イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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なんか久々にキャラ視点から話を始めた気がする。


“金獅子の怪物”と“孤高の銀狼” 後半

円堂 side

 

『『『“パラドックスブレイク”』』』

 

今の俺の頭には白恋中のFW達が放ったあのシュートの光景が何度も繰り返される。俺も渾身の“マジン・ザ・ハンド”で立ち向かったけど、結果は完敗。栗松と壁山も助けに来てくれたってのに俺は手も足も出なかった…。

 

「…い!お…い…!守!まーもーるー!!!!」

 

「ん⁉︎な、なんだ雷牙⁉︎」

「なんだもクソもあるかコラ。まさか“マジハン”が破られた事を引きずってんじゃねーだろーなぁ?」

 

そんな事言われたってショックなものはショックなんだよ…。ふと横を見ると風丸も俺と一緒に暗い顔をしていた。やっぱり風丸も士郎にあっさり抜かれた事がショックだったのかなぁ…?

そんな事を考えていると監督が俺たちを呼び止めてこう言った。

 

「円堂、風丸、交代だ。」

 

『えーーー!!!?』

 

まさかの交代宣言に雷門のみんなが大声を上げて驚いた。

 

No side

 

ハーフタイムも終わり、各チームが再びポジションに着くもののそこにはキャプテンである筈の円堂の姿は無い。その代わり同じ場所にキャプテンマークをつけて立っているのはまさかの稲魂雷牙である。

 

『な、なんと雷門!まさかの守護神である円堂をベンチに戻し、代わりにキーパーとなったのはまさかの副キャプテンの稲魂雷牙だぁぁぁぁあ!一体監督にどのような意図があるのかぁぁぁぁあ⁉︎』

 

意味不明としか思えない監督の采配に思わず実況すらも混乱している。

 

「あれ?円堂君交代させられちゃったの?」

「しかもよりによってキーパーになったの稲魂じゃねぇか!まだアイツとの決着はついてねぇんだぞ!」

「……全く不可思議也。何故(なにゆえ)、雷門の監督はこのような采配を行うのか、俺には理解できぬ。」

 

当然白恋中にも監督の意図は読み取れず、困惑している。

円堂は今ならまだ間に合うと思い。響木に最後の説得を行う。

 

「監督…、なんで俺を下げたんですか…?“マジン・ザ・ハンド”が破られたからですか?もしそうならこの試合中に必ず新必殺技を完成させて白恋のシュートを止めて見せます!だから俺を試合に戻して下さい!」

 

「俺も円堂と同じです監督!俺以外で吹雪兄弟のスピードに対抗出来るのは稲魂だけなんです!それに稲魂では吹雪熱也のシュートを止められるとは思いません!」

 

円堂と風丸は必死に抗議するが、響木は首を縦には振らない。

 

「今のお前達には雷門サッカー部において最も大切なモノを無くしている。それが分かるまでは俺は試合に出す気は無い。」

「俺たちが無くしたモノ…?」

 

それだけ言うと響木は黙ってしまい円堂達は抗議が出来なくなってしまう。2人は必死に考えたものの監督の言葉の意図を理解する事出来ず仕方なく試合に集中する事にした。

試合は相変わらず白恋リードで進んでいる。風丸が危惧した通り熱也の猛攻に対抗出来るプレイヤーがいないのは大きく、前半よりもあっさり抜かれてしまう場面が多い。

 

「もらったぁ!」

 

「し、しまった!止めてくれ稲魂!」

 

「この俺にズババーンと任せとけ土門!」

 

「じゃあ、見せてくれよ!足を縛られた“サッカーモンスター”の底力をなぁ!“エターナルブリザード”!」

 

熱也は容赦なく全力の“エターナルブリザード”をゴールに叩き込む。今雷牙が持っているキーパー技は“シュートブレイク”のみ。だが、熱也のシュートを止めるには力不足である事は本人も重々理解はしている。

ならばどうするか?答えは1つだけだ。

 

「“雷鳴の王 レグルス”!でぇりゃゃゃゃや!!!」

『と、止めたぁぁぁあ!!!稲魂雷牙!化身を出す事でなんとか吹雪熱也のシュートを止める事に成功したぁぁぁあ!!』

 

本来雷牙の化身はフィールドプレイヤー用であるものの、“シュートブレイク”に頼るよりかは幾分マシな威力を出せる。

しかし、体力の消費はそれの比ではない。今の雷牙は一試合に出せる回数は3回が限界である。つまり白恋の攻撃を凌げるのも後2回が限界だという事。だが本人はそんな事気にもとめずに熱也を挑発する。

 

「ハッ!なんだよこの威力は?こんなんじゃ熊どころか虫すらも殺せねぇぜ!やっぱり本当は“コマ回しの熱也”なんじゃねぇの?」

「んだと⁉︎いいぜ!次こそは目にものを見せてやる!おい、お前ら!もっと俺にボールを回せ!」

 

あっさりと雷牙の挑発に引っかかる熱也。その光景を見ていた或葉はおそらくさらに強引なプレーになる事を理解し溜め息を吐くが、今は勝利が優先であると気持ちを切り替える。

 

「本当に大丈夫なんですか監督⁉︎もう稲魂くんは一回、化身を使ってしまいましたけど⁉︎」

「まだあと2回は残っている。それに鬼道がいるんだ、奴ならこのプレーで出た弱点を修正してくれる。」

 

目金の不安とは裏腹に冷静な響木。実際に響木の言った通り、鬼道は雷牙が抜けた穴を一之瀬にカバーさせ、風丸と交代した影野を伏兵とする事で白恋の猛攻に対応し始めた。

 

「今度こそゴールにぶち込んでやるぜ!」

 

「…させないよ。“コイルターン”…!」

 

「な!コイツ何処から現れやがった⁉︎」

 

持ち前の影の薄さを利用して上手く熱也の近くに辿り着き新技を披露する

影野。珍しく活躍しているためか彼の表情には笑みが溢れている。

 

 

「いいぞ影野!俺にボールをくれ!」

「分かった…、一之瀬…!」

 

一之瀬はボールを受け取るとそれを読んでいた或葉は“流水君庭”で地面から大量の水を発生させ奪おうとする。しかし、一之瀬一哉は“フィールドの魔術師”と呼ばれた男、そして彼にとってのフィールドとは陸だけを指す言葉ではない。空中すらも彼にとってはフィールドの一部なのだ。

 

「そう来ることは分かっていたよ!“スカイウォーク”!」

「何…⁉︎」

 

或葉にとってはボールを奪われるか他の選手にパスを出させるかの2択を押し付けたつもりであったが、一之瀬は空中を歩くという第3の選択肢を生み出した事で動きが止まってしまう。

空中を歩く一之瀬は下を見るが、万が一に備えてFW陣のパスコースを塞がれていた事で初めの計画が崩れ去る。それに自分の落下地点には士郎が陣取っているのだ、このままいけば間違いなく彼にボールを取られてしまう。

だが、一之瀬は不敵な笑みを浮かべる。数年前に交通事故に遭ってから感じる事が出来なかった緊張感と再び再会した事に喜びを感じているのだ。

 

「(そうだ!この一瞬のミスが敗北に繋がるこの緊張感!これだからサッカーはやめられない!)」

 

一之瀬が取った行動は自分がシュートを決める事。今の自分なら壁を破れる事を確信していた。そして彼は背中からまるでペガサスの翼を思わせる青色のオーラ放出し、さらに飛翔する。

 

「これが俺の新必殺技!“ペガサスウィング”だ!」

 

空中からシュートを放つ一之瀬の姿を見た観客達はまるで天馬(ペガサス)そのものがその場に現れたように感じられたという。

空中という人間の死角から放たれたシュートに白恋キーパーは反応する事が出来ずボールがゴールに叩き込まれる。

 

『ゴーール!天才プレイヤー一之瀬一哉が新たな必殺技を生み出し白恋のゴール奪ったぁぁぁあ!!!彼がシュートを打つ姿はまさに天馬(ペガサス)そのものだぁあ!!!』

 

ようやく同点まで持ち込む事に成功した雷門。彼は一之瀬をもみくちゃにして互いに喜び合う。それに対し、熱也は明らかに苛立っていた。今までは自分がシュートを打つだけで簡単に点が入っていた。だが雷門との試合はいくら攻め込んでも点が入らない。その事実が熱也のプライドを刺激していた。

 

「おい、お前ら!もっと俺にボールを寄越せよ!弱っちぃお前らの仕事は俺にボールを渡す事だろうが!」

 

いつも以上に口を汚くしてメンバーに八つ当たりをする熱也。その言葉に我慢の限界を迎えた目深は熱也の胸ぐらを掴み上げる。

 

「いい加減にしろよ熱也!いつも俺たちを見下しやがってもう我慢ならねぇ!俺もお前みたいな奴と一緒にサッカーをするのはもうゴメンだ!!!」

 

チームメイトの胸ぐらを掴むという行為を見た審判は即座に試合を止め、彼らの仲裁に入る。目深はすぐに我に返り喧嘩にまでは至らなかったため今回は注意を受けただけで済んだが、白恋中の空気は重くなっていた。

白恋のキックオフで試合が再開するものの、先ほどとは明らかにプレーが変わっていた。なんと士郎と或葉以外のメンバーが熱也にパスを回さなくなったのだ。

現にMFは熱也にボールを回す絶好のチャンスがあったのにも関わらずマークの厚い或葉にパスを出しカットされてしまう。

 

「おい!今のは俺にパスを回せば通っていただろ⁉︎なんで俺にボールを寄越さねぇんだよ⁉︎」

 

熱也の抗議に誰も答えない。それどころか誰も目を合わせない。

 

「へっ…!そうかよ!それがお前らの答えか…!俺が弱小だったお前らをここまで連れてきてやったってのに、恩を仇で返すとはな…!」

「ハッ、哀れだなぁ“コマ回しの熱也”くんよぉ〜。」

 

文句を言う熱也に対し憐れむように笑う雷牙。それが気に食わないのか熱也は試合そっちのけで雷牙の方を見る。

 

「テメェには分からねぇだろうな!俺が白恋中の勝利の為にどれだけ貢献してきたかを!兄貴におんぶに抱っこの穀潰し共に役割を与えてやったんだぞ!それすらも放棄するなんざもはや存在価値は無「だからオマエは“コマ回し”なんだよ。」…んだと⁉︎」

 

「信じられるのはテメェの実力と一部の人間だけ、それ以外のヤツは自分に回されるだけのコマでしかない。オマエを見てると昔の自分を思い出すよ。まるで自分が世界の中心にいるみてーな感覚は気持ちいいよなぁ?だがそれは大きな勘違いだったんだよ。」

 

「何が言いてぇんだ⁉︎」

 

「ある日大切な存在を失った時に初めて気がつくんだ。自分が立っていたのは世界の中心じゃなくて、初めから周りに誰もいなかっただけなんだってな。」

 

雷牙の脳内に浮かぶのは大切な家族を失った日の事。そしてイタリアに留学し、今までのやり方では通用しないと身を持って体験した事。

雷牙には熱也をかつての自分と重ねずにいられなかった。

 

「くそが!どいつもこいつも同じ事を言いやがる!弱肉強食こそがこの世の真理だろ⁉︎ただ俺はそのルールに従っているだけだ!」

「違うな、信頼の交差こそがこの世のルールなんだよ!それをオメーに証明してやるぜ!」

 

「熱也!ボールがそっちに行ったよ!」

 

話している内に運良く熱也にボールが回り雷牙の目の前まで移動する。そして熱也は“エターナルブリザード”の姿勢に入る。今度はただ点を奪う為では無い、自分に説教を垂れた雷牙の言葉を否定する為。自分の命令を聞かないグズ共に誰が白恋中に必要かを今一度思い出させる為に。

 

「吹き荒れろぉぉお!!!“エターナルブリザァァァァァァド”!!!」

 

今まで放ってきた“エターナルブリザード”の中で最高の威力を叩き出す。おそらく円堂の“マジン・ザ・ハンド”でも止める事は出来ないと判断した雷牙は自身の信念を貫き通す為にサッカーにかける思いの具現化と言うべき存在の名を口にする。

 

「“雷鳴の王 レグルス”…!」

 

雷牙の思いを込めたレグルスの拳が、熱也の思想を込めた氷塊とぶつかり合う。化身を用いたパンチングを持ってしても熱也のシュートを止める事は叶わず凄まじい衝撃波によって2人はお互いに弾き飛んでしまった。

だがそこに思わぬ乱入者が入ってくる。

 

「…よくやった熱也。あとは俺が決めてやる…。」

 

鳳凰院或葉である。先ほどの“エターナルブリザード”でも決めきれなかったのは予想外であったが万が一に備えて追撃の準備をしていたのだ。

雷牙は先ほどの衝撃波と化身を発動した事による体力の消耗で動く事が出来ない。まだ残り時間はあるといってもここでの失点は大きすぎる。

 

「“炎帝烈火”…!」

「くそ…!体が動かねぇ…!」

 

親友から託されたゴールを守りきれなかった事を後悔しかける雷牙であったがそれを救ったのはなんと鬼道だった。

 

「くっ!やはり止めきれなかったか…!だが稲魂!時間は稼いだぞ!」

「サンキュー鬼道!今の登場はビリビリきたぜぇぇぇ!!!」

 

鬼道のシュートブロックが功をなし、何とかノーマルキャッチでシュートを止める事に成功する。

 

『止めたぁぁぁあ!!!雷門キーパー稲魂!仲間達の力を借りながら白恋のシュートを全て防ぐ事に成功したぁぁぁぁ!!!』

 

「スゲェぜ雷牙は!あのシュートを全部止めるなんてなぁ!」

「だが化身を出せるのはあと一回だぞ…!それにこのままでは試合終了まで体力は持たない!」

 

確かに雷牙が1日に化身を出せる回数は3回である。しかし雷牙の場合その3回というのは体力を全て使いきるという前提で話している。

 つまり2回も使おうものなら体力の殆どを持っていかれるのだ。実際今の雷牙は立っているだけで精一杯である。だが彼の目の闘志は消えてはいない。

 

「(ハハハ…、こりゃやべぇな…もはや立ってるだけで精一杯だわ。だがなぁ…、ゴールを任された以上俺にはゴールを守る義務があるんだよ…!たとえ試合中にぶっ倒れようともなぁ!)」

 

掴んだボールを壁山に渡し試合の行方を静かに見守る雷牙。もはや雷牙に体力が残っていない事を察している雷門イレブンは彼の負担を少しでも減らす為に吹雪達に細心の注意をはかりながらパスを回す。だがやはりDFの士郎の守りは硬く、どうしても攻めきれない。

遂にボールを白恋に奪われてしまい、今度こそ確実に点を取る為ペナルティエリア内で“パラドックスブレイク”の体制を整えられてしまった。

“パラドックスブレイク”は現在の日本のサッカー界では間違いなく最強クラスの威力を持っている。そんなシュートを満身創痍の状態の雷牙が受ければどうなるのか?少なくとも大怪我は避けられないだろう。

 

「ま、まずいぞ!稲魂!その距離でシュートを喰らったらお前の身体は持たない!逃げろぉぉぉお!」

『稲魂(さん)!』

 

雷門イレブンは全員雷牙の心配をするが、本人の耳にはまるで届いていない。今の彼の目に映っているのはただ一つ。或葉が持っているボールのみである。彼は無我夢中に走り出した。

下手をすればさらに至近距離でシュートを喰らってしまうかもしれない。だが本人はそんな事を知ったことでは無いと言わんばかりだ。

 

「(止める…止める、止める止めるトメルとめるt0メる、…絶対に止める…!)うぉぉぉぉぉぉお!!!」

「な、何⁉︎こ、コイツ…命が惜しく無いのか…⁉︎」

 

止められないならば初めから打たさなければ良い。それこそが雷牙が出した結論であった。

 

『止めたぁぁぁぁあ!!!まさかのペナルティエリア内からシュートを打とうとした事が裏目に出たぁぁぁぁあ!!!シュートが打たれる直前にボールを止めると言うまさに命をかけた大博打に勝ったのは稲魂雷牙だぁぁぁぁあ!!!』

 

「……アレ?なんで俺、倒れてるんだ?それにいつシュートを止めたんだ?」

「あははは!本当に面白いね君!まさかさっきの行動が無意識だったなんてね!」

 

雷牙の活躍を見ていた円堂は響木が無くしたと言っていたものの正体に遂に気づく。そしてすぐに監督に懇願する。

 

「監督…、俺分かりました!確かに俺は“マジン・ザ・ハンド”を破られて雷門サッカーに最も大切な筈のイナズマ魂を無くしてたんですね。だからもう一度俺を試合に出させて下さい!お願いします!」

 

円堂の言葉に満足した響木は雷牙にボールを出すように指示し試合を中断させ、円堂を再びキーパーに戻す。

 

「どーよ守〜!俺の華麗なキーパーっぷりは?」

「最高だったぜ!特にさっきのシーンなんか俺に稲妻が走ったようにビリビリってきてさ〜!」

「感想は試合が終わってからにしろ。円堂は早く行け。」

 

響木に急かされた円堂は急いでゴールに戻る。その目には後半開始前にあった不安は完全に消えていた。

自分には出せなかった解答(こたえ)を出した幼馴染の後ろ姿を風丸はただ見つめる事しか出来なかった。

 

「どーよ風丸〜!この雷牙さんのスーパーセーブは〜?…風丸く〜ん?」

「あ、ああ悪い。本当に凄かったさ、……俺と違ってさ。」

 

最後のセリフだけは誰にも聞かないようにボソッと呟く。すると雷牙の手当てをしていた夏未の雷が落ちる。

 

「こら!あなたの身体はもうボロボロなんだから安静にしておきなさい!」

「へいへ〜い。分かりましたよ〜。」

 

試合も残り時間10分を切っている。雷門は士郎を突破さえすれば勝利、白恋は“パラドックスブレイク”を叩き込めば勝利と、お互い勝ち筋を見出した状態で試合を再開する。

雷門も果敢に攻めるが或葉の指示と士郎のディフェンスにより一歩も引かず、ボールを白恋に奪われる。最後のチャンスと見た熱也達は守りを捨てて攻めの姿勢を取り遂にゴール前に到着する。

 

「「「“パラドックスブレイク”!」」」

 

相変わらず凄まじい威力のシュートだ。だがもう円堂には不安は感じない。今彼の心にあるのは信頼する仲間達と共に戦える喜び、自分の代わりにゴールを守ってくれた親友への感謝。まるで子供のように満面の笑みを浮かべていた。

 

「え、円堂君が笑ってる…?」

「そうだ、それでこそ俺が信頼するGKだ!」

 

円堂の身体中に今まで何度も感じてきた大きな力が溢れてくる感覚を掴む。円堂はその力を心臓に集中させ“マジン・ザ・ハンド”と同じ要領で気を放出させる。背中から出現した魔神は従来の物よりも一回り大きく、そして力強さを感じさせるものだった。

 

「はぁぁぁぁあ!”魔神 グレイト”!」

 

遂に化身に覚醒した円堂。そして彼は右手を力強く突き出す。

 

「“グレイト・ザ・ハンド”!」

 

偉大なる伝説(グレイト・ザ・ハンド)物理法則を超える炎と氷(パラドックスブレイク)が衝突する。勝負に要した時間は僅か数秒であったが、両者には永遠にも思える時間だった。だが今度の勝負の勝者は円堂だった。

 

「お、俺たちの渾身のシュートを止めただと…!」

「ふふ、やっぱり面白いね円堂君は。」

「まだ試合は終わっていない…!急いで下がれ…!」

 

残り時間もあと僅か、ここから雷門のカウンターが始まる。だが白恋も最後の死力を振り絞り何とか雷門の動きについていく。

 

「負けられねぇ…!俺はこんなところで負ける人間じゃねぇんだよ…!」

 

ここにきて熱也がボールを雷門から奪ったものの、まさかの伏兵が彼からボールを奪い返す。

 

「な…!お前はキーパーの筈だろ円堂⁉︎ゴールをガラ空きにするキーパーがいるか!」

「俺はチームのみんなを信じているからな!ボールを取られてもきっとみんなが時間を稼いでくれるさ!」

 

ここで円堂が動くとは思わなかった熱也は仲間を100%信頼するその目を見ると足が止まってしまう。

 

「いくぞ一之瀬、土門!」

「「おう!」」

 

ここで円堂達は“ザ・フェニックス”を使用する為にトップスピードで駆け上がる。だが、士郎はそれを見逃さなかった。

 

「そこだ!“アイスグランド”!」

 

円堂達が交差する直前に“アイスグランド”を使う事で3人の動きを一気に止める事に成功する。

 

「貰ったよ!勝つのは僕たち白恋だ……えっ⁈」

 

ボールを奪ったと確信した士郎だったが、突如として炎の渦が氷を溶かす。

確かに円堂達の動きを止める事には成功したもののエネルギーのチャージには僅かに間に合わず、フェニックスが空に舞う。それを見越していたかのように豪炎寺が“ファイアトルネード”を叩き込むとフェニックスは更に巨大化する。

 

「これが俺たちの信頼の力だぁぁぁぁあ!!!」

 

キーパーはこの試合初めての“オーロラカーテン”を繰り出すが一瞬でフェニックスの炎に燃やし尽くされる。だがそこに3つの人影が入る。

 

「負けるかぁぁぁぁあ!!!」

「ここで打ち返せば僕たちの勝ちだ!」

「俺は勝つ…!勝って不思見中の無念を晴らしてみせる…!」

 

だが3人の健闘も虚しくシュートを打ち返す事は叶わずボールはゴールラインを超えネットを激しく揺らす。そして吹き飛ばされた熱也はようやく雷牙が言っていた意味を理解する。

 

「なんだよこのパワー…!こ…これが信頼の力って奴…なの…か…?」

 

スコアボードが2対2から3対2に変化し、雷門に一点が入った事を知らせると同時に試合終了のホイッスルが鳴る。

 

『ゴーール!そしてここで試合終了ーー!!!今大会最大のダークホース校同士の試合は雷門の勝利で幕を下ろしましたぁぁぁあ!!!そして雷門中は約40年ぶりのFF決勝進出です!!!果たして伝説のイナズマイレブンの復活はなるのかぁぁぁぁあ!!!?』

 

「勝った…?勝ったぞ…!俺たち決勝に行けるんだぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

ようやく決勝の舞台に立てる事を理解した円堂は帝国戦の時と同じくらいの大声を出し雷門一同に胴上げをされる。

一方、負けた白恋中の空気は重い。熱也がサッカー部に入ってからは負けなしであったが、いつも少しミスをしただけで嫌味を言ってくるような奴なのだ。試合に負けようものなら確実にお前らのせいだと言ってくるに違いない。そう身構えていたものの怒声が響く事はない。当の本人はゴールに座り込んだまま動かない。流石に心配になった目深は熱也に手を差し伸べる。

 

「…おい、元気だせって熱也。また来年頑張ればいいだろ?」

 

「…るかったよ。」

 

「え?」

 

「……悪かったよ、今まで雑に扱って。今回の負けは間違いなく俺のせいだ。」

 

まさかの熱也が反省するという天地がひっくり返ってもありえないと思っていた事に思わず腰を抜かす目深。その様子を見ていた士郎は弟の成長に笑みを浮かべる。或葉は鬼道に呼び止められ帝国が犯した罪を謝罪される。

 

「試合中はああは言ったが帝国が今までしてきた事は確かに許されない事だ。俺が代表して謝罪をさせてもらう。本当にすまなかった。」

 

「…もう良い。今日の試合で分かったのだ…。俺のシュートをブロックした時の貴様は帝国では考えられない行動だった。貴様は過去を乗り越え前に進んでいるのに俺はいつまでも過去に拘っている…。それでは人は成長しないのだな…。」

 

ようやく漫遊寺の皆が言っていた意味を理解出来た或葉の表情はどこか晴れやかなものだった。

ある程度時間が経っていつもの調子に戻った熱也は雷門イレブンに激励をかける。

 

「おい雷門中!この“熊殺しの熱也”様に勝ったんだからな!世宇子に負けたりしたら俺が顔面に“エターナルブリザード”をぶち込んでやるからな!」

 

「ハッ!誰にもの言ってんだ、俺たちにかかれば世宇子なんてぶっ倒してズババーンと優勝をもぎ取ってやるぜ!」

 

強敵と白恋中を破り、遂に決勝に進出した雷門イレブンは目標だった全国制覇まであと一歩の所まで来る。決勝の相手はあの帝国を完膚なきまでに叩きのめした世宇子中。白恋以上の実力を誇るであろう世宇子に雷門は気合いを入れ直し決勝に備えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________

 

巨大な神の像が目立ち神聖な装飾が施されているまるで神殿のようなスタジアムの中に彼は顕現していた。

まるで少女と見間違えるほどの美貌を持ちながらも、彼の周囲の状況はまるで似つかわしくないものだ。

まるで隕石が落ちたかのようにぐしゃぐしゃに変形しているゴール、そしておそらくそのシュートのコースだったであろう地面は数mはえぐれている。

 

「ほう、いつにも増して気合いが入っているではないか?アフロディ(・・・・・)?」

「これは総帥、来ていらしたのですか。ええ、私とした事が少し興奮してしまいましてね。もうじきこの力(・・・)を思う存分使えると思うと体を動かさずにはいられないのです。」

 

そこに現れたのはかつての帝国学園の総帥である影山零治その人であった。そしてアフロディと呼ばれた少年は少し興奮気味に影山の問いに答える。

 

「今更貴様にとって雷門中など敵ではないだろう。それよりも今は『プロジェクトZ』が完了した後の事を考えておけ。FF優勝などは通過点でしかないのだからな。」

「総帥の御心のままに。」

 

少年は軽く頭を下げると休息の為に自身の部屋に戻る。彼こそが世宇子中のキャプテンのアフロディこと亜風炉照美その人である。果たして影山が目指すその先とは何なのであろうか?




リアルのサッカーの交代のルールとかは知らないん一度交代した選手が再度試合に出る事が可能なのかは知りません。まぁイナイレなら大丈夫でしょ。
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