イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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終わり、そして始まり

雷牙「ムニャ…安西先生……ケがしたいです……。・・・ハッ!!!3ポイントシュートッ!?」

 

 短くも長かった夢の旅から帰還した雷牙は、意味不明の寝言を唱えながら起き上がる。

 

円堂「雷牙…?目を覚ましたのか…?・・・はぁ〜…!!!本当に……良かった〜〜!!!」

 

雷牙「???」

 

 最後の最後に響いた声から死んだとさえ思っていた雷牙の目覚めに心の底から安堵する円堂だが、当の本人はイマイチ状況を飲み込めていない様子だ。

 

雷牙「…そっか。もう試合は終わったんだな…」

 

 だが詳細は飲み込めずとも、円堂の様子から少なくとも試合は既に終わっている事だけは理解した雷牙は、軽く周囲を見渡す。

 

 その目に映るのは己が裁いた黒衣の戦士達は元より、因縁の敵であった鬼乃子も地面に倒れ伏し気絶している光景だ。

 

 そして……スコアボードに表示された点数は最後の記憶と変わりない。

 

 これが示すのは当然…。

 

円堂「ああ…!!勝ったんだよ…!!世界中のみんなの“絆の力”が…!ガルシルドに勝ったんだ…!!!」

 

 ガルシルドの野望の完全崩壊。

 そして…

 イナズマジャパンの完全勝利だ。

 

円堂「へへへ…!!」

 

雷牙「……ハッ」

 

パシッ!!!

 

「「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」

 

 ようやく勝利の理解が追い付いた2人は、満身創痍の身体である事も忘れ力強いハイタッチを交わし、心の底から勝利を喜び合う。

 

王将『これにて試合終了ォォォ!!!長く苦しかった激戦を制したのは我らがイナズマジャパンだァァァ!!!ありがとうイナズマジャパンーーーッ!!!!!ありがとう円堂ォォォォォ!!!!!君達のお陰でまたしても世界は救われたァァァァァ!!!!!』

 

 雷牙と円堂以外の選手達は立つ事すらもままならないが、勝利への満足感を全身に走る激痛と共に心ゆくまで味わっている。

 

 しかし……

 

ガルシルド「ふざけるな…!ふゥざけるなァァァァァァァァッーーー!!!!!!!!!!」

 

 当然、絶対の信頼を置いていた部下達の敗北にこの男が黙っている訳がない。

 

ガルシルド「認められるかァ…!!!私が長い年月と巨額の予算を投じて創り上げた超兵士が……サッカーなどというくだらん娯楽にうつつを抜かす子供如きに破れたなどォ…!!!認めてたまるかァァァァァ!!!!!」

 

 数多の犠牲を経て完成したRHプログラムと理外の住人たる“鬼”も居た…チームG引いては自分には負ける要素など微塵も無かった筈だ。

 

 にも関わらず、最強の兵士も最凶の“鬼”も憎き円堂大介の志を受け継ぐ者達に負けた。

 その現実は、ガルシルドの理解を超えた理不尽以外の何物でもなかった。

 

 怒り狂いながら物・部下・地面と種類構わず物理的に当たり散らすその姿は、心なしか40年程老けたようにも見える。

 

立向居「なんか…随分、小物臭くなりましたね…。最初の方は大物フィクサーみたいな雰囲気があったのに…」

 

大介「何も驚く事はない。ただアレが奴の本質だっただけじゃわい。金と権力に物を言わせて、手を汚さずに悪事を重ねてきたような最低最悪の屑は、どれだけ大物ぶろうともその本質は小動物のように臆病な小物でしかないわ」

 

 イナズマジャパンに敗北した挙句、部下の裏切りによって全世界に本性を暴かれてしまい文字通り全てを失ったガルシルドは、もはやドブ水よりも醜く濁った妄想を吐き散らす老害以下の存在でしかない。

 

大介「もういいじゃろうガルシルド。貴様の部下が負けたのは弱かったからではない。世界は貴様が思っていたよりもずっと“強かった”…ただそれだけの事なんじゃよ」

 

 この決戦の勝利を勝ち取ったのは、イナズマジャパンではなく世界中の人々の“繋がりの力”だ。

 “繋がりの力”など容易く崩れる物だと思い込んでいた時点でガルシルドの計画は最初から破綻していたのだ。

 

ガルシルド「……ククク…!ハーハッハッハハッハッハッッッ!!!!!」

 

 だが何故だろう?全てを失ったにも関わらず、老害は狂った高笑いを始める。

 

大介「…何が可笑しい?」

 

ガルシルド「もうよい…!!!RHプログラムも…世界征服も…!!全てがどうでもよいッ!!!私は……崇高な計画を邪魔した貴様らに…()()()()()()()()()()()ッッッ!!!」

 

 自暴自棄となったガルシルドは、懐から黒光りする『何か』を取り出した。

 それは決して火器の類ではない。意味深な赤いボタンが目立つ細長い物体だ。

 

目金「それって…!まさか…!?」

 

ガルシルド「そうッ!!!コレは()()()()()()だッッッ!!!この屋敷に仕掛けた大量のTNTのなァァァ!!!!!」

 

『何だとッ!!!?』

 

 なんとガルシルドは往生際悪く、最後の最後で自爆を試みるつもりだ。

 

ガルシルド「フハハハッ!!!私が億が一の事を想定しないとでも思っていたかッ!!?屋敷の地下に仕掛けたTNTの量は数十tにも及ぶッッッ!!!起爆すればココら一帯は容易に更地と化すぞォォォォォ!!!!!」

 

大介「…にわかには信じられんの。小心者の貴様が自分の命ごと道連れに出来るとは思えんがな」

 

ガルシルド「フゥンッッッ!!!コレはハッタリなどではなァァァァいッッッ!!!私を止めたければ飛び掛かるがいいッッッ!!!もっとも…!間に合うものならなァァァァ!!!!」

 

 勝ち誇った笑みと共に自爆のスイッチのボタンへ指を向かわせたガルシルドの瞳には“本気(マジ)”の光が灯っていた。

 その光からは量はまだしも、地下に爆弾が仕掛けられている事は決して(ブラフ)では無い事だけは分かる。

 

大介「チィッ!!!どこまでも腐った奴じゃ…!!!」

 

染岡「自爆なんざさせるかよォ!!!!!」

 

円堂「くそ…!じいちゃんたちが頑張ってるってのに、俺たちはどうすれば…!」

 

雷牙「こうなったら言葉攻めで援護するぞッ!!!やーい!クソ老害ッ!!オマエの※※※!!※※※〜〜!!!」

 

 コンマ1秒が生死を分ける状況の中、自爆を止めるべく大介を先頭にベンチの選手達も一切に走り出すも…

 

ガルシルド「遅いッ!!遅い遅い!!判断が遅いィィィィィ!!!!!老耄の千鳥足よりも、私の方が遥かに早いぞォォォォォ!!!!!」

 

 ガルシルドの執念は英雄達よりもいち早く運命のスイッチの元へ指を運んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズババーンッ!!!!!

 

ガルシルド「ガハッ…!!?」

 

 だが、地面から爆熱の嵐が吹き荒れる事は終ぞ無かった。

 

雷牙「()()()()……()()()……?」

 

 醜悪な老害からイナズマジャパンの命と未来を救ったのは、一つのサッカーボールだった。

 どこからか放たれたシュートは、ガルシルドの折れてはいけない骨をその野望と共に粉々に砕き、最後の悪足掻きを見事阻止したのだ。

 

???「ハァ…!ハァ…!」

 

ガルシルド「貴……様ァ……!!!」

 

 最悪の横槍を入れた者の大方の予想を付けた老害は、最後の力を振り絞り()()1()()()()()()()へ“憎悪“に満ちた眼を向ける。

 

ガルシルド「おの…れェ…!!!貴様……もかァ…!!!()()()()……!!!私を裏切ったのかァ……!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キノコォォォ!!!!!!」

 

鬼乃子「……」

 

 そう。老害の醜い悪足掻きからイナズマジャパンを救ったのは敵である筈の明星鬼乃子その人であった。

 

鬼乃子「裏切る…?全身がクソ痛いから、あんまし笑わせてないで欲しいなァ…。別に私はアンタの仲間だった覚えはないんだけど…?」

 

ガルシルド「おの……れェェェェェ!!!!!」

 

 父のみならず娘にも裏切られたガルシルドは、怒りで身を震わせながら己の手で少女を殺さんと立ちあがろうとするが、どんなに力を入れても立ち上がる事は出来なかった。

 

 それもその筈。RHプログラムによって超人となったヘンクタッカーの骨を容易く粉砕してみせる程のパワーを持つ鬼乃子のシュートを、ただの人間が喰らったのだ。

 老害に生き地獄を見せるべく多少の加減はしたようだが、もうガルシルドは二度と自分の足で歩く事は叶わないだろう。

 

ガルシルド「呪ってやるゥゥゥ…!!!貴様ら一族を……末代まで呪ってやるぞォォォ…!!!」

 

鬼乃子「ハハハ…おもろ…。負け犬の遠吠え程、滑稽なモンはないってよく聞くけど、マジでその通りじゃ〜ん……」

 

 惨めに地面に倒れ伏すガルシルドを徹底的にバカにしていた鬼乃子だったが、醜い老害にはすぐに興味を無くしたのか、背を向けおぼつかない足取りで歩き始める。

 

鬼乃子「……コレでいいんだよね?影山のおじさん……」

 

 何故、彼女がガルシルドを裏切ったのかは誰にも分からない。

 

 もしかしたら朧げにしか覚えていない精神世界での兄との対話が影響しているかもしれない。

 

 それとも、なんやかんや慕っていた“影山のおじさん”の死が裏切りのスイッチを押したのかもしれない。

 

 どちらにせよ……

 

 この裏切りこそが少女が初めて己の意志で選択した“本物”だった。

 

雷牙「待てよ。鬼乃子」

 

 全ての因縁を物理的に粉砕し出口へ向かう妹を雷牙は呼び止める。

 どちらも背を向けている為、顔は見えない。だが、兄妹にはそれだけで十分だ。

 

鬼乃子「…何?言っとくけど、別にアンタたちを助けたワケじゃないよ?ただ…私の心がそう“選択”しただけ」

 

雷牙「ケッ…相変わらず素直になれねェ妹だこと。一体、誰に似たのかねェ?」

 

鬼乃子「知〜らない。私たちに流れる血の性ってヤツじゃない?」

 

雷牙「まっ…そーゆー事にしといてやんよ」

 

 雷牙は妹が警察に捕まる事を望んでいた。罪を償って欲しかった訳じゃない。

 ただ対話する機会が欲しかったのだ。きっと彼女もライトと同じように分かり合えると信じているから。

 

雷牙「…俺が言いてェ事は一つだけだ…」

 

 だが、雷牙は早々に会話を切り上げる。

 彼は直感で確信していた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…と。

 

 だからこそ、兄として送る言葉は一つしかない。

 

雷牙「()()()鬼乃子…!」

 

 いつかの再会を約束する“祈り”だけだ。

 

鬼乃子「……」

 

 相変わらず妹は背を向けたままだ。

 隠されたその顔は複雑な表情をしてるかもしれないし、もしかしたら泣いているかもしれない。

 

 どちらにせよ…彼女が送り返す言葉もたった一つだ。

 

鬼乃子「…バイバイ。………お兄ちゃん」

 

 少女は歩みを止めない。彼女が何処へ向かい、何処を目指すのかは分からない。

 

 ただ……

 

 再びピッチの上で兄と再会した“その時”こそ……因縁の終わりなのだろう。

 

………

……

 その後、ライオコット島にて起こったテロの首謀者であるガルシルドとチームGの面々は、到着した鬼瓦率いる国際警察によって連行されていった。

 

 最後の最後まで現実を受け入れられないガルシルドは、汚い罵声を大介…そしてイナズマジャパン達に撒き散らしていたが、権力を失った彼には文字通り手も足も出す事は出来ないだろう。

 

 彼の逮捕を以て、数十年にも及んだ因縁は幕を閉じたのだ。

 

円堂「これで…全部の因縁が終わったんだな…」

 

雷牙「ああ…。コレぞ、ふゆっぺの親父さん!お袋さん!影山!終わったよ…ってヤツだな」

 

 矢継ぎ早に連行されるガルシルド達を見送る雷牙と円堂の心に残るのは、数十年の因縁の“終わり”をそう簡単に実感出来ない現実離れした感覚だけだ。

 

円堂「…本当によかったのか?鬼乃子を見逃したりして。鬼瓦さんが知ったらカンカンに怒るぞ?」

 

雷牙「いーんだよ。実際、鬼乃子を追える程体力が残ってなかったのは事実だしな。それに…」

 

円堂「それに?」

 

雷牙「アイツと決着を付けるのは“今”じゃねェ…。ただそれだけだ」

 

円堂「…ああ!そーだな!!!」

 

 すると、世界の平和とサッカーの未来を護ったイナズマジャパンを祝福するように、分厚い雲の隙間から暖かい日差しが差し込む。

 

夏未「そういえば…」

 

 だが、イナズマジャパンは()()()()()()()()()()()()

 

夏未「あなた達……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リトルギガントとの試合までに怪我を治せるの?」

 

『・・・あ。あーーーーーーッ!!!!!!!!!!

 

 この試合に出場した選手達が負った怪我は打撲、捻挫、肉離れ、etc…。

 両手を使っても全く足りない怪我の数々は、どう考えても数日間でまともに試合が出来る状態まで治せるとは到底思えない。

 

 果たして世界を救った英雄達は、世界一を決める大舞台に立つ事は出来るのか?




すっかり忘れてたけど、鬼乃子ってまだ12歳だわ。虎丸と同い年だ。なんならまだランドセルを背負って小学校に通う年頃だわ。

・・・アレ?だったら前話で妹を抱きしめてた雷牙って絵面だけ見るとかなりヤバい奴?
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