イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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ひとりじゃない

雷牙 side

 

『じいちゃんが好きだったサッカーでぶっ飛ばす…!!!』

 

俺の脳内には今日守が言った言葉が何度も反響していた。俺は許せなかった、自分が殺した男の身内の前でワザと死者を冒涜するマネをしたあの悪魔を。

だが、守は俺に一線を越えさせない為にヤツを助けた。本当に凄いヤツだよアイツは…、自分の事よりも他人の心配をする事が出来る…本当に優しいヤツだ。

そして一時の感情で守に余計な苦しみを与えてしまった自分に腹が立つ。

その感情を発散させる為に俺は今も1人で河川敷にある無人のゴールにシュートを打ち続けている。

 

「くそったれが!こんなんじゃ、ヤツを超える事は出来ねぇ!試合まであと少ししかねぇんだ…!もっと特訓しねぇと!」

 

「哀れね今の貴方は、まるで怒りに狂った怪物のようだわ。」

 

嫌ーな声が上の方向から聞こえてくる。無視してもいいがそんな事したら明日会った時に何があるか分からん、仕方なく俺は声の主に返答する。

 

「そう言うオマエも、こんな時間に出歩いてていいのかよ夏未さんよぉ?」

 

「あら?怒り狂っていても心配する余裕はあるみたいね?」

 

夏美の目は若干の怒りが籠ってる。別に俺がこの時間まで練習するのは珍しくねぇだろ…。だが、今の状態で口論しようもんなら思っても無い事いいそうだし適当に切り上げるか。

 

「はぁ…、もういいやアンタのおかげである程度頭が冷えたわ。今日は帰る、じゃあな夏未。」

 

「ちょっと待ちなさい!まだ話は終わってないわよ!」

 

「説教なら明日にしてくれ、今日はもう疲れた。」

 

気まずくなった為、今日はここで無理矢理解散させる。帰宅途中、俺はある事を思い出すとスマホを取り出しある場所に連絡する。

 

「あっもしもしおやっさん?あー俺、雷牙、久しぶり。ちょっと明日そっちに行っていい?」

 

次の日の朝、俺は学校ではなく駅にいた。

 

〜次の日〜

 

学校も終わり部活動の時間がやってくる。部室には今まで無い程の重い空気が漂っている。無理もない、昨日の内に最強のコンビが世宇子のキャプテンに完敗し、影山の最悪のカミングアウトがあったのだ。明るい空気を作れと言う方が難しい。

 

「円堂はまだ来てないのかよ…!」

「稲魂君も今日は学校に来てないし、心配だわ…。」

 

昨日のトラブルの中心にいた2人はまだ部室に来ていない。円堂は学校に来ているのが目撃されているが、雷牙の方は現在夏美が捜索中である。

 

「どうにかしてあげたいでやんす…」

「俺たちもいつもキャプテンと稲魂さんにはげましてもらってばかりっス…今回こそは俺たちがはげます番なんスけどねぇ…。」

 

その時、部室のドアのドアノブが回る音がする。恐らく円堂か雷牙のどちらかだろう。心の準備が出来ていないメンバー達は何と声をかければいいかまだ分かっていない為、慌ててしまう。

 

ガラガラッ!

 

「おっ!みんな早いな!!!やる気満々じゃないか!!!」

 

入って来たのは昨日の落ち込み様が嘘の様に明るくなっている円堂だった。

 

「キャ、キャプテン…大丈夫でやんすか…?」

 

「何言ってんだよ?試合はもうすぐなんだぞ?さーて!!今日も張り切って練習だぁーーー!!!」

 

いつも以上の明るさを見せる円堂の姿に部員達は明らかな違和感を抱きつつも、言葉にする事は出来ずに練習を開始する。だが響木は円堂の秘密を既に見破っていた。

 

(カラ元気か…。貴方ならこんな時なんと言うのでしょうね、大介さん……。)

 

その日の円堂の調子は過去最悪と言っていいレベルだった。

 

____________

 

「まさか東京の山奥にこんな場所があったなんて驚きだわ…。でも稲魂君は何故こんな所に…?」

 

夏未が雷牙を追って行き着いた先は東京にある巨大な牧場だった。

何度連絡を入れても電話に出ない為、彼が住む『木枯らし荘』の管理人に連絡を入れ、ここまで行き着いたのだ。

 

「あら、こんにちは。今日は珍しい日ね、こんな田舎に都会から来た学生さんが2人も来るなんてねぇ。」

 

「2人…!おばさま!もう1人の学生は金髪のトゲトゲした髪型をした男でしたか⁉︎」

 

「ええ、そうよ。主人があの子のお母様と知り合いらしくてねぇ、昨日急に電話がかかってきてこっちに来るって言われたのよ。本当こんな田舎に何の用かしら?」

 

嫌な予感が夏美の身体中を巡る。ただ練習するだけならばイナビカリ修練場で済む話だ。だが、彼はその選択を選ばずにここに来た。イナビカリ修練場でも出来ない練習があるとすれば1つだけである。

 

「おい、もう止めろ坊主!本当に死んじまうぞ!」

 

先ほどの女性が言っていた主人と思わしき声が響き、夏未は急いで現場に向かう。そこにいたのは雷牙と主人の2人ともう1匹(・・)だった。

 

「ぶもぉぉぉぉお!!!!」

 

テレビでも見た事がないほど巨大な牛と対峙している雷牙。既に彼の身体は傷だらけである。

 

「何やっているの稲魂君⁈危険だから止めなさい!!!」

 

「あん?って夏未⁉︎何でオマエがここにってギャァァァァァア!!!」

 

夏美の言葉に気を取られた雷牙は牛のタックルを避ける事が出来ずに数m程ぶっ飛ばされてしまった。急いで主人と夏美は雷牙を介抱し、家の中まで連れて行った。

 

「イタタタタ…。なんで夏未がここにいる事を知ってるんだよ…」

 

「あなたが住んでいるアパートの管理人さんから聞いたのよ!それよりも何なの⁈あの自殺同然の特訓は⁉︎あなたは試合前に死にたい訳⁈」

 

いつも以上の奇行を行った雷牙を本気で叱る夏未。だが、彼は力無く答える事しか出来ない。

 

「このままじゃダメなんだよ…、あのアフロ野郎を超える為には生半可な特訓じゃ効果はねぇんだ…。俺に考えつくのはこれしか無かったんだよ…!」

 

「あなたは本気でそう言っているの?だったら雷門サッカー部失格ね、今すぐ辞めなさい。」

 

「んな⁉︎なんでそうなるんだよ⁉︎確かに誰にも言わずにここまで来たのは悪いとは思うが、それだけで雷門サッカー部失格になるのは納得いかねぇよ!」

 

「あなたは自分で言った事も忘れたの⁈あなたは前に鉄塔で私に言ったわよね!『何か悩みがあったらいつでも仲間に相談しろ』って!それを言った当の本人が仲間を頼らないでどうするの⁉︎」

 

夏美の言葉に雷牙は自分の過ちにようやく気付く。恐らくここに豪炎寺がいればすぐに彼の“ファイアトルネード”が自身に向けて直撃していただろう。

 

「ククク…ハハハ…ハーハッハッハッ!!!アレだけ高飛車だったお嬢様が随分と熱い事を言うようになったじゃねぇか!!!『仲間を信じる』か…なんでこんな大切な事を一回勝負に負けただけで忘れてたんだろうな…」

 

あまりにも情けない自分の姿に思わず笑いが込み上げてしまう。

 

「なぁ、夏未…」

 

「何、怪物さん?」

 

「……あんがと。」

 

「心配させた弁償は優勝トロフィーで済ませてあげるわ。感謝しなさい?」

 

手当てをしながら雷牙に説教をした夏美の姿を見て牧場の主人は懐かしい光景を見たような目をし、豪快に笑い出す。

 

「がっはっはっはっ!!!最近じゃ珍しいくらい気の強い嬢ちゃんだ!!!お前さんを見ていると雷夏ちゃんを思い出すよ!!!」

 

「雷夏ちゃん…?えっと…どこかで聞いた事のある名前だった気が…」

 

「俺のお袋。この前話したのもう忘れたのかい?」

 

「雷夏ちゃんはなぁ…。小さい頃ここらへんに住んでいてよぉ〜、嬢ちゃん達と一緒でサッカーが大好きな女の子だった…!実力もここらへんじゃ負け知らずでいつも『私も“サッカーの女神様”みたいになるんだ!』って言ってよ!」

 

「“サッカーの女神様”?そんな選手が日本にいたのですか?」

 

「ああ嬢ちゃん知らないだろうな…。30年前までは日本のサッカー界は男子と女子に分かれていてな。それを変えたのが“サッカーの女神様”こと松坂キヨという選手だったんだ。彼女は賛同するサッカー協会のメンバーの力を借りて身分を偽り、世界大会のメンバーの一員となって日本を円堂大介時代以来の優勝に導いたんだ。その後、性別を公表して女性でも男に負けないサッカーを出来る事を証明してみせた。あの会見での衝撃は今でも忘れられねぇ!」

 

そこまで偉大な先人が存在していた事を今まで知らなかった夏美は疑問の声を漏らす。すると主人は真剣な目をして淡々と答える。

 

「答えは単純だ。身分を偽っていた事に激怒したサッカー協会が彼女をプロから追放したのさ。彼女の行方はそれから分からねぇが、彼女の活躍に感動した人々がサッカー協会に抗議活動を起こしてなぁ、ビビった協会はすぐにサッカー協会がルールを変更したんだよ。」

 

「でもよぉ、お袋がサッカーをやっていた所を俺は見た事ねぇよ?親父との出会いだって高校のサッカー部でマネージャーをしてた時に一目惚れされたって言ってたし。」

 

雷牙の質問を聞くと、主人は嫌な事を思い出した顔をする。少しだけ沈黙した後、彼らに語りかける。

 

「俺も後になって知ったんだけどよ…、雷夏ちゃんは引っ越した後中学の頃に足を怪我したみたいでな…、必死にリバビリを続けていたらしいんだが、満足に走れる程回復は出来なかったみてぇだ。でもサッカーを諦める事は出来なかったんだろうな…マネージャーとしてチームを支える道を彼女は選んだんだよ。」

 

『母が足を怪我していた』初めて聞く母の過去に、改めて雷牙は家族の事をほんの一部しか知らなかった事を実感する。

 

「はぁ…、もしも皆が生きていてくれたらもっと色んな事を教えてくれたのかな…?」

 

「…気持ちは分かるけど、歴史に“もし”の二文字は存在しないわ。でも、もしもあなたのお母様達が亡くなっていなかったのなら色んな運命が変わっていたかもね。」

 

先日の影山の言葉も相まっていつも以上に死んだ家族への想いが強くなる。過去は変える事が出来ないと身をもって知っているが、父だけでなく母の指導も受けてみたかったと心の底から思う。すると夏未の持っているスマホから着信音が鳴る。

 

「はいもしもし夏未です。はい稲魂君を見つけましたすぐに連れて帰ります。…え?合宿?はい…分かりました、恐らく父も了承してくれると思います。」

 

「監督からか?うーわ、絶対めちゃくちゃ怒られるだろうな〜…最悪決勝出してもらえないかも…」

 

「そうなったら自業自得ね。でも安心しなさい、監督は怒っていなかったわよ。それよりも家まで送ってあげるから帰ってすぐに1泊分の服の準備をしなさい。」

 

「何でよ?試合まであと数日しかねぇんだぞ?どっか行くタイミングはねぇだろ?」

 

「行くのは雷門中よ。“合宿”の為にね…。」

 

すぐに夏未は車を走らせて稲妻町に向かう。雷牙は今日の疲れが溜まっていたのか、車の中で口を開けて熟睡していた。

 

No side

 

〜次の日〜

 

ここは雷門中の体育館。普段はバレー部やバスケ部が主に使っているツルツルの床には雷門イレブンの人数分の布団が敷かれている。そこから少し離れた場所は枕の砲弾が飛び交う戦場と化している。

 

「ちょっとみんな止めなさいってば!」

 

木野が語気を強めて叱るが普段体験しない事にテンションが上がった一年組は枕を投げ合っている。いつもは木野と同じく咎める側の音無も珍しく男子と混ざって枕投げに興じている。

 

戦場から漏れ出た枕の流れ弾がピンクの(ドラゴン)の頭部に当たり、怒りを買ってしまう。

 

「お、お前らなぁ…!」

『ご、ごめんなさーい!!』

 

ブチ切れた染岡が一年組を追い回す。よく見るとまだ到着していない雷門イレブンは各自、自由な行動を取っている。

染岡のようにチームメイトと世間話に夢中になっている者、宍戸のように家から持って来た低反発の枕を半田に自慢している者、騒音の中にも関わらずアイマスクをつけ腹に“時間になったら起こしてください”と書かれた紙を貼りながら寝ている怪物など。

最後にやって来た円堂は呆れて彼らを見ている。響木は全員が揃った事を確認するとグラウンドに移動させる。

 

「…監督。今更ですけど、なんでこのタイミングで合宿をしようと言い出したんですか?」

 

「…もう少し待て、もうじき奴ら(・・)が来る。」

 

何か待っている響木だが、円堂はイマイチ意図が読めない。すると、円堂に目掛けて凄まじい冷気を纏ったシュート(・・・・・・・・・・・・・・)が襲いかかる。土壇場で円堂は“ゴッドハンド”を発動させ何とか止める事に成功する。

 

「こ、このシュートは…!」

 

「コラ、熱也(・・)。円堂君が怪我をしたらどうするんだい?」

 

「ヘッ!隙だらけなのが悪いんだよ!俺たちとの試合の時はもっとギラギラしてたのによ!」

 

『ふ、吹雪兄弟⁉︎』

 

「…俺達もいる。」

 

吹雪兄弟に続いてゾロゾロと白恋イレブンがグラウンドに入ってくる。想像していなかった事態に雷門イレブンは混乱している。

 

「監督。何故白恋中がここに?」

 

「俺が呼んだんだ。この前たまたま吹雪兄弟が雷雷軒に来たもんだからな。FFが終わるまで東京に滞在していると聞いて合同練習をしないかと聞いてみたんだ。」

 

「雷門にリベンジするいい機会だからな!断る理由はねぇーぜ!」

 

「試合をするのは最後だよ熱也。練習が先さ。」

 

士郎の言葉通り、午前中と午後数時間は共に練習し、遂に雷門と白恋のリベンジマッチが始まる。

審判は雷門の用務員の古株が担当し、試合開始のホイッスルが鳴る。

キックオフと同時に相変わらず凄まじいスピードで攻め上がる熱也。一瞬でゴール前まで移動する。

 

「吹き荒れろ!“エターナルブリザード”!」

 

凄まじい威力のシュートを放つ熱也。円堂は前回と同じく“マジン・ザ・ハンド”で応戦するも何故か力が入らない。かろうじて上に弾く事に成功するが、その光景を見ていた熱也は違和感を覚える。

 

「何だと…?おい円堂!俺はまだ本気を出しちゃいねーぞ!この前のテメェはこんなもんじゃなかった筈だ!ちょっと見ねぇ間に腑抜けやがったな!」

 

「大丈夫だ…!次は必ず止めてみせる…!」

 

いつものように気丈に振る舞うがその言葉には覇気が籠っていない。彼らの会話を聞いていた雷牙に鬼道は小声で話し合う。

 

「…稲魂。お前はもう気づいているのだろう?今の円堂はとても試合を出来るコンディションでは無い事に。」

 

「…俺も昨日まではアイツと同じ状態だった。多分守は意地でも自分の問題を自分だけの力で解決しようとするだろうな…。」

 

「お前でも説得は難しいか…?」

 

「俺が言った所で守は自分がキャプテンだからしっかりしなくちゃって思って余計に思い詰めるだけだ。だから監督はこの練習試合を組んだんだろうな。こうなった以上、俺たちはこの試合で気づかせなきゃならないのさ、“守は1人じゃない”って事をさ。」

 

輝きを失った親友の姿をジッと見つめ、自分がやるべき事の決意を決める雷牙達。そんな中円堂は雷牙の予想通り、キャプテンである事の責任と不甲斐無い自身への自責の念で苦しんでいた。

 

試合は前回の焼き直しと言える展開であった。吹雪兄弟の圧倒的なスピードと或葉の的確な指示により雷門のディフェンスを軽々突破する。だが、決定的に異なる点が1つだけ存在した。

 

「おーおー、こんなに沢山俺に向かって熱い視線を送るとはなぁ、だが野郎にモテても嬉しくはねーぜ。ここは1つ…雪野!」

 

「ナイスパス熱也君!」

 

「熱也がパスを出しただと⁉︎」

 

なんと熱也がパスを出すようになったのだ。前回の試合は熱也の我の強いすぎるプレーによりチームの足並みが揃わず僅かな差で雷門に敗北した。その弱点が消えた事により白恋はさらに強力なチームとなっている。

 

「或葉君!」

 

「良いコースだ…。士郎、熱也…行くぞ…!」

 

パスを受け取った或葉はすぐさま“パラドックスブレイク”の体勢に入る。ディフェンスも彼らを止める事が出来ず、遂に最強の連携技が放たれる。

 

「「「“パラドックスブレイク”!」」」

 

「(ちくしょう…!しっかりしろ俺の体…!!!)ゴールは俺が守るんだぁぁぁあ!!!」

 

“パラドックスブレイク”に対抗する為に化身を発動させようとする円堂だったが、紫色のオーラは魔神の形を形成させる事が出来ず、散り散りになってしまう。

 

「なっ!」

 

「化身が発動しない…⁉︎」

 

「逃げろ円堂!生身でそれを受けたらただではすまんぞ!!」

 

「むぅ…!(やはり心の乱れが不発に繋がったか…!)」

 

様々な思いが交差するなか円堂は自分の不甲斐無さに絶望する。

 

「(何やってんだよ俺は…俺がゴールを守らなくちゃならないのに…!)」

 

せめて化身の代わりに“ゴッドハンド”を出そうとするが、それすらも出てくれない。

 

「(結局みんなには迷惑かけちゃったな…俺ってキャプテンもキーパーも失格だ…。ごめんみんな…)」

 

円堂はせめてもの償いとして自分の運命を受け入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

「クハハハ…!やっぱいつ見てもスゲェ威力だなコレは…!」

「喋ってないでもっと腰に踏ん張りを入れろ稲魂…!」

 

円堂の前に立っているのは化身を発動し、2人で“パラドックスブレイク”を打ち返そうと試みている雷牙と豪炎寺だった。

 

「雷牙…豪炎寺…、なんで俺なんかの為にそこまで…」

 

「いっつもオマエは1人で何でも抱え込みすぎなんだよ!」

 

「俺たちはチームだ!お前の立場になる事は出来ないが、支える事ならいつでも出来る!だから…!」

 

 

 

 

 

「「お前は1人じゃないぞ円堂(守)!!!」」

 

親友達の言葉に稲妻が走る。敗北のショックと侮辱された憎悪のココロの錆びが取れていくのを実感する。

 

「(忘れていたよじいちゃん…!!どんなに辛い事があっても俺は1人じゃない…!!いつだって支えてくれる仲間がいるんだ!!!)」

 

目尻に熱い何かが零れ落ちると身体中から今まで出せなかった力が再び沸いてくるのを感じる。溢れ出たオーラは今度こそ“魔神”の姿を形成し、“矛盾”と対峙する。だが、それだけに留まらず瞬きをするよりも短い時間だったが、雷牙と豪炎寺の化身とも混じり合い全く別の戦士(・・・・・・)が誕生する。

凄まじい衝撃により、軽い爆発が発生しゴール一帯が土煙に包まれる。円堂達の心配をしたメンバー達が急いで駆け寄ると円堂の手にはしっかりとボールが握られていた。

そして彼らに向かってニカッと笑い、感謝の言葉を口にする。

 

「みんな…今までごめん!そして、感謝(サンキュー)な!!!」

 

ようやく円堂がいつもの調子に戻った事を確信した雷門イレブンは力強く答える。

白恋のエース達も円堂が本調子に戻った事を察し、準決勝のリベンジをする為にさらに士気を上げる。

準決勝以上にお互い一歩も譲らない激戦を繰り広げる。勝負の結果は…

 

「ピッピッピー、試合終了ー!残念だがお互い0対0の同点、引き分けじゃな。」

 

「くっそー!!今度こそは勝ちたかったのによー!!」

 

「だけどいい勝負だったな!熱也!」

 

「本当にね。間違いなく準決勝よりもいい試合だった、また来年FFで戦うのが楽しみだよ円堂君。」

 

お互いのキャプテンが健闘を讃え握手をする。その時壁山の腹から怪物のような音が聞こえる。気がつけば日も暮れかけており、もう夕方になっている事を示している。

 

「お前達練習は終わりだ。これから晩飯のカレーを作るぞ、白恋の皆さんもご一緒にどうだ?」

 

「…カレー!是非とも参加させてもらおう…!」

 

カレーと聞くといつもハイライトの無い目が仄かに輝き出す或葉。心なしか言葉も弾んでいるようだ。

 

「なんかアイツキャラ変わってね…?」

 

「或葉はカレーが大好物なんだよ。噂じゃ毎晩カレーを食ってるらしいぜ?」

 

白恋の監督の了承を得た事で、今度は雷門と白恋のどちらが美味いカレーを作れるかで勝負が始まり、雷門は野菜と肉が入ったシンプルなカレー、白恋はスーパーで買った魚介が大量に入ったシーフードカレーが出来上がった。

審査員は合宿の噂を聞いて来ていた元“イナズマイレブン”のメンバー達に任せ、結果は僅か一票差で白恋の勝利に終わった。

 

「うんめ〜!もう一回カレーおかわり!今度も大盛りで!」

 

「俺もっス!」

「僕も!」

 

お互いのカレー食べ英気を養う雷門イレブン達。テンションが上がった円堂は再び気合いを入れ高らかに宣言する。

 

「よーーし!やる気がみなぎってきたぁ!待ってろよ世宇子中!絶対に勝ってFF優勝してやるぞ!!」

『おう!!』

 

キャプテンの宣言に元気良く返答する教え子達の姿に響木達は、40年前の自分達の面影を見る。

 

「大介さんの孫は本当にいいチームメイトに巡り会えたようだな。」

 

「ああ、彼らなら必ず俺達の意志を継ぎ本物の“イナズマイレブン”になってくれる。」

 

「決勝戦は店を閉めて見に行かねぇとな!」

 

“伝説”の再来を信じて彼らは決勝戦に胸を馳せる。後に“聖戦”と呼ばれる伝説の試合はすぐそこまで迫っている。




決勝最後の合宿回とやぶてん版の世宇子戦の展開をオマージュして混ぜてみました。合宿はあまり無かった部員の日常が見れて結構好きな回です。次回から世宇子戦に入ります。
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