イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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タイトルに中編2って書いてますけど、オルフェウスVSリトルギガント戦は書きたい事が多いんで少し長めに尺を取ります。
話数に直すと、既に投稿した前・中編入れて5〜6話くらいですかね?少々長くなりますが、お付き合いください。


決戦への切符を掴み取れ!!! 激戦!!オルフェウスVSリトルギガント!!! 中編2

 後半戦がまもなく始まろうとしている中、戦場を包み込む観客席から狂気的とも言っても過言ではない大歓声が巻き起こる。

 

「ヒーデッ!!! ヒーデッ!!! ヒーデッ!!!」

 

 世界中から集まった老若男女関係ないサッカーファンからの大歓声を一身に受けているのは、たった1人の少年だ。

 

円堂「スゲェ…!これが“世界最強”って噂のヒデナカタか…!!ピッチに立っただけで、会場の空気が一気に変わりやがった…!」

 

立向居「観客席からダイレクトに伝わってくるその存在感…!!豪炎寺さんにも匹敵しますよ…!」

 

豪炎寺「いや……既に俺を超えている」

 

 “世界最強”の名を欲しいがままにするヒデナカタ。そして彼に付けられたもう一つの異名は“伝説のヒーロー”。

 その異名に相応しい佇まいと存在感は、あれだけ絶望に沈んでいたオルフェウスの選手達も彼の帰還により希望を取り戻させる程に強烈な物だった。

 

雷牙「面白ェ…!ちょっちトイレに行ってくんぜ〜!」

 

鬼道「大人しく座っていろ稲魂。いくらリトルギガントの選手が雷門イレブンに似ているからって、変装して紛れ込もうとするんじゃない」

 

雷牙「チッ、バレたか…」

 

 15分で考えた計画が呆気なく鎮座してしまった雷牙は、特に抵抗する事なく大人しく鬼道に言いつけに従い試合の観戦に徹する。

 

大介「ヌフフ…!ガーハッハッハッ!!!コイツはますます面白くなってきたわい!!!お前達!相手は少年サッカーの頂点に立つ“最強”じゃぞ!!もう手加減する必要は無いッ!!全力で打ち迎えッ!!!」

 

『はいッ!!!』

 

ヒデ「さぁ!!まだ点差は2点だッ!ココから取り返すぞッ!!」

 

『はいッ!!キャプテンッ!!!』

 

ピーッ!!!

 

 観客達は興奮で支配され、小さな巨人達には緊張が走り、オルフェウスは希望を取り戻す中、審判のホイッスルが鳴り響き後半戦が開始する。

 

フィディオ「頼みますッ!キャプテンッ!!」

 

ヒデ「おいおい?オルフェウスのキャプテンは君だろ?今の俺はただのサッカー好きな旅人さ」

 

 昔の癖が抜け切っていない後輩に呆れつつもボールを受け取ったヒデナカタは、満面の笑みを浮かべドリブルを始める。

 

ドラゴ「俺が一番乗りだァ!!“世界最強”の実力…試してやるッ!!!」

 

 “最強”に相対するのは、自称“リトルギガントの点取り屋”ドラゴ・ヒル。

 怒り狂う龍のように気性が荒いが、その実力はゴーシュにも引けを取らない超一流の実力者だ。

 

ドラゴ「もらったァ!!!ドリャァァァァ!!!」

 

 ドラゴの鋭いスライディングが、ヒデナカタの足に向けて放たれる。

 常人ならば、そのスピードと強面からくる圧力により蛇に睨まれた蛙のように動けなくなるであろう状況…。

 だが、“最強”は余裕の笑みを崩す事はない。

 

ヒデ「良いスライディングだ!だけど……まだまだ甘いなッ!!」

 

ドラゴ「んなっ…!?消えたッ!?」

 

 決してドラゴは慢心した訳ではない。しかし、確かに全力で放ったスライディングは“最強”が持つボールを捉える事なく、まるで実態を持たない霧を相手したかのように龍の牙(スライディング)はすり抜けてしまった。

 

キート「ドラゴがあんな簡単に抜かれただとッ!?」

 

シンディ「流石は“世界最強”…。そう簡単にはいかないって訳か…!」

 

 ドラゴの敗北は、僅かに残っていた巨人達の“驕り”を完全に消失させ、即座に臨戦体制へ移る。

 

キート「必殺技解禁だシンディ!一緒に止めるぞッ!!」

 

 キートは左脚に、シンディは右脚に気を集中させ、全力で宙を蹴る。すると、放出された2人の気が重なり合い、ヒデナカタの前方に巨大な暴風が発生した。

 

キート&シンディ「「“デュアルツイスターッ”!!!」」

 

 “最強”の前に立ちはたがるのは、巨人が生み出した暴風の壁。

 暴風から発せられる風圧を前にすれば、常人ならば立つ事すらもままならず、抵抗する暇もなく吹き飛ばされてしまうだろう。

 

 しかし…生憎、目の前の男は常人ではない。世界中の数多の少年少女が目指す“世界最強”…その椅子に座る事が許されたただ1人の人間なのだ。

 

ヒデ「なるほど…。俺の前には大きさの嵐の壁が立ち塞がり、横から避けようとすればキートとシンディが俺のブロックに入る…。実に考えられた無駄の無い必殺技だな」

 

 初見の必殺技を前にしても、百戦錬磨の実績を積み上げた“最強”の観察眼に掛かれば種を割るのは容易い事だ。

 

ヒデ「なら…コレはどうかな?」

 

 初見→分析→解決→実行。この一連のプロセスを終えるまでに要した時間は僅か0.1秒。

 

 解析を終えたヒデナカタは、ボールに強烈なスピンを掛け目の前の壁に向かってシュートを放つ。

 

キート「ココでシュートだと!?まさか、“デュアルツイスター”を強引に破ってそのままゴールをぶち上げる気か!?」

 

ヒデ「いーや違うな!ロココとは一対一(サシ)で闘りたいからね!!悪いが、邪魔な障害物にはご退出願おうかッ!!」

 

 暴風の壁がボールを捉えた直後、あれだけフィールド上に強い存在感を放っていた竜巻は、一瞬にして威力を弱め始めると、瞬く間に消失する。

 

 かつて竜巻があった場所には、未だに()()()を続けるボールがまるで生きているかのように飛び出し、ヒデナカタの足に戻った。

 

キート「バカなッ!?俺たちの必殺技が初見で破られただと…!?」

 

シンディ「俺たちの“デュアルツイスター”の回転方向は()()()…!まさか、ヒデナカタはあの一瞬でこの破り方を思いついたってのか!?」

 

ヒデ「その通りさ!」

 

 ヒデナカタが取った策は実にシンプル。右回転の竜巻に対し、それを上回る左回転を掛けたシュートをぶつける…ただそれだけだ。

 内容その物は、バカでも思い付ける程にシンプル。問題は例え思い付いたとしてもそれを実行に移せる人間は、この世に片手で数えられる程度しか居ない事くらいだろう。

 

ヒデ「さぁ!!ガンガン行くぞッ!!!」

 

 たった1人で中盤を突破した“最強”は、更に勢い増しを攻め上がる。当然、彼からボールを奪わんと後衛の巨人達は数人がかりでブロックに入るが……

 

ヒデ「よっと!!」

 

 どういう訳か、巨人達は一向に“最強”を止められない。その隔絶したフィジカルから繰り出される巨人達のサッカーは、“最強”が魅せる基本に即した普遍的なサッカーに翻弄されるがままだ。

 

雷牙「あぁン?どういうこった?パッと見、ヒデナカタよりもリトギガのモブの方が強そうだってのに、アイツに手も足も出てねェぞ?」

 

鬼道「いや…。その表現は正しくないな。厳密には“手も足も”出てはいる。ただ…ヒデナカタは容易く躱しているだけだ。まるで赤子の手を捻るように…な」

 

豪炎寺「それでも、やはり解せないな…。雷牙の言う通りリトルギガントの各選手の実力は、甘く見積もっても代表エース相当と見ていいだろう。それに対し、一連のプレーを見てもヒデナカタのフィジカルは優れているとは言えない…」

 

 “デュアルツイスター”の突破こそ観客達の度肝を抜いたが、以降のヒデナカタのプレーは良い言い方をすれば基本に忠実…。悪い言い方をすれば実に“()()”なのだ。

 スピードはフィディオに及ばす、パワーもリトルギガント最弱選手にも及ばない。精々テクニック面で光る物がある程度だ。

 にも関わらず、リトルギガントはヒデナカタに圧倒されている。その事実だけで、ヒデナカタのプレーに見た目以上の“何か”があるのは確実だ。

 

鬼道「そこが問題なんだ。ヒデナカタの強さは、卓越した“技術(テクニック)”の一言で片付けられる代物ではない。勿論、それもあるのは当然としても、違和感を覚えずにはいられない…」

 

 だが、鬼道の眼を以てしてもその“何か”の正体を突き止めるのは容易ではない。

 

 …しかし、イナズマジャパンには()()()1()()だけその正体を掴んだ者が居た。その人物とは……

 

久遠「ヒデナカタの強さの正体……。それは“脱力”と“直感”だ」

 

『“脱力”と“集中力”ぅ…?』

 

 監督である久遠だった。ある意味当たり前と言うべきか、チーム屈しの戦術眼を持つ鬼道よりも先に正体を見抜くが、サッカーではあまり聞かない二つの用語を前に、選手達は腑抜けた声を重ねてしまう。

 

鬼道「どういう事か説明願えますか監督…?」

 

久遠「いいだろう。まず前提として、ヒデナカタは動いている時は身体に殆ど力を入れていない」

 

円堂「えぇっ!!!? 力を入れていないって…!そんなこと可能なんですか!?」

 

 “力を入れずにドリブルを行う”。言葉だけでは簡単そうに見えるが、実際に実行しようとするとまともに動く事すらままならない神業の域…。

 その技術を息をするように実戦レベルにまで押し上げるヒデナカタの実力に、再度イナズマジャパンは絶句する。

 

久遠「そして、ディフェンスを突破する時だけ瞬間的に力を引き出しているのだろう。だから観客席に居る我々の目には、ヒデナカタのプレーは大した事に見えず、平凡なプレーを続けているように見えているのだ」

 

鬼道「なるほど…。一見すると無駄な技術に見えるが、必要最低限の力だけを使う事で体力の消耗を抑えながらも、高いパフォーマンスを発揮する事が可能となっている訳か…」

 

雷牙「んで?二つ目の“直感”ってなんすか?まさかと思いますけど、リトギガのブロックは全部“勘”で避けてるって言うんじゃないっすかね〜?」

 

久遠「そのまさかだ。ヒデナカタは、リトルギガントのディフェンスを前にしても思考を介さずに“勘”だけで対処している」

 

雷牙「え?マジ?」

 

 常人には不可能な神業を習得していると思ったら、今度は“勘”だけで巨人達を圧倒していると知ったイナズマジャパンのメンバーは、言葉を失うのみならずお次は開いた口が塞がらなくなる。

 

久遠「何もそこまで人間離れした技術ではない。実際、プロの棋士は一手打つ度に余計な思考を介さずに“勘”だけで打つと聞く。ヒデナカタはそれを自然体で行っているだけだ」

 

虎丸「いや『だけ』って…」

 

 言うのは易し、使うのは難し。まさにその言葉を体現する“最強”の超技術を見れば見る程、如何に彼が規格外の存在であるかを実感する。

 

久遠「ヒデナカタの動き(プレー)をよく見ておけ稲魂。彼が使っている技術は間違いなくお前が極めようとしている“技術”の通過点の一つだ」

 

雷牙「ヒデナカタの技が…」

 

 雷牙が極めようとしている道…。すなわち、“究極極限界突破(ビヨンド・ザ・ホライゾン)”に通ずる道であると告げられた雷牙は、今にも“最強”と戦いたくとウズウズしていた武者震いをピタリと止め、静かに試合を観戦し始める。

 

ウォルター「“グランドクェイクッ”!!!」

 

ヒデ「“スーパーエラシコッ”!!」

 

 リトルギガント最後の防衛戦たるウォルターの土壁がヒデナカタの行手を阻むが、ザ・キングダム御用達の超絶技巧(エラシコ)を用いて軽やかに躱わす。

 

マクスター『遂にウォルターすらも抜かれたーーッ!!!という事は最後に“最強”の前に立ちはだかるはキーパー・ロココだーーッ!!!幾度となくフィディオの化身技を止めてみせたロココに対し、ヒデナカタはどう攻略するのかーーッ!!!?』

 

ロココ「来ォい!!!」

 

 “世界最強”と対峙せし、世界一を目指す小さな巨人・ロココ。

 予定よりも僅かに早く訪れた“世界最強”に挑戦出来る機会を前に興奮と共に、極度の緊張が走る。

 

ヒデ「そう緊張するもんじゃないさ。今はただサッカーを愛する者として、この一戦を楽しもうじゃないか!!」

 

 シュートの体制に入ったヒデナカタは、ボールに強力なバックスピンをかけ宙へ浮かび上がらせると、ボールに青白いオーラが纏わされる。

 

ヒデ「“ブレイブ…ショットォォォ”!!!」

 

 その蒼白の弾丸は、まさに“英雄の一撃”。

 英雄のオーバーヘッドから力強く放たれた必殺の一撃は、光さす一筋の光道となり、巨人を貫かんと飛び向かう。

 

ロココ「“ゴッドハンドX改ッ”!!!」

 

 光弾に立ち向かうのは、真紅に輝く“神の御手”。真紅と蒼白…見事なまでに対照的な輝きを放つ両者の“最高”が衝突する。

 

ロココ「グッ…!?なんだ…?このシュート…!?」

 

 “神の御手”から伝わってくるシュートの衝撃にロココは、形容し難い感覚に襲われる。

 英雄のシュートは、ロニージョのようにテクニックに秀でていない、フィディオのようにパワーに張り切ってもいない。

 

 強いて言うなら、ヒデ・ナカタがサッカーに懸ける想いの結晶と言えるシュートだ。

 “想い”…その一点だけがパワーもテクニックを超越し、シュートに更なる重さを加え、“神の御手”に亀裂を入れ、全力の踏ん張りも虚しく踵をゴールラインへ近付ける。

 

ロココ「これが…”世界最強”…!! なんて…なんて超次元なんだ…!!」

 

 その手で“最強”の実力を体感したロココは、ほぼ無意識のうちに感嘆の声を漏らしてしまう。

 決して負けを認めた訳ではない。勝ちたいと思う気持ちならばロココとて負けない。

 

 だが……

 

ロココ「ーーグアァァァァァア!!!?」

 

 サッカーを愛する“想い”は“最強”が僅かに上回っていた。

 

ピーッ!!!

 

マクスター『決まったーーッ!!!!見ましたでしょうか皆さんッ!?ヒデナカタが魅せた、巨人すらも寄せ付けない圧巻のプレーをッ!!! コレぞ“世界最強”ッ!!!コレぞ“伝説のヒーロー”ッ!!! よくぞ我々に前に帰ってきてくれたーーッ!!!』

 

 “ヒーロー”の名に相応しい最高のプレーを目の当たりにした観客達は、身体を震わせるだけだった内に秘めた興奮を噴出させ、盛大に湧き上がる。

 

『ヒーデッ!!!ヒーデッ!!!ヒーデッ!!!』

 

 英雄を讃える大歓声は、大気中の空気を激しく震わせ直径100m、高さにして数十mを誇るコンドルスタジアム全域を大きく揺らす。

 

フィディオ「やりましたねッ!キャプテンッ!!」

 

 誰よりも英雄を慕うフィディオは、我先にヒデナカタに駆け寄り大将の得点を喜び、フィディオに続いて他のメンバーも喜びを分かち合う。

 

ヒデ「だから今のキャプテンは君なんだけどな…。まぁいいか。けど、喜ぶのはまだ早いぞ。まだ1点取り返しただけさ、未だにリトルギガントにリードを許してる状況だ。皆で力を合わせて逆転するぞ!!」

 

『はいッ!!!』

 

 英雄の得点により、オルフェウスに立ち込めていた暗雲に『希望』という光が差し始める。

 

 しかし……

 

アンジェロ「アレ?あんまり嬉しそうじゃないね?ライト」

 

 弟に負けず劣らずの曲者であり、チームの中で誰よりも感情表現が豊富な筈のライトは、何故か浮かない顔をしていた。

 

ライト「ーー!!! う、ううん!!メチャクチャ嬉しいよっ!!ただ…キャプテンのプレーに見惚れてただけだよ…」

 

 アンジェロの問いを受けたライトは、何かを考えていたのかワンテンポ遅れて返答するが、その表情はどことなくぎこちない。

 

アンジェロ「それもそっか!!キャプテンが居れば、逆転も夢じゃないさ!!決勝でイナズマジャパンと戦う為に、ボクたちももっと頑張らなくちゃね!!ライト!ゴールは任せたよ〜!」

 

ライト「う、うん…!オルフェウスのゴールはズババーンと任せてよ…!」

 

 何とか誤魔化し倒したライトは内心ホッとしながら無邪気にポジションに戻るアンジェロを見送る。

 彼らが会話を交わした時間は精々数十秒程度…。その間も左腕に走る痛みを耐えていた。

 

ゴーシュ「ロココが…点を許しただと…?」

 

 ヒデナカタの活躍に光を取り戻したオルフェウスとは対照的に、未だに優勢である筈のリトルギガントの表情は曇っていた。

 

 リトルギガントは最大の弱点…。それは“()()()()()()()()()()()()”。

 この試合まで彼らは一度たりとも本気を出した事がない。地区予選含めた全ての試合で必殺技を封印しながらも勝利を収めてきた。

 言ってしまえば世界の大舞台で巨人達はずっと“舐めプ”をかましていたのだ。

 

 ある“鬼”は英国の騎士に向けて言った。『傲慢(舐めプ)は強者だけの特権である』と。

 そんな傲岸不遜が人の形をしたような彼女が、“地平線”の兆しを掴んだ“怪物”に敗北した時どうなったかを覚えているだろうか?

 

 あの時の彼女の身に起きた出来事が、チーム単位で起こっているだけだ。

 

ヒデ「気付いているかフィディオ?」

 

フィディオ「はい。どうやらロココが破られたショックは相当大きいようですね」

 

 本人達はショックを隠しているつもりのようだが、一流の眼には誤魔化せない。

 如何にフィジカルで圧倒していても、精神的な脆さは敗北を招く致命的な“隙”となり得る。

 

 今、この瞬間はオルフェウスにとって決定的なチャンスだ。

 

 

 

 

 

 

 そう…その筈だった…。

 

ロココ「スゴい…!スゴいよ…!!!世界は…僕が思っていた以上にデッカい!!!」

 

ゴーシュ「ロココ…?」

 

 チームメイトの精神(メンタル)にヒビが入りかけた瞬間、先程まで仰向けの体制で青空を見上げていたロココが大声を発する。

 

 突如発せられた雷鳴を思わせる巨人の咆哮…。それに対して敵・観客の驚きはさる事ながら、この場で最も驚いていたのは、他ならぬリトルギガントの仲間達であった。

 

ロココ「スゴいと思わないかい 皆っ!!!師匠が言ってたことは本当だったんだよっ!!いくら僕たちが強くても、世界のどこかには僕らを上回る選手が居る!それが今日、証明されたんだからっ!!!」

 

 “世界最強”に完膚なきまで負けたにも関わらず、太陽のように明るい満面の笑みで喜ぶキャプテンに対して仲間達は唖然とする。…なんなら若干引いてる者も居る。

 

ゴーシュ「喜んでいるとこ悪いけどよォ…。オマエはヒデナカタに負けたんだぞ?オマエだけじゃねェ…俺らは誰一人としてヤツを止める事が出来なかった…。それなのにどうしてオマエはそんなに喜べるんだ?」

 

ロココ「どうしてって…決まってるだろ?負けたってことは、僕はまだまだ強くなれるってことだろ?その事実を前にして、喜ばないサッカー選手(プレイヤー)がこの世に居るかい?」

 

 そうあっけらかんと言い放つロココに対し、それなり以上に付き合いの長いゴーシュは言葉を失ってしまう。

 それは、彼に対する“呆れ”の感情からではない。たった一度破れただけで心が折れかけてしまった自分自身への“恥じ”の感情によるものだ。

 

ゴーシュ「…そうか。そうだよな…!オイテメーらァ!!!俺らのキャプテンサマがこう言ってんぜェ!?俺らはいつまでもナヨナヨしていいのかよォ!?」

 

ドラゴ「なワケねェだろォ!!!一点取られたくらいがなんだァ!!!1点取られたら2点ッ!!10点取られたら100点取り返せばいいだけの話だろうがァ!!!」

 

ウィンディ「師匠に鍛え上げられた俺達の“イナズマ(ハート)”は…!そう簡単に折れやしないッ!!」

 

 ゴーシュに引き続きドラゴが、ドラゴに引き続きウィンディが。キャプテンに呼応するように次々仲間達も立ち直り表情が晴れていく。

 

大介「フッ…嬉しい誤算じゃわい。この試合はアヤツらをより一層成長させてくれたようじゃな…」

 

 教え子達の成長をヒシヒシと感じ取った大介は、帽子を深く被り直しながら感慨深そうに呟く。

 

ヒデ「…どうやら俺の早合点だったようだな。彼らは強い、身体的にも精神的にもだ。皆ッ!!俺達もよりも遥か格上の相手に勝つには、心を一つにするしかないッ!!!俺達のサッカーで勝つぞッ!!!」

 

『はいッ!!!』

 

ピーッ!!!

 

 キャプテンからの激励を受け唯一の弱点であった精神面の脆さすらも克服したリトルギガント。彼らのキックオフから試合が再開する。  

 

フィディオ「行くぞ皆ッ!!“カテナチオ・カウンター”起動ッ!!!」

 

 弱点を克服した最強のストライカーを見逃すオルフェウスではない。再開早々、フィールドに巨大な“閂”が出現しゴーシュを取り囲む。

 

ゴーシュ「馬鹿の一つ覚えがッ!!このゴーシュ様に二度も同じ技が通用すると思うなよッ!!!」

 

ダンテ「ウオォォォォォォ!!!」

 

 先陣を切るのは前半と同じダンテだ。その両手には既に悪魔を模った大楯が握られており、必殺技すら発動する暇を与えないつもりだ。

 

ゴーシュ「ちったァ考えてるようだが無駄だァ!!!“ヒートタックルッ”!!!」

 

 小手先の小細工でゴーシュを完封出来るのならば、あそこまで苦労はしない。

 ダンテの対策も虚しく、“ヒートタックル”の発動を許してしまい、鋼鉄の大楯は呆気なく溶かされる。

 

フィディオ「ハァァァッ!!!」

 

 だが、当然の如くダンテはゴーシュから視界を奪う為の囮。本命は背後に隠れた白き閃光ことフィディオのスライディングだ。

 

ゴーシュ「だから…!俺には二度も同じ手は通用しねェって言ってんだろうがァ!!」

 

 日本が生んだ天才・影山零治が遺した最強のタクティクスすらも、ゴーシュには一度しか通用しない。

 フィディオの最速のスライディングすらも躱されてしまい、無敵の筈の“閂”に大きな風穴が空いてしまう。

 

ゴーシュ「ヘッ!芸の無ェヤツらだぜッ!!タクティクスに人員を割いたせいで中盤以降がガラ空きじゃねェか!!!追加点は貰ったァ!!!」

 

 閂内で起こった二連撃すらも躱してみせたゴーシュは、自身の目の前に広がる最低人数しか配置されていないオルフェウスのディフェンスを見て、自身の追加点を確信する。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

ヒデ「俺の親の祖国にはこんな諺がある…。“勝って兜の緒を閉めよ”ってね」

 

ゴーシュ「ヒデナカタ!?テメェ…!一体どこに隠れてやがった…!?」

 

 ダンテを囮にしてフィディオが本命。…そう思わせておいてフィディオすらも囮であった事を今更ながらゴーシュは確信するが、時既に遅し。

 

ヒデ「“クイックドロウ”!!」

 

ゴーシュ「グォッ!?こんなチンケな必殺技で…!?」

 

 洪水のように溢れる情報量の多さに、僅かに判断力が鈍ってしまったゴーシュは、ヒデナカタが繰り出した“チンケな”必殺技を避けきれずにボールを奪われてしまった。

 

ヒデ「上がれ皆ッ!!カウンターだッ!!!」

 

 突破されれば失点とほぼ同義の大博打に見事勝利したオルフェウスのカウンターが始まる。

 

「「「させるかァ!!!」」」

 

 当然、リトルギガントも失点を防ぐべく、一切の手加減なく全力でヒデナカタの前に立ち塞がるが……

 

ヒデ「俺の得意技を見せてあげよう!!“ひとりワンツー”!!」

 

 今度は右回転で強力なスピンをボールに加える。すると、加えられた回転はボールに擬似的な“生命(いのち)”を与え、まるで透明人間がドリブルを始めたかのような挙動をとる。

 

マクスター『こ、コレは私だけでしょうか…?今…!私の目には、ヒデナカタの周囲に無色透明な選手の(ビジョン)が数人ほど見えていますッ!!!』

 

 癖も少なく、必殺技習得の登竜門とも言われる“ひとりワンツー”も、“最強”の手にかかれば、世界に通用する超必殺技と化す。

 別格の完成度を誇る彼のパントマイムは、観客達の目に姿形が見えない選手がこの場に居るかのように錯覚させた。

 

ドラゴ「クソッタレがッ!!もう1人でサッカーをやってるじゃねェかッ!!そこまで実力があるなら、チームメイトもいらねェだろうがッ!!」

 

ヒデ「ああ!暇な時はちょくちょくやってるよ!!」

 

 挑発故か天然故か、馬鹿正直にドラゴの文句に答えたヒデナカタは、自身が作り出した架空の仲間…そして実在する仲間達と共に巨人のディフェンスを突破し、再びロココと対峙する。

 

ヒデ「“ブレイブショットッ”!!」

 

 英雄の一撃が、再度フィールドを蒼く照らす。

 

 数分前に完膚なきまでに叩きのめされた文字通りの必殺の一撃を前にして、ロココは口角を大きく上げた。

 その表情にもはや“緊張”はない。そこにあるのは、泣き虫と馬鹿にされていた頃の“初心”だけだ。

 

ロココ「“真ゴッドハンドXッ”!!!」

 

ライト「“ゴッドハンドX”が更に進化した…!」

 

 より一層真紅の色が濃くなり、右手に帯びた稲妻の電圧も向上した“神の御手”が蒼白の弾丸を力強く受け止める。

 

ヒデ「信じていたよロココ…。君ならば必ずこの土壇場で進化するってね…」

 

 ヒデナカタは確信していた。その身に宿した潜在能力ならば必ずやこの試合で更なる飛躍を遂げる…と。

 

 だからこそ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ロココ(ーー!? コレって…!)

 

 ロココもまたやや遅れてシュートに加えられた“最強”による小細工に気付く。

 

ロココ「バックスピン…!?」

 

 刹那、逆方向にかけられた回転は突風を発し、“神の御手”から離れ宙を舞う。

 

 その終着点に居たのは……

 

ヒデ「最高のチャンスだッ!!ココで絶対に決めるぞッ!!」

 

フィディオ&ラファエレ「「はいッ!!!」」

 

 オルフェウスが誇る最強のストライカー達と、その背後に降臨する青白くも神々しい光を放つ神話の“英雄”だった。

 

ヒデ&フィディオ&ラファエレ「「「“ペルセウス・オーブ”!!!」」」

 

 3人が渾身のシュートを叩き込んだと同時に“英雄(ペルセウス)”の一閃も炸裂。それにより放たれたシュートは蒼白の大剣と化す。

 

ロココ「クソッ!“X”が間に合わない…!こうなったら…!!」

 

 完全に不意を突かれたロココは“ゴッドハンドX”を発動しようとするが気を溜める時間が足りなさすぎる。

 されども、彼は諦めない。チームに訪れた最大の危機を師から授けられた原点とも言える必殺技に全てを託す。

 

ロココ「“ゴッドハンドッ”!!!」

 

 “X”の前段階(オリジナル)である赤い神の御手が発動され、英雄の一閃を受け止める。

 

ロココ「グゥウ…!!重い…!!コレが…この重さは…ヒデナカタだけじゃない…!オルフェウス全員の想いの結晶なのか…!」

 

 ヒデナカタの“想い”のみならず、フィディオのスピードとラファエレのパワーが加えられた“ペルセウス・オーブ”の威力は“ブレイブショット”を大きく上回っていた。

 

ピシッ…!

 

ロココ「グワァァァァァア!!!」

 

ピーッ!!!

 

 ロココに奮闘も虚しく、原点たる“神の御手”は切り裂かれゴールネットに突き刺さる。

 

マクスター『決まったーーッ!!!オルフェウスの新必殺技“ペルセウス・オーブ”がまたしてもロココから点を奪ったぞーーッ!!!コレにてオルフェウスの得点は2点ッ!!遂にリトルギガントと並んだーーッ!!!』

 

『よっしゃぁぁぁぁ!!!』

 

 一時は“勝てない”と思わされたリトルギガント相手に遂にスコアが並んだオルフェウスは皆、心の底から歓喜の声を上げ喜ぶ。

 点を許したリトルギガントも、ヒデナカタの突破許してしまった事に対して悔しそうにしているが、先程のように戦意は揺らいでいない。

 

 互いにイーブンになった得点、後半戦も残り時間は半分を切っている。オルフェウスは“最強”の合流により本来の姿を取り戻し、リトルギガントは弱点を克服しより“世界一”に近付いた…。ある意味、ここから本当の勝負と言えるだろう。

 

ピーッ!!!

 

 通例通り、ドラゴからボールを受け取ったゴーシュは、視線を数十m先のゴールを護るライトに移す。

 既にオルフェウスは“カテナチオ・カウンター”の初動に入りゴーシュを包囲する寸前だ。

 

 だが……ここに来てゴーシュはヒデナカタすらも予想だにしなかった行動に出る。

 

ゴーシュ「怪我したくなけりゃあ避けなァ!!!“ラストリゾートォ”!!!」

 

フィディオ「この距離から必殺シュートだとッ!?」

 

ヒデ「フィディオッ!!“カテナチオ・カウンター”は中止だ!!俺と君でシュートブロックに入るぞ!!何としてでもライトの負担を減らすんだッ!!」

 

 ゴーシュの行動に度肝を抜かれつつも、辛うじてブロックに間に合ったフィディオとヒデナカタの利き足が、“切り札”を捉える。

 しかし、純粋なパワーだけならフィディオとヒデナカタを足してもゴーシュには到底及ばない。

 

「「グアァァァァッ!!!」」

 

 さしもの彼らでも“ラストリゾート”を撃ち返す事は叶わずに威力を削ぐだけで手一杯であった。

 

 威力が削がれてもなお、土で身体を構成された龍は、地面に出入りを繰り返しながらオルフェウス陣地へ侵攻を続ける。

 

アンジェロ「け、けど…!ココまで威力を削げばライトが化身を使えば…!」

 

 通常、シュートは“エクスカリバー”のような例外を除けばゴールからの距離が離れれば離れる程、威力が落ちる。

 “ラストリゾート”とて例外ではなく、フィディオとヒデナカタのブロックが入った事もあり、今の龍には前半戦のような勢いは無い。

 

ゴーシュ「今だキートォ!!!テメェの力を見せてやれェ!!!」

 

キート「ああっ!!!」

 

 それはリトルギガントも分かっている事。既に点を取り返す為のプランは出来ている。

 

キート「“ダブルグレネェェェェド”!!!」

 

 オレンジ色のアフロヘアーがトレードマークの選手であるキートの必殺シュートが“切り札”に重ね掛けられる。

 すると、龍は再び荒々しさを増し蒼きオーラをその身に宿しながらスピードを速めゴールへ向かう。

 

ライト「シュートチェインか…!“ゴッドハンド・レグルス”でいけるか…?…いや、体力を温存してる場合じゃない…!!」

 

 数m程の距離が離れていても、肌で感じる圧力から既に“ゴッドハンド・レグルス”で受け止め切れる許容量を超えていると確信したライトは、これ以上点差を広げさせない為に、化身を発動する。

 

ライト「来てっ!!ボクのマイフェイバリットヒーロー!!“雷星拳牙 レグルス”!!!」

 

 ライトが思い描く“ヒーロー”その物であり、弟の同じ名を冠した獣人が顕現する。

 黄金の拳闘士は雷鳴の如き咆哮を上げ、自らを喰らいつくさんとする龍に狙いを定める。

 

 その瞬間……

 

ドラゴ「まだ終わってねェよッ!!!リトルギガント1の点取り屋である俺が居るんだからなァ!!!」

 

フィディオ「ココでドラゴだと!?」

 

 ゴーシュの隣に居ながらも、トップスピードを駆使する事でシュートに追い付いたドラゴは、その背にT-レックスを思わせる龍を出現させ渾身の二連撃を叩き込む。

 

ドラゴ「“ダブル・ジョー”!!!」

 

 ドラゴの必殺シュートが炸裂した瞬間、荒れ狂う土竜に続き鋭い牙を有した紅龍のオーラが重ね掛けされ、ゴーシュが放った“切り札”は別次元の存在と化す。

 

ライト(ゴーシュ1人のシュートですら怪しいってのに、2回のチェインが入ったシュートをボクが止められるかな…?ーー!!! 何弱気になってるんだ…!違うだろ稲魂雷斗…!ボクがキーパーである以上、止める止めないの話なんかじゃない…!止めるしかないんだよっ!!!)

 

 危うく自信を見失いかけたものの、土壇場で取り戻したライトはゴールを護る為にその拳に気を一点集中させる……が。

 

ライト「痛゛っ…!」

 

 ライトの覚悟を嘲笑うかのように、鋭い痛みが左腕全体に走る。

 

ライト「左手が使えないってのなら…!こうするまでだァ!!!」

 

 既に左腕に限界が来ている事を察したライトは、土壇場で左手に集中させた気を右手に移し替え、左脚で力強い一歩を踏み出し右拳を勢いよく突き出す。

 

ライト「“スターダスト…!ブレイカァァァァ”!!!」

 

 稲魂雷斗最強にして最大の必殺技が2匹の龍に向かって炸裂する。その名の通り、黄金の獣人の屈強な拳から繰り出される鉄拳は惑星すらも容易く砕く。

 

 …だが、それは利き腕である左手で放った時の話…。慣れない右手で放たれれば、惑星どころか虫1匹すらも砕けない。相手が龍ならばもっとだ。

 

ライト「グギギ…!!グッ…!ウワァァァァ!!!?」

 

 惑星を砕く黄金の拳は、巨人が生み出した龍の牙により逆に粉砕された。

 

ピーッ!!!

 

 ライトの抵抗も虚しく、シュートはゴールラインを割りネットに収まる。次の瞬間に鳴り響くのは、審判のホイッスル。

 これにより、リトルギガントの追加点が確定し、スコアボードに『3』の数字が刻まれる。

 

ライト「アグ…!ガッ…!!」

 

 少女と見間違う容姿と、華奢な体付きを持つライトだが、そのタフさは弟にも匹敵する。

 しかし、吹き飛ばされたライトは立ち上がる事が出来ない。左腕から発せられる激痛が身体全体にまで広がり、苦痛に悶え苦しんでいるのだ。

 

フィディオ「ライトッ!大丈夫かライト!?」

 

 突然起こった仲間の異変にチームメイトは急いで駆け寄り、オルフェウスのキックオフが始まる筈だった試合が一時中断する。

 

 友であるフィディオは、左腕を押さえるライトを見て彼の身に起こった事態を即座に察する事となる。

 

フィディオ「まさか…!左腕の骨が…折れたっていうのか…!?」

 

 遂に我慢の限界を迎えてしまった“怪物”の左腕…。

 オルフェウス最大のピンチがここに訪れようとしている…。




アニメ・ゲーム両方で舐めプを行い、アニメに至ってはゲームでの出番を大きく削られたせいで媒体によって印象が180度変わるキャラとなってしまったロココ…。
けど、作者はやぶてん版の彼の初登場回が大好きです。やぶてん先生の漫画力が光る回なので機会がある方はぜひ一度読んでみてください。

〜オリ技紹介〜

♦︎デュアルツイスター
属性:風
分類:ブロック(連携技)
使用者:キート、シンディ
≪概要≫
リトルギガントのブロック技。超絶強化された“ダブルサイクロン”…以上。
流石にこれだけじゃ味気ないので補足しておくと、リトギガにディフェンス技が少なすぎたから急遽追加した必殺技。元ネタが“ダブルサイクロン”なのは、シンプルに作者がリトギガはイナズマジャパンと対になるように『風神』をモチーフにしてんじゃないかなーって思っている為。ちょくちょく風系の必殺技あるし。
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