No side
「「“炎の風見鶏”!」」
「“マジン・ザ・ハンド”!」
FF本戦が間近に迫り練習にも気が引き締まる雷門イレブン。今日は先日習得した“炎の風見鶏”と“マジン・ザ・ハンド”の調整をしていた。というのも“炎の風見鶏”は発動に一定のスピードと正確な距離感覚が求められ、習得するレベルが高い必殺技である。ある程度形は出来ていてもまだまだイナズマOB達が使っていた威力には及ばなかった。
「まだ未完成とはいえ既に“ドラゴントルネード”にも負けねぇ威力だ…!俺も負けてられねぇな!」
新たな必殺技を習得した豪炎寺と風丸を見つめながら自分もこうしちゃいられないと気持ちを奮い立たせる染岡。その時、監督の響木が走り込みをしていた雷牙を呼び寄せる。
「稲魂。ちょっといいか?」
「なんスか監督?」
「円堂から聞いたぞ、お前は“イナズマ1号”が使えるそうじゃないか。」
“イナズマ1号”。御影専農戦の時に円堂と共に放ったカウンターシュートである。当時は偶然の産物程度に思っていたが後に秘伝書に似たような必殺技が載っていたことが分かった。
「“イナズマ1号”が使えるお前ならお俺が使っていた必殺技を使うのにピッタリだと思ってな。」
「必殺技?俺一応キーパーできますけど監督が使っていた必殺技なら守に教えた方がいいんじゃないスか?」
「これを見せた方が早いな“イナビカリショット”!」
響木は円堂との決闘の際に放った必殺技シュートを雷牙に披露する。その威力とスピードは染岡の“ワイバーンクラッシュ”にも負けないレベルだ。
「すっげぇ〜〜!監督キーパーなのにこんな凄いシュート使えたんスね!」
「俺も最初大介さんにシュート技の習得を命じられた時は疑問に思ったよ。だが大介さん曰く『キーパーであってもシュートを打っちゃだめという理由にはならない。常に相手の想像を上回るサッカー、それが雷門のサッカーだ』と言われたよ。実際大介さんの現役時代はシュートを打つGKとして有名だったそうだしな。」
なんとなく円堂がキーパーであるにも関わらず積極的に攻撃に参加する理由の一端が分かったような気がした雷牙。
「まあこの技の習得自体はそこまで難しいものではない。俺クラスの威力に到達するのは簡単ではないがお前ならすぐに覚えられるだろう。」
「ありがとうございます響木監督。この技で全国のゴールをぶち破ってみせます!」
響木から必殺技を伝授されいつにも増して気合いを入れる雷牙。その時珍しい来客がグラウンドを訪ねて来た。
「あのおじさん誰だっけ?なんかどっかで見たことあるような気がすっけど?」
「おい土門あの人は雷門の理事長だぞ。つまり雷門夏未の親父さんだ。」
土門が理事長の顔を知らなかったことに呆れる染岡だが、実際土門が転校生であることを加味しても学校内で会うことは稀である。それは彼が雷門中理事長の他に中学サッカー協会の会長を兼任していることが理由である。
「へぇ〜、理事長もサッカーが好きなんだな!」
「その割にはどこぞの誰かさんは俺たちのことを毛嫌いしていたけどねぇ?」
理事長がサッカー協会会長であると知らされ目を輝かせる円堂とそれに対して娘はと言わんばかりの皮肉を上げる雷牙。夏未は父の手前なのか青筋を立てて雷牙に睨め付けるだけして特に突っかからない。
話が逸れたが理事長の目的は元イナズマイレブンのキャプテンである響木が監督に就任したことのお礼と全国出場を果たしたサッカー部へのご褒美に部室の改築を相談しに来たことだった。だが円堂は今まで苦楽を共にし雷門イレブンの歴史があるこの部室のままでいることを決め理事長もそれを了承した。
改めてFFの優勝カップを部室に飾ることを決意した雷門イレブンは練習を再開しグラウンドに向かう。だがその途中風丸が陸上部の後輩に呼びかけられる。
「風丸先輩お久しぶりです!聞きましたよサッカー部が全国に行ったって!これも風丸先輩が助っ人に行ったからですね!」
「ありがとう宮坂、でも俺もまだまだだよ。雷門には稲魂や豪炎寺といった俺より凄いプレイヤーがいるし全国だってまだまだ見たことがない奴がいるはずだしな。」
「…そうですか。それよりも風丸さんはいつ陸上部に戻ってくれるんですか?」
宮坂の言葉で風丸はあくまで陸上部からの助っ人だったことを思いだした。その後後輩に誘われて陸上部に顔を出してたものの練習に復帰した風丸の顔はどこか暗かった。その日“炎の風見鶏”は一度も成功しないまま1日を終えた。
風丸 side
『いつ陸上部に戻ってきてくるんですか?』
最近の日課の朝練の途中。宮坂に言われたこの言葉が何度も俺の頭を走り回る。確かに俺はあくまでも助っ人としてサッカー部に入った身だ。
本来なら帝国との練習試合が終わった後陸上部に戻るべきだったんだ。
だが俺はその後もサッカー部に残り続けた。俺が抜けたら部員がまた足りなくなってしまうという問題もあったが今となってはその問題も解決している。
俺は一端考えるのをやめてシュートを打つ。何度も何度も陸上部で走っていた時とは違う感覚。これが今の俺にはどうしようもなく心地よかった。
「ナイスシュートだな風丸。」
何度目かになるシュートを打つと突然上の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「稲魂?どうしてここに?…いやお前も朝練か。」
ユニフォームではないランニングウェアを着て汗がびっしょりになっている稲魂の姿を見て俺はすぐに言葉を修正する。
「栗松から聞いたぜぇ〜?お前この前陸上部の奴らと走ってたってな。まぁ別に咎めるってわけじゃねぇけど。」
「…なあ稲魂。少し話があるからあそこにいかないか。」
俺は稲魂を誘って川の側に座り込む。稲魂はボールを椅子代わりにして座っているが…いつか落ちるぞ、それ。
「ほ〜ん後輩に陸上部に戻ってきて欲しいって言われたねぇ。」
「宮坂は部の中で1番俺に懐いていた後輩だったんだ。多分俺がサッカー部にいつまでもいることに裏切られたと思われているんだろう…。だけど俺は迷っているんだ。」
小学校の時にたまに円堂の練習相手に付き合っていたことがあったがその時はサッカーにこんな感情を抱くことは無かった。
だから中学になってサッカー部じゃなくて陸上部に入ったんだ。
だけど陸上部で走っていた時、いつも心のどこかで埋まらない何かがあった。別に楽しくなかったわけじゃない。満足感もなかったわけじゃない。ただどこか自分が遠い所にいる感覚が抜けなかったんだ。
すると稲魂は呆れたようにため息をつきながら答えた。
「別に俺は風丸が決めた結論は反対する気はねぇーよ。ただな、もしサッカー部に残ると決めた時はその後輩に言葉じゃなくてプレーで解答を見せる必要があると思うぜ。んじゃ、俺一端帰るワ。また学校でな。」
プレーで答えろか…。今度の初戦に宮坂を誘ってみるか…。
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雷牙 side
昨日の不調が嘘のように風丸の調子が明らかに上がっているな…。別にどっちの結論を出しても俺は気にしないし俺以外のメンバーもそうだろうな。
なーんて呑気なことを考えているとスマホで電話をしていたお嬢が突然狼狽えた。
「場寅!お父様は⁉︎」
「意識不明の重体ではありますが、とりあえず命に別状はないとのことです…。」
とりあえず命に別状がないと分かっただけ喜ぶべきだろうな。だがお嬢は普段の冷静さがどっかに行っちまってただ泣いているだけだ。
「…夏未さんあなたはお父さんの側についていてあげて。お父さんが目覚めた時に見る顔が娘の顔であるのが一番いいもの!」
「そうそう!俺たちのことなら心配すんな!一回戦も絶対に勝つ!なぁ雷牙!…雷牙?」
「ん…悪りぃちょっとボワーとしてた、なんだったっけ?」
…正直今のこの場所にいることを後悔している。あの時のことを思い出しちまうからな…。まぁいいや今俺ができることはFFに集中するただそれだけだ。
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No side
『全国中学サッカーファンの皆様!遂にこの日を迎えました!今ここ激闘の殿堂FFスタジアムはかつてないバトルの予感に早くも興奮の坩堝と化しております!FF!開幕です!』
FF本戦の実況を担当する名実況者の角馬王将が興奮の言葉を出すと、スタジアムに予選を勝ち上がった学校が次々と入場する。
『おぉーと!遂に姿を現した、雷門中学!あの王者帝国学園を下した恐るべきチーム!あの伝説のイナズマイレブンの再来かと注目を集めております!』
息子である角馬圭太が書いた解説を読みながら熱く解説を行う角馬王将。遂に全国から集まった強豪サッカー部がFFスタジアムに集結する。
「また会ったな鬼道!今度の試合も負けないぞ!」
「ふん、もう一回戦を突破した気になっているとはな。まぁ俺達帝国に初めての黒星を付けさせたんだ。このスタジアムで不様に負けたりしたら許さんからな。」
お互い決勝で戦うことを誓う雷門と帝国。その時1つのアナウンスが鳴り響く。
『今回のFF本戦には珍しくサッカー協会推薦校である『
「ゼウス…?帝国以上に大層な名前の学校じゃねぇか。」
雷牙を筆頭に聞いたことのない名前の学校に大小問わずにFFスタジアム内に動揺が走る。その中で鬼道のみ深刻そうな顔で考えこんでいる。
「(協会推薦校…。元々あの制度は余程のことが無い限り使われることは無かった筈…。何か嫌な予感がするな…無名校とはいえ気を引き締めていかなければ…持ってくれよ俺の足。)」
様々な選手の思いが渦巻く中、来客用の貴賓席で上から見下ろしている男は不敵な笑みを浮かべながら1人の選手に問いかける。
「今回FF決勝戦。そこに神は顕現するだろう。君は神を超えることが出来るかい…?
男は満足したようにその場から立ち去り、一回戦の準備が始まる。
だが今を生きる人々は知らない、ここからが伝説の序章となることを。
次回から伊賀島戦です。でもあんまり苦戦する気がしないからマジで展開どうしよう…。