No side
予選決勝が終わって早くも1週間が経った。つい先日は雷門中イレブンは響木が率いていた伝説のイナズマイレブンと試合することができた。
…が最初はサッカーへの情熱をなくしていた選手達のプレーはそれはそれは酷いものであった。
しかし納得がいかない円堂と響木の喝により覚醒したイナズマイレブンのプレーは帝国にも勝るとも劣らない実力であり、最終的にイナズマイレブンが使っていた“炎の風見鶏”を習得することに成功した。
そしてのその帰り道。雷牙は某有名なカレーのチェーン店の前にいる。理由は単純、カレーが食いたくなったからだ。本人はどちらかと言えばハヤシライス派だが、今日は珍しくカレーが食べたくなり店に足を運んだというわけである。
「いらっしゃいませー。」
前々から気になっていたものの実際に店内に入るのは今日が初めてである。とりあえず席について注文用のパッドでメニューを選ぶ。色々とメニューがあるがとりあえず無難なカツカレーを選び、無難な辛さレベル1を選び料理が来るのを待つ。
「珍しいな。稲魂が雷雷軒以外の店にいるとは。」
聞き覚えのある声が隣から聞こえたため振り向くとそこには豪炎寺がいた。
「へぇ〜豪炎寺もここに来るんだな。夕香ちゃんの見舞いの帰りか?」
「ああ、今日はお手伝いさんが急用で来れないらしくてな。たまたまカレーが食べたくなったから入ったんだ。」
注文したカレーが来るまで豪炎寺と駄弁っているとあっという間にカレーが届く。想像していたより具が少ないことと思ったが具がなくなるくらい煮込んでいるんだろうと思い、スプーンを口の中に入れ喉に通した瞬間衝撃が走った。
「○%¥♪☆×*!!!!?」
「ど、どうしたんだ稲魂⁉︎突然変な声を出して、何か変なものでも入っていたか⁉︎」
聞いたことのない不協和音を喉から出した雷牙に驚いた豪炎寺は慌てて雷牙のカレーを見るが特におかしなものは入っていない。…が確認と同時に豪炎寺の脳内に1つの記憶が蘇る。
『俺は寿司はさび抜き派だぜ?国語のテストなんて余裕よ余裕。』
2週間前に交わした国語の小テスト前の会話。特に勉強せずに円堂と共に特訓に明け暮れている2人に豪炎寺が大丈夫かと質問した際に返ってきた意味不明な返答だ。テストの点数は円堂は赤点、雷牙は赤点ギリギリという悲惨すぎる結果だったが…
「…まさか!おい稲魂、お前辛さレベルは何辛にした⁉︎」
「い…1…辛。」
嫌な予感が的中してしまい頭を抱える豪炎寺、 この店のカレーの辛さは一般のチェーン店のカレーよりも辛いことで有名である。その辛さは一辛で通常のカレーの辛口だと公式から明言されている。一般人は一辛でちょうどいい辛さだと思うがワサビ抜きで寿司を食べるような人間に辛口が食べられるとは到底思えない。そのような人間が油断した状態で一辛のカレーを食べるとどうなるか?答えはそこにいる大量の水を摂取している少年を見れば明らかだ。
「(い、稲魂…俺が見たことがないほどの汗と苦悶の表情で必死にカレーを食べている…食事をとる時あんな拷問みたいな表情で食べる奴を始めて見た…。)…稲魂、残念なお知らせだがこの店の辛さは一辛で普通の辛口相当の辛さだ。食べられないのなら最悪残すのも一つの手だと思う。さすがに死にそうな顔で食べるお前の姿を見るのはその…なんというか見てられない。」
雷牙に残すという選択肢を与える豪炎寺。既に頼んでいる以上代金は支払わなければならないがバラエティで見る激辛料理を食べる芸人以上のリアクションでカレーを食べる雷牙を見るとそれが最適解だと判断する。だが雷牙が取った行動は豪炎寺の想像を絶するものだった。
「な、なにをしているんだ稲魂!もうよせ!カレーを口に入れのは止めろ!汗が尋常じゃない量出ているんだぞ!」
そう、カレーを口にかきこみだしたのだ。豪炎寺は理解できない、お金を払っている以上残すのは勿体無いと考えるのは理解できる。だが雷牙の反応は最早アレルギー症状が出でいる状態でも食べ続けているのと同じだ。何がそこまで雷牙を諦めさせないのか。それが豪炎寺には理解できなかった。
「ご、豪炎寺…確かに…俺…は、ノコス…トイウ(グビ!)手段はある…。だ、だがなここで諦めちゃ…俺の中で何…かが終わる気がすんだよ…!」
断じてそんなことは無い。その程度で終わる何かなら最初から持っていても意味がない、むしろ捨てるべきだ。
だが今の豪炎寺にはその言葉があの時病室で投げかけられた言葉と同じくらい重く感じてしまう。
「(稲魂…お前はサッカー以外の事もそこまで全力に取り組むのか。帝国戦以降チームメイトとして理解が深まったと思っていたが俺もまだまだだな…。)…分かった。だが無理だと思ったら無理はするなよ。」
再開する稲魂雷牙VS大盛りカツカレー。気づいただろうか?そう雷牙が頼んだカレーは大盛りなのだ。この店はあくまでも大人や家族連れをターゲットにしたチェーン店。雷雷軒も大概だが、当然中学生の懐事情など考慮していないため大盛りにすれば1000円は軽く超える。だが並の量では雷牙の持つ胃袋を簡単に満たすことができない。だからこその大盛りだが、それがここにきて雷牙の胃袋への最悪の武器となってしまった。
「ガツガツ、ガツガツ、グビ!、ガツガツ、グビ!、ガツ、グビ!、ガ(グビ!)」
食べ進むごとに水を飲む間隔が短くなっていく。ちなみに豪炎寺はもう既にカレーを完食している。本来偶然鉢合わせただけの豪炎寺には雷牙に付き合う理由はない筈だが彼は雷牙の勝負を見守っている。
普段口数が少なくクールな彼であるがその実、裏側にはサッカーにかける“ファイアトルネード”の炎にも負けない熱い思いと一度認めたチームメイトを100%信頼する義理堅さを併せ持っている。
そんな彼が雷牙を見捨てられるわけがないだろう。
「(頑張れ稲魂。もうカレーは半分切っている!あと少し、あと少しでこの地獄から解放されるぞ!)…。」
心の中でお店に対して失礼なことをしれっと言っているが側から見れば無言で隣の客をジッと見つめている中学生にしか見えないため普通なら不審がられるが持ち前のイケメンフェイスによってなんとか不審者感が相殺されていた。
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雷牙が挑戦して早20分が経過しようとしていた。もう既に雷牙の味覚は麻痺しており口にかき込むカレーはもはや“めっちゃ辛くてなんか苦い汁”としか思えていない。だが残りはあと3分の1だ、今の雷牙の気分は帝国戦でDF陣をごぼう抜きにしたあの時の感覚と全く一緒だった。
…だがいつだって自分の思い通りには行くことは非常に稀だ。人生もサッカーでも、そしてこの勝負でも…
「(あと少し…!あと少しだけ持ってくれ俺の体…!もう舌の感覚はねぇ…だがそれでもここまで来て諦めるわけにはいかねぇ!)…ナ、ナンダト…!」
声を出すのが難しい筈だが声を出さずにはいられなかった。雷牙がここまでスプーンを進めることができたのは大きく分けて2つの理由がある。
1つは常設されたお冷の存在。もう既に自身の近場にあるお冷は全て飲み干して今飲んでいるのは豪炎寺の近くにあるお冷だがそれもまだ量に余裕がある。
問題は2つ目だ。これこそがここまでなんとか来れた言わば救世主と言うべきものだった、それがライスだ。カレーライスの文字通り半分を占める存在であり必要不可欠な物。そのライスがついに尽きてしまった…。この事実は雷牙のスプーンの手を止めるのに十分であった。
ライスの無いカレー。これではボールの無いサッカー、マントをせずにプレーする鬼道、やんすの語尾をつけない栗松と同じである。
雷牙の頭を駆け巡る様々な
そうだ…ライスをおかわりをすればいい!その考えはすぐに消え去ることとなる。残念なことにここのライスのおかわりは150円なのだ、急いで財布を見ると頼んだカレーの分の料金しか財布に入っていないことが分かった。
仕方なく豪炎寺にお金を借りようするが、なんとすぐ近くに雷門中の教師が入店しているのを見かけてしまった。
非常に不味い、雷門は校則で下校時の寄り道について特に規制されていないが金銭の貸し借りは別だ。しかも問題の教師は学校内で特に校則に厳しい富山である。変に誤解されてサッカー部が廃部になったら元も子もない。
雷牙は遂に覚悟を決め冷え切ったルーを食べることにする。冷えても辛いルー。それでも雷牙はなんとか食べ切った。勝ったのだよくわからない何かに。
「ゴ、ゴチソウ…サ、サマデシタ…。」
完食と同時に倒れ込む雷牙。豪炎寺は急いで駆けつける。
「わ、悪イな豪炎寺…。ヤっとた、タべ終ワったって言うノに口がマわらねぇ…。」
「…かまわない。」
「こ、こんナにな、なるクらいならアきらめレばよ、よかっタって思ウだろう…ナ。デも嬉しかっタ。イ、一瞬デもカラいものがく、食えるヤツらのせ、世界が見えた気がシタから。こ、コの体がナおったらイッショにサッカーをや、ヤろう…」
「ああ…待ってる。」
まるで禁断の技を使った後とでも言わんばかりの言葉と体になる雷牙。それを豪炎寺は真面目な顔で無言で見つめている。
「あのーお客様〜食べ終わりましたならお会計お願いしまーす。」
店員に促され、代金を払い終わったサッカー少年達は互いの健闘を讃えながら帰路へ着く。
そして来る次の日、雷牙は昨日の出来事など何も無かったかのように部活に顔を出した。
あるマネージャーの話によれば、豪炎寺は誰も見た事のない何とも言えない表情をしていたと言う。
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ここは都内にある警察署。そこから1人の男が解放される。その男の名は影山零治。つい最近まで帝国学園の総帥だった男だ。
鬼瓦が掴んだ証拠では影山が鉄骨を落とさせたことを証明することができず証拠不十分として判断されせっかく捉えた悪魔を再び世に放つことになってしまった。
影山が警察署の門の前に辿り着くとまるで今日釈放されることが分かっていたように一台のスポーツカーが停車する。
「…これは珍しいこともあるものだな。まさか貴様が直接迎えに来るとはな…“雷帝”。」
「研究室に篭っているだけでは脳が腐るからねぇ。たまの気分転換としてはドライブは最適なのだよ影山さん。」
運転席に座っている“雷帝”はボタンを押して後部座席のドアを開き影山を車に乗せる。
「それで?帝国まで送ればよろしいかい?」
「ふん、私の手から離れた兵士がいる帝国になどもはや用は無い。神々が住まう楽園こそ私の居場所に相応しい。」
「はいはい、アソコね。神は神でも紛い物の神にあそこまでの興味を持つとは貴方も変人だ。」
「神のステージなど私にとっては通過点でしかない。私が求めるのは神をも超えた勝者。絶対の勝利をもたらす選手だけが価値がある。」
影山の返答に“雷帝”は満足したように笑みを浮かべるとアクセルを踏み車を走らせる。数十分後車が停車したのは
これ9割方自分の経験談なんですよね。マジで某カレー屋の一辛食べた時後半味覚がなくなりました。激辛料理を食べられる芸人とかって本当に尊敬しますね。