というのも、ここ最近、地の文の描写が淡白だな〜と思ってたんで、普段読まないラノベや小説を読み漁って勉強してたんですよね。
重い空気に包まれたアジトの静寂を破り、ホログラムの青い光線が中央へ収束していく。
そこに浮かび上がった重厚な影を目にした瞬間、“魔王”の冷徹な仮面が僅かに崩れ、目を見開いた。
雷冥「コードナンバー……
イダテン「スリーセブン…?なんか変な名前だね…」
ジャック「バカかテメーは。どう考えても本名じゃねェだろ。…にしてもアイツ……まんまライメイを老けさせたような
ワンダキャット「……そんなの当たり前。あのおっさんの名前はコードNo.
ジャック「なるほどなァ、どうりで不気味なくらいに似ている筈だぜ」
キャットからの補足を受け、ジャックとイダテンは彼らが不気味なほど似ている理由に深く納得する。
だが、最高幹部であり実の父親でもある筈の男を明らかな殺意の籠った眼差しで睨み付ける雷冥の姿はどう見ても、上司に対する態度ではない。
雷冥「…何故、貴方がココに居る…?たかが1エージェントの捜索に、トップである貴方が出しゃばる必要は無いでしょう?…それとも、まさか今更、父親としての責任を果たそうとしているのですか?」
No.777『……私が捜査の指揮を取らなければ、お前の居る世界の座標を絞り込む事は出来なかった…とだけ言っておこう……』
イダテン「せっかくお父さんと再会できたってのに、なんか空気が悪いね…」(ヒソッ…)
ワンダキャット「マスターと777の仲はチョー悪い。…正確にはマスターが一方的に嫌っているってのが正しいけど」(ヒソッ…)
本来ならばこれまでの不利を覆す希望の光となる筈のNo.777との会話だが、彼の存在はただでさえ雷冥の心に燃え盛っていた“殺意”を更にヒートアップさせる燃料にしかならなかった。
No.777『命令だ、No.66。救助隊が到着するまで、目立った行動は一切避けろ』
雷冥「……丁重にお断りします……。いつ来るか分からない救助隊を待ち、みすみす“GF”の蛮行を見逃せですって?・・・
静かな抑圧を突き破り、地底から響くような怒号がアジトを激震させる。
No.777の命令は、「この世界とそこに生きる人間を見殺しにしろ」と言っているに等しかった。
目の前の悪を看過することなど決して許せない。ギリギリのところで繋ぎ止められていた理性の仮面が音を立てて砕け散り、その奥に潜む本来の人格ーー冷酷無比なる『魔王』が、静かにその目を覚ます。
雷冥「最早、悠長にしている暇は無いッ!!!私はこの眼で確かに見たッ!!この世界の頂点に開かれた“破壊の神”が住まう巣穴をッ!!」
No.777『……“GF”の計画はサポートロイド1号機の記録から確認されている。現在、本部の総力を上げて真偽の調査中である。正確な結果が出るまで待機しろ!コレは命令だッ!!!』
雷冥「駄目だッ!!!事が起こってからの対処では遅過ぎるのだッ!!!間違いなく“GF”の計画は実現間近まで来ているッ!!阻止する為にはヤツを殺すしか方法は無いのだッ!!!」
時空を超えて交わされる、どちらも一歩も引かない激論…。
恐らく、どれほど絶対的な“神”であっても、この二人の主張のどちらが正しいか白黒を付ける事など不可能なのだろう。
全体を俯瞰し大局を守る“組織”には組織の、目の前の命と悪に向き合う“現場”には現場の……それぞれが絶対に譲る事の出来ない、独自の正義と覚悟があるのだから。
雷冥「……もう良い……ッ!貴様では話にならん……!!」
これ以上の議論は無用と言わんばかりに、雷冥は冷ややかに言い捨てると、迷いのない足取りで出口へと踵を返した。
No.777『………』
だが、通信の向こうに座すNo.777は、逃げるように去ろうとする息子を引き留めようともしない。こうなることすら最初から織り込み済みであったと言わんばかりに、ただ深く、不気味なほど静かに黙り込んでいる。
その不気味な沈黙が、かえって雷冥の逆心を刺激した。
重い扉のドアノブに手をかけた瞬間、雷冥は振り返りもせず、吐き捨てるように嘲笑を漏らす。
雷冥「……幾ら考えても無駄だぞ?所詮……“稲魂”の血を継いでいない貴様には、私の思考を理解する事など出来やしない……。……私だけじゃない、ママ上もな」
一族の誇りと血統を盾にした、冷酷で決定的な拒絶の言葉。
居合わせた仲間たちが息を呑む中、ホログラムの男は静かに目を伏せ、低く重厚な声を響かせた。
No.777『……確かに私は、“稲魂”の人間ではない……』
雷冥「……ッ!」
No.777『……だが、お前の実の“父親”ではある』
静かだが、血の繋がりそのものを突きつける揺るぎない一言。
ドアノブを握る雷冥の指先が、怒りと葛藤でピキリと白く強張った。
イダテン「ライメイっ!!!」
バード&キャット「「マスターッ!!!」」
雷冥「貴様らは来るなッ!!!コレは私の使命だッ!!!」
わずかな動揺と情を振り払うように咆哮する“魔王”は、死を覚悟してでも付き添おうとした
そして、ジャックが部下に持たせた武器を引ったくるように手に取ると、振れ払う背中に痛切な絆を感じさせながら、ただ一人で扉の向こうへと姿を消した。
イダテン「待ってよっ!ライメイっ!!」
ジャック「行かせてやりなァ!!イダテンッ!!!」
イダテンが雷冥を追いかけようとした瞬間、静寂を切り裂くような、ジャックの低く重厚な怒声が室内に響く。
その声に含まれた圧倒的な威圧感と底知れぬ凄みに押され、飛び出そうとしていたイダテンは思わず足をすくませ、言葉を詰まらせた。
イダテン「ジャック…!どうして止めるのさ…!!」
ジャック「甘ちゃんイダテンには理解できねェだろうがよォ、あれは覚悟を決めた男の眼だ。そんな野郎を前にして、観客であるオレらが止める権利は無ェのさ」
イダテン「くっ……!」
ジャックの吐き捨てた論理を超えた重い言葉を前に、イダテンはぐうの音も出ず、固まるしかなかった。
ここで無理にジャックの制止を振り切って追いかけたところで、結果は見えている。雷冥なら、イダテンを気絶させてでも容赦なく振り切っていく筈だ。
自分達だけではない。長年寄り添ってきた
今の彼らを縛る「無力感」の前に、もはや雷冥を留める術など残されてはいなかった。
No.777『……サポートロイド1号・2号よ。No.66のGPSを追跡しろ』
ワンダバード「…ダメです。既にマスターはGPSの電源を切ってます…」
No.777『……ならば、タイムエージェントからの除名処分を考えなければな……』
ホログラムの男の口から落ちてきたのは、僅かな沈黙の後、どこか言い聞かせ染みた冷たさを帯びた声だった。
しかし、自身の指示に従わぬ者を淡々と切り捨てるようなその宣告は、取り残された
張り詰めた空気の中、俯いていたワンダバードの体からギリ……と悲痛な駆動音が漏れ出し、つぶらな瞳は僅かに濡れる。
ワンダバード「……でいいんですか……!!!」
No.777『……何かね?』
ワンダバード「それでいいんですか、と言ったんです……!!!」
No.777『……君に何が分かるというのかな?所詮、No.66のサポートロイドでしかない君に』
ワンダバード「分かりますよ…!!
ホログラムの先に居る小さな小鳥の言葉を聞いたNo.777は、何かを思い出したように目を見開く。
No.777『……そうか、君…いや、
ワンダバード「そうです…!きっと、今の親子の溝には、マスターだけじゃなく貴方にも原因がある筈なんです…!!教えてください…一体、優しかった貴方に何があったんですか…!?」
No.777『………』
僅かな沈黙の中、男の瞳に宿る光がわずかに揺れたかと思うと、深く長い息を吐く気配が通信のノイズ越しに伝わってきた。
No.777『……一つ訂正させてもらおう。我ら親子の間に出来た深い溝……その原因はNo.66…いや、
それは、長年“無血の仮面”を被り続けてきた1人のエージェントではなく、1人の父親としての懺悔であった。
♢♢♢
雷冥「どういう事だ……!? 城の警備が……明らかに前回よりも少ない……!!」
だが、城全域に広がる異質な静寂を前に、彼は息を呑み、深い警戒を露わにする。
その静寂は、侵入者に対する無言のメッセージ。
恐らく、この城の主はこう言っているに違いない。
『貴様は火中に飛び込む羽虫でしかない』と……。
雷冥「……ハッ、構いませんよ。いっその事、清々しいまでに貴方の挑発に乗ってあげようではありませんか。行きますよバー−–」
ほぼ無意識のうちに、置いてきた筈の眷属の名を呼び掛けた瞬間ーー雷冥はぴたりと口を噤み、如何に今の行為が愚かであったかを痛感する。
雷冥「……いけませんね……。いつもの癖が抜け切っていないようです。…ですが、既に城内マップの
自らが望んで選んだ筈の孤独の筈だった。
だが、否が応でも相棒の居ない“ 寂寥感””が背筋を冷たく伝う。
今すぐにでも仲間たちの元へ駆け戻り、己の無礼を詫びたいーーそんな痛切な衝動が胸を苛み、息もできない程に締め付ける。
しかし、彼の中に刻まれた苛烈な責任感がそれを決して許さない。
溢れ出しそうになる弱音をタイムエージェントとしての矜持と正義感で強引にねじ伏せ、彼はどうにか倒れそうになる心を奮い立たせた。
雷冥「コードNo.
奮 己の胸に誓いの楔を打ち付けた雷冥は、静寂に包まれた孤城へ身を躍らせる。
全ては、己に課せられた使命を果たす為に。
……………
…………
………
……
…
雷冥「…と意気込んで潜入したは良いですが、こうまで静かだと逆に物足りなさを感じてしまいますね…」
潜入から数十分後…。雷冥は、“玉座の間”の眼前に位置する広大な大広間まで辿り着いていた。
幾重にも張り巡らされた
だが、この肩透かしこそが、今の雷冥にとっては何よりも恐ろしい。
雷冥(この扉を開けば“GF”と相対する、が……。ヤツにとって私はネギを背負った鴨も同然……。正面突破は避け、玉座の間の後方にあるステンドグラスから侵入し奇襲を仕掛けるのが最善策でしょう……)
現在の雷冥には“GF”相手に騎士道も武士道も、ましてや正々堂々と相手してやる余裕は微塵も無かった。
例え後世で外道や卑怯者の
雷冥「ならば今すぐにココから離れーーー」
シュバッ!!!
大広間から離脱しようと翻った瞬間、雷冥は反射的に深く腰を落とすと、爆発的な跳躍で頭上へと身を躍らせる。
その直後、何処からともなく飛来した鈍色の球体が、つい先ほどまで雷冥が立っていた地点へ激突。轟音とともに床を粉砕し、容赦なく抉り取った。
雷冥「なるほど……既に追手は放たれたいた、というワケですか……。それに今のシュートは……」
着地と同時に素早く戦闘体制へ移り、周囲を見渡す雷冥。
薄暗い大広間を取り囲むように立っていたのは、黒いローブを深く羽織った十一人もの影であった。
……意味ありげに姿こそ隠されているものの、雷冥の胸に強い既視感と異様な胸騒ぎが走る。何せ、彼らの立ち振る舞いには異常なまでの強烈な見覚えがあったからだ。
???「久しぶりだな、イナタマ・ライメイよ。私達はずっと今日という日を待ち侘びていたぞ?貴様への復讐を果たす日をなぁ……!!」
他の戦士より一歩前に出たローブの少年の声を聞いた雷冥は、その正体を確信する。
雷冥「……コレはコレは……。
???「その表現は正しくない。貴様に敗北を喫した“あの日”……11点目が入った瞬間、私達は死んだ。だが、我々はこうして帰って来た…!“敗者”という地獄からなぁ…!!!」
一斉に翻されたローブが舞い散り、その下に隠されていた真の姿が白日の下に晒される。
彼、そして彼らの名はーーー
雷冥「解せませんね。貴方達はグリムによる運命の罰ゲームを受けた筈です。それなのに、どうして既に目を覚ましているのですか?……シンフォニー殿」
シンフォニー「愚問だな。敵である貴様にそう易々と答えを教えると思うか?イナタマ・ライメイよ」
そこに立っていたのは、かつて刃を交えた【サンダーゲート】の選手たちであった。
雷冥「……意外ですね。超が付く程の実力主義で常勝主義者の“GF”ならば、手も足も出ずに私に負けた貴方達など容易く切り捨てると思ってましたが……」
シンフォニー「それは当時の私も同感だった…。…だが!!寛大な我らが神は慈悲深くも、最初にして最後のチャンスを我らに下さったッ!!もう一度貴様に復讐する機会をなぁ!!!」
この短期間でいかなる地獄を体験したのかは定かではない。だが、今のシンフォニーに、かつてピッチを支配していた冷静沈着な司令塔の面影は微塵もなかった。
今の彼、ひいては彼らを突き動かしているのはただ一つ。自身の輝かしい栄光へ永久に消えぬ泥を塗った男……稲魂雷冥に対する、狂気的なまでの復讐心のみであった。
シンフォニー「さあ、選べッ!! 無駄なあがきを続けてここで我が主の肥やしとなるか……! それとも、あの怪しげな機械でもう一度我々とまみえ、ピッチの上で命を賭けた
雷冥「……ならば、答えは一つ……!」
二つの選択を突きつけられた雷冥は、一切の躊躇なく、懐に隠し持っていた漆黒の球体を床へと叩きつける。
無機質な破砕音が響き渡り……“偽り”によって再構築される絶対領域を展開する為の、第一条件が満たされた。
『コードNo.66・稲魂雷冥本人である事を確認。“フィールドモード”を起動します』
刹那、無機質な鋼鉄と神聖な黒曜石で彩られた空間が、雷冥を起点に奔流となって広がった電磁波に呑み込まれ、世界そのものが歪み、その姿を瞬く間に変貌させていった。
周囲一面に広がるのは、どこまでも青々とした人工芝のサッカーコート……。
そこは、僅か数秒のうちに起きた異常事態を差し引けば、どこにでもある平凡なピッチに過ぎない。
だが、その平凡な戦場こそが、因縁深い戦士達の決戦の舞台として、これ以上なく相応しい。
シンフォニー「良い…。この地に足を踏み締めるだけで、貴様に受けた屈辱が昨日のように蘇って来る…!」
トラウマの地に再び立った事で、より一層激しく復讐の炎を燃やす【サンダーゲート】。
……だが、眼前で逆巻く激しい憎悪を前にしながらも、雷冥は彼らに対してどこか拭いきれない違和感を抱いていた。
雷冥(…おかしい…。私とヤツらが試合をしてから、まだ3日程度しか経っていないにも関わらず、
直接刃を交えずとも、雷冥ほどの練度を誇る戦士であれば、相対するだけで相手の概ねの実力を推し量ることができる。
彼の眼が捉えた【サンダーゲート】の戦闘力は、甘く見積もっても前回の十倍……。中でも司令塔であるシンフォニーに至っては、今の自分にすら肉薄するほどの急成長を遂げていた。
雷冥(どういう事だ…?コレ程までのパワーアップを果たすには、3日では到底足りない…!最低でも
僅か3日でこの領域へ辿り着く手立てがあるとすれば、軍事用の
しかし、彼らの全身から漂う気配には、薬特有の不自然な“歪み”すら一切感じられない。
シンフォニー「何を考え込んでいる、イナタマ・ライメイッ!!!
雷冥「…ハァ…。今回ばかりは骨が折れそうだ……」
復讐鬼へと身を堕とした
蒼き
果たして雷冥は、異様な跳躍を遂げた【サンダーゲート】を退け、“GF”の邪悪な野望を打ち砕くことができるのかーー!?
♦︎
時空管理局 審判議会・決定達示書
対象者:コードNo.777/稲魂天冥
事案: 時空保全法第1条および絶対分岐不可侵条約に対する重大な不法介入の件
本議会は、対象者が非合法に時空移動を繰り返し、特定個人の死亡事象に対する歴史改変を企てた違法行為に対し、以下の通り裁定を下す。
対象者が過去の任務において挙げた多大な功績、および時空保全への貢献を鑑み、本件における極刑および法的資格の剥奪は免除する。しかしながら、改変不可能な歴史定数に対する過度な介入は、時空構造そのものを揺るがす極めて軽率な暴挙であったと断定せざるを得ない。
よって、対象者に対し、以下の永久制限措置を命じる。
接触および観察の絶対禁止
・対象者は、全時空軸における対象者配偶者(同一存在、および時空分岐・平行世界におけるあらゆる同一事象体を含む)に対し、物理的・定量的な接触を一切禁じられる。
監視および警告体制
・対象者の所有する全時空跳躍ギアには、自動位置補正プロトコルが強制適用される。対象者配偶者の存在座標から半径100光年・前後100年の範囲へのアクセスは恒久的にロックされる。
再犯時の措置
・万が一、本裁定に違反し指定領域へ接近を試みた場合、即座にエージェント資格を永久剥奪の上、因果律補正領域(無時間監獄)への永遠の収監措置を執る。
運命とは、どれほど優れた技術を持とうとも書き換えられぬ不可侵の軌跡である。汝の愛した者は、どの歴史の結末においてもその場所にしか存在し得ない。己の功績に免じられた命であることを自覚し、二度と歴史の理を乱すことなかれ。
時空管理局 審判議会 最高執行官
あんだけ一度でも負ければ“GF”から切り捨てられるって強調されてたにも関わらず、彼らが追放されていないのは、“GF”的には今代の【サンダーゲート】に限り、そう簡単に切り捨てられる人材ではなかったのが理由です。
それでも、“GF”の顔は一度までなので、この試合に負けて雷冥を取り逃したら今度こそ挽回の余地無く切り捨てられますが。