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CHARACTER SELECT
INATAMA RAIGA
INATAMA RAITO
▶︎STELLA ORO
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《No side》
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“雷帝”「親友との再会なんだ。もう少し喜んでもいいんじゃないか?ステラ」
ステラ「……よくもまあ、そんな口がほざけるモンだ……」
下町の片隅に佇む小さな居酒屋でーー時空を超えて再会を果たした、かつての『親友』同士。
先祖代々受け継がれてきた蒼い瞳を不敵に輝かせる“雷帝”と、そんな彼を苛立ちと呆れを含んだ眼光で見返すステラ。
肩を並べカウンターに腰掛けているもののーーその姿は、あまりにも対照的であった。
ステラ「そーゆーなら……。まずは死んだ筈の元・親友が居酒屋で晩酌をしている事を疑うべきじゃないか?」
“雷帝”「ああ、細かい事は言わなくていい。大体の情報は既に“少年”から聞いてる」
ステラ「少年……」
“雷帝”「そっ。どことなく、鬼乃子と雰囲気の似た銀髪のね」
ステラはその僅かな情報だけで、REONがこの世界の旧友にまで接触していたのだと察したーーが、そんな事は今の彼にとってどうでもいい細事だ。
重要なのはーー自分の記憶の中では五体満足であった筈の旧友が、今や車椅子での生活を余儀なくされているという現実だった。
ステラ「その足……」
“雷帝”「……まっ、お察しの通りさ。いよいよ、本格的に“
ステラ「自業自得。本末転倒。因果応報だよ、バーカ」
常人ならば受容しきれず絶望の底に沈むであろう、両脚の機能喪失と余命宣告。
しかし、REONとはまた毛色の異なる狂人たる“雷帝”は、まるで明日の天気でも語るかのようにケラケラと軽薄に笑ってみせるのだった。
女将「だし巻き卵と日本酒熱燗、お待ちどうー!」
ステラ「……ども」
“雷帝”「おっと。客である以上、さっさと注文を終えなければ店側に迷惑だ。そうだな……ちくわの磯辺揚げと白ワインを」
女将「はいはい!」
ワンテンポ遅れて注文を終えた“雷帝”の横で、ステラは隣の元・親友など初めから存在しないとばかりに、お
“雷帝”「相変わらずマイペースだねェ。私の料理と酒が提供されるまで待ってくれてもいいんじゃないか?」
ステラ「そういう、オマエこそ……。自分の息子を捨てたクセに、こんな所にまで来るなんて……随分と、暇なんだな」
“雷帝”「酷い言い草だなァ。こ〜見えても、私は意外と忙しいんだよ〜? マズはガルシルドから奪っーーゲフン!ゲフン! 丁重かつ合法的に頂戴した財産を有効活用した、新たな学園の設立だろ〜?それでーー」
ステラ「……もういい。詳細を聞いたところで、ロクでもない話なのは間違いなさそうだ」
“雷帝”「残念だなァ。世界が満場一致で認めた“最強”である君に、次回のFFへ向けての助言の一つや二つくらい貰おうと思ってたのに」
ステラ「………」
日本中でサッカーを愛する少年少女ならば、誰もが一度は夢見る大舞台ーーそんな象徴的な大会の名を耳にしても、ステラは興味すら無さそうにお猪口を傾けるだけだ。
何せ、今の彼にとっては一切関係のない他人の事情に過ぎない。
そしてーー何よりも。
ステラ「そもそもーーオレはもう……
かつて彼が背負っていた“怪物”の称号はーー既に捨て去った過去の遺物でしかないのだから。
ステラ「……深くは詮索するなよ。その顔面に蹴りを入れられたくなきゃな」
“雷帝”「分かった分かった。……ただ、辞めたって言ってる割にはーー
強烈なアルコール臭や繊維の傷んだボロボロのパーカーでどれだけ身を包もうとも、かつての“怪物”が彫り上げた肉体の凄まじさまでは隠しきれはしない。
あれだけ浴びるようにアルコールを流し込む自堕落な生活を送っていながら、その身に秘められたパワー・スピード・テクニックは全盛期と何ら変わっていない。
内臓、とりわけ肝臓の数値は既にボロボロに悪化しきっているだろうにーーその肉体は、体脂肪率5%の極限を依然として保ち続けていた。
“雷帝”「そもそも……その言葉の真偽も怪しいモンだね。証拠にーー足元に今しがた激しい試合を行った
旧友の鋭い指摘を受け、ステラは思わず自分の足元へと視線を落とす。
そこにはーーズボンの裾が、風圧か何かで激しく抉り取られたように裂けていた。
何を隠そう……それは紛れもなく、“未熟者”と突き放した雷牙によって付けられた爪痕に他ならなかった。
“雷帝”「ハァ〜〜……。にしてもーー
“雷帝”は純粋な“失望”と“哀れみ”をこれでもかと込めた深い深い溜め息を吐くとーーまるでなじるかのように、ステラの背中をバシバシと乱暴に叩く。
“雷帝”「オイオイオイオイ!しっかりしてくれよ〜、私の
それはーー落ちぶれに堕ちぶれた“憧れ”への容赦ない皮肉であると同時に、歪んだ狂人なりの発破でもあったのだろう。
だがーーー
ーーガンッッッ!!!!!
旧友が放った悪意ある発破は、“怪物”と呼ばれた男のーー決して触れてはならない“地雷”を綺麗に踏み抜いた。
ステラ「………」
“雷帝”「オッ!いいねェ!ようやく、瞳に
ステラ「……コレは“もしも”の話だ。別に“ifの世界”と解釈してくれても構わない」
感情に突き動かされるままに激しくカウンターを殴りつけたステラの拳の前方には、彼の拳の大きさと寸分違わず同じだけの、痛々しい亀裂が刻まれていた。
きっと……ステラ自身の拳もまた、決して小さくないダメージを受けているはずだ。
それでもーー彼は“苦痛”すらも飲み込むように、ただ淡々と、しかし絞り出すように言葉を紡ぎ続ける。
ステラ「オマエの言う、その“怪物”だってーーアンタや観客と同じ『人間』だって考えた事はないのか……?たった一度でも……!“怪物”の気持ちを考えた事はあるのかッ!?」
爆発した地雷をきっかけに、ステラはもう止まらない。止められない。
ただ剥き出しの感情に導かれるままにーー
ステラ「自分が原因で
“雷帝”「オイオイオイ……」
ステラ「自分のミスで
“雷帝”「ステラ」
ステラ「世界で自分だけが残されちまった時……ッ!!!“怪物”も『孤独』を感じる人間だって思わなかったのかッ!!?」
“雷帝”「ステラッ!!!」
ステラ「教えてくれよッ!!!“
ーーズガァァァァァン!!!!!
ステラ「ハァ……!ハァ……!」
激情の赴くままに暴走したステラは……気づけば先ほど以上の力でカウンターへと両拳を叩きつけーー木枠を跡形もなく粉々に崩壊させていた。
無残に裂けた両の拳からは鮮血が止めどなく滴り落ちているが……限界を超えて分泌されたアドレナリンに支配されたステラは、痛みすら微塵も感じていない様子だ。
“雷帝”「あ〜〜あ……。言わんこっちゃない……」
人間が木製のカウンターを文字通り粉砕するなどという、常識ではあり得ない暴挙を前に、店内は一気に騒然となりーー警察沙汰一歩手前の大騒動へと発展しかける。
大将「てめェ……一体何やってんだァ、コラぁぁぁ!!! うちの店をぐちゃぐちゃにしやがって!!!」
“雷帝”「まァまァまァ。弁償代は彼の代わりに私が払うから。ホラ、コレで今回は丸く納めてくれないかい?」
激昂して包丁を掴みかねない勢いだった大将を嘲笑うかのように、“雷帝”は実に飄々とした態度で、スッと懐から分厚い茶封筒を取り出して差し出す。そこに入っていたのはーーー
大将「ひゃ、100万円……ッ!!? 本物の現ナマか……!?」
帯がついたままの、ぎっしりと詰まった1万円札の束だった。
“雷帝”「当然、本物だとも。まさか……この程度じゃ足りないかい?」
大将「い、いやいや!!!滅相もございやせん!!!」
手始めに店の責任者を大金で手懐けた“雷帝”は、間髪入れずに鋭い一瞥で周囲の客達を射竦め、警察への通報すらもその場の一言で封じ込めてしまう。
こうして、店内のパニックは瞬く間に鎮圧された。……まさに資本主義社会、ここに極まれりといったところか。
“雷帝”「さァ、邪魔者は消えた事だし……懺悔を続けようか?ステラ」
ステラ「ーーもう、オレは疲れた……。“悲しみ”を抱えながらサッカーをする事も……。観客の期待に応え続ける事も、酒で自分を偽り続ける事も……」
ズキズキと両手に走る激痛を自覚した事で、噴出していた激昂から一転して冷め切った冷静さを取り戻したステラは、力なく椅子へと深く座り込む。
そこに居るのはーー“怪物”・稲魂ステラでも、“切り札”・ステラ・オーロでもなく……ただ傷つき、疲れ果てた一人の『人間』であった。
“雷帝”「……負けたか、ステラ。“現実”に」
ステラ「ああ……ッ!負けたんだよ……ッ!!完膚なきまでに……ッ!!!ボッコボコに……ッ!!!」
“怪物”は……かつては、紛れもなく『最強』だった。そしてーーその事実は今もなお変わってはいない。
利き足をボールへ目掛けて一振りするだけで、『勝利』を手に入れた。
ピッチを駆け抜けるだけで、膨大な『富』を手に入れた。
去り際に押し寄せる万人からの地鳴りのような大歓声を受け、輝かしい『名声』を手に入れた。
『勝利』・『富』・『名声』ーーその足元に自ずと平伏し、付随してきた全てが、かつての“怪物”にとっての『誇り』そのものだった。
……だが、今となっては。その全てが虚しく、意味をなさない瓦礫同然の過去に過ぎない。
ステラ「ただオレは……!“父親”になりたかっただけだ……」
本当の本当に『大切はもの』はーー全て自らの手から零れ落ちたのだから。
ステラ「酒で自分を誤魔化す度に……“ifの世界”が脳裏を過ぎる……。ハハハ……今のオレを雷夏ちゃん達が見たら、どんな反応をするんだろうな……?」
小さく白亜の天井を仰ぎ、乾いた自嘲の笑みを零すその姿はーーもはや、“未来”も“希望”もとうに手放した、正真正銘の破滅願望者そのものだ。
そんな救いようのない破滅願望者を目の前にして、彼と同等ーーいや、下手すればもっと残酷な深淵へと自ら進んで身を投げ出した狂人は、静かにグラスを置く。
次の瞬間、その口から紡ぎ出されたのはーーー
“雷帝”「……ステラ。君は親にとっての最大の不幸を知っているか?」
それは……狂人としての“煽り”でも、
“雷帝”「私は常々、こう思っているよ。親にとっての最大の不幸とは、子を喪う事ではなくーー“実の子を愛せなくなる事”だとね」
ステラ「……ハッ。オタクが言うと説得力が違ェなぁ……」
“雷帝”「私は実の子を捨てたロクデナシーーそれは認めよう。実際問題、事実だしねェ。……だが、私に対して
ステラ「………」
“雷帝”「私は並行世界の
そう語る“雷帝”の眼差しはもはや、自暴自棄に陥った破滅願望者を嘲笑うものでも、憐れむものでもなかった。
寧ろその逆ーー自分には終ぞ絶対に手に入らなかった『モノ』を持つ
“雷帝”「分かるかい?君はまだ、私基準ではそれはそれは立派な『父親』なんだ。私が君と同じ立場なら……並行世界の息子と会うなんて死んでもゴメンだね」
ステラ「………」
“雷帝”「自ら父親としての役を放棄した私が言えた立場じゃあないが……。同じ絶望を味わいたくなけりゃ、父親としての“責任”を果たす事だ。ある意味……君はこの世の誰よりも恵まれているのだからね」
己の内に秘めた“想い”を言い終わると、“雷帝”は手元のコントローラーで車椅子を滑らかに反転させた。
無機質なモーター音だけを響かせながら、彼は一度も旧友へ振り返る事なく、木屑と鮮血が散らばる破片の山を踏み潰しながら出口へと向かっていく。
崩れ落ちたカウンターの横を通り過ぎる際、彼は胸ポケットから手慣れた動作で万年筆を抜き取ると、卓上に置かれた小さな伝票へと滑らせた。
“雷帝”「養育費代わりだ。ココの支払いは私が払おう」
一億ーーいや、一兆分の一という途方もない確率で起きた奇跡の再会は、こうして静かに幕を閉じようとしている。
……その最後の最後の一瞬ーー僅かに死んだ瞳の奥に光を取り戻したステラは、最後まで元・親友と顔を合わせる事はなかったが……彼の背中越しに小さく問いかける。
ステラ「……なァ、帝牙。俺達はーーどこで“道”を間違えちまったんだろうな……?」
それはーー“現実”に敗北した哀れな負け犬の戯言。
本来ならば……“怪物”のみに執着する狂人の足を止めるには、あまりにも儚い言葉であったがーーー
“雷帝”「……そもそも、人生に『間違い』があるという解釈自体が間違いなんじゃないか?」
ガラス戸の扉の前で僅かに車椅子を滑らせていた“雷帝”の動きが、ふとピタリと止まった。
彼は振り返りもせず、ただ暗闇の広がる夜の街を見つめたままーーまるで出来の悪い教え子を諭すかのように、静かにその口を開く。
“雷帝”「人生に『間違い』なんてモノは
ステラ「……本当に変わんないな、オマエは……」
“雷帝”「そりゃそうだろ? 大事なのは『今』だ。私は私が信じた道をブレーキを外して直進しているだけ。死んだ後で、歴史書でバカにされようが、墓を掘り起こされようがーー私には関係無いだろ?」
ステラ「……本当にーーオマエが羨ましいよ……」
本当の本当に最後の瞬間……その呟きを聞いた“雷帝”は、店を出る直前、ピタリと車椅子を止めた。
最後まで振り返る事はなかったが、その背中越しにーーどこか噛みしめるような静かな声で、ぽつりと告げる。
“雷帝”「……ステラ。私の息子に愛情を注いでくれた事を……心の底から本当に感謝している。やはり、“あの時”の判断は間違っていなかった」
ステラ「………」
旧友が去り際に残したその言葉が、ステラの耳にまで届いたのかは誰にも分からない。
ただ一つ確かなのはーーー
ーーピシャンッ!!!
“雷帝”ーー明星帝牙。
“怪物”ーーステラ・オーロ。
かつては最高の相棒であり、かけがえのない親友であり……家族も同然の間柄であった二人がーーー二度と交わる事のない、人生で二度目となる今生の別れを告げたという事だけだ。
だがーーー
REON『亡き旧友と再会できた感想はどうだい?Mr.“
夜の帷が更に深まっていく中で、“雷帝”の主演はもう少しだけ続く。
ラボへの帰路への帰路につく帝牙の眼前。
その進路を遮るように現れたのは、数刻前に彼が口にした“銀髪の少年”ーーREON、その人だった。
しかし……今の彼は、物質としての実体を伴わない、無機質な
“雷帝”「並行世界の証明と並行同位体の定義に深く影響する、実に有意義な体験だったよ。私に親友との再会の機会を与えてくれた事は、素直に感謝しよう」
REON『あ〜、そーゆーのはいいから。それで?さっきの答えはどうだ〜〜い??オレに協力してくれるのなら、報酬として『稲魂ステラ』に会えるだけじゃなくて、未来の技術も提供してあげるけど〜?』
察しの良い読者の方々なら、もうお分かりだろう。
“雷帝”へステラの潜伏先と情報を横流しした黒幕は、他ならぬREONその人であった。
イナズマジャパンを取り逃がした直後、この時代での目的を果たしたREONは一度拠点へと後退した。しかしその矢先、時空管理局の手によってこの時代へのタイムジャンプ完全に封鎖された事に気付いた。
彼自身にとってはこの時代に未練など無かったが、必ず再衝突するであろう【イナズマジャパン】の動向を探る『情報源』は、いくらあっても困らない。
そこで情報源として目を付けたのが、200年後の未来にまでその悪名を轟かせる世紀の狂科学者ーー“雷帝”だったのだ。
無論、ただの『情報源』として使い潰すつもりなど毛頭ない。狂人とはいえ、その頭脳と技術力に宿る価値は本物だ。
彼を完全に手中に収めさえすれば、自身の戦力は爆発的に拡大し、相手にとっても死んだ筈の親友と再会できるーーまさに、双方が利を得る理想的な『Win-Win』の関係だ。
“雷帝”「確かに、私にとっても魅力的な提案だ。数十年後ならいざ知らず、200年も未来の技術を応用できれば、鬼乃子の更なる強化が期待出来るしねェ」
REON『………』
しかしーーー
“雷帝”「だが、断る」
目の前にぶら下げられた莫大な利益すら、彼は傲岸不遜な態度と共に無造作に蹴飛ばす。
“雷帝”「おっと!別に『この明星帝牙が最も好きな事はクソガキ相手に「NO」を突きつけてやる事だ〜』なんて、臭い台詞を吐くつもりじゃあないさ。ただ……棚ボタ式の近道をする事は、私自身のポリシーに反する」
流石のREONも、これには僅かに虚を突かれた様子だった。
無理もない。“雷帝”のこの決断は、たった一歩を踏み出すだけで100億円が転がり込んでくる状況でありながら、何故か自ら背を向けて全力疾走で帰宅するようなものなのだから。
そんな“不合理”に塗れた選択の最中であってもーー“雷帝”の口元から不敵な笑みが消える事はない。
彼は悪人でもあり、狂人でもある科学者だがーー悪人には悪人の。狂人には狂人なりの“
REON『フーン? それじゃあさ。もしもオレがーー協力しなきゃ、今ココで殺すって脅したら?』
“雷帝”「あ〜〜……それは少し困っちゃうねェ。鬼乃子に滅多刺しにされて殺される覚悟は出来ていても、今殺される覚悟は流石に無いし」
REON『……とか言ってるワリには、随分と余裕そうだねェ?』
“雷帝”「……まァ、そりゃそうだろ? 君は私を殺せない。そもそもーーー
ココで私を殺したら、
REON『………』
刹那ーー余裕めいて僅かに上がっていたREONの口元が、一変して冷ややかな横一文字へと硬直する。
REON『……正解、不正解かは一旦置いておいてーーーその
“雷帝”「不屈の名作『シャーロックホームズシリーズ』3P読了時点で伝授された簡単な推理さ。詳細は省くがーーそこまで高度か技術力を持っているのなら、回りくどい撒き餌を使わずとも、洗脳やらで私を支配下に置ける筈だろォ?」
確かに、その通りだ。
REONは“雷帝”に対して、あまりにも破格かつ丁寧な条件を提示し、果ては彼の個人的な思い入れにまで付き合ってみせた。
ハッキリ言って、力づくで従わせる技術がある者にとってみれば、回りくどい事この上ないアプローチだ。
事実ーー“雷帝”が知る由もない事ではあるが、REONは既に【天空の使徒】や【魔界軍団Z】の面々を、まさにその『洗脳』によって手中に収めているのだから。
“雷帝”「天才的な頭脳を持つ私でも、時間干渉学には専門外だから、大雑把な仮説を提唱する事しか出来ないが……。君と私が深く干渉する事は、私にとっての未来ーー君にとっての過去に不都合な影響を与えるのだろう?」
REON『………』
次々と紡ぎ出される“雷帝”の鮮やかな推理に対し、REONは徹底して無言を貫いた。
だがーーその無言の仮面の裏で、ほんの一瞬だけピクリと跳ねた眉の動きこそが、どんな言葉よりも雄弁な返答だ。
“雷帝”「な〜に、同盟関係はご破算となったがーー心配する事はない。稲魂クン達と会っても君の事は話さないし、彼らと協力するつもりも無いさ。こう見えても、私は忙しいからねェ」
REON『……まァ、いいよ。キミの手を借りずとも、計画に支障は無いワケだし。それでは最後に一言だけーー精々、後悔と憎悪に満ちて惨めに死んでくれよ。周囲に不幸と迷惑を振りまくだけしか能のないクソ野郎』
ーーブォン!
明確な“殺意”すら孕んだ瞳で冷酷に吐き捨てると、REONのホログラムは途絶え、完全に消滅した。
そして……月明かりだけが静かに照らす夜道には、再び“雷帝”ただ一人が残された。
彼はただ、何事もなかったかのように車椅子の背もたれを僅かに下げ……夜空に浮かぶ冷たい月を静かに見上げる。
“雷帝”「随分と大層な野望を抱いているらしいが……中身はまだまだ子供だな。寧ろ、退化さえしていると言える。
狂気の科学者にして、稲魂雷牙の永遠の宿敵ーー明星帝牙。
後の世で“悪魔”とさえ形容される、彼の往く果てはーー果たして“地獄”か“絶望”か?
Re:クロノ篇における“雷帝”の出番は、現状今回だけです。何なら、実質的な前章のラスボスだった鬼乃子もほとんど出番はないと思います。
鬼乃子に関しては、一度はレギュラー入りを考えはしたんですけど、流石に彼女を活かせる自信がなかったんで没になりました。
そもそも、鬼乃子はヴィランでこそ輝くキャラなんで、味方陣営に向いてなさすぎるんですよね。これ以上、強くなられるとマジで収拾がつかなくなりそうだし。
そんなこんなで、彼女達の活躍は最終章にご期待ください。