イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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リトルギガント戦に入って以降、お気に入り登録をしてくださる方が増えてビックリです(笑)。応援してくださる読者の皆さんありがとうございます!!!


俺たちのゴォール!!!

壁山「稲魂さんっ!!!」

 

 当然の如く先陣を切るのは、その背に『16番』の数字が刻まれた黄金色の“怪物”。

 ボールを持った瞬間から圧倒的なプレッシャーを放つ“怪物”により、巨人達の全神経に極度の緊張が走る。

 

ロココ「プレッシャーに飲まれるなみんなっ!!!今までの師匠との特訓を思い出せっ!!!僕たちは……強いっ!!!」

 

 さりとて巨人を率いる大将は“イナズマ伝説”を築き上げた張本人の愛弟子だ。

 キャプテンによる師匠直伝の鼓舞は、巨人達を蝕んだ緊張など容易く吹き飛ばす。

 

ドラゴ「そうだァ!!“怪物”がなんだァ!!!“最強”がなんだァ!!!俺達はそれよりもずっと強ェ!!!!」

 

ゴーシュ「師匠から受け継いだ“イナズマ魂”を……舐めんなよォ!!!!!」

 

 ロココによって本調子を取り戻した2本の剣が“怪物”の前に立ち塞がるも……。

 

雷牙「ハッ!!その心意気や良し(ベネ)ェ!!!!!ご褒美に早速、本気でお相手してやんぜェェェェェ!!!!!」

 

 傲岸不遜の“怪物”は二体の巨人達を見下し不敵に笑い飛ばすと同時に、天より黄金の稲妻が“怪物”に目掛けて落とされた。

 

雷牙「来やがれェ!!!“雷鳴の覇王 レグルス・マキシマムゥゥゥゥ”!!!!」

 

 稲妻の中から顕れしは、王を超えた王たる“覇王”。“怪物”の肉体を媒介に顕現した“覇王”はその右手に身の丈程ある巨大な斧を携え、獲物を定める。

 

ゴーシュ「化身か…!だが…!!俺達がその程度で怯むと思うなよォ!!」

 

ドラゴ「教えてやるぜェ!!!テメェじゃ届かねェ領域ってヤツをなァ!!!」

 

雷牙「いいねェ!いいねェ!!最っっっ高だねェ!!!んなら逆に教えてやんよォ!!!“怪物”の恐ろしさってモンをなァ!!!!」

 

 まだ試合再開から1分も経っていないにも関わらず、早くも闘争心が最高潮へ達した戦士達は、己が持てる力の全てをたった一つのボールにぶつける。

 

雷牙「“マキシマム・オブ……!!レェグルスゥゥゥゥ”!!!!」

ゴーシュ「“爆ラストリゾォォォォトッ”!!!」

ドラゴ「“ダブル・ジョー…!V4ォォォォ”!!!!」

 

 世界屈指のサッカー選手(プレイヤー)達の“全力”の衝突は、凄まじい轟音と共にこのスタジアムを小さく揺らす。

 

円堂「うおーーっ!!?眩しっ!?」

 

 “全力”のぶつかり合いによりボールを起点に発生した閃光は、フィールドプレイヤーからベンチウォーマーに至るまで全ての選手の目を物理的に眩ませてしまう。

 

雷牙「ダァリャァァァァ!!!!!」

 

ゴーシュ&ドラゴ「「ヌオォォォォ!!!?」」

 

 だが、目は見えずとも肌で感じ取れる痺れるような突風は、激戦の勝者を暗に告げる。

 

雷牙「チィッ!ちっと飛ばし過ぎちまったぜッ!!コッから先は任せたぜェ!!吹雪ィ!!!」

 

吹雪「OK!任せられたよッ!!」

 

 勝者になったとはいえ流石に無傷では済まなかった“怪物”は体力を回復させる為に、前方を走る吹雪へパスを回す。

 

吹雪「さぁ…、風になろうかッ!!!」

 

 ボールを受け取った吹雪は持ち前のスピードを最大限に活かしリトルギガントのディフェンスを次々と抜き去って行く。そのすぐ後ろには血を分けた弟たる熱也も一緒だ。

 

熱也「久々に一緒に行くぜェ!!兄貴ィ!!!」

 

吹雪「うん!!吹雪兄弟の力を世界中に人達に見せつけちゃおうかッ!!!」

 

 熱也が合流した事により、銀狼達の連携は雪原に吹き荒れる猛吹雪(ブリザード)の如き荒々しさが加えられる。

 兄弟由来の息の合った連携の前には、巨人達のフィジカルを以てしても簡単には対応出来ずに、遂にはリトルギガントのディフェンスが崩壊してしまった。

 

マクスター『遂にフブキ兄弟(ブラザーズ)がゴール前に辿り着いたァァァァ!!!!互角の勝負だった前半戦から一転!!リトルギガントのディフェンスが上手く機能していないぞォォォォ!!!!』

 

 彼らの名誉の為に言っておけば、決して巨人達は手を抜いている訳ではない。ただ、王道のサッカーを地で行くリトルギガントに対し、前例もセオリーも通じないイナズマジャパンの型にハマらないサッカーに、前半戦の調子(ペース)が完全に崩されているのだ。

 

大介「コイツはちとマズいかもしれんのぉ…」

 

 イナズマジャパンに苦戦する教え子達を見た大介は顎髭を弄り、軽く冷や汗を流す。しかし、その不安は()()()()()()()()()()()()()()()()。その更に奥に存在する大きな“謎”に向けられているのだ。

 

大介(儂は稲魂の小僧がこんな出鱈目なフォーメーションを考案したのは、単にロココ達の調子を崩す為…そう思い込んでいた。じゃが……()()()()()()()()…?)

 

 確証は無くとも大介はこのフォーメーションを考案した人物は稲魂雷牙で確信していた。だが、一番の問題はなぜ久遠が非合理的この上ないフォーメーションを認可したか…この一点につきる。

 

 日本をここまで導いた名将・久遠道也が、リトルギガントの調子を崩す為などという理由だけであんな知性の欠片も無いフォーメーションに許可を出す訳がない。

 一見、出鱈目に見えるこの戦術にも、その奥底には何らかの合理的な側面がある筈なのだ。

 

大介「・・・駄目じゃ!儂にはさっぱり分からんわい!!!」

 

 だが、幾ら考え込んでも靄がかかった答えは一向に姿を表す気配すら無い。そもそもGK、そして指導者としては卓越した才能を持つ円堂大介だが、孫と同じく細かい事を考えるのはてんで苦手なのだから。

 

大介「もう考えるだけ時間の無駄じゃ!お前達!!一度深呼吸をして己を見つめ直すんじゃ!!そうすりゃ、狂ったペースも時間が解決してくれるッ!!」

 

『はいッ!!!』

 

 “謎”の正体が分からずとも、別の方向からなら打てる手など幾らでもある。寧ろ、このような状況こそが円堂大介の真価が最大限に発揮される場であるといえるだろう。

 

 かといって、リトルギガントが不利である事には変わりはないが。

 

マクスター『監督アラヤからの助言(アドバイス)を受けたリトルギガントッ!!だが、既にゴール前にはイナズマジャパンのストライカー達が集結しているぞォォォ!!!』

 

 現時点で最もゴールに近い選手は吹雪兄弟、そして次点は稲魂雷牙。しかし、イナズマジャパンにはあと1人FWに命じられた選手が居る。

 

 その最後の1人とは……。

 

壁山「俺も居るっスよ!!!!」

 

 日本が誇る心優しき巨人・壁山塀五郎だ。

 

マクスター『そうだッ!!イナズマジャパンには彼が居たァァァァ!!!!どうして私はココまで大きなストライカーを見逃していたんだァァァァ!!!?』

 

 “怪物”というあまりに強大な存在を隠れ蓑とし、ここまで誰にも気付かれずに辿り着いた壁山。彼もまた、イナズマジャパンに渦巻く大きな“謎”の一つだ。

 

ロココ(ずっと気になっていた…。どうしてこのタイミングでカベヤマを上げたんだ…?奇襲目的だとしても彼じゃ遅すぎる…)

 

 少なくともイナズマジャパンが正攻法で自身を破るつもりはサラサラ無い事はロココも理解している。

 かといって壁山ではロココの想定を超えるには役不足でしかない。その巨体に違わないスピードでは、例え不意を突かれてしまったとしてもロココならば十分対処出来る範疇でしかないのだ。

 

ロココ(彼の存在は(ブラフ)と見るのが妥当…!なら本命は…、フブキ兄弟の後ろに居るイナタマ…!!)

 

 イナズマジャパンの策略の匂いを嗅ぎ取ったロココは、このタイミングで敢えて化身を発動する。

 

ロココ「“未知なる巨人 エクスドリーム”!!!」

 

 彼の予想通り、本命が雷牙だったとしたらその狙いは十中八九、“(ビフォアー)”に決まっている。

 “兆”に覚醒した雷牙の強さは実際に体験した事は無い。それでもロココはその強さは“あの時(モンスターモード)”の稲魂雷斗と互角であると確信していた。

 

ロココ(来るなら来いッ!!!君がどんな技術(ワザ)を使おうが、僕がゴールに居る限り点は絶対にやらない…!!!)

 

 覚醒の“兆”しを見逃さない為にゴールを護る小さな巨人は気を全開に高め、“怪物”が牙を剥く瞬間を今か今かと待つが……

 

ロココ「ッ…!?」

 

 イナズマジャパンのサッカーは、容易に巨人の想像を超えてみせた。

 

壁山「だったァァァァ!!!!」

 

 その第一陣となったのは、“(ブラフ)”であると切り捨てた筈の壁山塀五郎。 

 

ロココ「ココでカベヤマだと…!!?一体、何を…!!」

 

 壁山は吹雪兄弟からボールを受け取った訳ではない。ただ自身の限界を超えたスピードで彼らを()()()()、キーパーの前で()()()()()()()()

 

 あまりの壁山の異常行動を前に、キャプテンとしての使命感の元で何とかこれまで平静を保てていたロココの思考が遂に揺らぎ始める。

 

 素人目に見ても意味不明としか言えない壁山の行動…。その答えを世界はすぐに知る事となる。

 

壁山「“ザ・マウンテンV4”っスゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 刹那、ロココの視界を奪ったのは焦茶色の岩肌達。天を貫かんばかりの雄大な山脈は上下左右における巨人の視界を容易に塞いだ。

 

マクスター『な、な、な、なんとォォォォ!!!?カベヤマの得意技・“ザ・マウンテン”がゴール前を塞いだァァァァ!!!!コレではロココはどこからシュートが飛んで来るのか分からないィィィィ!!!!』

 

ロココ「ぬかった…!その手があったか…!!」

 

 全力の“巨人”に勝てないのなら、最初から全力を出させなければいい……それがイナズマジャパンの知将達が導き出した対策法であった。

 

???「天丼ッ!!!」

 

???「カツ丼ッ!!」

 

???&???「「親子丼ッ!!!!」」

 

 厚さ数十cm超えの山脈を挟んだ先、ロココの聴覚は確かに本日二度目となる素っ頓狂な呪文を捉えた。

 同時に、まるでロココの懸念を肯定するかのように眩い白銀の閃光が山脈の奥から激しく漏れ出した。

 

???&???「「“神滅槍弾ッ”!!!!!」」

 

 聞き慣れた呪文、聞き慣れた声、聞き慣れた技名…。聴覚で聴き取った全ての“音”がロココにその正体を確信させる。

 

ロココ(ココで“ロンギヌス”か…!!どこから来る…!?上か…!?右か…!?それとも左か…!?)

 

 数秒後に姿を表すであろうシュートの正体を確信したとしても、ロココを襲った問題はそれではない。

 想像してみて欲しい。目隠しをした状態で歩く自分を、光一つ存在しない暗闇の中に居る感覚を。

 人が人である以上、余程の鍛錬を重ねなければ視界を奪われた状況でまともに動くなどまず不可能だ。

 

 そして、ロココにとってもこのような状況でのサッカーは初めての経験であった。

 可視化されない“謎”は対象の精神を容赦なく削る。小さな巨人が1秒が1分のように錯覚してしまう感覚に陥る中、神殺の槍が姿を現したのは……。

 

雷牙「残念!まさかまさかの“()()()()”さァ!!!!」

 

 今までの心理戦が何だったのかと問いたくなるような、実に“怪物”らしい真正面からであった。

 

 だが……

 

ロココ「そうか…!()()()()()()()()()()()()()()ッ!!!!」

 

 低次元の心理戦を制したのは、“怪物”ではなく“小さな巨人”であった。

 

マクスター『ああっとォォォォ!!!!ロココがシュートの軌道上に居るゥゥゥゥ!!!!まさかコレすらも既に読んでいたというのかァァァァ!!!?』

 

ロココ「違うさ!!コレはただの山勘…!けど、イナタマなら絶対にそうするって信じてた僕の勝ちだ…!!!」

 

 ロココは円堂と違って雷牙には何一つ因縁は無い。精々、彼の義父の強さを師から伝え聞いていたくらいだ。

 それでも、この大会を通して稲魂雷牙は“合理”よりも“感情”を優先する人間である事くらいは分かっていた。

 そして、予想通り彼は“真ん中”を選択した。これは間違いなくロココの完全勝利だ。

 

ロココ「止めるッ!!!“X・ザーー」

 

 そう…。()()()()()

 

???「俺達の国にはこんな諺がある。“勝って兜の緒を絞めよ”ってね」

 

ロココ「んなっ…!!?」

 

 刹那、焦茶色でもない白銀でもない、第三の色・紅の閃光が走る。その正体は当然……

 

ヒロト「“銀河超人 エイリアマスターズッ”!!!」

 

 その背に“神秘の巨神”を顕現させた基山ヒロトだ。

 

ロココ「ココでヒロトだとッ…!?まさか…!!!」

 

ヒロト「そのまさかさッ!!!」

 

 “怪物”の策が看破される事など初めから想定内。ならば仮初のゴールを与え、裏の裏の裏をかいてやればいい。それがイナズマジャパン…いや、不動明王の策略(サッカー)だ。

 

ヒロト「“コスモ…!ゼペリオンッッッ”!!!!!」

 

 “怪物”と“天才”により生み出された神殺の槍にチェインし“神秘の巨神”による宇宙最強の光線が0距離地点から発射される。

 

マクスター『合体化身に合体化身がシュートチェインだァァァァ!!!!まさに極上の素材に極上の調味料が振り掛けられたと言わんばかりの贅沢なシュートッ!!コレには流石のロココも万事休すかァァァァ!!!?』

 

ロココ「クッ…!諦めてたまるかァァァァ!!!!“X(アンノウン)・ザ…!!ハンドォォォォ”!!!!」

 

 その胸に“イナズマ魂”を宿した守護神は勢いよく地面を踏み込み力強く右手を突き出す。

 その瞬間、反射的に耳を塞いでしまうような凄まじい轟音が会場中に鳴り響いた。

 

ヒロト「まだ耐えるか…!!」

 

ロココ「生憎…!!僕は諦めが悪いタチでね…!!そのせいで師匠からよく呆れられてるよ…!!!」

 

 圧倒的に不利な条件が揃いながらもロココは未だにゴールを譲らず、基山ヒロトとの真剣勝負を繰り広げる。

 その右手を通して伝わるシュートの重さは確実に“ジ・アース”を超えている。にも関わらず、たった1人でここまで粘り続けるロココの胆力は驚異的という他ない。

 

ロココ「僕は…!絶対に“世界一”になるんだァァァァァ!!!!!」

 

 ロココの“夢”がイナズマジャパンの“策略”を僅かに上回った。

 巨人の咆哮はそのまま彼の力となり、拮抗勝負を繰り広げていたヒロトをボールごと後方に大きく吹き飛ばす。

 

マクスター『止めたァァァァ!!!!イナズマジャパン渾身の“不意打ち”すらもロココには通用せずゥゥゥゥ!!!!』

 

 厳密には違う。イナズマジャパンの不意打ちはロココに通用はした。

 ただ彼を打ち破るには“後一歩”だけ力が足りなかっただけだ。

 

 ならば……

 

雷牙「()()()()()()()!!!!!」

 

 今ここで“後一歩”を踏み出してやればいい。

 

???「ウオォオオオオオ!!!!!」

 

 ボールがペナルティエリア付近でフリーとなった瞬間、岩の瓦礫の影から一つの影が飛び出す。

 

マクスター『おおーーーっとォォォォ!!!?リトルギガントがボールを確保するよりも早く飛び出したのは、まさかの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リュウゴ・ソメオカだァァァァ!!!!』

 

 ここまでの策略が不動明王による()()()()()だとしたら…。ここから先は稲魂雷牙の大本命(メインプラン)だ。

 

染岡「俺に続けェ!!!稲魂ァァァ!!!!」

 

雷牙「分かってらァ!!!“獅風迅雷ッ!!超限界突破(オーバー・オーバー・リミテッド)ォォォ”!!!」

 

 完全にノーマークであった染岡の奇襲…。その事実はロココはまだしも他の巨人達の思考を数秒程フリーズさせるには十分だった。

 その隙を突いた“怪物”は全身から黄金の気と紺碧の稲妻を立ち昇らせ、瞬間移動と見間違う超スピードで染岡の隣に並び立つ。

 

雷牙「行くぜ染岡ァ!!!頭空っぽにして思う存分、ぶちかませェ!!!」

 

染岡「見てろよロココォ!!!これが俺達の力だァァァァ!!!!」

 

 世界の大舞台で初めて“怪物”と共に並び立った桃色の“龍”は、自身の夢に賭ける“想い”を余す事なくボールに叩きつける。

 

雷牙&染岡「「ダァリャァァァァ!!!!!」」

 

 第二の“イナズマ伝説”を黎明期を支え続けた偉大なる功労者によるツインシュートはボールの周囲に“獅子”と“龍”を模った稲妻のオーラを発生させロココに向かって襲い掛かるが……

 

ロココ「その程度!!フンッ!!!」

 

 黎明期コンビによる渾身シュートは、ロココには通用せず必殺技を使う事なく両手だけで完封されてしまった。

 

マクスター『惜しくも決まらずゥゥゥゥ!!!!裏の裏の裏の裏をかき炸裂したイナタマとソメオカの新必殺技もロココには通用せずゥゥゥゥ!!!!』

 

 幾重にも及んだイナズマジャパンの策略を耐え抜き、遂にその右手にボールを納めたロココ。だが、彼は今のシュートに対して()()()()()を抱かずにはいられなかった。

 

ロココ(コレがイナズマジャパンの狙いか…?…いや、だとしても今のシュートはあまりに威力が低すぎる…)

 

 先程、雷牙と染岡が放ったツインシュート…。あれは決して苦し紛れのシュートなどではなく、間違いなく何らかの意図がある未完成の必殺技であった。

 

 しかし、受け止めた感触は自分に通用するどころか世界基準で見てもお粗末な出来…。精々、日本国内でのみ通用するか否かレベルだ。 

 常識が一切通じない“怪物”でも、この大舞台でこんな無意味な事をするか?

 

雷牙(ーーとか思ってんだろうなァ…。ロココのヤローは)

 

 ロココの内に芽生えた小さな猜疑心…。それも“怪物”の想定内だ。

 

雷牙(オイ鬼道、どうやらオマエさんが言った通りになってるみてーだぜ?)

 

 小さな巨人の心の内を正確に読み取った“怪物”は遥かに後方で状況を俯瞰する鬼道に眼をやり、後半戦開始前の出来事を回想する。

 

鬼道『三度だ。稲魂』

 

 三度。それが“怪物”に与えられた『夢』を叶える為の最後のチャンス。

 

鬼道『恐らく奴らは一度目で何かを嗅ぎつけ、二度目に警戒を始め、三度目で確信へ至る。そうなればもう奴らに同じ手は通用しなくなる。だからこそ、何としてでも三回で“()()()()()”を完成させるんだ』

 

 リトルギガントとて馬鹿じゃない。たった一度のシュートで何かの気配を感じ取っている以上、鬼道の予想は既に現実の物になりかけている。

 既に一度目は終え、残るチャンスはあと2回…。そこに“怪物”の『夢』とチーム全員の『夢』が掛かっている。

 

染岡「…ありがとな稲魂。貴重な一回に俺を選んでくれてさ」

 

 すると突然染岡は“怪物”に対して感謝の念を述べ始めた。

 照れくさそうに感謝の述べる染岡を見た雷牙は、衝撃のあまり一瞬固まってしまいそうになるも、寸んでのところで我を取り戻す。

 

雷牙「あ〜ン?急にどしたん?染岡サンよォ。オマエさんが感謝の念を述べるだなんて珍しいじゃねェか」

 

染岡「…いやな、お前がパートナーに選ぶのは円堂や豪炎寺以外だったら風丸か鬼道あたりだと思ってたんだよ」

 

雷牙「んだよ?それなら最初に説明したじゃねェーか。オマエだからなんだよ。俺と守と木野で作ったサッカー部に、半田と一緒に一番最初に入ったオマエだからこそ、ぶっつけ本番で“きっかけ”を掴めたんだ」

 

 雷牙は初めから染岡を最初のパートナーにすると決めていた。

 ただ少し酷な事を言えば、彼とでは“必殺技”を完成させる事は出来ない。それは染岡本人も理解している。

 だが……誰よりも長く苦楽を共にした染岡だからこそ『夢』を叶える為の“きっかけ”を掴む事が出来たのだ。

 

染岡「…それでも。・・・いや、()()()()()()断言出来る。俺をここまで導いてくれたのは稲魂、お前なんだよ」

 

 今となっては懐かしい雷門中サッカー部初めての試合となった深海中との試合。あの日、染岡は人生で初めての才能の差というものを味わった。

 

 あの試合では最終的なスコアは10対0で雷門の圧勝。だが、点を決めたのは全て雷牙だ。

 “雷門の点取り屋”を自称しながらも、自身のシュートは深海中のキーパーには一切通用せずただ敵にボールを送るだけ。

 一方、雷牙のシュートはキーパーの必殺技を容易く貫き、雷門の初勝利に貢献した。

 

染岡「ハッキリ言って、あの時はスゲェ嫉妬したさ。お前と同じくらい努力してんのにどうして差が開くばかりなんだろうなって苦悩もした…」

 

 染岡は悩んだ。どうすれば己の前に立ち塞がる“才能”の壁を乗り越えられるのか。どうすれば仲間達に胸を張って“雷門の点取り屋”を名乗る事が出来るのか。

 

 悩みに悩んで、とにかく悩みまくった。

 

染岡「んでよ…、悩みまくった末に辿り着いたんだ。俺にはもう“努力”しかねぇってな」

 

 自身の目の前に悠然と“才能”の壁が立ち塞がるというのなら、凡人である自分には“努力”で乗り越えるしかない。

 雷牙が『10』努力するのならば、自分は『100』努力すればいい。そう信じて今日まで努力を重ね、ここまでやって来た。

 

染岡「お前にとっての原点(オリジン)が親父さんのようによ…。俺にとっての原点(オリジン)はお前の存在なんだよ。…だから、礼を言わせてくれ。ありがとよ!!稲魂!!!」

 

雷牙「……」

 

 再度感謝を述べられた雷牙は、突如として黙り込む。顔に浮かぶ表情は“困惑”や“照れ”といった感情ではない。寧ろその逆、“何言ってんだコイツ”といった表情だ。

 

染岡「……稲魂?」

 

雷牙「バーーカ。なーーに寝ぼけた事言ってんのかねェ?目の前のピンク頭のタピ岡さんはよォ?」

 

染岡「んなっ…!?今のは素直に照れる場面だろーが!!」

 

雷牙「…いいか染岡?俺ちゃんは別にオマエの原点(オリジン)になったつもりはねェ。……てかなんなら、初めての練習試合の後に奮起するまで気にも留めてなかった!!!」

 

染岡「ブッ!!?ちょ…おま…!そこまで正直に言うか普通!!?」

 

雷牙「言いまーす。だって、それが俺なので〜」

 

 せっかくの感動の名シーンにも関わらず、割と酷いカミングアウトをぶちまけた雷牙に染岡は驚きを隠せない様子だが、“怪物”のモットーは『親しき仲なら遠慮なし』。それが稲魂雷牙だ。

 

雷牙「…まっ、つ・ま・り・だ。例え始まりが“俺の存在”だったとしても、今日の今日まで走り続けてこれたのは、間違いなくオマエさん自身の意志なんだよ」

 

染岡「俺の…意志…」

 

雷牙「染岡。一度しか言わねェから耳の穴かっぽじってよーーく聞いておけよ?……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

染岡「!!!」

 

雷牙「オマエさんは雷門で誰よりも努力してきた。どんなに先を越されようが不貞腐れずに努力を続けられるなんて並大抵の人間じゃムリだ。それこそ俺ですらな。だからこそ…俺はオマエを尊敬する」

 

 何千万というサッカー少年の中から日本代表に選ばれた選手の大半は優れた“サッカーセンス”を持っている。それは努力の天才とも謳われる円堂ですらも例外ではない。

 

 だけど、染岡だけは違う。彼には豪炎寺のように卓越したセンスは無い、かといって鬼道のように優れた司令塔(ゲームメイカー)としての能力も無い。

 彼にあるのは“努力を続けられる”才能だけ。その一点のみでここまで上り詰めて来たある種の『天才』なのだ。

 

雷牙「ココは俺達の旅の一つの“終着点(ゴール)”だ。だからよ…一緒に行こうぜ?終着点(ゴール)に辿り着いた末にある、世界一のテッペンってヤツによ!!!」

 

染岡「稲魂…!!!……おうよッ!!!世界に教えてやろうぜ!!イナズマジャパン(俺達)が紡いだ絆の力ってモンをなッ!!!」

 

 短くも長かった“イナズマ伝説”の旅路の一つを締め括る“終着点(ゴール)”はもうすぐそこまで来ている。

 

 その胸に“イナズマ魂”を宿す侍達よ。世界のテッペンまで全速力で駆け上がれ。

イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。

  • 稲魂雷牙
  • 稲魂雷斗
  • 明星鬼乃子
  • “雷帝”
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