そこに命を懸ける稲妻の魂を持つ者達を人々はイナズマイレブンと呼んだ…。
※呼びません
※呼んでたまるか
※誰か呼んでやれよ
“怪物”は紙一重の差で“鬼”に敗北した…。
世界の平和とサッカーの未来を一身に背負った“怪物”が。
ガルシルド「フハハハハハハッ!!!よくやったキノコォォォ!!!残るは目障りなキーパーだけだァァァ!!!忌まわしきエンドウ・ダイスケの孫をォ…!殺せェェェェェ!!!!!」
その事実は、ある闇の帝王に“希望”を抱かせ…。
大介「逃げろ…!逃げるんじゃ守ッ!!!もう、
偉大なる伝説の立役者に“絶望”を抱かせる。
だが……
円堂「俺は…!逃げない…!!!」
まだ希望の光は消えちゃいない。
鬼乃子「………」
その光は今にも消えそうな程に弱い光だった。
しかし……
己の存在は、世界そのものに拒絶されていると自覚してしまった“鬼”にとって、彼から放たれる微かな光ですらも目を背けたくなる程に眩しい。
心身共に極限まで追い詰められた今の“鬼”には、“勝者”としての面影はこれっぽっちも無かった。
鬼乃子「…この世には2通りの“バカ”がある。1つは自分の実力を理解できずに犬死にするだけの『愚者』…。も1つは全てを理解してながらも勇敢に立ち向かおうとする『勇者』…。ねェ、円堂パイセン…?アンタは自分をどっちの“バカ”だと思う?」
自身よりも遥かに弱い“弱者”にそう問い掛ける“鬼”の瞳は
その“揺れ”は迷いの現れなのかもしれないし、“疲労”が齎した一瞬の錯覚なのかもしれない。
それでも“鬼”と蔑まれた少女は問わずにはいられなかったのだ。
答えなど最初から存在しない“問い”を。
円堂「……その答えを決めるのは俺でもお前でもない。試合終了のホイッスルが鳴った後に立っていた者だけが、その答えを決める権利を得られるんだ」
鬼乃子「…そっか。なら、アンタにはだいぶ不利な
鬼乃子「最後に立ってられるのは、いつの時代もより“強い者”だけなんだよ?」
円堂「違うな…。よりサッカーを“愛している”方だ…!!!」
力強い『新緑』と妖しい『紅桜』が彩る気の柱を激しく立ち昇らせた“鬼”と、少女を媒介に顕現せし最凶の“百鬼ヶ覇王”が円堂守ただ1人を見下す。
彼らから発せられる威圧感と殺気を前に、少年は今にも吹き飛ばされそうな意識を保つだけで精一杯だ。
こんな状態ではまともに動く事すらままならないだろう。
それでも…だ。
イナズマジャパンの正GKは……
伝説の意志を受け継いだ者は……
円堂守は……
大介「守…!お前は…そこまで…!!」
確かに自分と“鬼”の実力差はあまりにも隔絶している。
苦悩の果てにようやく導き出した、円堂守だけの“
だが……
それがどうした?
勝てないからって勝負が始まる前から諦めるのか?
実力差が埋められないからって挑戦せずに逃げるのか?
そんなのはまっぴらごめんだ。
彼は絶対に逃げないし、決して諦めない。
どんな強敵が相手でもゴールを護る…。
それが“
ーー『悩んだ時はとりあえずヘソの下に力を入れやがれ、そうすりゃあ
円堂守は
彼の頭の中に“鬼”への対処法などない。ある訳がない。
ただ……
いつだって彼の“始まり”はここからだっただけだ。
生き別れた偉大な祖父の“始まり”の教え。
伝説の必殺技を発動する為の“始まり”となる初動。
“円堂守”の伝説はいつだって臍に力を入れる事から“始まって”きたのだ。
だから……今回もそうするだけ。
鬼乃子「円堂パイセン…いや…!!円堂守ッ!!!コレまでのアンタとの勝負は…!そう悪いモンじゃなかったよッ!!!!!」
少女にとって『円堂守』はただの玩具であった。
それもただの玩具じゃない。安かったという理由で買い与えられた望まない玩具だ。
しかし何故だろう…?
少女は無関心だった筈の玩具を捨てるのが無性に“寂しい”…。
捨てたくない。もっともっと遊んでいたい…。そんな感情が少女の心を強く締め付ける。
でも……
鬼乃子「“CRYMAX・OF・MONOCEROSッ”!!!!!」
感情も、思想も、意思すらも超越した“何か”は、いとも容易く最凶最悪の金棒を振り下ろさせた。
大介「守ッ!!!」
冬花「守君っ!!!!!」
秋「円堂君っ!!!」
染岡「円堂ォ!!!!」
『キャプテンッ!!!』
誇張抜きで直撃すれば『死』に至であろう必殺の一撃を前に、彼の未来が失われる事を拒んだ仲間達は次々と彼の名を呼ぶ。
円堂「鬼乃子…!!!これが…!!俺とお前の…!!最後の勝負だっ…!!!」
刹那、円堂の背中から莫大なオーラが溢れ出す。…いや、もはやオーラの一言で片付けられる物ではない。
それは彼の『闘争心』なのだろう。稲妻のように輝き、荒々しい『闘争心』は“魔神”の形を取って現世へ顕れる。
円堂「“魔神ッ!!!グレイトォ”!!!」
円堂守の持つサッカーへの想いの結晶“魔神 グレイト”…。
黄金の“魔神”は雷鳴の如し咆哮を上げ、臆する事なく屈強な右腕を前へ突き出した。
円堂「“グレイト・ザァ…!!!ハンドォォォォォ”!!!!!」
円堂守が繰り出したのは、未来からの襲撃者との激戦を経て習得した、本来遥か先の未来で生み出される筈であった“始まり”の必殺技。
だが、これが“鬼”に通用しないのは既に証明されている。
それでも、彼の直感は選んだのだ。この必殺技こそが今の自分には相応しいと…。
鬼乃子「そんな使い古された化石の必殺技で私に勝てると思ってるのかなァァァァ!!!?打つ手がないのなら、最初からそう言ってよォォォォ!!!!」
円堂「バッキャロー…!何度も言ってるだろ…!!俺は絶対に諦めない…!!!これが今の俺に出せる…!
“魔神”の右腕では如きでは、
それが“鬼”の認識だった。
だが……
円堂「グギギ…!!!ウォォォオオォォォッ!!!!!」
無論、コチラが押しているのは変わらない。だが、たかが“魔神”の腕一本など“百鬼ヶ覇王”の金棒に掛かれば、割り箸を折るように容易く折れる存在の筈だった。
しかし、現に刻一刻と終幕の時が近付いているにも関わらず、“鬼”は円堂守を殺せていない。
鬼乃子「まさか…!!アンタ…!!!」
円堂「へへへ…!!
円堂が施した“小細工”の正体に気付いた“鬼”は急いで周囲を確認する。
そして…その予感通り……
倒れ伏すイナズマジャパンの選手達の身体より、緑色のオーラが円堂へ向かって注がれていた。
円堂「俺1人の力じゃ、どう逆立ちしたってお前に勝つことはできない…!だけど…!!仲間たちと力を合わせれば不可能だって可能になるっ…!!!」
“怪物”を除いた9人の仲間達のエネルギーは円堂の体内で何十倍にも増幅され、“魔神”に更なる力を与えてくれる。
姿形こそは変わっていないが、仲間達の想いを引き継いだ“魔神”の体躯はより巨大化し、円堂の身体から虹色のオーラが溢れていた。
円堂「これが俺たちのぉぉぉぉ!!!!“友情のグレイト・ザ・ハンド”だぁぁぁぁぁ!!!!!」
これまで紡いできた“絆”の力で“怪物”や“天才”とは異なる高みへと到達した円堂は、力強い一歩を踏み出し“百鬼ヶ覇王”が生み出した灰色の太陽を押し返さんとする。
鬼乃子「本当にスゴいよアンタは…。たった1つの肉体に9人のエネルギーを受け止められる器を持ってなんてさァ…。マジで心の底から尊敬する。けど……」
円堂守の名誉の為に言っておこう。
友の力により強化された“グレイト・ザ・ハンド”は間違いなく、彼が今まで放ってきた必殺技の中でも最高の威力を持つだろう。
しかし……
鬼乃子「雑魚のパワーを集めたからって私に勝てるかは話が別だよ?」
円堂「ぐっ…!?更に威力が上がった…!!?」
円堂は強い。この決戦は確実に彼を世界で三指に入る程の実力者にまで成長させてくれた。
だが…それでも“鬼”には及ばない。ただそれだけの事なのだ。
秋「そんな…!あれってオルフェウスとの試合で稲魂君が考案した、鬼乃子ちゃんの対策法なのに…!」
冬花「イナズマジャパンのみんなの力が…通用しない…!」
仲間達から力の全てが円堂守に譲渡された以上、円堂の苦戦はチームの苦戦。円堂の敗北はチームの敗北と言っても過言ではない。
円堂「くそっ…!まだ足りないってのかよ…!!みんなの…全てを背負ってるってのに…!!!」
鬼乃子「…恥じることはないよ円堂パイセン。アンタは本当によく頑張った…。“
円堂「がっ…!!?」
鬼乃子「……バイバイ。円堂パイセン…。そして…イナズマジャパン…!」
円堂は更に強く臍に力を入れる。
その度に踵は1m…また1mとゴールラインに近付いていく。
円堂は闘争心の炎を燃え上がらせ気合いを入れ直す。
その度に“魔神”の屈強な右腕に入った亀裂は大きさを増していく。
円堂は少しでも足りない物を埋める為に、自分にできる事は全てやった。
しかし彼が行動を起こせば起こす程、より一層“敗北”に繋がっていく。
円堂(まだだ…!まだ臍の力が足りてねぇぞ…!!闘争心だってまだまだ燃やせる筈だ…!!!)
そんな絶望的な状況を前にしても…。“答え”を見つけ出した円堂守の心は折れなかった。
…いや、円堂守だからこそであろうか?
臍に力を入れる度にゴールラインへ近付く?
なら、もっと臍に力を入れればいい。
闘争心を燃やせば“魔神”が傷付く?
なら、更に闘争心を燃やしてやればいい。
もう円堂守は迷わない。
例え、隔絶した実力差があろうとも、自分はまだ“負けて”はいない。
負けていなければ、敗北するその瞬間まで自分できる事は全て試す。
『“負ける”前から“勝つ”事を以外を考える馬鹿にはならない』…
それが親友である“怪物”に教えられた思想なのだから。
円堂「まだだぁぁぁぁ!!!!俺はまだまだ…!!!終わってねぇぞぉぉぉぉぉ!!!!!」
円堂は叫ぶ。とにかく叫ぶ。
“
それもそうだ。叫んだだけで状況が好転するのなら誰もがそうしてる。
しかし…だ。
何一つ効力を持たない“叫ぶ”という行為には…
その胸に不屈の“イナズマ魂”を秘めた者の叫びは……
理屈すらも超越した究極の奇跡を呼び起こすのだ。
秋「なに…?これ…?」
音無「雨…じゃないですよね…?」
冬花「これは……“
夏未「不思議な光ね…。一つ一つの光はか弱いけど…。とても暖かいわ…」
円堂守の叫びに呼応するように天より降り注ぐのは、蛍のように儚く淡い光…。
突如として降り注いだ光の雨霰はまるで意志を持っているかのように、円堂の元へ向かっていく。
ガルシルド「何なのだ…!?この光は…!?」
「大変でごさいますッ!!!ガルシルド様ァ!!!」
謎の光景に驚くガルシルドに追い討ちを掛けるように、タブレットを持った黒服の男が大急ぎで主人へ駆け寄る。
「チームGと…!イナズマジャパンの試合がァ…!!全世界へ配信されておりますッ!!!」
ガルシルド「何だとッッッ!!?」
部下のタブレットに表示されていたのは、紛れもなく“鬼”のシュートを受け止めている円堂守の姿…。
ガルシルド「この画角…!まさか監視カメラからか…!?」
当然、ガルシルドは外部から情報が漏れないように徹底的な対策を練っていた。
特に屋敷中に張り巡らされた数多の管理サーバーは、数十秒置きに書き換わる何十桁のパスワードと世界最高峰のファイアウォールによって守られており、優秀なハッカーが何百人集まろうとも決して破られる事はない……筈だった。
ガルシルド「まさか…!!奴か…!?」
しかし、ガルシルドにはたった1人だけ、この騒動を引き起こした犯人に心当たりがあった。
というよりも、ガルシルド財団が誇るセキュリティシステムを突破出来る人間など、この世で1人しか居ない。
ガルシルド「やはり裏切りおったか“雷帝”めェ…!!!ココまで支援してやった恩を忘れおってェ!!!!!」
ガルシルドは強く憤る。厳密には“雷帝”が裏切った事に関してはそこまで驚く事ではない。
腹に一物を隠していた彼の事だ。必ず何処かで反旗を翻すとは予想出来ていた。だからこそ、この決戦が終わった後に始末する予定であった。
だが、
ガルシルド「何故だァァァァ!!!?よりにもよって何故、“今”なのだァァァァ!!!?貴様にはまだ、私の
先手を打っていた筈が先に先手を打たれ、長い何月を費やした計画が大きく狂ってしまった現実は前にガルシルドは狂乱するがもう遅い。
天より動向を見守っていた“勝利の女神”は完全に円堂守に味方していたのだから。
円堂「聞こえる…!聞こえるぞ…!!この光に込められた…!みんなの声が…!!!」
光が円堂の身体に吸収される度に、持ち主達の声が頭の中に響く。
ーー『エンドウッ!!!我々は己の使命を果たしたぞッ!!!次は君達の番だッ!!!』
ーー『テメェはタチムカイの師匠なんだろ?だったら、もっと根性見せやがれッ!!!じゃなきゃ弟子に顔向け出来ねェぞ!!!』
ーー『カズヤだって、きっと病室でユー達の戦いを観ている筈だヨッ!!』
ーー『彼に変わって、ガルシルドにジャポンのSAMURAI魂を見せてやれッ!』
ーー『エンドウッ!!俺達はオマエに助けられた!次は俺達がオマエを助ける番だッ!!!』
ーー『マモルッ!師匠から受け継いだ“イナズマ魂”を爆発させるんだッ!!!』
ーー『マモル!どうか護り抜いてくれ…!俺達が…そしてミスターKが愛したサッカーを!!』
ーー『円堂くん…!お願いっ!!ボクの代わりに…雷牙を守って…!』
海を超えたこの地で出会った最強の好敵手達……。
ーー『頑張れ円堂君ッ!!“勝利の女神”は既に君の味方に付いている!!勝利はもう目の前だよ!』
ーー『足の踏ん張りが足りんぞ円堂ッ!!!お前は俺が認めた唯一のGKなのだッ!!!その程度のシュートでヘバるくらいなら…今すぐ俺と代表の座を代われッ!!!』
故郷にて時には敵、時には味方として激戦を繰り広げた最大の好敵手達……。
そして……
ーー『最後に見せてくれよ…!俺と守でつくった“絆の力”ってヤツをよォ…!!!』
最後の最後で自身に“想い”を託してくれた最高の相棒の声。
円堂「みんなの想い…確かに受け取った…!!!」
人種も、性別も、国境を超え、集結した“想い”は円堂に新たな力を授ける…!
円堂「ウォォォオオォォォッ!!!!!!」
鬼乃子「なにが……起こってんの……!?」
光が吸収される度に亀裂は更に大きくなり“魔神”の肉体は崩れていく。
だがそれは決して“崩壊”などではない。
“始まり”なのだ。
円堂「“魔神…オメガ”…!!!」
並行世界にて顕れた時空を超えた“絆”が生み出した究極の化身…。
偶然か必然か、未来を奪わんとする“鬼”を前に再度その姿を顕した。
円堂「未来に…!届けェェェェ!!!!」
掲げられし右手は最後の希望。
世界中から集められた“想い”は外部へ放出され巨大な手を創り出す。
円堂「“オメガ・ザ…!ハンドォォォ”!!!」
終極の魔神により生み出された巨大な“神の御手”は、太陽と見間違える大きさの灰色の球体を容易く握り締めた。
鬼乃子「私の太陽が…受け止められてる…?」
これまでの人生をたった1人で生きてきた“鬼”には、円堂が生み出した力の正体を理解できなかった。
その脳裏に浮かぶのは純粋な疑問だけ。
鬼乃子「ねェ…円堂パイセン…。アンタは……一体何者なの…?」
本来ならば最後に立っていた“勝者”にのみ答える事を許される質問…。それを分かっていながらも問い訪ねた時点で勝敗は決まっていた。
???『ハッ。んなモン決まってんだろ。コイツは…』
円堂「俺は…!!!」
刹那、世界を黄金の閃光が支配する。
だが、その光は月光のように優しく、日光のように温かく心地良い光であった。
その光に敵意を一切感じられなくとも、本能で瞼を閉じてしまった者達は急いで目を開ける。
そこにあったのは……
円堂「ただの…!サッカーバカだ…!!!」
ボロボロになりながらも突き出した右手にボールを収めた円堂守の姿であった。
鬼乃子「………そっか」
円堂守の“答え”に満足したのか。
全ての力を出し尽くした影響か。
それともそのどちらもか。
“鬼”は明星鬼乃子の姿へと戻り、気を失う。
その表情は……とても安らかな
ピッ!ピッ!ピッー!!!
明星鬼乃子が気を失った同時に審判のホイッスルが三度鳴らされる。
その音が告げるのは試合終了の意。
円堂「俺たちの…“想い”が勝った…!!!」
世界の平和を脅かす魔の手より勝利を勝ち取ったのは、他ならぬ世界自身であった。
やっっっっとチームG戦が終わったぁ…。本当に長かったぁ…。
執筆中4〜5回くらい『えっ?マジでどうすんのこの後の展開…?』ってなっちゃったけど、筆を折る事なく無事に終えられて一安心です(笑)。
あと余談ですが、世界中の人々の想いが円堂に集まるシーンは、ゲーム版のDE戦と旧ブロ一作目での悟空さとブロリーの一騎討ちが元ネタです。