イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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タイトルに“バカ”ってついてるけど、あんまバカ要素無いです。


“バカ”と“伝説”と“サッカーモンスター”

No side

 

ようやく監督から掛けられた封印を解き、宍戸と交代する“サッカーモンスター”こと稲魂雷牙。

彼は前半座っていた分の身体の硬直をほぐすように軽いステップを数回踏み自分のポジションに着く。

その光景を見ていた木戸川清修は雷門で最も警戒しなければならない選手を見て緊張感を走らせる。

 

「おい豪炎寺。さっきみてーなプレーをしたら今度は“イナビカリショット”ぶち込むかんな。」

 

「分かってるさ、もう俺は迷わない。そして雷門を決勝に送ってみせる!」

 

豪炎寺の目に再び闘志が燃え上がるのを感じた雷牙は皮肉気な笑みを浮かべ豪炎寺の後ろに立つ。

審判のホイッスルで後半が開始される。木戸川ボールから始まった試合は早速武方三兄弟の速攻が始まる。

 

「そこをどけよ豪炎寺!ここは“負け犬”になった奴がいていい場所じゃないんだぜ!!」

 

「俺はお前たちに謝らなければならない。さっきの言葉は俺の本心じゃなかった。ただ自分の力不足から逃げるための言い訳だったんだ…。だから俺はプレーで答える!もう俺は“天才ストライカー”の豪炎寺修也ではない!俺は“雷門イレブン”の豪炎寺修也だ!」

 

豪炎寺は“バーニングカット”で友からボールを奪うと、横に雷牙がトップスピードで走って来る。

 

「よう、“雷門”の豪炎寺君。俺と一緒にひとっ走りしないかい?」

 

「フッ、ひとっ走りだけでいいのか?何百走りでも付き合ってやる!」

 

豪炎寺もトップスピードに到達すると2人はまるでシュートを蹴り合っているかのようなパス回しで木戸川のディフェンスを突破していく。

 

「これ以上はやらせるか!“スピニングカット”!」

 

西垣は対複数人用のディフェンス技である“スピニングカット”を使うが直撃する瞬間に雷牙はヒールでボールを上空に上げる。そこにいたのは既に“ファイアトルネード”を撃つ体勢になっている豪炎寺であり、ノータイムでシュートを放つ。

キーパーの軟山は“タフネスブロック”の構えを取ろうとするが何か違和感を感じる。

“ファイアトルネード”の落下点が自身と微妙にずれているのだ。その解答は直ぐに文字通り叩きつけられることになる。

 

「ドンピシャだぜ豪炎寺!“イナビカリショット”!」

 

なんと雷牙は“スピニングカット”の壁をぶち破って真正面から突破してきたのだ。

そして間髪入れずに“イナビカリショット”を“ファイアトルネード”にシュートチェインするように叩き込むと、炎と雷を纏った新たなシュートとなって軟山に襲いかかる。

完全に不意を突かれた軟山は反応することが出来ず、あっさりと追加点を与えてしまった。

 

『ご、ゴーール!稲魂と豪炎寺の凄まじい連携で開始から僅か5分で追加点を奪ったぁぁぁあ!長年FFの試合を見続けている私もあのようなコンビプレーは見た事がありません!』

 

「帝国の“ツインブースト”を思わせる連携シュート…“ツインブーストTF(サンダーファイア)”と名付けましょう!」 

 

「おお!なんか目金さんの命名を聞くのも久しぶりな気がしますね!」

 

「最近皆さんが先に名前を付けてしまうから僕の出番がなかったんですよ…。」

 

久々の目金の名付けタイムにベンチの選手とマネージャーは盛り上がるが目金本人は最近出番がなかったことを愚痴っている。

そして、観客席で息子の活躍を見ていた豪炎寺の父、勝也は今のプレーに驚愕の顔を浮かべていた。

確かに前半のプレーは木戸川清修にいた時を思い出すモノであったがそれはただ1人で突っ走っているだけだと素人の勝也にも分かるほど酷いプレーだった。

だが今のプレーはどうだ?あんな凄まじいプレーは木戸川にいた頃も、雷門に入ってからの試合でも見た事が無い。そしてプレーしている最中の息子は心の底からサッカーを楽しんでいたように感じた。

 

(本当に凄い…。今までのプレーがあの子の限界だったと考えていたが、あそこまでの速度のパスを修也が出し、それに応えることが出来る選手が雷門にはいるのか…?これが響木さんが言っていた雷門のサッカーだというのか…?)

 

勝也の脳内に溢れるのは先日交わしたばかりの響木との会話。

息子からサッカーを辞めるとの報告を受け、それが真実なのか自分に聞きに来た時の会話だった。

 

『本人の言う通りです。私は修也をサッカーの道ではなく医者としての道を歩ませたい。たとえそれが本人の意思に反していても。』

 

『あくまで監督に過ぎない私が貴方の家の事情に首を突っ込む権利はありません。しかし、息子の意見を聞かないというのは少々可哀想ではありませんか?彼のサッカーの才能は素晴らしいものです。ここで潰すのはあまりにも惜しい。』

 

“サッカーの才能がある”。息子の活躍を見た人々は皆口を揃えてそう言う。しかし、勝也としては無理矢理にでも息子からサッカーを奪わなければならない理由があるのだ。

 

『……ここまで私の話を聞いた貴方はきっと私の事をこう思っているのでしょう。“息子の夢を己のエゴで潰す醜い毒親”であると、それは歴とした事実であるため否定はしません。しかし、私はそこまでしてサッカーを奪うのは息子を守るためでもあるのです。』

 

『息子を守る為…?』

 

 確かに自分はある時点までは息子がサッカーをする姿を応援していた。忙しい中時間を作って息子の試合を見に行っていたし、練習だって付き合っていた。しかし、娘の夕香がまだ幼い頃に悲劇は訪れた。最愛の妻が若くして病死したのだ。勝也は強いショックを受けたが2人の子を自分の手で育て上げると決意しそれからは必死に医学に没頭した。だが息子との時間を作ることが出来ず次第に試合にも見に行くことが出来なくなった。

しかし、心の奥では息子の活躍を応援していた。

 …だがその思いも長くは続かなかった。修也が中学1年生の時、つまりは1年前、今度は娘が事故に遭った。幸い自身の今までの努力が報われ何とか命を救う事に成功はした。だがその代償にアレだけお転婆だった娘はまるで人形のように病室で眠りに就く日々を送ることになった。

 勝也はどこにぶつけたら良いか分からない怒りに心を支配された。それは息子の修也も同じだった、息子は最終的に娘が目を覚ますまでサッカー辞めると誓いを立てたが結局、自分の気持ちに嘘をつけずに転校先のサッカー部に入部した。だが日々自分の周りで起こる偶然とは思えない悲劇の数々に勝也の心は限界だった。もう二度とあのような思いをしたくない。修也にはちゃんとした人生を送って欲しい。“父親”としての自分が選んだ選択は、かつて妻が何気なく言っていた“息子には医者になって欲しい”という夢を息子に押し付け、サッカーから離れさせる事だけだった。

 

『……なるほど、確かに私は勘違いをしていたようです。貴方は立派な父親だ。少なくとも死んだ私の親父とは比較にならない程に』

 

『分かったいただけましたかな?明日も仕事があるんでね帰らせてもらいますよ。』

 

『少しだけ待ってください。本当に息子さんのサッカーを否定するのならば明日の試合を見に来て貰えませんか?』

 

『試合はいつも後日動画で見ています。それで十分でしょう?』

 

『いえ、私が見て欲しいのは“豪炎寺修也”のサッカーではなく、“雷門イレブンの一員”として戦う豪炎寺修也なのですよ。』

 

響木の言葉は本当だった。あそこまで生き生きとサッカーをする息子は見た事が無い。それほど彼らとのサッカーは息子にとって大切な物なのだろう。

 

(…もういいだろう母さん。あいつの好きにやらせてやろう。きっと私達の息子はこれからどのような困難にあったとしても仲間と乗り越えていける。雷門には豪炎寺修也が必要なんだ。)

 

勝也もまた息子の背中を押す覚悟を決めて、フィールドを見つめる。そのま目はいつものような厳格な父親としてのものではなく、幼少期の豪炎寺を応援する優しい父親の目だった。

 

「そうだこれでこそ豪炎寺修也だ!みたいな!」

「そっちが腑抜けた状態で勝っても嬉しくはありませんからねぇ!」

「俺たちが最強だってことを証明してやるぜ!」

 

「フッ、かかってこい武方三兄弟!俺にもお前たちに負けないメンバーのみんながいるんだ。もう俺の心は折れたりしない!」

 

覚醒した豪炎寺と復帰した“怪物”が加わったことでさらに攻撃の手が激しくなる雷門。だが名門としての意地を見せる木戸川も“トライペガサス”に警戒しつつもこれ以上点をやらずに取り返すためにカウンターを狙いながら防御を固める。

お互いのチームが完全に硬直する中先に動いたのは雷門であった。

 

『あーーっと!!!雷門再び“トライペガサス”の姿勢に入ったぁぁぁあ!木戸川清修万事給すかぁぁぁぁあ⁉︎』 

 

「そう来るのを待っていたぜ!“トライペガサス”は元々俺の技でもあるんだ!破り方くらい考えてある!」

 

 そう言うと西垣は普段よりも3倍の大きさを持った“スピニングカット”を発動し一之瀬達の妨害を図ろうとする。しかし、彼らは妨害を恐れずにトップスピードで青色の障壁に衝突する。すると先ほどの雷牙と同じく障壁を突き破り再び“*”のマークをフィールドに描くと、先ほどとは異なる赤色の炎が発生し出現するオーラも天馬(ペガサス)ではなく不死鳥(フェニックス)が現れる。

 

「ペガサスが進化して…フェニックスになっただと…!だがまだだぁあ!

“スピニングシューティング”!」

 

万が一に“スピニングカット”が破られる事を想定していた西垣は直ぐに体勢を整え、青色の刃を一之瀬達に向かって放つ。見事全て命中しフェニックスの誕生を食い止めることに成功する。

 

「よくやったっしょ西垣!」

「このチャンス逃しはしませんよ!」

「“トライアングルZ”をゴールに叩き込んでやる!」

 

絶好の機会が巡ってきた武方三兄弟は変則型の“トライアングルZ”の体勢に入ろうとする。豪炎寺はこのままではマズいと跳躍しようとするがそこに少し離れたところにいる雷牙が呼びかける。

 

「豪炎寺ぃぃぃぃい!!!俺を使えぇぇぇぇえ!!!」

 

手を組んで飛び台の姿勢を取る雷牙を見て豪炎寺は迷いもなく雷牙に向かって走る。そして雷牙の手を踏み台にしイナズマ落とし以上のスピードで跳躍する。

 

痛ってぇぇぇぇぇえ(行っけぇぇぇぇぇえ)!!!!豪炎寺ぃぃぃぃぃぃい!!!」

 

仲間から援護を受けて飛び上がったものの僅かに高さが足りない。だがフェニックスのオーラがまだ残っている状態で“トライアングルZ”を撃たれればおそらくDFでも止められないだろう。

 

(あと一度、一度だけでいいんだ!何か踏み台に出来るものはないのか⁈)

 

辺りを見回すが空中に利用できそうな物は何一つ無い。諦めかけたその時に聞き覚えのある応援が耳に響く。

 

「諦めるなぁぁぁあ!!!修也ぁぁあ!!!お前なら必ず出来る筈だ!!!」 

 

「と、父さん…!」

 

あの父が自分を応援してくれている。その顔はかつて自分のサッカーに向き合ってくれていた父の顔そのものだった。

 

(父さんの心に響いてくれたんだな…!ありがとう父さん俺を応援してくれて…!俺は必ずこの勝負を制してみせる!)

 

そう決意すると身体中から今まで感じたことの無い力が溢れ出し、体から放出されていくのを感じる。

 

「あれは…まさか…!」

「ああ、化身だ…!」

 

溢れ出たオーラは次第に形となり悪魔の様な姿をした魔人が現れる。

 

「これが俺の化身…!名付けるなら“炎魔 ガザード”だ!」

 

炎魔の手が新たな踏み台となり豪炎寺はさらに飛翔する。そして武方三兄弟よりも先にシュートを撃つと、消えかかっていたフェニックスのオーラはさらに巨大となり、形もフェニックスから足が3本に増え、構成される炎もより赤みがかかったモノとなっている八咫烏に変化する。

当然キーパーの軟山に八咫烏は襲いかかるが、もはや自分にどうこう出来る威力ではない事を理解した軟山はゴールを放棄して逃げ出してしまう。

GKとして恥ずべき行為の筈であるが、シュートが直撃したゴールを見れば彼の判断は間違っていなかった事を嫌でも証明されてしまった。

 

『な、なんとぉぉぉぉお!!!豪炎寺修也が放ったシュートはゴールをポストを完全に粉砕しているぅぅぅぅう!!!またしてもFFでは初めて見る光景だぁぁぁあ!!!』

 

まさかのゴールを粉砕してしまうという前代未聞すぎる状況に、FFスタジアムにいる人間は全員騒然となっている。

 

「す、少しやり過ぎたか…?」

「アレ、キーパーに直撃してたら死んでたぞ、多分。」

 

少し遅れて代わりのゴールが設置されたがもはやスコアは3対0。残り時間を考えてラストワンプレーだ。しかし武方三兄弟は最後まで諦めていなかった。

 

「もう試合に勝つ事は出来ないけど!」

「最後の最後に我々の底力を!」

「観客に見せつけてやるっしょ!」

 

武方三兄弟は最後に一撃だけかまそうと必死に攻める。その願いが通じたのかなんとか雷門のディフェンスを突破することに成功する。

 

「今度も止めてやるぞ!こい!」

 

「「「これが最後の!“トライアングルZ 改”!」」」

 

土壇場で“トライアングルZ”を進化させてみせた武方三兄弟。円堂もそれに応えるように己の最強技を再び発動する。

 

「“マジン・ザ・ハンド”!」

 

木戸川の意地(トライアングルZ)雷門の盾(マジン・ザ・ハンド)が今試合幾度目かになる衝突を見せる。今まではただ一方的に右手にボールが収まるだけだったが今回は違う。

シュートとマジンは完全に拮抗している上にマジンの右腕はヒビが入ってきている。

 

「な、なんだこの威力は…!でも絶対負けるもんか!うぉぉぉぉぉお!!!」

 

なんとか円堂が意地を見せて進化した“トライアングルZ”を止めることに成功する。同時に試合終了のホイッスルが鳴り響き雷門の勝利が確定した。

 

『試合終了ーーーォ!!!結果は大差で雷門の勝利でしたが試合内容はどちらが負けてもおかしくはない内容でした!そして雷門は準決勝(・・・)に進出です!』

 

武方三兄弟は負けたショックでフィールドに座り込み唖然としている。

そこに豪炎寺は健闘を讃えるために握手をしようとするが拒否されてしまう。

 

「僕たち兄弟はあなたを超えてみせると誓い合った!」

「そして俺たちはお前を一度は超えた!」

「だがお前は易々と俺たちの何歩先も超えてった!なんで勝てねぇんだよ!」

 

自分達がやっとの思いで到達した領域をいつも簡単に超えてしまう豪炎寺に対して恨み言を吐く三兄弟達。だが監督の二階堂は彼らの言葉を否定する。

 

「確かにお前達はこの1年必死に練習した。だがお前達は3人で豪炎寺を、雷門中を倒そうとした。でも彼らはチーム全員の力で戦ったんだ。豪炎寺が1人いるというだけで勝ち負けが決まるようなもんじゃないのさサッカーは。」

 

「豪炎寺1人で勝ち負けは決まらない…」

「僕たち3人だけじゃなくて…」

「チーム全員の力…」

 

「そうだ。そして豪炎寺。お前はこの1年で本当に大きく成長したな、俺は嬉しいよ。」

 

「それは違います監督、ただ俺は雷門に行って初めて気づいただけなんです。何か問題にぶつかった時は1人で抱え込むんじゃなくてもっと仲間を頼っていいってことに。」

 

1年前に出来なかった選択に気づけた豪炎寺の顔は晴れ晴れとしたものだった。そして1年前決勝に出られなかった事を謝罪するが二階堂は怒る事無く豪炎寺に微笑む。

 

「知っていたさ妹さんの事故の事は。しかしどんな理由も言い訳にならないと思ったんだろ?だから黙って転校した…そうだな?」

 

妹が事故に遭っていた事を初めて知り固まってしまう三兄弟達。

 

「だけど今回の試合でお前が逃げ出したりするような奴じゃないって分かった筈だ。こいつらにもな。」

 

「豪炎寺正直すまなかった!」

「僕たちはあなたを誤解していたんですね…。」

「本当は分かっていたんだ。去年の敗北はお前のせいじゃない。お前1人に頼りすぎていた俺たちがいけなかったって…」

 

遂に和解出来たかつてのチームメイト達。先ほどは交わすことが出来なかった握手を交わす。その光景を雷牙達は遠くから見つめていた。

 

「良かったな分かってもらえて。」

 

「まっ、これを機に豪炎寺ももうちょっと口数が多くなってくれると助かるけどよぉ。ヘマしたら“ファイアトルネード”の刑とか二度とゴメンだぜ。」

 

FFスタジアムを後にする雷門一同。そこで豪炎寺は父、勝也の姿を見つける。

 

「今日の試合どうだった…?」

 

「……本当に良い仲間に出会えたんだな修也。」

 

「ああ、最高の仲間さ…!」

 

先ほどと同じくいつもの厳格さが消えた表情を見せる父。そして意を決したように息子に宣言する。

 

「ドイツ留学の件は無しだ。その代わり絶対に仲間を裏切るようなプレーはするな。分かったか?」

 

「…! ありがとう父さん!俺頑張るよ…!」 

 

「おーい、豪炎寺ー!響木監督がラーメン奢ってくれるってよーー!お前もどうだーー⁈」

 

父と共に帰ろうとしていたため一瞬豪炎寺は躊躇うが、勝也は微笑みながら息子の背中を押す。

 

「行ってこい、ただしあまり遅くなるなよ。フネさんが心配するからな。」

 

「父さんもあまり無理しすぎるなよ。父さんまで倒れたら夕香が悲しむからな。」

 

久しぶりの親子らしい会話を交わした2人は1人は大切な仲間の元へ、1人は大切な家族の思い出がある我が家へと足を運んだ。雷門が目指す全国制覇まであと少しという所まで来た。果たして雷門は世宇子に挑む事は出来るのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

 

FF準決勝進出が決まるこの試合。佐晩奈中と対峙している学校は今回がFF初出場ながらも、殆どの試合を大差をつけて勝ち上がってきた雷門以上のダークホースだ。

だが佐晩奈中も勿論全国大会常連の強豪校であるため弱い筈がない。しかしスコアボードに付けられた得点は間違いなく24対0のスコアを表示していた。

試合終了の数秒前、フィールドに氷雪の嵐が吹き荒れる。キーパーは今度こそ止めようとするが1秒も耐えることが出来ず、今試合25回目の空中旅行を体験させられてしまう。

そして試合終了を告げるホイッスルが鳴り響く。

 

『し、試合終了ぉぉぉぉお!!!なんとFF初出場ながらまさかの25対0と世宇子中の20対0を超える脅威の得点率を叩き出したぁぁぁあ!!!これは間違いなく今大会最高記録です!』

 

世宇子の面々は遊んでいる上での点数とはいえ彼らが持っていた最高得点記録を僅かに上回る得点に角馬王将は思わず興奮の声を上げる。

だが殆どの点数を取ったピンク色の髪の少年は何かが気に入らなかったようで全く同じ顔したキャプテンマークを付けている灰色の髪の少年に文句を垂れる。

 

「はぁーー、全国屈指の強豪校だって聞いてたからちょっとは期待してたのにここまで手応えがないなんてなー。期待はずれもいいとこだぜ。なぁ兄貴(・・)?」

 

灰色の少年は何度も注意しているにも関わらず、口の悪さが変わらない弟を見て少し呆れたようにやんわりと諌める。

 

「こーら、いつも言っているだろう?相手が弱いなんて思っていても口には出しちゃ駄目だって、ほら、()を見習いなよ。いつもクールで口数が少ないだろ?」

 

キャプテンが目を向けた先には鳥の翼を思わせる髪型をした黒髪の少年が立っている。その表情には一切の感情が感じられず、口もまるでチャックを閉めているかのように開かない。

 

「…いやあいつはただ無口で無愛想なだけだろ…。あーあ、次の対戦相手こそは俺を楽しませてくれる学校だといいけどよ!」

 

「…次の試合で我々と戦う学校は去年準決勝の木戸川清修か、噂の雷門中のどちらかだ。少なくとも今までの奴らよりかは幾分かマシであろう…。」

 

「お、やっと口を開いたか!まっ、どっちが相手でも俺の敵じゃねーけどな!」

 

圧倒的な実力を観客に見せつけた彼らは準決勝で対戦する学校が今までよりもマシであることを祈りながら控え室に戻る。

現在のネットニュースには彼らの所属する学校の名がトレンド入りしていた。

 

『圧倒的な実力を我々に見せつけて去った、今大会最大のダークホース!その学校の名前は…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白恋中です!』

 

本来の歴史ではまだ重なることがなかった2本の線。これが未来からの襲撃がもたらした歪みの始まりであった。




はい、実は木戸川清修戦は準決勝ではありませんでした。まぁ露骨にそこらへんの言及は避けていたので何かあると思っていた人は多いと思いますが。あと、最後に出てきた選手は実質オリキャラです。実質の意味は次回分かります。
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