まぁ、その実態はラスボス戦という名の盛大な兄妹喧嘩だけど。
円堂「鬼乃子が…雷牙の実の妹…?」
あまりにも唐突に放たれた衝撃のカミングアウト…。
その衝撃は、アラヤの正体を知らされた時とは比較にならないものだった。
鬼乃子「あ〜あ…。だ〜から言ったのに。案の定、衝撃のカミングアウトのせいで放心してんじゃ〜ん!」
ガルシルド「フン、それは例のイナタマ・ライトとの約束のせいか?父親に似て妙なところで真面目な奴め。そもそも…貴様も心の奥底ではこの瞬間を望んでいたのだろう?ではなければ、私が発言する前に殺してでも口を塞いでいた筈であろう?」
鬼乃子「そこらへんのモロモロは黙秘権を使用しま〜す!!」
ガルシルドの問いに対して、鬼乃子は本心を無邪気な仮面で覆い隠す事でその場を茶化す。
円堂「雷牙…」
円堂は友の精神状態を心配する。
自身と祖父と異なり、雷牙と鬼乃子との間にあった“繋がり”は決して良い物とは言えない。
下手すればレグルスとの試合の時のように、真実に精神が耐え切れず崩壊してしまう恐れすらあった。
仲間達の間に極度の緊張が走る。数秒の沈黙の末に雷牙が至った結論は……
雷牙「……」
円堂「雷g…熱っつ…!!??」
答えはシンプル。ただ“怒る”事だった。
彼が抱いた妹への“怒り”は、凄まじい熱気となり外部へ放出されていた。
雷牙「…オイ鬼乃子…。ガルシルドが言った事は全部事実か…?」
マグマのように煮えたぎる“怒り”を抱いた雷牙の言葉は不気味な程に冷たかった。
だが、その言葉の裏には返答次第ではただでは済まさない…そんな圧力を感じさせる。
鬼乃子「…うん、事実だよ。なんならこの日の為に用意しといたDNA鑑定書のコピーを持ってこようか〜?」
雷牙「いやいい…俺はずっと感じてたんだ…。俺とオマエさんの間には目に見えねェ“繋がり”があるって…。だが…今この瞬間、俺の予想は確信へ変わった…!」
鬼乃子「厳密には私とアンタじゃ母親は違うけどね〜。いわゆる異母兄妹ってヤツ?まっ、私に母親が存在するのかすら怪しいけど」
言葉ではなく魂で目の前の少女こそ自身と血を分けた肉親であると確信した雷牙…。
ならば…彼が次に問わなければならない事は決まっている。
雷牙「オマエが俺の異母兄妹って事はよォ…!俺の…俺の本当の父親は…!まだ生きてんのかよ…!!」
何とか喉奥から絞り出した兄からの質問…。それを聞いた妹の表情は僅かに曇る。
鬼乃子「ん〜…その質問を答えるのはちょっと難しいな〜。生きてるって言えば生きてはいるし、死んでるって言えば死んでるようなモンなんだよね〜。別に擁護するワケじゃないけど、だいぶ可哀想な人なんだよね〜、あの人」
妹の返答はYESでもNOでもない実に抽象的な言葉だった。ただ…どちらにせよ雷牙の父は生物学的には生きている事だけは分かる。
鬼乃子「け〜ど〜!ちゃんとこの試合は観ていると思うよ!至るところにある監視カメラを通してさ〜!」
鬼乃子は屋敷の周囲を指差す。そこには至る所に備え付けられた監視カメラがジーッと無機質な機械音を発しながらも、生物的な動作でイナズマジャパン…そして稲魂雷牙を見つめている。
雷牙(あの奥に…俺の本当の親父が…)
雷牙は監視カメラを通して、この惑星の何処かに居るであろう父親を睨み付ける。
雷牙からしてみれば、自身の両親は稲魂ステラと稲魂雷夏だけであり、顔も知らない実の父親など知ったこっちゃない。
ただ…どうしても許せないのだ。幼少期の記憶奥深くに刻まれた正体不明の“約束”…。それを破った事が。
鬼乃子「それで?質問はもう終わり?今の私は割と気分が良いからあと1つくらいは質問に答えてやってもいいけど?」
雷牙「俺の父親は…一体どんなヤツだ…?」
鬼乃子「…“色々めんどくさい人”…ってのが端的な評価かな〜?笑っちゃうよね〜!人の心なんて端から持ってないくせに、父親として振る舞ってるんだからさ〜!!」
無理矢理作った笑顔でそう答える鬼乃子の言葉は、明らかに父に対する“悪意”が籠っていた。
同時に雷牙は悟る。妹もまた父の被害者であるのだと。
“奴”がガルシルドとどのような関係で、これまでどんな不幸を撒き散らしてきたのかは分からない。
だが…最早、この試合は円堂大介とガルシルドだけの問題ではない、自身が産まれた時から課せられた運命の1つの
雷牙「なら…初めてのお兄ちゃん命令だ。オメーにちょっとでも良心が残ってんなら、今すぐガルシルドを裏切れ」
鬼乃子「流石の鬼乃子ちゃんもそれはできないナー。そもそも『妹=命令に従う存在』って考え自体が古いんダヨ♪ら・い・が・お・兄・ち・ゃ・ん?」
最後の交渉すらも決裂し、いよいよ兄妹同士の衝突は避けられなくなってしまう。
雷牙「守…」
円堂「ああ、分かってる…。この試合…!絶対に勝つぞ…!!」
数十年にも及んだ全ての因縁に決着を付ける為の最終決戦…。その幕が静かに上がる…。
王将『これは大変な事になりましたァァァ!!!急遽勃発したイナズマジャパン対チーム
ヘンクタッカー「裏でコソコソしていると思ったら、こんなくだらない準備をしていたのですか…」
鬼乃子「ヌッフッフッ!相変わらず心にゆとりがないね〜ダ・ル・マ・く・ん!こーゆー
唐突に現れた実況に唖然とするチームG一向だが、エイリア騒動でこの状況に慣れたイナズマジャパン一向は、特に不審に思う事なく指定のポジションへ着き終わる。
今回のイナズマジャパンのスタメンは以下の通り。
FW:豪炎寺、熱也、ヒロト
MF:雷牙、鬼道、不動
DF:風丸、吹雪、壁山、飛鷹
GK:円堂
使い慣れた4-3-3のフォーメーションを中心に、普段は後半からの投入がデフォルトとなっている不動が初のスタメン入りを果たしている。
加えて、今回のイナズマジャパンの指揮を執るのは久遠ではなく円堂大介…。監督の違いがチームにどのような影響を齎すかはまだ未知数だ。
それに対してチームGのスタメンは……
FW:コヨーテ、スコーピオ
MF:オウル、鬼乃子(キャプテン)、マンティス、クロウ
DF:ジャッカル、ヘンクタッカー、バファロ、ディンゴ
GK:フォクス
バランスの取れたイナズマジャパンに対し、チームGは4-4-2の中盤と終盤に防御を固めたディフェンス重視のフォーメーションを形成している。
その中で特に目に付くのは、やはりキャプテンマークを巻いた鬼乃子の存在だろう。
彼女が如何に規格外の存在であるかは、この場に居る誰もが知っている。彼女の攻撃をどう凌ぐかがこの試合の勝敗を分けると言っても過言でない。
豪炎寺「…雷牙、最後に確認しておく」
雷牙「んだよ…?」
豪炎寺「お前の心が揺らぐ気持ちはよく分かる。だが、この試合は世界の命運を賭けた重要な一戦だ。だから…もしも実の妹と戦う事に迷いがあるのなら…今すぐベンチに下がってくれ」
豪炎寺とて悩む戦友にこのような厳しい言葉を掛けるのは辛い。だが、今や世界の平和とサッカーの未来は自分達に託されているのだ。
未来を掴み取る為には、僅かな凡ミスすらも許されない…だからこそ豪炎寺は心を鬼にして最後の問いを投げかけた。
雷牙「……」
これまで数々の困難を乗り越えてきた雷牙…。その旅路の終着点の一歩手前にて投げかけられた質問への解答は…。
雷牙「……悪ィな豪炎寺…。ぶっちゃけ言って、俺はもう
“困惑”…それが答えだった。
雷牙「ライトの時みてーに俺の中にある大切な“何か”が壊れた感覚はねェ…。かといって、今の俺にはマグマのように煮えたぎる激情が心の中を渦巻いてやがる…。けど、何だろうな…俺自身も不気味に感じるくれー
雷牙は怒っている。自身を捨て“約束”を破った父に対して。
しかし…精神は激情に支配されながらも、理性は異常なまでに冴え渡っていた。
雷牙「オマエさんが心配する気持ちも分かるが、コレは俺が俺である以上避けちゃいけねェ戦いだ。悪いが例え骨が砕けても筋肉が千切れてもベンチに下がるつもりねェよ」
そう語る雷牙の瞳には冷たくも力強い“覚悟”の光が灯っていた。
豪炎寺ですらも初めて見る“覚悟”の光…。それを見てしまえば如何に豪炎寺といえど何も言えなくなってしまう。
雷牙「分かってる。コレは俺の
豪炎寺「……お前にそこまでの覚悟があるというのなら、俺はもう無粋な真似はしない。ただ…これだけは肝に銘じていろ。俺とて万能な訳じゃない、答えの見えない迷宮に囚われた時…その出口を見つけるのは自分自身だ」
雷牙「おっと、まさかの
豪炎寺「言われなくとも負ける気で臨んだ試合は一度も無いッ!!」
ピーッ!!!
審判を務める古株の笛がコート全域に鳴り響き、運命の一戦が始まった。
豪炎寺「不動ッ!!」
不動「熱也ァ!!」
熱也「ヘッ!!ドンピシャァ!!!」
速攻を仕掛けたイナズマジャパンは、巧みなパス回しを駆使してチームGのディフェンスを、1人また1人と抜いて行く。
熱也「ヘッ!!何が強化人間だッ!!こんなんじゃエイリア学園の方が強かったくらいだぜッ!!」
吹雪「慢心しちゃ駄目だよ熱也!前に鬼乃子ちゃんが居る!!」
前線を突破した熱也の前に立ち塞がるのは、自身よりも身長の高い銀狼を物理的にも精神的にも見下す“鬼”…。
彼女から発せられる圧力を前に、自信家である熱也ですらも無意識のうちに歩幅を狭めてしまう。
熱也「ビビってんじゃねぇぞ吹雪熱也ァ!!!テメェが“鬼”なら、こっちは“熊殺し”だァ!!!金棒を振り下ろされようが、俺の牙で噛み砕いてやんよォ!!!」
己を奮い立たせ恐怖を振り払った熱也は、更に加速しトップスピードへ至る事で“鬼”を抜き去ろうとする。
しかし……
王将『ああーーっと!!?これはどういう事だ明星ィ!!!?吹雪熱也を素通りさせたぞォォォ!!?』
“鬼”は決して銀狼を見下してはいなかった。何せ、その紺碧の瞳に映っていたのは金色の“怪物”ただ1人だったから。
始めから、牙を剥き威嚇する銀狼など眼中にすら無かったのだ。
熱也「チィ!!!兄貴以外には興味も湧かねぇってのかよ!?」
豪炎寺「敵のペースに乗せられるな熱也ッ!!奴がディフェンスに入るつもりがないというのなら、こっちはゴールに向かって攻めるだけだッ!!」
ヘンクタッカー「ククク…!そう上手くいきますかねェ?」
やる気の無い“鬼”を突破したのも束の間、今度はセンターディフェンスである ヘンクタッカーが熱也に立ち塞がった。
熱也「邪魔だァ!デブッ!!!」
ヘンクタッカー「残念ながら貴方はそのデブに破れるのですよッ!!“デーモンカットV4”!!!」
ヘンクタッカーの右脚から放たれた紫色の衝撃波は、地面に着弾すると悪魔の形相を持つ巨大な衝撃波の壁へと変わり、熱也の行手を阻む。
熱也「な、なんだこの必殺技は…!?……って言うと思ったかよォ!!その程度のチンケな技は俺らには通用しねぇんだよッ!!!」
悪魔の壁にも怯む事なく熱也はボールを後方へ移動させ、華麗なヒールリフトを繰り出す。
空中に描かれた美しい円弧…。その終着点に居たのは……
豪炎寺「来いッ!!“炎魔 ガザードッ”!!!」
イナズマジャパン最強のストライカー・豪炎寺修也だ。
王将『ここで豪炎寺だァァァ!!! そして既に豪炎寺は化身を発動しているぞォォォ!!!これはチームG、絶対絶命のピンチだァァァ!!!』
“炎魔”を顕現させた豪炎寺は、その身から爆熱の炎を放出し縦横無尽に空中を駆ける。
そして最高点へ到達した豪炎寺は右脚に紅蓮の炎を纏わせると、“炎魔”もまた両手から爆炎を生み出し紅の大剣を作り上げる。
豪炎寺「“マキシマムファイアァァァァ”!!!」
豪炎寺が出せる最大の炎がボールをコーティングし、爆熱の一閃と化したシュートが、地面を焼き尽くしながらゴールへ向かう。
円堂「よしっ!!豪炎寺の必殺技が決まったっ!!これなら…!」
世界の強豪達との激戦を経て、大きく火力を増した豪炎寺最強クラスの炎を前に、仲間達は彼の先制点を確信する。
爆炎の刃と相対するのはチームGの守護神フォクス。だが、その閉じられた瞳は刃を前にしても開かれる事はなく、その代わり……彼の背中から真紅と漆黒に染められた禍々しきオーラが発せられる。
フォクス「ハァ!!!」
禍々しいオーラは、徐々に歪ながらも人の面影を見せる“影法師”へと姿を変え、ゴール前に顕現する。
フォクス「“人工化身 プラズマシャドウ”!!!」
円堂「ぷ、プラズマシャドウだとっ!?」
イナズマジャパンの前に三度降臨した無機質な“影法師”…。その禍々しい容姿に違わずこれまで幾度もイナズマジャパンを苦しめながらも、一切の差異が見られない姿は、選手を駒としか見ていない創造主の邪悪な思考が透けて見える。
フォクス「“シャドウハンドッ”!!!」
“影法師”の局部に虚空の穴が開くと、内部より漆黒の左手が射出され、瞬く間に爆熱の炎は掻き消されてしまい、キーパーの両手に収まった。
豪炎寺「何だと…!?“プラズマシャドウ”は…フィールドプレイヤー用の化身ではなかったのか…!?」
ヘンクタッカー「ククク…!思い込みとは恐ろしい物ですねェ…!体力の温存なんかせずに“ゾーン”を使っていれば、念願の先制点を取れたでしょうに」
鬼道「下がれ豪炎寺ッ!鬼乃子の攻撃が始まるぞッ!!」
チームGに攻撃権が移った事で、イナズマジャパンに緊張が走る。
最早、この試合は単純なサッカーではなく、どれだけ“鬼”の蹂躙に耐えるかを問われるからだ。
…だが、チームGに施されたRHプログラムはイナズマジャパンの想像を超える事となる。
ガルシルド「遊びは終わりだッ!!究極の兵士達よッ!!貴様らの恐ろしさを愚かな反逆者に教えてやれェ!!!」
『ラジャーッ!!!』
魔王の号令を皮切りに、“鬼”を除いた全ての選手の背後よりフォクスと同じ真紅と漆黒に染められた禍々しいオーラが放出される。
鬼道「こ、これは…!まさか…!?」
『“人工化身 プラズマシャドウ”!!!』
フィールドにて顕現したのは漆黒の“影法師”達…。
戦場を埋め尽くした10体にも及ぶ無数の“影法師”は断末魔にも似た唸り声を発しながら反逆者達を見下す。
円堂「ち、チームGの全員が…!」
「「「「化身使いだとォォォーーーッ!!!?」」」」
“チーム全員が化身使い”…。あまりにも想像の斜め上をいく現実を前に皆は絶叫にも等しい驚愕の声を上げてしまう。
ガルシルド「フハハハッ!!!そうだァ!!!貴様らのその顔が見たかったァ!!!忌々しい円堂大介の意志を継ぐ者……貴様らが絶望する顔をなァ!!!」
ヘンクタッカー「残念ですが…ココから先はサッカーではありません。ただの…蹂躙劇ですッ!!!」
『ウ゛ハ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛……!!!』
ヘンクタッカーの“プラズマシャドウ”の咆哮が合図となり、チームGの蹂躙劇が開始する。
鬼道「クッ…!こうなったら仕方ないッ!!ここからのディフェンスは化身を使える者を中心に行うッ!!化身を使えない者は化身使いのフォローに回れッ!!」
『分かったッ!!』
化身使いの数で劣るイナズマジャパンは、無謀だと分かっていながらも化身を使える者が中心となりディフェンスを行うが、いくら単純なパワーでは勝っていようと数の暴力には無力でしかなかった。
王将『ああっとォ!!!遂に最後のディフェンスも突破されてしまったァァァ!!!円堂と相対するのはコヨーテだァァァァ!!!』
円堂「もう種はバレてるんだっ!!!絶対に点はやらないぞっ!!!」
コヨーテ「フン!!我々を実験体如きと一緒にするなァ!!!」
コヨーテがシュートの体制に入ると、“プラズマシャドウ”の局部から虚空の穴が開く。円堂にとってはもう見慣れた光景だ。
コヨーテ「“シャドウレッグッ”!!!」
虚空の穴より出現せし影のシュートがボールに叩き込まれ、シュートは漆黒の魔弾となり円堂に襲い掛かる。
円堂「“魔神 グレイトッ”!!!」
化身を顕現させた円堂は、自身に与えられた僅かな時間をギリギリまで活用しシュートの性質を見極める。
円堂(見えた…!このシュートには…この技だっ!!!)
自身の身体に点在する気を心臓を経由し右手に集中させる。
そして、右手に溜められた気を外部へ発散させるように地面を強く殴り付けると、“魔神”の鉄槌と共にゴール全域を覆う結界が張り巡らせれる。
円堂「“イジゲン・ザ・ハンドォォォ”!!!」
結果と衝突した魔弾は、そのパワーを以て貫こうとするが、力を加えれば加える程結界の壁は厚さを増していき、別方向に凄まじい力が加えられる。
円堂「うおぉぉぉぉぉっ!!!!」
円堂の挫けむ心は現実となり、遂にボールを覆っていた漆黒のオーラは消失し、上空へ軌道が晒された。
王将『止めたァァァ!!!10体の“プラズマシャドウ”に度肝を抜かれましたが、この男も負けていないィィィ!!!自分が居る限りゴールは絶対に護りきる…そんな気迫を感じさせるぞォォォ!!!』
円堂「ここから反撃だぁぁぁぁ!!!!」
いつの間にか手に持っていたボールを足元へ移動させた円堂は、ある人物へ向けて大きく蹴り飛ばす。
豪炎寺の力でも簡単にはキーパーを破れない…ならば、この男に全てを託すしかない。
その男の名は…!
円堂「任せたぞ…!雷牙ァァァァ!!!!」
この決戦のもう1人の主役である稲魂雷牙だ。
鬼乃子「おっ☆ 遂に来たね私の出番ッ!!」
兄の登場に反応した“鬼”は、その重い腰を上げ満面の笑みで“怪物”の殺戮に向かう。
豪炎寺「雷牙ッ!!力を合わせて鬼乃子に勝つぞッ!!!」
雷牙「分かってらァ!!!ハァァァァァ…!!!」
生半可な覚悟と技術では最凶最悪の“鬼”に勝つ事は出来ない。誰よりもそれを理解している“怪物”と“天才”は、己の全てを出し尽くすべく限界を超える。
豪炎寺「“バーニングフェーズ3ッ”!!!」
一足先に限界を超えたのは豪炎寺だ。天より授けられた天性の才能により“怪物”よりも遥かに精度の高い“ゾーン”を発揮する。
雷牙「俺も負けてらんねェなァ!!!しゃおらァァァ!!!」
黄金の気の柱と紺碧の稲妻を立ち昇らせていた“怪物”は、戦友に追い付くべく妖達の特訓により手に入れた自分だけの“至高の領域”へ向かおうとする。
だが……
雷牙「なっ…!?」
まだ入り口にすら立っていないにも関わらず、強制的に“至高の領域”から追い出され、あれだけ激しく立ち昇っていたオーラすらも消失してしまった。
豪炎寺「どうした雷牙!?」
大介「むぅ…!!
唯一、“怪物”の失敗を察していた大介は、己の懸念が現実となってしまった事を悔やみレンズを曇らせる。
秋「ど、どうして…!?稲魂君は完璧に“ゾーン”を取得した筈じゃないの…!?」
大介「父親のせいじゃ…」
冬花「稲魂君のお父さんが…?」
大介「そもそも“ゾーン”とは心・技・体の全てが万全の状態で初めて到達出来る領域…。じゃが、今の小僧には父親への怒りによって一番重要な“心”が欠けておる…。それでは“ゾーン”は元より、その先の領域に向かう事すらも許されんじゃろうな…」
“ゾーン”を成功させるには、心の中の水面が風一つ吹いていない状態にまで持っていく事が必須事項…。
しかし、今の雷牙は父親への怒りという名の嵐により、水面は荒れに荒れていた。
雷牙「チィ!!!“ゾーン”が使えねェってなら仕方ねェッ!!まだ俺にはコレがあるぜェェェ!!!!」
だからといって妹との勝負を諦める理由になる筈がない。
必ず自分の手でこの因縁に決着を付けなければならないのだ。
それが例え…
雷牙「“獅風迅雷ッ!
フィールドに再度、黄金のオーラと紺碧の稲妻が吹き荒れる。その姿は、己の殻を破り100%を超えた
鬼乃子「なんか如何にも切り札登場みたいな空気だけどさ〜。そんなんじゃ私の足元にも及ばないってまだ理解してないの?」
雷牙「ハッ!!誰が
この程度では“鬼”には勝てないと悟った“怪物”は、より一層激しく身体を煌めかせる。
雷牙「200%…300%…400%…!!!」
鬼道「200%を超えただと!?無茶だ稲魂ッ!!!そんな事をすれば…お前の身体が持たないぞォォォォッ!!!」
鬼道は必死の形相で“怪物”を止めようとするも、もう彼は止まる事が出来ない。物理的に止められる前に更に気を高め、500…600…と身体に多大な負荷が掛かろうともお構い無しに、青天井に倍率を高めていく。
雷牙「そしてコイツがァ…!お待ちかねのォ…!!!1000%だァァァァァ!!!!!!!」
空を覆い尽くす分厚い雲から落雷が落ちたかのような轟音が、フィールドに木霊する。
その音源となったのは、当然これまで以上に激しい気を纏った“怪物”だ。
雷牙「待たせちまって悪かったなァ…!!俺ちゃんとしても結構、苦肉の策だったんモンでなァ…!!」
鬼乃子「フーン…。まっ、パワーは悪くないんじゃない?パワーだけは。あんまり長くは楽しめなさそうだけど、中途半端な小細工をされるよりはマシ…かも?」
雷牙「生憎、今の俺の心の水面は荒れ狂ってるんでなァ…!!“地平線”すらも見えやしねェ…!!!」
全身から湧き出る黄金の光を煌めかせ、“怪物”は戦友と共に並び立つ。
“鬼”もまた戦闘体制に入ると、自分を造り出した父への嫌がらせの為に“怪物”を狩らんと鞘に納めていた刀ならぬ金棒を引き抜く。
雷牙/豪炎寺「「しゃおらァ/ハァッ!!!」」
先に仕掛けたのは“怪物”と“天才”だ。各々のやり方で人間の限界を超えた事で齎されたスピードは、常人では目で追う事すら出来ない。
だが…目の前に居るは“常人”に収まる器ではない。
鬼乃子「しょうらァ!!!」
文字通りたった一歩地面を踏み締めると“鬼”の姿は霞のように消失した。
豪炎寺「……右だッ!雷牙ッ!!」
豪炎寺からの指示を受けた“怪物”は即座に方向転換し、本来右サイドから抜く筈だったとこらを左サイドに変更する。
鬼乃子「…!?私のスピードを目で追った…?…いや、何か違う…?」
豪炎寺の言葉通り、右サイドから再び“鬼”が姿を現すが、土壇場で地面を蹴りバク転を行う事で、“怪物”の突破を阻止する。
雷牙「どうした鬼乃子ォ!?随分と焦った様子じゃねェか!?」
鬼乃子「……」
肉体に襲い掛かる張り裂けるような痛みに耐えながら挑発を行う“怪物”だが、“鬼”の耳には届かない。
鬼乃子(…今のお兄ちゃんの実力は“兆”を発動した時よりも大きく劣る…。だから動体視力で私のスピードを追うことは絶対に不可能な筈…。なら…やっぱり豪炎寺パイセンか…)
兄とのハイレベルな攻防を繰り広げながらも、“鬼”はやや“怪物”のフォローに回る豪炎寺に思考を向ける。
不動(ヘッ…!違和感に気づいたみてーだが、テメェみたいな脳まで筋肉で出来てるような奴が考えたところで無駄なんだよ!!)
表情を曇らせる“鬼”を見た不動はニヒルに笑う。それこそが“鬼”の動きを封じる為の罠であるから。
……………
…………
………
……
…
豪炎寺「足元を見ろ…だと?」
試合が始まる少し前、不動は唯一彼女に対抗出来る雷牙と豪炎寺にある策を授けていた。
その内容は『鬼乃子が姿を消したら必ず足元を見ろ』だ。
不動「そうだ。断言するぜ、ハッキリ言って鬼乃子のフィジカルは異常だ。例え俺ら全員が“ゾーン”を習得して襲い掛かったとしても奴には勝てねぇだろうな。“兆”っつー変な技術を発動したクソライオンは別だが」
大半のイナズマジャパンの選手のフィジカルをスポーツカー並みだとしたら、“鬼”のフィジカルはロケット並みと評するのが相応しいだろう。
たかが時速数百kmのスポーツカー程度の馬力と、大気圏を易々と抜け出せる馬力を持つロケットでは端から勝負になる筈がない。
不動「…だが、そんなバケモンにも付け入る隙はあるぜ」
豪炎寺「それが…足元を見るか?」
不動「その通り!!奴はクソライオンと同じで細かい動作は苦手と見た!あんな脳まで筋肉で出来ているような奴がフルパワーで動けば、地面にはクッキリと跡が残るだろうなぁ」
豪炎寺「ーー!!! そうか…!その跡を見れば容易に鬼乃子が移動した方向が分かるという事か!!」
不動「ククク…!な?簡単なトラックだろぉ?」
…
……
………
…………
……………
豪炎寺(やはり不動の言う通りだった…!奴が残した足跡がその行き先を示してくれている…!加えて、本人はまだ俺達のトラックに気付いていない…これならいけるぞ…!!)
事実上、99%は“鬼”の完封に成功したような物だが、豪炎寺は油断する訳にはいかない。
自身の動きが読まれてもなお“鬼”は驚異的な粘りを見せ、このままでは“怪物”が潰れるのが先だ。
日本が誇る最強コンビが目指すのは短期決着…。でなければ、理の外に存在である“鬼”に勝つ事は出来ない。
鬼乃子「ーーとか思ってるんでしょ?」
筈だった。
鬼乃子「褒めてあげる。流石のIQ200を誇る鬼乃子ちゃんでも、アンタらがどんな小細工を使ったのかは分からないよ?けどさ〜…
結局、全てを制するのはいつの時代も“物理”なんだよね♪」
『ッ…!?』
刹那、“鬼”を起点にこの世の物とは思えない…まるで臓腑を握り潰されているかのような強烈な悪寒が敵味方関係なく襲う。
雷牙「鬼乃子…オメー…!!まさかまだ…!?」
鬼乃子「ありがとねお兄ちゃん♪この間の試合でアンタが私を負かしてくれたからさァ…。
その瞬間、“鬼”の身体より淡い緑がかかった黄金のオーラが溢れ出す。
鬼乃子「だから……私の本気を見せてあげる」
溢れ出した気の柱は、見る見るうちに増幅し一定の量に達すると、今度は紺碧の稲妻も追加される。
その姿はまるで……
雷牙「“獅風迅雷”……!?」
兄が修行の果てに手に入れた究極の姿と瓜二つであった。
鬼乃子「どおどお?綺麗な色合いでしょ?この形態を習得する為にい〜〜〜っぱい特訓したんだ〜♪この姿をアンタのネーミングセンスに合わせて名付けるなら〜……
“百鬼狂乱”…ってのはどう?☆」
“敗北”という
その輝きはこの場に居る誰よりも強く…そして美しかった……
雷牙って作中で隠れブラコンみたいに扱われてるけど、厳密にはファミコンなんですよね。
現時点でコンプレックスを抱く対象が兄しか残ってないせいで必然的にブラコンっぽくなるだけで、ライトじゃなくて父か母が生きていればそっち方面にコンプレます。
〜オリ技紹介〜
♦︎限界を更に超えた“限界突破”(仮)
≪概要≫
情緒が乱された事で“超限界突破”にアクセス出来なくなった雷牙が苦肉の策で編み出した超次元形態。
オルフェウス戦での未完成アームドと同様、パワー重視の強化形態だが、本質を掴めていないが故に10分の1程度の出力しか出せなかったアームドと異なり、原理自体は“限界突破”の延長線である為、鬼乃子に喰らい付ける程度には力を扱えている。
ただし、即席の技である事には変わりなく肉体の負担も激しい為、“超限界突破”と比べると実用性は皆無に等しい。
♦︎百鬼狂乱
≪概要≫
雷牙に敗北した鬼乃子が“兆”に対抗する為に開発した超次元形態。本人が意識しているかは不明だが、その姿はオーラの色が黄緑色になった以外は“限界突破”と瓜二つであり、ただでさえ強い鬼乃子が更に強化された結果、“兆”に覚醒した雷牙を超えかねない次元へ至ってしまった。