イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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えー、冒頭からすみません。前話でちょっとしたミスをしてしまいました。
というのも、作者はゲームでチームGと試合した場所はガルシルドの屋敷の地下にあるサッカーコートだと謎に思い込んでたんですけど、見直したら普通に地上にあるコートでした(何ならアニメでもちゃんと映ってる)。
既に該当箇所は修正してるんで、ちょっと何言っているか分からないって方は、イナヒロのチームG戦はゲーム版の展開をベースにしているとだけ理解してもらえればいいです。


終極への前奏曲(プレリュード)

ロココ「運転手さん急いでっ!!!もっとスピードを出さないと間に合わないっ!!!」

 

古株「お前さんの気持ちは分かるが無茶言うな!!これ以上、スピードを出そうもんならコトアールエリアに着く前に警察のお縄になるのがオチじゃわい!!!」

 

 無事にイナズマジャパンと合流出来た雷牙+コトアール一同は、キャラバンに乗り込み謎の軍団に襲撃されたコトアールエリアに向かっていた。

 

雷牙「にしても意外だな。あんなトロそうなデブにココまで俊敏な動きが可能だなんてよォ。人は見かけによらないってか?」

 

風丸「この状況で最初に発する言葉がそれなのか…?」

 

 キャラバン内を包み込む空気はお世辞にもよろしくない。それもそうだ、何せ世界平和の為に開催された平和の祭典中にテロが起こったのだから。

 それも首謀者は、よりにもよってこの大会の元主催者ときた。こんな状況で未だにいつもの調子を崩さない雷牙の方が異端とも言える。

 

雷牙「つーか何でガルシルドの部下が暴れてんだァ?アイツはブラジルの一件で逮捕された筈じゃねェか?」

 

アラヤ「そうか…お前さん達は知らんのか…。今のアヤツは自由の身じゃよ」

 

『えぇ!!??』

 

夏未「ガルシルドが逮捕された日…。彼の護送中に鉄骨が降り注ぐ事故が起こったの。幸いにも死人は出なかったそうだけど、以降ガルシルドは行方不明…。今にして思えばその事故も彼の策略だったに違いないわ…」

 

アラヤ「そして…戦争を起こす前の最後の慣らしとして、コトアールエリアを襲ったという訳じゃな…」

 

 表面上では冷静を保っているアラヤだが、腕を組み服の袖を強く握り締めている様子からは、ガルシルドに対する怒りを隠し切れていない。

 

円堂「……」

 

 そして円堂はアラヤに何らかの“繋がり”を感じ取ったのか、彼の様子を静かに見つめていた。

 

♢♢♢

キキーッ!!!

 

古株「よしっ!!コトアールエリアに到着したぞい!!!」

 

 念願のコトアールエリアに到着した一同は、すぐさまキャラバンから降り、戦場と化した地に脚を踏み入れる。

 

染岡「なんて有様だ…!町がグチャグチャじゃねぇか…!」

 

 一同の目に入った光景はあまりに悲惨なものだった。

 建物は破壊され、瓦礫の下敷きとなった人が必死に助けを求めている…。

 ある意味、戦争が齎す悲惨さをこれ程端的に現した光景はないだろう。

 

アラヤ「この光景がガルシルドがやらかそうとしている事の“結末”じゃ…。本当に愚かな奴だ…目先の利益だけに囚われ、先人達が必死の思いで築き上げた平和を壊そうとするなんてな…」

 

ロココ「クソッ…!!よくもみんなを…!!!」

 

 誰よりも戦争の悲惨を知るアラヤは、浅はかな考えで戦争を引き起こそうとするガルシルドを哀れみ、罪の無い大切な人達を傷つけられたロココは、右手を強く握り締め怒りを露わにする。

 

 その時だった…。

 

???「コレはコレは…。アラヤ監督にロココ君、そして…イナズマジャパンの皆さんではありませんか。随分と待ちくたびれましたよォ?」

 

 一向の前に現れたのは、この悲劇を生み出した張本人である黒衣を着た15人のテロリスト達。言葉を発したのはキャプテンマークに似た腕章を付けた小太りの男だ。

 

円堂「お前たちがこの事件の黒幕か!!!」

 

???「その通り!私の名はラボック・ヘンクタッカー。偉大なるガルシルド様の私設サッカーチーム・“チームガルシルド”を率いるキャプテンでございます。気軽にヘンクタッカーとでもお呼びください」

 

 丁寧な言葉遣いと作法で自己紹介を行った小太りの男ことヘンクタッカーだが、その振る舞いに罪も無い人々を傷付けた罪悪感は一切感じられない。

 

雷牙「私設チームだァ?ハッ!!寝言は寝てから言いやがれってんだッ!!オメーらがしてる事ァ、どっからどう見てもテロだろうがッ!!!」

 

ヘンクタッカー「コレは心外ですねェ。私達としてはただ普通のサッカーをしているだけなのですよ。…こんな風にねェ!!!」

 

 突如として本性を現したヘンクタッカーは、不意打ち気味に雷牙に向かってシュートを放つ。

 

雷牙「ーー!!! 危っぶねェ!!?」

 

 すんでの所でシュートに反応した雷牙は躱わす事に成功するが、目標を外れたボールはまだ原型を留めていた廃墟に激突すると、一瞬にして粉砕してみせる。

 

ヒロト「木製とはいえ建物一つを容易に破壊してみせるなんて…!嫌な記憶が蘇ってくるよ…」

 

ヘンクタッカー「さてと…お遊びはこれくらいにして、そろそろ我々の目的を果たすとしますかねェ!!」

 

 刹那、ヘンクタッカーが懐から謎の装置を取り出し、側面に備え付けられたボタンを押すと、装置から超音波が発せられる。

 

雷牙「ヌガアアアア!!!?な、なんだこの嫌な金属音はァァァァ!!??」

 

豪炎寺「ガッ…!頭が…割れそうだ…!」

 

 超音波をモロに受けたイナズマジャパンのメンバーは、まるで本能が拒絶するかのような強い不快感に襲われてしまい、立っている事すらもままならなくなる。

 

アラヤ「ロココ!しっかりせいロココ!!!一体どうしたというんじゃ!?」

 

ヘンクタッカー「ククク…!!コレぞ我が財団お抱えの科学者に作らせた超音波兵器ですよ!!ですが…対象年齢を1つにしか絞れないので、貴方のような老耄には効かないみたいですがねェ」

 

円堂「アガッ…!汚いぞ…!!お前らは…サッカーチーム…なんだろ…!?だっ…たら…!!!正々堂々と…サッカーで勝負しろ…!!!」

 

 今にも頭の中が破裂しそうな感覚に襲われながらも、ヘンクタッカーへの怒りが勝った円堂は、何とか立ち上がり彼らに抗議の声を上げる。

 

 だが……

 

ヘンクタッカー「正々堂々ォ?クハハハ!!!どうやら貴方達は何か勘違いしているようですねェ!!!コレはお遊びじゃなく戦争なのですよォ!馬鹿正直に貴方達の土俵(サッカー)に上がる必要がどこにあると言うのですかァ?」

 

 外道は言う。『コレはサッカーではなく戦争である』と。

 

 まるで道化を見ているように円堂を嘲笑う外道達の姿には、主人と同様サッカーを愛する心などこれっぽっちもありやしない。

 

雷牙「この…!クソ野郎共が…!!!」

 

ヘンクタッカー「褒め言葉として受け取っておきましょう。ですが、幾らサッカーが強かろうとも、今の貴方達は赤子も同然。我々をコケにした罰を受けるがいいッ!!!」

 

ズババーンッ!!!

 

 ヘンクタッカーの足から轟音が鳴り響いたと思うと、次の瞬間には風を切る程に鋭いシュートが放たれていた。

 

 その刃の矛先が向けられていたのは……

 

ヘンクタッカー「先ずは貴方ですッ!!くたばりなさいッ!!!裏切り者の弟子ィィィィィ!!!!」

 

 裏切り者・影山零治の意志を継ぐ者、鬼道有人であった。

 

円堂「逃げろォ…!鬼道ォォォォォォ!!!」

 

音無「お兄ちゃぁぁぁぁぁん!!!」

 

 最高の友と最愛の妹の絶叫が空に木霊するが、超音波による不快感が鬼道の動きを大きく鈍らせる。

 

鬼道「グッ…!」

 

 亡き師の意志を絶やさない為に己を奮い立たせ立ち上がろうとしても、それがやっと…。

 外道から放たれた凶弾を避けるには、時間と力が足りなさすぎた。

 

ヘンクタッカー「ハーハッハッハ!!!無駄なのですよォ!!!弱者は強者に蹂躙されるのが世の常ェ!!!今の貴方は“弱者”てありィ!我らこそが唯一の“強者”なのですよォ!!!」

 

 ヘンクタッカーの高笑いが、友と妹の声を掻き消すように木霊する。

 遂には、凶弾は鬼道の身体を貫き影山零治が遺した遺産(サッカー)はここに絶えた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 筈だった。

 

???「“皇帝ペンギン…Xッ”!!!」

 

 凶弾が鬼道を貫く直前…。どこからともなく飛来した漆黒のペンギン達が、凶弾を弾き飛ばし鬼道を救ったのだ。

 

鬼道「このペンギンは…!まさか…!?」

 

 鬼道は自身を救ったペンギン達に見覚えがあった。何せ、ペンギン達の主もまた、師の意志を受け継ぐ者なのだから。

 

???「立てキドウッ!!本物の一流であるオマエはこんな所で終わる男じゃないだろう!!」

 

鬼道「お…お前は…!」

 

 光の中から現れた謎の人影…。その影は特徴的なドレッドヘアーを持ち、鷹のように鋭い眼光は鬼道の素顔とやや似ている。

 

 この場に居る大半はその者に見覚えすらないだろうが、鬼道だけは使役したペンギンと雰囲気から、その者の名が脳裏に浮かび上がる。

 

 その名は……

 

鬼道「デモーニオ…!?」

 

デモーニオ「久しぶりだな…キドウッ!」

 

 デモーニオ・ストラーダ。過去に囚われていた頃の影山によって鬼道の代用品として造られ、激戦の末に“鬼”による凶弾により生死を彷徨った因縁深い好敵手だ。

 

鬼道「何故…お前がここに…?」

 

デモーニオ「フッ、愚問だな。俺がココに来た理由は1つ!オマエから受けた恩を返す為だッ!!俺はオマエに救われた…ならば、今度は俺がオマエを助ける番だッ!!」

 

 かつて鬼道から受けた恩を返すべく、戦場と化したこの地へ馳せ参じたデモーニオは、その鋭い眼光で外道達を睨み付けイナズマジャパンを守護する壁となる。

 

ヘンクタッカー「…ホォ?どうやら貴方は我々と同じく兵器の影響を受けていないようですねェ…」

 

デモーニオ「フン!これでもオマエ達と同じく一度はRHプログラムを受けた身なんでな。そんなチンケな武器に頼るオマエらが、そう易々と俺を倒せると思うなよ?」

 

ヘンクタッカー「笑止ッ!!既に失明は克服したようですが、たかか試作品のRHプログラムにすら耐え切れなかった負け犬一匹が私達に勝てると本気で思っているのですか?」

 

デモーニオ「あぁ。悔しいが俺じゃオマエ達には絶対に勝てないだろうな。……助けに来たのが()1()()()()()()()…」

 

ヘンクタッカー「…何が言いたい?」

 

 デモーニオの顔に浮かべられるのは、まるで()()()()()()()()()()()()()()のニヒルな微笑。

 如何にRHプログラムにより人間の限界を超える力を持ったヘンクタッカーといえどもその笑みの意図を察する事が出来ず、強烈な不信感に駆られてしまう。

 

 そして…その意味を身を持って理解するのはそう遠くない未来であった。

 

デモーニオ「今だッ!!皆ッ!!」

 

『ウオォォォォォォ!!!』

 

ヘンクタッカー「な、何奴!?」

 

 デモーニオから合図が発せられると、茂みから幾つもの影が飛び出し外道達に襲い掛かる。

 日の光が影を照らし、露わになったその正体は……

 

円堂「チームKのメンバーたち…!?」

 

 そう…影の正体はデモーニオと同じく、かつては影山の呪縛に囚われてしまった者達…。

 後に本当の自分を取り戻しその命を散らした影山のように、チームKの選手達も己の罪を償うべく、勇敢に外道に立ち向かったのだ。

 

ヘンクタッカー「デモーニオはまだしも、お前達にまで耐性があるのか!?」

 

インディゴ「確かにRHプログラムを受けたのはデモーニオだけだが、俺らが受けた特訓はRHプログラムの副産物ッ!!だから、ある程度はその超音波に耐性があるのさッ!!!」

 

 完全に不意を突かれたヘンクタッカー達は、本来ならば遥かに力が劣る筈のチームKに対して防戦一方の苦戦を強いられる。

 だが、彼らの目的は外道の駆除ではない。ヘンクタッカーの持つ“チンケな武器”だ。

 

デモーニオ「隙ありィ!!!」

 

ヘンクタッカー「し、しまったァ!!??」

 

 ヘンクタッカーの意識がインディゴに集中してしまった隙を突き、デモーニオが装置を奪う。

 

デモーニオ「こんな物はこうだッ!!!」

 

バリンッ!!!

 

 デモーニオは即座に奪った装置を地面に叩き付けると、試作品であるが故にデリケートかつ大した強度もない兵器は、動線を撒き散らしその短い生涯を終えた。

 

雷牙「プッハァ!!!ようやく生き返った〜!!!サンキューな!デモニオ!!」

 

デモーニオ「デモニオじゃなくてデモーニオだ…」

 

アラヤ「これで形勢逆転じゃヘンクタッカー!!大人しく抵抗を止め、ガルシルドの居場所を吐けッ!!!」

 

 チームKの活躍によりイナズマジャパンの選手達が復活した事で、戦力の数はチームガルシルドを大きく上回っている。

 人間の力を超えたと自負する彼らでも、同じく人間を超えたフィジカルを持ちロココも加わっている現状では分が悪いのは目に見えている。

 

 しかし…その状況を前にしても、ヘンクタッカーは余裕を崩さない。

 

ヘンクタッカー「形勢逆転…?ククク…ハーハッハッハッ!!!流石の貴方も歳を取ればかつての戦術眼が鈍るようですねェ!!!」

 

アラヤ「何じゃと…!?」

 

ヘンクタッカー「我が主人が保有する兵器がアレだけと思っているのですか?甘いッ!!実に大甘ですッ!!!」

 

パチンッ!

 

 勝ち誇った笑みを浮かべたヘンクタッカーは指を軽く鳴らすと、上空から中型のドローンが現れる。

 

目金「ま、まさか…!火器を装備したドローン兵器ですか〜!!??」

 

ヘンクタッカー「ご安心なさい。流石にそこまで凶悪な代物ではありません。何せ、死体の処理が非常に面倒なのでね」

 

ヒロト「だとしても…この状況で使うって事はロクな代物でもなさそうだけどね…!」

 

 ヒロトの悪い予感は当たっていた。隊列を組むように規則の取れたフォーメーションを形成したドローン軍団は、ピーッと無機質な機械音を慣らすとアームでガッチリと固定していた人1人がすっぽり入る程度の大きさの鉄箱を離す。

 

ドスンッ!!!

 

 離された鉄箱は重力の導きに従い、大きな砂埃を巻き起こして落下すると、砂埃の中からガシャンガシャンと何かが変形するような機械音が鳴り響き、砂煙を晴らす。

 

 中から現れた物は……

 

『ピーッ。変形完了。ガルシルド・ガーディアンMk(マーク)Ⅱ。タダイマ、現地ニ到着シマシタ』

 

 2m程度の巨体を持つ、11体の人型ロボットの軍団だった。

 

円堂「ろ、ロボット〜〜!?!?!?!?」

 

ヘンクタッカー「フハハハッ!!!コレぞ“ヤツ”から取れたRHプログラムのデータを基に科学班が作り出した最高の機械兵“ガルシルド・ガーディアンMk2”!!そのスペックはこれまで貴方方が戦ってきた相手とは比較にもなりませんよッ!!!」

 

雷牙「超音波兵器のお次はロボットって…!もう何でもアリじゃねェか!!!」

 

 11体のロボット兵の登場により、人数的有利すらも消えてしまったイナズマジャパンは、再度窮地に立たされる事となる。

 

ヘンクタッカー「リトルギガントからの救援を期待しても無駄ですよォ?奴らは瓦礫の下敷きとなった弱者を助けるので手一杯ですからねェ!!!」

 

???「そうか。ならば…我々では力不足かね?」

 

ヘンクタッカー「・・・は?」

 

 またしても聞こえてくる謎の声。それを聞いたヘンクタッカーは無意識のうちに腑抜けた声を出してしまう。

 謎の声とは言ったが、ヘンクタッカーはその声を知っている。彼だけじゃない、部下もイナズマジャパンも、その声の主を知っている。

 

 何故ならイナズマジャパンにとっえ、彼…いや、()()は激戦を繰り広げた最強の好敵手(ライバル)であるのだから。

 

???「全部、国際警察から聞いたぜッ!!俺らの夢の舞台をくっだらねェ計画の踏み台にしようとしてたなんてよォ!!!」

 

???「カズヤがイナズマジャパンに託した“夢”を…戦争なんかに利用はさせないッ!!」

 

???「だから…ミー達もこの戦いに参戦するヨッ!!」

 

 因果応報。その言葉が現実世界に現れたかのように、外道達を罰するべく続々と集結する“正義”の心を持った救世主達。

 

 そう…彼らは…

 

雷牙「コイツはびっくらポンだぜ…!まさか世界の代表チームが俺らの助太刀に来てくれるなんてなァ…!」

 

 イナズマジャパンと熾烈な激闘を繰り広げた世界各国の代表チームの選手達であった。

 集まったのはAブロックのチームだけじゃない、Bブロックに割り振られたチームの姿もある。

 

ロニージョ「待たせたなイナズマジャパンッ!!」

 

円堂「ロニージョ!?お前も来ていたのか!?」

 

ロニージョ「ああ!!オマエ達がガルシルドの部下とコトアールエリアで戦っていると聞いたからな!大急ぎで力になれそうなヤツらに声を掛けたんだ!そしたらいつの間にかこうなった!!」

 

ロココ「みんなが…僕たちの為に…!」

 

 誰かが言った。『サッカーを愛する想いに国境なんて関係無い』と。

 

 それを体現するように、“世界一”の称号を争っていた好敵手達はサッカーの未来を護るべく、人種や国境の壁を超え1つの地へ集結した。

 

ヘンクタッカー「あ、あり得ない…!オマエ達とリトルギガントには何一つ接点が無かった筈だ!?それなのに…たかがサッカーの為だけに己の命を懸けてまで、集まったというのか…!?」

 

アラヤ「…サッカーが大好きだからじゃよ」

 

ヘンクタッカー「何ィ!?」

 

アラヤ「サッカーを愛する想いに国境など関係無い。心の底からサッカーを愛する者が出会えば、その時点で“壁”や“しきたり”は消え失せる…。それがサッカーという物なのだ」

 

ヘンクタッカー「それは…本当の戦争を知らない“善人”の台詞だァ!!!」

 

 アラヤの言葉を受けたヘンクタッカーは、初めて動揺を見せ強く狼狽える。

 僅かに開いた瞼から見える目には、“悲しみ”の光が灯っていた。

 

円堂「ヘンクタッカー!ガルシルドの目的はFFIを利用して世界で戦争を起こすことだったよな?けど、これを見てみろっ!!俺たちはサッカーを通じて分かり合ってきた!」

 

雷牙「確かに悲しい事や辛い事はたくさんあったぜ…!だがなァ…!!最後にゃあ“敵”も“好敵手”とも分かり合ってきたんだよッ!!コレは決して理想論だけの綺麗事じゃねェ!!俺らの旅路で証明したれっきとした“事実”だッ!!!」

 

円堂&雷牙「「サッカーがもたらすパワーは…!“無限大”だっ!!!」」

 

ヘンクタッカー「グウゥゥゥ…!!!」

 

 先程までの余裕はどこにいったのやら、ヘンクタッカーは円堂と雷牙が今までの旅路で得た一つの“真理”とも言えるサッカーへの解答を前に、ただ歯を食いしばる事しか出来なかった。

 

???『くだらんなァ…』

 

アラヤ「ーー!!! この声は…!」

 

 まるで不甲斐ない部下の代わりに、『ぐたらない』の一言で少年達の“真理”を一蹴したのは、本来この場で聞こえる筈のない男の声であった。

 

アラヤ「ようやく現れたか()()()()()よッ!!貴様は何処に居るッ!?」

 

 遂に尻尾を現した全ての黒幕を逃さぬべく、アラヤは凄まじい剣幕で周囲を見渡すが、そこに黒幕の姿は無い。

 

ガルシルド『ククク…!私はそこにはおらんよ。老いた事で目まで悪くなったのかね?』

 

雷牙「ロボットからだ…!ロボットからガルシルドの声が聞こえんぞ!!」

 

鬼道「遠隔で操作している訳か…!」

 

染岡「チッ!!とことんビビりな野郎だぜッ!!!」

 

 数十年にも及ぶ数々の悲劇の黒幕でありながらも、常に安全な位置から高みの見物を決め込むだけの“卑怯者”に対して、気性の荒い者は次々と悪態を付くが、ロボットを通して発せられる黒幕の声は揺らぐ事はない。

 

ガルシルド『Mr.アラヤよ。この数十年間、貴様という蠅にしつこく飛び回られるのは私にとってこの上ない苦痛だった』

 

アラヤ「フン!よく言うわい!!蠅を誘き寄せたのは貴様の自業自得じゃろう?」

 

ガルシルド『だからこそ!!そろそろ長きに渡った我々との因縁に決着を付けようではないかッ!!貴様が愛したサッカーでなァ!!!のぉ?Mr.アラヤ……いやッ!!()()()()()()()()()よッ!!!』

 

『なっ…!?』

 

円堂「エンドウ……ダイスケ…?」

 

 ガルシルドの口から発せられた名を聞いた者は例外なく固まる。

 何故なら、その名を持つ人物は数十年前の事故により既にこの世から居なくなっている筈だから。

 

円堂「やっぱり…!やっぱりアラヤ監督がじいちゃんだったんだ…!!」

 

大介「…すまんの守。ずっと黙っておって…」

 

 本来ならば、生き別れた祖父と孫の感動の再会となる場面なのだろう。だが、目の前の傀儡の先に居る黒幕がそこで終わる筈がない。

 

ガルシルド『我が屋敷に来いッ!エンドウ・ダイスケ!そしてイナズマジャパンよッ!!そこで決着を付けようではないかッ!!』

 

雷牙「オイオイ?バカも休み休み言いやがれってんだ!!オメーの屋敷って事は俺らが飛んで火に入る虫側って事じゃねェか!?んなあからさまに怪しい罠に誰が引っ掛かるかっての!!」

 

ガルシルド『貴様らが来ないのならばそれでいい。私はヘリで海外に逃げるだけだからな。だが…イナタマ・ライガよ、貴様には最高の()()()()()()()()を用意しているぞ?』

 

雷牙「スペシャルゲスト…?」

 

ガルシルド『ククク…!その答えまで言えんなァ!!どちらにせよ来るも来ないも貴様らの自由だッ!!命が惜しければ尻尾を巻いて逃げるがいいッ!!!』

 

 感動の余韻すらも与えずに矢継ぎ早に最終決戦の舞台を指定したガルシルドは通信を切る。

 

ヘンクタッカー「という事ですイナズマジャパンの皆さん。我々も一足先に消えるとしましょう」

 

 主人の退出に続いてチームガルシルドの面々も、特殊な装置を用いて姿を消した。

 

 すると……

 

『ピーッ!!!ピーッ!!!リミッター解除ッ!!リミッター解除ッ!!コレヨリ“暴走モード”ニ切リ替エマスッ!!!命ガ惜シイ方ハ今スグオ逃ゲクダサイ!!!』

 

 沈黙に徹していたロボット兵達が、赤い閃光を放つと共にけたたましく警告を告げる。

 

エドガー「イナズマジャパンよッ!!この場は我々に任せ、君達はガルシルドの屋敷へ向かいたまえ!!」

 

大介「…行くぞ守、そしてイナズマジャパンよ。ガルシルドの屋敷へ行き数十年にも及んだ因縁に決着を付けるのだ…!」

 

雷牙「…爺さんは怖かねーのかよ?敵の拠点にどんな罠が仕掛けられてっか分かんねェだぜ?」

 

大介「罠の可能性は捨て切れん…。だが、今の奴は社会的な信頼を失っている状況じゃ。権力も資産も国際警察に抑えられとる以上、大それた仕掛けを準備する余裕は無い筈じゃ」

 

 事実に即した現実味のある理論で罠の可能性は低いと告げる大介だが、賢い者は彼の言葉は希望的観測でしかないと分かっている。

 それでも、ここまで来たらイナズマジャパンは見えない罠を恐れて逃げるという選択肢は存在しない。

 

雷牙「そう申し訳なそうな顔すんなよジーさん!!金だけが取り柄のいけ好かねェ卑怯者をギャフンと言わせられるチャンスは滅多に無ェんだ!!ココまで来たらお相手さんのお望み通り、飛んだ火に入る夏の虫になってやろうじゃねェか!!」

 

鬼道「俺も稲魂と同じ気持ちです。それに、ガルシルドは総帥を謀殺した…。我が師の鎮魂の為にも奴には必ず法の裁きを与えなければなりません」

 

 雷牙を皮切りにイナズマジャパンのメンバーは、次々と決戦の地へ赴く事に賛同していく。

 確かに彼らとて死ぬのは怖い。だが、自分達の“夢”そしてサッカーが奪われるのはもっと嫌なのだ。

 

 その為ならば命だって懸けてやる。それこそがイナズマジャパンの強さであり覚悟であった。

 

円堂「よーーし!!!行こうぜみんなっ!!!ガルシルドに勝って、サッカーの未来を護るんだっ!!!」

 

『応ッ!!!』

 

 キャプテンの号令の元、チームは心を1つにしキャラバンへ乗り込む。その胸に黄金に輝く“イナズマ魂”を宿しながら。

 

♢♢♢

円堂「ここが…ガルシルドの屋敷か…」

 

雷牙「俺らにとっちゃ二度の来訪だが、正面から見ると悪趣味の権化みたいな屋敷だぜ…」

 

 懸念されていた道中での妨害もなく無事にガルシルドの居城へ辿り着いたイナズマジャパンは、門の正面に立ち改めてガルシルドという人間の本性が滲み出たような悪趣味な屋敷を見上げている。

 

 古代エジプトの王宮を思わせる建築様式は、空一面を分厚い雲が覆っている事もあり、不気味さすら感じてしまう。

 

ギギギ…

 

 まるでタイミングを見計らったかのように、最後の1人がキャラバンから降りたと同時に、屋敷の門が鈍い金属音を鳴らしながら開かれる。

 

雷牙「どうやら黒幕さんは俺らの侵入にウェルカムなみてーだな」

 

円堂「…よし!行こうみんな!!」

 

 罠を警戒しつつも、黒幕との決着を付けるべく敢えて夏の虫となる事に決めたイナズマジャパン。

 しかし、懸念とは裏腹に罠の類は一切仕掛けられておらず、すんなりと屋敷中央のサッカーコートに辿り着いてしまった。

 

ガルシルド「我が屋敷にようこそ!!愚かにも私の周りを飛び回る薄汚い蠅諸君ッ!!」

 

大介「ガルシルドォ…!!」

 

 手始めに彼らを歓迎したのは、この屋敷の主人であり数十年にも及ぶ悲劇の元凶であるガルシルド・ベイハン。

 そして、彼の後ろにて跪くのは忠実なる僕・チームガルシルドの選手達だ。

 

大介「…意外じゃな。卑怯者の貴様の事だ、罠の一つは二つくらい用意するだろうと思っていたが、一体どんな風の吹き回しだ?」

 

ガルシルド「罠だと?クハハハ!!!今更、そんなチンケな物を使う必要すらないわッ!!何故なら…私の手には“最強”があるからなァ…!!!」

 

大介「何…?」

 

ブロロロ…

 

 その時、空から1秒間につき数百回空気を切る…そんな轟音が轟く。

 当然、皆は空に視線を移し、轟音の正体を確認する。その正体は……

 

雷牙「ヘリコプター…?」

 

 サッカーコートの上空を飛んでいたのは、ドローンではなく大型のヘリコプター。

 その体表は光の反射率が著しく低い漆黒に染められており、曇り空だった事も相まって轟音が鳴り響くまで認識をさせた。

 そして、理由は不明だが、漆黒の飛行艇はおよそ数十mの距離をキープし、空中で待機している。

 

ガルシルド「さァ…!!!最後に…とびっきりのスペシャルゲストを紹介しよう…!!!」

 

 ガルシルドは悪意に満ちた醜悪な笑みを何故か宿敵・円堂大介ではなく、大した因縁もない雷牙へ向けると、ヘリコプターの扉が開かれる。

 

???「トォーーーーーッ!!!!」

 

豪炎寺「ーー!? 何者かがヘリから飛び出したぞ!?」

 

 ヘリから飛び出したのは全身を黒いケープで包み込んだ謎の影…。

 それだけならまだいい。度肝を抜く登場は悪役にとって必須事項だ。……だが、イナズマジャパンは謎の影から目を離せないでいた。

 

 何故なら……

 

雷牙「アイツ…!()()()()()()()()()()()()()()…!!??」

 

 そう。飛び出した影は何も背負っていなかった。文字通り何一つ。

 先程も言ったように、ヘリと地面との距離は数十m…。正確な距離は特定出来ないが、少なくとも10mやそこらではない…それだけは断言出来る。

 

ガルシルド「ククク…!相変わらず派手な登場が好きなヤツだ…」

 

 だが、謎の影……いや()()の規格外さを知る者達は余裕を崩さない。

 彼女がこの程度の距離で死ぬタマではないと知っているからだ。

 

ズガーンッ!!!

 

 ヘリから放出された影は雷鳴の如し轟音を奏で、フィールドに砂煙を巻き上げる。

 

虎丸「そ、そんな…!あの距離からじゃ…グチャグチャに潰れてますよ…!」

 

壁山「うっぷ…!そ、想像しただけでメチャクチャ気分が悪くなってきたっス〜…!!」

 

大介「ガルシルドめ…!もしやこれが狙いか…!?」

 

ガルシルド「ククク…!何を早とちりしている?落下地点をよーく見てみるんだな!!」

 

雷牙「落下地点…?ーー!!! お、オイ…!!アレを見ろ…!!!」

 

豪炎寺「う、動いている…?」

 

 土煙に包まれた本来ならば血を撒き散らし、肉は飛び交い、臓器が溢れ出ているであろう惨劇の跡…。しかし、不思議な事に土煙の中から陽炎のような1つの影が揺ら揺らと揺らめいている。

 

???「まったく…。人を勝手に殺さないでくださーい!このとーり!ワタクシはピンピン生きてマース!!!」

 

ビュオウッ!!!

 

 中心部にて“何か”がヘリのプロペラにも負けない高速回転を繰り出した音が聞こえたと思うと、次の瞬間にはあれだけ立ち込めていた土煙は跡形もなく吹き飛ばされる。

 

 その中から現れたのは、当然漆黒のローブを纏った謎の人物だ。

 

 しかし、イナズマジャパンは既にその正体を察していた。その決まり手となったのはやはり声。

 

 その声は、ある時を境に忽然と消えた“鬼”と同じ声なのだから。

 

???「ハロハロ〜!日本(ジャポン)の皆さ〜ん!!()()()〜♪」

 

雷牙「その鼻につく喋り方…!そして…鳥肌が強制的に立たせられるような気迫…!テメェは…!!」

 

 これ以上の余興は不要。そう判断した少女は、見栄で大きめのサイズを注文したばかりに動き辛い事この上なかったケープを勢いよく脱ぎ捨てる。

 

 遂に露わになったケープの中身、それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼乃子「That's right♪ 超天才最強美少女サッカープレイヤー・鬼乃子ちゃん!またまた猫又!再登ジョー!!!」

 

 行方不明になった筈の明星鬼乃子その人だった。

 

雷牙「……」

 

 仲間達はまさかの“鬼”の登場に唖然とする中、雷牙だけは不気味な程平静を保っていた。

 

鬼乃子「アッレェ?まさかケープの中から現れたのがこ〜んな美少女だったなんてビックリ!!…って展開(シチュ)を予想してたのに、あんまり驚いてないんだね〜?鬼乃子ちゃんの方が逆にショック!」

 

雷牙「いや〜…俺に関係するスペシャルゲストの時点で、薄々予想は付いてたしな〜。そもそも、オメーは影山側の人間だってライトから聞いてたし」

 

鬼乃子「ガンガガガーン!!!」

 

 シリアスな場面にも関わらず、鬼乃子は思った以上に淡白な雷牙の反応に対し、大袈裟な反応(リアクション)で膝から崩れ落ちる。

 

ガルシルド「そうか…。ならば…()()()()()()()?」

 

 だが、それこそが()()()()()()()()()

 

夏未「ーー!!! ま、まさか…!駄目ッ!!!それだけは!!!」

 

円堂「夏未!?どうしたんだよ夏未!?」

 

 いち早くガルシルドの狙いに気付いた夏未は、顔に焦燥を浮かべその悪意に満ちた口を塞ぐべく駆け出すが、その判断はあまりに遅すぎた。

 

ガルシルド「よく聞けェ!!!イナタマ・ライガァ!!!貴様とアケボシ・キノコはァ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血の繋がった実の兄妹なのだァァァァァ!!!!!」




遂に起こってしまった『余程の事』…。ここから世界編は完結に向かって一気にギアを上げていきます。
大介とガルシルドとの因縁の決着、そして…雷牙と鬼乃子の史上最大の兄妹喧嘩…。
その先にある彼らの“夢”を…どうか見守ってください。
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