イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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ある英雄の物語

円堂「どっひゃ〜〜!!!な、なんだよこれ〜〜!!??」

 

 オイース!画面の前にみんな〜!雷牙サンだぜ〜!

 時間が経つのは早いモンで、もう昨日の決戦から3日も経っちまったよ。

 

 本当に…本当にあの日は色々あったよな〜…。

 

 ライトの見舞いに行ったらコトアールエリアがテロが起こるわ、その首謀者はガルシルドやら、リトギガの監督の正体が守のじいさんで、挙げ句の果てに鬼乃子が俺ちゃんの実の妹だったって?情報量が多いにも程があんだろーがコラ。

 

 まっ!俺達の活躍で全部が丸く収まったし、結果オーライってヤツ?ゲハハハッ!!!

 

 ・・・いや、全っっっっ然笑えねェーわ…。

 よりにもよって決勝戦直前にテロを起こした挙句、“グリッドオメガ”っつークソの極みみてーなタクティクスを使いやがって。

 そのせいで、レギュラーの大半が大怪我を負ったっての。最後の最後にクソデケェ爆弾を残しやがってクソが。

 

 ……とまァ、ココ数日間マグマのように煮えたぎる怒りが収まらなかった俺ちゃんだが、流石に救いはあった。

 

 まず結論から言うぜ?イナズマジャパンとリトルギガントの決勝戦は延期になった。

 

 主催者が逮捕された事による混乱ってのもあるが、一番の要因はリトルギガントからの強い要望だったみてーだ。

 

 守のじいさんが監督でも世界大会の最中に舐めプかますようなチームだからあんまし良いイメージが無かったが、この間の謝罪を含めて普通に見直したぜ。

 

 …んまァ、大会の主催者が普通に893だった挙句、周りっくどい方法で戦争をおっぱじめようとしてたせいで、大会自体の中止を求める声も相次いだがな。

 

 それでも…世界中のサッカーファン、そして世界各国のお偉いさん達が空いた穴を埋めてくれたお陰で何とか決勝戦が出来るようになった。コレには雷牙サンも素直に感謝だ。感謝☆感謝☆

 

 にして皮肉なモンだよな〜。ガル…クソ老害はこの大会を通して各国の信頼にヒビを入れよーとしたのに、チームGの一件でより一層結束が強まったんだからよォ。

 

 け・ど・だ。一番肝心で中心的な問題は解決してねェんだよな〜。

 

 そう。レギュラー陣の怪我だ。

 

 比較的軽症で済んだ俺やグリオメを受けてねェ守はまだしも、それ以外の皆の怪我は2週間ポッチで治るモンじゃねェし、例え治ったとしても100パー体力は落ちてる筈だ。

 

 んな状態でオルフェウスを容易く下したリトルギガントに勝てると思うか?流石の雷牙サンも今回は胸を張って『NO』を突き付けてやんぜ。

 

 …だが、またまた猫又、またしても神は俺達を見捨てなかった。

 

ヒロト「これは吉良財団が開発したメディカルカプセルだよ」

 

 俺達の最後の救済…それが朝一番に宿舎に運ばれてきた11台のなんか…こう…坐薬?みてーな形をしたカプセルだ。

 

ヒロト「このカプセルには、エイリア石が持つ治癒力向上の波長だけを再現する機器が内臓されていてね。まだ試作品の段階だけど効果は証明されているよ」

 

染岡「俺や佐久間が瞳子監督の最新医療を受けた際に使ってた機械と雰囲気が似てるな…。もしかしてそれの改良品か?」

 

ヒロト「ああ、その通りだよ」

 

 なんつーか…。吉良を狂わせて、風丸を闇堕ち一歩手前まで追い込んだエイリア石が巡りに巡って俺らを救うだなんて感動的なシチュだな。

 

鬼道「しかし…吉良財閥には悪い事をしたな…。まだ試作品とはいえ、一台何千万じゃ効かないだろ?それを十台以上海外に送って貰うだなんて…」

 

ヒロト「吉良財閥会長である瞳子姉さんたっての希望を無碍にする理由なんてないさ。それに…エイリア石の研究が誰かの役に立ってくれれば、きっと父さんも救われる筈だしね」

 

 まっ、そーゆーこった。俺は貰えるモンは病気以外だったら何でも貰う主義なんでな。瞳子監督からの好意は素直に受け取っておくぜ。

 

風丸「このカプセルを使えば大体どれくらいで試合が出来るくらいに回復するんだ?」

 

ヒロト「そうだな…。怪我の浅い円堂君と雷牙君は1日…。俺達は2〜3日くらいかな?」

 

壁山「結構長いっスね…」

 

熱也「まっ、幸い中にスマホや漫画を持ち込めるんだ。決勝に間に合うってんならそれくらいは必要経費として我慢してやるぜ」

 

 …あっ、そっか。一台ヤケにデケェカプセルあんな〜って思ってたら、アレ壁山用か。なるほど納得〜!

 

ヒロト「…おっ、ようやく準備が終わったみたいだ。ところで…壁山君以外で閉所恐怖症の人は居るかい?」

 

 うっし!そんじゃ、ちょっくら治療に専念するとしますかッ!!それじゃあ皆の衆!!1日程バイナラ〜!!

 

♢♢♢

雷牙「よっ!ほっ!はっ!」

 

 怪我人達がメディカルカプセルでの治療を受けた翌日。

 ヒロトの予想通り僅か1日で怪我を完治させた雷牙は、やや鈍った身体を取り戻すべく早朝から宿舎近くの海辺で特訓に明け暮れていた。

 

雷牙「…そういや守は今頃、じいさんとジジ孫水入らずの時間か…」

 

 雷牙よりも早く完治させた円堂は、生き別れた祖父と再会している最中だ。

 

雷牙「やっぱし…。守の誘いに乗っておけば良かったか?」

 

 一応、雷牙も円堂から誘われてはいたのだ。しかし彼は敢えてその誘いを断った。

 本心では後方で腕を組んで親友の感動の再会を見届けたい気持ちもあったが、やはりこのような感動の再会に部外者が入り込むのは無粋だと判断したからだ。

 

ーー『思う存分、(あい)し合おうよォ!!お兄ちゃァんッッッ!!!!』

 

雷牙「…ちっと妬けちまうな…」

 

 離れた場所で思う存分サッカーについて語り合う親友とその祖父の姿を想像する度に、雷牙は嫉妬にも似た感情を覚えてしまう。

 

 円堂にとっての祖父の存在は乗り越える“べき”『壁』なのだろう。そこに“憎しみ”や“怒り”の感情が入り込む余地などある筈がない。いや、あってはならない。

 

 だが自分はどうだ?

 死んだと思っていた父は普通に生きていて普通にクズであり、到底まともな方法で産み出されたとは思えない血の繋がった妹は自身に強い“殺意”もしくは“偏執的な愛情”を持って立ち塞がった。

 

 もはや雷牙にとっては実の父、そして実の妹は倒さなくては“ならない”『敵』でしかないのだ。

 残りの人生で何度彼らと相対するのか分からない。もしかしたら明日終わるかもしれないし、一生掛かっても因縁は終わらないかもしれない。

 

 ただ一つ確かなのは、父と妹との闘いには“喜び”や“慈しみ”といった感情が入り込む余地などない…それだけだ。

 

雷牙「…ムカつくぜ。トコトン俺を敵対したいんだったらよォ…どうして()()()()()()()()()()()…?ロクでなしクソ親父…」

 

 あの日の決戦の最中、ほんの一瞬だけ心臓の鼓動を止めた雷牙が見たのは、原初の走馬灯…。

 実の父親である明星帝牙が自身を捨てたその日の出来事だ。

 

 まるで、最後の親としての責務を果たすように幼い自分を抱き、果たす事のなかった“約束”をした父の顔は……()()()()()()()()()()()()()

 

 まるで捨てたくて捨てた訳じゃないと言わんばかりに。

 

 だが、現実はどうだ?

 父親は少なくとも自分の意志で実の息子と娘を殺し合わせた。…サッカーで殺し合いという表現はかなりおかしいが。

 

 もうここまで来れば、訳あって悪人を演じていた哀しき悪役などという線は無いに等しい。

 ただただ己の目的の為に多くの人に“不幸”をばら撒く病原菌同然の存在だ。

 

雷牙「…もしかしたら雷冥が警察みてーな職に就いてんのも俺のせいかもな…」

 

 詳細は分からないが、80年後のひ孫が時空を守護するエージェントとして活動している事は知っている。

 なまじ、己の悩みとひ孫の職が繋がりがあるように見えるせいで、らしくもない罪悪感を感じてしまう。

 

ザッ…ザッ…ザッ…

 

 その時、後方から砂浜を歩く音が聞こえた。

 別にこの浜辺はイナズマジャパンの所有地ではない。他に人が居るのはおかしな事ではないが、それは明らかに気配を隠している歩き方だ。

 

雷牙「……」

 

 ガルシルドの一件もあり彼の残党に敏感になっている雷牙は、つい身構えてしまう。

 

 現在の推定刺客と自身の距離は凡そ5m…。半径1m以内に入った瞬間、“怪物”の強靭な右キックが炸裂するだろう。

 

雷牙(4m…3m…2m…!)

 

 雷牙の警戒を知ってか知らずか、刺客はドンドン距離を狭めていく。

 

雷牙(1m50…!来たッ!!!)

 

 謎の刺客が射程距離に入った瞬間、勢いよく鞘から刀を抜いた。

 勿論、本気でぶつける訳ではない。万が一、無実の一般人を傷付けたら決勝戦には出られなくなるから。

 

 謂わばこれは威嚇と逃げる隙を与える為の寸止めの蹴りだ。

 

???「ヤレヤレ…。ガルシルドの残党を警戒する気持ちは理解(わか)りますが、流石にファーストコンタクトが暴力なのは如何なものかと思いますよ?」

 

 だが、謎の人物は怯むどころか雷牙ですらも認識出来ない程の超スピードで背後を取ると、瞬く間に綺麗な『卍固め』を極める。

 

雷牙「痛゛でででででッ……!!!!?」

 

???「おっと失礼、つい身体が勝手に動いてしまいました。何分(なにぶん)、腕っぷしの強さが求められる職に就いてるモノでね。癖になっているのですよ。関節技(サブミッション)が」

 

 苦悶の声から自身の非に気付いた謎の刺客は、すぐさま手を離し雷牙を解放する。

 

 不思議な事にその声は()()()()()()()()()

 

雷牙「カッ〜〜…!!!クッッッッソ痛かった〜…!!!」

 

???「申し訳ありません。ですが…先に仕掛けたのは貴方様の方ですし、おあいこなのでは?」

 

 喧嘩両成敗といえど、未遂の蹴りを100の関節技で返された事に納得がいかない雷牙はせめて一言くらい文句を言ってやろうと顔を上げる。

 

 だが……

 

雷牙「ハァッ!?!?!?」

 

 正体を表した謎の刺客…いや、()()に目を大きく見開く事になる。

 

 何故なら……

 

雷牙「雷冥…!?」

 

雷冥「この間振り…ですね。ひいお祖父様」

 

 目の前に居たのは黄色の派手なサングラスと翡翠色を基調としたアロハシャツを着こなした、80年後のひ孫・稲魂雷冥であったのだから。

 

………

……

 

雷牙「…で?急に俺に会いに来てどうしたのよ?てか、そう何度も未来人が過去の人間と接触していいモンなのか?」

 

雷冥「ご安心を。既に本部の許可は取ってあります」

 

雷牙「あっそ…」

 

 ある程度の時間が経ち、ひとまず落ち着いた雷牙はひ孫と共に円堂が作ったタイヤバッグの近くに座り込んでいた。

 

雷牙「てかなんだよその服装…。俺が知ってる雷冥ちゃんはもっとパリッとしてたんだけど…?」

  

 並行世界含めた雷牙の記憶にあるひ孫は、常に堅苦しそうな黒スーツを着用していた。

 だが、今の彼は記憶とは真逆のまさにバカンス真っ只中と言わんばかりの服装だ。雷牙がツッコミを入れるのは至極当然の事だろう。

 

雷冥「…少々、色々に色々な事がありましてね。次の任務の調査に時間が掛かる為休暇を頂いたのですよ」

 

雷牙「いや…それでも黒スーツから一転して急にアロハシャツって…。ええ〜…」

 

雷冥「コレでもプラベートと仕事のオンオフはきっちり分けるタイプでしてね。バードとキャットも人間態で観光の最中です。もしも彼らを見かけたら挨拶をしてあげてください」

 

 そう言ってサングラスを煌めかせながらHAHAHAと笑う雷冥だが、雷牙はひ孫の顔を直視出来ない。

 

 自分の因縁が数十年後の子孫達に迷惑を掛けているかもしれないという罪悪感が、雷牙の心を蝕み苦しめているのだ。

 

雷冥「そういえば、私がエージェントを志した理由…でしたっけ?別に隠すモンじゃありませんし、教えましょうか?」

 

雷牙「え?マジ!?ヤッター!・・・って!俺の独り言を聞いてたのかよ!!?」

 

雷冥「聞いてた…というよりも()()()()ってのが正確でしょうか。職業柄、読唇術が使えるモノですから」

 

雷牙「どくしんじゅつぅ…?」

 

 聞き慣れない単語に首を傾げる雷牙だが、雷冥は細かい説明が煩わしかったのか曽祖父の?マークを無視して軽やかに立ち上がると、雷牙の側にあったボールを手に取り軽快なリフティングを始める。

 

雷牙「おー!上手い上手い!」

 

雷冥「どうでしょうかひいお祖父様。ただ喋るだけなのも少し味気ありませんし、ココはサッカー選手(プレイヤー)らしくボールを通して語り合うというのは?」

 

雷牙「…ハッ!その提案……乗った!!!」

 

 その提案に乗った雷牙も即座に立ち上がり、数m程離れて互いに向き合う。雷冥は仰々しく『ボールで語り合う』だなんて言っていたが、その実態はなんて事はない、ただのパス回しだ。

 

雷冥「先ず最初に……私が時空管理局のエージェントとなったのは、“ある人”の志を継ぐ為です」

 

雷牙「ある人?」

 

雷冥「その方は少し…いや、かなりの変わり者でしたが、黄金のように輝く気高い精神(ココロ)を持っていました」

 

雷牙「オメーが変わり者って評するってどんだけの変人だったんだよ…」

 

雷冥(雷牙・稲魂家の変人遺伝子は貴方が始祖ですがね)

 

 雷冥の言う“ある人”とは決して雷牙とは無関係ではない人物だが、彼は敢えて言葉を濁す。

 本部より“彼女”についての言及を禁じられているのもあるが、それ以上に先祖が知れば間違いなく傷付くだろうから。

 

雷冥「…ですが、その方は若くして亡き者となってしまいました。それも…私の目の前で」

 

雷牙「…マジか」

 

雷冥「マジマジの本当(マジ)です。結局…私はアレだけ“あの人”の近くに居ながらも、存命中は終ぞその思想を理解する事は出来なかった…」

 

 “彼女”は常に合理よりも不合理を優先した。

 

 曽祖父に似つかわしくない聡明さを幼少期より兼ね備えていた雷冥には、どうしても“彼女”の不合理を理解する事が出来なかったのだ。

 

雷冥「だからこそ…私は“彼女”と似た道を歩んだのです。…いえ、訂正しておくと“彼女”は時空エージェントだったワケではありません。似たような職ではありましたが。私がエージェントとしての道を選んだのは…まァ、成り行き上とでも言っておきましょうかね」

 

雷牙「…んで?結局、ソイツの思想は理解出来たのかよ?」

 

雷冥「ええ。ありがたい事に時空を超えた『友』が気付かせてくれたのですよ。この世には…合理を超えた“不合理”も存在するって事をね」

 

 雷冥の脳裏に浮かぶのは、ある指令にて訪れた歪められた時空にて出会った友の顔…。そして“GF(グランドファーザー)”と名乗る狂人との熾烈な死闘…。

 

雷冥「もうお理解りでしょう?私がエージェントを志したのはひいお祖父様の因縁とは全くの無関係なのです」

 

雷牙「…そっか」

 

 雷牙は心配が杞憂に終わった事に安堵しているが、それでも根本的な悩みが取り除かれた訳ではない。

 

 結局のところ、実の父親が生きていたという事実は遅効性の毒のような物なのだ。

 即効性は無くともゆっくり時間を掛けてジワジワと対象を蝕み苦しめる…実にタチの悪い猛毒だ。

 

雷冥「……」

 

 雷冥は数秒程何かを考え込むと、軽く溜め息を吐き口を開く。

 

雷冥「…一つ。“ある英雄の物語”を聞かせてあげましょう」

 

雷牙「え…?」

 

 それは彼が幼き日より憧れた“ある英雄”の英雄譚だった。

 

雷冥「私が産まれるよりもずっと昔のお話です。ある東国の島国に1人の男の子が産まれました。ですが…男の子は理不尽な理由で実の父から捨てられ、父の友人の一家で育てられました」

 

雷牙「オイ…!それって…!」

 

 ひ孫の口から語られ始めた英雄譚…。しかし、雷牙は“英雄譚”の『え』に該当する時点で再度目を見開き驚く。

 

 だってその“男の子”とはどう考えても……

 

雷冥「…しかし、大切な義理の家族すらも不幸な事故によって失いました。英雄はまたしてもひとりぼっちになってしまったのです」

 

雷牙「……」

 

雷冥「そこから先は、まさに波瀾万丈の連続でした。ある時はサッカーを憎む者と戦い、またある時は天よりの贈り物に狂わされた狂人と対峙し、そして……ある時は血を分けた妹とも死闘を繰り広げた」

 

 もうここまでくれば、その“英雄”が『誰』を示すのかは一目瞭然だ。流石の雷牙でもそれを察せない程バカじゃない。

 

雷牙「…クソみてェな英雄譚だな。コレが映画だったらB級認定は間違いなしだぜ…?」

 

雷冥「そうでしょうか?私は好きですけどね、駄作(クソ)映画は」

 

雷牙「…そうかよ。なら…早く続きを聞かせてくれ」

 

雷冥「承知しました。“英雄”は苦悩しました。時には憎みさえしました。己に降り注ぐ理不尽な『運命』に」

 

雷牙「まァ…そりゃそうだろうな…」

 

 雷牙は弱々しく“英雄”の苦悩を肯定する。

 同じ立場に居る自分ですらも強く悩んでいる最中なのだ。その気持ちは痛い程に分かる。

 

雷冥「…()()()

 

 だが、“英雄”にも救済(すく)いはあった。

 

 …いや。

 

雷冥「()()()()()()()()()()

 

 “英雄”自身が掴み取ったのだ。

 

雷冥「どんな“壁”が立ちはだかっても、どんな“試練”が襲い掛かっても…。“英雄”は諦めずに乗り越え続けました」

 

雷牙「諦めない…か」

 

雷冥「…ひいお祖父様。何故、“英雄”は過酷な運命が立ちはだかっても諦める事はなかったか…その理由をお理解りですか?」

 

 語り手から質問者へと立場を変えた雷冥は、祖先に向けて不意打ち気味に問いを投げ掛ける。

 

 だが、雷牙は一瞬たりとも悩む事は無かった。

 

 何故なら……

 

 彼の手には既にその“答え”が握られていたのだから。

 

雷牙「…簡単な事さ。ソイツには……『仲間が居たから』…だろ?」

 

 雷牙の口から出た一切の淀みの無い“答え”を聞いた雷冥は口角を上げ、微かに笑う。

 

雷冥「That's right(その通りです)。“英雄”は多くの仲間と絆を紡いで困難に立ち向かってきました。その結果…彼は失った物以上の物を手に入れました。それが出来たのは、彼がどんな逆境を前にしても挑戦し続け、諦めなかったからです」

 

雷牙「…なァ、雷冥。オマエの言うその“英雄”って…」

 

雷冥「勘違いしないでください。私は“英雄”が未来の貴方であるとは一言も申しておりません。もしかしたら…偶然境遇が重なっただけの赤の他人かもしれませんよ?」

 

 未来人であるひ孫の事だ、時空の守護者としての責任がある彼は絶対に“英雄”の正体を明かす事はないだろう。

 それでも良い。既に雷牙は何よりも『大切な事』を“英雄”から教えられたのだから。

 

雷冥「それではひいお祖父様!!私からの最初で最後の助言(アドバイス)です!!!」

 

バシュウッ!!!

 

 刹那、雷冥は穏やかなパスから一転して砂が舞う程に強烈なシュートを放った。

 シュートは大きく軌道を変え、昇りたての太陽とピッタリ重なり、背後から僅かに漏れ出た太陽の光は、雷牙の目を眩せた。

 

ーー『決して挑戦を諦めるな。過去は変えられずとも、未来を変えるチャンスは全ての生命に平等に与えられた権利なのだから』

 

雷牙「ーーッ!!!雷冥ッ!!!」

 

 耳ではなく脳内に木霊した“魔王”の言葉…。

 雷牙は急いで視線を元の場所に戻したが、そこに稲魂雷冥の姿は無かった。

 

雷牙「雷冥…」

 

 目の前に現れたひ孫を名乗る旅人が、本当に居たのかは雷牙にも分からない。

 もしかしたら、己の悩みが作り出した幻かもしれないし、ジ・エンパイアとの試合に現れた偽者が化けた姿かもしれない。

 

 ただ……

 

雷牙「サンキューな…雷冥…!!!」

 

 アレだけ雷牙の心を蝕んでいた猛毒は既に消滅していた事だけは紛れもない“事実”だ。

 

雷牙「うっし!!悩みも晴れた事だし特訓再開と行くかッ!!待ってろよリトルギガントッ!!!オメーらをぶっ倒して…!世界一の称号はイナズマジャパン(俺達)がいただくからよォ!!!!!」

 

 1人になった雷牙は、明るい笑顔を浮かべて走り込みを再開する。

 

 もう雷牙の頭に父も妹も居ない。

 これまでの旅路で出会った仲間達と共に“世界一”になる…。それが……今の“怪物”の夢なのだから。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 時は遡り、イナズマジャパンとチームGとの決戦が終結した日の夜に移り変わる。

 

鬼乃子「…負けちゃったか」

 

 警察の追手から逃れた鬼乃子は私服に着替え、ライオコット島を出るフェリーに乗り込んでいた。

 

 現在、彼女は甲板に備え付けられたベンチに座り満点の星空を見上げている。その姿は12歳の少女とは思えない程の哀愁が漂っていた。

 

 だが…その理由は試合に負けた事ではない。

 

ーー『オメーとの全人全霊のぶつかり合いは……!!!超楽しかったぜッ!!!!!』

 

鬼乃子「な〜んでかな〜…?どうして夢の言葉が頭から離れてくれないのかな〜…?」

 

 雷牙と同様に鬼乃子も、精神世界で起こった出来事は覚えていない。

 しかし…あの時からずっと頭の中で響くのだ。兄の声が、そして顔が。

 

〜♪〜♪

 

 すると、まるでタイミングを見計らったかのように、少女のスマホから着信音が鳴り響く。

 

 画面に表示されたその名前は当然……

 

鬼乃子「ゲッ…。パパからじゃん…だっる…」

 

 兄妹の実の父親、“雷帝”だ。

 

 鬼乃子は着信に出る事を躊躇する。別に父への“恐れ”から来る躊躇ではない。

 ただ面倒臭いのだ。性格の悪い父ならば実の娘であっても、容赦せずに小馬鹿にするだろうから。

 

鬼乃子「ハァ…。もういいや、どーせ出ないと一晩中着信音が鳴り止まないだろうし…」

 

 このまま電話に出らずに睡眠を妨げられる事よりも、一時の屈辱を選択した少女は物凄く嫌そうな顔をしながら通話ボタンを軽くタップする。

 

ピッ!

 

鬼乃子「はいもしもし!!!」

 

“雷帝”『オット…こりゃ失礼。ご機嫌が斜めってる最中だったようだねェ』

 

鬼乃子「ハァ〜…!!!マッッッッジでよく言うわ〜…!!ワザとこんな時に電話したくせに」

 

“雷帝”『ハハハハッ!!!!まっ、コレでも私は君の父親なんでねェ。子供のメンタルケアは親の仕事さ』

 

 実の息子と娘に殺し合いを強要した癖して、未だに父親であると自認する電話の先の男は実に支離滅裂だ。

 もしもこの場に雷牙が居れば、一切躊躇する事なくスマホを叩き割っていただろう。

 

鬼乃子「ハイハイ。それで〜?私の父親兼カウンセラーさんはどのような処方箋を出してくれるのですか〜?」

 

“雷帝”『そうだなァ…。“()()()()”の実行時期…とかかなァ?』

 

ザッバァァァァン!!!

 

 父の言葉と呼応するように、海の中から一つの影が飛び出し大量の水飛沫を鬼乃子に浴びせる。

 だが、極寒の海水塗れになろうとも少女は眉一つ動かす事は無かった。

 

鬼乃子「今回ばかしは皮肉抜きで最っっっっ高…!!!それで?パパの“計画”はいつ実行すんの?」

 

“雷帝”『………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来年度のFF…。それが我々の終着点(ゴール)だ』




流石にメディカルカプセルはチート…というよりかはご都合主義が過ぎるので、多分これ以降登場させる事はありません。
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