イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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実は『Re:クロノストーン篇』にはイメージソングがあり、それがメガテラ・ゼロさんの『誰が為』です。
楽曲自体は既存のアニソンなんですけど、歌詞が全体的にRe:クロ篇の構想とベストマッチしているので、興味のある方はぜひ聞いてみてください!


遅れてやって来た裏側決戦!!! VS劇団・天魔(Re:ダークエンジェル)!!! 中編

豪炎寺「“マキシマムファイア”ァァァァァ!!!!!」

 

アスタロス「“ジ・エンーーーぐあぁぁぁぁぁ!!!??」

 

ーーピィィィィ!!!!

 

 物語開始早々、【イナズマジャパン】の5点目を告げる高らかなホイッスルが鳴り響く

 

 ピッチ上に顕現したのは、10年に1人の天才と謳われしストライカーが宿す真紅の“炎魔”。

 絶対的エースが放つ最大級の熱線はピッチの芝すら焼き尽くし、頑丈極まりない純白のゴールネットを豪快に押し広げていた。

 

王将『ゴォォォル!!!!決まったぁぁぁッ!!! もう止まらない、止められないッ! 【イナズマジャパン】が誇る伝説のエース、豪炎寺修也が、またしてもゴールネットを焼き尽くしたぁぁぁッ!!!』

 

ーーピッ!ピッ!ピィィィィィ!!!!!

 

 王将の熱血実況が響き渡る中、主審のホイッスルが三度鳴り響き、前半戦の終了を告げる。

 ……そう。この前半30分間、ピッチの主導権は常に【イナズマジャパン】の手中にあった。

 

 【劇団・天魔】が弱い訳ではない。寧ろ個のスペックは、世界基準で見ても文句なしに五本指に入る、上澄み中の上澄みだ。

 

 にも関わらず、なぜ彼らは【イナズマジャパン】に及ばないのか?

 ……答えは至極単純。【イナズマジャパン】こそが、世界の頂点を極めた文字通り『世界一』の最強(イレブン)だからだ。

 

不動「ケッ!如何にも強そうな雰囲気だったから、ちったぁ期待してやったが、拍子抜けもいいとこだぜッ!」

 

 圧倒的な優勢にもかかわらず、手応えのなさにケチをつける不動。

 だが、ベンチに腰を下ろした鬼道の表情に緩みは一切なかった。

 

鬼道「油断するな。最後の1秒まで何が起こるか分からないのがサッカーだ。加えて……相手はこれまでとは一線を画す未知の脅威。いつ俺たちの想定を超える事態が起きてもおかしくない」

 

ヒロト「確かに……。エイリア学園なら、確実に恥も対面も捨てて、エイリア石を解禁しているであろう状況だしね」

 

鬼道「そこでだ。さらに点差を広げ、相手の反撃の芽を完全に摘む。後半からは熱也をMF、風丸をDFへ下げ、綱海に代えて染岡を投入する。……染岡、行けるか?」

 

染岡「たりめーよッ!!舐め腐った未来人とやらに、俺達の強さを思う存分教えてやろーぜッ!!!」

 

 こうして、何事もなくハーフタイムは過ぎ、決意を新たにピッチへ戻るイレブン。決着の後半戦へと舞台は移る。

 

 ……だが、その時ーーー

 

王将『おおーっと!【イナズマジャパン】は綱海を下げ、染岡を投入!この采配が後半戦にどう影響するのか楽しみですッ!!!……おや!? どうやら……【劇団・天魔】も選手交代のようだーーッ!!!』

 

 前半戦の静寂を破り、最低最悪の“獅子”がピッチへと降臨する。

 

王将『MFサタナトスに代わり、後半戦から出場するのはーーーッ!!!』

 

REON「全世界が望んだ、期待の新エース。その名もREON(オレ)♪」

 

雷牙「んな……ッ!? REONが……交代、だと……ッ!!?」

 

 愉快な演出と共にピッチへ足を踏み入れたのはーー【劇団・天魔】の監督であり、この歪んだ劇場の支配人でもある、REONその人であった。

 

REON「いや〜!天使クンチャンと悪魔クンチャン達が、あんまりにも不甲斐ないプレーばっかするからさ〜、仕方な〜く出て来てあげたよ〜☆ あっ、お礼はいいよ〜?ホラ!オレってこのチームの監督だし?」

 

デスタ「ク……ッ!」

 

セイン「申し訳……ございません……!」

 

 “天使”と“悪魔”の長たるデスタとセインは、人間如きに圧倒された屈辱に歯噛みし、苦々しく顔を歪ませる。

 ……だが、REON本人はどこ吹く風だ。気に留める様子すらなくーーそれどころか、二人に対して一切の興味すら払っていない。

 

 まるでーーこ(・)こ(・)ま(・)で(・)の(・)展(・)開(・)全(・)て(・)が(・)、最(・)初(・)か(・)ら(・)仕(・)組(・)ま(・)れ(・)た(・)筋(・)書(・)き(・)通(・)り(・)で(・)あ(・)っ(・)た(・)か(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)。

 

 こうして後半戦からピッチに立つこととなったREONだがーーその身を包んでいるのは、【劇団・天魔】のユニフォームではなく、私服(パーカー)姿のままだ。

 

 到底、これから真剣勝負に臨む者がしていい格好ではない。

 

雷牙「ケッ、侮られたモンだぜ!天下の俺達(イナズマジャパン)を相手にするってのに、私服姿だァ?待っててやっから、ユニフォームを着たらどうだい?その緑のフリフリが背中に付いた、イカす戦闘服をよォ?」

 

REON「別にいーじゃん?コレは公式戦じゃないんだし、あとシンプルに背中に緑のフリフリが付いたユニフォームとか、ダサくて死んでも着たくないしね〜。そ・れ・に!」

 

雷牙「それに?」

 

REON「コレから行われるのは、サ(・)ッ(・)カ(・)ー(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)。ただの……“蹂躙”なんだから」

 

雷牙「……ああ、そーかい。それじゃあ、俺ちゃんからも一つ……オマエさんの前にも、似たような事をほざいた輩が二チームもいた。1つは200年後の未来からストレッチマン。2つは80年後の未来から来たミリオタ共」

 

REON「知ってるよ☆ 補足すれば……2つ目は並行世界の“自分”の体験だろ?」

 

雷牙「なら、話が早ェ。どちらも最終的には俺達に完敗を喫した……果たしてオマエさんは、この神話を破れるかな?」

 

REON「ウ〜ン……破る破れない以前にさ〜。既に破(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)ん(・)だ(・)よ(・)ね(・)〜〜」

 

雷牙「……言ってろ」

 

ーーピィーーーッ!!!

 

 対峙する二人の皮肉の応酬を切り裂き、後半戦開始を告げる冷淡なホイッスルが鳴り響く。

 後半のキックオフは【イナズマジャパン】。先陣を切るのは、日本の絶対的エース・豪炎寺修也だ。

 

鬼道「油断するなよ、豪炎寺ッ!!常に全神経を張り詰めろッ!!!」

 

豪炎寺「ああッ!!!」

 

 鬼道に促されるまでもなく、既に豪炎寺の精神は極限まで研ぎ澄まされていた。

その感覚はーーかつて日本を揺るがした“エイリア事件”の開幕、あの【ジェミニストーム】と初めて相まみえた時の戦慄と重なる。

 

 日本一の雷門イレブン(自分達)ですら、圧倒された理不尽なまでの速度とパワー……。

 

 目の前のREONがどれほどの能力(スペック)を隠し持ち、自分達とどれほどの明確な実力差があるのかは未だ未知数……。

 だが、今の豪炎寺は“油断”の二文字とは対極の位置にあった。

 

 世界を制したエースストライカーとしての背中は、例えREONがどんな未知の技を繰り出そうと、一切反応できず手も足も出ないなどという事態は、絶対にあり得ないーー彼を見守る仲間たち全員にそう確信させるほどに熱く、眩いばかりの光を放っている。

 

 

 

ーーーその筈だった。

 

REON「は〜い♪ ムダな緊張ご苦労サマ〜☆」

 

豪炎寺「な……ッ!!?」

 

 次の瞬間ーー豪炎寺の視界からREONの姿が消えていた。残像すら残さない。地面を踏み込む初速の音すら聞こえなかった。

 

 ただ一瞬、肌を切り裂くような冷たい風が頬を掠めたと錯覚した時にはーー既にREONは、豪炎寺の背後に立っていた。まるで最初からそこに居たかのように、何食わぬ顔で。

 

 足元にあった筈のボールは、いつの間にかREONのつま先で遊ばれるようにクルクルと旋回している。

 

豪炎寺「み、見えなかった……! 踏み込む動作すら……ッ!!」

 

 世界を制した男の動体視力すら容易く置き去りにする、異常なまでの初速。そのあまりの理不尽さに、豪炎寺の全身から一気に冷や汗が吹き出してしまう。

 

雷牙「豪炎寺を突破したからって、調子に乗るんじゃねェーぜッ!!!ヤツは四天王の中でも二番目に最強ッ!!!そして……その一番目がこの俺だァァァァァ!!!!!」

 

 豪炎寺が突破された衝撃に誰もが息を飲む中、雷牙だけは一切怯む事なく勇ましく飛び出した。彼の背中から溢れ出すのは、過剰なまでに膨大なオーラ。

 

雷牙「カモンッ!!!“雷鳴の覇王 レグルス・マキシマム”ッッッ!!!!!」

 

 内に秘めた化身ーー咆哮する黄金の“覇王”を背後に顕現させ、強引にボールごと撃ち抜くべく右脚を大きく振り上げる。

 

 だがーーー

 

REON「いいねェ!流石は“怪物(サッカーモンスター)”!IQの低さだけはピカイチだねェ!!それじゃあ、ご褒美に〜……今から、キミの両脚(ソレ)を刈り取る」

 

雷牙「ーー!!!」

 

 両者の足がボール越しに激突する、コンマ数秒手前。

 雷牙の本能に、見知らぬ“記憶”が濁流の如く流れ込む。

 

 バキリ、と鈍い音を立てて砕け散る己の両脚。

 無機質な手術室の天井、病院のベッド。

 そして……サッカーという夢を奪われ、絶望の底へ叩き落される未来。

 

 そんなーー存在しない筈の記憶の数々が、この上ない現実味を持って全身の神経を焼き尽くす。

 

雷牙「し、“獅風迅雷・超限界突破(オーバーオーバーリミテッド)”ッ!!!!!」

 

 気づけばーー身体を壊しかねない化身と“獅風迅雷”の同時展開、その多大な負荷を無視してまで、雷牙は全力でバク転し、なりふり構わずREONから距離を取っていた。

 

風丸「稲魂が……戦う前に引いた……!?」

 

雷牙「ハァ……!ハァ……!」

 

 稲魂雷牙という人間を知る者にとって、あの負けん気の塊のような男が、一度も打ち合うことなく“退却”を選ぶなど異常事態以外の何物でもない。

 

 加えて……異常事態(それ)を裏付けるように、雷牙の全身からは滝のような冷や汗が吹き出していた。

 

REON「せっかくの1on1だってのに、いきなり逃げるだなんて酷いなァ。コレでも前居た組織じゃあ、非力で有名だったんだよ〜?」

 

雷牙「オメーが非力だと……? つまんねェ冗談も大概にしやがれってんだ……ッ!!!」

 

 大きく距離を取り、本気の構えをとってもなお警戒を解けない雷牙の眼には、軽薄に笑うREONの姿が何十倍もの巨躯となって映り込んでいた。

 

 まるで、全身を凍り付くようなこの重圧ーーーーー

 それは、己が知る中でも史上最大最凶の宿敵(ライバル)・明星鬼乃子と同等ーーいや、下手すればそれをすら容易く上回る、圧倒的な威圧感(プレッシャー)。

 

雷牙(冗談じゃ……ねェ……!!!)

 

 これでREONが非力ならば、彼女は一体どうなるというのだろう。

 

REON「あっちゃ〜……。完全に固まったねェ〜〜。ちょっと、魅せすぎちゃったかも?実力差」

 

 ……彼の名誉のために言えば、雷牙は決して恐怖で竦んでいる訳ではない。

 絶望的な実力差を骨の髄まで理解させられようとも、その獰猛な瞳は一瞬たりとも警戒を緩めていなかった。

 

 コンマ一秒でもREONが隙を見せようものなら、即座に飛びかかり、その喉元へ牙を剥くだろう。

 

 ……だがーーー

 

REON「えい♪」

 

 狂気の道化師(トリックスター)が住まう次元は、“世界一”の領域すらも遥かに超越していた。

 

ーーシュパ……

 

円堂「・・・え?」

 

 無垢の閃光が円堂の真横を通り過ぎる。

 

 豪炎寺や雷牙はもちろん、世界最強のGKである円堂の動体視力すら……その軌道を捉える事は叶わない。

 

 ただ一筋、空間が歪んだような錯覚。

 頬に残る僅かな風の違和感に誘われ、円堂がゆっくりと振り返った時にはーーボールは何事もなかったかのようにゴールネットを静かに揺らし、その足元で転がっていた。

 

REON「まず一点☆」

 

ーーピィィィィィ!!!!!

 

 静寂。

 スタジアムを支配したのは、歓声でも悲鳴でもなく、あまりの事態に思考が停止した完全な静寂だった。

 

 円堂は微動だにせず、ネットを揺らしたボールを見つめたまま固まっている。

 豪炎寺も、雷牙も、ピッチの選手も、ベンチの仲間達すらもーー目の前で起きた『現実』を脳が拒絶していた。

 

鬼道「何が……起こった……?」

 

 世界一の天才ゲームメーカーの脳裏すら空白に染め上げる、異常な一撃。

 何が起きたのかすら、誰一人として理解できない。

 彼らに与えられたのはーー反応する猶予すら与えられず、ただ『失点』という結果だけがそこに存在する事実だけだった。

 

風丸「また見えなかった……!奴が……ボールを蹴る瞬間さえも……ッ!!」

 

綱海「これが……!未来人の力ってのかよ……!!?」

 

REON「だ〜か〜ら〜、さっき言ったばっかだろ?コレから先は……ただの“蹂躙”だって」

 

 見せつけられたのは、200年という時が育んだ圧倒的な“格の違い”……。

 それでも、世界の頂点を極めた男達の闘志が折れる事はない。

 

 だが……それ以上に、ピッチの上で繰り広げられた現実はあまりにも酷理不尽だった。

 

ーーピーーッ!!!

 

 2点目ーー鬼道と不動が生み出した最高の必殺タクティクスを、戦略もテクニックも嘲笑うかのような純粋なフィジカルのみで強引に粉砕。そのまま、一蹴でゴールネットへ叩き込まれた。

 

ーーピーーッ!!!

 

 3点目ーー寸分違わぬ無造作な一蹴。三度目にして、執念で辛うじて反応してみせた円堂。だが、必死に繰り出した“ゴッドハンドV”すら、膨大なエネルギーの奔流に接触した一瞬で無慈悲にも光の粒子へと霧散し、ゴールネットを小さく揺らした

 

ーーピーーッ!!!

 

 4点目ーーもはや前線へ運ぶことすら面倒になったのか。自陣でボールを奪うと同時に、REONはあくび交じりにセンターラインからの超ロングシュート。放たれた一撃は綺麗に放物線を描き、無人のゴールへ吸い込まれていった。

 

ーーピーーッ!!!

 

 5点目ーー展開は先程とまったく変わらない。唯一の差異があるとすれば、立ち塞がった壁山が巨体を張って放った“ザ・マウンテン”ごと、無情にもゴールネットへ叩き付けられた事くらいだろう。

 

壁山「うう……」

 

秋「酷い怪我……!これ以上のプレーは危険よ……!!」

 

夏未「けど……。壁山君以外にREONのプレーに対抗出来る選手は……」

 

ライト「ボ、ボクが行く……っ!!!」

 

 事実上の戦力外(リタイア)となった壁山に代わり、意を決したライトが力強く手を挙げた。

 

 彼は【イナズマジャパン】の正式メンバーではなく、本来ならば部外者だ。

 それでもーーこれまでの死闘を通じて、彼の紡いできた実力と信頼は、既にここにいる誰もが認めるところであった。

 

王将『おおっとーーッ!!!どうやら、負傷した壁山に代わり、元イタリア代表(オルフェウス)のレギュラーにして、稲魂雷牙の兄・稲魂雷斗が出場するようです!』

 

REON「待ってたよ〜♪ 稲魂のラ・イ・ト・ク・ン☆」

 

雷牙「ライト……」

 

ヒロト「油断するなよ、ライト……。他の選手はまだしも、REONはこれまでの敵とは次元が違う……。甘く見積もっても、ジェネシスの100倍だ……ッ!!」

 

ライト「分かってる! でも……だからってココで逃げちゃダメだよ!ヒーローは……絶対に諦めないんだからっ!!!」

 

 頼もしい『兄』の参戦、そして怯みつつもヒーローとして誇り高く立ち上がるライトの叫び。

 

 その勇姿に呼応するように【イナズマジャパン】の選手達の瞳へ再び闘志の炎が宿る。

 

 ……だが、現実の牙はあまりにも残酷だった。

 

ヒロト「“銀河超人 エイリアマスターズ”ッ!!!」

 

ライト「“雷星拳牙 レグルス”ッ!!!」

 

 覚悟を固めた永世の両翼による、必死の覚悟で放つ決死の挟撃ーーー

 

 しかし、不気味に微笑む狂気の道化師は、技の片鱗すら見せる事なく、ただ軽やかにすれ違いざまに呟く。

 

REON「邪魔♪」

 

ヒロト&ライト「「うわぁぁぁぁああ!!!???」」

 

 コンマ数秒後。

 二人の体は、ただのすれ違いざまに生じた衝撃波だけで宙を舞い、容赦なくピッチへと叩きつけられた。

 

 そして、そのまま………

 

ーーピィィィィィ!!!!!

 

 6点目ーー【イナズマジャパン】必死の抵抗すら虚しく、残酷にもスコアボードへと刻まれる『6』の数字。それまでのどのシュートよりも速く、そして不気味なほどに静かな一撃を前に、世界最強の守護神・円堂すらピクリとも反応できなかった。

 

 後半開始から僅か10分足らず。

 たった一人の男の手によって、【イナズマジャパン】の圧倒的なリードは跡形もなく破砕され、逆転を許してしまったのだった。

 

雷牙「クソッ……タレが……ッ!!!」

 

染岡「俺達の全力が……何一つ通用しねェ……だと……ッ!!?」

 

 積み上げてきた“全力”の全てをぶつけてなお、道化師(トリックスター)の足元にすら届かず、まともな勝負の土俵にすら立てないという容赦ない現実ーーー。

 

 持てる全ての力を振り絞り、そして踏みにじられ続けた【イナズマジャパン】のイレブンには、もはや立ち上がる気力すら残されていなかった。

 誰もが汗と泥に塗れ、ただ無力感に苛まれながらピッチへ膝を突いていた。

 

REON「いや〜、キミ達は強いとは思うよ?世界一ってのは伊達じゃないーーそれだけは認めてア・ゲ・ル♪でもね〜、弓矢がロケランに勝てると思う? カタパルトが戦車に勝てると思う? キミ達がオレに挑むってコトは、それと同義なのよね〜〜」

 

 REONは引き攣った笑みを浮かべ、世界一(イナズマジャパン)を軽薄に褒め称えながらも、その奥にある死んだような瞳で彼らを冷淡に見下す。

 

 きっと……この道化師は骨の髄まで理解してのだろう。勝者による真面目な賞賛こそが、敗者にとって最大の侮辱である事を。

 

REON「要するに、キミ達は古臭いんだよ。戦略も、テクニックも、サッカー観もーーその全てがね」

 

染岡「だからって……!認めて……たまる、かよ……ッ!!!」

 

REON「ウンウン♪ 理解するよー!嫌だよね〜、どれだけ努力も計画も重ねても、どうにもならない“現実”に直面するのって〜。苦しいよね〜、辛いよね〜、とっても悲しいよね〜」

 

 膝を折り、ピッチに崩れ落ちた敗北者たちと目線を合わせるREON。

 その表情は作り物の笑顔から、醜く歪んだ悪趣味な嘲笑へと塗り替えられていく。

 

REON「ところがどっこいしょ!それが“現実”ッ!!!どれだけ喚こうが、癇癪を起こそうが、だ〜〜れも助けてくんないの♪ だって〜、そこにいるのはオメオメと“改心”という名の宗旨替えした“裏切りモン”ばっかなんだかラ!」

 

 白銀の道化師は、冷たく嗤う。

 まるでーー【イナズマジャパン】を身代わりにして、過去の惨めな己の“憂さ晴らし”でもするかのように。

 

REON「アハハハハハハハハハッ!!!そうッ!!そんなんだよッ!!!コレこそが“現実”ッ!! “敗北”ッ!! “絶望”ッ!! 7.9km/sは第一宇宙速度へ達し、レバーを倒すと第二宇宙速度へと到達するッ!!!そして……月は火星となり、地球は木星となるッッッ!!!!!」

 

雷牙「……イカれてらァ……」

 

REON「……おっと、ちょっと理性が飛んじゃった☆」

 

 静まり返るスタジアムに、REONの甲高い嘲笑と狂乱の叫びだけが歪に響き渡る。

 ピッチ上に倒れ伏すイレブンを指差し、お腹を抱えて大爆笑する道化師。その姿はあまりにも悪意と狂気に満ち、絶望という名の暗雲が【イナズマジャパン】の頭上を完全に覆い尽くしかけていた。

 

ーーーだが。

 

 その冷酷な高笑いを引き裂くように、泥と汗に塗れた手が、固い芝生を力強く踏みしめる。

 呼吸は荒く、膝は生まれたての子鹿のように激しく震えている。全身の打撲痕が悲鳴を上げ、視界すら満足に保てないほどの満身創痍。

 それでもーー背番号『1』の男は、泥を吐き出しながら、ゆっくりと、だが確かな意思を持ってその足で立ち上がった。

 

円堂「違う……っ!!!」

 

雷牙「守……!」

 

REON「ん〜〜??? 一体、何が違うってのカナ〜? オレの前に無様に這いつくばってるキミ達が、何よりの証拠だと思うけど〜???」

 

 両手を叩き、大袈裟な動作で敗北者を煽り立てるREON。

 しかしーーその底意地の悪い煽りすら、立ち上がった男の瞳に宿る『太陽のような炎』を消す事は出来ない。

 

円堂「1年前……っ!俺と雷牙と秋は……プロトコル・オメガって奴らと試合した……! 天馬たちが助けに来てくれなかったら、今ごろ俺たちはまったく別の道を歩んでいたかもしれない……っ!!」

 

 忘れもしない『1年前』ー!雷門中サッカー部を設立した円堂と秋、そして部員第一号となった雷牙は、“サッカーの消滅”を目論む未来からの刺客、プロトコル・オメガの襲撃を受けた。

 

 幸いにも……歴史改変が起きる直前、未来から駆けつけた松風天馬、そしてフェイ・ルーンの助力によって、辛うじて戦う術を得る事が出来た。

 

 だが、プロトコル・オメガの強さは圧巻で、何よりサッカーをただの『手段』としか見なさない冷酷な戦いぶりに、円堂は強い激憤を覚えたものだ。

 

 それでもーーー

 

円堂「でも……!最後の10分だけは……!あいつらだって、心の底から楽しんでサッカーをしていたように見えた……っ!!!」

 

 時空共鳴現象による円堂と雷牙の強化、天馬達ですらも把握していない剣城優一という助っ人、そして雷牙のミキシトランスーーー。

 

 数々の想定外に直面しながらも、プライドを賭けて持てる全てぶつけてきたプロトコル・オメガ。そんな彼らの姿は、円堂の瞳にはどこか純粋にサッカーを楽しんでいるように映っていたのだ。

 

円堂「だから俺は信じる……っ!どんなに未来でも、どんなに時間が空いてたって……!サッカーの価値観だけはーーー変わらないってことを……っ!!!」

 

 魂を震わせる咆哮。

 ピッチを吹き抜ける熱風とともに放たれた円堂の言葉は、単なる『希望的観測』ではない。

 幾多の試練を乗り越え、かつて敵であった者たちとも心の汗を流し、絆を紡いできた男だからこそ口にできる、揺るぎない『真実』だった。

 

 ……しかし。

 熱く脈打つその場の空気を一瞬で凍りつかせるように、白銀の道化師は深々と、鬱陶しそうに溜息を吐き捨てた。

 

REON「ハァ〜……。だから、オレをエルドラド(あんなクズ共)と一緒くたにすんなっての……」

 

 指先で自身のこめかみをトントンと叩きながら、底冷えのする眼差しで円堂を見据える。そこに熱意への敬意も、青臭さへの怒りすらもない。強いて言うのならば……途方もない不快感と冷徹さだけだった。

 

REON「オレって旧人類はだいたい嫌いだけど、特に熱血系は反吐が出る程度には嫌いなんだよね〜♭ 本当は、そこの稲魂雷牙(金髪ライオン)から狩るつもりだったけど〜〜〜♪」

 

 不快感を隠そうともせず、怠そうにこめかみを掻くREON。

 だが次の瞬間、その死んだ瞳がゆっくりと円堂を捉え、右脚が優雅かつ禍々しく大きく振り上げられた。

 

REON「とってもムカついちゃったから、円堂守(キミ)から壊すとするか♪」

 

円堂「く……っ!!」

 

冬花「ダ、ダメっ!!!逃げて……っ!!円堂くんっ!!!」

 

 親友と瓜二つの容貌をした道化師が、満身創痍でピッチに突っ伏す円堂へ、あまりにも冷酷な『殺意』を突きつける。

 

 サッカー生命どころかーー文字通り命の終わりすら予感させる理不尽な暴力の直前。

 円堂守という一人の少年に秘かな想いを寄せる少女の、裂けるような悲痛な悲鳴がスタジアム全体に木霊した。

 

 ……その瞬間(とき)だった。

 

ーーバリーーーンッ!!!!!

 

 REONが振り上げた脚を振り下ろす、そのコンマ数秒前。

 スタジアム全体の空間を揺さぶるように、まるで空間そのものが砕け散ったかのような甲高い破壊音が響き渡る。

 

 だが、満身創痍の身体で周囲を見回しても、どこかのガラスが割れた形跡などどこにも存在しない。

 

REON「おっと……。第(・)一(・)陣(・)が(・)破(・)ら(・)れ(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)た(・)か(・)……」

 

 音の正体を察したREONは、心底うんざりしたように溜息をつくと、先程まで向けられていた圧倒的な『殺意』をあっさりと霧散させ、空(・)の(・)一(・)点(・)へ(・)と(・)視(・)線(・)を(・)向(・)け(・)た(・)。

 

立向居「あ、あれは……!!?」

 

木暮「おいおい……!ただでさえ、あり得ない連続だってのに、今度はなんだよ……っ!? もう、俺の頭はパンク寸前だっての……っ!!!」

 

飛鷹「空が……割(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)……!!??」

 

 突如として上空に穿たれた、空間の巨大な亀裂。

 その歪んだ裂け目を押し通るように現れ、スタジアムを見下ろすように滞空したのは……『+』と『−』に似た謎の紋章が刻まれ、二つの銃口を不気味に覗かせる、紅のドローンだった。

 

雷牙「オイ、守……ッ!!アレってよォ……!!!」

 

円堂「ああ……っ!! 流石の俺も覚えてる……っ!!!」

 

 周囲の誰もが未知の機械(ドローン)の出現に混乱を極める中、雷牙と円堂の二人だけは、泥塗れの顔に不意に不敵な笑みを浮かべた。

 

 何せーー形状や装飾こそ違えど、その二つの銃口が醸し出す気配は、1年前に未来からの襲撃者を打ち払い、未来を切り開く鍵となったあの奇跡のデバイスと全く同じだったのだから。

 

『ピー、ピー。対象ヲ補足。コレヨリ……ミ(・)キ(・)シ(・)ト(・)ラ(・)ン(・)ス(・)ヲ(・)開(・)始(・)シ(・)マ(・)ス(・)』

 

 二つの銃口を下方に向けたドローンは、淡々とした無機質な電子音をピッチ全体へ響かせる。

 

 そしてーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銃口から解き放たれた11発の光弾(オーラ)が、寸分の狂いもなく、満身創痍の【イナズマジャパン】全員の全身を撃ち抜いた。

 

REON「なーるほど……。簡単にはオレの妨害電波を解除出来ないとみるや、そうきたか……」

 

 突然の着弾に、ベンチの仲間たちは悲鳴を上げて思わず立ち上がり、倒れた仲間のもとへ一斉に駆け寄ろうとする。

 ……だが、驚くべき事に彼らは傷一つ負っていなかった。

 

 それどころか……立ち上がる事すら不可能だった筈の満身創痍のイレブンが、吸い込まれるように力強くピッチへ踏み出す。

 

 その全身から溢れ出す圧倒的な光と共に、一人一人の姿に、未知の『変化』が起こり始めていたーーー

 

不動「なんだこれ……!これまでは大きく違う、新たな“戦略”が頭ン中に広がってきやがる……ッ!」

 

ーー1の力:人を見抜き大局を見抜く、静と動を併せ持つ真実のゲームメーカー

 

風丸「脚が……全身が軽い! 仲間達の背中を守る風がーー新たな追い風が俺の中に巻き起こってる……ッ!?」

 

ーー2の力:仲間の勇気を奮い立たせ、鉄壁の守りに変えるカリスマディフェンダー

 

鬼道「不思議な感覚だ……。力が満ち溢れると同時に、限界以上に頭が冴え渡っている……」

 

ーー3の力:未来をも見通す状況推理能力で敵の急所を突く正確無比のミッドフィルダー

 

円堂「スゲェパワーだ……!何が起こったかはよく分かんないけど、これなら行ける気がするぜ……っ!!!」

 

ーー4の力:大国を治める力、強靭な行動力と実行力を持つ鉄壁のキーパー

 

染岡「ヘッ……! どこから飛び込んできた力か知らねぇが、不思議と悪い気はしねェ!!縦横無尽に暴れ回ってやるッ!!!」

 

ーー5の力:海のように広い心で攻守を繋ぐ架け橋となるスーパートリッキーミッドフィルダー

 

豪炎寺「長い旅の果てに結んできた俺達の“絆(サッカー)”は……誰にも断ち切らせやしないッ!!!」

 

ーー6の力:稲妻のように素早く斬り込む速さ、電光石火のスピードストライカー

 

吹雪「北海道の風とも、世界の風とも違う……未知の風。でも、不思議とすごく心地いい。僕の知らない新しい風が吹き抜けていく……!」

 

ーー7の力:自由自在に空間を活かし空を制するフライングディフェンダー

 

熱也「溢れる……!俺の中の“野生”が満ち溢れやがる……ッ!!もう抑えられねェ!!!俺の“野生”はいつでもギラギラ、ワイルドオープンだッ!!!!!」

 

ーー8の力:太古の力を宿し、その牙の力は海をも割るダイナミックミッドフィルダー

 

ライト「な、なにが起こってるの〜、雷牙〜〜!!??ボクの全身がキンキラキンだよ〜……!!??」

 

ーー9の力:野獣の獰猛さと賢者の頭脳を持つファンタジックリベロ

 

雷牙「……さァな、だが一つだけ言える事があるぜ……。コイツは、間違いなく未来からの送りモンだッ!!!」

 

ーー10の力:絶対的な勇気と揺るぎない実行力で大地をも味方にするキングオブミッドフィルダー

 

ヒロト「身体の内部から際限なく溢れ出るような、このパワー……!まるで“天災”だ……ッ!!!」

 

ーー11の力:灼熱の熱風と激震する雷鳴の力で全てを貫くオールラウンドプレイヤー

 

 これは未来から襲来せし“絶望”に抗う、唯一無二の絶対的希望ーーかつて時空の危機を打ち破った伝説の英雄・【時空最強イレブン(クロノストーム)】の力が、時代と時空をも超え、今ここに再度集結した……!

 

REON「………」

 

 ……だが、その天地を揺るがすほどの覚醒を前にしても、白銀の道化師の笑みが消えることはない。

 REONは私服のポケットに両手を突っこむと、退屈そうに肩をすくめ、上空で静かに滞空する紅のドローンへと滑らかに視線を向けた。

 

REON「中々面白いサプライズをかましてくれるじゃないの、時空管理局?そのオーラの提供は、打てる策が無いが故の苦肉の策かい?それとも……“彼ら”に敗れたオレへの嫌がらせかい?」

 

 その瞳に宿るのは、驚きでも焦りでもない。

 過去の不快な記憶を思い起こされた事に対する、深い底冷えのする苛立ちだけ。

 

 それでも……上空に滞空するドローンは、その問いに答える事はない。

 

REON「……まァ、いいや☆ 今はキミ達に感謝するよ〜♪ オレにちょっと早めの“復讐”を与えてくれて♭」

 

雷牙「まだ試合は終わっちゃいねェ!!!散々、痛め付けてくれた礼だ……!オメーに相応しい敗北ってヤツをプレゼントしてやんぜッ!!!」

 

 時空を超えた伝説の力をその身に宿し、再び立ち上がった【イナズマジャパン】。

 己の誇りと仲間達の未来を勝ち取るべく、十一色の闘志の炎が今、最高潮となって燃え上がる。

 

 反撃の牙を剥くクロノストームと、愉悦に瞳を歪ませる白銀の道化師ーーー運命を賭した激動の後半戦、残り時間は既に……15分を切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

TEAM SELECT

 RAIMON ELEVEN

 ???

▶︎Time-Space Administration Bureau

ーーーーー

《No side》

ーーーーー

雷冥「フゥ……!間一髪……何とか間に合いましたね……」

 

No.10「チカ……レタ……」

 

 場面は変わり、時空管理局の特別オペレーションルーム。

 

 ホログラムモニターに映し出された【イナズマジャパン】の選手達は劇的な変化を遂げていたが、この部屋の空気にはさほど大きな変化はない。

 

 現場の指揮を執る稲魂雷冥は、スーツの袖で額に浮いた冷や汗を静かに拭い、紅のドローンこと『ミキシマックスドローン』を現地へ送り届けるという大功を立てたNo.10は、すっかり疲弊しきった様子でデスクへと突っ伏す。

 

 そして……熾烈な死闘などどこ吹く風で酒盛りに興じるフードの男の足元には、先程よりも更に増えた空き缶が転がっている。

 

 ……だが、そんな空間の中でも、たった一つだけ『明確な変化』が存在していた。

 

雷冥「各世代の偉人たちの生命オーラをご提供いただき、感謝いたします」

 

???「フフ、礼には及びませんよ。貴方には、“マインドイーター事変”の際には手を貸していただいた恩がありますからね。それに……円堂守と稲魂雷牙は、私(・)に(・)と(・)っ(・)て(・)も(・)無(・)関(・)係(・)の(・)先(・)人(・)で(・)は(・)あ(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)」

 

 そう。『明確な変化』とはーーモニターの傍らに静かに佇むその青年の存在だった。

 美しい緑の髪をたなびかせ、まるで兎の耳を思わせる独特なシルエットを結ったその佇まいは、殺伐とした作戦室にあって異質なまでの気品と穏やかさを纏っている。

 

雷冥「……まァ、確かに“マインドイーター事変”の際には色々ありましたからね。色々と。それでも、時空管理局にご協力いただき感謝しますよ。……支援者F殿?」

 

???「……だから!その呼び名はやめてくださいって言っているでしょう……!あれは、盗聴を恐れて仕方なく名乗ったコードネームであって……!」

 

雷冥「ハハハ、失礼。冗談ですよ、冗談。……ですが、この感謝の気持ちだけは本物です。貴方のおかげで、土壇場で最良の時間を稼ぐ事が出来ました。改めて、心からの感謝を申し上げます。『支援者F』改めーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイ・ルーン殿」




【イナズマジャパン】に与えられた、時空最強イレブンのオーラ割り振りは以下の通りです。
 
不動=織田信長
風丸=ジャンヌ・ダルク
鬼道=諸葛孔明
円堂=劉玄徳
染岡=坂本龍馬
豪炎寺=沖田総司
吹雪=トーチャン
熱也=ビッグ
ライト=マスタードラゴン
雷牙=アーサー王
ヒロト=クララ・J

ちょこちょこ、地の文の説明文とポジションが合わない選手がいますが、そこらへんは大目に見てください(笑)。
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