イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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もうお気付きの方も多いと思いますが、以前から言っていたオリ技の募集を活動報告で始めました。
下記のリンク先から投票用の活動報告へ飛べるので、興味のある方はお気軽にご応募ください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=346911&uid=484878


更なる高みを目指して!

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TEAM SELECT

 INAZUMA JAPAN

▶︎SSC

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《No side》

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 上も下も、天と地の概念すらも狂い咲く、歪んだ戯れの回廊。

 そこに広がるのは、あらゆる物理法則を嘲笑うかのように構築された、遊園地を模した薄暗い大広間であった。

 

 頭上を見上げれば、天地逆転した無人のジェットコースターが重力を無視してレールを軋ませ、見えない風に揺られる巨大な観覧車はゆっくりと逆回転を続けている。

 色彩豊かな風船は空へ昇るのではなく床へと沈み込み、天地を無視して壁面を歩く道化師(ピエロ)の幻影が、声の無い高笑いを上げながら宙へと消えていく。

 

 重力が歪み、遠近感すらも歪曲するその摩訶不思議な空間に、一筋の優美で退廃的な擦弦楽器(ヴァイオリン)の旋律が染み渡る。

 

ヴァンフェニー「ーーー♪」

 

 無重力の中をたゆたう幾千枚もの楽譜が音符の形に弾け飛ぶ中、その中心で優雅に顎を寄せ、弦楽器を奏でているのはーー誇り高き血族の長、ヴァンフェニー・ヴァンプであった。

 

 その旋律は……あまりにも静かで、あまりにも狂暴。

 狂った遊園地の色彩と重力の乱れを指揮するかのように、その音色は歪んだ大広間全体へと美しく、そしておぞましく響き渡っていた。

 

 だが、その麗しき旋律がフィナーレを迎えようとした、その刹那ーーー

 

???「喧しいッ!!!耳障りな演奏を止めろ、ヴァンフェニーッ!!!」

 

 荒々しい野性を宿した、狼を思わせる風貌の褐色肌の少年が怒号を響かせる。

 その一声によって優美な旋律は無惨に途切れ、狂気の遊園地を包んでいた幻想的な静寂は一瞬にして霧散してしまう。

 

ヴァンフェニー「ハァ……やれやれ……。野獣の如く目の前の敵を叩き潰す事しか能の無い脳筋風情じゃ、僕の旋律の美しさを理解出来なかったのかな?ガルシャア?」

 

 演奏を不躾に中断させられてもなお、優雅に溜め息をついて皮肉を零すヴァンフェニー。

 彼が「脳筋」と言い放った褐色肌の少年の名は、ガルシャア・ウルフェイン。

 かつて太古の日本に存在していた血族を起源(ルーツ)に持ち、獰猛なる獣の力を宿す“ツキガミの一族”を束ねる男だ。

 

ガルシャア「ガルルル……ッ!!! 関係無いッ!ヤツーー神童拓人を想起させる、その音色を耳にしただけで腹が立つッ!!!」

 

ヴァンフェニー「コレは野蛮なディスティニーだ。芸術性の乏しさは、精神の乏しさだって知らないのかい?」

 

ガルシャア「……かつては、妥当【雷門イレブン】の為に一度は手を組んでやったが……。やはりお前はーー気に食わんッ!!!!!」

 

 ヴァンフェニーの不遜な態度についに堪忍袋の緒が切れたガルシャアが、全身から凶暴なオーラを沸き立たせ、一触即発の戦闘態勢へ移行したーーが。

 

REON「今回ばかりは吸血鬼クンに賛成だナ〜。オレも芸術は大好き好き好きだよ〜☆」

 

 いつの間に現れたのか、音もなく脇にキャンバスを抱えたREONがひょっこりと仲裁に入り、間一髪のところで殺伐とした内輪揉めは回避されたのだった。

 

REON「ケンカしちゃあダメだろ〜?オレ達は同盟者(パートナー)!言い換えるとーー目的を共にする同志なんだから〜〜ッ!!」

 

ガルシャア「チッ!どの口が……ッ!!ならば……今すぐ、この首輪を外せッ!!!」

 

 ガルシャアとヴァンフェニーの首筋に装着されていたのは、冷たく光る無機質な鋼鉄の首輪……。

 それは、誇り高き彼らにとって、自分達より遥かに格下の存在に『生殺与奪の権』を握られているという、拭い難い屈辱の証であった。

 

REON「や〜だネ。そんなコトしたら、たちまちオレは殺されちゃうし〜☆ そもそも〜〜。オレの“目的”が達成されたら、ちゃんと自由にしてやるって約束してるだロ〜?」

 

ガルシャア「チッ……!」

 

ヴァンフェニー「……もういいや、君のせいでディスティニーが冷めた。それよりも……その脇に抱えているカンバスは何だい?」

 

 ヴァンフェニーに問われた瞬間、REONは「よくぞ聞いてくれた!」と言わんばかりの狂気的な満面の笑みを浮かべる。

 

REON「フッフ〜ン♪ コレはね〜、さっきタイムジャンプした際に強奪(パク)ってきたんだ〜♪」

 

 REONが自慢げに見せびらかしたのは、誰もが知る世界的名画ーー『モナ・リザ』。

 しかも、だ。これは後世の美術館から盗んできたようなチャチな物ではない。なんとレオナルド・ダ・ヴィンチが筆を置き、絵画を完成させた直後の時代へ乗り込んで直接奪ってきた代物であった。

 

ガルシャア「フンッ!お前もまた、絵画如きにうつつを抜かす軟弱者だったとはなッ!!!」

 

REON「え?何言ってんの???」

 

ガルシャア「何?」

 

REON「オレがワザワザかっぱらってきたのは〜。こうする為♪」

 

ーーパシィンッ!!!

 

 刹那。REONはヘラヘラとした笑みを一切崩さぬまま、『モナ・リザ』へ凶悪なサイコパワーを叩き込むとーー人類の歴史が育んだ至宝の一枚は、一瞬の抵抗すら許されず、あまりにも無惨に、あまりにも容易く微粒子となって粉砕された。

 

ヴァンフェニー「あーあ……。勿体無い……」

 

REON「アッハハハハハッ!!! 最ッッッ高〜〜♪コレだから、芸術が大・大・大好きなんだよネ〜。だって……旧人類が遺した遺産を破壊した時にこそ、この上ない“征服欲”が満たせるんだから♪」

 

 壊す為に奪い、踏み躙る為に愛でる。

 REONの歪み切った破壊衝動と混沌への拘りに、ヴァンフェニーは優雅に肩を竦めて深い溜め息を吐き、ガルシャアは殺気を孕んだ瞳で冷たく彼を見下ろす。

 

ガルシャア「……どこまでも反吐が出る思想だな。お前という狂人のくだらん余興に付き合わされるこちらの身にもなってみろ」

 

 忌々しそうにそう吐き捨てたガルシャアは、首元を締め付ける鋼鉄の首輪を不快そうに指で弄りながら、苛立ちを隠そうともせずに背を向けようとする。

 だがーーそんなガルシャアの態度すら愉しむように、REONは芝居がかった動作でパンと両手を打ち鳴らしてみせた。

 

REON「そ〜んな、暇で暇でたまらないガルシャア君に超朗報〜♪ コレからキミに、重要な任務を与えよう!!!」

 

ガルシャア「任務だァ……?」

 

REON「内容はシンプル!天使クンと悪魔クン達と一緒に、稲魂雷牙の居る時代に来訪して、彼を封印するだけ!ねっ?欠伸が出るホド簡単でしょ?ーーそれに……運が良ければ、稲魂雷冥と闘えるかもよ〜?」

 

ガルシャア「イナタマ・ライメイ……。時空管理局お抱えのタイムエージェントか……」

 

REON「そっ♪ そのライメイ☆」

 

 思わぬ名を聞かされ、ガルシャアの眼光が野獣のように鋭く細められる。

 基本的には新人類(ミュータント)以外の存在を“下等種族”と見下す彼であっても、稲魂雷冥の名は牙を研ぎ澄ますに十分な強者のソレであった。

 

 無論ーー極(・)上(・)の(・)暇(・)潰(・)し(・)として、だが。

 

REON「あっ!けどけど〜。捕獲の際にはサ(・)ッ(・)カ(・)ー(・)で(・)勝(・)敗(・)を(・)付(・)け(・)る(・)コ(・)ト(・)だ(・)け(・)は(・)忘(・)れ(・)な(・)い(・)で(・)ね(・)〜。それと“エネルギー”の回収も」

 

 REONの唇が、凶悪な三日月状に歪む。

 首輪によって縛られた屈辱に苛まれていたガルシャアであったが、その瞳には鬱屈とした怒りを塗り潰す程の、冷酷な狩人としての獰猛な殺気が宿り始めていた。

 

ガルシャア「……フン。この俺に下っ端同然の指令を下すのは、気に食わんが……。この滾りに滾った血を収めるには、願ってもない暇潰しだ」

 

 無機質な鋼鉄の首輪を鳴らし、ガルシャアは獰猛な笑みを浮かべて背を向け、天と地が狂い咲く遊園地の広間を後にし、時空を越える刺客が解き放たれるーーー。

 

 “ツキガミの一族”が誇る最強の戦士が……過去の侍へと牙を剥く。

 

 

 

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TEAM SELECT

▶︎INAZUMA JAPAN

 SSC

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《No side》

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シュウ「そこまで!今日の鍛錬はここで終わりだ」

 

木暮「や、やっと……終わったぁ……!」

 

 刻一刻と空が夕焼けに染まっていく中、指導者(シュウ)の涼しげな号令によって、地獄のような一日の鍛錬がようやく幕を閉じた。

 

 修練を終えた者達は、誰一人例外なくその場に崩れ落ち、荒い息を吐きながら虚空を見上げる。

 ……だが、その様子はどこか妙だ。“地獄”と形容する割には、彼らの肉体には擦り傷一つ無い。

 その代わりにーー精(・)神(・)が(・)著(・)し(・)く(・)擦(・)り(・)減(・)り(・)、極(・)限(・)ま(・)で(・)疲(・)弊(・)し(・)て(・)い(・)る(・)様(・)子(・)だ(・)。

 

染岡「ハァ……。この1週間で、あの稲魂が1回目でギブアップした理由が……“魂”で理解出来たぜ……」

 

 シュウに師事してから早1週間……。

 彼から課された特訓内容は、一言で言えば『想定外』としか言いようがなかった。

 

 初日に半日を費やした『石探し』を皮切りに、日も昇らない暗闇の森での長距離走、五感を狂わせるような障害物くぐりーーー。

 

 いかにもスポーツの特訓らしい過酷なメニューではあるが……。実は、このような身体を動かす鍛錬は全体のほんの一部に過ぎない。

 何せ、シュウの課す特訓の大半を占めるのはーー“座禅”や“滝行”、そして微動だにせず意識を一点に研ぎ澄ますだけ……といった精神修行なのだから。

 

熱也「『許可するまでずっと小石を見つめてろ』って言われた時は、マジでブン殴りそうになったぜ……」

 

 荒々しく額の汗を拭いながら吐き捨てる熱也の言葉に、周囲の面々も深く同意するように深く息を吐き出す。

 

 この1週間、選手達は一度たりともサッカーボールに触れさせてもらえなかった。

 サッカーに命を懸ける者達にとって、それは呼吸と同義とさえ言える行為の禁止。

 ただひたすらに無心で石を注視し、呼吸を整え、余計な雑念を一切削ぎ落とし続けるーー謂わばそれは、静かなる拷問。

 

 これまで『友情・努力・根性』の三すくみで限界を突破してきたイナズマジャパンにとっては、誇張抜きに“地獄”と形容される1週間であった。

 

 だがーーー

 

シュウ「そろそろ、か……」

 

 突如として、素性不明の少年に突き落とされた“地獄”は終わりを告げる。

 

シュウ「みんな、僕に着いてきてくれ!君たちに……見(・)て(・)も(・)ら(・)い(・)た(・)い(・)も(・)の(・)が(・)あ(・)る(・)」

 

雷牙「見てもらいたい……モノ?」

 

 シュウはあえて行き先を口にせず、19人の弟子達を引き連れて“ある場所”へと歩き出す。

 そこは特訓場から遠く離れている訳ではなく、せいぜい徒歩で6〜7分程の距離だ。

 

 薄暗い木々を抜けた先に広がっていたのはーーー

 

ヒロト「これは……。サッカーコート……?」

 

 ゴールポストやラインの杭などが無骨な木材で構成されているという差異点はあるものの……そこにあったのは、間違いなくサッカー選手にとっての聖域(サッカーコート)だった。

 

雷牙「んだァ? まさか手作りのサッカーコートを自慢したくて、俺らを呼んだってのかよ?」

 

シュウ「違うさ。とりあえず……豪炎寺。必殺技を使って、ゴールにシュートを叩き込んでくれるかな?」

 

 そう言って、シュウは持ち歩いていたサッカーボールを、ひょいと豪炎寺へと投げ渡した。

 

豪炎寺「……随分と古びたサッカーボールだな」

 

シュウ「アハハ、使い古されてボロボロで悪いね。あいにく……こんな孤島じゃ、新品のサッカーボールなんて手に入らないものだからさ」

 

豪炎寺「いや、謝る必要はない。ただ……少(・)し(・)懐(・)か(・)し(・)く(・)て(・)な(・)」

 

 刹那、豪炎寺の脳裏に浮かぶのはーー円堂(とも)との最初の出会い。 

 

豪炎寺(ならば……久々にこれを使ってみるか……!)

 

 胸の内に熱い闘志を宿した豪炎寺は、手慣れた足取りでピッチのセンターサークルへと歩み出ると、一気にトップスピードへと至り……。

 

豪炎寺「ハァッ!!!」

 

 荒々しく踏み込んだ右足が、ボロボロのボールを捉える。

 猛烈な回転と紅蓮のオーラを纏い、神聖なる木製ゴールへと叩き込まれる一撃。

 

 それこそまさしく、豪炎寺修也の代名詞にして、数々の伝説を切り拓いてきたーーー

 

豪炎寺「“ファイアトルネード”ッ!!!」

 

 原点にして頂点の必殺技が炸裂する。

 

豪炎寺「ーー!!! これは……!」

 

 シュートを放った直後、使用者である豪炎寺自身が“ある違和感”に襲われるーー。そして、ほんの僅かに遅れて、周囲で見守っていた他のメンバー達もその異常な変化に気付く事となった。

 

ーーズガァァァァァン!!!!!

 

 木製のゴールポストが引き裂かれんばかりの轟音と共に、凄まじい衝撃波が周囲を揺るがす。

 

 少なくとも……それは、これまで数多の試合で放ってきた“ファイアトルネード”とも一線を画す、圧(・)倒(・)的(・)な(・)破(・)壊(・)力(・)だ(・)っ(・)た(・)。

 

虎丸「す……!凄すぎますよ、豪炎寺さんっ!!!FFIの時よりも、“ファイアトルネード”の威力がケタ違いに向上してますっ!!!」

 

 予想もしなかったエースストライカーの飛躍的なパワーアップに、仲間達ーーとりわけ彼に強く憧れる虎丸は大はしゃぎで喜ぶ……が。

 

豪炎寺「………」

 

 当の本人は、歓声を浴びるどころかーー我が目を疑うように自分の右手をじっと見つめ、呆(・)然(・)と(・)面(・)を(・)食(・)ら(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)様(・)子(・)だ(・)。

 

豪炎寺「……どういう事だ、シュウ。俺は今ーー本(・)気(・)で(・)撃(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)……!」

 

虎丸「……え?」

 

 『本気で撃っていない』ーー他ならぬ豪炎寺本人の口から飛び出したその言葉に、ピッチの外に居た者達は例外なく動きを止める。

 

 それもその筈。たった今、彼が披露した“ファイアトルネード”は甘く見積もっても1週間前の物よりも2倍以上の威力を誇っていたのだから。

 

 にも関わらず……使い手本人が『本気』を否定し、逆に困惑しているなど常軌を逸している。

 

 だがーーそんな異様な光景を前にしても、シュウだけは狼狽えるどころか、ただ穏やかに微笑んで答えた。

 

シュウ「これこそが、この1週間の特訓の成果さ」

 

染岡「あんな精神修行がか……ッ!?」

 

シュウ「そうさ。僕が君たちに課した特訓はーー簡単に言えば、全て“気の操作”の精度・効率を高める為の鍛錬(もの)だったのさ」

 

 シュウはこの1週間あえて口にしなかった、地獄の精神修練に隠された真の意図を静かに語り始める。

 

シュウ「既に察している通り、君たちはこれ以上肉体面での効果的な進化は見込めない。だがーーその一方で“気”の使い方は非常にお粗末だ」

 

豪炎寺「その為の精神修行か……」

 

シュウ「その通り。効率的に“気”をコントロールする為には『体』だけじゃなく、『心』もバランスよく磨かなくちゃならない。つまりーー今の“ファイアトルネード”の威力は、心身のバランスが取れ、“気”が安定化している何よりの証拠だ」

 

木暮「なんか……漫遊寺の連中みたいなこと言うなぁ……」

 

 これまでに経験した事のない趣向の特訓だけに、いまいちピンと来ていない者も多いようだが……。少なくとも、シュウの教えに従った事で以前よりも圧倒的に強くなれた事だけは、全員が肌で理解していた。

 

シュウ「このまま“気”のコントロールを極めれば、本来有している力を十全に引き出せるようになり、飛躍的に実力を高める事が可能となる。分かりやすく言えば……10分の1の力で10倍の威力を持つシュートを放つ事ができるって感じかな?」

 

鬼道「そうか……。ならば、俺達はあとどれくらい、この島で特訓すればSSCに対抗出来るだけの実力を得られる?」

 

シュウ「そうだな……。継続的な鍛錬は必須だけどーー感覚を掴むだけなら、3日もあれば十分だと思う」

 

鬼道「決まりだな。残り3日間、シュウの指導の元で徹底的に特訓を行い、その後は別世界の円堂が遺した『王者の聖典』の内容に従って、各時代の偉人達のオーラを回収しに行く。……このスケジュールでいいか、雷冥?」

 

雷冥「問題ありません。現時点では、REONが動き出したとの連絡もありませんし。……で(・)す(・)が(・)」

 

 何やら含みのある言い回しで会話を遮ると、雷冥は祖先たる雷牙とライトへ冷徹な視線を移す。

 

雷冥「ひいお祖父様。そしてーーライト大叔父様」

 

雷牙「あン?」

ライト「うん?」

 

雷冥「貴方がただけは、残りの3日間ーー私(・)と(・)の(・)個(・)別(・)特(・)訓(・)に(・)参(・)加(・)し(・)て(・)い(・)た(・)だ(・)き(・)ま(・)す(・)」

 

雷牙「個別……」

ライト「特訓……?」

 

雷冥「コレに関しては言葉よりも、行動で示した方が理解しやすいでしょう。……シュウ殿、残りの三日はお二人の指導を、私に任せてもらってもよろしくて?」

 

シュウ「問題ないよ。それにーーREONとの戦いには、必ず君の教えが彼らには必要となる」

 

 本人曰く『常人には捉えることのできない“情報”まで視える眼』を持っているからか、既にシュウは雷冥の狙いを察しているようだったが、当事者である雷牙とライトの二人はチンプンカンプンといった様子で首を傾げる。

 

雷冥「さて、シュウ殿から許可を貰えた事ですし……。早速、始めましょうか」

 

雷牙「ちょ……ッ!? 俺ちゃん、もう腹ペコなんですけど〜!?」

 

雷冥「ご安心を。今日はデモンストレーションなのでそう長くは掛かりません」

 

 謎めいたスパルタ特訓を全力で拒否したくなる稲魂兄弟だったが、相手は80年後の未来から来たひ孫は容赦はしない。

 雷冥は問答無用とばかりに二人の首根っこを掴み、そのまま有無を言わさず引きずっていく。

 

染岡「……雷冥のあの強引さって、誰かに似てるよな?」

 

風丸「ああ……。誰とは言わないがな」

 

 こうしてーー残された他のメンバーは一足先に解散となり、マネージャー達が待つキャンプサイトへと戻り、温かい夕食に舌鼓を打つのであった。

 

………

……

…

雷牙「……でェ?一体全体、オマエさんは俺ちゃん達に何を教えるつもりなのよ?」

 

雷冥「簡単な事です。貴方達にはコレからーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“地平線(ビヨンド)の境地”と“怪物の本能(モンスターモード)”を極めてもらいます」

 

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《翌日》

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染岡「どうしたんだよ!?稲魂、ライト!?そのク(・)マ(・)はッ!!??」

 

雷牙「うっせーな……。ロクに眠れてなくて、クソ眠ィなんだから大声出すなっての……」

 

 翌日。起床早々、稲魂兄弟のゾンビのような顔面を見た染岡による驚愕の怒鳴り声が、イナズマジャパンの生活拠点に木霊する。

 

豪炎寺「昨夜、自主練から戻って来た時点でヤケにげっそりしていると思っていたが……。1時間程度であっても、そこまでハードな特訓だったのか?」

 

雷牙「いや……ハードっつーか……」

 

ライト「絶妙に形容し辛いというか……。てか、言葉にするのも嫌っていうか……」

 

 何故か二人は、歯切れ悪くゴニョゴニョと言葉を濁す。

 大方……口にするだけでも冷や汗が出るレベルの精神的トラウマを、昨夜のうちに脳へ焼き付けられてしまったのだろう。

 

雷冥「お二方、時間です。今日も昨夜と同じ特訓を行いますよ」

 

雷牙「……終わった」

 

ライト「そう絶望しないでよ、雷牙……。そんな顔されたら、ボクも気が滅入るじゃん……」

 

 トラウマ必至の地獄が待っていると分かっていては絶望の表情も浮かべたくなるが、それでもーーREONの手から大切な親友を取り戻す為、ここで立ち止まっている暇など無い。

 

 彼らはガックリと肩を落とし項垂れながらも、それ以上文句を口にする事なく、容赦のないひ孫の背中へとついて行くのだった。

 

風丸「い、一体……。どんな特訓をさせられているんだ……?」

 

 タフさには定評のある稲魂兄弟をそこまで追い詰める特訓が、いかに常軌を逸した代物か。……だが、彼らがその恐るべき全貌を知る日は、まだ少し先の事となる。

 

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CHARACTER SELECT/font》

 《font:277》INATAMA RAIGA

▶︎INATAMA RAITO

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《No side》

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ライト「ハァ……。いよいよ、明日にはこの島を出ちゃうのか……」

 

 満天の星々が黒い夜空を宝石のように彩る深夜の時間帯。

 既に弟を含む他のメンバーが寝静まった静寂の中、ライトは一人、静かに波の引く浜辺へと佇み黄昏れていた。

 

ライト「雷冥くんの特訓のおかげで、雷牙は徐々に成果が現れ始めたけど……。ボクはまだまだだ……」

 

 この2日間、雷冥の容赦ない地獄の特訓(スパルタ)にどうにか適応し、着実に爪痕を残し始めている雷牙(弟)に対し、一方のライト(兄)は、現時点で“モンスターモード”の『モ』の字の気配すら掴めていなかった。

 

ライト「ダメだよ……。このままじゃーーボクは……いつまでも弱虫のままだ……!」

 

 ライトにとってーー弟は……雷牙は、いつだって太陽のように眩しく、テレビ画面の向こうに映る憧れのヒーローのようだった。

 その絶対的な存在感は、幼い頃も……そして『今』この瞬間も、変わる事はない。

 

 だがーーそんなライトの胸の内には、『昔(かつて)』とは異なる、新しい心境の変化が芽生えていた。

 

 それはーーー

 

ライト「ボクだって……雷牙と隣で戦いたい……っ!!」

 

 『弟の背中をただ追いかけるのではなく、肩を並べて対等に立ちたい』ーーそれは、薄汚い嫉妬心などでは決してない。

 

 ただ……稲魂雷斗という少年が抱いた、“兄”としての、そして“兄”であり続ける為のーーあまりに純粋極まりない欲求であった。

 

 無論、当の雷牙からしてみれば、ライトは多少手がかかる部分はあっても、肝心な時には誰よりも頼りになる自慢の兄として映っている筈だ。

 ……それでもーーいや、だからこそ。ライト自身は、そんな弟の信頼に甘んじているだけの今の己を、どうしても許す事が出来なかったのだ。

 

ライト「……よしっ!!!こんなところで黄昏てても現状は変わんないっ!!! 少しでも雷牙に追いつく為に……今から自主練だっ!!!」

 

 脳内を支配する“モヤモヤ”を振り払うように……ライトは力強く立ち上がる。そこに確かな勝算や根拠なんて存在しない。

 ただーーもしも立場が逆であれば、弟だって間違いなく同じ行動をとっていた筈だから。

 

 なんだかんだと言いながらも、血の繋がりを超えてこうして似てしまうあたり、やはり流石は兄弟と言ったところか。

 

 気合いを入れ直したライトは、砂浜から立ち去り、森にあるサッカーコートへ向かおうとする。

 

 ……だが、そ(・)の(・)時(・)ーーー

 

ーーカサッ……ガサガサッ……!

 

 背後の静まり返ったジャングルの茂みから、不気味な草木を揺らす音が響き渡る。

 

ライト「くぁwせdrftgyふじこlpッ!!!???」

 

 ライトはビビり散らかす。それもう……先程までの決意に満ちた凛々しい瞳が嘘のように、完全に白目を剥いて。

 まあ……無理もないだろう。深夜の不気味な無人島、謎だらけの遺跡、そして背後に迫る怪異の足音……etc。“神鳴り島”を構成する恐怖の要素は、ライトの顔を真っ青に染め上げるには十二分過ぎたのだから。

 

ライト「待って……!待って待って待って、待ってっ!!! ボ、ボクは……食べても美味しくないよォ!!!」

 

 恐怖心、雷斗のこころに、恐怖心。

 あまりのパニックに恥も外聞もかなぐり捨てて命乞いをするライトだったがーーー

 

ーーガサァッ!!!!!

 

 そんな必死の懇願も虚しく、大きな音を立てて茂みが勢いよく割れ、そこから一つの影が飛び出してきた。

 

 ライトの前に現れたのはーーー

 

???「………」

 

ライト「・・・へ?」

 

 水色の兜を被った猫のゆるキャラのお面で顔を隠したーー一(・)人(・)の(・)男(・)で(・)あ(・)っ(・)た(・)。

 

???「……某(それがし)はこの島を彷徨う地縛霊。その名もーー《ブシ・ニャンダフル》でござる……」

 

 その男は、自らをこの島の地縛霊《ブシ・ニャンダフル》と名乗った。……だが、頭から下の姿はどこからどう見ても、不気味な幽霊どころかーーー

 

ライト「いや……パパだよねっ!?!?!?」

 

 そう、水色の兜を被り、猫のゆるキャラのお面で必死に顔を隠してはいるものの……その実態は文字通り『頭隠して尻隠さず』。

 顔から上は怪しさ満点なのに、顔から下はいつものボロボロのスポーティなパーカー姿のままで、微塵も変装になっていない。

 

 要するに……どこからどう見ても、目の前の男はステラ・オーロその人であった。

 

ブシ「違うでござる。某はブシ・ニャンダフルでござる」

 

ライト「パパだよね? 1メートル以上、離れていても臭うアルコール臭は、もうパパだよね!?」

 

ブシ「……違うでござる」

 

ライト「パ・パ・だ・よ・ね・?」

 

ブシ「……それでも違うでござる。そもそも……ステラ・オーロは、お主の父親(パパ)でもないでござる」

 

ライト「……もういいよ」

 

 言い逃れの余地すら完全にゼロであるステラ本人を相手に、これ以上論戦を続けても泥沼にハマるだけだと悟ったライトは、溜め息をつきながら仕方なく話を合わせてやる事にした。 

 

ライト「……それで、パーーブシ・ニャンダフルさん? ボクに……何のご用ですか?」

 

ブシ「……ココは某の縄張り、せっかく人が気持ち良く眠っていたのに、いつまでもウジウジ悩まれていては迷惑でござる。……だからーー某が直々にお主を鍛えてしんぜよう……」

 

ライト「パパが……?」

 

 鎧の地縛霊()からの突然の提案に最初はポカンと唖然としていたライトだったが、すぐにその言葉の持つ意味を脳内で完全に直訳する。

 すると、さっきまで曇っていた彼の瞳には、満天の星々の煌めきにも負けない、眩いまでの『キラヤバ〜☆』な光がパーッと宿り始めた。

 

ライト「やるやる!ぜひ、やらせてくださいっ!!!」

 

 目をキラキラと輝かせたライトは、即座に首を縦に何十回も激しく振り、その提案に飛びつくように許諾する。

 目の前の男が、自身が憧れた父とは似ても似つかぬ事実上の別人であろうと関係無い。

 

 だってーーもう一度、父親と共にサッカーをする事。それが、ライトの胸の奥底にずっと仕舞い込んできた何よりの『夢』だったのだから。

 

ブシ「……そうか。ならばーー今スグ、刀を抜け」

 

ライト「……オッケー」

 

 キャラ作ったような古風な言い回しに答えたからライトは、鞘に納めた『刀』ーー“稲魂ステップ”を行い地縛霊との特訓に備える。

 

ライト「よっ!ほっ!はっ!」

 

ブシ「………」

 

ライト「……ブシ・ニャンは、コレをやらないの?」

 

ブシ「……ステラ・オーロが“稲魂ステップ(ソレ)”を行っていたのは、あくまでの試合へのモチベーションを高める為……。科学的には何一つとして根拠が無いでござるからな……」

 

ライト「……夢(ロマン)がないこと言うなァ……」

 

 地縛霊の返答に、これまでの人生を否定されたような気がして、ほんの少しだけムカッ腹が立つがーーそれはそれ、これはこれだ。

 

 これから始まる地縛霊との1対1の勝負に胸を躍らせたライトは、足元にボールを置き、砂浜の不安定さをものともしないしっかりとした構えを取る。

 

ブシ「勝負は単純。目の前の相手を抜いたら勝ち。それを交互に行うだけだ……でござる」

 

ライト「ちなみに、コレは……何本先取?」

 

ブシ「……そんなモノは無い。どちらかが『参った』と言うかーー『戦闘不能』になるまで行うだけでござる」

 

ライト「……そっか。それはシンプルでーーとっても分かりやすいねっ!!!」

 

ーーダッ!!!

 

 ライトは始まりの合図を待つ事すらもどかしく、夜の砂浜を力強く踏み締めて一気に駆け出す。これはもう……ほぼ不意打ちも同然の奇襲だった。

 

 だがーーー

 

ブシ「……遅い」

 

ライト「ぐわぁっ!!?」

 

 普段のライトからは決して出ないような“不意打ち”の奇襲すらも、地縛霊には一切通用しない。必殺技のモーションに入る隙すら与えられず、瞬く間にボールは奪い去られーーライトの一敗が確定する。

 

ブシ「先ずは某の一勝」

 

ライト「にはは……。やっぱり……強いなァ……」

 

ブシ「まだ、やれるでござるか?」

 

ライト「あたり……まえ……っ!!!」

 

ブシ「……だろうな」

 

 圧倒的な戦力差をこれでもかと見せつけられてなお、ライトの瞳に宿る闘志の炎が消える事はない。

 だがーー何度挑もうと、結果は残酷なまでに同じだった。

 

【2敗目】

ブシ「隙だらけでござる」

 

ライト「うわっ!?」

 

【26敗目】

ライト「“雷星ーーー」

 

ブシ「生憎、某はアニメや映画の悪役ではない」

 

 度重なる敗北に次ぐ敗北……。そしてとうとうーーー

 

ライト「ハァ……!ハァ……!」

 

ブシ「……コレで、某の100勝目でござるか」

 

 遂にライトは、幾度目かの絶叫と共に日に百度目となる敗北を達成してしまった。

 

 驚くべき事に……これほどまでに壮絶な百戦にも及んだ激闘を繰り広げているにも関わらず、夜の帷は依然として深く暗く、太陽の昇る気配は微塵もない。

 当たり前だ。特訓の幕が上がってから、まだ2時間と少し程度しか経っていなかったのだから。

 

ブシ「……哀れでござるな。日に百度の敗北を経験した者など、ありとあらゆる歴史を遡ってもいないでござろう」

 

ライト「………」

 

ブシ「……もう、ココいらでやめにしてはどうか?」

 

ライト「……それは、ど(・)っ(・)ち(・)の(・)意(・)味(・)で(・)言(・)っ(・)て(・)る(・)の(・)……?」

 

 ライトは息も絶え絶えになりながらも、その言葉の裏にある真意に既に気付いていた。

 

 地縛霊は……ハッキリと口に出してこそいないが、明らかにその『やめる』という勧告の方向性は、今目の前で行われている“この特訓”ではなく、もっと根本的なーー“別の事柄”に向いていた。

 

ブシ「………」

 

ライト「……ねェ、教えてよ……!ブシ・ニャンはーーあなたは、ボクにどうなってほしいの……っ!?」

 

 我が子に真っ直ぐにそう問い詰められた地縛霊は、気まずそうに思わずふっと視線を逸らした。

 ……だが、夜の浜辺に吹き抜ける潮風の中で数秒の重い沈黙を挟んだ末、彼は仮面の奥にある唇を、重く、そして静かに開いた。

 

ブシ「……無論、こ(・)の(・)戦(・)い(・)か(・)ら(・)で(・)ご(・)ざ(・)る(・)……」

 

ライト「ッ……!」

 

ブシ「聞けばーーお主はこの中で唯一、“円堂守”との繋がりが薄いとの事。……ならば、かの者の救出は他の者達へ任せ、お主は故郷へ帰って平和に過ごすという選択肢もあろう?」

 

 地縛霊の言う事はあまりにも的を射ていた。

 REONが突如として世界を襲撃したあの日。ライトがFFスタジアムへと招集されたのは、偶然ヒロトと共に特訓していたからに過ぎない。

 

 つまり彼は……本質的にはただ不運が重なって巻き込まれただけの、『部外者』に過ぎないのだ。

 

ライト「……っ、ぐ……」

 

 その言葉は、優しさという名の鋭利な刃物となって、ライトの胸の最も柔らかい場所を深く、深く突き刺した。

 

 目の前の地縛霊のーー否、父親(ステラ)が言いたい事は、痛いほどよく理解出来る。

 口では「父親ではない」と否定しながらも……結局のところ、彼は並行世界の息子を傷つけたくない一心で守ろうとしてくれているのだ、と。

 

ライト「……本当に優(・)し(・)い(・)ん(・)だ(・)ね(・)。パパは……」

 

ブシ「………」

 

 だが……。いやーーだ(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)だ(・)。

 

ライト「でも……断(・)ら(・)せ(・)て(・)も(・)ら(・)う(・)」

 

ブシ「!」

 

 どれほど憧れ続けた父親からの切実な頼みであろうとも……ライトにはーー最初から、この戦いから逃げ出すという選択肢なんて存在しない。存在する筈がなかった。

 

 だってーーー

 

ライト「確かに……ボクは、円堂くんとの関わりは薄いよ……。それでも……っ!!親友(ヒロト)が……!最愛の弟(雷牙)が……!!彼を助けたいって思っているのなら……っ!!!迷わずに手を貸すのがーー本当の“ヒーロー”なんだっ!!!!!」

 

 基山ヒロトの“親友”である為にーー

 稲魂雷牙の“兄”である為にーー

 

 そして……。

 彼が憧れる、真の“英雄(ヒーロー)”の背中に少しでも近づく為にーー

 

 少年は……目の前の“現実”から逃げる訳にはいかなかったのだから。

 

フジ「ーー!!! この獣のような殺気(プレッシャー)……ッ!オマエ……まさか……ッ!?」

 

 刹那、稲魂雷斗の胸の奥で……“何か”がプツン、と音を立てて切れた。

 それが具体的にどのような代物であるのかは、ライト本人にすら分からない。

 

 もしかしたら、溢れ出る感情を抑制していた『理性の栓』だったのかもしれないし、あるいは心臓へと直結する限界の生命線だったのかもしれない。

 そもそもーー初めからそんな“モノ”など存在していなかったのかもしれない。

 

 ただ一つ確かなのは……。ライトの中でその見えない線が切れた瞬間、度重なる敗北によってドン底まで押し潰されていた“気”が、底知れぬ殺気(プレッシャー)を纏いながら爆発的に跳ね上がったという事だけだ。

 

ライト「グウゥゥゥッ………!!!ウワァァァァァァァァァァッーーーーーー!!!!!!!!」

 

 天へ向かって魂の雄叫びを上げながら、太陽の如き黄金のオーラと鮮烈な稲妻を全身から解き放つライト。

 その途轍もなく巨大な闘気は夜の砂浜を激しく揺さぶり、放たれる衝撃波の余波だけで、地縛霊の足元を僅かに後退させる。

 

ブシ「……やれば出来るじゃねェか」

 

 荒れ狂う暴虐のエネルギーが夜の闇を切り裂き、神鳴り島の重い空気をビリビリと震わせる。

 仮面の下で、ステラが息を呑み、僅かにその瞳を見開いた。

 

 もはや、そこにかつての頼りない少年の姿など微塵もない。

 目の前に佇むのはーー父から受け継いだ黄金の髪は怒髪天を衝き、際限なく荒ぶるオーラと青白いスパークを全身から立ち昇らせる、一匹の『怪物』そのものだった。

 

ライト「ハァ……!ハァ……!“怪物の本能(モンスターモード)”……超変身(スイッチオン)……ッ!!!」

 

 遂に覚醒を果たした、ライトだけの秘技ーー“怪物の本能(モンスターモード)”。

 無論、これを完全に物にした訳ではない。今起きているのはあくまで極限状態が生んだ一時的な覚醒に過ぎないと、ライト自身が一番よく分かっていた。

 

 体の奥底から際限なく湧き上がり続ける、制御不能なほどの強大なパワー。それに比例するように今にも吹き飛びそうになる理性を必死に自制しながら、ライトは荒い息を整え、ゆっくりと口を開く。

 

ライト「ーーもう一度だ、パパ。今度は……容赦なんてしないからねっ……!!!」

 

ブシ「……いいぜ。かかってこいよ、クソガキ……ッ!」

 

 並行世界の存在とはいえ、仮にも自身の息子を『クソガキ』呼ばわりするステラは実に情けないが……。その仮面の奥から零れた声は、どこまでも誇らしげで、そして最高に嬉しそうだった。

 

ライト「ダァァァァァァーーーッ!!!!!!」

 

 砂浜を踏み込んだ瞬間。凄まじい衝撃波と共に数十センチもの深い虚空(クレーター)が穿たれ、既にそこにあった“星迅の怪物”の姿は消えていた。

 

ブシ「ーー!!!!」

 

 血を分けた“怪物”親子が住まう、僅かコンマ1秒の攻防が基本(デフォルト)となる、常人では視認する事すら叶わない超次元の世界……。

 父親(ステラ)もまた、その驚愕を一瞬で戦闘思考へと切り替えて姿を消し、次の瞬間ーー砂浜の空間を引き裂いて先に姿を現したのはーーー

 

ーーゴッ……!

 

ライト「バタン……キュ~……☆☆☆」

 

 たった一撃、しかし圧倒的に重い鈍い音が砂浜に鳴り響いた刹那。

 宙に舞って先に姿を現したのはーー凄まじい勢いで“モンスターモード”が強制解除され、頭上に可愛いらしい星々を浮かべながら目を回して気絶したライトの姿だった。

 

ブシ(?)「ハァ……!ハァ……!今のは流石に……危(・)な(・)……か(・)っ(・)た(・)……ッ!!」

 

 少し遅れて砂浜へ着地したのは、もはや飄々とした鎧の地縛霊などではなかった。

 “ブシ・ニャンダフル”という奇妙な仮初めを形作っていた猫の仮面は、ライトの放った一撃の余波か、あるいは激突の衝撃で今や粉々に粉砕されーー夜風の吹き抜ける浜辺に、隠す必要のなくなったステラ・オーロの素顔が露わになっていた。

 

???「コレは、コレは。随分と苦戦なされたようで」

 

ステラ「……チッ」

 

 その直後、口調こそは丁寧ながらも、どこかステラを小馬鹿にしたような爽やかな第三の声が夜の浜辺に響き渡る。

 

 その声の持ち主は言うまでもなくーーー

 

ステラ「やかましいぞ、青髪の未来人」

 

雷冥「コレは失礼。いかんせん……どこぞの誰かさんのせいで、ストレスが溜まっていたのでね」

 

 波打ち際の木陰からひょっこりと姿を現したのは、不敵な笑みを浮かべた稲魂雷冥その人だった。

 

雷冥「ですが……今のライト殿の底力は、私の想像を遥かに超える素晴らしいものでしたよ。その証拠に……貴(・)方(・)も(・)本(・)気(・)を(・)出(・)さ(・)ざ(・)る(・)を(・)得(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)?」

 

ステラ「……ノーコメントだ」

 

ーーザッ、ザッ、ザッ……

 

 ぶっきらぼうに吐き捨てたステラは、バツが悪そうに両手をポケットへ突っ込み、そのまま背中を向けてその場から立ち去ろうとする。

 

 ……だが、砕けた仮面の奥にあったその表情は、どこか晴れ晴れとしていた。

 

雷冥「ハァ……。まったく、強情なお人だ。せめて、父親としてライト殿を運んであげるくらいはしてもいいのでは?」

 

ステラ「……断る。そもそも、俺はこの半人前の親じゃねェ。ーーそれに……俺には、息(・)子(・)に(・)触(・)れ(・)る(・)権(・)利(・)さ(・)え(・)無(・)い(・)」

 

雷冥「……悲しい男ですね、貴方という人は」

 

 “侮辱”でもあり、“憐れみ”でもある雷冥の言葉に対し、ステラは振り返る事もなく、何一つ答える事はなかった。

 静まり返った神鳴り島の夜の浜辺には……ただ、月明かりに照らされたさざ波の音が寂しく木霊していた。




本当は修行中の描写をじっくり書こうとは思いましたが、話のテンポを考えた結果、バッサリカットしました。
結局のところ、イナズマジャパンが行った修行は、トリコの食林寺編のトリコや小松、ドラゴンボール超のヤードラット星でベジータが課されたような類のものです。

【イナっと裏話!ガルシャア一味とヴァンフェニー一味の時系列】
①色々あってラグナロク終了後、雷門イレブンに宣戦布告する。
↓
②天馬率いる【雷門A】が【ヴァンプティム】を、神童率いる【雷門B】が【ツキガミの一族】を破り、一時撤退する。
↓
③その後、【ジ・エグゼラー】として【クロノストーム】にリベンジマッチを挑むも敗北。
↓
④敗北後、グランドファーザーと名乗る影山零治によって拉致。実験台にされる。
↓
⑤しばらく経ったある日、手駒を欲していたREONによって助け出される(これがスピンオフの騒動に繋がる)。
↓
⑥とはいえ、REON単体では【ツキガミの一族】にも【ヴァンプティム】にも勝てないので、首輪型の爆弾を装着され、生殺与奪の権を握られ強制的に同盟関係を組まされる。←今ココ!

なお、フランは初期からのREONの仲間ではありますが、デストラクチャーズ戦を見たら分かる通り、情緒不安定かつ一度暴走すればクッッッソややこしい事になる為、基本的には核兵器同然の切り札として温存されてます。
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