今、雷門イレブンには予想もしなかった光景が広がっている。彼らが最後に見た景色は化身を発動させアフロディに立ち向かった雷牙と豪炎寺の姿であった。
だが、気づいた時には彼らは先ほどとは比較にならない大きさの竜巻によって化身ごと吹き飛ばされている。
「ぜ、世宇子中のキャプテンも化身を使えるだと…!?」
「それに2人がかりでも相手にならないとは、なんてパワーなんだ…!」
鬼道と一之瀬はアフロディの圧倒的パワーに驚愕している。それだけではない、雷門が誇る化身使いの雷牙と豪炎寺すらも敵わない事実に雷門に灯されていた闘志の炎が揺らぎ始める。
「1つ、君達にとっていい事を教えよう。さすがの世宇子でも化身を出す事が出来るのは僕だけさ。万が一いや…億が一、僕を抑える事が出来たのなら君達に勝機はあるかもね。」
そう一言だけ言うとアフロディの姿が消える。彼らはすぐに後ろを振り向くと本人は既に移動を終え、再び巨大な竜巻を発生させた。
「なんて強力なドリブル技なんだ…!!恐らくアレがあいつの化身技だ…!!」
「だが、あれだけ強力な技ならそう長く維持する事は出来ない筈だ!なんとか奴の攻撃に耐えて化身が維持できなくなった瞬間を狙うぞ!!」
風丸は何とかか細い希望を見出し、チームの士気を上げようとする。だが、その希望は一瞬にして崩れ去る事となる。
「ハハハ!!今度は君達にとって最悪な事を教えて上げるよ!今使ったのは
“ただ歩いただけ。”
人が無意識に取るモーションを行っただけで災害を引き起こしていた事実に雷門イレブンは固まるしかなかった。
だが、アフロディは下界の人間の反応なぞ知らんと言わんばかりに歩みを進める。我に帰った雷門イレブンもせめてやれるだけの事はやってやろうとするが、あまりに隔絶したアフロディの力の差の前ではただ蹂躙されるだけだった。
全ての障害物を退けたアフロディは再び円堂と対面する。
時を同じくして、円堂も今度は“マジン・ザ・ハンド”以上の気を心臓に溜め、一気に放出すると魔神と紫色のオーラが絡まり合いより巨大に、より力強くなった新たな魔神が誕生する。
「“魔神 グレイト”!!今度も止めてやるぞアフロディ!!!」
「フフ、神々からの祝福を…君は受けた事があるかい?」
アフロディは“ゴッドノウズ”の要領で翼を生やした後空中に飛翔する。それと同時に“マキナ”の身体中に備え付けられた11台の砲台が円堂をロックオンする。
だが、雷門イレブンはまだ諦めた訳ではない。何とか復帰した鬼道は前線にいたメンバーを急いで後ろに下げ円堂のフォローに入る事を呼びかける。
それに気づいたアフロディは10台の砲門を彼らに向け、そのままシュートを放つ。
「“ゴッドブレッシング”!!」
その技の名を直訳すると“神からの恵み”。だが彼がもたらした恵みは祝福では無く砲撃の雨だった。
“マキナ”が放った砲撃は正確にフィールドプレイヤーに直撃し、彼らを吹き飛ばす。残り1つの砲台から放たれたシュートは円堂に襲いかかる。
「みんな!!お前らの思いは無駄にはしない!!“グレイト・ザ・ハンド”!!!!」
白恋の“パラドックスブレイク”すら止めてみせた円堂の最強技が“神からの恵み”の砲撃に立ち向かう。だが、みるみるうちに円堂の身体はゴールラインに押し込まれ遂に“グレイト”ごとゴールに吹き飛ばされてた。
『ゴーール!!!前半開始から僅か5分!!先に先制点を奪ったのは世宇子キャプテンのアフロディだぁぁぁぁぁあ!!!雷門ここから追いつく事は出来るのかぁあ⁉︎』
遂に“グレイト・ザ・ハンド”すらも破られてしまった雷門。だが持ち前の諦めの悪さを発揮させ何とか立ち上がるが、その中で松野だけが立ち上がる事が出来なかった。
「…!いかん!半田!松野と交代だ!」
先ほどのシュートにより松野は足を負傷し、半田と交代する。治療中の松野の痛がり様は普通では無く骨が折れている可能性があった。
その様子を見ていた世宇子のメンバーであるデメテルはワザと松野を侮辱し、染岡が殴り掛かろうとするがすんでの所で雷牙止める。
「悔しくねぇのかよ稲魂!!あんな奴らにいい様にされてるんだぞ!」
「いい訳あるかよ…!だがなぁ守も言っただろ…!!俺たちはサッカーでヤツらをぶっ飛ばすってよ…!!!」
雷牙の瞳には明確に怒りの感情が籠っている。サッカーすらも自分達が神になる為の踏み台であると言わんばかりのあのプレーに雷牙は怒りの頂点に達していた。
「次のプレーで目にものを見せてやるぜアフロ野郎…!!」
怒りを燃料に再び闘志の炎を再点火する雷牙。その姿を遠目から見ていたアフロディはまるで面白いおもちゃを見つけたような目で彼を見ていた。
雷門キックオフから試合が再開するが、今度はアフロディは一歩も動かない。それに対し違和感を覚えつつも攻め上がる以外やれる事は無い為それが彼らの作戦でも乗るしか選択肢は無い。
「世宇子がアフロディだけだと思ったら大間違いだぞ!“裁きの鉄槌”!」
オレンジのオーラで構成された巨大な足がボールを持っている一之瀬を踏み付ける。
ボールを確保した世宇子は怒涛の攻めを見せる。
「“ダッシュストーム”!」
「「ぐぁぁぁぁぁぁあ!?」」
デメテルの巻き起こした突風に交代したばかりの半田と栗松が餌食となる。吹き飛ばされて半田達は動く事が出来ず、影野と宍戸が交代する。
この交代により雷門の残りの交代枠は1人となってしまう。
「染岡!俺にパスをくれ!」
「おう!分かった!ッ!?」
「遅いな!“メガクェイク”!」
巨漢のディオの地ならしにより地面が隆起し染岡を吹き飛ばした。高所から落下した事により、攻撃の要である染岡が負傷してしまい雷門は最後の交代のカードを切らざるを得なくなる。
「こ、交代って…今残っているベンチは目金さんしか…」
音無の言葉通り、今の雷門で無傷で残っているのは予選以来試合に出場していない目金だけだ。だが、とても目金にこの難局を任せられるとは思えない。だが、目金は意を決して交代を申し込む。
「ぼ、僕だって雷門の一員だ…!も、もう逃げたりなんかしません…!」
冷や汗をかき、足もガタガタ震えている目金だが、今の彼に帝国との練習試合で逃げ出した頃の姿は無い。
意気揚々と交代した目金にボールが回ってくる。ぎこちない動きでドリブルをしようとする彼に突如巨大な影が目金を包み込む。
「“メガクェイク”…!」
「もぎゃぁぁぁぁあ!!!」
世宇子スタジアムの上空に無惨に割れた眼鏡が舞う。結局目金が出場した時間は10秒だった。
『な、なんと雷門僅か10分もたたずに全ての交代枠を消費!!これからは10人で戦うしかありません…!』
次々と空中に放り投げられる雷門イレブン達。誰1人世宇子中のスーパープレーに対抗できる選手はいない。
もはや世宇子にとってこれは試合ではなくただの害虫駆除であった。次々と倒れる仲間達。次々と円堂を痛めつけるように放たれるシュートの数々。あまりの惨劇に心を痛めた審判は世宇子にイエローカードを叩きつける決意をする。その瞬間耳元のインカムから低い声が聞こえてくる。
『世宇子に何を突き出そうとしているのかね?君の仕事は試合開始と終了を知らせるホイッスルを鳴らすだけ…。そうだろう?』
声の主は当然影山零治だ。FFの審判は少年サッカー協会から派遣される人材…つまり影山の手のかかった人間なのだ。
彼も今まで影山に有利な審判を下してきたが、世宇子のプレーの残酷さは帝国時代とは比較にならない。
ただただ相手を負傷させて勝利してきた世宇子の試合に彼はずっと心を痛め続けてきたのだ。
『これはあくまで独り言だが…万が一手に持っているものを選手に突きつけてみろ、これから社会的に生きていけるとは思うな。』
本来中立の立場にいなければならない存在すらも手駒にする影山の恐怖。彼はそれに屈してしまい、イエローカードを手に戻す。
もはや世宇子を止める者がいなくなってから数分後、今試合3度目のホイッスルが鳴り響く。
『ご、ゴーール…!世宇子のアフロディ…遂に3点目を獲得…!同時に彼のハットトリックが達成されました…!しかし、雷門イレブンはもはや誰1人立っていません…!我々が見ているのは本当にサッカーなのでしょうか…!?』
あまりの惨状にスタジアム内は静まり返っている。いつもは熱い実況を送る角馬王将すらも、言葉所々詰まってしまっている。
そして彼の言葉通り今の雷門は誰1人立っている選手はいない。あの円堂ですらも最後の“ゴッドノウズ”を喰らい遂に気絶してしまった。
これ以上試合を続行する事は不可能だと判断した響木は試合を棄権する事を決意する。
その瞬間、今にも自分に襲い掛かろうとする猛獣を思わせる凄まじいプレッシャーが彼を襲った。
「おいおい…!」
「やった…!信じていたぞ…!」
「はぁ…本当にしつこいね君は…」
呆れながら“彼”を見つめる神達。神の前に立つのは金色の獅子の影だった。
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「ここって…河川敷だよな…?何で俺こんな所にいるんだ?」
彼が目を覚ました先にいたのは雷門の皆と苦楽を共にした河川敷のグラウンド。だが、ある違和感が彼を襲う。
「やけに静かだな…。人通りは多い方じゃねぇけど鳥の声さえ聞こえねぇ…」
彼が言う通りここはあまりにも無音なのだ。人が居なくても鳥や虫の囀りは何百回も聞いてきた。だが、今いる場所は川のせせらぎしか聞こえてこない。
「…!対岸に人がいるぞ…!すみませーん!!ちょっと聞きたい事がある....嘘だろ…?」
対岸にいた人に声をかけたが彼らの正体に気づくと声が途切れてしまう。それもそのはずである。対岸にいる人物の顔は彼にとって決して忘れる事が出来ない存在なのだから。
「
彼は必死に呼びかけるが、両親は返事をする事なく彼を見つめているだけだ。
「くそったれが…!近くに橋は…ないな…。しょうがねぇ、この川を渡るしかないようだな…!」
近くに橋がない事を確認し川を渡る決意をする彼。仕方なく川に飛び込もうとすると何者かが足を引っ掛け彼を転ばせる。
「痛ってぇ!!!誰だ⁉︎こんな事をするヤツは!俺は今親父達と会うのに忙し...オイ…何でオマエがここにいるんだよ…?」
彼が目を向けた先にはまたしても懐かしい顔をした少年が立っていた。しかし、彼の記憶と決定的に違う点が1つある。それは少年が自分と同じ年齢まで成長している点だ。少年は彼に向けてニカッと笑う。
「やっほー!懐かしいねー。最後に会ったのは何年前だっけ?」
「そんな事は聞いてねぇ!何でオマエがここにいるんだよ⁈オマエは…アッチにいるアイツらも…もうこの世にはいねぇんだぞ⁉︎」
彼は今にも泣きそうな声で少年に語りかける。だが、少年は手に持ったボロボロのサッカーボールでリフティングし始める。
「よっほっほ…!懐かしいだろ?君って昔はリフティングが下手だったのにいつも僕に勝負を挑んできてたよね?なーんか久しぶりに君と勝負がしたくなったな。どう?僕と勝負しない?勝ったらこのボールをあげるよ。空気がパンパンに詰まってるから多分浮き輪代わりにもなると思うよ。」
少年は彼に勝負を提案する。彼としても生身で川を渡るのはあまりしたくなかったため仕方なく勝負を了承する。
「ルールはどうすんだよ?やっぱりアレか?」
「うんそうだね!僕たちとの勝負といったらアレしかないよ!」
少年はいつのまにかキーパー用のグローブを着用しゴール前に立っている。彼は一定の位置にボールを置き、少し距離をとってから走り出す。
「手加減はしねぇぞ!“キングレオーネ”!」
「おお…!遂に完成してたんだね…!たったら僕も!『俺の拳が金色に燃える!銀河を救えと語りかける!』“スターダストブレイカァァァァア”!!」
少年は一昔前の特撮ヒーローのような決め台詞を吐き、凄まじい威力のパンチングをすると獅子の咆哮を呆気なく掻き消した。パンチングによりボールは対岸にいた両親の足元に転がってしまった。
「おいおい…何してんだよ?俺が俺の獲物だったのに雑なパンチングしやがって…。」
「へへ〜ん!簡単に弾き飛ばされるヤツが悪いんだよ〜だ!」
少年はイタズラ小僧みたいな笑みを浮かべる。その姿は彼が見覚えのある泣き虫弱虫と馬鹿にされていた姿とは大きく異なっていたものだ。
「はぁ、やっと分かったぜ。オマエ最初から俺にボールを渡すつもりはなかっただろ?すっかり騙されたぜ。」
「ん?別にそんつもりはなかったけど…?」
自分の読みが外れてしまいギャグ漫画のように彼はずっこける。彼と少年は川に側に座り数年ぶりに話し合う。
「んでさ、ここって何処よ?なんか俺が知ってる場所だけど知らない場所って感じがするけどよぉ〜」
「ん〜僕もあまり詳しい事は知らないけどさ、多分君が薄々感じている事であってると思うよ。」
彼が考えている場所…。死んだ筈の両親と兄がいる場所それはただ1つ『三途の川』以外ないだろう。まさか中学生で死ぬとは思っていなかった彼は溜め息を吐く。
「はぁ〜やっぱ死んだのかよ…。俺が死ぬまでにやりたいリストの1割もまだ完了してないってのによ〜。…俺何が原因で死んだんだってけ?なんか記憶が朧げ。」
「…本当に忘れちゃったんだね。」
少年は彼にそう言うが、本人には本当に記憶にない。それどころか次第にさっきまで保持していた筈の記憶が消えていく。だが、彼はそんな事などどうでもいいと思っている。何故そう思うのかすらも考えた瞬間忘れてしまうからだ。
「ねぇ、君が“キングレオーネ”がなかなか完成しなかった時に父さんに言われた言葉を覚えている?」
「…父さんって誰だっけ?そもそもオマエだれ?なんで俺の隣に座っているんだ?」
さっきまでの覇気が既に無くなっている彼。少年は少しだけ残念そうな顔をすると、意を決してある言葉を投げかける。
「『失敗を恐れるな。挫けそうになった時は力強く一歩を踏み込め。そうすればオマエはさらに羽ばたける。』」
その言葉を聞いた瞬間彼に失われた筈の記憶が蘇る。そして自分が直前までしていた試合の事も。
「そうだ…!俺は今まで世宇子と試合してたんだ!それだけじゃない!守、豪炎寺、鬼道…雷門中のみんなの事もなんで忘れてたんだ…⁉︎」
「そう気に病まないで。ここはそう言う場所なんだ、呼び出した魂の記憶を奪いあの世に送る。でも君はそれに抗えた、その瞬間君は手にしたのさ。帰還できるチャンスを。」
そう少年は言うと彼の身体が次第に消えて行く。流石の彼もいきなり再会できた少年とお別れしなければならない事に焦り、最後に少年に言葉を投げかける。
「おい…
少年は彼の顔を見ないように背中を向けている。雷牙も表情が見えなかったが少年の身体は僅かに震えている事が確認出来た。
「ライト!本当にありがとう!俺、これからもオマエの分までサッカーをするからな!絶対、ぜ〜〜ったいに!だから見ていてくれ俺と雷門の伝説を!」
誰にも見せない涙を流しながら河川敷から完全に消滅してしまう雷牙。少年は再び1人ぼっちになってしまう。だが少年はこの場所が作り出した偽物の両親を見て小さく呟く。
「感謝するのは僕の方さ。僕も君の兄弟になれた事を本当に誇りに思うよ、出来る事ならここに引き留めたかった。けど大丈夫…いつか会えるさ…
少年は1人でボールを蹴り続ける。いつの日か最愛の弟と共にサッカーが出来る日を待ちながら。
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「稲魂雷牙!」
『稲魂(さん/君)!』
最初に立ち上がったのは雷牙だった。だが彼も既に満身創痍、まともにプレー出来るとは到底思えない。だが、彼が立った事により響木は雷門の棄権を取り消す。
「ハハハ、今更君が立ち上がった所で何が出来ると言うんだい?」
「どうかな…?土壇場での復活は強化フラグだと相場が決まっているぜ…?」
誰が見ても明らかな強がりを言う雷牙であるが、その姿がアフロディのシャクに触ったのか、彼は少し顔を歪め雷牙にボールを渡す。
「ここまで痛めつけても立ち上がった君に敬意を表してチャンスを上げよう。今から君は1人で僕達を抜きたまえ。最後の1人である僕を抜く事に成功すれば1点を雷門に差し上げよう。しかも回数は無制限だ!どうだい?これをたった4回繰り返すだけで雷門は逆転出来るのだよ?」
いかにもチャンスを与えてやったかのような口調を語るアフロディだがその本質はあくまで雷牙を公開処刑する為の口実でしかない。
それを裏付けるかのように世宇子の面々はアフロディの性格の悪さにニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
「ハハハ、そりゃいいねぇ。乗ったぜ……舐めプでクリアしてやるからよぉ!!!」
ボールを蹴りドリブルを開始する雷牙だが、すぐにデメテルとヘラによって痛めつけられる。雷牙がボールを落とすと、すぐに彼らにボールを回されゲームが再開する。もはやその光景は自身の狩場で猛獣を狩る貴族の遊びそのものだった。
「もうやめて…それ以上続けたら本当に死んじゃうわ!!」
夏未が必死に雷牙に呼びかけるが彼は反応しない。何度吹き飛ばされても、ボールが腹に入れられてもすぐに立ち上がり力強い一歩を踏み出す。
「監督!もういいでしょう⁉︎あなたは選手を守る義務があるのですよ⁉︎こんな…こんな酷い光景を見て何も思わないのですか⁉︎」
「無理だ…あそこまでの覚悟を見せられて試合を棄権できる監督はこの世に存在しない…。もうあいつの好きにやらせよう、これが終わったら俺が全ての責任を取る。」
もう幾度目になるだろうか、いつまでも諦めない雷牙の姿を見た世宇子の面々は次第に苛立ちを覚え始めプレーが荒くなっていく。
だが雷牙は倒れる度に何度も立ち上がる。すると世宇子の監督代理の人間がアフロディに向けてあるサインをする。そのサインを見た彼は意外そうな顔をし、攻撃の手を止める。
「んだよ…雷牙様の気迫に圧倒されたかアフロ野郎…?」
「そんなわけないだろう?僕は君の事が気に入らないが、総帥は違うらしくてね。総帥は君が欲しいそうだ、どうだい?もし君が僕達に屈して世宇子に降るならば相応の地位を約束しよう。」
雷牙を知る人ならばそのような話は蹴ると思うだろう。だが、今までも強い信念を見せながら少し甘い対応をすると心が折れた人間をアフロディは何度も見てきた。どうせ今回も同じようになると確信していた。
「言葉にするのは君にとって大変屈辱だろう。だから僕にパスを出したまえ、服従のパスをね。」
雷牙はずっと黙っている。数秒後、彼はなんとアフロディに向かってパスを差し出した。
影山に降る。それが雷牙が出した答えであった、アフロディは満足そうにボールを受け取る。
事はなかった。
「なっ……!」
なんとボールはアフロディがいる軌道から逸れ、近くで倒れている豪炎寺の足元に軽く当たった。
「ククク…ハーハッハッハッ!!!本当にダッセェなぁ!アフロ君よぉ!この程度のスピンすら見破らないなんてよぉ!!!訂正させてもらうぜぇ!!やっぱテメェは本物の神だよ!“自惚れ”のなぁ!」
あっさりと自分の嘘に引っかかったアフロディを見て雷牙は大笑いをする。
自らのプライドを刺激させられたアフロディは明確に怒りの表情を浮かべて口調が荒くなる。
「…それが君の答えか…!全く君ほど愚かな人間は見た事が無いよ。君がしでかした事は神の胸ぐらを掴む事と同じだと言うのに…。」
「そっちこそ分かってねぇみてーだなぁ!!!テメェは既に踏んでいるんだよ…!!!獅子の尻尾をなぁ…!!!」
前半終了まで残り僅か。雷牙のたった1人での頂上決戦が今始まる。