりなさい…!()()()()()…!!!」

 

ロココ「キャプテン…!?ってことは彼が…!?」

 

 パーカーの中から現れたのは、よく日に焼けた褐色肌を持つ日系人の血を引く少年だった。

 強烈な個性を持つ容姿が跋扈するこの世界において、“普通”の印象を与える褐色肌の少年…。

 

 しかし、彼の姿を見た観客は誰一人例外なく身体を震わせている。その震えは決して“恐怖”によるものではない、心の奥底から湧き上がる“歓喜”が抑えられない事による震えだ。

 

 全世界が待ちに待った最強の“英雄(ヒーロー)”…その名は…!

 

マクスター『そうですッ!!!彼こそが真のオルフェウスキャプテンにして!世界ランカー1位ッ!!!その名も…!!ナカタ・ヒデトシィィィ!!!通称ヒデナカタですッ!!!」

 

ヒデ「さぁ!!始めようか!真のオルフェウスのサッカーを!!」

 

 遂に姿を現した“世界最強”の異名を授かった近代サッカー最高傑作…。

 

 観客達からの大歓声をBGMに、“英雄(ヒーロー)”はピッチの上に立つ。




“雷帝”って初期の方は、胡散臭いマッドサイエンティストをイメージして書いてたけど、最近は汚ないアグネスタキオンっぽくなってきた気がする…。
人を挑発するような喋り方とか、テンションが上がると高笑いする所とか、ほぼまんまじゃん…。
マジでこれっぽっちも意識してないのに何でだろ?
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