No side
結局、雷門の連携問題は何一つ解決しないまま試合当日を迎えた。
雷牙は鬼道から何か連絡がこないかをずっと待っていたが期待していた結果にならなかったことを残念に思いながらも取り敢えず試合に向けて集中する。
FW:染岡、雷牙、豪炎寺
MF:半田、少林、宍戸
DF:風丸、土門、壁山、栗松
GK:円堂
今回のスタメンは以下の通りだ。今回雷牙はFWに入っている。
理由としては壁山が覚えた“ザ・ウォール”ならば千羽山のオフェンス程度は雷牙がディフェンスに参加しなくても十分防げると響木判断したからだ。
そしてFW陣の狙いは先日に発見した新必殺技を放つ事。まだ威力と完成度には疑問が残るが今はそれしか打つ手が無い。
審判のホイッスルで試合が開始する。だが懸念通り雷門のパスは上手く繋がることがなく溢れ玉を千羽山に拾われてしまう。
『こ、これはどうした雷門⁉︎以前までの連携が嘘のように通らない!それに対し千羽山は見事な連携を見せています!』
「か、監督大丈夫なんですか⁉︎」
「…まだだ、もう少し様子を見る。」
マネージャーの心配をよそに響木は何かを待っているかのように様子を見ている。
連携が繋がらない以上は雷牙は不本意であるがスタンドプレーに走らざるを得なくなる。ディフェンスラインでボールを奪った雷牙がドリブルで駆け上がる。
さすがの千羽山も雷牙のドリブルの前にはそうそう止めることが出来ず、あっという間に中盤まで上がる。
「…今だ守!上がれ!」
雷牙の指示で遂に円堂がゴールを飛び出した。雷牙が起点となりボールを空に上げると黄色の雷が真下に落下し雷牙、豪炎寺、円堂が同時にトリプルシュートを放つ。
「「「“イナズマブレイク”」」」
これこそが対千羽山用に習得した雷門の新たな必殺技“イナズマブレイク”である。
しかし“イナズマ1号”を遥かに上回るパワーは非常に不安定であり制御するのに一苦労だ。
「まずい!このままでは暴発するぞ!」
「根性だ!ここまできたら根性でなんとか制御するしかねぇだろ!」
「ド根性だぁぁぁぁぁあ!」
なんとかシュートとしての形を保つことに成功した“イナズマブレイク”は凄まじい威力で千羽山のキーパー綾野目掛けて襲いかかる。
だが綾野は臆すること無く仁王立ちのまま立っており、その両隣には巨漢の牧谷と塩谷がポジショニングをとっている。
「「「“無限の壁”」」」
遂に姿を見せた“無限の壁”。まさに無限に続いているように思わせる石壁の迫力は今までの無失点で記録を見る者全てに納得させるオーラを放っている。
完璧な“無限の壁”VS未完成の“イナズマブレイク”。
凄まじい雷を放ちながら巨壁に襲いかかるものの次第に雷が分散し完全に消え去ってしまう。
しかし威力そのものは完全に殺すことは叶わず遂に巨壁を粉砕する。しかしコースは大きくそれてしまいゴールポストに直撃して千羽山はなんとか無失点記録を維持する。
さらに不幸なことにボールを拾ったのは千羽山であった。
「ま、まずい!円堂すぐにゴールに戻れ!」
「もう遅いっぺ!“ラン・ボール・ラン”!」
千羽山のMFがボールをまるでタイヤのように扱い超加速し雷門を抜き去る。まだ円堂は戻れていない。
「壁山!“ザ・ウォール”だ!円堂が帰るまで持ち堪えるんだ!」
「はいっス!”ザ・ウォール”!」
壁山は巨大な岩山のオーラを出現させるが千羽山は止まることなくシュートを放つ。
「“シャインドライブ”!」
強烈な光に雷門のDF陣は目をくらませてしまい一瞬動きが止まる。
光が止んだ後には既にボールはゴールラインを割っており千羽山の先制点が確定する。
『ゴーール!雷門、鉄壁の防御力を誇る千羽山に対抗しようと円堂を前線に出したのが裏目にでたぁぁぁあ!ゴールに戻ることが叶わずあっさり先制点を奪われてしまったぁぁぁぁあ!!!ここから雷門は逆転できるのか⁉︎』
まさかゴールに戻るのが間に合わないとは思わなかった雷牙は指示のタイミングが間違っていたことに後悔する。
もう少しDFを自分が引き付けていればギリギリ間に合ったかもしれない。そう考えていると豪炎寺が雷牙を励ます。
「取られてしまったものは仕方ない。前半中になんとしても一点を取り返すぞ。あまり使いたくなかったが化身を使うことも視野に入れなければならない。」
雷牙もそう思ったが響木は化身を出すなと遠くからハンドサインを送る。
雷牙としては千羽山も得点力がない筈だからさっさと化身を使って“無限の壁”をぶち破りたいところだが監督が駄目だと言っている以上雷牙はそれに従うしかない。
『か〜ごめかごめ、か〜ごの中のと〜り〜は〜』
ボールを持っている雷牙に千羽山のMF達は民謡を歌いながら3人で円を描くように囲む。
あまりにもサッカーとは似つかわしくない光景に一瞬だけ雷牙は隙を作ってしまう。その隙を見逃さなかったMF達は一斉に飛びかかり雷牙からボールを奪う。
千羽山のカウンターが始まるがなんとか円堂が防いでみせる。
だが相変わらず試合の状況は動かない。その先ほどの失敗と現状に焦った雷牙は監督を指示を破り化身を発動させる。
「おい稲魂!監督がまだ化身は使うなって言っていただろ!後半まで温存するんだ!」
「ここで取り返せば問題ねぇだろ!この俺にズババーンと任せときなぁ!」
雷牙が放ったシュートは伊賀島戦で見せたものよりも遥かに凄まじい稲妻を帯びながら千羽山のゴールに襲いかかる。
千羽山も“無限の壁”で対抗するが化身シュートは十分に“無限の壁”を砕ける威力を持っている。
…普通だったなら
『な、なんとーー!雷門稲魂が放った渾身のシュートが千羽山のゴールを大きく逸れてしまったぁぁぁあ!!!これは雷門にとってかなりのダメージだぁぁぁあ!!!』
まだ感覚を掴めていなかったせいで想定していたコースを大きく逸らせてしまった雷牙。
せっかくみんなが掴んでくれたチャンスを無下にしたことと監督はこうなることが分かっていたために自分に化身を使うなと言っていたことを理解し、ショックを受けて膝から崩れ落ちてしまう。
「くそったれが!せっかくみんなが繋いでくれたボールだったってのになんでこんなところで外すんだよ俺は!」
「哀れだな稲魂雷牙!たった一度の失敗でそのような顔をするとはな!」
フィールドの外から雷門でも千羽山でもない声が響く。しかし雷門はその声を嫌と言うほど知っている。
その選手はドレッドヘアーにゴーグルをかけ、青色のマントを靡かせている。
「…響木監督。手続きは完了させましたか?」
「ああ、遠慮なく暴れてこい!」
『な、なんとぉぉぉお!!!ここで雷門はMFの少林と交代して新たな選手を投入しました!しかし、我々は彼の顔をよく知っている!!あ、あの帝国のキャプテンであり、“ピッチの絶対指導者”と呼ばれる鬼道有人だぁぁぁあ!!!』
帝国学園所属の筈の鬼道有人が雷門のユニフォームを来て少林と交代する様子を見て会場は動揺が走る。
中には罵声も浴びせる者もいるほどだ。予想外の状況に角馬王将も大会規定を確認しある項目を見つける。
『み、皆様どうか落ち着いてください!只今入った情報によると大会規定第64条第2項“プレイヤーは試合開始前に転入手続きを完了していれば、大会中でもチーム移籍は可能”とのことです!雷門は今試合前に鬼道有人の転入手続きを終えているとの確認が取れましたのでルール上問題はありません!』
「はぁ〜、たく来るならもっと早く来いよ。それに別に絶望しちゃいないっての、どっかの誰かさんと違って。」
「ふん、雷門の分析に手間がかかっただけだ。どこぞの誰かが監督の指示を無視して1人突っ走ったせいでな。」
雷牙の皮肉を皮肉で返す鬼道。ゴーグル越しから見える目には以前のように闘志が燃え上がっていた。
「なんで帝国キャプテンが雷門に…?」
「だが鬼道が入ったところで俺たちが負けるわけがないっぺ!」
鬼道が入ったことに動揺を隠せない千羽山イレブンだったが自分達の“無限の壁”がそう簡単に破られるわけがないと高を括る。
それを見ていた鬼道は不敵な笑みをあげ千羽山を挑発する。
「フッ、残り5分だ。」
「何?」
「残り時間5分で貴様ら自慢の“無限の壁”を破ってやろう。」
ゴールキックから試合が再開するが相変わらず雷門の連携は上手くいかない。
なんとか千羽山ボールを奪うと同時に鬼道は選手にそれぞれに合った指示を出す。
するとどうだろう。さっきまでの不調が嘘のようにボールが繋がりだす。
「“ファイアトルネード”!」
「「「“無限の壁”!」」」
遂に繋がったボールを豪炎寺の十八番でシュートを撃つがまだ“無限の壁”を破るには威力が足りないようでボールが弾かれる。
「す、すげぇ…これが天才ゲームメイカーの実力か…!」
「フン、この程度で驚かれてちゃ後が困る、染岡はシュートを撃つ時は普段の1.2倍強く撃つことを意識!松野はパスを半歩先を意識して放て!」
「なぁなぁ鬼道〜俺にはなんか指示ねぇの〜?」
「知らん。貴様はあまりに自由すぎるからな、精々体力切れに気をつけろ。だが強いて言うなら…“稲魂雷牙”のサッカーをしろ。いいな?」
「はっ!ズババーンと任せとけ!」
残り時間あと2分。鬼道は雷牙と豪炎寺と共に攻め上がる。
「稲魂!もう一度“イナズマブレイク”の体勢に入れ!今度はワンテンポ遅れてシュートを打つんだ!」
「了解ッ!」
雷牙を起点にボールを空に上げると鬼道が飛び上がり口笛を吹く。すると11匹のペンギン達がボールにチャージされ紫と黄色の雷を纏いながら自由落下する。
そして“イナズマブレイク”と同じ要領で鬼道、豪炎寺、雷牙がシュートを撃つと黄色と紫色になった合計11匹のペンギン達が一斉に飛び出し千羽山ゴールに襲いかかる。
「「「“無限の壁”!」」」
今試合幾度目かになる雷門のシュート対“無限の壁”。千羽山のキーパー綾野はいつも通り止められると確信していたがふとある違和感が発生する。
いつもよりボールが拮抗している時間が長すぎるのだ。それだけではない、11匹のペンギンの嘴は次第に“無限の壁”に亀裂を入れ始め数秒後、完全に壁は崩れ去り千羽山の無失点記録が途絶えてしまう。
「そ、そんな!オラ達の“無限の壁”が…!」
「フッ、今の技を名付けるなら“イナズマペンギン No.
ここで前半が終了し、鬼道の予告通り“無限の壁”を破ることに成功し1対1の同点に持っていく。
後半からのモチベーションが上がる雷門と対照的に千羽山は今まで自分達の防御が破られた経験がなかったことが仇となり精神的な余裕が無くなってしまった。
特にキーパーの綾野は絶不調となり先ほどまでの“無限の壁”の迫力が無くなってしまう。
「“ワイバーンクラッシュ”!」
「“キングレオーネ”!」
「“イナズマ落とし”!」
元々防御特化の代わりに攻撃力に乏しいという弱点を抱えていた千羽山が肝心の防御を失ってしまったら雷門に勝てるわけがない。
「おい守!もっかい上がってこい!この点差ならもはやキーパーなんぞ関係ねぇ!ついでに“イナズマブレイク”完成させるぞ!」
「え、えぇ…?まあいっか…風丸、土門、壁山、栗松、ちょっとゴール頼んだぞ!」
あんまりにも点差が開きすぎたせいでもはや1点の失点くらいじゃ負けることがなくなったとはいえ前半の失敗が余程悔しかったのか円堂に上がるように指示を出す雷牙。
流石に円堂も動揺したが響木のGOサインが出たためDF陣にゴール前を任せて前線に上がる円堂。
「お、オラ達を舐めてんなぁ⁉︎田舎もんだからって都会っ子なんぞに舐められてたまるかぁぁぁぁあ!!!」
「おっと、俺が舐めてんのは一点取られただけで心が折れるオマエらの魂だけだよ!いくぞ守、豪炎寺!」
再び“イナズマブレイク”を仕掛け今度は鬼道が微妙なブレを修正する指示を出してくれたおかげで成功する。
完成した“イナズマブレイク”は“イナズマ1号”とは比較にならない雷を帯びながら千羽山のゴールネットを揺らす。
『試合終了ーー!!!前半の苦戦が嘘のように雷門が千羽山に11対1という大差をつけて勝利!これが”ピッチの絶対指導者”の実力かぁぁぁぁあ⁉︎』
さすがにここまで大差をつけられて負けるとは予想してなかったのか千羽山イレブンは全員脇目も振らずに涙を流している。
その様子を見ていた雷門イレブン達は少し罪悪感が芽生えたが、千羽山も自分達の防御力に慢心しているところもあったためこれを教訓にして来年は成長した千羽山と戦えることを祈りながらフィールドを去る。
その日のネットニュースは鬼道が雷門中に転入したことでもちきりであった。
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〜数時間前〜
「ここが日本か…初めて来たけどどこか懐かしい気がするな。」
雷門中が試合に向かっている同日の朝、帽子を被った少年が空港から出てきて辺りを見回す。
その少年はどこから見ても日本人であったが日本にはあまり馴染みがないような反応をしている。
「おっと、いけない!早く行かないと待ち合わせに遅れる!」
少年は時計を確認すると軽やかに走り出しこの地にいる筈の幼馴染達に思いを寄せる。
「待っていてくれよ秋、土門、西垣!そして“
かつて“フィールドの魔術師”と呼ばれた少年は稲妻町を目指して出発する。彼との出会いは雷門にどのような反応をもたらすのか?
〜オリ技紹介〜
♦︎イナズマペンギン No.11
属性:風
分類:シュート(連携技)
使用者:雷牙、鬼道、豪炎寺
進化系統:究極奥義
≪概要≫
モーションは雷牙が起点になった以外は“イナズマブレイク”と同じだが鬼道が上空で指笛を吹くモーションが追加されている。威力は“皇帝ペンギン1号”と同等と某眼帯さん涙目の威力だが、3でベンチウォーマーが言っていた“1号”の威力と“2号”の安定性を兼ね添えた技こそがこれと言えるかもしれない。
♦︎イナズマブレイク
属性:山
分類:シュート
使用者:雷牙、円堂、豪炎寺
≪概要≫
原作の技だが起点が変わったことでエフェクトが変化したため一応記載。威力は原作と同じだが紫のオーラは走っておらず、ただ巨大になった“イナズマ1号”といった感じ。