イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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作者は鬼乃子のキャラは好きだけど、いかんせん強すぎる+試合に出せば描写がほぼバトル漫画化するせいで、常に違和感を覚えながら書かなくちゃいけないのがたまにキズ。
かといって、コイツが普通にサッカーをし出すとマジでインフレが極まるところまできた感があるしな〜…。
パワーバランスの調整ってマジで大変…。


無慈悲なる真紅の大嵐

円堂「…ん?どうしたんだ雷牙?今はハーフタイム中だぞ?」

 

 説明しよう。雷牙が“(ビヨンド)”へと覚醒し、その圧倒的なパワーを以てチームGからリードを奪い勝負はこれからだ…という所で前半戦が終了してしまった。

 絶賛ハーフタイム中にも関わらず、雷牙はベンチに戻ろうとせず1人フィールドに残り、何やら踏ん張った体制で力んでいる。

 

雷牙「ムムム…!ナナナナ〜ン!!!」

 

 すると、奇怪な呪文を唱えると同時に白銀のメッシュとオーラが消失し、皆がよく知る“稲魂雷牙”の姿へと戻った。

 

音無「あっ、流石にハーフタイム中は解除するんですね」

 

雷牙「たりめーよ。“兆”も“極”も継続してるだけで、ガンガン体力が削られるかんなァ。せっかくコツを掴めた手前、解除すんのはもったいねェがまァ、俺ならまた入れんだろ」

 

 事実の中にシレっと自画自賛まで混ぜた雷牙はナハハと陽気に笑う。生き別れた妹の出会いを経ても、相変わらずのナルシズムを発揮する雷牙に対して、チームメイトはウンザリした様子で呆れるも、今はこの陽気さが実に頼もしい。

 

立向居「けど!稲魂さんの活躍で、リードした状態で前半戦を終えているんです!この調子で攻めれば勝てますよっ!!!」

 

大介「…いや、そう簡単にはいかんじゃろうな。奴らのベンチを見てみろ」

 

円堂「ベンチ…?」

 

 大介に促されて皆はチームGのベンチに視線を向ける。そこにあったのは、何の変哲も無いハーフタイムの一場面。

 選手達は、後半戦に向けて司令塔であるヘンクタッカーの指示を聞き、その横では兄との戦いで大きく体力を消耗した“鬼”が大量のスポーツドリンクをがぶ飲みしている。

 

 そう……()()()()()()()()()

 

鬼道「おかしい…。最高戦力である鬼乃子が稲魂に敗北し、リードを許した状態で前半戦を終えられたというのに、何故ガルシルドはあそこまで平静を保っていられる…?」

 

 ガルシルドという人間を一言で表すと『暴君』。

 その絶大な権力を以て、常に自身の邪魔となる人間を裏で排除し、利益の為なら非情な実験すらもティッシュで鼻をかむように平然と実行してきた人間だ。

 

 そんな暴君が、ここまで自分に不利な状況を前に部下に八つ当たりせずに平静を保っていられる筈がない。

 

大介「となると…だ。暴君が余裕を見せてられるのは、ただ一つしかあるまい…」

 

円堂「…()()()()()()()()()()()()…」

 

 ガルシルドは暴君であっても決して強者ではない。そんな奴が“余裕”をかましてられるのは、必ず何らかの自信があるに違いないのだ。

 

大介「後半のフォーメーションも前半と同じでいくッ!じゃが、絶対に油断するでないぞッ!!奴らが何を隠し持っているかは儂にも分からん!!細心の注意を払って試合に臨めッ!!!」

 

『はいッ!!!』

 

 ある意味イナズマイレブンの創始者らしい、実に大雑把な作戦会議が終了し、選手達は後半戦に向けて休息を取る。

 

円堂「…なぁ雷牙」

 

 すると、円堂は珍しく浮かない顔をし友へ話しかける。

 

雷牙「あ〜ン?やけにシリアスな雰囲気じゃねェか。サッカーの守クンよォ」

 

 珍しいと言っても、彼がこんな調子なのは過去に幾度かある。

 既に雷牙は、友が言いたい事を9割方察してはいるが、あえて軽い調子で相談に付き合う。

 

円堂「…単刀直入に聞くぞ。今の俺は鬼乃子に勝てると思うか?」

 

雷牙「……」

 

 友の口から告げられた台詞が1割ではなく9割側である事を確認した雷牙は、顎に手をやり考え込む……フリをする。

 このフリに大した理由は無い。ただ、何となく焦らしただけだ。

 

雷牙「…正直に言うぜ。()()()()()()()()()()()()

 

円堂「やっぱりか…」

 

 『無理』という返答を覚悟していながらも、実際に断言されるとやはりショックだったようで、小さく俯く。

 

雷牙「向上心の塊であるオマエさんにゃあ、気休めにもなんねェだろうが一応言っとく。鬼乃子(アイツ)の強さは異常だ。だって“兆”に覚醒した俺と互角に戦えるんだぜ?()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 円堂は思い出す。アルゼンチン戦にて現れた稲魂雷牙の偽者…。その裏ではプロトコル・オメガとはまだ違った勢力による襲撃を受け、80年後の子孫からの応援により何とか退けた事を。

 

雷牙「俺ちゃんの技術はほぼ裏技同然で身につけたようなモンだ。…だが、アイツは違う。自力でポンポン未来の壁を越えやがる。ハッキリ言って嫉妬したぜ。特に…血が繋がってるって知った今は尚更な」

 

円堂「…意外だな。雷牙だって嫉妬をするんだな」

 

雷牙「それはお互いサマだろーが。…いや、オマエさんの場合は少し違ェーか。クソ妹への嫉妬ってよりかは、全戦全敗して流石に闘志の炎が揺らぎ始めてるってところか?」

 

 鬼乃子と勝負した数だけでいえば、彼女の執着対象である兄よりも、大した因縁もない円堂の方が多い。

 だが、何度かの勝利を納め今では彼女と互角の実力を得た雷牙とは異なり、円堂は一度たりとも鬼乃子に勝てた試しは無い。

 

円堂「悔しいけど…。雷牙の言う通りだ…。俺は今、ちょっとだけ自信をなくしてる…。俺だって、鬼乃子に初めて負けた日から特訓を重ねてきた…。けど…俺の全力疾走(努力)は鬼乃子にとっては歩きみたいなもんなんだ…」

 

雷牙「それは否定しねェ。鬼乃子からは他の選手とは違ってドーピングをしている気配は感じねェかんな。誇張抜きに俺らの想像を絶する地獄みてーな特訓をしてんだろうな」

 

 雷牙は淡々と円堂の言葉を肯定する。彼は分かっているのだ、気遣いの否定は友の成長を妨げるだけだと。

 

雷牙「てかよォ…。俺ちゃんに相談するんじゃなくて、もっとピッタリの人材が居るじゃねェか?ホレ!アソコによォ」

 

 親指で後ろで孫の様子を見守っていた大介を指を差した。

 孫と視線が合った大介は急いで視線を逸らし、ワザとらしく咳き込んだフリをする。

 

円堂「…俺だって出来ることならじいちゃんの助言を貰いたいさ。けど…!それじゃダメなんだ!この試合はじいちゃんとガルシルドの因縁であると同時に俺の試練でもあるんだ!だから…俺は限界の殻を破りたいんだ!そうしなきゃ…俺はいつまでもじいちゃんの後ろを追いかけるだけだから…!」

 

雷牙「ホ〜?なら、じいさんがダメで俺がOKな理由(リーズン)は?」

 

円堂「……まぁ、捻くれた性格の雷牙なら豪炎寺や鬼道と違って抽象的なことしか言わないだろうしセーフかな〜って…」

 

雷牙「んだよそれ…。ハァ〜…、なら雷牙さんが最後に助言を送ってやんよ。手始めに……俺から言わせれば、金色のオーラをギンギンに煌めかせながら戦う円堂守なんざ、解釈違いもいいとこだな」

 

 “極”の領域まで至った雷牙だからこそ分かる。

 円堂には“ゾーン”は致命的なまでに向いていない。

 “努力”というレベリングによるレベルの暴力で数々の強敵に打ち勝ったきた円堂には、あのような繊細な技術は相性が悪いのだ。

 

 強いて言うなら、ライトが覚醒した“モンスターモード”なる技術は相性は良さそうだが、当の本人にも再現が出来ない以上、この試合での習得は不可能だ。

 

雷牙「初心に帰れよサッカーの守クン。オマエさんはいつだって、努力と閃きとじいさん譲りのサッカーセンスだけで強敵に打ち勝ってきただろーが。悩んだ時はとりあえずヘソの下に力を入れやがれ、そうすりゃあ結果(こたえ)は後から付いて来るんだよ」

 

円堂「“ 結果(こたえ)は後から付いて来る”…か。確かにそうかもな…。くよくよ考えてたって仕方ない。未来は考えるじゃなくて、掴み取るものなんだ!よしっ!!!ありがとな雷牙っ!!!ようやく迷いを振り切れたぜ!!!」

 

雷牙「ヘッ、別に大した事はしてねーよ。何せ、俺は捻くれた性格のせいで抽象的にしかアドバイスを出せねーかんな」

 

円堂「あはは…。悪かったって…」

 

 みみっちい性格が発動した雷牙は、皮肉で返しつつもニヒルに笑う。その笑顔はとても嬉しそうだ。

 

大介(そうじゃ。ただ仲間同士で馴れ合うだけでは人は成長する事は出来ん…。守よ、お前は本当によい仲間に恵まれたな…!)

 

 大介は孫の姿にかつての自分を重ねる。

 願うならば悩める孫の力になりたい。だが、彼には自身を成長させてくれる仲間が居る。

 だからこそ、老兵は一歩後ろに下がり、未来ある若者達を静かに見守る事に徹した。

 

ピーッ!

 

大介「泣いても笑ってもこれが最後じゃ!!!地球の未来はお前達に任せたぞい!!!」

 

雷牙「ハッ!!任されたァ!!!」

 

 15分の休息が終わり、未来を託された戦士達は戦場へ舞い戻る。

 残り時間は30分…。この30分で世界の命運が決まってしまう…。

 

 だが……

 

 イナズマジャパン…ひいては円堂大介は()()()()()()()()…。

 

 諸悪の根源 ガルシルド・ベイハンの持つサッカーへの想いが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれだけ()()()()()()()()

 

ピーッ!!!

 

雷牙「“獅風迅雷…ッ!究極兆限界突破(ビフォアー・ホライゾン)…ッ”!!!」

 

 後半戦開始早々、雷牙は“極”ではなく“兆”を発動する。

 こちらがリードしている以上、自身は鬼乃子のマークに徹し追加点は仲間達に任せる…“怪物”にしては実に合理的な判断だった。

 

 しかし……

 

 雷牙は妹の顔を見るなり()()()()()()()()

 

ヘンクタッカー「ククク…!頼みますから、指示通り大人しくしてくださいよ…?」

 

鬼乃子「分かってまーす。私はお兄ちゃんと闘えればそれでいいので、その他大勢は好き勝手に調理してくださーい」

 

 “鬼”はあまりにも()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ーーまさかまだ切り札を隠し持っているのか…?

 

 嫌な予感が“怪物”の脳裏を過ぎるが、もしも切り札がまだあるならとっくの昔に使っている筈だし、彼女ならば喜びに満ちた表情をする筈だ。

 

 故にその線はすぐに消える。

 

ガルシルド「さらばだ。忌まわしきエンドウ・ダイスケの意志を継ぐ者達よ」

 

パチンッ!

 

 形式上の監督として玉座(ベンチ)でふんぞり返っていた暗黒界の帝王が指を鳴らす。

 

ヘンクタッカー「ガルシルド様の御言葉ですッ!!!フェーズ1……開始ッ!!!」

 

『ラジャーッ!!!』

 

 主人の命令に従い、唯一の例外たる“鬼”を除いた全ての黒衣の戦士が守備を放棄し、一切に駆け上がる。

 

鬼道「いくら俺達にリードを許しているとはいえ、鬼乃子を除いた全ての選手が攻撃を仕掛けるだと…?」

 

 凡人ならば戦士達の行動を点を取り返すため故の背水の陣だと思うだろう。

 

 しかし、チームに異常な強さを誇る“鬼”が居る以上、彼女にパスが繋がるように工夫すればこのような博打同然の戦術を取らずに済む筈だ。

 

不動「チィッ!!何か嫌の予感がしやがる…ッ!!テメェらッ!絶対に油断すんじゃねぇぞッ!!!」

 

ヘンクタッカー「今更気付いたところで…もう遅いッ!!!」

 

 結論から言おう。

 

 戦士達の目的は初めから()()()()()()()()()()

 

 サッカーの勝利条件は大きく分けて2つ。

 

 1つ。試合終了までに自チームの得点が相手より上回っている事。

 

 これは言わずもがなだろう。

 

 得点が少ない方が勝つのならばGKなど必要ないのだから。

 

 そして最後の1つは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ヒュオォォォォォ!!!

 

風丸「ガッ…!?な、なんだ…!?この強烈な風圧は…!?」

 

吹雪「こんな身体が引き裂かれそうな風は…!感じた事がないよ…!」

 

 黒衣の戦士による突風は、真紅の旋風を呼び起こす。

 

ヘンクタッカー「フェーズ1完了ッ!!フェーズ2へ移行ッ!!」

 

『ラジャーッ!!!』

 

壁山「アワワワ…!?100キロ超えの俺の身体が浮き始めたっス〜!?」

 

 ドンドン威力を強めた真紅の旋風は、真紅の竜巻へ変貌し、()()()()()の選手を宙へ誘う。

 

円堂「なんだよ…これ…!これが…サッカーなのか…!?」

 

大介「ガルシルドめ…!!最初から“これ”が狙いじゃったか…!!!」

 

ガルシルド「やれェいッ!!!帝王()に逆らった反逆者共を根絶やしにするのだァ!!!」

 

ヘンクタッカー「フェーズ3…移行ッ!!!」

 

 最終段階(フェーズ3)へ完全移行した真紅の竜巻の威力は最高潮へ達する。

 

ヘンクタッカー「とくと味わいなさいッ!イナズマジャパンよッ!!!コレぞ最強にして究極の必殺タクティクス…!その名も…!!」

 

『“グリッドオメガッ”!!!』

 

「「「「グアァァァアアァァァァァ!!!?」」」」

 

 真紅の竜巻により天高く打ち上げられた日本の侍達は、猛烈な回転により平衡感覚を失った事で受け身を取る事すらも許されずに地面へ落下する。

 

円堂「みんなァァァァァーーーーっ!!!!!」

 

 円堂の絶叫が木霊する。だが、それに応える仲間は誰1人としていない。

 

王将『こ…!これはなんという事だ…!稲魂雷牙と明星鬼乃子の独壇場であった前半戦から一転して…!開始早々、チームGの必殺タクティクスがイナズマジャパンに牙を剥いた…!し、しかし…!そのダメージの大きさにより誰も立ち上がる事が出来ません…!』

 

 長年、一流サッカーの実況を担当してきた角馬王将ですらも、目の前の惨劇を前に持ち前の熱く語る事すら憚られる。

 

 それもそうだ。だって、チームGが行ったのは“サッカー”ではなかったのだから。

 

鬼乃子「うっひゃ〜…いつ見てもエッグ〜…。パパが『バカみたいなタクティクス』って言ってたけど、マジじゃ〜ん!もうこんなのサッカーじゃないでしょ…」

 

 さしもの“鬼”も帝王の命令で父が造らされた“サッカー自体を全否定する”タクティクスを前にドン引きしている。

 

雷牙「ふざけ…!やがって…!!!」

 

円堂「雷牙っ!!無事だったのか!」

 

 皆が地面に倒れ伏している中、ただ1人“怪物”だけが立ち上がった。

 恐らく、“兆”による自動防御(オートガード)が重篤なダメージを防いでくれたのだろうが、それでも無傷とはいかなかったようで、“兆”が解除されていた。

 

ヘンクタッカー「ホォ?流石はキノコと血を分けた兄だ。身体の頑丈さだけはキチンと受け継がれていたという訳ですか」

 

雷牙「何ヘラヘラしてんだよ…!テメェらはあんな酷ェタクティクスを使って何とも思わねェのかよ…!!!」

 

ヘンクタッカー「何も?そもそも…“グリッドオメガ”がルール上問題無い筈では?このタクティクスはディフェンスの突破が主目的…。お仲間さん達が負傷したのは、その結果しかないのですよ!!」

 

雷牙「野郎…ッ!!!」

 

 あくまでも仲間の負傷は結果論でしかないとワザらしく言い張るヘンクタッカーに怒りを抑えられなくなった“怪物”は、あえて感情(それ)を燃料に換える事なく“化身”という形で顕す。

 

ヘンクタッカー「ククク…!化身なんかでいいのですかァ?“兆”とやらを使った方がよっぽどマシだと思いますがねェ?」

 

雷牙「やかましいッ!!!オメーら如き、“兆”を使うまでねェんだよッ!!!先ずは、いけすかねェ犬野郎ッ!!テメェからだァァァァァ!!!!!」

 

 “覇王”が黄金の大斧を振り上げる。

 稲妻の如し咆哮を上げながら、コヨーテを切り付けようとすると様は、まさに怒る雷神。

 

 “怪物”の怒りの源は一体何なのか?

 

 仲間達を傷付けられた怒りか?

 

 大好きなサッカーを侮辱された怒りか?

 

 それとも……そのどちらもか?

 

 その答えは本人ですらも分からないだろう。それ程までに今の“怪物”は我を失っているのだから。

 

ガキンッ!!!

 

 金属の衝突音がフィールド中に鳴り響く。

 

 だが、“覇王”の大斧がコヨーテを仕留める事は終ぞ無かった。

 

 何故なら……

 

雷牙「そこを退きやがれ…ッ!!鬼乃子ォ…!!!」

 

鬼乃子「フッフ〜ン!だが断る☆ アンタの相手は、そこのワンちゃんじゃなくてわ・た・し!そこらへん忘れないで欲しいな〜♪」

 

 音も無く現れた自我を持つ異界への城門により、塞がれてしまったからだ。

 

コヨーテ「フンッ!!」

 

王将『ああッとーーッ!!!稲魂のディフェンス虚しくコヨーテが泣いたァァァァ!!!!加えて“グリッドオメガ”によってイナズマジャパンのディフェンスは崩壊しているゥゥゥ!!!』

 

 崩壊どころの話ではない。

 受け身すら取れずに高所から落下した事により、大半の選手は気絶…運良く意識を保てていても意識は朦朧としまともにプレーを続けられる状態ではなかった。

 

 それでも試合は止まらない。止める事を許されない。

 

 何故なら、この決戦には正式な審判無き戦争なのだから。

 

コヨーテ「スコーピオッ!」

 

スコーピオ「ハァァァ…!“人工化身 プラズマシャドウ”…!」

 

 漆黒の影法師がフィールドに顕現し、円堂大介の後継者を潰すべく、その胸に虚空の穴を開ける。

 

スコーピオ「“シャドウレッグッ”!!!」

 

円堂「止める…!“イジゲン・ザ・ハンドッ”!!!」

 

 もう数える事すら億劫になる程、世界の大舞台の裏側で円堂を苦しめてきた必殺シュートは、もはや成長した円堂の敵ではなかった。

 

大介「ーー!!! い、いかん…!落ち着くんじゃ守ッ!!もっと周りを見ろッ!!!」

 

 だからこそだろうか…?

 

円堂「なっ…!?」

 

王将『違うッ!!!これはシュートではないァァァい!!!パスだァァァァッ!!!!』

 

 シュートは突如として軌道を変える。

 

コヨーテ「“爆ガンショットッ”!!!」

 

 チームGとて馬鹿ではない。“鬼”のやる気がない以上、正攻法では円堂を破れないのは理解していた。

 

 故に彼らは円堂の冷静さを削ぐべく、徹底的に非情なプレーに徹した。そして……その結果は大当たりだ。

 

円堂「ぐ…!ぐあぁぁぁぁああぁぁっ!!!!」

 

 ピーキーな性能を持つが故に、弱点を突かれるとトコトン強度を著しく低下させる異次元の結界は、文字通りの弾丸と化したシュートに貫かれ、ゴールネットを激しく揺らした。

 

ピーッ!!!

 

 これにてチームGは2点目を獲得。前半戦にて“怪物”が齎したリードは呆気なく埋められる事となった。

 

円堂「くそ…!俺のせいで…雷牙の頑張りがムダになった…!……ーー!!! そ、そうだ…!みんなは…!?」

 

 地面に倒れ伏した仲間達を思い出した円堂は急いで視線を前に向ける。

 

円堂「みんな…!」

 

 現実は残酷だった。

 “グリッドオメガ”により大ダメージを負ってしまった仲間達は、辛うじて無事だった雷牙を除き、未だに立ち上がれていない。

 

ガルシルド「フハハハッ!!!見たかエンドウ・ダイスケェ!!!貴様が愛したサッカーで、貴様の志を継ぐ者達が傷付けられた光景はァ!?」

 

大介「ガルシルド…!貴様ァ…!!!」

 

ガルシルド「そうだァ!!!私はその表情(かお)が見たかったァ!!!何を考えてるか分からない顔で、私の周りをコソコソ嗅ぎ回る汚い蠅が怒りに震えるその表情がなァ!!!」

 

 悪の帝王は笑う。

 

 まるで目の前に広がる惨劇がさぞ面白い喜劇であるように。

 

 サングラスの奥の眼に“憎悪”を込めて自分を睨み付ける宿敵を見下すように。

 

 もはや、その姿に表社会の人々が知る石油王ガルシルド・ベイハンの姿は無い。

 

 ここに居るのは、ドブのように濁り、吐瀉物のように薄汚い本性を剥き出しにした老害だ。

 

円堂「ふざけんなよ…!」

 

 感じた事のない激しい怒りに感情を支配された円堂は、今のも喉奥から爆発しそうな罵詈雑言な何とか抑え、自身の“想い”だけを抽出する。

 

ガルシルド「巫山戯(ふざけ)るゥ?言っている意味が分からんなァ?私は至って大真面目なのだよ?貴様らを潰す事になァ!!!!!」

 

円堂「だったら…!どうして…!いつまでもサッカーにこだわってるっ!!!!」

 

雷牙「守…」

 

円堂「だってそうだろ!?本当に俺たちを潰したいのなら、こんな回りくどいやり方じゃなくても、他に方法があった筈だっ!!!それでも、お前はサッカーでの決着を選んだ…!それは心の奥底では、お前もサッカーが好きだからじゃないのか…!?」

 

 円堂の脳裏に浮かぶのは、旅路で出会った2人の黒幕。

 

 1人は影山零治。

 

 もう1人は吉良星二郎。

 

 故郷にて起こった数々の悲劇を生み出した張本人達…。

 

 影山零治はサッカーに復讐するべく、罪もない人々の命を奪い。

 

 吉良星二郎は亡き息子の鎮魂の為に、サッカーを兵器に変えた。

 

 だが…

 

 彼らは心の奥底ではサッカーを愛していた。

 

 影山零治は愛していたサッカーに人生を狂わされた。

 

 吉良星二郎はサッカーが原因で最愛の息子を奪われてしまった。

 

 彼らの愛は“愛憎”ではあったものの、計画の根底には必ずサッカーを愛する心があった。

 

 だからこそ…だ。

 

 円堂は信じていた。

 

 ここまでサッカーでの決着に執着するガルシルドにも、サッカーを愛する心があるのだと。

 

円堂「どうなんだ…!答えろっ!!!ガルシルドッ!!!」

 

ガルシルド「……いいだろう。特別に教えてやろう、エンドウ・ダイスケの孫よ。私がワザワザ、サッカーで勝負を提案したのはなァ……」

 

 しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の口から出た発言は、円堂を裏切る事となる。

 

ガルシルド「忌まわしきエンドウ・ダイスケを苦しめる為。それ以上でも以下でもない」

 

円堂「なんだと…!!!」

 

 あまりに無慈悲な返答を前に、円堂は歯を強く食い縛る。

 

ガルシルド「少しは低俗な脳みそで考えてみろ。何故、私が馬鹿正直にサッカーなどという()()()()()()()に拘らなければならん?」

 

 サッカーを“つまらない球技”だと平然に言い放つガルシルドの表情には、“嘘”や“挑発”といった感情は見られない。

 彼は本気でそう思っているのだ。『サッカーとは手段の一つにすぎない低俗な代物である』…と。

 

円堂「サッカーが…!つまらない球技だと…!?」

 

ガルシルド「当たり前だろう?私にとってサッカーなど手段の一つにすぎん。ワザワザ貴様らとの試合を提案したのは、低俗な貴様の語彙力に合わせてやるすれば…“エンドウ・ダイスケへの嫌がらせ”以外の何物でもないわッ!!!」

 

円堂「だったら…!なんでRHプログラムにサッカープレイヤーを選んだんだっ!?」

 

ガルシルド「フン!!!まだ分からんのかね?シュートは“銃弾”に!ゲームメイカーは“司令塔”に!その他の選手は“歩兵”に!ここまで戦争に見立てられるスポーツは他にないだろう!?サッカーこそ…!ミニチュアサイズの“戦争”なのだよッ!!!!」

 

円堂「そんな…!」

 

 円堂は信じたかった。

 

 目の前の醜悪な老人にもサッカーを愛する心はあるのだと。

 

 しかし、現実は違った。

 

 老人は本気でサッカーを“手段”としてしか見ていない。

 

 この世界で最も人気のあるスポーツがサッカーであり、近年の国際情勢により国家間で緊張が走っていた。

 

 その亀裂を確固たる物にする為に、サッカーが都合の良い道具てあった…ただそれだけの事なのだ。

 

ガルシルド「ただ…一つ付け加えておくとするのなら、私とて好き好んでサッカーを実験場に選んだ訳ではない」

 

雷牙「何…?」

 

ガルシルド「元々、ヘンクタッカー達に施したRHプログラムは、我が財団に所属する“ある科学者”が開発したプログラムをベースにしている。だが…忌々しい事に、そのオリジナルは初めからサッカーを前提に作られてあったのだよ」

 

雷牙「まさか…!」

 

 ガルシルド財団に所属する“ある科学者”…。

 

 黒衣の戦士に混じる明らかに次元の違う強さを持つ“鬼”…。

 

 その二つの要素は、勘の鋭い雷牙に“ある事実”を予感させるには十分すぎた。

 

ガルシルド「その通りィ!!!その科学者とは…!貴様とアケボシ・キノコの父ッ!“雷帝”なのだよォ!!!」

 

雷牙「“雷帝”…明星帝牙の事か…!」

 

 またしてもガルシルドの口から出たカミングアウトの前に、雷牙は誰にも聞こえないような声量で、走馬灯の中で知った父の本名を呟く。

 

 不幸中の幸いと言うべきか。母の激励により過去を振り切った雷牙には強いショックは受けていない。

 それでも、コトアールエリア襲撃の元凶は実の父であったという事実は、父親である認めてなくとも、少なくない罪悪感を植え付けられる。

 

???「それが…どうした…!」

 

ガルシルド「おや…?」

 

 どこからともなく聞こえる円堂守でも稲魂雷牙でもない声に、ガルシルドは首を傾げる。

 

 その声の主は、朦朧とする意識の中、満身創痍の身体で何とか立ち上がる、その背に10番を背負った白髪の少年だった。

 

雷牙「豪炎寺…!オマエ…!立てるのか…!?」

 

豪炎寺「なんとか…な…!」

 

鬼道「豪炎寺だけじゃない…!俺達も…!まだ戦えるぞ…ッ!」

 

 豪炎寺の復活を皮切りに、大きなダメージを負った侍達が次々と立ち上がる。

 

鬼乃子「ハヘ〜。“グリッドオメガ(ゴミタクティクス)”をモロに喰らったってのに、立ち上がれるなんて流石ダネ〜。ちょっと尊敬しちゃうかも」

 

ガルシルド「フンッ!そのまま大人しく眠っていれば、コレ以上苦しまずに済んだというのに!」

 

豪炎寺「生憎…!俺達は諦めが悪いんでな…!どんなに…傷付けるられようが…!勝利への可能性が…0.1%でもある限り…!諦めない…!!」

 

円堂「豪炎寺…」

 

鬼道「前を向け…ッ!円堂…!稲魂…!もうこの戦いは…主義主張が入り込む余地など無い…!俺達の“未来”か…ガルシルドの“未来”かを賭けた一戦…ただそれだけなんだ…!」

 

雷牙「……。…ヘッ!確かに鬼道の言う通りかもなァ。言葉での語り合いなんて、俺らには性に合わねェ…!俺が使う言語は“サッカー”ただ一つッ!!!そうだろ!?守ッ!?」

 

円堂「…ごめん雷牙。俺にはもう、何が正しくて何が間違ってるかなんて分からない。多分、一生かかっても理解できないと思う…。けど…!今はただ、俺たちの“未来”を護る為にサッカーをする…!」

 

 圧倒的に不利な状況から始まってしまった後半戦…。

 

 果たしてイナズマジャパンは“未来”を掴み取る事が出来るのか…?




円堂が雷牙や豪炎寺と比較して化身以外の超次元的パワーアップ要素が無いのは、単純に作者がDB的な強化形態は円堂には合わないと思ってるからです。
作者の中で円堂守は98%の努力と1%の閃きと1%の祖父譲りのサッカーセンスで成長していくキャラなので。
逆にそこらへんの要素が逆転したのが、ハルって風に解釈してます。

イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。

  • 稲魂雷牙
  • 稲魂雷斗
  • 明星鬼乃子
  • “雷帝”
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