なんかPARTⅠ、Ⅱ、Ⅲだけだと味気ないし、内容が伝わりづらいかな〜って思ったんで。
???「目覚めよ。“怪物”の血を継ぐ者よ」
雷冥「・・・ハッ!!」
不気味な電子に促され、深淵に沈んでいた雷冥の意識が浮上する。
雷冥「コ、ココは…?」
雷冥は周囲を見回す。彼の最後の記憶は、亡き母の墓前に立つ漆黒のフードの男と、瞼すらも貫通する程の眩い閃光に包まれた瞬間だけ…。
雷冥「ココは…宮殿…?」
その眼に映ったのは、数多の歴史を辿ってきた雷冥ですらも見た事のない独特な建築様式の宮殿…を思わせる大広間。
意識が覚醒して間もない彼だが、この数秒で得た情報だけで少なくとも“ここ”が自分のいた時代ではない事だけは理解する。
雷冥「…おっと、どうやら余程私を警戒されてるようだ。タイムエージェントでも、刑の確定していない容疑者にココまでの拘束はしませんよ?」
現在、雷冥には分厚い金属機械による手首と足首の拘束に加え、腕全体の自由を奪うような拘束具が装着されている。
これでは移動はおろか、まともに生活する事さえままならないだろう。
???「ようこそ稲魂雷冥。私の宮殿、そして私の“楽園”へ」
一通り状況を把握し終わったタイミングを見計らうように、深淵に沈んだ雷冥の意識を引き上げた声が再び木霊する。
雷冥は声の方向へ視線を向ける。
その方向は彼の正面ではない。
まるで、自身の絶対的な権力を誇示するように、この世界における“魔王”の立場を知らしめるように、奴は雷冥を見下していた。
雷冥「……この世界の教育水準の低さが見え透けますね。私は貴方に招かれた客人なのですよ?客人に対しては最低でも対等の目線で対応するべきでは?」
???「この“
無機質な声ながらも彼から発せられる凄味からは、その言葉に嘘偽りは無いと嫌でも理解させられる。
雷冥「…ならばせめて、そのフードを脱いで自己紹介だけでもするべきでは?」
???「…いいだろう」
ようやく雷冥の要求に応えた“男”は、静かながらも威厳に満ち溢れた動作で、頭部のフードに手を掛け、ゆっくりとフードを脱ぐ。
その中から現れたのは……
雷冥「なるほど…。道理で人間離れした声が出るワケですよ…」
“男”の顔全体を覆い尽くす機械仕掛けの仮面であった。
???「私の名は“
雷冥「……」
自らを“
無言の意図を割合で表すならば、『嫌がらせ』6割、『呆れ』3割、『困惑』1割だ。
GF「どうした?恐怖で声も出ないか?」
雷冥「恐怖?ご冗談を。コレまで私の前で、自らを“神”と名乗った者は三人居ましたが、例外なく全員私の右脚の餌食となりましたよ?」
GF「そうか。ならば、私こそが貴様が初めて目にする本物の“神”だ」
雷冥(挑発ですらも大した効果は無しですか…。狂っているのやら、自尊心が強いのやら…。どちらにせよ一番やり辛い相手ですね…)
自分も同じ
自身の行動に絶対的な“利”を持っているからこそ、そこに改心する余地など無い。まさに百害あって一利なし、雷冥が一番出会いたくないタイプの時空犯罪者だ。
雷冥「……単刀直入に聞きましょう。貴方の目的は何です?多元時空に干渉出来る技術を持った貴方の事です。私がどんな組織に所属しているかくらいは把握しているでしょう?」
無限に等しい数だけ存在する時空犯罪者だが、多種多様な思想を持つ彼らにはある共通の“暗黙のルール”が存在する。
それは『時空管理局には絶対に関わるな』……だ。
正気を失った人間どうかすらも怪しい狂人ですらも、僅かな理性が残っている限り絶対に時空管理局とは関わらないようにする。
それ程までに組織の権力は絶大であり、タイムエージェントとの遭遇は計画の失敗と同義だ。
この世に組織に喧嘩を売る者が居るとしたら、それはただの馬鹿か、一切の知性を捨て去った獣だけだろう。
以上の背景を吟味した上で、“GF”の返答は……
GF「そんな事は最初から知っている。知った上で貴様を我が“楽園”へ招待したのだからな」
雷冥「…そうですか」
雷冥も薄々勘付いていた“承知の上”であった。
GF「私の目的は他ならぬ貴様なのだよ。稲魂雷冥」
雷冥「……どう考えてもロクな返答が返ってくる気がしませんが、ココは敢えて聞きましょう。どうして私が目的なのです?」
GF「フン、そこまで答えてやる義理は無い」
サービスタイムは終わりだと言わんばかりに、“GF”はおもむろに指を鳴らす。
彼の指パッチンにロクな思い出の無い雷冥は身構えるが、今度は時空が歪む事なく、後方の扉が鈍い音を立てて開くと、2人の兵士が入室した。
GF「奴を
「「ハッ!!!」」
偉大なる主より指令を受けた兵士達は、強引な手つきで雷冥を無理矢理立たせ監獄へ連れて行く。
GF「さらばだ稲魂雷冥。“約束の日”にまた会おう」
雷冥「……願わくば、“その日”が一昨日である事に期待しますよ」
既に計画を達成した気になっている“GF”に対し、雷冥は殺意の籠った鋭い目付きで洒落た皮肉を返す…。それが身体の自由を奪われた彼に出来る精一杯の抵抗であった。
人を人とも思わない兵士に連れられ雷冥は、玉座の間から退室させられる。
拉致同然に雷冥は“楽園”と呼ばれる謎の世界に呼び寄せた、自らを“偉大なる父”とも“神”とも評する仮面の男…。果たしてこの男の目的は……?
♢♢♢
「おい!ちゃんと歩け!!!」
雷冥「………」
玉座の間を出てから早10分。未だに雷冥の連行は続いていた。
単純に兵士が不器用なのか、ちゃんとした理由があるかは定かではないが、幾度となく似たり寄ったりな通路を右左折してもなお、一向に目的地に到着する気配がないのだ。
「…なァ、ちゃんと道合ってるか?? オレにはさっきから同じ道を歩いているようにしか見えないんだが…」
「な訳ねーだろ、お前は今日配属されたばっかだから知らないかもしれねーが、俺は上から配布された指示書に従ってるんだ。“あの方”の指示にミスなんかある筈がないっての。……多分」
「それそうか。にしても、オレ達もツイてねェーよなァ。せっかく、神を守る“グランドガーディアンズ”の一員に成れたってのに、こ〜んな下っ端同然の仕事をさせられてよ〜」
「んだんだ。それにこいつはずっと
同僚の愚痴に賛同した兵士は、さぞ嫌そうに雷冥に視線を移すと……
雷冥「……貴方は私の言葉が通じてますか?」
ハイライトの入っていない藍眼と共に、“GF”とはまた違った無機質な声で雷冥は問い掛ける。
玉座の間から出て以降、“神”に向かって啖呵を切る程の威勢の良さから一転して、彼はずっとこんな調子だ。
目線を合わせる度に一言一句違わずに同じ台詞を吐き続ける雷冥は、まるでゲームのNPCのようだ。
雷冥「貴方は私の言葉が通じていますか?」
「……チッ、うるせぇな……」
兵士達は事前に上司である隊長から不用意な会話は厳禁だと命令されていた。
だからこそ、今の今までどれだけ問い掛けられようとも決して質問には答えなかったし、無視を貫き通していた。
…だが、彼らとて人の親から産まれた人間だ。度重なる同じ質問を投げ掛けられた事により、ついに片方の兵士は蠅の羽音のように小さい声量で“ボヤく”という返答をしてしまった。
それこそが、彼の首が
雷冥「ゲホッ!!!ゲホゲホッ!!!」
刹那、何の兆しもなく突如として
「お、おいッ!!?急にどうしたんだッ!!?」
「ヒッ!?コ、コレって…!“血”!?!?!?」
床に飛び散った真紅の液体から仄かに香る“鉄分”の匂い…。それによって囚人が突然吐血したと断定した兵士達は顔を青くする。
隊長の命令は『絶対に彼を生け取りにしたまま監獄にぶち込む事』…。隊長の命令は崇高なる“GF”の御言葉と同義…。もしも、囚人が死んだとなれば責任は自分達に問われる。
「もしかして…!歯に仕込んでいた毒薬でも使ったんじゃ…!」
「なんだって!?それは本当か!!?」
同僚の仮説によって“焦り”が刺激されてしまった兵士は、隊長から言いつけられていた“数m以上の距離間隔”をあっさり破り、吐血する雷冥へ近付いた。
「おい、しっかりしろッ!!!おいッ!!!テメェに死なれると俺達が罰を受けるんだよッ!!!」
今の兵士の頭には、任務に失敗し責任を取らされる事への“恐怖”しか頭に無い。
ただでさえ、偉大なる“神”は先日現れた“襲撃者”により
またしても、崇高な目的の為に“神”自らが確保した
何としてでも囚人を蘇生しなければならない…。その思いが絶対である筈の隊長の指示を容易に破った。
………
雷冥「………です」
「え?何だって??」
雷冥「私の射程範囲です。お
その瞬間、無機質な廊下に高密度の硬い物体で何かを強く殴り付けたかのような鈍い衝撃音が鳴り響く。
「ガハッ…!!?」
バタンッ!!!
唐突に雷冥に近付いた兵士は宙を舞うと、残響が鳴り止む暇も無く地面に激突し、鎧の隙間から
「え……?え……?」
あまりに突然の出来事の前に、もう1人の兵士は脳の理解が追い付かずにその場に立ち尽くすだけであった。
彼の前には脳天をカチ割られた同僚が床に這いつくばり気絶し、青髪の囚人は同じ人間とは思えない
そこに言葉は無い。だが、次に狙う獲物が誰かはもはや明白であった。
「だ、誰か助けーー」
雷冥「フンッ!!!!!」
『殺られる前にコチラが殺る』 それが稲魂雷冥のモットーだ。
それを実演するかのように、応援を呼ぶ暇すらも与えずに全体重を乗せた渾身のドロップキックを叩き込んだ。
「グヒ〜〜〜……」
バタンッ!!!
逃げ惑う背後から、鋼鉄製の拘束具を含めた総重量およそ100キロ近くあるドロップキックを喰らった兵士は、装備した鎧を両足の形に大きく歪ませ気絶した。
雷冥「ン゛ッ゛…!オ゛エ゛ッ゛…!!!」
窮屈な監視から解き放たれた雷冥は、何やら苦悶の表情を浮かべながらまたしても
雷冥「プッ!!!」
すると今度は血を模した真紅の液体ではなく、小さな真球状のカプセルを2つ吐き出した。
ワンダキャット「ウゲェ…。気持ち悪…」
ワンダバード「ご無事ですか!?マスター!?」
軽い破裂音と共にカプセルの中から現れたのは、シマエナガを思わせるファンシーなデザインをした三本足の烏と二本の尾を持った子猫型のアンドロイド達だった。
雷冥「キャット!貴方は
ワンダバード「ラジャー!!!」
ワンダキャット「ラジャー」
主人の命令を聞き入れた白猫は、身体から青白い衝撃波を発すると雷冥の行動を制限していた拘束具は光を失い、勝手にロックが外れ地面へ落下する。
雷冥「
ワンダキャット「アタシは二度とゴメンなんだけど…」
この世界に拉致される直前…正確に言えば“GF”が発した殺気を感知した直後。万が一に備えて雷冥はバードとキャットが収納されたカプセルを最大まで縮小させ飲み込んでいた。
何も未来予知染みた確信があった訳じゃない。
もしその場で戦闘になれば、自身の体術と
肉体年齢と精神年齢が大きく隔離する程にエージェントとして長い経験を積んでいる雷冥は常に最悪の事態を想定して動く。
つまりこのような状況に陥る事は予定外ではあっても、想定外ではなかったのだ。
ワンダバード「マスター!スキャンの結果、どうやらココは“GF”の居城のようです!地形データも確認できたので、ナビゲーションを開始しますッ!!!」
雷冥「でかしましたバード。一先ず、身の安全の確保が最優先事項です。その後の事は逃げ切ってから考えますよ!!」
こうして登場現れた“理不尽”から自由を取り戻した雷冥は、ただひたすら逃げる。
先の見えない暗闇の中に唯一光り輝く“
♢♢♢
GF「
雷冥が逃走してから数十分後。
この“楽園”で唯一の玉座に座り空中に浮かぶホログラムのモニターで、脱獄囚の逃走劇を監視していた“GF”は純粋な関心を彼に向けていた。
現在、彼が閲覧しているのは数分前に起きた10人の兵士と雷冥1人の戦闘の映像。
だが、“楽園”の最新技術を投入した最新式の装備を身に包む兵士達は、誰1人例外なく
屈強な兵士達を、卓越したフィジカルによって息一つ上げずに蹂躙していく様はまさに“魔王”。
その光景を見ていた“GF”は彼が元居た時代で呼ばれていた異名は伊達ではない事を理解する。
GF 「………」
雷冥の獅子奮迅の大立ち回りにより、“グランドガーディアン”では到底太刀打ち出来ないと確信した“GF”は、左腕に装備された機械を操作し“ある人物”へ連絡をする。
???『お待ちしておりました。我らの偉大なる“神”よ』
GF「状況は把握しているな?私自らの手で作り上げた最強の
???『ハッ!!!必ずや、“神”のお心のままに!!!』
この世界において唯一と言っても過言ではない程、絶対の信頼を置く“サンダーゲート”なる部隊の派遣を済ませた“GF”は、再度モニターへ視線を移す。
無機質な仮面の下にある姿にはどんな感情が浮かび上がっているかは、誰にも分からない。
その代わりに……
GF「人間の域を大きく超えた身体能力に、冷静な判断力…。それも貴様の血が為せる技か?………
かつての宿敵…
この“楽園”に存在する筈のない、雷冥の曽祖父の名を呼ぶ声だけには明確な“感情”が彩られていた……。
♢♢♢
雷冥「ハァッ!!!!!」
「ゲフッ…!!?」
バタンッ!!!
文字通りの最後の門番となった巨漢の兵士に、雷冥のシンプルな肘打ちが腹部に突き刺さる。
たかが肘打ちでも、ヒットの直前に全ての関節を固定する事で全体重を乗せる事に成功したこの一撃は、重さ60キロ以上の鉄球が左ジャブの速度で腹部に突き刺さった事と同義。
如何に軽くで頑丈な鎧を装備していようとも、意識を保つ事はまず不可能であった。
雷冥「フゥ…!コレで最後…ですかね?」
流石の雷冥も100人近くの兵士達と連戦を重ねた影響でだいぶ疲労が蓄積しているが、ここが敵地である以上気を緩める事は決して許されない。
最後の最後まで罠に警戒し、軽く周囲を見回すがこれ以上援軍が来る気配を感じられない為、ようやく雷冥は居城の城門を潜り抜ける。
雷冥「ーー!!! コレは……」
だが、念願の外へ辿り着いた瞬間、雷冥は逃走の歩みを止めてしまう。
本来、一分一秒すら無駄に出来ないこの状況の中では、一瞬たりとも歩みを止める事は絶対に許されない。
それでも、あの雷冥が足を止めてしまう程の“何か”が
それは……
ワンダキャット「……綺麗」
雷冥とお供達の視界を奪う、星々の輝きにも負けない多種多様なネオンに染まった満点の夜景であった。
この逃走劇においては何一つ関係無いが、雷冥は自宅から見る夜景の美しさこそがどの時代でも1番だと自負していた。しかし広大な大地を埋め尽くすネオンの荘厳さはその比じゃない。
彼らが思わず脚を止めてしまうのも、仕方ないだろう。
雷冥「…バード。ココから地上まで何mですか?」
ワンダバード「ココから予測するに…。およそ数百メートルは超えるかと……」
雷冥「数百mですか…」
周囲には地上に繋がるような道は無い。恐らく、この城の物資の補給は厳重に警備された隠し通路か、空からの補給の二択だろう。
どちらにせよ、ここに雷冥が望む出口は無い。リスクは高いが、何とか
・・・そう判断した瞬間だった……
???「見つけたぞ。我らの主に歯向かう愚か者め」
雷冥「・・・追手ですか」
後方より雷冥の全身に突き刺さるのは刃物のような切れ味を持った強烈な“殺気”…。
いくら百戦錬磨の雷冥といえど、ここまで強大な“殺気”はそうそう出会える代物ではなかった。
雷冥(11人…ですか)
“殺気”の主を確認するべく後方を向いた雷冥の眼に映るのは、“GF”と似た仮面を付けた11人の黒衣の戦士達。
その立ち振る舞いからは、彼らは一般兵とは比較にならない実力を持った精鋭中の精鋭である事を嫌でも理解させる。
いつ戦闘に入っても反撃出来るように雷冥が構える中、戦士達を率いる灰色髪の少年が、仮面を外し1人前に出る。
???「無駄な抵抗はよせ、イナタマ・ライメイよ。我ら“サンダーゲート”が集結した今、貴様が逃走出来る確率は0%だ」
雷冥「…貴方は?」
???「これから死ぬゆく貴様に私の名を告げたところで何になる?…だが、ここまで大立ち回りを演じた貴様の戦闘力に免じて、特別に名乗ろう。私の名はシンフォニー。偉大なる“神”・グランドファーザーを守護する“
自らを“
黒みがかかったウェーブ状の灰色の頭髪…。
地味ながらも力強さを感じる焦茶色の瞳…。
持ち主の性別を惑わせる非常に中性的な低い声…。
“
その『人物』とは……
雷冥(似ている…。伝説的なゲームメイカー、神童拓人殿に……)
8代目雷門中サッカー部キャプテン・神童拓人。
鬼道有人の再来と謳われた優れた
タイムエージェントになる前は、雷門サッカー部のキャプテンを務めていた雷冥は、祖先と同じくらい彼を尊敬し、著書である『サッカーとは11人が奏でるオーケストラ』は何度も読み返し人生の教法にしている程だ。
そんな神童拓人と瓜二つの少年が目の前に居る…。その事実は雷冥の情緒を乱すには十分過ぎた。
シンフォニー「そんな私の顔をジロジロ見てどうした?命乞いのつもりか?」
雷冥「……いえ、少しばかり貴方が私の時代の偉人に似ていただけですよ」
とはいえ、それはそれ、これはこれだ。
いくら尊敬する先人と顔が似ていようが、目の前の少年が自身に強い敵意を向けているのは間違いない。
今、雷冥が果たさなければならないミッションは、『生きてココから脱出し、体制を立て直す事』…。それ以上でも以外でもない。
シンフォニー「無駄話はここまでだッ!!!我が“神”の御言葉の元に、イナタマ・ライメイッ!!貴様を捉えるッ!!!」
“神”を護りし天使の長の号令が鳴り響いた瞬間、11人の天使の足元に鈍色に光る真球状の物体が無より現れる。
雷冥「サッカーボール…!?」
シンフォニー「一斉射撃ィィィィ!!!!」
『イエッサー!!!』
隊長の号令に従い、たった1人の脱獄囚に向かって十一ものシュートが放たれる。その速度は弾丸よりも速く、威力は大砲では比較にもならない。
雷冥「流石に体力を温存している場合ではありませんね…!!」
直感のみで戦士達のシュートの危険性を感じ取った雷冥は、降り掛かる砲弾の嵐を掻い潜る。
もう一度言うが、鈍色の弾幕の速度は銃弾を超えている。加えて質量は砲弾にも匹敵するのだ。そんな代物の起動を彼は正確に捉え、避け続けている。
ハッキリ言って、どちらの光景も異常でしかない。
ズバッ!!!
雷冥「グッ…!!」
それでも、ここまで休息抜きで戦い続けてきた雷冥には肉体的にも人数的にも不利である事に変わりはなかった。
溜まりに溜まった疲労により、砲弾の雨霰を僅かに避け損ねてしまい、冷たい無機物の質感が雷冥の片頬を小さく切り裂いた。
シンフォニー「生きてさえすれば、五体の有無は問わないとの命令だッ!!このまま打ち方続けェェェェェ!!!!!」
十一の弾幕を撃ち尽くしても、終幕からは程遠い。
黒衣の天使達の足元には気付かないうちに鈍色の砲弾が補充され、第二幕が上がろうとする。
天使達は絶対の忠誠を誓った主に報いるべく、次の標的を脱獄囚の手足に定め、より一層強い“殺気”を放つ……
雷冥「
天使達は遅れて気付く。自分達は選択を間違えたのだと。
彼らは最初に気付くべきだったのだ。“
シンフォニー(ーー!!! イナタマ・ライメイの雰囲気が変わった…!!?)
雷冥「調子に乗るな…!!!」
その刹那、雷冥の全身より天使を超える凄まじい
……いや、
天使達に、自身の五臓六腑を第三者の両手で
雷冥「“
“理性の仮面”を脱ぎ捨てた魔王が抱く感情は“怒り”。
それは自身に仇為す愚者へ向ける、“制裁”の為の怒りだ。
シンフォニー「クッ…!撃てッ!!撃てェェェェェ!!!!!」
本能で雰囲気の変わった脱獄囚の危険性を察知した黒衣の天使達は、今度こそ手足を捥ぐべく鈍色の砲弾を一斉発射するが……
この世のものとは思えない咆哮と共に、巨大な
シンフォニー「馬鹿な…!!?」
雷冥「フンッ!!!」
雷冥の背後に顕しは、円堂守に次ぐ伝説的なGK・立向居勇気が使役していた無限を超えし『魔王』と瓜二つの巨人…。
偉大なる先人と差異があるとしたら雷冥の『魔王』には、紫の体表に悪魔を思わせる禍々しい紋章が浮かび上がっている事くらいだろうか。
「アレは…!巨人…!!??」
「いや…!魔神だ…!!!」
雷冥が放つ強大な“
だが、“神”とさえ評された過大な評価すらも、雷冥はその気迫を以って一蹴する。
雷冥「“魔神”だと…?
シンフォニー「魔王…!!」
“神”を超えし最凶にして最強の“魔王”は、天に向かって咆哮を上げると右腕を大きく振り上げる。
雷冥「リベリオン…!!!」
“魔王”の拳に込められしは、神すら屠る究極の
シンフォニー「ーー!!! これはマズい…!!隊員ッ!!撤退ッ!!!撤退ィィィィ!!!!」
雷冥「クラッシャァァァァァ!!!!!」
振り下ろされしは、制裁の拳。その対象は己に仇為す“叛逆者”達だ。
“魔王”の拳は、圧倒的な突風を巻き上げ、周囲一体を砂煙で包み込む。
雷冥「急げッ!!バード、キャットッ!!!この隙に
ワンダバード「お言葉ですが、逃げるってどこに…!!?」
一時的に目眩しには成功しても、前方には天使達が、後方には断崖絶壁の崖が。
引けば地獄、進めば大地獄。どちらを選んでも雷冥一向にはロクな未来が無い。
雷冥「フン!!どちらを選んでも“地獄”か“大地獄”ならば……私は迷いなく“地獄”を選ぶわッ!!!」
ワンダバード「嘘でしょこの人ぉぉぉぉぉぉ!!!?」
その両手で
「クソ…!逃げられないと分かって自殺する気か…!!」
「絶対に止めろッ!!奴は生かして“神”の元へ捧げるのだァァァァ!!!!」
ようやく煙地獄から解放された天使達は、主人からの使命を果たすべく、雷冥を追い掛けるが……
雷冥「チェストォォォォォ!!!!!」
時既に遅し。青髪の魔王は高さ数百メートルの断崖絶壁にて姿を消した。
「イカれてる…!!追い詰められていたとはいえ、ここから飛び降りるなんて普通の人間が思いつく発想じゃない…!!」
標的を失った天使達の心に残ったのは“空虚感”だけであった。周囲には魔王が遺した最後の断末魔のみが絶壁の居城に木霊し、心に植え付けられた“空虚感”をより一層際立たせる。
「…どうするシンフォニー。主人の命令は“生け取り”だ、死体だけを回収しても意味が無いぞ…」
天使達の顔は皆青ざめている。
何せ、彼らの主人はあれだけ対象の生け取りに拘っていたのだ。そんな中で、原型を留めていない肉片を差し出してみろ、彼らは確実に罰せられるだろう。
進んでも“地獄”、引いても“地獄”…。奇しくも彼らは、数秒前までの脱獄囚と全く同じ状況に追い詰められていた。
そんな極限状況の中、隊長であるシンフォニーが出した答えは……
シンフォニー「……大至急、エアーバイクを手配させろ。その間に私は奴の落下地点を割り出しておく」
「ーー!!? 言っている意味が分からないぞ…!?奴は5〜600メートルもの高所から飛び降りたんだぞ!?生きている訳がないッ!!!」
シンフォニー「あの方はイナタマ・ライメイを『高い知性を兼ね備えた獣』だと評した。あの方にあそこまでの評価をさせる人間なのだ、私には到底自らの命を簡単に投げ捨てるとは思えない」
「…分かった。お前がそこまで言うのなら、オレ達は従うだけだ。直ぐに手配させよう」
シンフォニー「ああ、可能ならば10分以内に頼む」
僅かな口数で焦る部下達を納得させたシンフォニーは、煩わしい裏方業務は部下達に任せ、自身は思案に耽る。
シンフォニー(イナタマ・ライメイ…。貴様は必ず私が捉えてみせる…!!全てはあのお方の崇高なる“理想”の為に…!!!)
心の中で改めて主人への忠誠を誓い、確実に生き延びているであろう脱獄囚を捉えるべく、シンフォニーは絶対の策略を巡らせるのだった。
♢♢♢
雷冥「ガッ…!カハッ…!!!な、何とか生き延びたみたいですね…」
ここは先程、雷冥の視線を奪った絶景の景色とは似ても似つかない、腐敗したゴミが四散する裏路地…。
シンフォニーの予想通り、数百メートルもの高所から飛び降りても雷冥はそこで生き延びていた。
その秘密は、彼とお供達の尻に敷かれたスライムとも風船とも形容出来る不思議なクッションにある。
これぞタイムエージェントの七不思議道具の一つ、“バンジーガム”。
ガムとゴム、二つの特性を併せ持つ特殊なクッションは、数百メートルもの高所から落下しても衝撃の大部分を吸収してくれた。
…とはいえ、この道具は使い捨てに加えて、緊急用に隠し持っていた物である為、ストックはこれ一つしか無いが。
雷冥「バード、キャット…!貴方達は無事ですか…!」
ワンダバード「キュ〜…」
ワンダキャット「チーン…」
雷冥「スリープモードに入ってますか…」
“バンジーガム”によって衝撃の大部分を吸収したといっても、1人と2匹を襲った衝撃は常人ならば即死級のものだった。
かく言う雷冥も、即死こそは免れたが、息は絶え絶えとなり今にも気を失いそうだ。
雷冥(今、気を失うのだけはマズい…!!間違いなくシンフォニーは私の生存状況を確認しに来る…!!せめて…100mは離れなければ…!!!)
数分後に訪れるであろう追手から逃れるべく立ち上がろうとする雷冥だが、何故か全身に力が入らない。
雷冥(クソ…!ココに来てコレまでの戦闘の疲労が…!!)
雷冥は脱走してから一切の休息を挟まずに戦い続けた。如何に桁違いの身体能力と体力を持つ彼であっても、“サンダーゲート”と対面した際には既にアドレナリンによって底が尽きた体力を誤魔化していた状態だったのだ。
そんな状態で即死クラスの衝撃をモロに受けたのだ、目立った外傷は無くともまともに動ける訳がない。
雷冥(何……とか……身の安全を……確保し…本部へ連……絡…しなけれ……ば……)
とうとうバードとキャットに続いて、雷冥までも気を失ってしまう。
周囲には天使達が乗っているであろう、エアーバイクの走行音が鳴り響き、彼が宮殿に連れ戻されるまで秒読みのカウントダウンが始まる。
ーーもう私は“GF”の計画に利用されるしかないのか?
沈みゆく意識の中、雷冥は悔しさのあまり最後の力を振り絞って拳を握り締める。
ーー申し訳ありません…。ひいお婆様…。お祖父様…。カノン…。そして……ママ上……。
次々と大切な人達の名前が脳内に思い浮かぶ中…。当然の如く、そこに父親の名前は無い。
ーー……。
こうして雷冥は完全に気を失ってしまった。
長いようで短く、短いようで長かった稲魂雷冥が紡ぎ上げた
???「よかった…!まだ生きてる…!!」
雷冥が気を失ったと同時に、裏路地から一つの小さな影が現れる。
その影はまだ雷冥の息がある事を確認すると、同じく気を失っているバードとキャットをボロボロのポシェットの中に入れ、今度は雷冥の足を掴んで顔を真っ赤にしながら引きずり始めた。
???「お、重い…!けど…!!きっとこの人なら…!!
おれを“楽園”にまで連れて行ってくれる…!!!」
ネオンと月明かりに照らされ雷冥達は見ず知らずの人影によって何処かへ連れ去られてしまった。
果たして彼らの運命は?
そして……雷冥を連れ去った謎の影の正体とは…??
神童が円堂世代から数えて5代目キャプテンなのは作者の推測です。もしも、作中で明言されていたら感想など教えてください。
〜オリキャラ・オリ技紹介〜
【オリキャラ】
♦︎シンフォニー
性別:♂
年齢:不明
ポジション:MF
≪概要≫
“GF”直属の護衛軍・“サンダーゲート”を率いる隊長にして、“GF”の養子。
主人であり、義父である“GF”には絶対の忠誠を誓っており、彼に仇為す者は絶対に許さない。
雷冥曰く、伝説のゲームメイカー・神童拓人に非常似ているらしいが…?
【オリ技】
♦︎リベリオンクラッシャー
属性:林
分類:ブロック
使用者:雷冥
進化系統:改→真→爆→絶
≪概要≫
雷冥が使用する林属性のブロック技。
魔王の鉄拳が、王に歯向かう叛逆者を粉砕する。