イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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完全に余談ですが『Re:クロノストーン篇』の作風としては、『某龍球ゼノバース1・2』を意識してます。『スーパー某龍球ヒーローズ』に置き換えても可。


遅れてやって来た裏側決戦!!! VS劇団・天魔(Re:ダークエンジェル)!!! 前編

 満天の星と月明かりに照らし出される、日本サッカーの聖地ーーFFスタジアム。

 

 本日の営業はとうの昔に終了しており、本来であれば関係者すら立ち入ることの叶わない静寂の時間帯。

 ……にも関わらず、ピッチの上には“彼ら”の姿があった。

 

円堂「みんなっ!何が起こってるか、よく分かんないと思うけど……!とりあえず、サッカーやろうぜっ!!!」

 

一同『応ッ!!!』

 

 “怪物”の面影を残す謎の少年によって、有無を言わさずこの地へ引き寄せられた【イナズマジャパン】ーーー

 

 世界の頂点を極めたあのFFI決勝戦以来となる、伝説のイレブンの再結集。

 突如立ちはだかった未来からの脅威を前に、彼らは自らの“未来”を掴み取るため、聖と魔が交差する狂気の歌劇団へと挑む。

 

ライト「雷牙ーーっ!!!ボクの分まで頑張ってねーーっ!!!」

 

冬花「そういえば……私たち(マネージャー)が呼び寄せられたのは、なんとなく分かるけど……。どうして、イナズマジャパンと関係のないライトくんまで呼び寄せられたんだろう……?」

 

ライト「う〜ん……。ボクだってよく分かんないけど……やっぱり、ヒロトと一緒に自主練してたからかなァ???」

 

REON「フンフフーン♪」

 

 二人の会話が聞こえているのか、いないのか……。

 【劇団・天魔】の監督兼控え選手として尊大にベンチへ腰を下ろすこの騒動の元凶・REONは、まるで彼らの疑問に答えるかのように鼻歌を響かせていた。

 

 ……だが、ふと何かを思い出したように手を打つ。

 

REON「あっ、そうだった!いや〜、歳を取るとダメだねェ〜。オレとしたコトが、大事な“役者(キャスト)”をすっかり忘れてたよ〜☆」

 

ーーパチンッ!!!

 

 わざとらしく額を叩いたREONが、軽やかに指を鳴らす。するとーーー

 

王将「お、おや……!?わ、私は自室に居た筈では……?」

 

 なんと、何もない空間に黄緑色の閃光が弾けたかと思うと、その光の中から寝巻き姿の日本屈指の名実況者・角馬王将がピッチ上へと躍り出たのである。

 

王将「・・・っ!ここはFFスタジアム!?そ、それに……!解散した筈のイナズマジャパンと謎のチームまで!?な、何故、君達がここにーーー」

 

REON「あ〜、余計な詮索は必要ないよ〜。キミはキミの仕事だけしてればいいから☆」

 

王将「ぬおっ!!?」

 

 混乱する王将へ向け、REONの右手から妖しい光が放たれ、その身体へとすうっと溶け込んでいく。

 次の瞬間、うつむいて静まり返った王将の着ていた寝巻きが、未知の力によって見慣れたスーツ姿へと一瞬で書き換えられーーー

 

王将『さあーーーーーっ!!! 始まりましたッ!!! 【イナズマジャパン】対【劇団・天魔】のスペシャルエキシビションマッチッ!!! 実況はもはやお馴染み、この私ッ! 角馬王将が務めさせていただきますッ!!!』

 

 どこからともなく取り出したマイクを握りしめ、角馬王将によるお馴染みの熱血実況がスタジアム全体に響き渡る。

 

REON「コレでよし☆ やっぱり、試合には実況が必要不可欠だからね〜♪」

 

雷牙「……ケッ、どこぞの魔王サマと似たような事を言いやがって」

 

 思わぬ形で選手・監督・実況の三拍子が揃い、いよいよ【イナズマジャパン】対【劇団・天魔】の決戦が幕を開ける。

 

 今回の試合の【イナズマジャパン】のスターティングメンバーは以下の通り。

 

FW:豪炎寺、熱也、ヒロト

MF:風丸、雷牙、鬼道、不動

DF:綱海、壁山、吹雪

GK:円堂

 

 もしもこの場に、チームを率いた久遠監督が居れば選陣は違っていたかもしれない。だが生憎、ここに居るのはその娘である冬花のみ。

 司令塔である鬼道主導のもと組み上げられたのは、3-4-3の攻撃的かつバランスの取れた布陣。これこそまさに、かつて日本を世界の頂点へと導いた黄金律だ。

 

 それに対し、【劇団・天魔】のスターティングメンバーはーーー

 

FW:デスタ、セイン

MF:メフィスト、サタナトス、ギュエール、ウイネル

DF:ベヒーモス、ベルゼブ、ネネル、エルフェル

GK:アスタロス

 

 フォーメーション自体には特筆すべき奇策は見られない。強いて言うなら、【イナズマジャパン】に比べて中盤から最終ラインにかけての守備がより強固である事くらいか。

 

 ……だが、【劇団・天魔】を構成する選手一人一人の存在感は、明らかに“普通”の域を逸脱している。

 

 中でも特に警戒すべきは、2トップを張るデスタとセインだ。

 他の選手達も凡百の領域を遥かに超える禍々しい気迫を纏っているが、その二人の立ち姿から滲み出る実力は、頭一つ抜け出た領域に達していた。

 

デスタ「オイ、矮小な人間共ッ!!!降参するなら、今のうちだぜェ?」

 

熱也「ハンッ!!誰が、降参なんざするかよッ!!!テメェらこそ後悔すんなよ?こちとら、色々あってムシャクシャしてんだッ!!猛吹雪(ブリザード)が吹き荒れるぞッ!!!」

 

 自らを“悪魔”や“天使”と称し、自分達を見下すデスタに対し、熱也は勇ましく啖呵を切る。

 ……だが、チームメイトは彼に対して、どこか形容し難い違和感を覚えていた。

 

綱海「なんだ? 元々熱也は気性が荒い方だが……今日のアイツはいつにも増して、ヤケにトゲトゲしてんな?」

 

吹雪「……ちょっと、色々あってね」

 

 綱海の問いかけに対し、兄である吹雪はどこか割り切れないような複雑な表情を浮かべる。

 ……だが、その深意を尋ねる隙を与える事なく。

 

ーーピィーーーッ!!!

 

 スタジアム全体に主審である、REONが持ち込んだアンドロイドの甲高い笛が鳴り響き、遂に決戦の火蓋が切って落とされた。

 

デスタ「さァ!!嘆き苦しめ人間共ッ!!」

 

セイン「究極の魔王が、貴様らの魂を貪り食ってやろうッ!!!」

 

 先行(キックオフ)を獲得したのは、【劇団・天魔】。

 その攻撃の要であるデスタとセインは、息の合った連携を見せながら凄まじいスピードで【イナズマジャパン】の陣地へと攻め上がる。

 

風丸「ッ! こいつら……!速いッ!」

 

 世界の頂点を争った風丸をして驚愕させる、圧倒的なスピード。デスタとセインは瞬く間にFW陣を抜き去ると、怒涛の勢いで中盤へと侵入する。

 

セイン「邪魔だァ!!!“エンゼルボールA”!!!」

 

 立ちはだかるMF陣のディフェンスを、必殺技と圧倒的なフィジカルで文字通り蹴散らしていく“天使”と“悪魔”のペア。

 

鬼道「しかも、このパワー……!純粋なフィジカルなら、リトルギガントにも匹敵する……ッ!!」

 

不動「オイオイ?何、弱音を吐いてんだよ鬼道クン?ちょっと見ない間に腑抜けちまったかァ?」

 

鬼道「……フッ!そんな訳がないだろうッ!!!」

 

 ……だが、【劇団・天魔】の圧倒的な実力に脅威を感じながらも、【イナズマジャパン】の選手達の口元には“笑み”が浮かんでいた。

 

 FFIを制してからの数ヶ月間ーー“渇き”に苦しんでいたのは雷門のメンバーだけではない。

 世界の頂きへと登り詰め、周囲との実力差が開いたからこそ、真摯に向き合ってきた筈のサッカーにどこか『物足りなさ』を覚えていたのは、ここにいる全員が同じだったのだ。

 

雷牙「いいねェ!やっぱし、サッカーってのは……こうでなくちゃなァ!!!」

 

デスタ「何をゴチャゴチャ言っているッ!?テメェら如きが、オレ達を止める事なんざ不可能なんだよォ!!!このまま、魂の深淵へと沈めェェェ!!!」

 

 まだ最終ラインすら突破していないにもかかわらず、デスタとセインは容赦なくシュート体勢へと移行する。

 

デスタ「恐怖しろッ!!」

セイン「そして魂に還るがいいッ!!!」

 

 デスタが悪魔の漆黒の力を込めて打ち下ろしたボールを、空中へと跳ね上がったセインが眩い光を纏ったオーバーヘッドキックで一閃。

 

デスタ&セイン「「“シャドウ・レイ”!!!!!」」

 

 聖と魔、白と黒のエネルギーが不気味に渦を巻き、一筋の破壊の閃光となって円堂の守るゴールへと襲いかかる……!

 

円堂「止めるっ!!!」

 

デスタ「フハハハッ!!!止めるだとッ!?無理だなァ!!“シャドウ・レイ”は我々が誇る、最凶最悪のシュートッ!!!人間如きが止められる筈がねェ!!!」

 

 デスタの言葉は決してただの傲慢ではない。確かに“シャドウ・レイ”の破壊力はそこいらの必殺シュートとは一線を画している。

 世界基準で見ても、これを受け止められるゴールキーパーなど片手で数える程しか存在しないだろう。

 

 ……だが。

 

円堂「……そいつはどうかな?」

 

 日本の最後の砦(ゴール)を護る男ーー円堂守は、間違いなくその“片手側”の人間だった。

 

セイン「何……?」

 

円堂「俺だってなぁ……!この数ヶ月間、ただ目的もなくサッカーをしてたわけじゃないっ!!!」

 

 瞬間、円堂の全身から眩い黄金の闘気が溢れ出し、その背後に巨大な人型の“魔神”を模り始める……!

 

円堂「一之瀬に、フィディオに、ロココ……! 世界のライバルたちに負けないように、毎日毎日特訓を重ねてきたんだ……っ!!!」

 

ーードォンッ……!!!

 

 激しい落雷と共に炸裂した黄金の光芒が、スタジアムの夜空を眩いばかりに照らし出す。

 円堂の背後に立ち昇る凄絶なオーラは急激に膨れ上がり、遂には荘厳なる紅のマントを揺らめかせた黄金の魔神へと、その威容を変えた。

 

セイン「な、何だ……!?この全身を焼き尽くさんばかりの、強大なエネルギーはッ!!?」

 

 世界を制した守護神の絶対的な意地と情熱が宿る、黄金の威容。

 迫り来る“シャドウ・レイ”の凶悪な閃光を前に、両手を勢いよく突き出した円堂が、天地を揺るがす大音量でその技の名を解き放つ。

  

円堂「“ゴォォォドッ!キャッチ”ィィィィィ!!!!!」

 

 黄金の魔神がその巨大な両手を前方に突き出した瞬間……!

 ボールを激しく覆っていた“聖”と“邪”の禍々しいオーラは瞬く間に散り散りとなって消滅し、円堂の分厚いグローブの中に、すっかり威力を殺されたボールがガッシリと収まっていた。

 

王将『止めたァァァァァ!!!!!最終ラインの手前、まさかの超ロングレンジから放たれた“シャドウ・レイ”の凶悪無比な一閃を、円堂が真っ向から完璧にキャッチッ!!!これぞ【イナズマジャパン】が誇る絶対的キャプテン! 世界を制してもなお進化を続ける男だーーーッ!!!!!』

 

デスタ「馬鹿な……ッ!?俺達の“シャドウ・レイ”が……!人間如きに止められた、だと……!!?」

 

 “シャドウ・レイ”が円堂守によって完膚なきまでに止められたという事実を前に、デスタとセイン……いや、【劇団・天魔】の面々は驚愕の感情を隠せない。

 確かに、彼らはまだ手加減をしており、全力を出し切ったわけではない。しかし“シャドウ・レイ”は、彼らが誇る最凶の必殺技の一角。

 

 己の力を絶対と信じ、人間を見下してきた彼らにとって、この光景はあまりにも不都合で、受け入れがたい衝撃であった。

 

 そして、その動揺へさらに追い打ちをかけるようにーーー

 

雷牙「確かにオタクらはそれ相応に強いんだろうが、生憎な事に……俺達にゃあ、通用しねェ。何故かって?そりゃあモチロン!俺達はそれ以上に『強い』かんなァ」

 

 お約束と言わんばかりに、雷牙の容赦のない煽りが炸裂する。

 

デスタ「俺達がテメェに劣るだと……ッ!!?寝言は寝てから言えッ!!!」

 

雷牙「Oh〜……。“悪魔”だの、“天使”だの、“歌劇団”だの宣ってたモンだから、ちったァ賢いと思ったが……。どうやら、頭(オツム)の方は守以上に残念みてーだなァ」

 

 圧倒的な力の差を見せつけられてなお、現実を受け入れられない【劇団・天魔】の面々に、雷牙は呆れ混じりの不敵な笑みを深める。

 

円堂「よーーしっ!!!ここから反撃だぁーーーっ!!!!!」

 

 相手の動揺を逃さず、円堂が爆発的な力でオーバースローを放つ。

 鋭い軌道を描いたボールは、瞬く間に前線へと一気に運ばれていきーーー

 

雷牙「さァてと……。今度は、俺サマの実力を魅せてやろうかな?」

 

 ニヒルな笑みを浮かべる“雷撃の怪物(サッカーモンスター)”の足元へ、寸分の狂いもなく吸い付くようにボールが収まった。

 

王将『ここで稲魂雷牙だァァァ!!! 先日行われた少年サッカーの祭典・FFIーーその決勝戦において【イナズマジャパン】の偉業たる無失点記録に大きく貢献し、見事MVPを獲得した日本トップクラスの超新星(プレイヤー)が、いま敵陣へと踏み込むーーーーーッ!!!』

 

 実況の興奮を切り裂くように、雷牙が静かに最初の一歩を踏み出す。

 

メフィスト「ハッ! 誰が出てこようが、我らの防壁を突破できると思うなよ……ッ!」

 

 まず先に立ちはだかったのは、中盤の底を固めるメフィストとサタナトス。

 圧倒的な威圧感を放つ二人が、“怪物”から逃げ場を断つように左右から挟み込むと、同時に禍々しい漆黒のオーラを地面へ打ち付ける。

 

メフィスト&サタナトス「「“ゴー・トゥー・ヘルA”!!!!」」

 

 雷牙ただ一人を飲み込もうと、禍々しく燃え上がる邪悪なる火柱。

 常人ならばその威圧感に気圧され、蛇に睨まれた蛙の如く金縛りに遭い、動く事すら免れないだろう。

 

 だがーーー

 

雷牙「ゲハハハッ!!!何だァ?そのチンケな技はよォ?? その程度じゃ……鍛えに鍛えた新生(ニュー)雷牙サマにゃあ、敵わねェんだよッ!!!」

 

 地獄へと誘う、悪魔の火柱すらも、この傲岸不遜なる“怪物”にとってはただの余興も同然。迫り来る邪悪な圧力を不敵に笑い飛ばす。

 

雷牙「そらよっと!」

 

 思考を介さず、本能が導くままに踏み込んだ雷牙の足裏。

 ボールはまるで生き物のように跳ね上がり、雷牙の全身もまた、迫る二人の頭上をフワリと越える。

 

メフィスト「何……だと……ッ!?」

 

王将『か、かわしたァァァァァッ!!! 迫る必殺技ごと相手の頭上を飛び越え、【劇団・天魔】の中盤を一瞬で完全踏破ッ!!!これぞ日本の“怪物”・稲魂雷牙のスーパーアクロバットプレイだァァァッ!!!』

 

ヒロト「おおッ! 今のはまさしく“地平線(ホライゾン)の境地”……! この数ヶ月でモノにしていたのか……ッ!!」

 

豪炎寺「……いや、厳密には違う。今の雷牙はあくまでも、“地平線(ホライゾン)”の動きに限(・)り(・)な(・)く(・)近(・)付(・)け(・)て(・)い(・)る(・)だ(・)け(・)だ(・)」

 

 豪炎寺の洞察通り、雷牙は未だ自力で“極(ビヨンド)”はおろか、“兆(ビフォアー)”すらも発動出来る域には至っていない。

 

 だがーーオルフェウス戦、そしてチームガルシルドとの激闘の中で、一瞬でもその真髄に触れた経験。それが雷牙の体に刻み込まれ、平常時であっても“境地”に肉薄する繊細な身体操作を可能にしていたのだ。

 

セイン「止めろッ!!絶対に奴を止めるのだッ!!!たかが人間一人に突破されたとあっては、我ら“魔王”の名が廃るぞ……ッ!!!」

 

『ハッ!!!』

 

 中盤を容易く突破された焦りと憤怒から、【劇団・天魔】の面々が一斉に牙を剥く。

 残されたギュエール、ウイネル、さらには最終ラインのDF陣までもが雪崩のように押し寄せ、死角なしの密集陣形で“怪物”の退路を完全に退路を塞ぎにかかる、がーーー

 

雷牙「ハンッ!!!この最強・無敵・アルティメットの雷牙サマの前にはよォ……!オメーらみてーな、ちょっと顔が良くて、スポーツが出来て、語彙力があるだけの厨二病患者なんざ……!“怪物”の敵じゃあないんだよォォォォォ!!!!!」

 

 四方八方を凶悪な気迫に囲まれながらも、雷牙の口元に浮かぶニヒルな笑みは失われるどころか、より一層深く刻まれた。

 

 襲い来る敵の突き出し、スライディング、身体接触、必殺技の全てを、まるで未来が見えているかのように最小限のステップでいなしていく。

 

 一切の思考を介さず、洗練された本能のままにボールと己の身体を滑らせる姿は、まさに群がる獣をあざ笑う孤高の“怪物”。

 誰一人としてそのユニフォームの端にすら触れられぬまま、雷牙は瞬く間に敵陣のど真ん中を切り開いていた。

 

雷牙「フー……!!!ちったァ、疲れた!それじゃあ、俺ちゃんは……そろそろお役御免といこうかねェ!!!」

 

 傍から見れば、【劇団・天魔】の完全敗北にも思えるこの攻防ーー。だが、“怪物”であっても天使や悪魔達も、無双を許してなお決して手を抜ける相手ではなかった。

 

 久方ぶりに本気を叩き込んだことで疲労が押し寄せ、残るディフェンスの突破すら億劫になった雷牙は、スカした態度のまま、後方から迫る感じ慣れた気迫へとノールックでパスを放つ。

 

 その終着点はーーー

 

熱也「ウゥルラァァァァァ!!!!!」

 

 日本が誇る、猛き猛吹雪(ブリザード)・吹雪熱也だ。

 カットされる事なくボールを受け取った熱也は、荒々しく力強いドリブルで、怒涛の勢いのままキーパーとの距離を一気に詰めていく。

 

円堂「行っけーーっ!!熱也ーーっ!!!お前の“ウルフレジェンド”で、一気に先制点をぶち込んでこいーーーっ!!!」

 

熱也「ッ……!!!」

 

 円堂の悪意なき声援が、銀狼の耳へと届いた刹那ーーー

 熱也は苦虫を潰したかのように唐突に表情を歪め、視線を僅かに落とした。

 

雷牙「熱也……?」

 

熱也「ーーーねェ……!!!」

 

 低く、怨嗟を孕んだ掠れ声。

 次の瞬間、熱也の瞳に狂暴な野生の光が宿り、顔面を鬼気迫る怒りへと変貌させ……!

 

熱也「俺にはもう、“兄弟の絆(ウルフレジェンド)なんざ必要ねェんだよッッッ!!!!!」

 

円堂&雷牙「「はあっ!?!?!?」」

 

吹雪「熱也……」

 

 円堂と雷牙を筆頭に、ピッチ上の誰もが突然解き放たれた熱也の“怒り”と“拒絶”に呆気に取られる。

 ……だが、ただ一人。実の兄である士郎だけは、実に悲しげな瞳で、弟の名を静かに呟いていた。

 

熱也「見せてやるぜ……ッ!!こいつが俺の新技ァ……!!!」

 

 ペナルティエリア内へと侵入した熱也の全身から、鬼気迫るプレッシャーと共に薄紅色のオーラが吹き荒れる。

 右手から溢れ出た凶暴な気迫は利き足である右脚へと伝播し、その肉体にーー巨熊すら一撃で屠る絶大な威力を宿していく……!

 

豪炎寺「何だ、あの必殺技は……ッ!?“エターナルブリザード”でも“ウルフレジェンド”でもない……ッ!!」

 

熱也「悪魔とやらを思う存分、喰らいつくせェ!!!“必殺クマゴロシ……斬”ッッッ!!!!!」

 

ーーバシュゥゥゥゥン!!!!!

 

 公式戦ではないとはいえ、遂にお披露目された吹雪熱也の新たな必殺技ーー“必殺クマゴロシ・斬”。

 

 己の異名をそのまま冠したその一閃は、かつての十八番“エターナルブリザード”や兄との絆“ウルフレジェンド”……果ては兄の“トリニティブリザード”すら凌駕する凄まじい威力を伴い、アスタロスの守るゴールへと襲いかかる。

 

アスタロス「フッ……!“ジ・エンドZ”……ッ!!!」

 

 GKの手から放たれた不気味な磁場が球体を歪ませ、纏われた薄紅色のオーラを粉砕せんとするーーが。

 

アスタロス「な……ッ!?止まらーーー」

 

熱也「円堂に比べれば、テメェなんざ屁でもねェんだよォォォ!!!んなヘボキーパーなんざ……喰い破れェェェェェ!!!!!」

 

アスタロス「ヌオォォォォォ!!???」

 

 その宣言通り、圧倒的な質量と威力を伴ったボールは、そのままGKごと押し込む勢いでゴールラインを割る……!

 

ーーピィィィィ!!!!

 

 白線を越えた球体がゴールネットを激しく揺らす同時に、主審のホイッスルが鳴り響いた。

 

熱也「しゃあぁぁぁぁ!!!!!」

 

王将『ゴォォォォォル!!! 吹雪熱也の放った新必殺、“クマゴロシ・斬”がゴールネットを揺らしたァァァッ!!! “世界一”の称号は偽り無しッ!【イナズマジャパン】の怒涛の攻撃で【劇団・天魔】から先制点を奪い取ったぞォォォォ!!!!』

 

 世界一に相応しい鮮烈な先制点に、イナズマジャパンのベンチとピッチ上は大歓声に包まれる。

 だが、光あるところに影あり。リードを許した【劇団・天魔】の天使と悪魔達は、あまりの屈辱にその美貌や威厳を苦々しく歪ませていた。

 

 そして……元凶が居座る【劇団・天魔】のベンチではーーー

 

REON「フ〜ン?中々ヤルじゃん。旧人類だからって普通に舐めてたケド、彼は思ってた以上にスゴいストライカーだねェ。てか、この時空では“吹雪熱也”は生存してんだね。ビックリ驚き〜」

 

 両手に携えたゲーム機の画面から目を離す事なく、熱也の実力に関心してみせるREON。

 しかし、その軽薄な声色には、【イナズマジャパン】にリードを許した焦りも【劇団・天魔】への怒りも、微塵たりとも含まれていない。

 

 文字通り……勝とうが負けようが、彼からすれば心底『どうだっていい』事なのだ。

 

REON「まっ、流石に負けるのはマズいか☆ 時と場合によっては、ーーもアリかな?」

 

 ヘラヘラと語るREON。だがその口元には、全世界のあらゆる“悪意”を凝縮したかのような、悍ましい笑みが酷薄に浮かべられている。

 

REON「……見ているかい?もうそろそろだ。もうじき……オ(・)レ(・)達(・)の理想が叶うんだ」

 

 ……何を思ったか。突如としてREONは、胸元に下げた『G』の紋章が刻まれた薄紅色の宝石へ、愛おしそうに語りかけた。

 

 ゲーム感覚で他者を弄ぶ彼が、初めて見せた明確な執着と情愛。ーーそれは底知れぬ不気味さを纏うREONが、唯一覗かせた“人間味”でもあった。




なんか早くも噛ませに片足を突っ込んでる【劇団・天魔】ですが、REONから力を分け与えられた(+洗脳)と言っても、現時点では劇的に強化されている訳ではないです。

確かに実力的には本作の【リトルギガント】レベルではあるんですけど、チームで最強格のデスタとセインが、ゴーシュやドラゴより一、二歩上くらいでそれ以外は甘く見積もっても互角程度……。

結果として、火力面では上回っていても、キーパーの実力がロココよりも圧倒的に下な分、総合力では【リトルギガント】に劣ってます。
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