活動を続ける度に、質の良い創作物を世に送り出すには、日々勉強なんだなぁと思い知らされる毎日です。
雷冥「何故だ…!何故、貴様らがココに…!?」
雷冥は目の前の光景が理解できなかった。
過酷な宿命から遠ざけ、突き放した筈の友たちが、死すら覚悟してこの戦場へと足を踏み入れた理由が。
雷冥『・・・前々から実に疑問だったのです。どうして恐竜の行き着いた変化は“鳥”であったのかが』
雷冥にとって『不合理』とは、この世で最も忌み嫌うべき最大にして最悪の敵だ。
『不合理』によって、最愛の母を奪われーーー
『不合理』によって、実の父との間に修復不可能な断絶が生まれーーー
そして今日……らしくもなく自ら選んでしまった『不合理』によって、人生最大の窮地に陥っている。
いつだって『不合理』は大切なものを奪い去り、最悪の悲劇ばかりを齎してきた。
……だが、目の前に立つ『友』たちは違った。
感情という
理屈も根拠も破り捨てるその『不合理』が、彼の明晰な頭脳をしてもどうしても理解できなかったのだ。
イダテン「…やっぱり、そうなっちゃうよね…。でも、ごめん、ライメイ。きみの“覚悟”を見たからこそ、どうしてジッとしておけなかったんだ」
雷冥「理解できん……!! これは命を懸けた戦争なのだぞッ!? だからこそ……私は貴様らを置いて行ったというのに……!!!」
雷冥は激昂する。覚悟を以て死地に足を踏み入れた友たちに向かって。
彼はただ、友たちに生きていて欲しかった。理不尽な悪意の犠牲などになって欲しくなかった。
だからこそ孤独を引き受けてでも、友を切り捨てたのだ。自分一人だけの命を散らせば、少なくとも彼らの未来だけは守られると信じていたから。
イダテン「ーーなよ…!!!」
雷冥「・・・何だと?」
イダテン「きみの価値観だけで、おれたちの覚悟の限界を決めるなよっ!!!!!」
雷冥「ッ……!!」
初めて耳にするイダテンの怒号に、雷冥は息を飲み、完全に言葉を失った。
曽祖父譲りの圧倒的な弁舌を誇り、あらゆる議論で他者をねじ伏せてきた雷冥は、今この瞬間、人生で初めて、理屈を超えた青臭い『感情』だけによる言葉によって完膚なきまでに論破されたのだ。
イダテン「きみが……ライメイがどう思ってるかはわからない…!けど…!!おれにとって、ライメイは
雷冥「私が……友達……だと……?」
イダテン「ああ、そうさっ!!!だから、おれは…おれたちはここに来たっ!!友達を助けるために……命をかけてなにが悪いっていうんだっ!!?」
その瞬間、雷冥の脳裏を一つの思考が貫くーーー
雷冥(
雷冥の前に立ちはだかるイダテンの眼光は、間違いなく“あの人”と全く同じ光を宿していた。
獣牙『コレだけは覚えときな、雷冥ッ! 人に命は一つしかないけどね…!一つしかない命にも使い所ってのはあんのッ!!私にとって……それが“今”ッ!!!』
ーーそう。忘れもしない現実時間に換算して数年前、燃え盛る業火と耳を塞ぎたくなる悲鳴が渦巻く地獄へと、己の命を顧みずに飛び込んでいった最愛の人……稲魂雷冥の母・稲魂獣牙の瞳に映っていた光と。
雷冥(・・・そうか。そうだったのですね……ママ上……)
刹那、脳内で朧げに浮かんでいた未完成のパズルに、次々と解答のピースが嵌まり込んでいく。長年、彼の心を苛み続けていた『不合理』という名の謎が、遂にそのベールを脱ぎ捨てた。
命を懸けるべき“今”のために、理屈を超えて立ち上がるーー。
それこそが母の遺した教えであり、『稲魂』を稲魂たらしめる絶対の象徴なのだ。
雷冥「ククク…!フハハハハハッッッ!!!!!」
『不合理』を理性ではなく“魂”で理解した雷冥は、気付けば全身を苛む凄惨な激痛すらも置き去りにし、ピッチ全体を揺るがす高笑いを響かせていた。
イダテン「ライメイ……?」
雷冥「・・・イダテンよ……」
イダテン「う、うん……」
雷冥「……この試合、絶対に勝つぞ」
イダテン「ーー!!! ああっ!!絶対に勝って、“GF”の野望を止めようっ!!!」
雷冥「フン…未熟者が調子に乗りおって……。・・・だが、その心意気や良しッ!!!」
パシッ!
遂に葛藤の果てに『真実』へと行き着き、その瞳に苛烈な覇気を再び宿した雷冥は、差し出されたイダテンの手を強く握り返すと、逆境をねじ伏せるように力強く立ち上がった。
雷冥「シンフォニーッ!只今合流した4名を追加選手として登録するッ!異論は無いなッ!!」
シンフォニー「フンッ……好きにするがいいッ!!尤も……雑魚がいくら群れたところで、我々の勝利が揺らぐ事はなど万に一つもないッ!!!」
何はともあれ、没収試合の瀬戸際だったチームに助っ人たちが登録され、【王魔雷帝】は土壇場で息を吹き返した。
……しかし、ここでイダテンはある致命的な違和感に気付く。
イダテン「・・・ん?4人……?今、まともに戦えるのって、おれとジャックだけだよね…?残りの2人って、もしかしてワンダバードとワンダキャットのこと…?」
ジャック「ケッ、何言ってやがるんだ、バカイダテン。常識的に考えてみやがれ。こんな掌サイズの烏と、ボール大の子猫が、ドリブルなんざ出来る訳ねェだろうが」
イダテン「そりゃそうだよね〜っ!」
雷冥「………」
イダテン「……ねぇ、……冗談だよね……?」
沈黙を守っていた雷冥は、思考を巡らせた末に意を決すると、肩に乗る二匹の
雷冥「……我が眷属ワンダバード、そしてもう一匹の眷属ワンダキャットよ。
ワンダバード「はいッ!!!尊敬する僕のマスター、そして平和な未来のために…!この身を捧げる覚悟ですッ!!!・・・本当はちょっぴり怖いけど……」
ワンダキャット「別に死ぬワケでもないんだし
雷冥「フッ…当然だ!」
主人の承諾を得た二匹の眷属は、おもむろに雷冥の身体から離れ、地面へと降り立つ。
ワンダバード「よーし!!いくよ、キャット!!いっ、せーのーで!!!」
ワンダバード「大変身!!!」
ワンダキャット「・・・」
ワンダバード「こーゆー時くらい、空気を読めっての〜!!!」
二匹が掛け声を上げた瞬間、ピッチ全体を塗りつぶす激しい閃光が周囲を包み込み、イダテンとジャックは思わず目元を腕で庇う。
イダテン「うわっ!?眩し…っ!?」
ジャック「何が起こりやがった…!?」
突如として巻き起こった怪現象に事態が飲み込めない二人。
だが、この圧倒的な閃光は、視界が明けた先に待つ『奇跡』の序章に過ぎなかった。
???「おお…!コレが二本脚で地面を踏み締める感覚…! 空を飛んでいる時には、全く違う感覚だァ…!!」
???「フーン。コレがアタシのコピー元の肉体?中々いい面してんじゃん。気に入った」
光が収まったピッチを見つめ、イダテンとジャックは目を見開いて絶句する。
彼らの目線にあったのは、ほんの数秒前まで、シマエナガを思わせる漆黒の子鳥と、二本の尾を持つ小さな子猫がいた筈の場所ーーしかし、そこに立っていたのは、それらとは似ても似つかない黒髪の少年と、白金髪の少女だったのだから。
ジャック「鳥と猫が…!」
イダテン「おれたちと同い年くらいの男の子と女の子になっちゃった〜〜!?!?!?」
ベンチに満ちた混乱の渦を静めるように、黒髪の少年はニコッと爽やかな笑みを浮かべると、二人の前で丁寧にお辞儀をする。
???「この姿では初めましてですね、お二人とも!改めて自己紹介させていただきますッ!!僕の名前は
???「・・・アタシの名前は
それぞれ『バード』と『キャット』と名乗った少年少女…。
別世界の住民であるイダテンやジャックたちは現時点で知る由もないことだが……奇しくもその容姿は、雷冥の先祖ーー『
雷冥「……やはりそっくりだな。以前、資料で閲覧した在りし日のお祖父様と、大叔母様に……」
イダテン「え?どゆこと?」
バード「それはですね…。元々、僕たちはマスターのお祖父様と大叔母様ーー稲魂雷紋様と稲魂銀牙様の人格・記憶データから作られたサポートアンドロイドなんです」
キャット「人格のベースが中学生時代のオリジナルに合わせてあるから、
イダテン「へぇ〜!」
これでようやく、ピッチ上の戦力自体は揃った。
だが、依然として最大の問題として立ちはだかるのは、雷冥が負ったあまりにも深刻なダメージだ。
いくら強い意志で気力を取り戻そうと、その肉体を蝕む凄惨な激痛と疲労は、到底無視できるものではない。
キャット「…で?なんでマスターは、そんなにボロボロになってんの?いくらアタシたちが居なかったっていっても、不覚を取るような相手ではないでしょ?」
雷冥「……この際、包み隠さず話そう。……想像を遥かに超えるシンフォニーの急成長に焦りを覚えた私は、“獅風迅雷・限界突破”を超えた領域の発動を試みた……が、結果はお察しの通りだ」
バード「……それって“獅風迅雷・
『獅風迅雷・
その本質は、『無我の境地』や『明鏡止水』と形容される“ゾーン”の領域。
……だが、発動のためには「肉体は限界まで追い詰められながらも、精神は極限まで澄み渡っている」という、相反する極限状態を同時に成立させねばならない。
今回の雷冥のように、心の昂りが不十分なまま挑めば、反動で自壊を招く諸刃の剣でもあった。
ジャック「ケッ、要するに、
雷冥「……やかましい」
バード「アハハ…。知的に見えて、たまに無茶をするのがマスターですからね…。僕たちはもう慣れっこですよ」
キャット「だから、お兄はこーゆー時のために、ちゃんと対策をしてたり」
ビュン!
そう言い放つや否や、キャットは兄の頭髪ーー羽ばたくカラスを思わせる黒髪をガサゴソと漁り、“何か”を掴み出すと、一切の躊躇なく雷冥へ投げつけた。
バード「ちょっ…!キャット…!」
雷冥「コレは…!」
キャットから投げ渡された“何か”の正体は、包み紙に包まれた一粒の飴玉だった。
その包装紙には、力強い英字でこう印字されている。
ーー『GUTS CANDY』と。
ジャック「んだ、それ?」
キャット「『ガッツキャンディー』……簡単に言えば、飴玉の形と味をした応急処置用の医療用具。中に色んな薬の成分と栄養がギッシリ詰まってるから、マスターの回復力なら、全快とはいかなくても、後半戦を戦い抜けるくらいには回復する筈」
雷冥「…感謝するキャット」
バード「用意してたのは僕なのに〜!」
イダテン「まあまあ…」
雷冥は素早く包み紙を破ると、取り出した飴玉を口に放り込み、一瞬で噛み砕いて飲み下した。
雷冥「ハァッ!!!!!」
体内に駆け巡る超濃縮栄養と、雷冥が持つ驚異的な自己治癒力が瞬時に融合する。
僅かに動くだけで全身を苛んでいた激痛がみるみる和らぎ、皮膚の下で鬱血していた痛々しい赤黒い痕までもが消去されていく。
立ち昇る凄まじいオーラとともに、瀕死の『魔王』は再び全身に溢れんばかりの覇気を滾らせ、本来の威厳を取り戻した。
キャット「お〜、マスター、完全復活〜」
イダテン「・・・ねぇ。そんな便利なものがあるんなら、なんでこの間の試合で使わなかったの…?」
バード「ガッツキャンディーは高いし、万が一に備えて一つだけ隠し持っていた物なんで、ストックが無かったんですよ…」
雷冥ほどの資金力を以てしても、『ガッツキャンディー』を何個も常備することはそう叶わない。
そもそも、異世界の巨大組織に拐われて命懸けの脱出劇を演じるなど、宝くじの一等を引き当てるよりも低い確率なのだ。急な過酷連戦に対応しきれなかったバードを責めるのは、流石に酷というものだろう。
ピッー!
“魔王”の復活に応えるかのように、ハーフタイムの終了を告げる笛の音がスタジアムに響き渡った。
その音を合図に、雷冥は軽く身体を解し、関節を鳴らすと、鋭い視線をピッチへと向けた。
雷冥「……最後の確認だ。この白線を踏み越えた先は、生の保証など存在しない過酷な死地だ……。この戦いに……真の意味で命を懸ける覚悟はあるか?」
イダテン「もちろんっ!おれたちの覚悟……【サンダーゲート】にもういっぺん、見せてやろうよっ!!!」
ジャック「“
バード「勝ちましょう…!この世界の“明日”を迎えるために…!」
キャット「…まっ、ココまで来たら、もうやれるだけやるしかないってコト」
力強い返答を返す仲間たちを見つめ、雷冥はこの問いかけがいかに愚問であったかを痛感する。
雷冥「……良しッ!!行くぞッ!!!」
『絆』と『魔』の真価が重なり合うーー新生魔王軍による反撃の火蓋が、今、切って落とされた……!
本当は後半戦に突入する予定でしたが、キリがいいし、色々あって執筆のモチベが著しく下がってるので、今回はここで終わります。次回もしくは次次回くらいで【強化サンダーゲート】戦決着です。
〜オリキャラ紹介〜
■ワンダバード/バード
性別:♂
属性:火
ポジション:MF
≪概要≫
雷冥の祖父・稲魂雷紋の人格と記憶を元に生み出されたサポートロイド1号機。気が弱いのが玉にキズだが、オリジナル由来の高い分析力でチーム全体をサポートする。
■ワンダキャット/キャット
性別:♀
属性:風
ポジション:FW
≪概要≫
雷冥の大叔母・稲魂銀牙の人格と記憶を元に生み出されたサポートロイド2号機。非常にマイペースだが、オリジナル由来の高いサッカーセンスでチームを勝利に導く。
最近、新章から台本形式をやめて普通の形式に戻そうかなーって考え始めたんで、参考がてらにアンケートを取ります。投票期間は現在連載中のスピンオフ完結までを予定してます。
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