ライト「今度は…ボクの番だ…!!」
己の“
彼から発せられる絶大なプレッシャーを前に、巨人達は圧倒され冷や汗が止まらない。
ライト「……」
以前とは異なり、明確に自身の身に起きた変化を感じ取ったライトは、“誰か”の冥福を祈るかのように、静かに目を閉じ天に向かって黙祷する。
フィディオ「ライト…?君は…ライトなのか…?」
何故かフィディオは、“稲魂雷斗”向かって『君はライトなのか』と問う。彼とて目の前の“怪物”が友人と同一人物であると分かっているのに…だ。
だが、誰も彼を責める事は出来ない。何せ、あまりにも違いすぎるのだ。
“怪物”から発せられる、自身に触れる者全て敵味方関係無く喰い殺さんとする理性を失った
“
そのような殺気を出されて、同一人物を疑うのも無理はない。
ライト「……みんな、1つだけお願いがある…」
“怪物”が友の問いに答える事はなかった。その代わりに彼の口からは、凍るように冷たい声でたった一つだけの“お願い”を要求される。
ライト「今から1分間…!誰もボクに近づかないで…!!」
声こそ冷たいが、その言葉の中には間違いなく彼らが知る“稲魂雷斗”が残っている。だが……
ライト「ボクはもう…!!
そう言い終わると、“怪物”は右手に持ったボールをドンと大きな音を響かせ足元へ移動させる。
“本能”が200%以上に解放された事で今にも吹き飛びそうな理性を何とか保ち、未だに左腕に走る激痛に耐えながらも“怪物”の眼に映るのは、巨人達の
ライト「ウガァァァァァァァァッ!!!!!」
獣のように腰を大きく低くした“怪物”は、
“怪物”が居た地点に残されていたのは、白い煙を立ち昇らせる数十センチ程の抉られた穴が2つ。
ゴーシュ「消えたッ!?野郎ッ!!どこに行きやがーー」
ライト「コッチだよ…!」
ゴーシュが“怪物”の声を認識した瞬間、彼は絶句する。何故なら声の方向は
マクスター『おおっとーーッ!!??姿を消したと思われていたライト・イナタマがいつの間にかゴーシュの背後に居るぞーーッ!!!?断言しましょうッ!!私は一瞬たりとも瞬きをしていないッ!!なのに、彼の姿を捉える事が出来なかったーーッ!!!』
雷牙「ケッ、あんなデブのおっさん如きに捉えられちゃあ、意味深に覚醒した意味が無いっての。…だって、
実況だけじゃない。観客席に座る“怪物”の弟も、ピッチに立つ“世界最強”ですらも…。ゴール前から飛び出した“怪物”の姿を肉眼で捉えられる事が出来なかった。
一切の交戦すらも許さずにゴーシュを突破した“怪物”は、
ドラゴ「ハンッ!!初速こそは速かったが、ドリブルのスピードはそこまでのようだなァ!!!この程度なら本気を出せば直ぐに追いつけるぜッ!!!」
だが、いくら常人を超えたスピードと言っても、規格外のリトルギガントの選手にとっては、本気を出せば十分に追いつける範疇……
その筈だった……。
ライト「ハァァァッ…!!!!!!!」
走る。ただひたすら一心不乱に走る。今の“怪物”にはゴールしか見えていない。
一歩、また一歩足を踏み締める度に、“怪物”は青天井に加速していく。まるで風に
ドラゴ「クソ…!クソがァ…!!さっきまでのがトップスピードじゃなかったのかよ…!?」
マキシ「それだけじゃない…!!時間が経つごとに…!ドンドンプレーにキレが増しているぞ…!!」
あれだけ鷹を括っていた巨人達は、ドンドン引き離されていく。
宇宙が毎秒ごとに拡張されているように…。
ブレーキが壊れたスポーツカーが暴走するように…。
“怪物”は走る度に己の限界を超える。
ライト「アグッ…!! まだだ…!!あと少しだけ耐えて…!ボクの身体ァ…!!」
呼吸をするごとに身体が悲鳴を上げる。体力だってとっくの昔に底を尽いている。
それでも“怪物”は止まらない。『
ウィンディ「ならば…!コレならどうだァァァァ!!!」
手痛い代償を負った事で、ようやく目の前の“怪物”が比喩や誇張ではなく、文字通りの“
ウィンディ「必殺タクティクスッ!!“サークルプレードライブッ”!!!」
乱気流の壁に覆われた監獄が、金色の“怪物”を封じ込める。
ウィンディ「キート!試合が終わるまであと何秒だ!?」
キート「あと…30秒だッ!!」
気付けば長かったこの試合も、たった30秒で幕を閉じる事となる。
要するにリードを獲得しているリトルギガントは残り時間いっぱい“怪物”の蹂躙を耐え抜けば勝利という訳だ。
フィディオ「ライトォォォ!!!」
乱気流の監獄に囚われた友を助けるべく、フィディオは化身を発動し外部から監獄を壊そうとする。
だが……
ヒデ「行くなフィディオッ!!」
“最強”は直前でフィディオを止める。
フィディオ「キャプテン…!?どうして止めるんですか…!?」
ヒデ「ライトが言っていただろう?『残り1分は誰も自分に近付くな』って…。まだ時間は30秒
フィディオ「ですが…!あのタクティクスを受けた俺だから分かりますッ!!アレは
非力とはいえフィディオの化身パワーを以てしても内側から監獄を破る事は叶わなかったのだ。流石の“怪物”でも例外ではない…。フィディオはそう考えていた。
しかし、ヒデナカタは静かに首を横に振る。
ヒデ「君の心配も十分に分かる。だが…ライトは既に
図星を突かれた事でフィディオは黙り込んでしまう。確かに、自分が化身を使って手助けすれば0.1%でも監獄から脱出出来る確率が上がるかもしれない。
だが、今ライトが戦っているのは
ライト「ウグ…!!!グゥガァァァァァッ!!!!!!」
今にも消えそうな“理性”…つまりは自分自身とも戦っているのだ。
もしも、フィディオが余計な刺激を与えてしまえば…ギリギリで耐えている最後の糸が完全に切れてしまい、ライトはライトでなくなってしまうだろう。
ヒデ「信じようフィディオ。俺達は完璧じゃない、“勝利の女神”に祈る事しか出来ない時もある。今はただ…祈るんだ」
フィディオ「キャプテン…。……分かりました、今は…ライトを信じます…!」
フィディオは天に居る“勝利の女神”に向けて祈る。彼だけじゃない、気付けばオルフェウスは皆、サッカーを放棄し天に祈っていた。
万が一、“怪物”が破れれば即座に失点するであろうあまりに大きな隙…。それでも彼らは信じているのだ。
“怪物”の境地に至った稲魂雷斗ならば…必ずややってくれるのだと。
「「「「グアァァァァァァァァァァァ!!!?」」」」
刹那、8つに重なった悲痛と困惑の叫びが木霊すると、あれだけ強い存在感を放っていた乱気流の監獄が一瞬にして崩壊する。
ライト「……」
崩壊した監獄より飛び出すのは、黄金のオーラを更に強く立ち昇らせた“怪物”の姿…。
ロココ「信じられない…!“サークルプレードライブ”を…純粋なパワーだけで破ったというのか…?」
大きなダメージを負った看守達が立ち上がれない以上、監獄の中で何が起こったかを知る術は無い。
ただ1つ確かなのは、“怪物”を封じ込めるには乱気流の監獄などはあまりに力不足だった事だけだ。
ラファエレ「ーーハッ!!の、残り時間は…!?」
常軌を逸した光景を前にし、呆然としていたオルフェウスは、真っ先に我に帰ったラファエレの一言によりスコアボード内に設置されたデジタル時計に視線を移す。
アンジェロ「残り時間は…10秒…!!」
そう言い終えた瞬間にデジタル時計は『9』の数字に変わる。
“怪物”の目の前に立ち塞がるのは、今や世界最強の守護神の一角へと成長した巨人1人…。
巨人1匹を喰らうのに必要な時間は9秒もいらない。
ライト「みんなの為に…!ボクは絶対に勝つ…!!!」
“怪物”は飛んだ。その脚にボールを保持しながら。
最高地点に到達した“怪物”は、ロココを見下ろす。そしてロココは“怪物”を見上げる。
今試合初めて互いに目を合わせた両者…。それに何らかの感情を“怪物”は抱いたのだろう。
彼は口角を大きく上に上げ、本来の自分自身たる穏やかな笑顔を見せると、そっと一言呟いた。
ライト「天上天下…唯我独尊…!!!」
まるでその言葉が言霊となったように…。“怪物”の背に雄々しくも美しき翼を有した翡翠色の
雷牙「デケェ…!俺の
兄がこれから繰り出そうとする必殺技に感動を覚えた弟は、無意識のうちにそう呟いていた。
全てを出し尽くす覚悟を決めた“怪物”は、己が辿り着いた境地…その結晶とも言える名を叫ぶ。
ライト「“モンスター・ザ・ワンッ”!!!」
頂点に立てる者はいつの時代も“
“怪物”の一撃と“
ロココ「あぁ…!!素晴らしい…!なんて素晴らしいんだ…!!!コレが…コレこそが“怪物”の力なんだね…!!」
絶対絶命のピンチ…にも関わらず、ロココは遊園地に遊びに来た子供のように満面の笑みを浮かべ、自身に向かって落ちる惑星を見つめていた。
仲間達が“怪物”によって蹂躙されてもなお、人という枠組みを超えた存在の力を前に怒りよりも感動が勝っているのだ。
ロココ「僕は…何としてでも君に勝ちたい…!!!その為に…!僕の
“怪物”がシュートに秘めた“覚悟”に応える為には、自身も己の“全て”をぶつけなければならない…そう魂で理解したロココは、右手ではなく心臓に全ての気を集中させる。
ロココ「見ててよ師匠ォ!!!コレが僕の…!
ロココは叫んだ。自身が出せる最高の声で。
その叫びは、内にある血管を伝い、骨に響き、筋肉を刺激し、心臓に届く。
届けられた“想い”は、心臓に溜められた気を何百倍にも増幅させ、“ある形”を形造りながら外部へ放出される。
完成した形は誰がどう見ても1つの巨大な“右手”だった。しかし、その大きさはこれまで“神の御手”とは比較にならない。
ゴール1つを容易に覆う、まさにロココ・ウルパのキーパーとしての矜持を体現した“タマシイ”の必殺技だった。
ロココ「“タマシイ・ザァ…!!ハンドォォォ”!!!」
この世の存在とは思えない質量を持った2つのパワーが衝突する。
直後に鳴り響くのは、これまた世界の崩壊かと錯覚させる程の轟音。
互いの“最強”の衝突は強烈な衝撃波を発生させ、当事者たる2人以外の選手は、その威力に耐えられずフィールドの外へ吹き飛ばされてしまう。
ライト「その魂ごと…!全て喰らい尽くせェェェェェェ!!!!!!」
ロココ「させるもんかァ…!!!その牙まるごと…!握り潰せェェェェェェ!!!!!!」
“怪物”と“巨人”の魂の叫びがスタジアム全域に響き渡ると、それに返答するように全長数十mの塔が地響きを鳴らし、震え上がる。
ライト&ロココ「「勝つのはボク/僕たちだァァァァァァァッーーーー!!!!!!!!!」」
惑星は崩壊し 御手は粉砕し 最後に残ったのは己の“意地”だけ。
ライト(もう……悔いはないや………)
残念な事に“怪物”は勝負の結末は最後まで見届ける事は叶わなかった。
全てを出し尽くした事で、“怪物”は強制的に稲魂雷斗の姿へ戻り、人形を操る糸が切れたかのように地面に倒れ伏す。
瞼が鉛のように重くなり視界が黒で覆い隠される最中…。ライトが最後に見た光景は……
粉砕された“神の御手”が緋色の雨となり、翡翠色の惑星は巨人の身ごとゴールネットに押し込まれていた。
〜オリ形態・キャラ紹介〜
【キャラクター】
♦︎“かいぶつ”
≪概要≫
度々ライトの夢の中で現れた黒いのっぺらぼうのような存在。
その正体は、ライトが心の内で抱いていた雷牙への憧れ・両親を失ったトラウマ・ヒーローへの願望が歪んだ形で現れた内面であり、ペルソナシリーズで言うところの“影”に相当する存在。
同時にライトにとって試練と呼べる存在であり、特に意味もなくライトの心を折ろうとしたが、これまでの冒険で成長したライトには通用せず、逆に彼を受け入れられた事で統合され、完全に消滅した。
♦︎モンスターモード
≪概要≫
ライトが精神世界で自身の心の闇である“かいぶつ”を受け入れた事で覚醒した超次元形態。
発動すれば、髪のボリュームが増え天に向かって怒髪天を衝く某超野菜人的なヘアースタイルとなる(ライトの場合はビーストに近いけど)。
世界編での活躍は今回だけなので詳しい説明は省くが、この形態となったライトはヒデナカタを超え、“兆”に覚醒した雷牙や鬼乃子と肩を並べる強さとなっている。
ちなみにデストラクチャーズ戦や鬼乃子とのPKで発現していた現象もコレ。
♦︎モンスター・ザ・ワン
属性:山
分類:シュート
使用者:ライト(モンスターモード)
進化系統:不明
≪概要≫
モンスターモード発動中のみ使えるライト最強の必殺技。
その威力は並大抵の化身シュートを優に超え、初登場補正が入った“タマシイ・ザ・ハンド”すらも粉砕する程。
名前の元ネタは、特撮映画『ULTRAMAN』に登場する怪獣兼メインヴィラン“ビースト・ザ・ワン”から。本当なら名前も同名にするつもりだったが、“モンスター”モードなのに名前に“ビースト”が付くのはおかしくない?と思った為、現在の形となった。