まあ、空気が重いのは序盤だけで、もう少し話が進めば従来の明るさが戻って来ると思います。てか、戻ってくれないと作者がキツい。
王将『し、試合終了ォォォォォ!!!!! 手に汗握る激戦の末に、勝負を制したのは……!まさかまさかの【劇団・天魔】だァァァァァ!!!!!』
立向居「円堂さんが……イナズマジャパンがーー負け、た……?」
『世界一』の称号を抱く【イナズマジャパン】の完敗を喫した。
それも……
REON「ククク……アッハハハハハッッッ!!!いいねェ!!!その如何にも負け犬然とした無様な面ァ!!!オレはその顔が見たかったァ!!!!」
静まり返るピッチ上にはーー勝者となった“白銀の道化師”の狂気染みた高笑いだけが、冷たく不気味に響き渡っていた。
鬼道「……答えろ、REON……ッ!! 勝者となったお前は……敗者となった俺達を……一体どうするつもりなんだ……ッ!?」
REON「ん〜〜??? ・・・あっ!!そういやそうだった〜☆」
そもそも【イナズマジャパン】がFFスタジアムへと強行拉致され、【劇団・天魔】との理不尽な試合を受け入れざるを得なかった理由ーーそれは、REONから『拒絶すれば命の保証はない』と直々に脅されていたからに他ならない。
勝利すれば無事に解放すると約束されてはいたものの、敗北した場合にどんな結末が待っているのかまでは一言も明かされていない。
……だからこそ、
しかしーー当のREON本人は、鬼道に追求される今の今まで、その“未来”すら完全に頭から抜け落ちていた様子だ。
REON「正直に言うとさ〜。オレが用あるのって、実はそこでボロ雑巾みたいに無様に倒れてる金髪ーー“稲魂雷牙”だけなんだよね〜〜」
豪炎寺「雷牙……だ、と……!!?」
REONは死人の如く光の消えた瞳を、冷たい地面に横たわる稲魂雷牙へと向ける。
今の雷牙は“
……だが、その“怪物”としての誇り秘めた蒼き瞳だけは未だ光を失わず、目の前の道化師へ強い反抗の意を鋭く突きつけていた。
REON「ワ〜オ☆ 切り札を使っても、非力なオレ相手に『無様で』・『足元にも及ばず』・『完膚なきまでに』負けたってのに、ま〜だ闘志がバチバチとは逆に流石だネ〜♪」
夏未「や、やめなさい……ッ!!稲魂君に……!何をするつもりなの……っ!?」
REON「あ〜あ〜、そこら辺は心配しないで〜〜♪
ーーパチンッ!!!
REONが軽快に指を鳴らした瞬間、空間の歪みから突如としてサッカーボール型のデバイスが彼の右手の上に出現する。
REON「んじゃ、勝者としての権限発動〜〜♪」
間髪入れず、REONが装置中央の紫色のボタンへと手を翳すとーーー
《封印モード》
ピッチ全域に冷たく無機質な電子音が鳴り響き、ボール型デバイスから倒れ伏す雷牙へ向けて、不気味な薄紫の光線が照射された。
雷牙「グ……ッ!!ガァァァァァ!!!???」
光線を全身に浴びた瞬間、雷牙の肉体が光の干渉を受けて不自然に揺らめき、指先から順に紫色の粒子へと分解され始めていく。
ライト「雷牙っ!!!」
苦悶の叫びを上げる雷牙。だが、誰も彼の救出へ向かう事は出来なかった。
ピッチ上のイレブンは全身を襲う凄絶なダメージのあまり一歩すら動けず、ベンチのメンバーも立ち塞がる“天使”と“悪魔”達に阻まれ、ピッチへ足を踏み入れる事すら叶わずにいた。
雷牙「この俺、を……!封印する、だと……!!?」
REON「ンthat's right!!! 喜びなよ、稲魂雷牙☆ キミがコレから向かうのは、一度囚われれば最後、意識を保たれたまま指一本動かすコトすら叶わない“時の牢獄”さ♪ でも、安心して☆ キミの犠牲はムダにはしないから♪」
雷牙「ざけん、じゃ……ねェ!!!!!」
ーーバシュウッ!!!!!
REON「ぬおッ!!??」
これから訪れる己の絶望の末路を真っ向から拒絶した雷牙が、狂気の道化師を殺意の眼差しで射抜いた、その刹那。
雷牙の全身から爆発的な黄金のオーラが吹き荒れ、今まさに粒子となって分解されかけていた肉体の崩壊を、その力尽くの執念で一時的に食い止めてみせた。
REON「マジ……!?」
雷牙「俺はなァ……!!! やんなきゃいけねェ事が山ほどあんだよ……ッ!!! オメェのようなよく分からん、狂人如きに……!俺の未来を潰されるワケにゃあ、いかねェんだよォォォォォ!!!!!」
しかも、ただ食い止めただけではない。雷牙が解き放った黄金のオーラに呑まれ、デバイスが照射していた封印の波動が不可解な暴走を起こして逆流を始める。
同時に紫の粒子となって分解されかけていた雷牙の肉体が、その怪物的な気迫に引き寄せられるように、徐々に、だが確実に復元されていく。
REON「カァ〜〜……。コレは完全に予定外……。まさか、円堂大介と違って完全な気迫だけで、『封印モード』から逃れかけるなんてね……。んじゃあーーー
《承認。ブーストモードON》
だが、現実はあまりにも無情であった。
雷牙「グ……ッ!!?」
ようやく希望の光が差し込んだと思われた直後、REONが低く冷たい声色で封印の出力を上げる指示を下した瞬間、復元されかけていた雷牙の肉体が再び紫の粒子となって激しく崩壊し始める。
豪炎寺「なん、だと……! ようやく雷牙が、逃れた筈、なの、に……ッ!!」
REON「実は、この……あ〜……正式名称なんだったっけ?……まっ、いっか!このデバイスは特注品でさ〜。元は盗h……ゲフン!ゲフン! 死ぬまでお借りした一品を、オレが魔改造したってワケ☆」
雷牙「クソ……ッ!クソ……ッ!!クソ……ッ!!! まだ……終わるワケにはいかねェんだよ……ッ!!!!」
過剰なまでのブーストが掛かってもなお、全身を削りながら必死に抗い続ける雷牙。
……だが、ブーストされた封印の波動は更に威力を増していき、もはや雷牙一人の気迫だけでは抗いようのない領域へと達していた。
ーーーその
???「“ゴッドハンド”……ッ!!!!!」
“怪物”すらも抗いようのない『現実』へと屈しかけたその瞬間ーー突如として顕現した巨大な“黄金の右手”が、雷牙を慈しむように、そして力強く護るようにその前へと立ち塞がった。
まるで太陽のように暖かく、どこまでも力強い“光”ーーー。
雷牙を包み込むその輝きの主はーー当然。
REON「オッヨ〜〜???」
雷牙「まも、る……!!?」
稲魂雷牙の最高にして最高の親友ーーそして、守護神の証たる背番号『1』を背負う男、円堂守であった。
円堂「く……っ!!こいつは……流石にヤバいな……っ!!!」
円堂の代名詞である“ゴッドハンド”が封印の波動を遮った事で、崩壊しかけていた雷牙の肉体は元へと戻った。
だが、円堂自身は親友を襲ったその封印がどれほど危険な代物であるかを、全身の皮膚と筋肉で痛烈に感じ取っていた。
それを示すかのようにーーあれほど眩い輝きを放っていた“黄金の右手”は、紫の粒子に侵食され、瞬く間に崩壊寸前へと追い込まれていく。
雷牙「何、やってんだ……守……ッ!!! 俺の事はいい……!だから……オメーは逃げ、ろ……ッ!!!」
自分を庇う事で円堂まで巻き込まれる事を恐れ、雷牙は今すぐ逃げるよう必死に促す。
だがーーー
円堂「……ダメだ」
短く、しかし一切の揺らぎすらない声で、“背番号『1』の男”はその言葉を即座に拒絶した。
円堂「俺は……バカだから、あいつがーーREONが何を考えてるかは分からない……。だけど……!! 雷牙を利用して、悪事を働こうとしていることだけは分かる……っ!!!だからーーー」
ーーシュル……
封印の波動によって、“
円堂は頭部に巻き続けていた橙色のバンダナを解くと、迷いなく
生き別れた祖父から受け継ぎ、
雷牙「守……ッ!?な、何を……ッ!!?」
円堂「だから……!あとは……任せたぜっ!!!」
ーーシュンッ!!!!
親友へ後の全てを託し、迷いのない不屈の笑みで力強くサムズアップしてみせたーーその直後。
円堂の肉体は完全に紫の光の中へと呑まれ、デバイスの奥へと吸い込まれていった。
雷牙「守……ッ!守ゥゥゥゥゥーーーーッッッ!!!!!」
世界最強の守護神を失ったピッチ。そこではーーただ、親友を失った“怪物”の悲痛な絶叫だけが、虚しく木霊していた……。
染岡「円堂が……封印されちまった……?」
風丸「こんな事が……あり得るのか……?」
雷牙だけではない。古くから円堂と共に苦楽を共にしてきた者達は、『円堂守が封印された』というあまりにも惨烈な現実を受け止めきれずにいた。
……だが、この男ーー今、目の前で起こった悲劇の元凶だけ違った。
REON「ウ〜ン……マズったなァ。オレの計画に利用するのは円堂守でもいいけど、彼のクロノストーンは色々と悪影響を及ぼすコトは、100年前に証明済みだし……」
全て惨劇の元凶ーーREONは何一つ悪びれる様子もなく、ただ不満そうに口をへの字に曲げて悩んでいた。
フィールドプレイヤーに比べてダメージが浅いとはいえ、数週間は寝たきりになるほど痛めつけた筈の円堂が、なおも動きを見せた事。
それは旧人類を悉く掌の上で踊らせてきたREONにとって、本日二度目の『想定外』であったのだ。
……しかし、すぐにREONは何かを思いついたようにポンッ、と不快な音を立てて手を叩いた。
REON「な〜んだ♪ よくよく考えれば、別に悩む必要はないじゃ〜ん! だって、もう一回封印すればいいだけだし♪」
円堂守が命を懸けて繋いだ“意志”すらも嘲笑うかのように、REONは無慈悲にも再びデバイスを雷牙へと向ける。
雷牙「テメェ……!そんな酷ェ真似、して……オメェの心は痛まねェのかよ……ッ!!!」
REON「いや全然? 安心しなよ〜♪ 特別に、キミは円堂守と同じ時の牢獄に入れてア・ゲ・ル☆ 彼と再会した時には、こう言ったらどう?『ムダな努力お疲れサマ』って♪」
雷牙「テメェ……!!!」
人の命すらも紙切れのように弄ぶ、REONの非道な態度にこの上ない怒りを覚えた雷牙は、血が滲むほど強く奥歯を噛み締め、殺意を込めて目の前の道を睨みつける。
だが――旧人類のどれほど激しい“怒り”であっても、狂気の道化師の心を揺さぶる事はない。
彼は無情にも再び雷牙を封印するべく、紫色のスイッチへとその手を翳した。
雷牙(すまねェ……守……ッ!!)
親友が命を懸けて繋いでくれた未来すら、呆気なく踏み躙られていく悔しさと無力感が全身を巡る。
視界が急速に紫の光へ染まり、意識すらも暗闇へと引きずり込まれかける。
激しい後悔と絶望が“怪物”を呑み込まんとしたーーまさにその刹那。
奇跡は起こった。
ーーズドォォォォォン!!!!!
鬼道「こ、今度は何だ……ッ!!?」
上空の雲ーーいや、次元を切り裂き、大気を激しく震わせながら、一筋の凄絶な衝撃がスタジアムのピッチへと垂直に突き立った。
???「久しぶりだな……。REON……ッ!!!」
深く立ち込めた砂煙の奥から響き渡る、まるで“魔王”の如き低く冷徹な威厳を纏った声。
しかしーー同じ冷たさを帯びていようとも、人の心を持たぬ愉快犯・REONのそれとは決定的に異なり、その声の裏には、揺るぎない覚悟と確かな“正義”の志が秘められていた。
雷牙「その……声は……!」
ヒロト「ライト……!彼はまさか……!!」
ライト「うん……っ!! 多分……そのまさか……っ!!!」
大半の者が突如現れた声に困惑する中、ごく一部の者達だけは、その声色にいち早く反応して僅かに頬を緩ませる。
そしてーーREONもまた、先ほどまでのヘラヘラとした嘲笑を消し去り、心底ウンザリした様子で不機嫌そうに顔を歪ませていた。
REON「おっとォ?その“魔王”の威厳を表現しようとした結果、普通に読みにくくなったフォントはまさか……」
突如現れた“何者か”は、不意に右手を勢いよく振り払う。
その強烈な風圧によって、全身を包み込んでいた砂煙は、瞬く間に四方へと消し飛ばされた。
その中から姿を現したのはーー小洒落黒スーツを着こなし、頭髪は濃い青に染まり、青空を思わせる
そしてーーー
綱海「何だ、あいつ……!?稲魂にそっくりーーってか、髪が青くなった稲魂まんまじゃねェかッ!!??」
驚くべき事に、その青年はREON以上に、稲魂雷牙と瓜二つの顔立ちを持つ男であった。
REON「へェ〜?オレが展開した妨害電波を潜り抜けられたんだ? あ〜あ、割とショック〜〜。結構自信作だったのにな〜☆」
???「生憎、我が部隊には、生意気である事を除けばこの上なく優秀な部下が居るのでな。全てが貴様の思い通りになると思うなよ?」
REON「Oh〜〜、怖い怖い。そんな顔をしなくてもいいダロ〜?コードNo.666ーーいや、
雷冥「貴様のような悪漢に、誇り高き我が名を呼ばれる筋合いは無いッ!!!」
力強く地を蹴り踏み込んだ瞬間、稲魂雷冥と呼ばれた青年の青髪の一部が白銀へと染まり、全身から溢れ出る蒼炎の如きオーラが極限まで洗練されていく。
その姿はまさしくーーー
不動「んだと……ッ!!? あの変化……!クソライオンの“
雷牙が己の限界を削り取って辿り着いた、人類最高峰の境地。
それを、目の前の“怪物”と瓜二つの青年は一切の負荷すら感じさせず、ごく自然に、呼吸と同じように発動してみせたのだ。
言葉を失うイレブン。……だが、彼らが覚えた戦慄は、それだけでは終わらない。
ーーズキンッ……!!!!!
雷冥が放つ蒼銀の威圧感がピッチを支配したその刹那、その場にいる一部の者の頭脳を、割れるような激痛と強烈な眩暈が襲う。
豪炎寺「何、だ……!?この……記憶は……!!?」
鬼道「俺が……俺達が知っている歴史とは、まったく違う“記憶”が頭に流れ込んで来る……!?」
綱海「お、おい……!どうしたんだよ!!?」
REONへと襲いかかる青年の姿を目にした者達の脳裏へ直接流れ込むのは、存在する筈がない、だが確かに存在している異質な“記憶”ーーー。
それは間違いなく、かつて自分達が駆け抜けたFF決勝戦での光景。
だが、そこに立ち塞がる雷門イレブンの対戦相手は世宇子中ではなく、王牙学園なる見た事も聞いた事もない謎の学園……。
その圧倒的な実力に叩きのめされ、破滅寸前へと追い込まれる中ーー未来より現れた時代を超えた助っ人達。
そしてその中には……今、目の前で闘う青髪の青年の姿もあったのだ。
風丸「思い出した……!い、いや……!別世界の俺達の記憶が……同期した、のか……?」
熱也「だから……ッ!!言ってる意味がさっぱり分かんねェよッ!!!」
ヒロト「……皆。何が起こっているか、理解が追いつかないと思うが……俺の言葉を信じてくれ……!彼ーー稲魂雷冥は、間違いなく俺達の味方だ……ッ!」
ヒロトの確信に満ちた叫びを証明するかのように、雷冥は地を割り、爆風を巻き起こしながらREONへと肉薄していく。
REON「オイオイ……。いきなり殴り掛かるだなんて、物騒極まりないなァ。コレはイナイレの二次創作小説なんだよ?せめて、その怒りはボールにぶつけてくんない?」
雷冥「貴様のような外道に掛ける慈悲などあると思うか?」
二人の間で交わされるのは、サッカーバトルや試合などという生優しいものでは決してない。
互いの矜持と殺意が剥き出しで激突するーー正真正銘の肉弾戦だ。
先に仕掛けたのはREON。おどけた仕草から一転、殺意を秘めた凄絶な手数を叩きつけていく。
常人であれば視認すら不可能なその爪牙に対し、蒼銀の気を纏う雷冥は顔色ひとつ変えない。
“極”の境地によって極限まで研ぎ澄まされた視界で軌道を見切ると、最小限の頭部のかわしと掌打のみで、REONの鋭い打撃を冷酷なまでに全てあっさりと捌いてみせた。
REON「おっとォ……!?」
雷冥「遅い」
空を切ったREONの体勢が一瞬だけ流れた隙を、雷冥は見逃さない。
軸足を力強く踏み込むと同時に、蒼炎の如きオーラを乗せた渾身の一閃ーー鋭利な重斧の如きカウンターの足蹴りを、REONの胴体へ正確無比に叩き込んだ。
ーードガァァァァァンッ!!!!!
REON「ごふッ……!!?」
ミシリ、と歪な骨鳴りが響き、REONの肉体が猛烈な風圧と共に横殴りへ吹き飛ばされ、ピッチの芝を激しく捲り上げながら転がっていく。
染岡「ス、スゲェ……!俺達が手も足も出なかった、REONを相手に互角に立ち回ってるぜ……ッ!!」
吹雪「いや……それ以上だ……!」
ピッチの冷たい地面に片膝をつくREONと、冷淡な眼光で彼を静かに見下ろす雷冥。
彼らの視線の高低差は、そのまま両者の間に開く実力差でもある。
だがーーー
REON「クハハハ……!流石は時空管理局のスーパーエース……!!流石に真正面からじゃあ、キツいかァ……!!!」
激痛に顔を歪ませ、悶絶しながらもーー“白銀の道化師”は、どこまでも狂ったような嘲笑を崩してはいなかった。
雷冥「……最後の慈悲だ。今スグ、無駄な抵抗を止め、円堂守を解放しろ。そうすれば命だけは助けてやる」
REON「ハァ〜……。よく言うよ、元よりオレを殺すつもりは無いクセに。大方……時の狭間にポイっとして、檻に入れてなんかずっと暗い所ーーってトコだろ?」
REONは、ワザとらしく痛む腹を押さえながら、おどけた調子で深い溜め息をついてみせる。
どれだけ『法』と『秩序』の“魔王”を気取っていようとも、雷冥が自分をその場で処刑する事などあり得ないーーそんな甘さすらも、道化師にとっては織り込み済みのシナリオに過ぎなかった。
REONは歪んだ笑みをそのままに、不気味に瞳を細めると、雷冥の後方に佇むマネージャーへと、ねっとりとした視線を滑らせる。
REON「……それにさ〜、キミにとっての“アキレス腱”は稲魂雷牙だけじゃないコトはオレだって知ってるんだよ〜??」
雷冥「………」
REON「そもそも……オレが何のタメに、
ーーズガァァァン!!!
意味深な会話を嘲笑うかのように打ち破り、爆音と共に解き放たれたのは、ピッチ脇のベンチーー無防備な“ある人物”を標的とした、凶悪この上ない殺意の
その軌道上の終着点に居たのはーーー
夏未「きゃああああッ!!?」
雷牙「あのヤロー……ッ!!! 避けろッ!!夏未ィィィィィ!!!!!」
雷門夏未だ。しかも……タチの悪い事に、REONは無作為ではなく明確な殺意を以て、彼女を狙っていた。
REON「さァ、時空を守るヒーロー!? “トロッコ問題”のお時間だよ♪ 凶弾に晒された少女を見捨ててオレを選ぶかッ!? それとも、オレを見逃して少女の命を守るかッ!? どちらかお好きな方を選びなよォ!!!」
思考すら凍りつく速度で迫る破滅の一撃。
一人の犠牲と正義の完遂を天秤にかけさせ、相手の判断力を鈍らせようとする道化師の狡猾な奇襲ーーー
……しかし。
雷冥「決まっている。私の使命はーーー
貴様を裁く事だ」
ーーズドォォォォォン!!!!!
無防備な少女の肉体を凶弾が貫くよりも早くーー蒼炎の魔王による慈悲も容赦もない一閃が、再び“白銀の道化師”の腹部へと深々と突き刺さった。
REON「グフ……ッ!!? マ……ジ……!!??」
この雷冥の冷徹極まる判断には、さしのREONも驚きを隠せずにいた。
雷冥にとって、稲魂雷牙および雷門夏未が歴史において極めて重要な人物である事は周知の事実……。
彼らが命の危険に晒されれば、どんなリスクを負ってでも救出に向かう筈だーーそう高を括り、揺さぶりをかけたというのに、その目論見は見事に打ち砕かれてしまったのだ。
人質すら躊躇なく切り捨てる冷酷な選択。これを驚かずに何と表現するというのだろうか。
REON「酷……いなァ……。キミに、は……人の心ってモンはない、の……???」
雷冥「貴様に言われてはお終いだ。それに……
REON「ヘェ……?」
場面は変わり、道化師が解き放った魔弾が夏未の生命を奪わんと牙を剥いた瞬間。
何とかシュートへと反応出来た控え選手達は、“天使”と“悪魔”の壁に阻まれて数メートル先の救出へすら向かう事すら出来ず、周囲の少女達は突如迫る破滅の光景を前に、脳の処理すら追いついていなかった。
もはや、救出は不可能かーー誰もがそう諦めかけた、まさにその刹那……。
???「……“キングレオーネ”」
突如として顕現した巨大な“黄金の獅子”が、襲い掛かる殺意の魔弾をその強靭な顎で噛み砕く。
ーーズババァァァァン!!!!!
夏未「え……?」
首の皮一枚のところで
だが、絶望の縁から生き延びた彼女の脳裏を支配したのは、生き残れた事への“安堵”などではなくーー拭い去れぬ強烈な
夏未「今の技は……“キングレオーネ”……!?」
“キングレオーネ”ーーそれは、“雷撃の
彼が誇る数多くの強力な必殺シュートの原点であり、雷牙はこの技を核として発展させる事で、幾多の死闘を制し、勝利を齎し続けてきた。
……だが、その習得難易度は極めて高い。
何よりも、限られた者のみに発現する“特殊な筋肉”を活用しなければ十分な出力を発揮出来ない、まさに選ばれた者しか行使を許されない奥義なのだ。
夏未が抱いた“疑問”の根幹は、まさにそこにあった。
稲魂雷牙を除き、この技を同等の精度と威力で放てる者など、世界を探したところで彼の兄である稲魂雷斗ただ一人……。
しかし……その二人のいずれも、REONによる激痛とダメージによって指一本まともに動かせない重創を負っており、現に夏未に死の危険が迫った局面であっても、救出へ跳び出す事すら不可能な状態であった筈なのだ。
ましてや相手は、雷牙が最高到達地点たる“
仮に雷牙や雷斗が最後の力を振り絞って放ったのだとしても、“キングレオーネ”程度の威力では、REONの放った殺意の魔弾を完全に無効化する事など到底不可能である。
夏未「それなら……誰が……?」
可能性のある二人は未だ身動きが取れず、平行世界の自分の記憶から雷牙の子孫だと把握している稲魂雷冥は、迷わずREON本体への攻撃を選択した……。
少なくとも……彼女の知る限り、その条件に該当する人物はこの場に存在する筈がなかった。
REON「……誰だい?
そうーー少女の知る『常識』の範囲内では。
???「……ただの、死に場所を失った“老兵”だ」
今の一撃に漂うただならぬ気配を察したREONは、声を低く落とし、“
そこに居たのはーー太々しく両手をポケットへと突っ込んだまま、ゆっくりとピッチへ向かって歩みを進める、一人の男の影であった。
雷牙「んだよ……今の“キングレオーネ”は……!?俺やライトとは……明らかに次元が違い過ぎる……ッ!?」
ライト「……いや……まさか、ね……」
雷牙「ライト……?」
突如現れた謎の“キングレオーネ”使い。だが、その素顔を知る者は誰もいない。
何せ、初めて雷牙たちの前に姿を現した時のREONと同様、その男もまた、深く被ったフードで顔を覆っていたからだ。
しかしーー果てしない狂気を宿しながらも身なりだけは清潔に整えているREONとは対照的に、男の身に纏うものは全てがボロボロ。一歩近づく度に鼻をつく強いアルコールの匂いも相まって、その佇まいはもはや浮浪者そのものであった。
だがーーー
REON(……コイツ、
雷冥を相手にしてもなお、どこか余裕を崩さずにいたREONが、その浮浪者の男に対しては下手すれば雷冥をも凌駕する強い警戒感を露わにしていた。
気怠げな立ち振る舞いの裏に隠された、170cm前半の小柄な体躯に秘められた凄絶なパワーもそうだが、何よりもーー自らの放った殺意のシュートを真正面から呆気なく無効化されたというただ一点だけで、道化師に冷や汗をかかせるには十分すぎる理由であった。
こうして、底の知れない悪意を秘めた最悪の道化師VS未来より駆けつけた蒼き魔王、そして全てが謎に包まれた放浪者とのコンビ衝突がーー今まさに始まろうとした。
ーーーと、
雷冥「……
ーーパチンッ!
豪炎寺「な……ッ!? これは……ッ!!?」
耳元のインカムから静かに指示を受け取った雷冥が軽快に指を鳴らした瞬間、【イナズマジャパン】の選手や関係者達の体が次々と蒼白い閃光に包まれ、その姿を眩い光の中へと消失させていく。
REON「おっとォ……?」
雷牙「何が……起こってやがる……ッ!!?」
雷冥「立て、祖先殿。今スグに守大叔父殿を助け出したい気持ちは解るが、ココは一旦引くぞ」
雷牙「ざけんじゃ、ねェ……ッ!!! 守を、見捨てて、オメオメと逃げ、られるかよ……ッ!!!」
雷冥「ハァ……。・・・当て身」
雷牙「ヘブシッ!!??」
ただ一人、転移の光から取り残されていた雷牙は、なおもその場に留まろうと激しく抵抗する。
……だが、ひ孫による手厳しい当て身を首筋に叩き込まれた事であえなく気絶。そのまま無造作に抱え上げられる。
REON「アッレェ〜? あんだけ、怒り心頭だったのに結局逃げるの〜?? オレもそこそこダメージを喰らったコトだし〜、今なら、オレを逮捕できるかもよ〜?」
雷冥「フン、貴様の安っぽい挑発には乗らん。だが……覚えておけ、貴様だけは必ず私の手で捉えてみせる」
そう吐き捨てるように言い放つと、雷冥はREONへと背を向け、蒼白い閃光の中へとその身を包み込んでいく。
REON「……おやァ?」
……だが、魔王の鋭い洞察力を以てしても、気付けなかった。
雷牙と雷冥が転送されるまさにその直前……REONの胸元で蠢く薄紅色の宝石ーー『クロノストーン』から、微かな淡い光が放出されるとーーー
???『ーーーー』
気絶した雷牙の身体へと静かに、溶け込むように吸収された事に。
REON「ーーハァ〜〜……。ったく……人生ってのは、相変わらず脚本通りにはいかないモンだねェ〜」
腰に手を当てながら深くため息を吐くその様子からは、先ほどの“光”の不審な挙動が、REONにとっても完全に想定外の出来事であった事が伺える。
次の瞬間ーーREONは胸元のクロノストーンをそっと手に取ると、これまでの“狂気の道化師”と同一人物とは思えぬほど優しく、まるで……宝石そのものを慈しむように語りかけ始めた。
REON「……悲しいなァ。オレはこーーんなにも、“キミ”のコトを愛してるっていうのに、キミ自身はあくまでも『拒絶』を貫き通すのかい?なァーーーー
オレの“勝利の女神”ーーー『レナ』?」
Q:リアファイとはいえ、SSC相手に圧倒できるなら、別に雷冥単独でも王牙学園を倒せたんじゃない?
A:そうっすね。