イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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雷冥の使う“獅風迅雷”はオーラの色が黄色じゃなくて青色のせいで、小僧丸のスーパーワイルドと丸かぶりしている事に今更気づいた件。
まあ、雷冥のはキラベジみたいな濃い青だし、そこで差別化出来てるか。……多分。


熱戦と激戦と超激戦と PARTⅡ

雷冥「“獅風迅雷(しっぷうじんらい)……!!限界突破(オーバーハンドレッド)”……!!!」

 

 遂に『本気』を解禁した雷冥。その肉体から怒涛のごとく溢れ出る圧巻の威圧感(あお)が、ピッチ全域を完全に支配していく。

 

 だが、人間の水準(レベル)を大きく凌駕した領域を前にしてなお、シンフォニーの瞳には狂気的な歓喜が爛々と宿っていた。

 

シンフォニー「分かる…!分かるぞ…!! それが貴様の『全身全霊(ゼンリョク)』なのだな……!!!」

 

雷冥「………」

 

スッ…

 

 雷冥はシンフォニーの問いを意に介さず、無言のまま右手を掲げる。

 そして、静かに人差し指だけをピンと立て、【サンダーゲート】の面々へと突きつけた。

 

シンフォニー「…何の真似だ…?」

 

雷冥「決まっているだろう?コレは予言(サイン)だ。コレより1分以内に、貴様らから点をもぎ取ってやるというな」

 

 一見すれば不遜極まる豪語。しかし、全身から勇ましく蒼炎を滾らせる雷冥から放たれたその言葉には、敵である【サンダーゲート】の選手達ですら奴ならば実現しかねない、と本能で直感せざるを得ない重厚な重みが宿っていた。

 

シンフォニー「面白い…!やれるものならやってみろッ!!皆の者、配置に着けェ!!!」

 

『ラジャーッ!!!』

 

 隊長(キャプテン)の号令のもと即座に陣形が整えられ、【サンダーゲート】はこれから吹き荒れるであろう嵐に備えて身構える。

 そしてーー【王魔雷帝】のキックオフにより、死闘の火蓋が再び切って落とされた……!

 

ピィー!!!

 

マルシファー「我が魔王ッ!!」

 

 キックオフの笛と同時にボールを受けたマルシファーは、迷わず鋭いバックパスを放つ。

 その軌道の先に位置していたのは、DFである筈の雷冥。

 その双眸に映るのは味方の姿などではなく、遥か彼方にそびえる敵のゴールただ一つ。

 

雷冥「ハァァァ……!!!」

 

 蒼炎を滾らせて怒涛の勢いで攻め上がる雷冥。その圧巻の威圧感を前にしたシンフォニーは、MFはおろかFWまでも守備に下げると、自ら単身ピッチを疾走する。

 

 彼が狙うはただ一つーー雷冥との直接対決(タイマン)だ。

 

シンフォニー「コチラも全力で行かせてもらうぞッ!!!ハァァァ…!!!」

 

 その瞬間、シンフォニーの全身から凄まじいオーラが爆発し、その背後に巨大な化身が顕現する。

 

シンフォニー「“奏者 マエストロ”ッ!!!」

 

ーーズガァァァァァンッ!!!!!

 

 化身を顕現させた直後、シンフォニーは目にも留まらぬ速さで雷冥へ肉薄。その足元のボール目掛け、渾身の一撃を叩き込んだ。

 まるで落雷の如き凄まじい衝撃音がピッチ全域へ爆散し、周囲の選手たちが思わず耳を塞ぐ。

 

 だが……

 

シンフォニー(な…何…ッ!?この感触は…!?)

 

 刹那、シンフォニーの脳裏を過ったのは、目の前に悠然と(そび)え立つーー直径数十メートルはあろうかという巨大な岩石の幻影(ビジョン)…。

 

 もちろん、目の前にそんな大岩が存在するはずもない。対峙しているのは無機物ではなく、たった一人の“魔王”なのだから。

 

 しかし……せいぜい170cm台半ばの体躯でしかない雷冥には、紛れもなくその巨岩に匹敵する、圧倒的な重量と質量が宿っていた。

 

シンフォニー(重ーー)

 

雷冥「この展開(シチュエーション)は想定外か?だが、恥じる事は無い。神ですらも“魔王(ワタシ)”の前にすれば、凡人と同類なのだから」

 

 “神”すらも虫ケラであると見下す傲岸不遜の“魔王”は、蒼炎を激しく燃え上がらせると、力任せにピッチを力強く踏み荒らした。

 

雷冥「デェリャァァァァァ!!!!!」

 

 圧倒的な脚力と質量を誇る“魔王”の反撃は、シンフォニーの全力を以てしても耐え切れず。背後に顕現していた化身(マエストロ)は一瞬で霧散し、その体は無残にも後方へと激しく吹き飛ばされた。

 

シンフォニー「ヌオォォォオオォォォ!!?」

 

ミスティープ「バ、馬鹿なッ!? 化身を発動したシンフォニーが力負けしただとッ!!?」

 

 一年にも及ぶ地獄の特訓を経てもなお、届かぬ高みに君臨する“魔王”の絶対的な実力。その現実を突きつけられ、【サンダーゲート】の面々は驚愕を隠せない。

 

雷冥「残り時間……30秒……!!」

 

 だが、宿敵を打ち破っても“魔王”の表情に喜びの色はない。勝利の余韻すら置き去りにし、ただゴールへ向かって一直線に爆走する。

 

ミスティープ「クッ…!守りを固めろッ!!何としてでも、シンフォニーの帰還まで耐えるんだッ!!!」

 

 隊長を欠いた窮地の中、副隊長のミスティープが間髪入れずに飛んだ指示により、“魔王”の覇道へ重厚な防衛陣が築き上げられる。

 

スピタ&サンシー「「“サルガッソーS”!」」

 

バンバ「“アトランティスウォールG5”だドッ!!!」

 

ミスティープ「“ディープミストS”…!!」

 

 FW陣によるスライディングから始まり、数々の強力な必殺技が、雷冥1人に対して襲い掛かる。

 

 しかし……

 

雷冥「我が覇道の前に立ち塞がる叛逆者共よッ!!貴様らの足掻きが如何に愚かであるか…とくと思い知るが良いッ!!!」

 

 立ちはだかる障害の全てを薙ぎ払うかのように、獰猛な蒼き旋風がピッチを吹き荒れる。

 

雷冥「“魔王=(デス)=ロード”ッッッ!!!」

 

『グワァァァァ!!?』

 

 あれほどの人数で築いた防衛陣すら、“魔王”の圧倒的な蹂躙を止める術にはならなかった。吹き荒れる惨状の中、ピッチに残されたのは、最後の砦を護りし守護神(ゴールキーパー)・チャイードのみ。

 

チャイード「来ォいッ!!!私1人になろうとも、【サンダーゲート】の誇りは消えぬッ!!!血の一滴が尽きるまで…!私は闘い続けるッ!!!」

 

雷冥「フンッ!貴様如きに我が覇道を止められると思っているのか?……だが、その心意気や良しッ!!!」

 

 絶望的な劣勢に追い込まれてなお、“最強”としての矜持を貫くチャイード。

 その覚悟に少なからぬ敬意を抱いた雷冥は、挑戦者への応酬として、最凶の“悪魔”をその全身に宿す……!

 

雷冥「“エンペラーディアボロス……ReB(リミットブレイク)”ゥゥゥゥ!!!!」

 

 天を穿つ悪魔の中の悪魔の咆哮ーーその絶大なるエネルギーを一身に宿した一球は、狂暴な漆黒の魔弾へと姿を変え、空間を歪めるほどの衝撃波を爆散させながらゴールへと襲い掛かる。

 

チャイード「ヌゥゥゥンッ!!!“極 無頼ハンド”ォォォォォ!!!!!」

 

 圧巻の破壊力を誇る魔弾を前にしても、守護神(チャイード)の脚が退く事は断じてなかった。

 己の使命を果たすべく、溢れ出る赤と黒の二色オーラで巨大な両掌を形成し、迫り来る漆黒の球体を、正面から力任せに挟み込んだ。

 

雷冥「・・・逃げずに立ち向かった事だけは褒めてやろう。……だが、私の誇りには届かない」

 

チャイード「グッ…!?ガァァァァァァ!!!!!」

 

 ほんの一、二秒の拮抗。直後、守護神の巨大な両手は悲鳴を上げて砕け散り、解き放たれた魔弾が無残にもゴールネットを激しく突き破った。

 

 ーー“魔王”が突きつけた宣戦布告から、僅か54秒。

 稲魂雷冥、予言実行。

 

ピーッ!!!

 

グリム『ゴォォォォルッ!!!!! 圧倒的に不利な状況からも、鮮やかに予言の達成ッ!!流石はマスターッ!!流石は我が創造主だァァァ!!!』

 

 グリムの実況が響き渡り、会場を彩る紙吹雪が優雅にピッチの上空を舞い散り、フィールドは静寂で包まれる。

 その静寂中で、雷冥は地面に伏したシンフォニーの元へと静かに歩み寄った。

 

雷冥「コレは中々、滑稽で良い無様晒しではないか、シンフォニーよ。人生二度目の敗北の味はどうだ?」

 

シンフォニー「・・・ククク…!口の中は酸のように苦い味で一杯だ…!・・・だがぁ…!!今の私には、この苦さこそがこの上なく心地良い……!!!」

 

雷冥「……なるほど、地獄の特訓で得た物は、化身(アレ)だけではなかったという事か」

 

 敗北を喫してもなお、不吉な笑みを爛々と滾らせるシンフォニー。

 その歪んだ高揚感を前に、雷冥の全身には、『この試合がこのままでは終わらない』という、確かな悪寒が走り抜けていた。

 

♢♢♢

No.777「ただいま戻った。……現時点で進捗状況はどうなっている?コードNo.02」

 

 場面は一変しーー。時空管理局内に設置された、稲魂雷冥(コードNo.66)の捜査本部。

 モニターが放つ青白い光の中、部下達が忙しなく情報解析を続けている部屋へ、連絡を終えたNo.777が足を踏み入れた。

 

No.02「どうもこうもありませんよ…。コッチは不眠不休で作業してるってのに、一向にアチラからの妨害電波を中和出来る兆しが見えません。クソ…こんな時にNo.10が居てくれたらなぁ……」

 

 PCの画面と睨めっこを中断したNo.02と呼ばれた男は、目の下に大きなクマを浮かべ、ため息と共に愚痴を溢す。

 

 雷冥が連れ去られた並行世界の座標自体は、すでに特定が完了している。

 しかし、救出班を現地へ送り込もうにも、時空跳躍を阻む強固な妨害電波が展開されており、これを解除しない限り救出作戦を実行に移すことはできないのだ。

 

No.777「愚痴を言うな。現在、別動隊が彼女の説得にあたっている。交渉がまとまり次第、こちらに合流させる手はずだ」

 

No.02「それが一体、何週間……いや、何ヶ月後の話になるかって言ってるんですよ。はぁ〜……どうして神様ってやつは、あのハイスペックな頭脳にまともな性格をセットにしてくれなかったんですかねぇ……」

 

 “GF”が展開した妨害電波は、時空管理局の誇る最新技術と精鋭たちをもってしても、容易に突破できるような代物ではなかった。

 組織の総力を挙げてもなお手詰まりである以上、残された希望はこの手の専門家(スペシャリスト)こと、コードNo.10の天才的な頭脳に頼る他ない。

 

 ……だが、非常に残念な事に、彼女は己の知的好奇心を極限まで刺激する事案でなければ、絶対に腰を上げない極度の偏屈家だった。

 

 例え持ち込まれた事案が、局長直々の厳命であったとしても、だ。

 

No.02「・・・そういや、息子さん(No.66)との通信は成功したんですか?」

 

No.777「……ああ、一先ず上手い事逃げ延びていたようだ」

 

 そう淡々と答えるNo.777。しかし、返答までの妙に長い間と、疲哀の滲む顔に浮かべた意味深な苦笑を見れば、息子とのホログラム越しの再会が手放しで喜べるようなものではなかった事など、誰の目にも一目瞭然だった。

 

No.02「……もしかして、また喧嘩しちゃいました?分っかりやすく顔に出ちゃってますよ?」

 

No.777「……昔、今の言葉と全く同じ事を別れた妻に言われた。私としては、上手い事隠しているつもりなんだがな」

 

No.02「う〜ん……顔に出やすいっていうか、普段の基準が『0』だから、『マイナス』に落ちると嫌でも目立っちゃうんじゃないですかね?」

 

No.777「そうなのか?」

 

No.02「ええ、そうなんです」

 

No.777「………」

 

 己の事は自分が一番よく理解しているつもりだった。

 だが、久方ぶりに現場へと復帰し、周囲の言葉に触れることでーー自分がいかに長く“孤独”という不器用な殻に閉じこもっていたのかを、No.777は改めて痛感させられるのだった。

 

獣牙『言葉を使わずに繋がりあえる展開(シチュ)なんて、んなモン、漫画の世界だけだっての』

 

獣牙『人はみんながみんな、読心術を使えるほど器用でなければ優れてるワケでもないんだから、言葉は使う時にちゃんと使わなきゃダメなの』

 

 刹那、脳裏に優しく響いたのは——二度と会うことも、触れることも叶わない最愛の妻の記憶。

 

 出会った当初、無愛想で寡黙な自分をよく揶揄いながら、彼女はそんな忠告を口にしていたものだ。

 当時の自分には響く事のなかったその言葉の意味が、今となっては胸を刺すほど痛いほどに理解できる。

 

No.02「No.777……?」

 

No.777「……いや、何でもない……」

 

 胸を刺す後悔と愛おしさをそっと押し殺し、No.777が気を取り直して作業の再開を命じようとしたーーまさにその時だった。

 

「失礼しますッ!!!たった今、別働隊より『No.10の協力を取り付けた』との緊急報告が入りましたッ!!!」」

 

 息を荒らして飛び込んできた通信員の叫びが、静まり返っていた捜査室全体に鳴り響く。

 

 その瞬間、絶望的な面持ちで作業を続けていたエージェントたちの目が一斉に見開かれ、室内は予想外の朗報に激しく騒ぎ立った。

 

ザワ…ザワ…

 

No.02「マ、マジかよ…!?あの超絶偏屈娘が、こんなに早く腰を上げた、だと…!?」

 

 まさかのNo.10参戦という報せに、誰もが驚愕を隠せない。

 確かに彼女の桁外れな頭脳に一縷の望みを託してはいた。だが、今回の件は本来の彼女の専門分野から外れている。まさかあの筋金入りの偏屈が、これほどアッサリと興味を示すなど、誰一人として夢にも思っていなかったのだ。

 

「……No.777、その件で……個別にお伝えしなければならないことが」

 

 通信員は立ち眩むほどの熱気に包まれる室内を避け、No.777を部屋の隅へと呼び寄せると、息をひそめて耳打ちした。

 その報告を聞いたNo.777は、先ほどまでの葛藤とはまた違う、心底うんざりしたような表情で深く、小さく息を吐き出す。

 

No.777「……ハァ……。分かった、『ソッチの要求を全て飲む』と伝えておいてくれ」

 

「ハッ!承知いたしましたッ!!!」

 

 No.777の了承を取り付けた通信員は素早く敬礼を交わすと、脱兎の如く部屋を後にした。

 

No.02「やりましたね、No.777! あの偏屈娘の手を借りれれば後はコッチのもんですよッ!!」

 

No.777「……そうだな」

 

No.02「?」

 

 息子の救出確率が一気に跳ね上がったというのに、No.777に歓喜の色は一切なかった。

 彼は言葉を飲み込み、何やら神妙な面持ちで数秒ほど深く思考を巡らせると、突如として射抜くような眼差しでNo.02と正面から向き合った。

 

No.02「え〜〜っと……?なんか……顔が怖いですよ……?」

 

No.777「……No.02よ。君の誠実な業務態度と、その有能さを見込んでーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No.777「ーーー君に、極秘のミッションを授ける」

 

♢♢♢

雷冥「ヘルズ…!!!」

 

シンフォニー「更にパワーを引き出せ…!マエストロ…!!」

 

 前半戦終了のホイッスルが間近に迫る、ピッチの中央にてーー。

 体表に禍々しい呪紋を浮かべた『魔王』と、四本の腕で縦横無尽に指揮棒(タクト)を振るう荘厳なる『指揮者』が、真っ向から対峙する。

 

雷冥「フィストォォォォォ!!!!!」

 

シンフォニー「ハーモニクスゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 『魔拳』と『調和』ーーー互いの誇る“最強”が真っ正面から激突し、領域全体を激震させる凄まじい衝撃波が爆散させる。

 

雷冥「グッ…!」

 

シンフォニー「クハハハッ!!!どうしたイナタマ・ライメイッ!?貴様の力は、その程度かッ!?」

 

 先ほど雷冥が覚えた『胸騒ぎ』は見事に的中していた。

 プレーが重なるごとにシンフォニーは化身の出力を『弐式』『参式』『四式』『伍式』へと異常な速度で跳ね上げ、ついに極致たる『零式』への到達を果たしていたのだ。

 

 “獅風迅雷・限界突破”を発動した雷冥はパワーこそ上回っているものの、シンフォニーは洗練されたテクニックを駆使し、そのパワーを完全に相殺する事で、両者の力関係を限りなく『0』にまで埋めていた。

 

シンフォニー「フハハハッ!!!高まるッ!!化身パワーがドンドン高まるぞッ!!!滾る力とともに、強く確信する……! 私はまだまだ、いくらでも強くなれるとなッ!!!」

 

雷冥(クッ…!完全に計算違いだ…!!まさか、此奴がココまでの成長を遂げるとは…!!)

 

 雷冥がここまで激しい苦戦を強いられている要因ーー。それはシンフォニーの成長速度が予想を遥かに超えていた事にもあるが、最大の理由は“獅風迅雷”による肉体の摩耗にあった。

 

 “獅風迅雷”の原理は、過度な負荷を身体へ与える事で、人間が生まれながらに持つ『限界点(リミッター)』を強制解除する事にある。

 

 しかし、その『限界点(リミッター)』とは本来、過剰な負荷から命を守るための安全装置に他ならない。

 爆発的な領域の力を引き出せる代償として、“獅風迅雷”は使用者の体力を恐ろしい速度で削り取っていく諸刃の剣なのだ。

 

雷冥(……いや、あるにはある……。シンフォニーですらも簡単には手が届かない、“限界突破(オーバーハンドレッド)”を超える形態が…!)

 

 『限界を超えただけがゴールにあらず、寧ろそこからが新たなスタートだ』ーーそれが、“獅風迅雷”を編み出した雷冥の曽祖父・稲魂雷牙が遺した言葉だった。

 

 その教えが示す通り、“限界突破”の先にはさらなる極致が存在する。そして雷冥自身、既にその答えの一端を掴みかけていた。

 

 それでも……

 

雷冥(だが、私はまだ“アレ”を完全に御しきれていない…!)

 

 ぶっつけ本番で賭けに出られるほど、今の状況に余裕などない。ここで倒れれば、打倒“GF”という目的すら露と消えるのだから。

 

シンフォニー「何を思案しているッ!! 戦う意思がないというなら、このまま追加点を奪い去るまでッ!!!」

 

雷冥「ーー!!! “獅風迅雷”ッ!!!」

 

 一瞬の思考の隙を突かれ、抜き去られそうになった瞬間ーーー雷冥は刹那の閃光のごとく“獅風迅雷”を脚だけに集中させて発動。

 爆発的な推進力でピッチを置き去りにし、間一髪でシンフォニーの猛進を阻んで見せた。

 

シンフォニー「ホゥ?まだ戦えるようだな?」

 

雷冥(……『やれる』『やれない』などと、くだらん迷いを抱えている場合か……!私がやらなければならないのだ……!!!)

 

 もはや“限界突破”の壁を打ち破る他に道はない。

 そう確信した雷冥は、自身がこの世で最も忌み嫌う『不確定要素』すらも呑み込む覚悟を完了させた。

 

雷冥「私がやらねばッ!誰がやるッ!!!」

 

シンフォニー「後退した…!?貴様ぁ…!!私との勝負を捨てる気かッ!?」

 

 思わぬ位置取りの変更に、シンフォニーが激怒の声を荒らげる。

 ——だが、雷冥に勝負を放棄するつもりなど微塵もなかった。

 

 デュプリを使った巧妙なポジション取りで外部からのパスルートを完全に遮断しつつ、巨漢の味方選手をシンフォニーの壁としてぶつけることで時間を稼ぐ。

 

 その全ては、“限界突破”のその先にある、未知の技術を発動させる為の捨て身の布石…。

 

雷冥「ハァァァァァ……!!!!!」

 

 雷冥が限界まで気を高めたーーーまさにその瞬間。

 あれほど荒々しく吹き荒れていた蒼炎のオーラが急速に揺らぎ、吸い込まれるように雷冥の体内へと収束していく。

 

 そして……。

 

シンフォニー(ーー!!? ライメイの存在感が……急激に消えていく……!?)

 

 一瞬の刻が流れるごとに、ピッチを支配していた『魔王』の絶大な圧迫感が嘘のように消え失せていく。

 次第に目の前に確かに立っているはずなのに、まるで底知れぬ無数の霧を相手にしているかのような、得体の知れない錯覚がシンフォニーを襲う。

 

雷冥「シンフォニーよ……。貴様は……“至高の領域”を見た事はあるか……!?」

 

 同時に、これまでの荒々しさとは真逆の異様な変化を解き放つ雷冥に、シンフォニーはさらなる死闘の予感と歓喜に身体を奮わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー()()

 

雷冥「グッ…!!?ガァァァァァァ!!!!!!」

 

 突如として、ピッチに雷冥の痛ましい悲鳴が轟く。

 虚空のごとく消え去っていたはずの存在感は、一瞬にして人間一人分の物へと戻り、雷冥は激痛のあまり立つ事すらままならず、その場へ崩れ落ち、無惨に泥を舐めるのであった。

 

シンフォニー「何が起こった……?」

 

 さらなる死闘の到来に胸を躍らせていたシンフォニーは、目の前で起きたあまりに呆気ない事態に思考が追いつかず、言葉を失ったまま倒れ伏す雷冥を見下ろしていた。

 

ーーなんてことはない。彼はただ、失敗したのだ。“限界突破”を超えた先にある、未知なる領域への到達に。

 

雷冥「グッ…!ガハッ…!!」

 

 無謀な挑戦の代償はあまりにも苛烈だった。

 雷冥の肉体が受けた凄惨な内部破壊を証明するかのように、魔王軍を構成していた4体のデュプリが、光の粒子となって次々と霧散していった。

 

シンフォニー「……まさか、自滅か……?」

 

 ようやく雷冥の身に起きた惨状を理解したシンフォニー。その唖然とした表情は、見る見るうちに苛烈な憤怒へと塗り替えられていく。

 

シンフォニー「ふざっけるなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 怒りが頂点を突破し、先ほどまでとは比べものにならない程の激しい怒号がピッチを激震させる。

 

シンフォニー「私は……我らはッ! 貴様への復讐を遂げる為に、一年もの血吐く地獄の鍛錬を耐え抜いてきたのだぞッ!!? それなのに……! こんな無残な自壊で幕引きなど……認められるかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

ピッ!ピッー!!!

 

 激情に身を任せ、締め殺さんばかりにシンフォニーが雷冥へ歩み寄った瞬間、空間全体に前半戦終了を告げるホイッスルが甲高く響き渡った。

 

グリム『前半戦終了ーーッ!! コレほどの激戦でありながら、互いに譲らぬ攻防の末に1対1の同点! 勝負の行方は後半戦へ持ち越されましたーーッ!!!』

 

 普段と変わらぬグリムの無邪気な実況がスタジアムに木霊する。……が、その言葉は明らかに、【王魔雷帝】を襲ったアクシデントを無視していた。

 

シンフォニー「後半戦だと? 貴様の目は節穴かッ! サッカーは11人の選手が揃っていなければ試合続行など不可能! 周りをよく見てみろ!どう数えてもピッチの上には7人の選手しか居ないだろうッ!!!」

 

 シンフォニーの怒号の通り、ピッチ上に残されていたのは、膝をつき皮膚の下から血が滲み出ている雷冥と、僅か6人のデュプリ達……。

 4体ものデュプリの消滅は、あまりにも絶望的な戦力ダウンを意味していた。崩壊寸前の惨状の中、朱い血を浮かべた指先が、力なく芝を掴み、呼吸すら途切れ途切れの『魔王』が、激痛に全身を震わせながら、ゆっくりと顔を上げた。

 

雷冥「まだ……!!終わっとらんぞ……!!!」

 

シンフォニー「終わってないだと…!!馬鹿も休み休み言えッ!!!人数も足りず、貴様は既に満身創痍ッ!!もはや、貴様らに勝つ見込みなど無いだろうッ!!!」

 

雷冥「ルール上……試合成立の下限は……7人まで……だ……!私がピッチの上に立っている限り……!試合は成立する……!!!」

 

 激痛に耐えながらも、猛然と立ち上がる雷冥。だがーー胸に燃える誇り高き闘志と、現実の肉体が耐えうる限界はまったくの別物だった。

 

 僅か15分のハーフタイムを挟んだところで、この重症の身体が後半30分を戦い抜けるまでに回復するはずがない。

 それどころか後半開始から10分も持たず、シンフォニーの手を借りずとも膝から崩れ落ちることは目に見えていた。

 

 まさに絶対絶命の絶望。アドレナリンの過剰分泌で紛らわせているものの、雷冥自身、脳裏の片隅では『敗北』の二文字が残酷にチラついているのを拭いきれずにいた。

 

ーーもはや、万事休すか。

 最悪の思考が脳裏を過り、諦めの影が射し込んだ、まさにその瞬間ーーー

 

???「いるよっ!!ライメイの仲間はまだ……ここにっ!!!」

 

ーー絶望の底に、救世主は現れた。

 

雷冥「そ、その声は……!?」

 

 空間を突き抜けて響いたその声に、雷冥は息を飲んだ。

 忘れる筈がない。それどころか、過酷な己の使命にこれ以上巻き込まぬよう、自らが敢えて冷たく突き放した筈のーーかけがえのない者達の声だったのだから。

 

???「…命令を破ってしまい申し訳ありません、マスター…。けど、僕は……僕たちは……!どうしても貴方を見捨てることなんてできないんですッ!!!」

 

???「フワ〜、眠っむ……。ねェ、マスター?コレって、あとから代休貰えるよね?じゃないと……割に合わないから」

 

???「ホォ〜?コイツが“楽園(エデン)”最強と名高い、シンフォニーの面かァ!!中々、親近感の湧くイカれた顔してんじゃねェかッ!!!」

 

 続々とピッチへ足を踏み入れる、4人の救世主たち。

 その中央を歩く一人の少年が、いたずらっぽく口角を吊り上げ、泥にまみれた雷冥を見下ろす。

 

???「待たせちゃってごめんね、ライメイ。…けど、結構いい感じのタイミングだったでしょ?」

 

雷冥「何故だ…!何故、貴様らがココに居る…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷冥「バード…!キャット…!イダテン…!ジャック…!」

 

 冷徹に突き放したはずの絆が、今、絶望の淵に立つ雷冥の背中を支えるべく、血塗れた戦場へと集結する。

 

 予期せぬ乱入者たちの登場と、彼らが纏う尋常ならざる気迫に、先ほどまで怒号を上げていたシンフォニー…そして、【サンダーゲート】の選手すらも息を飲み、ピッチの空気は絶望から一転して、極限の緊張感へと塗り替えられた。

 

 1対1の同点で迎える、運命の後半戦ーー。“魔王”が紡いできた絆による真の戦い(第二ラウンド)が、ここから始まる。




なんか…初期プロじゃ、シンフォニーはもっと大人しいキャラだったけど、気づいたらデザーム様みたいになっちゃった。

〜オリ技紹介〜
♦︎魔王=(デス)=ロード
属性:林
分類:ドリブル
使用者:雷冥
進化系統:究極奥義
類似モーション:風穴ドライブ
≪概要≫
魔王の怒りが蒼き暴風となって吹き荒れ、目の前の障害を粉砕し、文字通り道を切り開く。
技名の由来は、デュエマの『アビスベル=(デス)=ロード』から。

最近、新章から台本形式をやめて普通の形式に戻そうかなーって考え始めたんで、参考がてらにアンケートを取ります。投票期間は現在連載中のスピンオフ完結までを予定してます。

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