イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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えー、開始早々すみません。前話の選手紹介で今話から試合をさせるって言ったんですけど、会話パートが思った以上に長くなったんで、やっぱ次回に回します。
ちとスローペース気味な本作ですけど、次回以降からテンポを上げていくんで、もうちょっとだけ我慢してください。


記憶と出会いと懇願と

雷冥『ママ上。どうしてあなたは祖先どのたちと同じ道を歩まなかったのですか?』

 

 懐かしい夢…ですね。アレは確か小学生リーグを優勝した日の帰り道の事だったでしょうか?

 

 きっかけは大した理由ではなかった…と思います。

 ただ、隣に無断欠勤してでも息子()の試合を観に来てくれた母親が居たから…それ以上でも以下でもなかった筈です。

 

獣牙『ウ〜ン…。相変わらず小難しい質問をするね〜、アンタは。一体誰に似たんだか?』

 

 自分で言うのも何ですが、大雑把な稲魂家かつ小学生には似つかわしくない哲学的な質問に対し、記憶の中のママ上は目を点にして困った顔をしていました。

 

 ですが、信じてくださいママ上。本当に当時の私は悪気など無かったんです。悪意のない悪意と言われればそれまでですが。

 

獣牙『…よし分かった!それじゃあ、お母さんから逆に質問!雷冥はどうしてサッカーを始めたの?』

 

雷冥『わたしがサッカーを始めた理由…?』

 

 突然のママ上からの逆質問に、記憶の中の幼い私は言葉に詰まってしまいました。

 何故なら、私自身はその日まで自分がサッカーを始めた理由など考えた事すら無かったのだから。

 

 稲魂雷牙、稲魂雷斗、稲魂雷紋、稲魂銀牙…。

 私の祖先達は皆、サッカーという競技(ジャンル)で偉大なる功績を歴史に刻み、『稲魂家』という名門(ブランド)を作り上げてきた…。

 

 その血筋を受け継ぐ私は、サッカーをして当然…。当時の私は本気でそう思い込んでいました。

 ただ、稲魂家の栄光の道にはママ上の姿は影も形もない…。それが当時の私にとってあまりにも“不合理”だっただけです。…いや、“今”も…と言った方が正しいでしょうね。

 

 多分、記憶の中の私も同じ“答え”を淡々と告げたのではないのでしょうか?

 

獣牙『アッハハ!!いや〜…!硬い硬い!!アンタらしいっちゃ、アンタらしいけどさ〜』

 

 ですが、私の“答え”を聞いたママ上はお腹に手を当てて大笑いしていました。

 

獣牙『別に血筋を大切にするアンタの拘りを否定するワケじゃないけどさ、私は一族の看板だとか、プライドだとかは超苦手な主義(タイプ)

 

 …でしょうね。私も貴方にそこらへんの“誇り”は求めてませんし。

 

獣牙『私が“今”を選んだのは父さん…雷紋お爺ちゃんの影響が大きいかな〜?』

 

雷冥『お祖父様がですか?』

 

獣牙『父さんはね〜、今でこそだいぶ充実した人生を送ってるけど、子供の頃はそれはそれは苦労したらしくてね〜。特に銀牙叔母さんとよく比較されてたのがキツかったっぽい』

 

 確かに、雷紋お祖父様の実績は、銀牙叔母様と比べると華やかさに欠ける印象はありますね。

 主演を支える名脇役…との評価が適切ではないでしょうか?それでも、偉大な事に変わりはありませんが。

 

獣牙『そういった苦労もあってか、父さんは私に無理矢理サッカーをさせようとはしなかった。…まァ、結局中学まではサッカーをしたけど』

 

 私が聞きたいのは“そこ”なのですよ。

 貴方は非常に優秀なサッカー選手(プレイヤー)だった。中学卒業時も、数多の名門校からスカウトが来た筈です。

 

 きっと、そこに辿り着くまでには“才能”だけではない“努力”だってあった筈。にも関わらず……どうして貴方は才能も努力も捨てるという選択が出来たのですか?

 

獣牙『別に雷牙お爺ちゃんたちが築き上げた名門(ブランド)に泥を塗る事を恐れたワケじゃない。ただ……()()()()()()()()()。サッカー以外の別の“景色”を』

 

 『ただサッカーでは見る事の出来ない“別の景色”を見たかっただけ』…。

 それがママ上が出した答えでした。今の私ならばきっとこう答えるでしょう。『ハハハ。実にママ上らしい“不合理”に満ちた答えですね』…と。

 

 ですが、“昔”と“今”の私は別個の存在です。

 当時の私は彼女の“答え”を前に、ただ……

 

雷冥『……理解できません』

 

 そう答えるだけしか出来ませんでした。

 

 それでも、ママ上は怒る事なく優しく微笑み、こう諭してくれました。

 

獣牙『アッハハ!!流石の天才雷冥クンも簡単には理解できないか〜!!』

 

 …申し訳ありません。記憶の美化が入っておりました。正しくは『こう煽られました』。

 

獣牙『…けど、焦る必要はないよ。私はアンタがいつか、この答えを魂で理解してくれることを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

期待してる!!!』

 

 ・・・申し訳ありませんママ上。どうやら私は……貴方の“期待”に応えられる程、優秀でも聡明ではないようです。

 

♢♢♢

雷冥「・・・ハッ!!!」

 

 短かった懐かしい夢から覚めた雷冥は、地面から飛び上がると同時に戦闘体制へと移る。

 自身の命が無事である事は想定内だ。何せ、グランドファーザーの部下達は、アレだけ自身の生け取りに拘っていたのだから。少なくとも、自身の意識がある以上、“GF”の計画はまだ実行されていない事が伺える。

 

 だが……

 

雷冥「・・・ん?」

 

 雷冥はここで強烈な違和感に襲われる。

 違和感の根源は何を隠そう、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 考えてみて欲しい。一度、数十人の護衛に重傷を負わせた脱獄囚を再確保したならば、牢屋に閉じ込めておくだけにするだろうか?

 答えは当然“NO”。少なくとも雷冥が“GF”と同じ立場ならば、臆病とも捉えられるレベルの拘束具を脱獄囚に施す。

 

 しかし、今の雷冥には拘束具どころか見張りすらも居ない。そもそも……

 

雷冥「何処ですココは…?長年放置された廃墟…いや、倉庫…?」

 

 雷冥が眠っていた場所は、“GF”の居城ではなく、錆び付いた金属で構成された古い倉庫であった。

 

雷冥(まさか意識を失う前の私が自力でココまで辿り着いたのか…?)

 

 雷冥は軽く頭部に手を当て、拉致されてから現在までの記憶を探る。

 だが、いくら記憶領域にアクセスしても、気を失って以降の記憶が存在しない。

 

 この事実が示すのはただ一つ。雷冥をここまで移動させたのは、自身でも敵勢力でもない、第三者であるという事だ。

 

コツンッ…

 

雷冥「ーー!!!」

 

 刹那、出入り口に続くであろう通路から、何者かの歩行音が倉庫内に木霊する。

 十中八九、音の持ち主は件の第三者だろう。しかし、雷冥は戦闘体制を崩さずにいつでも反撃出来る姿勢を維持する。

 

 彼からしてみれば、これから現れるであろう存在は、性別・目的・悪意の有無…その全てが謎の人物なのだ。これくらいの警戒は当然だろう。

 

コツンッ…コツンッ…

 

雷冥(歩行音から察するに敵の数は1人…!ならば問題無いッ!!!)

 

 入り口の影に潜んだ雷冥は今か今かと反撃の時を待つ。

 命まで奪うつもりはない。ただ、捉え次第、様々な情報を丁寧(婉曲表現)な方法で聞き出すだけだ。

 

 そして……遂に“その時”は来た。

 

コツンッ!!!

 

雷冥「そこだッ!!!!」

 

???「どわぁ!?!?!?」

 

 穴の空いたトタンの屋根から漏れ出る月明かりが、第三者の影を捉えたと同時に雷冥の目にも止まらぬスピードによる関節技(サブミッション)が完璧に極まり、対象を拘束する。

 

雷冥「……何?」

 

 しかし、またしても雷冥は強い“違和感”に襲われてしまう。

 全身で感じる対象の全長はおよそ150cmにも満たない程度…。肉付きもあまり良くなく、叫び声もどこか高い。

 どう考えても、自分が締め上げているのはまだ年端もいかない“子供”なのだ。

 

???「痛い痛い痛い!!!せっかく倒れているところを助けてやったってのに、この仕打ちはないだろ!!?」

 

雷冥「貴方が私を助けた…?……その証拠は?」

 

???「しょ、証拠…?いや〜…それは流石に…」

 

雷冥「ならば慈悲はありません。安心してください、命までは取りません。ただ、しばらくの間眠っていただきます」

 

???「ちょ、ちょ、ちょ!!タンマ!!!」

 

 子供改め少年の必死の命乞いも虚しく、関節技(サブミッション)は更に強さを増す。

 一見、無情にも見える…というか無情にしか見えない雷冥の判断だが、今の彼には信用出来る者は誰1人としていない。“疑わしきは罰する”的な思考に陥るのも仕方がない事だろう。

 

 しかし、その時、哀れな少年に救いの手が差し伸べられる。

 

???「お待ちください()()()()!!!その人が言ってることは本当です!!!」

 

雷冥「この声は…!」

 

 あわや少年を気絶させる直前に鳴り響いた聞き馴染みのある声により、雷冥は腕の力を僅かに緩め、声の方向を見る。

 

 そこに居たのは……

 

雷冥「バード!キャット!無事だったのですか!!」

 

 魔王の眷属(ペット)こと、ワンダバードとワンダキャットであった。

 

ワンダキャット「マスター、そこのチビが言ってることはホント。アタシたちはコイツに助けられた」

 

???「チ、チビって……」

 

雷冥「………分かりました。一先ずは、貴方の事を信じましょう」

 

 眷属(ペット)の証言を受け、遂に少年の疑惑を一時的に解いた雷冥は、極められていた関節技(サブミッション)を解除し、少年を解放する。

 

???「フー…!痛かったぁ…!!」

 

雷冥「……」

 

 無論、彼とてペット達の言葉を全面的に信用した訳ではない。アンドロイドである彼らはもしかしたら洗脳(ハッキング)されている恐れだってある。

 かといって、時空管理局の最新技術を以て造られたペット達がそう簡単に洗脳される存在ではないのも事実。雷冥はただ信憑性の高い選択を合理的に選んだだけだ。

 

雷冥「…どうやら私のペットが随分とお世話になったようですね。やむを得ない状況であったとはいえ、先程の非礼をお詫びします」

 

???「…いいよ。おれだって、同じ状況だったら同じことをしてたと思うし…」

 

 こうして一旦落ち着きを取り戻した雷冥は、気を失った自分を助けてくれたという少年を軽く観察する。

 少年の身長は想像通り150cmに満たない程度だが、声質から察するに恐らく年齢は12から13ほど…。

 辛うじて服としての体裁を保っているボロボロの布地と血液の通りが悪そうな肌色を除けば、目立った特徴は若干天パの入った茶髪のショートヘアーくらいだろうか?

 

 強いて言うなら、その幼い顔付きからは少年というよりかは少女のようにも見えるが、関節技(サブミッション)中に伝わってきた骨格の感触は間違いなく“男性”の物であった。

 

雷冥「自己紹介が遅れて申し訳ありません。私の名前は()()()…。ブルー・スカイと申します」

 

ワンダキャット「ワーオ、髪色そのまんま。相変わらずネーミングセンスがないね。マスターは」

 

ワンダバード「シッ〜〜!!バレたらどうすんの!オマエは黙ってろっての!!」

 

 (主に自分の早とちりのせいだが)重苦しくなった現場の空気をリセットするべく自己紹介を行うも、その名は本名ではなく即興で考えた仮初の名(コードネーム)だ。

 何せ、雷冥は絶賛お尋ね者の身。“GF”が支配する世界の住民に本名を晒すのはマズいと考えた上での行動だった。

 

 しかし……

 

???「違うだろ?きみの名前は()()()()…。イナタマ・ライメイ、それが本当の名前でしょ?」

 

雷冥「……やはりバレていましたか」

 

 今できる最大限の偽装工作すらも虚しく、あっさりと正体を看破されてしまう。

 

???「とうぜんじゃん!!だって、きみは今や“奈落(アンダー)”で1番の有名人だからね!!」

 

雷冥「アンダー…?」

 

???「あれ?そんなことも知らないの?…もしかして記憶そーしつってヤツだったり?」

 

雷冥「……ええ。そんなモンです」

 

 本当はそんな訳がないが、下手に並行世界の存在を知らせるよりも都合がいい為、敢えて記憶喪失という役を演じる事にする。

 

???「それじゃあおれが教えてあげるね!“GF”が統治しているこの国は“楽園(エデン)”と“奈落(アンダー)”でわかれていてね、大半の国民が住んでいるのがここ、“奈落(アンダー)”ってわけ!!!」

 

雷冥(…要するに上流階級と下層階級がキッパリ別れてるディストピアって事ですね…)

 

 少年からの簡単な説明を受けた雷冥は、軽く溜め息を吐きドン引きする。

 この手の根本の歴史が正史とは全く異なるパラレルワールドに訪れたのは今回が初めてではないが、ここまで終わっているディストピアを目の当たりにしたのは初めての体験だった。

 

 逃走の際に城から見た光景から察するに、“楽園(エデン)”とやらに住めるのはほんの一握りの人間もしくは一族だけなのだろう。

 寧ろ、ここまで貧富の差がありながらも、革命が起きていないだけ“GF”の手腕に対して尊敬の念すら湧いてくる。

 

雷冥「…それで?貴方はどうやって私の名を知ったのですか?生憎、今の私はすっからピンなのでね、身分証らしきモノはありませんが」

 

???「ああ、それはニュースからだね。ほら、これを見てよ!」

 

 少年は雷冥に向かってスマホサイズの小型テレビの画面を見せつける。

 その小型テレビはジャンク品の中から使えるパーツだけ抽出して作り出したかのようなデザインであり、どう考えても正規品には見えない。

 

 そのゴテゴテのモニターに映っていたのは……

 

『引き続き緊急ニュースです。数十人もの“グランドガーディアン”に重症を負わせ逃走した凶悪な犯罪者“イナタマ・ライメイ”の捜索は今も続いております。イナタマ・ライメイらしき人物を目撃した際には、決して近寄るような事はせず、速やかに“グランドガーディアン”への連絡をお願いします』

 

 雷冥の顔がデカデカと載った手配者と、逃走時に邪魔な兵士達をボコボコにしていた際の映像の一部始終だった。

 

ワンダキャット「なかなかいい感じにマスターの顔が写ってんじゃん。一体、どこでこんな写真を手に入れたんだか」

 

ワンダバード「突っ込むところそこ!?」

 

 …主人の肩に乗って絶妙にズレた漫才を繰り広げるロボット兄妹は置いておこう。

 

雷冥「…なるほど。私がココで一番の有名人なのも納得です。何せ、現在の私は歩く数百万の札束ってワケですからね」

 

???「そーゆーことだね」

 

 より一層、目立った行動が制限されてしまった雷冥だが、不思議な事に先程とは一転して少年に疑念を向けるような真似をしない。

 

 何故なら……

 

???「もうわかるよね?おれがその気になれば、いつでもきみをガーディアンに突き出すことができたけど、そうはしなかった…。どう?これで少しはおれを信用してくれた?」

 

 そう、雷冥はほぼ丸一日気絶していた。その間に第一発見者である少年はいつでも彼を警察に突き出す事ができたのだ。

 だが、現に雷冥は人気の無い場所で匿われており、何かの理由があったとしても未だに呼び出した警察が壁を突き破って現れる気配も無い。

 

 これだけで少年に敵意が無い事を察せない程、雷冥は馬鹿じゃない。

 

 ……とはいえ…だ。

 これらの事実は、少年が雷冥を匿った理由は()()()()()()()()()()()()

 

???「改めて自己紹介するよ。おれの名前はイダテン、と言ってもおれが風のように疾いから、まわりが勝手にそう呼んでるだけで、本名は知らないんだけどね」

 

雷冥「イダテン…韋駄天(イダテン)…」

 

ワンダキャット「なんか美味しそうな名前。たまに衣の中身がめっちゃ柔らかいヤツがあるけど、アレどうやって作ってるんだろ?」

 

ワンダバード「それは韋駄天じゃなくてイカ天!ハァ〜……韋駄天ってのは仏教の守護神だよ。転じて「足が疾い人」って意味合いで使われることもあるよ」

 

ワンダキャット「へー」

 

 自分からボケた癖に素っ気ない返事を返した(キャット)の態度が癪に触ったようで、(バード)は小さなくちばしと羽をパタパタ動かしながら口喧嘩を繰り広げる。

 そんな頼もしくも騒がしいペット達を他所に、彼らの主人は別の思案に耽っていた。

 

雷冥(自動翻訳装置を使っていなくても私と言葉が通じ、私の世界と同様の意味を持つ単語が存在する…。本当にこの世界は“()()()()B()”に該当する世界なのでしょうか…?)

 

 並行世界には大きく分けて二種類に分けられる。

 1つは正史世界から枝分かれした“パターンA”に分類される並行世界。基本的に“パターンA”は未来人が過去に介入した際にしか誕生しない。

 

 もう1つは正史とは前提の歴史が大きく異なる“パターンB”に分類される並行世界。

 尤も歴史が異なると言っても、その大小は様々であり、軽微な例では正史では死亡していた人物が、パターンBでは生存し、尚且つ年齢も容姿も大きく異なっているパターン…。大きい物ではこの世界のように同じ惑星とは思えない歴史を辿っている。

 

 タイムエージェントとしての経験則から、この世界は間違いなく“パターンB”に該当する並行世界だ。

 だが、彼の直感は“この世界”に対する形容し難い違和感を強く感じ取っていた。

 

イダテン「…ライメイ、おれはきみが何者なのかは知らない。けど、“グランドガーディアン”たちをなぎ倒した、きみの実力を見込んで頼みがあるんだ…!」

 

雷冥「私に頼み…?」

 

イダテン「おれを……“楽園(エデン)”に連れていってほしい…!!」

 

 真っ直ぐな視線で雷冥を見るイダテンの眼には、彼ならば絶対に断らないという強い確信があった。

 そもそも雷冥は、イダテンによって命を救われた身。つまりは少年に大きな恩がある状態だ。

 

 それらの事情の諸々を考慮した上で、雷冥が導き出した答えは……

 

雷冥「…ならば、私の答えはただ一つ…」

 

イダテン「うんうん!」

 

雷冥「………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()

 

イダテン「いやったーー!!!きみならそう言ってくれると・・・へ?」

 

 雷冥の口から出た答えはまさかまさかの“NO”…。

 火の玉ドストレートで期待を鮮やかに裏切る雷冥にイダテンの口が空いたまま塞がらない。

 

 一生物の“恩”すらも容易く“仇”で返す雷冥…。果たして彼の真意とは…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

???「ハァ〜…。ダッッッル…」

 

 時は雷冥が“GF”の居城からの脱走に成功した直後にまで遡る。

 

 魔王の蹂躙劇により、全治数ヶ月は確定であろう重症を負った兵士達が横たわる城内に“奴”は居た。

 

???「マジないわ〜。普通に考えてあの体制からドロップキックなんてするゥ?そのせいでモロに喰らって、肋骨が5〜6本くらい折れちゃったじゃ〜ん」

 

 “奴”は鎧の胸部にクッキリと浮かんだ大きな凹みをさすりながら文句を垂れ流す。

 

 彼は、歯に仕込んでいた人工血液を使って瀕死を演出した雷冥を後押しするように“毒”という単語を用いて同僚の恐怖心を煽り、結果的に逃亡の元凶となった兵士…と言えば分かるだろう。

 

 だが、気だるそうに歩くその姿に、命乞いをしてまで逃げ出そうとしていた情け無い新兵の面影は無い。

 

???「まっ☆ お陰で魔王サマを()()()()()()()()()、結果オールライト☆ってとこかな〜♪」

 

 概ねの目的を果たした“奴”は、指を軽く鳴らすと煩わしい事この上なかった鎧が一瞬にして消失し、緑を基調とした近未来的なパーカー姿となる。

 

 顔全体を覆っていた兜の中からは、光沢の無い白銀に染まった頭髪が露出し、稲魂家特有の蒼い光を放つ瞳が薄らと輝く。

 

???「本当に困るんだよね〜。キミにこ〜んな終わっている所で死なれちゃあ。キミには“彼ら”の水先案内人(ナビゲーター)という立派な役を用意してるんだからさ〜♪」

 

 正体を表した“奴”は、再び指を鳴らすと今度は城の外へと瞬間移動する。

 

???「どうせ死ぬなら、オレが書いた物語(クロニクル)の壇上で踊り狂ってから死んで欲しいナ☆ キミには期待してるよ〜♪ 魔・王・サ・マ☆」

 

 そう言い終えた“奴”は、己の計画を進めるべく、星々が煌めく夜空に向かって飛び立った。

 

 少年の名はかつて雷冥が生きる時代から遥か先の未来を絶望のドン底に追いやった最凶最悪の犯罪者(テロリスト)であるセカンドステージチルドレン…の残党・“REON”。

 

 その首に薄紅色の小さな宝石を携えた少年は一体、どこへ向かい、何を企む?




“GF”が支配する世界は、遊戯王5dsのダグナー編序盤のシティとサテライトをイメージしてます。
尺の都合でカットしたのですが、この世界では“GF”の意向により、サッカーだけが絶対の価値を持っている為、サッカーに勝ち続けた者のみが“楽園(エデン)”に住む事を許され、負けた者は“奈落(アンダー)”に落とされそこで一生を終えるという裏設定があったり。
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