・円堂、雷牙、秋→言わずもがな。
・ライト→デストラクチャーズ戦の後に雷牙から一部の詳細を伏せられた上で聞かされた。
・ヒロト→雷冥の存在は知っていたが、プロトコル・オメガまでは知らなかった。
なお、デストラクチャーズ戦に参戦していない円堂と秋は、アルゼンチン戦が終わった後に雷牙から話を聞いて、彼女達の存在だけは把握していました。
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TEAM SELECT
▶︎INAZUMA JAPAN
???
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《No side》
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雷牙「ひゃーーッ!!!高いし、速ェーーッ!!! テンション上がってきたァ!!いよ〜〜〜ッ!!ワンダッフォーーイ!!!!!」
<ワンダッフォーーイ!!!!!
< ワンダッフォーーイ!!!!!
< ワンダッフォーーイ!!!!!
開始早々、窓から身を大きく乗り出して大はしゃぎする雷牙の声に呼応するように、眼下に広がる広大な海から山びこならぬ“海びこ”が壮大に返ってくる。
物理的に目の前に広がる
ライト「危ないよー、雷牙……。落っこちちゃったらどうすんのさ〜?」
雷牙「いいじゃねェか、ライトッ!ここ最近、シリアスな展開ばっかだったしよ〜!!そ・れ・に!前来た時は、鬼瓦のおっさんが用意したオンボロ船だったかんなァ!もういっちょ!ワンダッフォーーイ!!!!!」
雷電「ガッハッハッ!い〜い、海びこじゃねェかッ!!!なッ、綱海ッ!!!」
綱海「悪ィ……。とにかく、今だけはそっとしといてくんねぇか……」
普段に増してテンションの高い雷牙だが、何もはしゃいでいるのは彼一人だけではない。
高所が苦手で青い顔をしている綱海を除けばーー嫌でも浮つかない訳がなかった。
何を隠そうーーー
冬花「未来の科学力って本当に凄い……!まさか、
そう。一行を空の旅へと誘っているのは、代表専用旅客機でも、吉良財閥所有の自家用ジェットでもなく……イナズマキャラバンと瓜二つの大型車両なのだから。
雷冥「この車両の正式名称は、“イナズマ
秋「でも……肝心のフェイ君が、
秋の言う通りーーフェイ、そしてNo.10はこの場にいない。
雷冥「……REONの捜索はフェイ殿自身が望んだ事でもあります。彼が不在の間は、私が代わって貴方がたをサポートさせていただきますよ」
秋「分かってるけど……。やっぱり、たった1人であの凶悪極まりないREONを追うだなんて心配だわ……。フェイ君、無理をしないといいけど……」
フェイの身を案じて不安げな表情を浮かべる秋だったがーー彼女の心配を他所に、現在のキャラバン内はどことなく朗らかな空気に包まれている。
例えばーーー
夏未「ちょ、ちょっと……!音無さん……!お願いだから、交代してくれないかしら……!?」
音無「ダメですよー、夏未さん!せっかく、気持ちよさそうに眠っているのに、移動させたら起こしちゃいますって!」
???「zzz……」
夏未の膝の上でスヤスヤと安らかな寝息を立てているのは、二又の尾を持つ白い子猫ーー型のアンドロイド。
本人曰く、体重は子猫並みかそれ以下で、スカート越しに伝わる質感も、機械というよりはほぼ布と綿で構成されたぬいぐるみのソレらしい。
ワンダバード「あーーッ!いないと思ったら、またサボってる!僕ひとりでキャラバンを操縦するのは大変なんだから、手伝えっての!」
???「……うっさい」
ワンダバード「ピエッ!?」
黒い小鳥からの小言を遮るように、子猫の小さな前足から鋭い爪がシャキーンと炸裂するが、小鳥は紙一重のところで躱す事に成功する。
彼女ーー二又の尾を持つ白い子猫の正式名称は、ワンダキャット。
主人である雷冥の業務をサポートするサポートロイド2号機であり……黒いシマエナガのような小鳥ーー1号機であるワンダバードの妹にあたる存在だ。
頭脳で主人をサポートするワンダバードとは対照的に、戦闘に特化したハイスペックなサポートロイドである……が、見ての通り筋金入りのグータラである為、その真価が戦闘で発揮された事はほぼ無い。
そんなこんなで、夏未の膝を占領して毛繕いを始めるワンダキャットと、爪を立てられてギャーギャーと騒ぐワンダバード。
その微笑ましい兄妹のドタバタ劇はどこかユーモラスで、円堂の不在がもたらしていた一抹の不安や緊張感すらも綺麗に吹き飛ばしてしまうほど、キャラバン内には絶えず朗らかな笑い声が弾けていた。
ーーー
ステラ「………」
隣には誰も座らせず、足を組み変わり映えのしない外の景色をひたすら眺めているのは、ステラ・オーロ。
自分一人を相手に手も足も出なかったイナズマジャパンを見限るような発言をした彼が、今こうしてキャラバンに乗り込んでいるのには、キチンとした理由がある。
と言っても、その内容は実にシンプル。本人は捻くれた態度で激しく嫌がっていたが、雷冥の手によって有無を言わさず強制連行されただけだ。
ステラ「ーーチッ……」
車内の騒音に容易にかき消される程度の舌打ちを零すステラ。
だが、同行を強制された挙句に「命の水」である酒すら没収されてすこぶる機嫌が悪いーーという訳ではなく、今の彼はどちらかと言えば……
ライト「………」
そんな彼をーー自身の父親の並行同位体である男の姿を、ライトは言葉にし難い複雑な眼差しで見つめていた。
雷牙「やめとけ、ライト。あのヤローを視界に収めんのはなァ。じゃなきゃ……アル中が移っぞ」
ライト「……分かってるよ。分かってるけど……やっぱり……!」
雷牙「……ハァ〜……。分かった、分かった。オマエさんがそこまで言うなら、コレ以上止めはしねェよ。け・ど!俺ちゃんは絶対、絶対、絶ェ〜〜〜対にッ!!!ゲロのおっさんを親父だと認めてやんねェーかんなッ!」
ステラ「聞こえてるぞ、クソガキ」
陰口のつもりが、故意か無意識かステラの耳へダイレクトに届くほどの大音量になってしまっていた雷牙の暴言。
深く思案に耽っていた筈のステラがピクリと反応を示すが、当の雷牙は下手な口笛を吹いてしらじらしく誤魔化そうとする。
……しかし、ステラは特にそれ以上追及する素振りも見せず、再度視線を外へ向け、思案の海へと潜っていった。
明確な不和と確執を孕んだ二人ーー雷牙とステラの間に流れた決定的な亀裂。その一瞬のやり取りによって、キャラバン内の朗らかな空気は一変し、息を呑むほど重く凍りついた静寂が車内を支配する。
だが、その静けさを破るように、雷牙たちの後部座席から虎丸がひょっこりと顔を出す。
虎丸「あの……ちょっと、いいですか、稲魂さん? 前々からずっと疑問だったんですけどーー本当に“神鳴り島”って島に、俺たちがさらに強くなれるヒントがあるんですか?」
豪炎寺「ああそうか。虎丸はまだ知らなかったな」
静まり返った車内、豪炎寺は隣の座席に座る虎丸へと静かに視線を向け、一から説明を切り出す。
一行が神鳴り島へ向かうこととなった発端こそ雷牙の提案だがーー普段の直感に導かれるままの希望的観測とは異なり、今回に関しては確かな根拠が存在するのだ。
それは、数ヶ月前に起きたエイリア学園によるテロの最中。
【ジェミニストーム】との初戦後に起きた不幸な事故によって、昏睡状態へ陥ってしまった雷牙は、ある人物ーー当時『アケボシ』と名乗り、瞳子と手を組んでいたライトの手引きによって昏睡状態から回復した。
目を覚ました雷牙が、エイリア学園の猛威に対抗するべく、響木を介して提供された新たな特訓場所こそがーー次の目的地である神鳴り島であった。
雷牙「そこで出会った、シュウってヤツがハチャメチャに強くてよー!アイツとは色々あったが、アイツに特訓をつけてもらって俺ちゃんはズババーンと強くなれたんだぜ?」
雷牙が神鳴り島で出会った謎の少年・シュウーーその実力はまさに折り紙付き。シュウに師事する前の時点で、既に【イプシロン】に匹敵する実力であった雷牙でさえ、赤子の手を捻るようにあっさりと打ち負かされてしまった程だ。
その後、紆余曲折を経て彼の信頼を勝ち取った雷牙は、直々に指導を受けた事で、エイリア学園最強の
虎丸「はえ〜……!稲魂さんにそこまで言わせるような凄腕のサッカー選手が存在していただなんて、驚きです!!」
立向居「でも……稲魂さんは、そのシュウさんのトレーニングを全部クリアしたんですよね?それだったら、俺たちが同じことをしても意味がないような……」
立向居の尤もな疑問に、車内のメンバーたちも「確かに」と頷きそうになる。
……だが、その言葉を聞いた当の雷牙は、途端にバツが悪そうに頭を掻く。
雷牙「いんや……流石の俺ちゃんでも、
立向居「ええっ!!?そ、そうだったんですかっ!!??」
豪炎寺「それは俺達も初耳だな。てっきり、あの期間中にマスターしていたと思い込んでいたが……」
鬼道「プライドの高い稲魂の事だ。全ての特訓を突破出来なかったとは、口が裂けても言えなかったのだろう」
雷牙「うっせ。単に時間が無かっただけだっての。そもそもーー俺ちゃんがオメーらよりも先に陽花戸中に到着してなかったら、ジェネシスとの試合で100パー何人か
風丸「……それはそうだな」
図星を突かれて必死に言い返す雷牙と、当時の苦戦を思い出して深く苦笑いを浮かべる風丸。
軽口を叩き合う彼らの姿に車内には再び等身大の笑い声が戻りかけたが、その中心で一人腕を組み、鋭い思考を巡らせていた鬼道が静かに口を開いた。
鬼道「取り敢えず、だ。俺達は何としても、この島で新たなパワーアップを果たす為のヒントを掴まなければならない。雷冥、俺達に与えられた時間の猶予はどの程度ある?」
雷冥「本来ならば、歴史改変を放置してしまうと『真実の歴史』として定着してしまいますが……。今回は時空管理局が侵食を最小限に留めている為、時間の制約はあってないようなモノと解釈していただいて結構です」
だがーー全ての行動が予測不能であるREONが、いつ牙を剥くか分からない以上、戦力強化は早いに越した事はない。
熱也「てかよォ、よくよく考えてみれば、REONを倒さなくても円堂が封印される直前に戻って、不意打ちかませばいいんじゃねェか?」
雷冥「残念ながら……それは不可能です。一度改変され、上書きされ始めた歴史を再び変えるのは、最初よりずっと困難……。そもそもーー貴方達は、サッカーでは無い純粋な暴力でREONに勝てるとお思いで?」
熱也「……流石にムリだな……」
不動「まッ、単に特訓して強くなりゃあいいだけの話だろ?なら、問題無ェ。寧ろ、これほどシンプルで分かりやすい事はねェよ!」
雷牙「にひッ!アッキーの言う通りだなッ!それじゃ、皆さま!前方にごちゅうもーーくッ!!!」
一連のシリアスな話の整理もそこそこに、バスガイド風の調子で皆の注目を集めた雷牙は、嬉しそうに大きく前方へ指を突き出す。
そこにはーーー
雷牙「ようやく見えてきたぜ……ッ!懐かしの“神鳴り島”がよォ!!!」
豊かな自然を湛えつつもどこか異質な雰囲気を放つ島ーー後にに“
……………
…………
………
……
…
綱海「へー、ここが“神鳴り島”かぁ……。どことなく雰囲気は、沖縄に似てんなぁ」
佐久間「どちらかといえばーー所々に点在している遺跡跡は、南米を思わせる……。本当にここは日本の領海内にある島なのか?」
無事に神鳴り島へと降り立ったイナズマジャパンの一行だったが、一歩足を踏み入れた途端に広がる異様な光景に、一様に面を食らっている様子だった。
それもそのはず。この島の景観は、一言で表すなら“異様”の二文字に尽きる。
佐久間の言葉通り、彼らの視界を埋め尽くすのはうっそうと繁る原生林の中に埋もれた精巧な石造りの遺跡跡……。まるで日本本土の常識から切り離されたかのような、あまりにも別世界めいた光景がそこには広がっていた。
不動「そこまで不思議な事じゃねェだろーが。ここは本州と完全に隔離された孤島……大方、大昔に南米系の外来人との交流でもあったんだろ」
雷牙「あのアッキーが……!真面目な歴史考察をしている、だと……?」
不動「オイ、クソライオン。その言葉はどーゆー意味だ、コラ」
そんなこんなで一悶着ありつつも、雷牙を先頭に一行は島内を奥へと進み、“ある場所”へと辿り着く。
それはーーこの島唯一の人間である、管理人の自宅だった。
雷牙「おっ、着いた着いた。それじゃあ、早速ーースー……すみませェェェェん!!!!管理人のジジイはご在宅ですかァァァァ!!!?」
到着早々、家の中で茶を啜っているであろう管理人へ向け、雷牙は失礼極まりない挨拶を大声で飛ばすがーーー
ーーシーーン……
静まり返った家屋からは、何一つ返事は返ってこない。
雷牙「っかしーな……。確かに、この家にカイって爺さんが住んでた筈だけんど……」
???「彼なら君が島を出てからすぐに亡くなったよ。
雷牙の独り言を遮るように、静まり返った空間に響き渡ったのは、イナズマジャパンの誰もが聞き覚えの無い涼しく爽やかな声……。
豪炎寺「誰だッ!!?」
気配を一切感じさせない、まるで音の無い出現。
文字通り背筋が凍るような気配に反応し、豪炎寺を筆頭に一行は一斉に鋭い視線を振り向ける。
そこに立っていたのはーーー
???「警戒しないで、僕は敵じゃない。それは……雷牙がよく知っているだろ?」
日に焼けた褐色肌に、夜空のような紺色のボブカット。前髪の一部を特徴的な玉飾りで留め、その先端を鮮やかな赤と白に染め上げたーーどこか神秘的な雰囲気を漂わせる一人の少年だった。
雷牙「ヘッ、相変わらず神出鬼没なヤローだぜ!久しぶりだなァ……!シュウッ!!!」
シュウ「ああ、久しぶりだね。雷牙」
そう。彼こそは、絶海の孤島を彷徨う守護者であり、イナズマジャパンが新たな高みへと駆け上がる為の鍵を握る少年ーーシュウその人だ。
染岡「こいつが……シュウ!? なんつーか……稲魂より強いって言うから、もっとゴツい野郎を想像してたけどよォ……!」
飛鷹「副大将のお兄さんのように華奢な身体だ……」
シュウの容姿は、少年特有の細身でありながら、見ようによっては少女と見紛う程に中性的。
人は見かけによらないとはよく言うが、その華奢な体躯で、あの雷牙を赤子の手を捻るように打ち負かしたという事実のギャップに、一同は驚きを隠しきれない様子だった。
雷冥「突然の来訪で申し訳ありません、シュウ殿。ひい……いや、雷牙殿がその節はお世話になったようで。彼に代わって彼にお礼を申し上げます。私はーーー」
シュウ「……知っているよ。君は未来からこの時代へやって来た、雷牙のひ孫ーー稲魂雷冥だよね?」
雷冥「!!!!」
何故、現代人である筈のシュウが自身の素性を知っているのかーー目の前の異常事態に、雷冥は反射的に身構える。
しかし、シュウはそんな彼の警戒を解くように、ふっと優しく微笑んだ。
シュウ「そう警戒しないで。僕の目は少し特殊でね……常人には捉えられない情報まで視えるんだ。だからーー君たちがこの島へ来た事情も概ね把握している」
雷牙「コイツの言ってる事は本当だ。
壁山「アワワ……!ってことは……俺のあんな秘密や、こんな秘密まで全部知られてるってことっスか〜〜!?!?」
説明になっているようで、その実あまり安心材料にはならないが……ここで変に揉めても不毛なだけだ。雷冥は祖父の言葉を信じ、そっと警戒を解く。
鬼道「シュウがエスパーだろうが、何者であろうがこの際些細な事だ。時間が無いから、単刀直入に聞かせてもらう。お前に師事する事で……俺達は更なるパワーアップが可能か?」
シュウ「結論から言えばーー答えは“
立向居「本当ですかっ!?それなら、早速ーーー」
シュウ「ただ……これから君たちに課す特訓はあの雷牙でさえも、一度試しただけで
雷牙が必死こいて隠していた不都合な真実を突きつけられ、一同は絶句する。
タフって言葉は稲魂雷牙の為にある。そんな彼が、たった一度の体験だけで音を上げてギブアップを宣言したような劇物を、これから自分たちが味わおうというのだ。
つまり、シュウから課されるのは、これまで彼らが乗り越えてきたあらゆる試練など比にならない、本物の“地獄”に違いないのだから。
壁山「あ、あの〜〜……。やっぱりーーー」
豪炎寺「やらせてくれ。ここに居る者は誰一人として、茨の道を避けて円堂をーー友を助けられるとは思っていない」
シュウ「そうか……。それならーーもう後戻りはできない」
ーーバンッ!!!
イナズマジャパンの総意を確認した瞬間、シュウは肩にかけていた麻袋を無造作に地面へと降ろした。地響きのような鈍い音が、静まり返った周囲へ重く響き渡る。
そしてーー口の紐を解き、中から無造作に取り出したのは……片手大の大きさの、単なる『石』だった。
雷牙「やっぱし、“ソレ”からか……ッ!ハッ……ズババーンと来やがれッ!!!」
単なる『石』……と評したが、実際にはただの『石』ではない。
シュウが手のひらに乗せたその石の表面にはーー不気味かつ神秘的な、見た事も無い一文字の紋章が刻み込まれていた。
シュウは視線を上空の彼方へ移すと、全身を砲丸投げのような体勢で深く、大きく振り被りーーー
シュウ「ハッ!!!」
ーービュンッ!!!
渾身の力で、『石』を遥か上空へと投げ飛ばした。
放たれた石は空気を切り裂くような鋭い風切り音を轟かせ、遥か彼方の島奥深くへと消えていった。
染岡「なんつー肩の強さだよ……!? プロ野球だったら、間違いなくメジャークラスの超強肩だぜ……ッ!?」
シュウ「まださ」
1球目が遥か彼方へと消えても、シュウの動作は止まらない。
次から次へと麻袋から『石』を取り出しては、驚異的な膂力で島々の奥地へと投げ飛ばしていく。鋭い風切り音が幾重にも重なり、やがてその投擲の数はーーちょうど『18回』でピタリと止まった。
奇しくもその数は、今ここに居るーー封印された円堂を除く、イナズマジャパンのメンバーの総数と完全に一致していた。
シュウ「そして……君たちには“これ”を」
その直後、シュウがそれぞれの手に手渡したのは、この島の複雑な地理が詳細に記された一枚の古びた地図。
シュウ「それじゃーー
一同『・・・は?』
まるで「近所のコンビニへ行ってくる」とでも言うかのように、あまりにも淡々と開始を告げるシュウに対し、唯一の経験者である雷牙を除く17人は、揃って素っ頓狂な声を漏らした。
それも無理はない。シュウが投げ飛ばした18個の『石』と手元にある地図だけではーー特訓の内容が何一つとして見えてこない。
シュウ「これが第一の特訓。一人一つ、今日の日没までに今投げた石を
風丸「それが……特訓……?」
風丸のどこか気の抜けたような、それでいて戸惑いを隠せない声が、イナズマジャパン全体の混乱を物語っていた。
彼らが身構えていたのは、瞳子や久遠のシゴキすら生温く思えるほどの激しい鍛錬……。だが、今シュウから突きつけられたのは、あまりにも拍子抜けする“石探し”だったのだから。
シュウ「さあさあ!何をボサっとしているんだい!? 早く『石』を見つけ出して、特訓を完遂させなければ、REONから円堂守を助け出すことは永遠に叶わないよ!!」
雷牙「ハッ!シュウの言う通りだッ!!お先ッ!!!」
染岡「クソ……ッ!意味が分からねェが、もう恒例のヤツだッ!!円堂を助け出す為には……意味不明でもやるしかねェ!!!」
シュウの容赦ない煽りと雷牙の迷いのないスタートダッシュが呼び水となり、イナズマジャパンの面々はそれぞれの目的地を目指し、次々と鬱蒼とした森の影へと消えていく。
喧騒が去った後の広場に残されたのはーー四人のマネージャー達と……そして、雷冥とその
シュウ「さてとーー僕の手には、もう一個の『石』があるけど……。雷冥、君はどうする?」
雷冥「………」
シュウが投げ飛ばした石の数は『18』。確かにイナズマジャパンの正規メンバーの人数は18人だが、今回の助っ人であり、この時代の
それもその筈。何を隠そう、シュウは最初から雷冥を特訓の対象に入れていなかったのだから。
何故ならーーー
シュウ「僕が視る限りーー現時点でも君なら、SSCに十分対抗できるだけの地力はあるようだけど?」
現時点で……SSCに対抗できる実力を持っているのは、ステラを除けば雷冥だけだ。
それ故に、シュウは雷冥への指導は不要と判断し、あえて特訓の対象から外していたのだがーーそれに対する、雷冥の返答は……。
雷冥「お褒めの言葉をいただきありがたいですが……。残念ながら、私はまだ道半ば。確実に自分自身の手でREONを裁く為にもーーぜひ、貴方のご指導にあずかりたい」
迷う事なく紡がれたその言葉は、当然の如くーー『
シュウ「……ハハッ!最初に会った時は、雷牙のひ孫とは思えない雰囲気に少し面を食らったけど……。うん、その“向上心”の高さは確かに雷牙と瓜二つだね」
稲魂一族に脈々と受け継がれる熱い魂を認め、シュウはふっと楽しげな笑みを浮かべると、手元に残っていた最後の『石』を強く握り締めるとーーー
ーービュンッ!!!!!
眩しく輝く青空の彼方へ向かって……『19番目』の鋭い風切り音が、島全体へと高らかに響き渡った。
実は、初期案では神鳴り島の管理人は老人ではなく100歳越えの老婆だったり。
しかもその正体は、伝承では生贄になったと伝えられていたシュウの妹ーーって設定だったんですけど、原作を見直しているうちに、作者の想像以上にシュウが過去の人間だった事に気付いたので、あえなく没になっちゃいました(笑)。