“それ”は、買い出しの帰り道に偶然遭遇した何気ない日常の
「いいなぁ、お兄ちゃんは…。私よりも足が速いし、サッカーも上手くて…」
「オマエの走り方にムダが多いんだよ。にいちゃんがコツを教えてやるから」
「ホント!?やったー!!ありがとうお兄ちゃん!!!」
雷牙「………」
目の前で繰り広げられるのは、幼い兄妹の当たり障りの無い会話…。俺は“それ”から目を離す事が出来なかった。
雷牙「……妬けるねェ」
……きっかけは間違いなく“あの日”の出来事だったんだろうな。
雷牙『掛かってこいよクソ妹ッ!!俺とオマエ…どちらが真の“怪物”に相応しいか決めようぜッ!!!』
鬼乃子『・・・ハッ!!上等ッ!!!心ゆくまで思う存分果たし合おうよッ!!クソお兄ちゃんッ!!!』
本当の意味で初めて出会った俺達兄妹…。コレまでの旅の途中で起こった悲劇の全ての元凶の屋敷で繰り広げられた死闘の末に、俺達の“夢”と世界の“平和”は護られた。
鬼乃子『…バイバイ。………お兄ちゃん』
最後の最後でガルシルドを裏切って別れた血の繋がった妹。
アイツがどこで産まれて、どこで育ったのか。アイツが今どこで何をしているのか……俺は知らない。想像も出来ない。
言い換えれば、俺と“
それでも俺はこう思わずにはいられない。
???『
雷牙「……どーだかね…」
アイツと同じユニフォームを着て、アイツとお揃いのスパイクを履いて、アイツと一緒に笑いながらサッカーをする…。そんな“
だが……
「ココに居たか。もう帰るぞー!母さんがお昼ご飯を作って待っているからなー!!!」
俺が空想する
雷牙「…もしも、親父と会っちまったら……一体、俺はどんな反応をしちまうんだろうな?」
もしもだ。…本当にもしもだ。俺の実の父親……“明星帝牙”が今、どの面下げて俺の前に現れたとする。多分、ヤツなら……
“雷帝”『いや〜!!久しぶりだねェ、稲魂ク〜ン!!決勝戦観てたよ〜?まさに八面六臂だったじゃないか〜!!流石はMVPを受賞したスタープレイヤーなだけあるねェ』
……ぐらいの軽口を叩きながら、一切悪びれもせずに
雷牙「…クハハ…。本当に残酷なモンだな、人生ってヤツは」
妹の行動はテンデ想像出来ないってのに、どうして父親の行動は簡単に予測出来る?どうして俺の脳内に数回しか会った事のないヤツの声が正確に再生される?
“
雷牙「…もう、あーだーこーだ考えんのは止めっか。今日は楽しい楽しい祝賀パーティーなんだ。こんなセンチなお気持ちで参加するのはパーティーにとって無礼ってモンだな」
流石の雷牙サンも、ちと立ち止まり過ぎちまったみてーだと反省する。
早く宿舎に戻んねェーと皆んなにドヤされるだろーしなァ(主に夏未に)。
雷牙「カエルが鳴くから
どちらかといえばこの島で鳴くのはウミネコだな。…いやカモメか?う〜ん……都会育ちの俺ちゃんじゃあ違いが分かんねェ〜。
雷牙「…そういやマシュマロはちゃんと買ったっけ?午後の部でキャンプファイアーをする予定だかんな〜。炙りマシュマロは食わねェーと日本人じゃnーー」
雷牙「
視線と意識をレジ袋に集中させた瞬間、突然鈍い音と共に俺は吹き飛ばされる。その反動でキッチリレジ袋の中に入れていた菓子、そして大量のマシュマロが入った袋が散らばる。
雷牙(ッ!!?)
だが、そんな事はどうだっていい。一番重要なのは吹き飛ばされた刹那に俺の脳裏に浮かんだ
雷牙(何だ!?今、俺は何にぶつかった…!!? あの感触は……岩?いや…壁…?)
吹き飛ばされた瞬間に俺の脳裏に浮かんだのは、地平線いっぱいに広がる広大な岩山…いや、
俺の背丈の何百倍の大きさで、地平線を埋め尽くす程の厚さの岩壁……まさにそんな
分かってる。こんな小さい島で俺の目の前に巨大な大陸が音もなく現れるなんて事は絶対にあり得ない事くれェは。
だけど…。今の一瞬で俺の本能はそれ
雷牙(何だ…?俺は今、何とぶつかったんだ…?流石に……“人”じゃねェよな……?)
今、俺が語った
当然、目の前に広大な大陸なんぞあるワケがねェ。かといって、あの質量は到底、
あのクソ妹だって、あのロココだって、俺が大苦戦したライバル達でも、目の前の“何か”の質量には足元にすら及ばねェよ。
雷牙(だけど、この俺が気付けないなんてワケがあるか…!?それに…ココは大会中に何十回も通ってきた“ただの道”だぞ…!?)
俺が吹き飛ばされてから立ち上がるまでに使った時間はおよそ3秒。
立ち上がるのに1秒。状況を飲み込むまでに1秒。突然現れた“謎”に思考を巡らせたのが1秒。
様々な思考が交差する中、俺の眼に映った“謎”の正体は……
???「………大丈夫か?」
見間違える筈も無い。どこからどう見てもこの
雷牙「人……?」
???「………」
俺は目の前の人に人生で初めて目を疑う。そりゃそうか、俺はいつも目を疑わせる側の人間だったんだ。俺が目を疑うのは今日が最初で最後だろうな。
…コホン。ちっとばかし話がそれちまったな。
要するに…だ。あんまし認めたくはねェが、広大な大陸を思わせる質量を持った“謎”の正体は、無機物ではなくれっきとした“人間”だった。それも身長160センチ後半から170センチ前半くらいの成人男性だ。
『大丈夫か?』の四文字で辛うじて性別が男である事は分かったが、それ以外の容姿は全て謎だ。
何せ、ボロボロのパーカーを着込んで顔をフードで隠してやがるからな。…てか、よく見ればこのパーカー、親父が好んでよく着てたヤツと同じ種類じゃねェか…。
???「…………」
雷牙「あ〜…すんません…。今のは俺の不注意っす、怪我は無いっすか?」
人生を上手く謳歌するコツその1。
自分の非は素直に認め、とりあえず謝る。
……ってお袋が口を酸っぱくしていつも言ってた。
正直、ガラが悪そうだし、あんまり絡みたくねェんだよな〜。やっぱ清潔感って大事だな、ホントに。
???「………」
いや
雷牙「……沈黙は“許す”と受け取って俺は帰らせてもらうっすよ。この後、予定があるんで」
こーゆーヤツは無視に限る!日本宿舎も近くだし、最悪久遠監督か響木監督がなんとかしてくれんだろ。
んじゃ!!俺は今から楽しい楽しいバーベQにしゃれこませていただきや〜す!!
……って思ってたんだけど…。
???「………った」
雷牙「…はい?」
???「……先日の決勝戦……。本当に良い試合だった」
ずっと黙り込くってたパーカーの男の口から出たのは、まさかまさかの俺への褒め言葉。別の意味でビックリだわ。
雷牙「そいつは嬉しいっすね〜。もしかして俺のファンっすか?んなら、お詫びにそのパーカーにサインでも書きましょうか?」
???「………」
雷牙「いや、またまた黙りかい!!?」
マジで何なんだよコイツ…。俺、狂人系不思議キャラで通してるけど、こーゆー無口で何考えてるか分かんねェタイプは苦手なんだよな〜…。
???「……きっと、あの世にいるオマエの両親も世界一を心から祝福している筈だ。……そして
雷牙「・・・は?」
何で……コイツが…“雷帝”の本名を……?
雷牙「ガッ…!!?何だコレ…!?突風…!!?」
パーカーの男が親父の本名を口にした瞬間、突然凄まじい勢いの突風が男を起点に吹き荒れる。
道路に散らばる枯葉は元より、砂や小石を巻き込む程に強烈な突風によって俺は反射的に目を閉じてしまった。
雷牙「ーー!!! き、消えた……?」
再度目を開けた時には、パーカーの男の姿は無かった。まるで…
雷牙「幻……だった…のか……?」
……自慢じゃねェけど自慢。俺はコレまで常人じゃ、
サッカー部を設立した日に遭遇した未来人から始まって、試合中に三途の川をわたりかけ、島に自縛する幽霊に出会って、しまいにゃあ世界一になった。
そんな俺の人生はまさに“超次元”。モチロン、クソみてェな因縁含めてだがな。
んでだ。ボンクラな俺でも、度重なる超次元
雷牙「大体こーゆー時は……」
次の冒険への
♢♢♢
雷牙「フーンフフン♪フーン♪フーーフフン〜♪」
イナズマジャパンの世界一を祝う祝賀パーティーが終わり、後片付けも済んだ夜…。
皆は今日一日の遊び疲れにより、宿舎に帰るなり爆睡しているのに対し、雷牙は海辺に残り夜空一面に煌めく夜空を鼻唄混じりに見上げていた。
すると……
???「おっ、居た居た。やっぱりここだったか」
雷牙「ん〜〜?」
雷牙の背後より聞き馴染みのある声が聞こえた。
“彼”がまだ起きている事に驚いた雷牙は、意外そうな顔と共に視線を後ろへやる。
円堂「よっ!雷牙!!」
そこに居たのは、頭にオレンジ色のバンダナを巻き、両手にサッカーボールを持った少年…。なんて事はない、我らがキャプテン・円堂守だ。
雷牙「おっとォ?コイツは意外だねェ、てっきりオマエさんの事だから今頃、部屋でいびきをコキながら爆睡してる思ってたぜ〜」
円堂「へへ〜っ。……ちょっと隣いいか?」
雷牙「どーぞ、どーぞ〜。銅像のように座ってくれよな〜」
友の許可を得た円堂は、雷牙の隣に座り込み同じように空を見上げる。
円堂「なんかさ…。今日は寝れる気が全然しないんだよな…」
雷牙「俺ちゃんもどーかん。なんつーか、ひと段落ついてようやく“世界一”になった実感が湧いてきた…って感じだな〜」
円堂「ああ…。俺もおんなじだ」
この数日間…。イナズマジャパンはとにかく忙しかった。
決勝戦が終わった翌日は筋肉痛でまともに動けず、ある程度の休暇を経て動けるようになったと思えば、今度は取材に次ぐ取材…。
その忙しさはエイリア騒動を収めた際の比ではなかった。
だが、長かった取材も概ね終わり、遂に今日祝賀パーティーを開ける程には余裕が出来た。
それは遊び盛りの少年少女達にとっては喜ばしい事ではあるが、同時にこれまで彼らが身を置いていた“非日常”からの解放を意味していた。
円堂「……本当に色々あったよなぁ……」
雷牙「響木監督からの招集に始まって、経歴不明の監督の就任に、スポンサーがテロリストで、死んだと思われてた守のじいさんが生きてた…。しかもそれがたった数ヶ月の間に起こったんだぜ?情報量が多すぎるっての」
しかし、現実は違った。まるで雷牙と円堂が紡いできた“イナズマ伝説”に一つのピリオドが打たれるように、全ての因縁が一つに収束していった…。
もう、宇宙一のサッカーバカに“悪意”を向ける人物など誰一人として居ない…。それ故に円堂は自身の物語に打たれたピリオドを強く実感していた。
……そう、
円堂「こんなことじいちゃんや久遠監督に聞かれたら怒られるかもしれないけどさ…。“世界一”になった次はなにを目指せばいいんだろうな?」
雷牙「そだな〜。とりま、当面の目標はFF二連覇でいいんじゃね?」
円堂「・・・へ?」
雷牙「・・・は?」
己の問い掛けに雷牙が即答した瞬間、円堂はまるで
雷牙もまた当初は呆気に取られた反応を見せていたが、すぐに円堂が驚いた理由を察したのだろう。小さく溜め息を吐くと、円堂の両肩をガッチリ掴み凄味と共に彼を問い詰める。
雷牙「俺の質問にしょ〜じきに答えな?守。オマエさん…なんか失礼な事を考えたよなァ?」
円堂「アハハ…。いや〜…雷牙のことだから、『生きてた親父を探す旅に出る』とか言い出すと思って〜……ました。はい…」
雷牙「判決。デコピンの刑」
ペシッ!!!
円堂「痛った!?」
案の定、失礼な事を考えていた円堂の額に、“怪物”のデコピンが炸裂する。
雷牙「ハァ…。今日はこんくれェで許してやんよ」
円堂「すいませんでした…。マジで…」
雷牙「……ぶっちゃけるとな?オマエさんの言う通り、最初は確かにそんな事も考えてたよ」
雷牙から見た父親の評価は言葉を選んだ上で『史上最悪のロクデナシ親父』だ。
雷牙は幼い頃から義理の両親から父親は交通事故で死んだと聞かされてきた。
しかし、実際は父親は生きていた。それだけに留まらず、母親違いの妹をこさえ、挙げ句の果てには世界征服を企むテロリストに手を貸していた…。
そんな人間を『ロクデナシ』と評さずに何と評す?
雷牙「親父の事はしばらく後回しにするワ。正直…今の俺がアイツと対面しようモンなら暴力の歯止めが効かなくなりそうだしな。流石の俺ちゃんも院に入って人生棒を棒に振りたくねェ」
円堂「…そっか」
友の決意を聞いた円堂は改めて実感する。
稲魂雷牙はどこまでいっても稲魂雷牙である…と。
友はマイペースの権化だ。常に余裕を持ち、いつ何時も己のペースを保ち続ける。
そのマイペースさが良いように働く時もあれば、悪いように働く時もある。それでも、彼は“己”を貫き通すだろう。
確固たる“自分”を持つ唯一無二の大親友…。それがこの大会で何度も何度も悩み続けた円堂にとっては何よりも羨ましかった。
円堂「やっぱり、雷牙はいつでも雷牙だな!!」
雷牙「んだよそれ…。褒められてんのか、貶されてんのか分かんねェ〜」
円堂「へへ〜、さ〜て?どっちだろうな〜?」
月明かりに照らされながら、年相応の笑顔でじゃれあう雷牙と円堂…。
その光景からは今や“世界一”となった2人も、その本質は誰よりもサッカーを愛しているだけの少年である事がよく分かる。
円堂「……けど、やっぱ早く見つけたいな…」
雷牙「あン?何をだ?」
円堂「やりたいことだよ。雷牙が言った通り、当面の目標は来年のFF優勝を目指すけど、俺にはまだまだ未来はあるんだ。なにかこう…ビシッ!とした目標がないと、“次”に進めない気がしてさ…」
雷牙「まっ、FFIを経験しちまったらFFがしょぼく見えちまうってのは分かる」
円堂はずっと“目標”に向かって走り続けてきた。
祖父が遺したサッカーの出会いから始まり、“日本一”になるという目標を経て、遂には“世界一”…引いては祖父に勝つという人生の大目標を若干14歳にして果たしてしまった。
無論、彼にもある程度の目標はある。FFの二連覇を達成したり、ゆくゆくはプロの世界でサッカーをする……etc。
恐らく、彼の実力と実績を以てすればその夢は容易く叶うだろう。
だからこそ、実感が湧かずに宙ぶらりんになっているような錯覚に陥っているのだ。
雷牙「フムフム……」
雷牙は思う。『何言ってんだコイツ?』…と。
加えてこうも思う。『目標を見失った円堂守など、解釈違いにも程がある』…と。
雷牙「……よし!」
ならば彼は友にどうしてやるべきか?…そんな事はとっくの昔に決まってる。
雷牙「なら行こうぜ!守ッ!!!」
円堂「行く…?こんな時間からどこにだ?」
円堂は『雷牙は自分と違って迷わない』…そう思い込んでいる。
だが、現実は違う。“
けど……
雷牙「ハッ!!んなモン、決まってんだろ?」
いつだって彼らは“迷い”を乗り越えてきた。それはいつだって彼らの側に万能の“対話”があったからだ。
雷牙「今からするんだよ!いつだって俺達の“絆”を繋ぎ止めてくれたピース……
サッカーをなッ!!!」
……………
…………
………
……
…
円堂「よしっ!!!準備OKだっ!!いつでもこいっ!!!!」
数分後。対話の場所を浜辺から代表専用のグラウンドへ移した雷牙と円堂は互いに向き合っていた。
円堂の手には日本を世界一に導いたキーパーグローブが装着され、雷牙の足元には一つのサッカーボールが収まっている。
雷牙「いいか守ッ!!ルールは
円堂「おうっ!!!望むところだっ!!!!」
シンプルな3本勝負のPK戦…それこそが雷牙と円堂にとって最高の対話であった。
雷牙「……ハハハ…」
円堂「??? どうしたんだよ雷牙?急に笑い出して?」
雷牙「いや…。“あの時”を思い出すな〜ってな」
円堂「あの時…。・・・!!! ああ〜!!!あの時か〜!!」
雷牙に遅れて円堂も思い出す。
地区予選開催前、雷牙の元に届けられたのは日本代表候補とイタリア代表候補の選出を知らせる二通の手紙。
雷牙に与えられた選択のチャンスはたった一度。日本を選ぶか、イタリアを選ぶかで雷牙はとても苦悩した。
そんな彼を助けるべく、円堂が主軸となり雷門イレブン全員を巻き込んで開催されたのが、雷牙VS雷門イレブンとのサッカーを通した対話だ。
あれがあったからこそ、雷牙は後悔しない
サッカーこそがいつだって自分達の心を繋ぎ止めてくれる“ピース”なのだから。
雷牙「うっし…。とりま最初は恒例の…」
円堂「そうだな。恒例の“あれ”だな!!」
ノリの良い円堂の返事に雷牙はニヤリと笑うと、身体とグラウンドとの感触を慣らすべく、小刻みにジャンプを繰り返す。
雷牙「よっ!!ほっ!!はっ!!」
これぞ稲魂一家の
科学的に何一つ根拠の無いこのステップは、意味はなくとも“怪物”の士気を高め勝利へ導いてくれた。
雷牙「よっと…!しゃあッ!!!早速、始めよーぜッ!!!俺達の…光り輝く未来に捧げるサッカーをよッ!!!!」
円堂「望むところだっ!!!全力でかかって来いっ!!!!」
互いに向き合った両者は各々の
「やっぱりココだッ!!みんな集まれッ!!!イナタマとエンドウが勝負をするそうだぞッ!!!」
いざ戦闘開始ッ!……のまさに直前だった……
円堂「ん?」
2人の耳に明らかに聞き覚えの無い第三者の声が届く。
雷牙「あ〜ン…?」
しかもその声は
雷牙「ガッ…!!?な、何じゃこりゃあ〜〜〜!?!?!?」
周囲を見渡した雷牙は目を見開いて驚き、円堂は開いた口が塞がらない。
何故なら……
『エーンドウッ!!!エーンドウッ!!!エーンドウッ!!!』
『イーナタマッ!!!イーナタマッ!!!イーナタマッ!!!』
どこから情報を嗅ぎつけたのか分からないが、いつの間にか夥しい量の
雷牙「マジかよ…!?参ったな…こりゃ…」
円堂「うっわ〜…。見ろよ雷牙…。俺たちがグラウンドに向かっている写真がイナックスにアップされてら…」
どうやら、PKをしにグラウンドに向かう途中の写真をSNSに上げられた結果、大勢のファンが一目“怪物”と“伝説”の後継者の勝負を目にしようと眠い目を擦って押しかけたようだ。
雷牙「……ハッ!!オイ守ッ!!!どうやら、俺らはもういられねェみてーだぜ?“普通”って
円堂「ははは!!!そうかもなっ!!!」
本来、1対1で繰り広げる予定だった対話が台無しにされてもなお、2人は満足そうに大笑いし、改めて勝負を仕切り直す。
雷牙「んなら…!!まずはコッからッ!!!!」
数多くある
雷牙「“キングレオーネェェェェェ”!!!!!」
雷牙が選択したのは、偉大なる義父が得意とし彼から受け継いだ
獅子の咆哮はボールに黄金のオーラを纏わせ、凄まじい圧力と共に円堂へ襲い掛かる。
雷牙「そして第一歩ォ!!!フットボールフロンティア二連覇ァ!!!」
必殺技を放ち終わった雷牙は、本来の目的である“未来”を見つめ直す。
円堂「へへっ…!!!そうだったな…!!!それなら俺は…っ!!!!」
“怪物”の
円堂「“ゴッドハンドッ”!!!」
黄金の稲妻は“神”の名を冠する巨大な右手と化し、黄金の弾丸を受け止め…。
円堂「そしてぇ…!!!俺は高校サッカー界日本一になるっ!!!!!」
円堂もまた、声高々に未来を見る。
円堂「でぇりゃぁぁぁぁ!!!!」
互いに一歩も譲らない拮抗勝負の末に、巨大な右手は砕け散ると円堂の右手にボールが収められる。
大勢の観客を呼び寄せた雷牙と円堂の対話の第一ラウンド…。その勝者は円堂守だ。
雷牙「カーッ!!良い夢語ってんじゃねェーかッ!!!」
敗北してもなお、雷牙の顔から笑顔が消える事はない。
だって、彼こそが誰よりも友との会話を心の底から楽しんでいるのだから。
円堂「へへっ!!!第一ラウンドは俺の勝ちだなっ!!! さぁ!!第二ラウンド始めようぜっ!!!!」
雷牙「俺の決め台詞を取んなっての…」
せっかく自分が言おうとした台詞を先に円堂に言われてしまった雷牙は、ブー垂れた表情になりながらも、円堂からボールを受け取る。
すると……
ライト「頑張れーー!!!雷牙ーー!!!お兄ちゃんと狛太郎はキミを応援してるよーー!!!!」
ヒロト「ライトが雷牙君を応援するなら、俺は円堂君のサポーターに回ろうかな? 頑張れ円堂君ッ!!君なら勝てるさッ!!!」
観客に混じって、雷牙の義理の兄である稲魂雷斗と円堂の親友である基山ヒロトも応援に加わる。
円堂「あれヒロト?もう用事が終わったのか?」
雷牙「あっ、そっか…!アイツらが来た時間軸って“ココ”か…!」
バーベキューを断る程に大切な用事に行っていた筈のヒロトの帰還に首を傾げる円堂だが、この世界で唯一並行世界の過去の記憶を持っている雷牙は、彼らが今まで何をしていたのかを理解する。
雷牙「…まっ、そこらへんはどうだっていーだろ?今はこの勝負に集中しようぜッ!!!」
円堂「それもそっか!よしっ!!ドッカーンと来いっ!!!」
雷牙「ハッ!!その言葉……後悔すんなよッ!!!!」
円堂の挑発に敢えて乗った雷牙は、この第二ラウンドを確実に制すべく、腰を大きく下ろし天高く飛翔すると、その身に“
雷牙「“カイザー…!!レオーネェェェェェ”!!!!!」
“
雷牙「日本一の次は世界一ィ!!!俺は高校サッカー世界一を目指すぜェェェェ!!!!」
きっと、FFIで激戦を繰り広げた
円堂「相変わらずスゲェ威力だ…!肌のプツプツが止まんねぇ…!!…けど!!俺だって負けちゃいねぇぞっ!!!!」
“カイザーレオーネ”の威力に触発された円堂は、拳法を思わせる独特な構えを取ると、彼の心臓から光が飛び出し身体を旋回した末に右手に宿ると、膨大な気の嵐が立ち昇る。
円堂「“マジン・ザ・ハンドッ”!!!!」
これぞ円堂大介が遺した最強のキーパー技であった“マジン・ザ・ハンド”。
天を貫く気の乱気流は、屈強な魔神の形となって顕れ、皇帝に勝るとも劣らない圧力と共に黄金の右腕を力強く突き出す。
円堂「高校サッカーの世界一…!!その後は…!!プロになる…!!!プロになって…!!もっと…!もっ〜と!!!スゲェ奴とサッカーしてみたいっ!!!!」
円堂は初心を思い出す。彼の
きっと高校、そしてプロの世界には少年サッカー界には居なかったもっと凄い選手が居る……その“希望”が円堂の心をときめかせた。
雷牙「円堂守のサッカー観ココに極まれりだな…。けどよォ…!!!俺の“想い”はもっと強いぜッ!!!!」
円堂「ぐっ…!!?」
刹那、魔神によって完璧に受け止められたと思ったシュートが一層重量を増す。
すると瞬く間に魔神の右腕には亀裂が入り、遂には全身を粉砕してしまった。
円堂「ぐあぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
第二ラウンドを制したのは稲魂雷牙。魔神を退けた黄金の小惑星は、ゴールに突き刺さり、ネットを激しく揺らす。
円堂「
雷牙「ケケケ!!!まだまだ修行が足りてないねェ、サッカーの守クン?」
第一ラウンドを円堂が制し、第二ラウンドを雷牙が制した…。
これで互いの勝ち点は両者1点…。正真正銘、次が最終ラウンドだ。
円堂「これで……最後か……」
雷牙「何だ?負けるのが怖いのか?ハッ、だとしたら…ガッカリだぜ?」
円堂「……へっ!!なわけっ!!!始めようぜ、俺たち最後の
最後の対話を果たすべく、円堂はキーパーグローブのストッパーを一層キツく締め直し、雷牙は再度“稲魂ステップ”を披露し、内に眠る闘争心を最大限に高める。
2人の空気が明らかに変わった事を周囲は本能で察知したのだろう。数秒前までどちらが勝つかで一喜一憂していた観客達は、誰1人例外なく静まり返り、手に汗を握りその結末を見届ける。
雷牙「本ッッッッ当に……。この1年間、色々あったなァ…」
円堂「ああ!!いろいろとなっ!!!」
雷牙「コレが…俺達の“物語”の一つの締め括りだ…」
円堂「けど…悲しむことはないさ。そうだろ?雷牙」
雷牙「・・・にひっ!!そうだなッ!!!行くぜッ!!守ゥゥゥゥゥ!!!!!」
円堂「来ぉいっ!!!!雷牙ァァァァァ!!!!!」
静寂の中で鳴らされた開幕の
それと同時に雷牙が飛び上がると、彼の身体からこれまでとは明らかに毛色の異なる橙色の炎を思わせるオーラと黄金の稲妻が発せられる。
ライト「全力でいくみたいだね…!!雷牙…!!!」
“
雷牙「“ゴォォォォドッ!!!レェグルスゥゥゥゥゥ”!!!!!」
巨大な獅子王の口から飛び出した雷牙は、瞳孔が極限まで縮小する程に力を右脚に込め、最強の力を以て渾身中の渾身とも呼べるシュートをボールに叩き込んだ。
雷牙「コレが俺の“想い”だァァァァァ!!!!!俺の“未来”への答えだァァァァァ!!!!!受け止めてみやがれェ!!!受け止めれるモンならなァァァァァ!!!!!」
円堂「ああ…!!!分かるぜ雷牙…!!このシュートに…痺れるくらい強い“想い”がギッシリ詰まってる…!!!だから…俺も全力で応えるっ!!!!!」
大親友の“想い”に全力で応えるべく、円堂は心臓を経由して内部に充満した気を何千倍にも増幅させる。
そこに特別な“構え”は必要ない。最も大切なのは“サッカーを心から愛する想い”のみ。
そうすれば……
円堂「ハァァァァァ…!!!!!」
その“想い”は必ず持ち主に応えてくれる筈だから。
円堂「“ゴォォォォドッ!!!キャッチィィィィィ”!!!!!」
円堂の“想い”に応え顕現した荘厳なる魔神は、黄金の両手を突き出し
雷牙「先に言っとくぜ守ッ!!今の“ゴッドレグルス”は俺が放ってきたどのシュートよりも最高の手応えだッ!!!俺の“最高”に、オマエさんの“最強”は太刀打ち出来るかな?」
雷牙は円堂を煽る。事実、歴代最高と評された“ゴッドレグルス”は、リトルギガントの猛攻を幾度となく塞いだ円堂の“最強”を圧倒している。
このままでは稲魂雷牙の勝利は確実…。そう無言の観客達に確信させる程の凄味があのシュートにはあった。
だが……
円堂「へへへっ…!!!」
彼らは円堂守という人間をまるで分かっちゃいない。
円堂「バッキャロー…!!お前が俺のさらに上を行くってんならなぁ…!!!」
円堂守が絶対勝利を確信させた勝負など一度だってありやしない。
円堂「いくらでも限界を打ち破って追い越してやるだけだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
目の前に大きな壁が立ち塞がる度に立ち上がって、登って、前へ進む。それこそが円堂守の“サッカー”なのだから。
円堂「“ゴッドキャッチィ…!!!
ライト「ゴッドキャッチが…!!」
ヒロト「新たな領域へと至った…!!!」
限界を超え新たな境地を開拓した黄金の両手は、
雷牙「面白れェ…!!!本当に面白すぎんだろ…!!守はよォ…!!!!」
何度だって自身の想像を簡単に超えてくれる最高の相棒に雷牙は“喜び”が止まらない。
雷牙「ご唱和しようぜェ!!!守ゥゥゥゥゥ!!!!!」
気が付けば、彼は叫んでいた。否、叫ばずにはいられなかった。
雷牙「俺達の“物語”はァァァァァァ!!!!!!」
彼らが紡ぎ上げた“物語”のピリオドを。
円堂「俺たちの“未来”はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
彼らが夢見た“未来”への咆哮を。
雷牙&円堂「「まだまだ終わんねェェェェェェ!!!!!!」」
“伝説”に一つのピリオドが打たれ、また新たな“伝説”がここから始まる。
最終ラウンドの勝者は……君達のご想像にお任せしよう。
♦︎
拝啓、天国にいる親父とお袋へ。
コレまでの人生で手紙なんざ一度だって書いた事がなかったが、気がまぐれたんで珍しく手書きで文章を書いてみようと思う。文章が支離滅裂だからって笑うなよ?普通に傷つくから。
アンタらはとっくの昔に知ってると思うけど、俺達世界一になれたんだぜ?守が優勝トロフィーを受け取る瞬間にさ、ようやく親父が見ていたテッペンに来れたんだって改めて思ったよ。
世界ってのは俺が想像してた以上に広くてデッカかった。頂点を極めたつもりだった俺に喰らい付く強ェヤツだってたくさん居たし、皆んなデカい夢と高い志を持ってた。
まっ!どいつもコイツも俺サマの敵じゃなかったけどな!ゲハハハッ!!!
……そして俺に… ……いや、この話題は今はいいや。書いてるコッチが不快になるだけだし。
さてと…。慣れねェ事をしたせいでそろそろ手首が痛くなってきたし、記念すべき人生初の手紙はココまでしようかね。
あばよ〜、親父、お袋〜。また気がまぎれたら続きを聞かせてやっからさ。それまで……またな!!
完ッ結ッ!!!世界編完結ッッッ!!!世界編完結ッッッ!!!世界編完結ッッッ!!!
とまぁ、長かった第三部も無事完結です!!いや〜!楽しかったな〜!!!無事、エタらずにここまで来られたのは応援してくださる読者の皆様のおかげですっ!!!本当にありがとうございましたっ!!!!
…本当は6月中に完結させたかったけど、色々忙しくて結局7月まで伸びたというのはここだけの話。
あれだけ本編で物語の一区切りを強調してといてこう言うのもアレですが、雷牙の物語はまだまだ続きます(父親である“雷帝”との因縁がこれっぽっちも解決していないので当たり前ですが…)。
来たる新章の予告は、後日始まる短編スピンオフの最終話に記載する予定ですのでしばしお待ちください!!!
イナMONに引き続き、ちょっとした作者の好奇心なんですけどオリキャラの中で誰が1番好感度が高いのかな〜って気になったんでアンケート取ってみまーす。別に結果によってこの後の展開が変わるとかはないので気楽に投票してください。
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稲魂雷牙
-
稲魂雷斗
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明星鬼乃子
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“雷帝”