ちなみに【サンダーゲート】達は“GF”の最終計画も知りませんでした。和解後の作戦会議の際に、雷冥から知らされてます。
シンフォニー「……失礼いたします、我が神よ。仰せの通り、イナタマ・ライメイの捕獲に成功いたしました」
世界の絶対支配者が鎮座する、冷徹な静寂に満ちた“玉座の間”ーーー。
全身に傷を負いながらも“神”からの使命を見事完遂したシンフォニーの、低く重厚な報告が室内に響き渡る。
その一歩後ろに部下を引き連れ、中央には重厚な拘束具で両手と自由を奪われた雷冥が、引き立てられていた。
“GF”「ご苦労であった、シンフォニーよ。……だが、その傷と完遂に掛かった時間を見るに……流石の貴様でも相当に手を焼いたようだな」
シンフォニー「……申し訳ございません」
一見すれば労いとも取れる言葉を投げかける“GF”。だが、その機械音に籠められているのは、絶対の強者たる筈の精鋭が、たった一人の脱獄囚に苦戦を強いられた事に対する無機質な叱責であった。
言葉の端々に滲む冷血さーーーそれだけで、たとえ手塩にかけて育んだ養子であれど、“GF”にとっては都合のいい使い捨ての駒に過ぎないという事実が痛烈に浮き彫りとなる。
イダテン「酷いな人だな、“GF”って……。シンフォニーだって死にかけるくらい頑張ったんだから、そこまで言わなくてもいいじゃん……」(ヒソッ…)
バード「あ、あんまり動かないでくださいイダテン様……ッ!この姿で浮遊機能を使うのは慣れてないんですから……」(ヒソッ…)
ーーー“玉座の間”の外。
雷冥の作戦通り、人間態となったバードに背負われ、ステンドグラス越しに内部のやり取りを窺っていたイダテンは、あまりに冷酷な“GF”の態度に静かな怒りを燃やしていた。
表情を遮る無機質な鉄仮面と、全身を強固に包み込む鋼鉄の鎧も相まって、眼下に佇む“GF”は血も涙もない冷血な機械そのものに映る。
これならば、無法でありながらも無法者なりの秩序と義理を持つ“
“GF”「さて……無事に任務を遂行した事
シンフォニー「……お言葉ですが、我らが刃を交えたイナタマ・ライメイの強さは尋常ではありませんでした。デュプリで作られた偽者である点はまずあり得ないかと……」
感情を極限まで削ぎ落とし、淡々と反論を展開するシンフォニー。だがその内心では、冷や汗が流れる瀬戸際までの焦りを覚えていた。
“GF”の危惧通り、今目の前に拘束されているのは雷冥の本体ではなく、数時間前と同じく本体を精巧に模した『デュプリ』なのだから。
神が追い求める肝心の“本体”はといえばーーー
雷冥「……いよいよですね。手筈通り、正体がバレた瞬間に、ステンドグラスを破って侵入しますよ」
バード『ラジャー!』
キャット『りょーかい』
“GF”が座る玉座の真後ろ、高窓の闇に潜んでいた雷冥は、インカムを使って
バードはイダテンを、キャットはジャックを背負って突入。偽物を見破り動揺した“GF”へ一斉に強襲をかけ、隙が生じた瞬間に、雷冥がシンフォニーから託された『超能力者用拘束具』を投擲して一気に身柄を抑え込む。
これこそが、雷冥とシンフォニーが共に組み上げた『“GF”捕獲作戦』であった。
“GF”「……小癪な」
シンフォニー「……は?」
何かを察した“GF”が勢いよく立ち上がり、眼前で縛につく雷冥へ向けてサイコパワーを叩きつける。
直後、拘束されていた雷冥の身体はあえなく崩れ去り、眩い光の粒子となって空間へ霧散した。
“GF”「貴様までもか……!!!貴様までも、“アヤツ”と同じように私を裏切るというのか……!!!」
シンフォニーは先ほど「偽者などあり得ない」と言い切った。
彼程の男がデュプリを見誤るような凡ミスを犯す筈がない。すなわち、自らに嘘をつき、偽物を引き立てて来たのだ。
ーーーそれは明確な『神への叛逆』。
鉄仮面の奥で両目を血走らせた“GF”から膨れ上がる殺意と重圧が【サンダーゲート】の面々へ襲い掛かる。
雷冥「今ですッ!!!」
刹那、三方向のステンドグラスが一斉に粉砕された。
激しい硝子片の雨を押し裂き、高窓から五人の少年少女が躍り出る。
ジャック「“それ”の使い方は分かってるかァ、イダテンッ!!指先にある引き金を引くんだぜッ!!!」
イダテン「おれはそこまでバカじゃないよっ!!ファイヤァァァァァ!!!!!」
イダテンの両手に握られた銃火器の引き金が引かれると、銃口から大量の煙が爆発的に噴出され、“玉座の間”は瞬く間に高密度の純白の煙に包み込まれた。
イダテン「ぃよしっ!第一作戦完了っ!」
作戦通り、“GF”の隙を突いて視界を完全に遮断した……。あとは煙に紛れ、本命である雷冥が超能力者用拘束具で“GF”を捕獲するだけーーー。
その、筈であった……
雷冥「ガッ!?」
煙の奥から聞こえたのは、あろうことか雷冥の苦悶の悲鳴。
“GF”「
パチンッ!
指を鳴らす軽いスナップ音が響き渡った刹那、猛烈な突風が吹き荒れ、立ち込めていた煙が一瞬で霧散する。
視界が晴れたその先に広がっていたのはーーー雷冥の首元を容赦なく鷲掴みにし、宙に持ち上げる“GF”の姿であった……。
“GF”「大方、
ブォンッ!!!
ミスティープ「ガハッ……!?」
シンフォニー「ーーッ!!! ま、マズい……!!!」
“GF”はサイコパワーを発動させると、ミスティープの首元を不可視の力で圧迫し、雷冥と同じく宙へともちあげる。
極限の緊張感の中で耐えていたシンフォニーの額から、滝のような冷や汗が吹き出した。明確な焦燥を顔に浮かべ、すぐさまミスティープの救出へと飛び出そうとするがーーー
“GF”「何が“マズい”というのだ?
シンフォニー「ヌオッ!?」
駆け出そうとしたシンフォニーの全身を強烈な重力が襲う。彼もまた“GF”の
“GF”「貴様らの作戦はこうだったのだろう?
“GF”が軽く手に力を込めると、掴まれていた雷冥の首が容易く握り潰される。
するとその肉体はまたしても眩い光の粒子となって崩壊しーーー今度はミスティープと
イダテン「ヤバい……!バレちゃった……!」
その中から現れたのは……他でもない、“稲魂雷冥”本人の姿であった……。
雷冥「まさか……!全て見通されていたというのか……!?」
“GF”「愚問だな。私を誰だと思っている?まもなく、全ての時空を支配する“神”となる者であるぞ?」
第一、第二の策が破られたばかりか、敵の裏の裏をかいた渾身の第三の策までもがことごとく不発に終わってしまった。
もはや、雷冥の手元に遺された
“GF”は叛逆者達の絶望を更に煽るように全てのサイコパワーを解放する。
その場に集結していた革命軍の面々は、例外なく不可視の質量によって床へ叩きつけられ、指一本動かすことすら叶わなくなった。
“GF”「実に愚かだな、稲魂雷冥よ。私の計画を果たす上で、貴様自身が重要な
雷冥「巫山戯るな……!私が居らずとも、貴様はこの世界の住人を使って、“マインドイーター”と契約していただろう……!私が逃げ延びたところで、計画が僅かに後回しになるだけだ……!」
“GF”「フム……。それもそうか。ならば、お望み通り、今ここで儀式を完遂させてやろう……!!」
“GF”が左手を天高く掲げると、轟音とともに“玉座の間”の巨大な天井が左右へと開き始める。
露わになった頭上に広がるのは、数時間前と変わらぬ狂気の計画ーーー空を容赦なく引き裂く、禍々しい『時空の歪み』であった。
シンフォニー「これが……!“GF”の計画の全貌……!我々は……こんな恐ろしい悪事に加担させられていたのか……!?」
“GF”「貴様も随分言うようになったではないか、シンフォニーよ?……だが、悲しいかな。貴様の認識は正しくない。これは“偉大なる一歩”なのだよ」
ジャック「偉大なる一歩だとォ……!?ふざけんじゃねェッ!!!どう見ても、世界が崩壊する一歩手前じゃねェかッ!!!」
“GF”「黙っていろ、“
ジャック「ムグッ!?」
不可視の圧力を叩きつけ、牙を剥くジャックの口を強引に塞いだ“GF”は、悦に入った様子で再び言葉を紡ぐ。
“GF”「分かるかね、この至高の興奮が?人類が初めて“火”を手に入れた時のように……。人類が初めて“月”に足を踏み入れた時ように……!これはそれらと同等の、いやそれを遥かに超越する偉業だ。私は“神”の力を得た人間の第一号となる……!!!」
常人……いや、人類の理解を超絶した狂気を嬉々として語るその姿に、もはや【サンダーゲート】の面々が神と仰ぎ、尊敬の念を抱いていた『偉大なる指導者』の面影など微塵も残されていなかった。
シンフォニー「狂っている……!貴方は……狂っている……!!!」
“GF”「……違うな。私は至って“正常”だ。寧ろ、“異常”なのは私を否定する貴様らの方だろう?何せ、まもなく全ての世界の基準は、私の価値観の元に統一されるのだからなッ!!!」
その直後ーーー天を撒く『時空の歪み』の深淵より、禍々しい薄紅色に輝く鎖が射出された。
狂暴な音を立てて解き放たれた鎖は、雷冥の全身を容赦なく締め上げ、今度こそ逃れ得ぬ『生贄』として完全に囚われた。
雷冥「ヌグッ!?」
“GF”「機は熟した……!さあ、“マインドイーター”よッ!!稲魂雷冥を媒介に顕現するがいいッ!!そして……私に“神”の力を与えよッ!!!そうする事で……!私の“夢”は……!!私の“
バード「“復讐”……!?ふざけるな……!!一体、世界が貴方に何をしたっていうんですか……!?」
“GF”「ククク……!私は長きに渡った旅路の末に悟ったのだよ……!
キャット「なにそれ……!言ってる意味が全然解んない……!」
“GF”「機械仕掛けの畜生如きに理解して貰おうとは思っていないッ!!!“マインドイーター”から得た力を使い、全時空にサッカーという概念を刻み付ける事で……私はサッカーの“神”として君臨するッ!!!」
“GF”の真の目的を耳にした者達は、ただただ言葉を失っていた。
世界を崩壊させ、再構築した先に待っているのが……あまりにも個人的で、あまりにも歪んだ『狂気の目的』であったことに、その場に居た全員が息を呑み、絶句するしかなかったのだ。
雷冥(“私の父”……。“憎悪”……“愛情”……。そして……“サッカー”……)
ーーーだが、その中で雷冥だけは違っていた。
薄紅色の鎖に締め上げられ、じわじわと意識が遠のいていく渦中。彼の脳裏を支配していたのは、“GF”が放った言葉の中に散りばめられていた、奴の人生を形造ったであろう決定的な幾つもの
……ハッキリと言って、今更この謎を解き明かしたところで、打開策が生まれるわけでも状況が好転するかすら不明だ。
それでも雷冥は、脳裏に点在する形容し難い思考の糸を、解き明かさずにはいられなかったのだ。
雷冥「ーーーククク……!!!」
思考を巡らせること数秒。すべての点と点が繋がり、真実に到達した瞬間ーーー雷冥は腹の底から湧き上がる笑いを抑えきれずにいた。
“GF”「また
雷冥「違うなァ……!考えてみれば、答えはあまりにも明白だった……!!何せ、ヒントは至る所にあったのだからなァ……!!!」
真理の深淵へと足を踏み入れたことで、雷冥の表面を覆っていた“理性の仮面”が脆くも崩れ去る。
内に秘められた戦闘形態ーーー最凶たる“魔王”の人格が、圧倒的な威圧感と共に表出する。
雷冥「私は知っているぞ……!私の故郷の時代……そこから遡る事、80年前に存在した“ある男”の物語を……!!!」
“GF”「………」
雷門イレブンが伝説を作り上げた時代から、80年後の未来の世にまで語り継がれる“ある男”の壮絶なる物語ーーー。
それは、愚かな大衆の身勝手によって全てを失った“被害者”であり、同時に罪なき人々の命を奪い続けた最低最悪の“加害者”でもある男の軌跡。
雷冥「その男は……長い間……サッカーを“憎む”事でしか愛する事が出来なかった……!」
かつてその男は、“完璧”と謳われた父を、そして父が愛したサッカーを心の底から愛していた。
だが……身勝手な大衆の欲望によって父の尊厳は踏みにじられ、男は文字通り“全て”を奪われた。
だからこそ男は怨んだ。落ちぶれた哀れな“父”を。優しかった父を壊した身勝手な“大衆”を。そして……大切なものをすべて奪い去った“サッカー”そのものを。
数々の裏切りを経て支配者となった男の復讐は苛烈を極めた。
あらゆる権力を貪り、自ら率いるチームに無敗の“常勝”を齎す事で、大衆の欲望を歪んだ形で満たし、サッカー界そのものを闇から掌握していったのだ。
雷冥「ずっと“憎む”事でしか“愛せない”人生……!だが、イタリアのある少年と少女の出会いを経て……最後に男はようやく本当の意味でサッカーを愛せるようになった筈だった……!!」
長きに渡り“復讐”の呪縛に囚われ続けた男の半生。
だが、その暗闇を打ち破ったのは……世界という大舞台で出会った、一人の少年と少女であった。
自らと同じ境遇を背負う少年は、どれほど突き放されようと諦めず、その心に寄り添い続けた。そしてーーー閃光の大剣を携え、男を永遠の闇から救い出したのだ。
しかし……。
雷冥「……だが、男は過去の罪を精算しようとしたその直後……!黒幕の手によって謀殺された……」
シンフォニー「どういう事だ、ライメイ……!話が見えてこないぞ……!!!」
雷冥「だが……男は生きていた……!地獄とも呼べるような場所で……!そして……地球の危機の前、再び宿敵達との前に姿を現した……!!!」
闇の陰謀によって命を散らしたかに見えた男は、土壇場で生き延びていた。
だが、生涯で積み上げてきた罪の因果が消える事などない。死を免れた男を待ち受けていたのは、因果応報という名の凄絶な報いであった。
禁断の投薬治療ーーー身を苛む地獄の苦痛と引き換えに、命と人知を超えた力を手に入れた男。
やがて宇宙規模の脅威が地球へ迫った時、男は再びかつての
雷冥「……しかし、その後、男はイナズマイレブン達の前から姿を消したという……!!!」
バード「まさか……!その“男”って……!?」
雷冥「それが貴様なのだろう……?グランドファーザー……。いや……!
その男ーーー『影山零治』こそが“GF”の正体ならば、これまで起きた狂気の全てに説明が付く。
本来、この時空に存在する筈のないイナズマイレブン達のデータ。サッカーという存在に対する異常なまでの執着。そして、たった一度の敗北すら許さぬ苛烈な実力至上主義ーーーその全てが。
イダテン「カゲヤマ……!」
ジャック「レイジ……!?」
シンフォニー「それが……“GF”の真の名……なのか……!?」
“GF”「………」
静寂が“玉座の間”を支配する。
遂に雷冥が辿り着き、突き付けた“真実”ーーーそれに対する“GF”の答えは、あまりにも冷ややかなものだった。
“GF”「……私にとって、貴様という生贄をこの世界に連れて来る事は非常にリスクの高い行為であった。時空管理局の目を嫌でも引く事になるからな。だからこそ、以前捉えた
“肯定”とも“否定”とも取れぬ不気味な答えで場を煙に巻こうとしていた“GF”。
だがーーーふと何かを思い直したように静かに言葉を区切ると、その白銀の鉄仮面へとゆっくり手に取った。
“GF”「……そう考えると、
“GF”は言葉の終わりとともに仮面へ手をかけると、一切の躊躇なく床へ向けて投げ捨てた。
ジャック「グランドファーザーが……!?」
シンフォニー「仮面を……!!」
イダテン「脱いだ……っ!?」
ーーーカラン。コロン。
静寂に包まれた祭壇に、虚しく軽い金属音が響き渡る。
かつて“GF”ーーー
???「・・・仮面を脱ぐのは、いつ以来か……。あまりに永い時を刻みすぎた故、忘れてしまったよ」
顔の右半分を覆うほど痛々しく刻まれた巨大な古傷、そして漆黒のサングラスを装着した、鋭利な存在感を放つ白髪の老人がそこにはいた。
バード「アレが……!“GF”の素顔……!!」
???「……貴様らと素顔で対面するのは、これが初めてという事になるな。冥土の土産……そして、僅かなヒントから私の正体を暴いた褒美だ。改めて自己紹介をしよう。私の名は……
影山零治だ」
白銀の仮面の下から現れた“GF”の正体ーーーそれは、かつて数々の陰謀でサッカー界を恐怖に陥れた、イナズマイレブン最大の宿敵・影山零治その人であった……。
はい、遂に判明した“GF”の正体は、黒岩流星こと影山零治その人でした〜。
・・・まあ、サッカーに異常な執着心があったり、シンフォニーの必殺技が皇帝ペンギンシリーズだったり、そもそも“グランドファーザー”の名称自体、GO2に裏エンディングで登場した黒岩が名乗った偽名(称号?)だったんで、初登場時点で正体を察した方も多かったのではないでしょうか?
地の文で『白髪の老人』と評されている事からも分かる通り、イナギャラのラストで消えた黒岩でもあります。
ただ、彼が公式作品およびイナヒロに登場した『影山零治』と同一人物であるかは定かではありません。
もしかしたら、我々の知る影山零治とは異なる人生を歩んでいるかもしれませんし、同じ人生を歩んでいるかもしれません。
……要するに、原作キャラに作者の独自解釈をドバドバぶち込んだんで、今後の公式作品でイナギャラ後の影山が登場した時に備えて、本作に登場した影山はいわゆる並行同位体的な存在であると思って欲しいってコトです。
最近、新章から台本形式をやめて普通の形式に戻そうかなーって考え始めたんで、参考がてらにアンケートを取ります。投票期間は現在連載中のスピンオフ完結までを予定してます。
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